説明

床下型車輪旋盤

【課題】移動レールを必要としない装置全体が簡素化及び小型化し、安価で実用性に優れた画期的な床下型車輪旋盤を提供することを目的としている。
【解決手段】固定レールに、この固定レールの幅方向の一部を凹状に切欠いた車輪持ち上げローラ出入部と、固定レールが欠如している縁切り部とをレール長さ方向に並設し、固定レールの下方に車輪持ち上げローラ出入部から出入りし車輪を持ち上げながら回転させる車輪持ち上げローラ部を昇降自在に設け、且つ少なくとも固定レールの長さ方向と直交する固定レールの幅方向に移動するベース部を設け、このベース部に、縁切り部から傾斜状態に突出し車輪のレール接触面に当接して切削するバイト部と、縁切り部を車両が通過する際には縁切り部に介在する補助レール部とを設けた床下型車輪旋盤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の車輪のレール接触面を切削する際に、車輪を車両から外すことなく車輪を切削する床下型車輪旋盤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の車輪1のレール接触面4には、曲線通過のためのハンドル機能を与えるための傾きが設けられており、この傾きがあることで曲線でのスムーズな走行を実現し、且つ車輪1の摩耗の低減を図っている。しかし、車輪1の摩耗は皆無ではないので、定期的に車輪1のレール接触面4を適正な傾きの形状に再生する必要がある。
【0003】
この車輪1のレール接触面4の再生を実施する車輪旋盤として、車輪1を車両から外すことなく車輪1のレール接触面4を切削する床下型車輪旋盤がある。
【0004】
この床下型車輪旋盤は、車両が機械の上方に位置し、下方から車輪1を切削するものであり、メンテナンスエリアに車両2を引き込む固定レール5と、車輪1を切削する際に移動する移動レール30の2種類のレールを要し、作業時は、移動レール30上に停止させた車両2の車輪1下方より車輪1を持ち上げる1対の車輪持ち上げローラ部8が上昇してきて車輪1を持ち上げ、この車輪持ち上げローラ部8が回転し車輪1を持ち上げながら回転させ、この回転している車輪1の真下からバイト部3が突出してきて、車輪1のレール接触面4に当接し車輪1の切削を行う。
【0005】
しかし、この際、バイト部3は移動レール30があるとレール幅方向に移動する際に移動レール30と干渉するため、車輪1を切削するときは、移動レール30が固定レール5に沿って固定レール5の長さ方向に一旦退避移動しバイト部3との干渉を避け、車輪1の切削が終わり車輪1を下ろす際には、また、元の位置である車輪1の下方に移動する構成となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来の床下型車輪旋盤は、車輪1を持ち上げ回転させる車輪持ち上げローラ部8が対になっているために大型になり、また、車輪1を切削するときのレールとベース部9の干渉領域が大きく、そのため、移動レール30の長さが長くなり、移動レール30の移動に時間を多く費やすこととなり、また、この移動レール30は、固定レール5を半分の幅に削り落とした形状のもので、この固定レール5を半分削り落とす加工作業は非常に時間が掛かり、厄介なものであった。
【0007】
更に、従来の床下型車両旋盤は、前述した移動レール30を含め移動機構が多く、装置全体が複雑且つ大掛かりなものとなっていたため、メンテナンス性が悪く、また、製造コストが高く、装置自体の価格も高価なものとなっていた。
【0008】
そこで、本発明は、固定レール5を半分に削り落とす厄介な加工作業が必要で尚且つレールシステムを複雑化している移動レール30を必要としない、装置全体が簡素化及び小型化し、安価で実用性に優れた画期的な床下型車輪旋盤を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0010】
鉄道車両の車輪1を車両2から外すことなく前記車輪1の下方からバイト部3で前記車輪1のレール接触面4を切削する床下型車輪旋盤であって、前記車両2をメンテナンスエリアに引き込むための固定レール5に、この固定レール5の幅方向の一部を凹状に切欠いた車輪持ち上げローラ出入部6と、前記固定レール5を縁切りした縁切り部7とをレール長さ方向に並設し、前記固定レール5の下方に前記車輪持ち上げローラ出入部6から出入りし前記車輪1を持ち上げながら回転させる車輪持ち上げローラ部8を昇降自在に設け、且つ少なくとも前記固定レール5の長さ方向と直交する固定レール5の幅方向に移動するベース部9を設け、このベース部9に、前記縁切り部7から傾斜状態に突出し前記車輪1のレール接触面4に当接して切削する前記バイト部3と、前記縁切り部7を車両2が通過する際には前記縁切り部7に介在する補助レール部10とを設けたことを特徴とする床下型車輪旋盤に係るものである。
