説明

広範囲の温度で減衰能を有する樹脂ブレンド

自動車に使用されるような機械部品の振動を抑制する組成物(20、48、60、84)が開示され、及び記述される。組成物(20、48、60、84)は半相溶性であってミクロ相分離を形成するようブレンドされた樹脂ブレンドを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その全体が参照によってここに組み込まれる2007年5月8日に出願された米国仮出願番号60/916,697の利益を主張する。
【0002】
本発明は機械的構造体におけるノイズ及び振動を抑制するのに使用される組成物に関し、より詳細には広い温度範囲にわたって減衰を提供する組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
望ましくない振動エネルギーは様々な製品及び装置内に発生する。例えば、自動車において、エンジン及び他の自動車用システムは振動を引き起こし、振動は車体を通過して自動車内の人が乗るスペースへと伝わり得る。同様の望ましくない振動エネルギーは、数例を挙げると、例えば家庭電化製品及び他のタイプの運搬用車両等において、様々な他の事態をもたらす。
【0004】
望ましくない振動エネルギーを低減するために、振動減衰材料、例えば粘弾性ポリマー樹脂材料、が振動撹乱を受ける機械部品表面に配置されてよい。ポリマーの粘弾状態はポリマーの固い/ガラス状の状態と、柔軟な/ゴム状の状態との間の遷移状態である。適切な制振材料は興味ある温度範囲において典型的には粘弾性であり、それらに与えられた振動エネルギーの一部を散逸させる。自動車用途において、そのような粘弾性材料は車両パネル、床等多くの表面に配置されてよく、自動車に乗っている人が感じる振動又はノイズを低減する。
【0005】
一般的には、振動表面がさらされるであろう温度範囲で最大の減衰効果を生じるような制振材料を選択することが望ましい。多くの既知の材料は、効果的な減衰が起こる比較的狭い温度範囲を有する。樹脂ブレンドは広い温度範囲にわたって減衰を生じさせる方法として試みられてきた。しかしながら、これまでの検討は成功していない。したがって、前述のような制振組成物に関する要求が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国仮出願番号60/916,697
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
半相溶性樹脂ブレンドを含む制振組成物が提供される。ある実施形態において、半相溶性樹脂ブレンドはアクリル樹脂、アクリルコポリマー樹脂、スチレン−アクリルコポリマー樹脂、スチレン−ブタジエンコポリマー樹脂、酢酸ビニル樹脂、及びビニル−アクリルコポリマー樹脂からなる群から選択される第1及び第2樹脂を含む。他の実施形態において、制振組成物は第1ポリマー樹脂及び第2ポリマー樹脂を含み、前記第1ポリマー樹脂はアクリルコポリマーを含み、前記第2アクリル樹脂はヒドロキシ官能性アクリル/スチレンコポリマーを含む。さらなる実施形態において、制振組成物は一つ以上のアクリル樹脂及びポリ酢酸ビニル樹脂を含む。
【0008】
振動減衰システムがさらに提供され、前記振動減衰システムは振動撹乱を受ける実質的に剛直な基板を含む。前記システムは基板上に配置された半相溶性樹脂ブレンドをさらに含む。
【0009】
振動にさらされる振動抑制基板を有する製品の製造方法が提供される。この方法は基板を提供する段階と、半相溶性樹脂ブレンドを含む制振組成物を提供する段階と、制振組成物を基板上に配置する段階とを含む。ある実施形態において、制振組成物は噴霧によって基板に塗布される。
【0010】
ここまでの短い記述、並びに本発明のさらなる目的、特徴及び有利な点は、添付される図面に関連して、現在の好ましい実施形態に関する以下の詳細な記述からより完全に理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】制振組成物が配置された自動車パネル等の基板の投射図である。
【図2】二つの酢酸ビニル樹脂制振組成物、及び二つの酢酸ビニル樹脂の非相溶性ブレンドを含む制振組成物の動的機械分析損失係数(tan D)を示すグラフである。
【図3】二つの酢酸ビニル樹脂制振組成物及び二つの酢酸ビニル樹脂の非相溶性ブレンドを含む制振組成物に関するOberst試験法によって決定された組成物損失係数(CLF)を示すグラフである。
【図4】アクリル樹脂制振組成物、酢酸ビニル樹脂制振組成物、及びアクリル樹脂と酢酸ビニル樹脂との相溶性ブレンドを含む制振組成物の動的機械分析損失係数(tan D)を示すグラフである。
【図5】アクリル樹脂のブレンドを含む制振組成物、酢酸ビニル樹脂制振組成物、及び比率が異なるアクリル樹脂ブレンドと酢酸ビニル樹脂との混合物、そのうち一方が半相溶性ブレンドを形成する、を含む二つの制振組成物に関するOberst試験法によって決定された組成物損失係数を示すグラフである。
【図6A】二つの異なるアクリル樹脂制振組成物及び樹脂の相溶性ブレンドを含む制振組成物に関するOberst試験法によって決定された組成物損失係数を示すグラフである。
【図6B】アクリル樹脂制振組成物、アクリル/アクリロニトリル樹脂制振組成物、及び樹脂の非相溶ブレンドを含む制振組成物に関するOberst試験法によって決定された組成物損失係数を示すグラフである。
【図6C】アクリル樹脂制振組成物、ヒドロキシ官能化アクリル/スチレン樹脂制振組成物、及び樹脂の半相溶性ブレンドを含む制振組成物に関するOberst試験法によって決定された組成物損失係数を示すグラフである。
【図6D】図6A−6Cの相溶性、非相溶性、及び半相溶性樹脂ブレンド制振組成物に関するOberst試験法によって決定された組成物損失係数を示すグラフである。
【図7】制振組成物を車両パネル等の基板上に塗布する工程の図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1はその上に制振材料が配置された振動を受ける物品の実施形態を提供する。例において、基板10は一般的に外部からの振動撹乱にさらされる金属又は他の剛直な材料である。例えば、基板10は車のエンジン動作からの振動撹乱を受ける自動車の床を含んでよい。制振材料20は基板10に課される振動撹乱に起因して乗車している人が感じる振動の量を低減するために基板10に塗布される粘弾性コーティングである。基板10は車両の床、トランクの一部、ダッシュボードの一部、又は振動を受ける他の部品であってよい。自動車用途が例示を目的として示されたが、制振材料20は振動にさらされるどのような機械的構造体又は部品、例えば家庭用電気用品、床、機械の外郭構造、洗浄機/乾燥機、飛行機、船、又は様々な道具等、に塗布されてもよい。
