説明

床の保護シート

【課題】使用、保管、再生時において何等問題なく、かつ、効率よく再生利用ができる経済的な床の保護シートを提供する。
【解決手段】無公害性の熱可塑性樹脂製で、少なくとも二層からなるシート材からなり、廃棄時にそのままで、その構成材料の100%が同様のシート材等に再生可能に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床の保護シートに関し、特に、工作機械等の重量物の保全、補修の際に、床を保護するために使用される床の保護シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、シート材は、養生、置き敷き、防汚等の各種用途に多種多様のものが開発され、例えば、コンクリート養生シート、鉢物の水切り用の置き敷きシート、粉塵対策の防汚シート等として使用され、その使用目的を果たしている。
【0003】
これら従来のシート材は、その使用目的が明確であって、その転用範囲が狭く、例えば、作業場等で家庭用の合成樹脂製床材が使用されることは極めて稀なことであり、その一方で、作業環境が問題視され、ハロゲン系合成樹脂である塩化ビニル樹脂からなるシート材は、特に、工作機械等の重量物の保全、補修の際に、床を保護するために使用される床の保護シートには、その導入が相対的に忌避される傾向となっている。
【0004】
このような環境下、例えば、特許文献1には、合成樹脂製の養生シートにおいて、表面がより滑り難く、また、その性質が長く維持されることを目的とし、圧縮応力10kg/cmに於ける圧縮歪0.1mm以下、デュポン衝撃強度が10kg・cm以上の発泡ポリオレフィン樹脂により形成された中心層と、該中心層の少なくとも一方の面に被着されたサーモプラスチックエラストマ又はサーモプラスチックオレフィンにより形成された表面層とを備え、厚さが1.0mmから5.0mmであるシート材が、開示されている。
また、特許文献2には、優れた難燃性を有し、焼却処理した場合に生じる残灰量を極力抑えることを可能とし、特に、原子力発電所などの床や壁、天井などに用いられる養生シートとして好ましい難燃性積層体を提供することを目的として、エチレン含有率が65〜95質量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体及び/又はエチレン含有率が65〜95質量%のエチレン−メタクリル酸エステル共重合体100重量部に対し、メラミンシアヌレート20〜100重量部、赤リン含有率が30〜50重量%の白色系顔料でコーティングした赤リン2〜10重量部からなるA層の少なくとも片面に、ポリエチレン及び/又はポリプロピレンを主体とするB層を積層する難燃性積層体が開示されている。
また、特許文献3には、自己消火性と強度とを備え、透明性に優れ、生産性も良好であり、かつ、焼却処分で灰分の発生や焼却施設の損傷や焼却炉フィルターの目詰まりを起こさない自己消火性シート及び養生シートを得るために、自己消火性シートを、ポリプロピレンホモポリマー樹脂に難燃剤としてNOR型光安定剤を配合してなる構成とし、これにより、難燃剤の添加量を極めて少量としながら、実用上充分なレベルの自己消火性を引き出すことができ、かつ、高い透明性をも得ることができ、リン系、ハロゲン系の化合物、金属水和物、金属酸化物などの一般的な難燃剤を使用せず、焼却時の灰分がゼロであり、焼却施設の損傷や焼却炉フィルターの目詰まりを来さず、従来のエチレン−酢酸ビニル樹脂製のシートに比較して極めて耐熱性が高く、またポリウレタン主体のシートに比較して極めて低コストであり、加工の際にも特殊な加工機を要さず簡単に成膜できるなど、生産性も非常に高いシート材がそれぞれ提案されている。
【特許文献1】特開2001−1472号公報
【特許文献2】特開2002−127323号公報
【特許文献3】特開2004−238482号公報
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されているシート材は、その作用効果において優れるものの、構成材料とその製造装置が個々に高価であり、特許文献2及び3に開示されているシート材は、原子力発電所という極めて特殊な環境での使用を目的とし使い捨てを原則とすることから一般的でなく、かつ、ポリウレタン主体のシートに比較して極めて低コストとするものの相対的に高価であり、三者共にその再生使用に問題を残すものとなっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来のシート材の有する問題点に鑑みてなしたものであり、その使用、保管、再生時において何等問題なく、かつ、効率よく再生利用ができる経済的な床の保護シートの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の床の保護シートは、無公害性の熱可塑性樹脂製で、少なくとも二層からなるシート材からなり、廃棄時にそのままで、その構成材料の100%が同様のシート材等に再生可能なことを特徴とする。
【0008】
この場合において、最上層に防汚性及び/又は防滑性を付与し、また、最上層及び/又は最下層に防黴性及び/又は抗菌性を付与することができる。
【0009】
また、床の保護シートを構成する熱可塑性樹脂には、ポリオレフィン系樹脂を用いることができる。
【0010】
また、最上層を使用環境に適合した色相に着色すること、また、再生時に、最上層を別の色相又は同様の使用環境に適合した色相に着色することができる。
【0011】
また、耐薬品性及び/又は耐油性に優れ、工作機械等の重量物の保全、補修時に使用することができる。