【0011】
また、前記ベース部9に前記バイト部3と前記補助レール部10とを前記固定レール5の長さ方向と直交する固定レール5の幅方向に並設し、前記ベース部9が前記固定レール5の長さ方向と直交する固定レール5の幅方向にスライド移動することで、前記車輪1のレール接触面4を切削するときは前記バイト部3が前記縁切り部7に位置し、前記車両2が前記縁切り部7を通過し移動するときは前記バイト部3が退避し前記補助レール部10が前記縁切り部7に位置する構成としたことを特徴とする請求項1記載の床下型車輪旋盤に係るものである。
【0012】
また、前記車輪持ち上げローラ出入部6と前記縁切り部7の間の前記固定レール5に前記切削を行う車輪1が切削前及び切削後に接地する構成としたことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の床下型車輪旋盤に係るものである。
【0013】
また、前記切削を行う車輪1が切削前及び切削後に接地する接地点の前記固定レール5長さ方向の前後いずれか一方側に前記車輪持ち上げローラ出入部6を、他方側に前記縁切り部7を近設して、前記縁切り部7から前記切削する車輪1側に傾斜状態に突出するバイト部3が前記切削する車輪1のレール接触面4に当接する構成としたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の床下型車輪旋盤に係るものである。
【0014】
また、前記車輪持ち上げローラ部8が前記車輪持ち上げローラ出入部6下方から真上方向に上昇し前記車輪1を持ち上げる際に、前記車両2を移動不能状態とする車輪止め部11を、前記切削を行う車輪1の少なくとも前後いずれか一方の前記車輪1に設置したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の床下型車輪旋盤に係るものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は上述のように構成したから、レールを移動させなくても固定レールの一部を凹状に切り欠いた車輪持ち上げローラ出入部を通って車輪持ち上げローラ部を固定レールの下方から上昇させて車輪を持ち上げ回転させることができ、しかも、バイト部を縁切り部から突出させる構成としたので、従来機のように移動レールを設けて車輪切削時に退避移動する構成とする必要がなくなり、レールシステム自体を簡素化し、容易に構築できるものとしている。
【0016】
更に、バイト部と補助レール部をベース部に設けたので、移動機構を共有化することで余計な移動機構をなくし、装置自体を簡素化且つ小型化することができ、大幅なコスト削減ができ、更に、簡易な構成で容易に設計実現が可能で、且つ安価に製造することができる画期的な床下型車輪旋盤となる。
【0017】
また、請求項2記載の発明においては、ベース部のスライド移動のみでバイト部が作業位置となる縁切り部に移動したり、補助レール部が縁切り部を埋める位置に移動したりでき、即ち、バイト部及び補助レール部の配置及び退避の2つの移動を同時に果すことができ、作業効率を一層向上させると共に、スライド移動のみという単純な動作のみでよいため、簡易な移動機構となり、移動装置を小型化することができ、更に、バイト部と一体に設けた構成としたので、レールシステムに従来の移動レールが不要となる画期的な床下型車輪旋盤となる。
【0018】
また、請求項3記載の発明においては、切削を行う車輪の真下が固定レールとなるので、車両の有無に関わらずベース部の移動が可能となり、しかも、車輪の切削を終えて持ち上げていた車輪を下ろす際の衝撃を固定レールで受けることができるので、補助レール部や車輪持ち上げローラ部の駆動モータに負荷が掛からず、精度劣化を防止する優れた構成の床下型車輪旋盤となる。
【0019】
また、請求項4記載の発明においては、車輪持ち上げローラ部が車輪の片側のみに設けられているので、バイト部が車輪持ち上げローラ部と干渉することなく配置でき、車輪の下方側より車輪のレール接触面に対して容易に直角状態に当接可能となり、切削精度の向上が図れる優れた床下型車輪旋盤となる。