【0013】
ポリマー樹脂に加えて、制振材料20は粘稠剤等他の成分を含んでもよい。適切な粘稠剤としては、アルカリ可溶ポリマー(カルボン酸及びアクリルエステルのコポリマーを含むが、これに制限されない)、ポリビニルアルコール(「PVOH」)、PVOH安定化ポリマー(エチレン−酢酸ビニルコポリマー、及びポリ酢酸ビニルポリマー等のPVOH安定化酢酸ビニルポリマーを含むが、これに制限されない)、及び多糖類(澱粉及びセルロースを含むが、これに制限されない)が挙げられる。さらに、他の任意の原料が制振性を強めるため及び/又は加工性を改良するため制振材料20に加えられてよく、これらに制限はされないが、フィラー、消泡剤、可塑剤、湿潤剤、界面活性剤、分散剤、発泡剤、及び殺菌剤がある。適切なフィラーは非ラテックス粒子状固体であってよく、無機タイプ又は有機タイプのどちらかであってよい。例として、炭酸カルシウム、タルク、ガラスフィラー、ファイバー、バブル球、硫酸バリウム、ゼオライト、マイカ、グラファイト、珪灰石、ケイ酸カルシウム、粘土、それらの混合物又は組合せ、等が挙げられる。
【0014】
制振用途において、制振部品が機能する温度範囲にわたって制振を最大化するのが一般的に望ましい。自動車への応用を含む一つの実施形態において、基板10は約20℃から約60℃の作動温度にさらされる。残念ながら、多くの既知の樹脂システムは、特に20℃から60℃の範囲で、効果的に振動を抑制する比較的狭い温度範囲を有する。広い温度範囲での効果的な制振性を有するブレンドを製造するために、異なるダンピング温度プロファイルを有する樹脂を単に組み合わせることが提案されてきた。しかしながら、もしも樹脂が相溶性(すなわち、混和性)である場合、それらは典型的には同じく狭い、しかしシフトした、有効制振温度範囲をもたらす。非相溶性の樹脂をブレンドすることによって、典型的には各構成樹脂の有効制振温度範囲内でのみ有効な制振性をもたらす。したがって、有効な制振性をもたらす全温度範囲は認め得るほどには広がらない。
【0015】
特定の樹脂が混合されて改良された制振性を有する「半相溶性」樹脂ブレンドを形成し得ることが見出された。そのような半相溶性ブレンドは「ミクロ相分離」又は「ミクロ非相溶相」を形成するとも記述され得る。ここで、用語「半相溶性」、「ミクロ非相溶」、及び「ミクロ相分離」は、ブレンドされた樹脂中のポリマー分子の混合が広範囲に及ぶが完全ではないことを意味する。その結果、構成樹脂のゆるやかに規定されたドメインが混合物全体中に形成され、乾燥されたとき一つの系の中にハードセグメント及びソフトセグメントの双方を形成し、最終的な系は固いポリマー領域と粘弾性ポリマー領域とを双方含む複数の拘束を有する層状制振系であるだろう。ここで用語「樹脂ブレンド」は物理的混合又は一体化を通じたポリマー樹脂の混合を示す。「半相溶性樹脂ブレンド」は二つ以上のポリマー樹脂が物理的に混合され又は一体化されミクロ非相溶相及びミクロ相分離が生じるとき、得られる。好ましい半相溶性樹脂ブレンドは、二つ以上のポリマー樹脂が完全に重合されたもの、すなわち樹脂の物理的混合又は一体化の後さらなる重合が起こらないブレンド、である。
【0016】
半−非相溶性又はミクロ−非相溶性樹脂ブレンドの挙動をより理解するために、相溶性及び非相溶性樹脂ブレンドの挙動がまず記述される。相溶性樹脂ブレンドは構成樹脂が完全に混和性であり、実質的に均一な混合物を形成するものである。逆に、非相溶性樹脂ブレンドは構成樹脂が非混和性であり、実質的に分離相を形成するものである。相溶性及び非相溶性系を識別する一つの方法は動的機械分析(「DMA」)試験を実施し、樹脂ブレンド及び構成樹脂の損失係数を調べることである。当業者には知られるように、DMA試験において動的に変化する応力が興味対象の材料に印加され、「損失係数」(「タンデルタ」、「tan D」及び「tan δ」とも呼ばれる(すなわち保存弾性率に対する損失弾性率の比))が測定される。温度に対するtan δの図において、各々の樹脂は典型的に最大ピークを示す。もしも非相溶性樹脂がブレンドされた場合、ブレンド物は典型的には構成樹脂のピークの付近でtan δピークを示し、ピークの間で減衰の低下が起こる。もしも相溶性樹脂がブレンドされる場合、ブレンド物のDMA曲線は典型的には構成樹脂のピークの間に単一のtan δピークを有する。自動車部品又は表面の減衰を含む実施形態において、制振組成物20が、約20℃から約60℃の温度範囲にわたって、一般的に約0.8、及び好ましくは約1.0の損失係数を有することが好ましい。他の実施形態において、半相溶性樹脂ブレンドを含む構成樹脂は各々約−20℃から約50℃の対応するガラス転移温度を有する。
【0017】
図2を参照すると、非相溶性樹脂ブレンドを含む例示的な制振組成物に関するDMAの結果が提供される。図において、DMA損失係数(tan D)の結果は、水ベースのエチレン−酢酸ビニルコポリマー(「EVA」)樹脂11、水ベースのポリ酢酸ビニル(「PVAc」)樹脂12、及び制振組成物11及び12を調製するのに使用された二つの個々のEVA及びPVAc樹脂の50:50ブレンド14を含む制振組成物に関して提供される。ここで、樹脂組成物の比に関するデータは重量に基づき計算され、液体及び固体樹脂成分の両方を含む。EVA樹脂制振組成物11はポリビニルアルコール安定化EVA樹脂、Airflex426として知られるペンシルバニア州アレンタウンのAir Products and Chemicals社の製品、を含む。PVAc樹脂制振組成物12はポリビニルアルコール安定化PVAc樹脂、Mowlith DN 50として知られるドイツのHoechst Celanese AGの製品を含む。図2のDMAデータはPerkin−Elmer DMA 7E装置を用いて生成された。所定の樹脂において、ピークの損失係数の値は最大の減衰が起こる温度を表す。したがって、EVA樹脂制振組成物11に関して、最大の減衰は約5℃の温度で起こり、一方でPVAc樹脂は二つの減衰ピークを示し、一つは約30℃であり他方が約75℃である。樹脂ブレンド制振組成物14は制振組成物11及び12の損失係数最大値の近傍で三つの損失係数最大値(約5℃、40℃、及び約80℃)を有する。EVA及びPVAc制振組成物11、12に関する最大損失係数は、対応する樹脂ブレンド組成物14の最大値よりも有意に高い。加えて、ブレンドの損失係数はその0℃のピークと40℃のピークとの間で下がり、特に乏しい減衰が構成樹脂組成物11、12の最大減衰温度(5℃及び30℃)の間で観察された。
【0018】