【0012】
また、使用後に、巻き方向の始端と後端とが逆になるように巻いて保管するようにすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の床の保護シートは、無公害性の熱可塑性樹脂製で、少なくとも二層からなる置き敷きシート材からなることで、その使用、保管、再生時において何等問題なく、廃棄時にそのままで、その構成材料の100%が同様のシート材等に再生可能なことで経済的である。
【0014】
また、最上層に防汚性及び/又は防滑性を付与し、また、最上層及び/又は最下層に防黴性及び/又は抗菌性を付与することで、この床の保護シートを使用する作業環境において、その安全性と衛生面を著しく向上することができる。
【0015】
また、床の保護シートを構成する熱可塑性樹脂には、ポリオレフィン系樹脂を用いることで、公害要因をなくすことができる。
【0016】
また、最上層を使用環境に適合した色相に着色すること、また、再生時に、最上層を別の色相又は同様の使用環境に適合した色相に着色することができことで、見栄えがよくなり作業者の精神面に好影響を及ぼすことになる。
【0017】
また、耐薬品性及び/又は耐油性に優れ、工作機械等の重量物の保全、補修時に使用することで、床の保護を確実に行うことができる。
【0018】
また、使用後に、巻き方向の始端と後端とが逆になるように巻いて保管することで、巻き癖による反りの発生を防止し、より長期に亘って安全に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の床の保護シートの実施形態を、図1〜図5の図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0020】
図1に、本発明の床の保護シート1の第1実施例示す。
この床の保護シート1は、工作機械等の重量物の保全、補修の際に、床10を保護するために使用されるもので、保無公害性の熱可塑性樹脂製で、上層2及び下層4の二層からなるシート材からなり、廃棄時にそのままで、その構成材料の100%が同様のシート材等に再生可能なものである。
【0021】
このようなシート材に用いる無公害性の熱可塑性樹脂には、ポリオレフィン系のポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブテン樹脂、エチレン・α−オレフィン共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、エチレン−アクリル酸共重合樹脂、エチレン−メタクリル酸共重合樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂、エチレン−メチルメタクリレート共重合樹脂、エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸三元共重合樹脂又はエチレン−アクリル酸エステル−エポキシ三元共重合樹脂の1種又は2種以上からなる軟質エチレン系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー又はスチレン系熱可塑性エラストマーの1種又は2種以上からなる熱可塑性エラストマー、ポリエチレン樹脂が、メタロセン触媒を用いて重合されたメタロセンポリエチレン樹脂等を、安全性、経済性の面で好適に使用することができる。
【0022】
また、シート材に用いる無公害性の熱可塑性樹脂には、増粘剤として、ワックス、微細タッキファイヤー等、充填剤として、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、タルク、石英粉末、クレー、マイカ、水酸化マグネシウム等、さらには、安定剤、可塑剤、着色剤、滑剤、離型剤、架橋剤、発泡剤、帯電防止剤、表面活性剤、難燃剤、防滑剤、抗菌剤、防黴剤等の1種又は2種以上の各種機能材(機能剤)を混合、配合又は添加することができる。
【0023】
また、シート材は、無公害性の熱可塑性樹脂から選択し、シート材に形成した、不織布、織布等のシート材で裏打ちしたり、同様のシート材を内部に層状に配することができる。
【実施例2】
【0024】
図2に、本発明の床の保護シート1の第2実施例を示す。
この保護シート1は、上層2の表面部に帯電防止剤、表面活性剤、難燃剤、防滑剤、抗菌剤、防黴剤等の1種又は2種以上の各種機能材(機能剤)を添加し、上層2及び下層4の二層に用いる無公害性の熱可塑性樹脂と同様の無公害性の熱可塑性樹脂を主成分とする中間層3に、耐熱性に優れる無公害性の熱可塑性樹脂から選択し、シート材に形成した、不織布、織布等のシート材を反り防止層5として層状に配したものである。
【0025】
この場合、上層2の表面には、帯電防止剤、表面活性剤、難燃剤、防滑剤、抗菌剤、防黴剤等の1種又は2種以上の各種機能材(機能剤)を添加した紫外線硬化型のアクリル樹脂等の合成樹脂からなる塗膜(保護層)6を形成することができる。
【実施例3】
【0026】
図3に、本発明の床の保護シート1の第3実施例を示す。
この床の保護シート1は、上層2に防汚性に優れた薄いシート材を採用するとともに、下層4の裏面に無公害性の熱可塑性樹脂から選択し、シート材に形成した、不織布、織布等のシート材を裏打ち層7として配し、これらを積層すると同時に、上層2の表面に凹凸模様8を形成しながら加熱圧縮することにより成形したものである。
この場合、上層2の表面に形成した凹凸模様8によって防滑性が著しく向上する。
【0027】
図4に、本発明の床の保護シート1の使用例を示す。