【0020】
また、請求項5記載の発明においては、切削する車輪の片側方向から車輪を持ち上げるので、車両が移動しようとする力が作用するが、切削する車輪以外に輪止め部を設けることで車両を移動不能状態とすることができ、従って、切削する車輪は、前後方向に移動することなく真上方向に持ち上げられることとなる優れた機能を有する床下型車輪旋盤となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施例の要部を示す説明斜視図である。
【図2】本実施例の要部を示す説明斜視図である。
【図3】本実施例の要部を示す説明斜視図である。
【図4】本実施例の要部を示す説明斜視図である。
【図5】本実施例を示す説明側面図である。
【図6】本実施例を示す説明平面図である。
【図7】本実施例を示す一部を切欠いた説明正面図である。
【図8】本実施例の車輪転入前の状態を示す説明平面図及び説明側面図である。
【図9】本実施例の車輪切削前の状態を示す説明平面図及び説明側面図である。
【図10】本実施例の車輪切削時の状態を示す説明平面図及び説明側面図である。
【図11】本実施例の車輪転入前の状態を示す説明正面図である。
【図12】本実施例の車輪切削前の状態を示す説明正面図である。
【図13】本実施例の車輪持ち上げ持の状態を示す説明正面図である。
【図14】本実施例の車輪切削時の状態を示す説明正面図である。
【図15】本実施例の車輪を持ち上げる構成を示す説明側面図である。
【図16】従来例の車輪を持ち上げる構成を示す説明側面図である。
【図17】従来例の車輪転入前の状態を示す説明平面図及び説明側面図である。
【図18】従来例の車輪切削前の状態を示す説明平面図及び説明側面図である。
【図19】従来例の車輪切削時の状態を示す説明平面図及び説明側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
好適と考える本発明の実施形態(発明をどのように実施するか)を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0023】
車輪1の切削を実施する車両2をメンテナンスエリアに引き込み、切削を実施する車輪1を所定の位置に停車させる。
【0024】
切削を実施する車輪1は、固定レール5の幅方向の一部を凹状に切欠いた車輪持ち上げローラ出入部6から車輪持ち上げローラ部8が真上方向に上昇して、固定レール5から上方に持ち上げると共にこの車輪持ち上げローラ部8が回転することで回転状態となる。
【0025】
また、ベース部9に設けたバイト部3がベース部9の移動によって縁切り部7に位置し、この縁切り部7からバイト部3が傾斜状態に突設して、回転状態の車輪1のレール接触面4に当接し、車輪1を切削することとなる。
【0026】
また、車輪1の切削を終えた際には、バイト部3が縁切り部7下方へ退避し、車輪持ち上げローラ部8の回転が止まり、車輪1を支持した状態で下降して車輪1を固定レール5上に戻し、車輪持ち上げローラ部8は固定レール5下方に退避することとなる。
【0027】
また更に、次の車輪1を切削するために車両2が移動する際に、ベース部9が移動し、補助レール部10がバイト部3に代わって縁切り部7に介在状態に配置し、固定レール5と固定レール5の間のレールを縁切りした縁切り部7が補助レール部10によって埋められ、固定レール5間が結ばれるので、車両2が縁切り部7の段差の影響を受けることなくスムーズに移動することができることとなる。
【0028】
このように床下型車輪旋盤を構成したことで、従来必要であった移動レール30が不要となり、レールシステムは固定レール5のみの構成となり、よって、従来機では必要であったメンテナンス(例えば、車輪を下ろす際に移動レール30に掛かる大きな衝撃により移動機構の移動精度のズレを定期的に確認、調整する作業など。)をする必要がなくなり、レールシステム自体が非常に簡素化され管理も容易なものとなる。
【0029】