DMA試験に加えて、樹脂及び樹脂ブレンドの減衰挙動は、Society of Automotive Engineers Standard J1637において説明されるOberst試験法によって測定される「組成物損失係数」又は「CLF」を用いても特徴付けられ得る。当業者に知られるように、Oberst法はカンチレバー鋼バーに結合される制振材料の減衰を評価する。したがって、樹脂単独とは反対に、CLFは樹脂/基板系の減衰を評価するため使用され、及び乗用車用途の代表的な条件下でサンプルを評価するため使用され得る。
【0019】
以下の例にさらに説明されるように、ある実施形態において、CLFデータは半相溶性樹脂ブレンドを含む制振組成物に関して並びに半相溶性ブレンドを作る別個の樹脂を含む参照制振組成物に関して生成され得る。第1の参照組成物は半相溶性ブレンド組成物の一部を形成する樹脂の一つを含み、第2の参照組成物は半相溶性ブレンド組成物の一部を形成する他の樹脂を含む。各参照組成物は最大CLFを有し、対応する温度範囲にわたって特定の割合(例えば、70%、75%、又は80%)の最大CLFを実現する。ある実施形態において、半相溶性樹脂ブレンドを含む組成物は、一つ又は両方の参照組成物が各々の最大CLF値と同じ特定の割合を実現する温度範囲よりも広い温度範囲にわたって、一つ又は両方の参照組成物の最大CLF値の特定の割合を超えるCLF値を有する。これは、以下の図5及び6Cに関してさらに説明される。構成樹脂組成物に関するCLFデータを樹脂ブレンド組成物と比較すると、フィラー、粘稠剤、又は他の添加物に対する樹脂の量は好ましくは一定に保たれ、Oberst法試験条件(例えば、バーのサイズ、密度、及び寸法、バーに塗布される材料の量、等)は好ましくは一定に保たれる。
【0020】
図3を参照すると、CLF値は非相溶性樹脂ブレンド制振組成物に関して提供される。CLF値は水ベースEVA樹脂制振組成物16、水ベースPVAc樹脂制振組成物18、及び制振組成物16及び18を調製するため使用されるEVA及びPVAc樹脂の1:1ブレンドを含む制振組成物21に関して提供される。比較に首尾一貫した根拠を保証するため、各々の組成物における試験は同じ寸法及び密度を有するカンチレバーのバーで実行された。
【0021】
EVAコポリマー樹脂制振組成物16は、Air Products and Chemicals,Inc.によって供給されるAirflex920、Tgが−20℃のポリビニルアルコール安定化EVA樹脂、を含む。PVAc樹脂制振組成物18はResyn(登録商標)SB321、テキサス州ダラスのCelanese Emulsionsによって供給されるヒドロキシエチルセルロース保護コロイドを含有するPVAc樹脂、を含む。図3に示されるように、EVAコポリマー樹脂制振組成物16は約0℃においてCLFピークを有し、CLF値は約−10℃から約+10℃の間で約0.2より大きい。PVAc樹脂制振組成物18は約60℃でCLFピークを有し、CLF値は約48℃から約70℃の間で約0.2より大きい。樹脂組成物16及び18、ブレンド21の減衰は約20℃から40℃の間で低下し、CLF値は0.10より下に下がる。
【0022】
図3のEVA及びPVAc樹脂のブレンドは減衰性能の有意な減少を引き起こす。樹脂ブレンド制振組成物21はEVA及びPVAc組成物16、18の最大値の近くにCLF最大温度を有する。しかしながら、ブレンド組成物21に関する最大CLF値は、0℃において約0.15、60℃において約0.10に、大きく減少する。このように、少なくとも1:1比で混合されるとき、Airflex 425 EVA樹脂とResyn(登録商標)SB321 PVAc樹脂とのブレンドは制振性能を改良せず、非相溶性の相を形成すると考えられる。
【0023】
相溶性樹脂ブレンドの挙動は非相溶性ブレンドの挙動とは大きく異なる。図4を参照すると、DMAの結果はEVAコポリマー樹脂制振組成物26、アクリル樹脂制振組成物22、及び各々組成物26及び22を調製するために使用されるEVA及びアクリル樹脂の相溶性ブレンドを含む樹脂ブレンド制振組成物24に関して提供される。アクリル樹脂制振組成物22はRohm&Haasによって供給されるアクリルラテックスを含む。EVAコポリマー樹脂制振組成物26はCelanese Emulsionsによって供給されるDur−O−Set(登録商標)E200、水ベースポリビニルアルコール安定化EVA樹脂を含む。アクリル樹脂制振組成物22が約20℃でtan Dの最大値を有する一方で、EVA樹脂制振組成物26は約5℃でtan Dの最大値を有する。上記記述された非相溶性ブレンドとは異なり、相溶性樹脂ブレンド制振組成物24は、EVA及びアクリル組成物22及び26のtan Dピークの間、約15℃に位置する単一のピークを有する。樹脂ブレンド組成物24は約7℃から約15℃の間で個々の樹脂22及び26の双方を超える改良された減衰を示す。しかしながら、温度約15℃において、樹脂ブレンド組成物24はアクリル樹脂22と比較して乏しい減衰能を示す。さらに、樹脂ブレンド組成物24のtan Dは約22℃の温度スパンにわたって1を超えるのに対して、アクリル樹脂組成物22は約30℃の相対的に広い温度スパンにわたって同様のtan Dを示す。したがって、相溶性樹脂のブレンディングは有効な減衰が起こる温度範囲を広げない。また、それは多くの用途において重要である20℃から60℃の範囲の減衰を改良しない。
【0024】
上述のように、図2−3の非相溶性樹脂ブレンド又は図4の相溶性樹脂ブレンドとは異なり、特定の樹脂が有効な減衰が起こる温度範囲を広げるためブレンドされ得ることが見出された。理論に拘束されることを望まないが、そのようなブレンドは完全に相溶性であるとも、完全に非相溶性であるとも考えられない。代わりに、それらはミクロスコピックなレベルで不均一である相構造を形成する半相溶性ブレンドであると考えられる。半相溶性ブレンドを形成するため使用するのに適する樹脂として、アクリル(アクリルコポリマーを含む)、スチレン−アクリルコポリマー、スチレン−ブタジエンコポリマー、酢酸ビニルポリマー(非制限的にEVAコポリマー及びPVAcを含む)、及びビニルアクリルコポリマーが挙げられる。やはり理論に拘束されることは望まないが、構成樹脂のガラス転移点の相違が、半相溶性ブレンドが形成されるかどうかを決定するのに役割を担うと考えられる。さらに、構成樹脂の間の化学的な類似性が半相溶性ブレンドの形成に影響すると考えられる。化学的に類似する樹脂は相溶性ブレンドを形成する傾向がある。したがって、ある程度の化学的非類似性を有する構成樹脂を提供することによって、半相溶性ブレンドが形成されることがより確実になる。
【0025】