この床の保護シート1は、作業場等の床10に床の保護シート1を敷き、その上に保全、補修すべき工作機械等の重量物9とその重量物9から分離した部品90とを設置した状態を示し、これにより、床10を保護することができるようにしたものである。
【0028】
図5に、本発明の床の保護シート1の保管形態の一例を示す。
この床の保護シート1の保管形態は、保護シート1の使用後に、巻き方向の始端と後端とが逆になるように巻いて保管することにより、すなわち、図5(a)に示すように巻いて保管していた床の保護シート1を、広げて使用した後、保管のために巻き取る場合は、図5(b)に示すように、図5(a)とは巻き方向の始端と後端とが逆になるように巻いて保管するようにする。
これにより、巻き癖による反りの発生を防止し、より長期に亘って安全に使用することができる。
なお、床の保護シート1の保管形態は、この例に限定されるものでなく、折り返してたたみ、畳を積み上げるようにして保管する等、適宜その保管場所に応じて選択することができる。
【0029】
以上、説明してきたように、本発明の床の保護シート1は、無公害性の熱可塑性樹脂製で、少なくとも二層からなる置き敷きシート材からなることで、その使用、保管、再生時において何等問題なく、廃棄時にそのままで、その構成材料の100%が同様のシート材等に再生可能なことで経済的である。
また、最上層に防汚性及び/又は防滑性を付与し、また、最上層及び/又は最下層に防黴性及び/又は抗菌性を付与することで、この床の保護シート1を使用する作業環境において、その安全性と衛生面を著しく向上することができる。
また、床の保護シート1を構成する熱可塑性樹脂には、ポリオレフィン系樹脂を用いることで、公害要因をなくすことができる。
また、最上層を使用環境に適合した色相に着色すること、また、再生時に、最上層を別の色相又は同様の使用環境に適合した色相に着色することができことで、見栄えがよくなり作業者の精神面に好影響を及ぼすことになる。
また、耐薬品性及び/又は耐油性に優れ、工作機械等の重量物9の保全、補修時に使用することで、床10の保護を確実に行うことができる。
また、使用後に、巻き方向の始端と後端とが逆になるように巻いて保管することで、巻き癖による反りの発生を防止し、より長期に亘って安全に使用することができる。
【0030】
以上、本発明の床の保護シートについて、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の床の保護シートは、その使用、保管、再生時において何等問題なく、かつ、効率よく再生利用ができる経済的なものであることから、工作機械等の重量物の保全、補修の際に、床を保護するために使用される床の保護シートとしての用途のほか、舗道、階段、廊下、テラス等の表面にもその使用目的により好適に置き敷きし、保護シートとして用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の床の保護シートの第1実施例を示す説明図である。
【図2】本発明の床の保護シートの第2実施例を示す説明図である。
【図3】本発明の床の保護シートの第3実施例を示す説明図である。
【図4】本発明の床の保護シートの使用例を示す説明図である。
【図5】本発明の床の保護シートの保管形態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0033】
1 床の保護シート
2 上層
3 中間層
4 下層
5 反り防止層
6 塗膜(保護層)
7 裏打ち層
8 凹凸模様
9 工作機械等の重量物
10 床

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無公害性の熱可塑性樹脂製で、少なくとも二層からなるシート材からなり、廃棄時にそのままで、その構成材料の100%が同様のシート材等に再生可能なことを特徴とする床の保護シート。
【請求項2】
最上層に防汚性及び/又は防滑性を付与したことを特徴とする請求項1記載の床の保護シート。
【請求項3】
最上層及び/又は最下層に防黴性及び/又は抗菌性を付与したことを特徴とする請求項1又は2記載の床の保護シート。
【請求項4】
熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の床の保護シート。
【請求項5】
最上層を使用環境に適合した色相に着色してなることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の床の保護シート。
【請求項6】
再生時に、最上層を別の色相又は同様の使用環境に適合した色相に着色してなることを特徴とする請求項5記載の床の保護シート。
【請求項7】
耐薬品性及び/又は耐油性に優れ、工作機械等の重量物の保全、補修時に使用することを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の床の保護シート。
【請求項8】
使用後に、巻き方向の始端と後端とが逆になるように巻いて保管することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の床の保護シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−2187(P2008−2187A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−173660(P2006−173660)
【出願日】平成18年6月23日(2006.6.23)
【出願人】(000108719)タキロン株式会社 (421)