ある実施形態において、二つの水ベース樹脂が半相溶性樹脂ブレンドを形成するためブレンドされた。他の実施形態において、半相溶性樹脂ブレンドはアクリル樹脂及び酢酸ビニル樹脂を含む。さらなる実施形態において、半相溶性ブレンドはPVAc樹脂と混合された二つのアクリル樹脂の相溶性ブレンドを含む。さらに他の実施形態において、重量に基づく、PVAc樹脂に対するアクリル樹脂の比は約3:1未満である。さらなる実施形態において、重量に基づく、PVAc樹脂に対するアクリル樹脂の比は約2.33:1を超えない。さらに他の実施形態において、重量に基づく、PVAc樹脂に対するアクリル樹脂の比は約2:1を超えない。
【0026】
ある実施形態において、制振組成物内の樹脂の全量は概して全制振組成物の約15重量パーセントから約65重量パーセントの範囲であり、全制振組成物の約25重量パーセントから約55重量パーセントの範囲が好ましく、約35重量パーセントから約45重量パーセントの範囲がさらに好ましい。
【0027】
図5は半相溶性ブレンドに関するCLF結果を説明する。CLF結果は四つの制振組成物42、44、46、及び48に関して提供される。以下に説明するように、制振組成物48は半相溶性樹脂ブレンドを含むと考えられる。
【0028】
図5に示されるCLFの結果は幅12.7mm、長さ225mm、及び厚み0.8mmのSAE Oberst試験バーを用いて得られた。試験バーの根元部は25mmであり、自由長は200mmであった。減衰性能は五つの温度、0℃、20℃、40℃、60℃、及び80℃において測定された。減衰データは200Hzの振動数に内挿され、データ点の間で線形に補間された。CLF値の線形補間は、測定された五つのデータ点の間で組成物42、44、46、及び48の減衰性能を正確に反映すると考えられる。CLFデータを得るために、制振組成物42、44、46、及び48は試験バーに、表面被覆3.0kg/mが得られるように湿潤膜厚3mmで、手で塗布された。バーは室温で一晩置かれ、Oberst試験法を実施する前に約30分間約160℃で焼成された。
【0029】
制振組成物42、44、46、及び48の各々は一つ以上の樹脂、フィラー、及びある場合には粘稠剤を含む。図5において、第1の制振組成物42はBASF社によって供給されるAcronal(登録商標)DS 2159及びAcronal(登録商標)DS 3502アクリル樹脂の50:50ブレンドを含む。Acronal(登録商標)DS 2159は固体含有量が約49%から約51%であるアクリルエステルコポリマーエマルジョンである。これは約12℃のガラス転移温度を有する膜を形成する。Acronal(登録商標)DS 3502は固体含有量が約54%から約56%であるアクリルコポリマーの水性懸濁液である。これは約4℃のガラス転移温度を有する膜を形成する。制振組成物42を構成するアクリル樹脂は約40℃に単一のCLFピークを有する相溶性ブレンドを形成し、CLF値は約20℃から約48℃の温度範囲にわたって少なくとも約0.15であった。第2の制振組成物44はMowlith DN50 PVAc樹脂44から調製され、約60℃において最大CLF値を示した。第2の制振組成物44は約55℃から約65℃の温度範囲にわたって少なくとも約0.15のCLFを示した。
【0030】
第3の制振組成物46は3:1アクリル/PVAc樹脂ブレンドを含む。制振組成物46を調製するのに使用されるアクリル樹脂はそれ自身二つの相溶性樹脂の相溶性ブレンド、Acronal(登録商標)DS 2159及びAcronal(登録商標)DS 3502の50:50ブレンド、であった。制振組成物46を調製するのに使用されるPVAc樹脂は、Mowlith DN50であった。3:1比で混合されたとき、第3の制振組成物46のアクリル及びPVAc樹脂は相溶性ブレンドを形成した。図5に示されるように、第3の制振組成物46は、約40℃で、明瞭な、単一のCLFピークを示した。さらに、第3の制振組成物46に関するCLF曲線は、アクリル樹脂の相溶性ブレンドを含む、第1の制振組成物42に関するCLF曲線と同じである。第3の制振組成物46のCLF値は約30℃から約48℃の温度範囲にわたって少なくとも0.15であった。したがって、3:1比のアクリル及びPVAc樹脂のブレンドは、上述のように、約20℃から約48℃で約0.15のCLFを示した第1の制振組成物42と比較して乏しい減衰性能を示した。
【0031】
第4の制振組成物48は2:1アクリル/PVAcブレンドを含む。第4の制振組成物48を調製するのに使用されたアクリル樹脂はAcronal(登録商標)DS 2159及びAcronal(登録商標)DS 3502の50:50ブレンドであった。制振組成物46を調製するのに使用されたPVAc樹脂はMowlith DN50であった。ここまでに議論された他の樹脂ブレンドとは異なり、第4の制振組成物48は制振組成物42及び44(第4の制振組成物48の構成樹脂を含む)のCLFピーク間(すなわち、約40℃から約60℃の間)で優れた減衰を示すと考えられる。さらに、第4の制振組成物48は約30℃から約63℃の温度範囲にわたって0.15を超えるCLF値を示した。約40℃から約60℃の範囲で内挿されたCLFデータに基づき、第4の制振組成物48は第1及び第2の制振組成物42及び44の最大CLFの約85%のCLFを維持していると考えられる。約30℃から約60℃の範囲において、第4の制振組成物48は第1及び第2の制振組成物42及び44の最大CLFの約75%のCLFを維持していると考えられる。第1の制振組成物42又は第2の制振組成物44のどちらも40℃から60℃の温度範囲全体にわたって第4の制振組成物48の内挿されたCLF値に匹敵するCLF値を保持しなかった。特に、約52℃において、第1及び第2の制振組成物42及び44は各々約0.13のCLFを示し、一方で第4の制振組成物48は、約38%増加の、約0.18のCLFを示した。理論に拘束されることは望まないが、第4の制振組成物48の改良された制振性能はアクリル及びPVAc樹脂成分の間のミクロ相分離の形成に起因すると考えられる。
【0032】
制振組成物42、44、46、及び48を調製する方法が記述される。概して、組成物は樹脂成分を混合して予混合物を形成し、その後フィラー材料を添加し、その後粘稠剤を添加することによって調製された。予混合物は樹脂成分を高速ミキサー内で約1250rpmで約15分混合することによって形成された。その後フィラーが混合速度約800rpmで約10分間予混合物に添加され、その後さらに5分間約1200rpmの速度でさらに混合された。粘稠剤が、均一な混合物が得られるまで、約700rpmの混合速度で特定の調合物に添加された。
【0033】
様々なフィラー及び粘稠剤が使用され得るが、制振組成物42、44、46、及び48を調製するのに使用されたフィラーはHuberCarb Q325 CaCOフィラーであった。Latekoll(登録商標)Dという商品名でBASF社から販売される粘稠剤が制振組成物42、46、及び48に添加された。Latekoll(登録商標)Dはアルカリ可溶性のアクリルエステル/カルボン酸コポリマーのアニオン性懸濁液であり、BASF社によって供給される。制振組成物44には粘稠剤は必要とされない。比較的粘性が高いMowlith DN50 PVAc樹脂が調製に使用されているためである。制振組成物42、44、46、及び48を調製するのに使用された様々な樹脂、フィラー、及び粘稠剤の量は、表1において以下に説明される。
【0034】
【表1】

【0035】
上述のように、制振組成物42、44、46、及び48を調製するのに使用されたフィラーの量は約60重量%であり、全樹脂/フィラーの重量比は2:3であった。組成物42、44、46、及び48における全樹脂組成物の全量は、約40重量%だった。制振組成物42、46、及び48を調製するのに使用された粘稠剤の量は、約0.5%であった。
【0036】
図6A−6Dを参照すると、相溶性、非相溶性、及び半相溶性樹脂ブレンド制振組成物に関するCLFデータのさらなる例が示される。構成樹脂を形成するのに使用されるモノマー前駆体の組成は以下表2に説明される。
【0037】
【表2】

【0038】
樹脂A−Dはラテックスとして提供され、それらとフィラーパッケージ、粘稠剤、分散剤、及び消泡剤とを混合することによって、制振組成物72−84を調製するため使用された。様々な成分の相対的量は以下表2において説明される。
【0039】
【表3】

【0040】
各組成物72−84は、そのラテックス樹脂成分を第1混合して予混合物を形成し、約15分間1250rpmで高速ミキサーで混合することによって調製された。その後フィラーパッケージが混合速度約1250rpmで約10分間予混合物に添加され、その後混合は約1500rpmの速度で約10分間継続された。その後粘稠剤(Latekoll D)が添加され、実質的に均一な混合物が得られるまで速度約1250rpmで混合された。CLF試験は、各組成物72−84を、長さ200mm、幅12.7mm、及び厚み1.6mmのOberst試験バーに手で塗布することによって実施された。各組成物に関して塗布された量は3.0kg/バーの表面積mであった。塗布後、バーは室温で10分間洗浄され、140℃で50分間焼成された。CLFデータが生成され、0℃から80℃の試験温度範囲において200Hzに内挿された。
【0041】
図6Aを参照すると、CLFデータが組成物72、74、及び76に関して提供される。図6Aが示すように、組成物72は温度約27℃において約0.14のCLFピークを有する。組成物74は温度約80℃において約0.1のCLFピークを有し、組成物76の樹脂ブレンドは温度約37℃において約0.12のCLFピークを有する。組成物76のCLFは約30℃から約47℃の温度範囲(ΔT)にわたって0.1(組成物72の最大CLFの約70%)を超えた。しかしながら、組成物72(樹脂A単独)は若干広い温度範囲(約17℃から約35℃)にわたって同じ減衰性能を達成した。さらに、組成物76の樹脂ブレンドは約33℃から約44℃の温度範囲にわたって組成物72(すなわちCLF約0.11)の減衰性能の約80%のCLFを達成し、一方で組成物72(樹脂A)は約20℃から約33℃の比較的広い温度範囲にわたって同じ減衰性能を達成した。このように、組成物76の樹脂ブレンドは組成物72単独と比較して相対的に乏しい減衰性能を示した。
【0042】
組成物76は、組成物72及び74のCLFピーク間に単一のCLFピークを有することから、及び組成物A単独と比較して相対的に乏しい減衰性能を示すことから、少なくとも部分的には、相溶性樹脂ブレンドであると考えられる。さらに、樹脂A及びBの組成が非常に類似しており同じアクリレートモノマーを含む前駆体から調製されることから、相溶性ブレンドであることが予測されるだろう。
【0043】
図6Bを参照すると、CLFデータは組成物72及び、樹脂Cを含む、組成物78に関して提供される。組成物80は樹脂A及びCの50/50ブレンド(重量による)を含む。組成物72に関するCLFデータは図6Aと同様である。組成物78は温度約56℃において約0.12のCLFピークを有する。組成物80は二つのCLFピークを有し、第1のピークは温度約30℃で約0.13であり、第2のピークは温度約50℃で約0.09であった。組成物80は約22℃から約37℃の温度範囲にわたって約0.1(組成物72の最大CLFの約70%)のCLFを実現し、前記温度範囲は組成物72(上述のように、約17℃から約35℃の温度範囲にわたって同じ減衰性能を実現した)と比較して若干狭いものだった。組成物80の樹脂ブレンドは約25℃から約35℃の温度範囲にわたって組成物72の最大CLF(すなわち、約0.11)の80%を実現し、前記温度範囲は約33℃から約44℃の温度範囲にわたって同じCLFを実現した組成物72と比較して若干狭いものだった。
【0044】
二つの異なるCLFピークを有するため、組成物80は非相溶性樹脂ブレンドを含むと考えられる。樹脂A及びCは、部分的に、非相溶性であると考えられる。なぜなら、樹脂Cが14重量%のアクリロニトリルを含み、このことが、全体がアクリルベースの樹脂A内の樹脂の溶解性に影響するためである。
【0045】
半相溶性樹脂ブレンド84に関するCLFデータは図6Cに提供される。図6Cは図6A及び6Bに示されるのと同じ組成物72に関するCLFデータを含む。組成物82は樹脂Dを含む。組成物84は樹脂A及びDの50/50ブレンド(重量による)を含む。図6Cに示されるように、組成物82は温度約60℃において約0.13のCLFピークを有する。しかしながら、組成物84はCLFピークが0.16であり、これは組成物72及び82両方の最大CLFピークを越える。さらに、組成物84のCLFは約26℃から約67℃の温度範囲にわたって0.1を超え、これは組成物72又は組成物82がCLF0.1を実現したどちらの温度範囲よりも広い。組成物84は約28℃から約66℃の温度範囲にわたってCLFが0.11を超え、約34℃から約58℃の温度範囲にわたってCLFが0.14を超えた。組成物72又は組成物82はどちらも同等の幅の温度範囲にわたる同等のCLF値を実現しなかった。
【0046】
図6Cが示すように、組成物84の半相溶性ブレンドは組成物72及び82よりも優れた減衰性能を実現した。半相溶性ブレンド組成物84の優れた性能は樹脂ブレンド組成物76(相溶性)、80(非相溶性)、及び84(半相溶性)に関するCLFデータを並べた図6Dにおいてさらに明確になる。表2に示されたように、樹脂A及びDはどちらも、樹脂Dのスチレン12重量%を除いて、全てアクリレートモノマーを含む前駆体から調製される。樹脂Dがスチレンを含むことは、樹脂A及びDにある程度の非相溶性を付与すると考えられる。しかしながら、この非相溶性が、樹脂Dのヒドロキシブチルメタクリレート成分を介したヒドロキシ基の含有によって、少なくとも部分的に、相殺されるとも考えられる。ヒドロキシ基は樹脂AとDとの間に水素結合を形成すると考えられる。
【0047】
ここで記載される制振組成物は、非制限的にキャスティング、押出、スプレーコーティング、及び、回転塗布を含む、様々な方法で基板に塗布され得る。しかしながら、好ましい実施形態において、それらは噴霧される。制振組成物を調製するために使用される混合プロセスにおいて、固体成分の粒子サイズは噴霧を容易にするため好ましくは監視され、又は制御される。平均粒子サイズは概して300ミクロン未満である。しかしながら、平均粒子サイズが100ミクロン未満であることが好ましい。
【0048】
図7を参照すると、ここまでに記載されたような制振組成物の塗布方法が記述される。図7は制振組成物を塗布するための例示的な自動化プロセスを示し、組立ライン上で部分的に製造された自動車を説明する。製造プロセスにおいて説明された点において、自動車は制振組成物60が塗布される部分的に露出された床パネル10(基板)を有する。床パネル10が設置される自動車キャビン内で受ける振動量を低減するために、床パネル10上に振動ダンパーを含むことが望ましい。図7は、制振組成物を多関節ロボットアーム56で噴霧することによって、床パネル10上部に制振組成物を塗布する方法を説明する。制振組成物は好ましくはここまでに記述したタイプの樹脂の半相溶性ブレンドから形成される。ある実施形態において、半相溶性樹脂ブレンドはPVAc樹脂と混合したアクリル樹脂のブレンドを含み、アクリル樹脂/PVAc樹脂の重量比は約3:1未満である。好ましい実施形態において、アクリル樹脂/PVAc樹脂の重量比は約2.33:1を超えず、一方で特に好ましい実施形態においてアクリル樹脂/PVAc樹脂の重量比は約2:1を超えない。制振組成物60は好ましくは上述のタイプのフィラーを含み、フィラーは制振組成物の重量に対して概して約30%から約70%の範囲の量で存在し、フィラーの量が約35%から約45%であることが好ましく、約40%の量であることが特に好ましい。好ましい実施形態において、制振組成物は図5に関して上述された制振組成物48である。制振組成物60は上述のタイプの粘稠剤又は他の添加剤を含んでもよい。
【0049】
他の実施形態において、制振組成物60はアクリルコポリマー樹脂とアクリル/スチレンコポリマー樹脂との半相溶性ブレンドを含む。制振組成物60は上述の量のフィラー、並びに上述のタイプの粘稠剤及び/又は他の添加剤を含んでもよい。さらなる実施形態において、アクリル/スチレンコポリマー樹脂は、ヒドロキシ官能性アクリレートモノマーとスチレン及び一つ以上のさらなるアクリレートモノマーとを共重合することによって調製される、ヒドロキシ官能性アクリル/スチレンコポリマー樹脂である。コポリマー樹脂はヒドロキシ官能性アクリレートモノマーの代わりに又はそれに加えて一つ以上のヒドロキシ官能性スチレンモノマーから調製されてもよい。さらに他の実施形態において、ヒドロキシ官能性アクリル/スチレンコポリマー樹脂を形成するのに使用されるモノマー前駆体はヒドロキシ官能性アクリルモノマーを約1重量%から約10重量%含む。さらに他の実施形態において、ヒドロキシ官能性アクリル/スチレンコポリマーを調製するのに使用されるモノマー前駆体のアクリルモノマーは概して全モノマー前駆体の約80重量%から約95重量%を占め、82%から92%の範囲の量が好ましく、86%から90%がさらに好ましい。例示によれば、スチレンは概して全モノマー前駆体の約5重量%から約20重量%を占め、約8%から約16%の範囲の量が好ましく、約10%から約14%がさらに好ましい。さらに他の実施形態において、アクリル/スチレンコポリマー樹脂は上記表2において確認される樹脂Dであり、アクリルコポリマー樹脂は上記表2において確認される樹脂Aである。
【0050】
再度図7を参照すると、多関節ロボットアーム56は液体形態で制振組成物60を分配するためのノズルを備えたアプリケータヘッド58を有する。多関節ロボットアーム56は例えばコンピュータワークステーション等の制御装置(図示されない)によって電子的に制御される。多関節ロボットアーム56はロボットアームがその上に材料を分配するために自動車の床10に対して選択的に位置されるように制御される。
【0051】
多関節ロボットアーム56上に配置されるアプリケータヘッド58は少なくとも一つの液体材料源(図示されない)に流動性の接続がなされる。ある実施形態において、流体材料源は流体材料のドラム又はバルクコンテナである。様々な既知の計測及び液体輸送部品及びシステムが、各々の流体材料源からアプリケータヘッド58へと所定量の流体材料を輸送するために使用され得る。ある実施形態において、流体材料60が塗布された後、流体材料を約20分から約40分室温で放置することにより揮発性成分が除かれる。床10(又はその中に床10が設置される他の自動車部品)はその後所定の色を塗装されてよい。塗装の後、床10は塗布された塗料を焼成するために塗装炉中に配置される。焼成炉温度は一般的に約120℃から約180℃の範囲である。ある説明的実施形態において、塗装炉の温度は約160℃である。焼成時間は一般的には約10分から約90分の範囲である。ある説明的実施形態において、焼成時間は30分である。
【0052】
床10はその後振動撹乱にさらされる車両内に設置されてよい。自動車が運転されているとき、それは振動を床10に伝える。しかしながら、ここで記載された制振材料20(図1)が伝達された振動を弱め、自動車キャビンで感じられる振動の量を低減する。前述のように、自動車が受ける温度は制振組成物によって提供される減衰の程度に影響し得る。しかしながら、多くの従来技術による制振組成物とは異なり、ここで記載された半相溶性樹脂ブレンドは有効な減衰が起こる温度範囲を有利に増加する。
【0053】
本発明は前述の実施形態を参照して特に示され及び記述されたが、これは本発明を実施する最良の形態の説明にすぎない。ここに記載された本発明の実施形態の様々な代替物が以下のクレームに規定される本発明の精神及び範囲から逸脱することなく本発明の実施において使用され得ることは当業者によって理解されるべきである。実施形態はここに記載される要素の全ての新規な及び非自明な組合せを含むと理解されるべきであり、クレームはこれらの要素の新規の及び非自明な組合せへのこの又は今後の応用において提示され得る。さらに、前述の実施形態は説明的なものであり、単一の特徴又は要素はこの又は今後の応用においてクレームされ得る全ての可能な組合せに必須ではない。
【0054】
ここで記述されたプロセス、方法、発見的問題解決等に関して、そのようなプロセス等の段階がある順序の並びに従って起こるように記載されているが、そのようなプロセスがここで記述された順序以外の順序で実行される記述された段階で実現され得ることは理解されるべきである。ある段階が同時に実行され得ること、他の段階が追加され得ること、又はここで記述されたある段階が省略され得ることは、さらに理解されるべきである。言い換えれば、ここで記述されるプロセスの説明は、特定の実施形態を説明するために提供され、クレームに記載された発明を制限すると解釈されるべきではない。
【0055】
したがって、上記記述が説明的なものであって制限的なものではないことは理解される。上記記述を読むとき、提供された例示以外の多くの実施形態及び応用が当業者には明白であるだろう。本発明の範囲は上記記述を参照して決定されるのではなく、代わりに添付されるクレームを参照して、そのようなクレームが権利を有する均等物の完全な範囲に沿って、決定されるべきである。ここで記載された従来技術において将来的な発展が起こること、及び開示されたシステム及び方法がそのような将来の実施形態の中に組み込まれることが予想され及び意図される。要するに、本発明は修正及び変更が可能であり、以下のクレームによってのみ制限されることが理解されるべきである。
【0056】
クレームで使用される全ての用語は、それとは反対にここで明確な指示がなされていない限り、最も広範な合理的解釈及び当業者によって理解されるそれらの元々の意味が与えられることが意図される。特に、「一つの」、「その」、「前記」等単数形の冠詞は、それとは反対にクレームが明確な制限を記載するのではない限り、一つ以上の示された要素を記載すると読むべきである。
【符号の説明】
【0057】
10 基板
20 制振材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半相溶性樹脂ブレンドを含む制振組成物(20、48、60、84)。
【請求項2】
樹脂の全量が全制振組成物(20、48、60、84)の約15重量%から約65重量%の範囲である、請求項1に記載の制振組成物(20、48、60、84)。
【請求項3】
少なくとも一つのフィラーをさらに含み、前記少なくとも一つのフィラーは全制振組成物(20、48、60、84)の約30重量%から約70重量%の範囲の量で存在する、請求項1に記載の制振組成物(20、48、60、84)。
【請求項4】
半相溶性樹脂ブレンドが約−20℃から約50℃のガラス転移温度を有する少なくとも一つの樹脂を含む、請求項1に記載の制振組成物(20、48、60、84)。
【請求項5】
半相溶性樹脂ブレンドが第1及び第2樹脂を含み、前記第1及び第2樹脂の各々がアクリル樹脂、アクリルコポリマー樹脂、スチレン−アクリルコポリマー樹脂、スチレン−ブタジエンコポリマー樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、及びビニル−アクリルコポリマー樹脂からなる群から選択される、請求項1に記載の制振組成物(20、48、60、84)。
【請求項6】
半相溶性樹脂ブレンドがポリ酢酸ビニル樹脂と混合されたアクリル樹脂の第1のブレンドを含む、請求項5に記載の制振組成物(20、48、60)。
【請求項7】
半相溶性樹脂ブレンドが第1のアクリルコポリマー樹脂及び第2のアクリル/スチレンコポリマー樹脂を含む、請求項1に記載の制振組成物(20、60、84)。
【請求項8】
第1のアクリルコポリマー樹脂がメチルメタクリレート、ブチルアクリレート、及びメタクリル酸を含むモノマー前駆体から調製される、請求項7に記載の制振組成物(20、60、84)。
【請求項9】
第2のアクリル/スチレンコポリマー樹脂が少なくとも一つのヒドロキシ官能性アクリルモノマー及びヒドロキシ官能性スチレンモノマーを含むモノマー前駆体から調製される、請求項7に記載の制振組成物(20、60、84)。
【請求項10】
ヒドロキシ官能性アクリルモノマーがヒドロキシブチルメタクリレートである、請求項9に記載の制振組成物(20、60、84)。
【請求項11】
アクリル/スチレンコポリマー樹脂がブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、スチレン、メチルメタクリレート、及びメタクリル酸を含むモノマー前駆体から形成される、請求項10に記載の制振組成物(20、60、84)。
【請求項12】
半相溶性樹脂ブレンドが第1の樹脂及び第2の樹脂を含み、第1の温度範囲において制振組成物(20、48、60、84)が第1の参照組成物(42、72)の組成物損失係数の第1の最大値及び第2の参照組成物(44、82)の組成物損失係数の第2の最大値から選択される少なくとも一つの少なくとも約70%である組成物損失係数を有し、第1の参照組成物(42、72)は第2の樹脂ではない第1の樹脂を含み、第2の参照組成物(44、82)は第1の樹脂ではない第2の樹脂を含む、請求項1に記載の制振組成物(20、48、60、84)。
【請求項13】
第2の温度範囲において第1の参照組成物(42、72)が組成物損失係数の第1最大値の少なくとも約70%である組成物損失係数を有し、第3の温度範囲において第2の参照組成物(44、82)が組成物損失係数の第2最大値の少なくとも約70%である組成物損失係数を有し、第1の温度範囲が第2の温度範囲及び第3の温度範囲から選択される少なくとも一つよりも大きい、請求項12に記載の制振組成物(20、48、60、84)。
【請求項14】
第1の温度範囲において、制振組成物(20、60)が組成物損失係数の第1最大値及び組成物損失係数の第2最大値から選択される少なくとも一つの少なくとも約75%である組成物損失係数を有する、請求項12に記載の制振組成物(20、48、60、84)。
【請求項15】
第2の温度範囲において第1の参照組成物(42、72)が組成物損失係数の第1最大値の少なくとも約75%である組成物損失係数を有し、第3の温度範囲において第2の参照組成物(44、82)が組成物損失係数の第2最大値の少なくとも約75%である組成物損失係数を有し、第1の温度範囲が第2の温度範囲及び第3の温度範囲から選択される少なくとも一つよりも大きい、請求項14に記載の制振組成物(20、48、60、84)。
【請求項16】
第1温度範囲において、制振組成物(20、48、60、84)が組成物損失係数の第1最大値及び組成物損失係数の第2最大値から選択される少なくとも一つの少なくとも約80%である組成物損失係数を有する、請求項12に記載の制振組成物(20、48、60、84)。
【請求項17】
第2の温度範囲において第1の参照組成物(42、72)が組成物損失係数の第1最大値の少なくとも約80%である組成物損失係数を有し、第3の温度範囲において第2の参照組成物(44、82)が組成物損失係数の第2最大値の少なくとも約80%である組成物損失係数を有し、第1の温度範囲が第2の温度範囲及び第3の温度範囲から選択される少なくとも一つよりも大きい、請求項16に記載の制振組成物(20、48、60、84)。
【請求項18】
第1のポリマー樹脂及び第2のポリマー樹脂のブレンドを含み、第1のポリマー樹脂がアクリルコポリマーを含み、第2のアクリル樹脂がヒドロキシ官能性アクリル/スチレンコポリマーを含む、制振組成物(20、60、84)。
【請求項19】
ヒドロキシ官能性アクリル/スチレンコポリマーがヒドロキシ官能性アクリルモノマー及びヒドロキシ官能性スチレンモノマーのうち少なくとも一つを含むモノマー前駆体から調製される、請求項18に記載の制振組成物(20、60、84)。
【請求項20】
第1のポリマー樹脂のアクリルコポリマーがメチルメタクリレート、ブチルアクリレート、及びメタクリル酸を含むモノマー前駆体から調製される、請求項18に記載の制振組成物(20、60、84)。
【請求項21】
ヒドロキシ官能性アクリル/スチレンコポリマーがブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、スチレン、メチルメタクリレート、及びメタクリル酸を含むモノマー前駆体から調製される、請求項18に記載の制振組成物(20、60、84)。
【請求項22】
一つ以上のアクリル樹脂及びポリ酢酸ビニル樹脂を含み、制振組成物におけるポリ酢酸ビニル樹脂に対する一つ以上のアクリル樹脂の重量比が約3:1未満である、制振組成物(20、48、60)。
【請求項23】
制振組成物におけるポリ酢酸ビニル樹脂に対する一つ以上のアクリル樹脂の重量比が約2:1以下である、請求項22に記載の制振組成物(20、48、60)。
【請求項24】
一つ以上のアクリル樹脂がアクリル樹脂のブレンドを含む、請求項22に記載の制振組成物(20、48、60)。
【請求項25】
一つ以上のアクリル樹脂及びポリ酢酸ビニル樹脂が半相溶性樹脂ブレンドを形成する、請求項22に記載の制振組成物(20、48、60)。
【請求項26】
その上に配置された請求項1に記載の制振組成物(20、48、60、84)を有する実質的に剛直な基板(10)であって、振動撹乱にさらされる剛直基板(10)を含む、制振システム。
【請求項27】
基板(10)を提供する段階と、
半相溶性樹脂ブレンドを含む制振組成物(20、48、60、84)を提供する段階と、
基板に制振組成物(20、48、60、84)を塗布する段階と、を含む振動にさらされる制振基板(10)を有する製品を製造する方法。
【請求項28】
前記基板(10)に制振組成物(20、48、60、84)を塗布する段階が制振組成物(20、48、60、84)を基板(10)上に噴霧する段階を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
半相溶性樹脂ブレンドがポリ酢酸ビニル樹脂と混合されたアクリル樹脂の第1のブレンドを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
半相溶性樹脂ブレンドが第1のアクリルコポリマー樹脂及び第2のアクリル/スチレンコポリマー樹脂を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
第1のアクリルコポリマー樹脂がメチルメタクリレート、ブチルアクリレート、及びメタクリル酸を含むモノマー前駆体から調製される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
第2のアクリル/スチレンコポリマー樹脂が、ヒドロキシ官能性アクリルモノマー及びヒドロキシ官能性スチレンモノマーから選択される少なくとも一つを含むモノマー前駆体から調製される、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
ヒドロキシ官能性アクリルモノマーがヒドロキシブチルメタクリレートである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
第2のアクリル/スチレンコポリマー樹脂がブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、スチレン、メチルメタクリレート、及びメタクリル酸を含むモノマー前駆体から調製される、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
第1の温度範囲において、制振組成物(20、48、60、84)が第1の参照組成物(42、72)の組成物損失係数の第1最大値及び第2の参照組成物(44、82)の組成物損失係数の第2最大値から選択される一つの少なくとも約70%である組成物損失係数を有し、制振組成物(20、48、60、84)が第1のポリマー樹脂及び第2のポリマー樹脂を含み、第1参照組成物(42、72)は第2のポリマー樹脂ではない第1のポリマー樹脂を含み、第2の参照組成物(44、82)は第1のポリマー樹脂ではない第2のポリマー樹脂を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項36】
第2の温度範囲において第1の参照組成物(42、72)が組成物損失係数の第1最大値の少なくとも約70%である組成物損失係数を有し、第3の温度範囲において第2の参照組成物(44、82)が組成物損失係数の第2最大値の少なくとも約70%である組成物損失係数を有し、第1の温度範囲が第2の温度範囲及び第3の温度範囲から選択される少なくとも一つよりも大きい、請求項35に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−526916(P2010−526916A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507659(P2010−507659)
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際出願番号】PCT/US2008/063063
【国際公開番号】WO2008/137990
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(504274505)シーカ・テクノロジー・アーゲー (227)
【Fターム(参考)】