また、例えば、ベース部9にバイト部3と補助レール部10とを固定レール5の長さ方向と直交する固定レール5の幅方向に並設し、ベース部9が固定レール5の長さ方向と直交する固定レール5の幅方向にスライド移動することで、車輪1のレール接触面4を切削するときは、バイト部3が縁切り部7に位置し、車両2が縁切り部7を通過し移動するときは、バイト部3が退避し補助レール部10が縁切り部7に位置する構成としたので、バイト部3と補助レール部10は移動機構を共有化し、これらバイト部3と補助レール部10の2つを1つの移動機構で移動させ、しかも、バイト部3若しくは補助レール部10のいずれか一方を移動することで、他方も同時に移動し目的の位置に配置することができる構成としているので、移動機構の動作が単純なものとなり、装置を簡素化且つ小型化することができる。
【0030】
従って、上述したようにレールシステムにおける移動レール30がなくなり、更に、他の移動機構も簡素化且つ小型化することができることにより、大幅なコスト削減を実現可能とし、安価な床下型車両旋盤を提供することができることとなる。
【実施例】
【0031】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0032】
本実施例は、車輪1を車両2から外すことなく車輪1のレール接触面4を切削する際に、従来機のように固定レール5で引き込んだ車両2の切削を行う車輪1を移動レール30上に配置し、車輪持ち上げローラ部8にて車輪1を持ち上げてから移動レール30が退避し、バイト部3全体が移動してきて車輪1を切削する構成とは違い、固定レール5とバイト部3が干渉しない、即ち、移動レール30が無いレールシステムを構築し、更に、装置全体を簡素化し小型化した画期的な床下型車輪旋盤である。
【0033】
具体的には、車両2をメンテナンスエリアに引き込むための固定レール5に、この固定レール5の幅方向の一部を凹状に切欠いた車輪持ち上げローラ出入部6と、固定レール5を縁切りした縁切り部7とをレール長さ方向に並設し、車両2進行方向となる前方に向って車輪持ち上げローラ出入部6、固定レール5、縁切り部7の順に配置し、車輪1を切削する前後は、この車輪持ち上げローラ出入部6と縁切り部7の間の固定レール5に切削する車輪1が接地する構成としている。
【0034】
この車輪持ち上げローラ出入部6は、固定レール5をこの固定レール5の長さ方向に沿って半分削り落とした形状の半幅固定レール部12と凹状切欠き空間部13で構成し、この車輪持ち上げローラ出入部6の長さは、後述する車輪持ち上げローラ部8が通過することができる程度に形成している。
【0035】
また、この車輪持ち上げローラ出入部6は、切削する車輪1の接地点14の後方に近設しており、接地点14から離れるほど車輪持ち上げローラ部8の上昇移動距離が長くなると共に車両2を前方に進めようとする力が大きくなるので、できるだけ切削する車輪1の接地点14に近いほうが望ましい。
【0036】
また、本実施例では、車輪持ち上げローラ出入部6を車輪1に対して1箇所しか設けず、従来のように対になっている状態で車輪1を持ち上げずに、1つの車輪持ち上げローラ部8のみで車輪を持ち上げる構成としている。
【0037】
このような構成とすることで、従来はレールと干渉するためにレールを移動させないと作業するための動作ができなかったバイト部3を、この車輪持ち上げローラ出入部6と併設する縁切り部7から突出させて車輪1を切削することができることとなる。
【0038】
この縁切り部7は、固定レール5を長さ方向に切除して形成し、この縁切り部7の長さを後述するバイト先端部15が突出可能な最小幅に形成している。
【0039】
更に、縁切り部7の前方に位置する縁切り面16を、この縁切り面16の上端から前方に向かって傾斜する傾斜面に設け、この縁切り部7のレール長さ方向に沿った断面を略台形形状となるように形成している。
【0040】
このように車輪持ち上げローラ出入部6と縁切り部7を構成したことで、従来機では必要であり、また、レールシステムにおける懸念点でもあった移動レール30を削除することができ、装置を簡素化すると共に、メンテナンス工数が大幅に改善され、より信頼性の高い装置とすることができることとなった。
【0041】
また、車輪持ち上げローラ出入部6と縁切り部7を配置した固定レール5に車両2を引き込み、車輪持ち上げローラ出入部6と縁切り部7の間の固定レール5上の所定の位置に切削する車輪1が来るように車両2を停車させ、更に、車輪1切削を行う車輪1を持ち上げた際に車両2が動かないように、車輪1切削を行う車輪1の前後2つの車輪1に夫々、車輪1を固定する車輪止め部11を設けて車輪1を固定レール5に固定することで車輪1を持ち上げ、切削可能な状態とすることができる。
【0042】
尚、本実施例では車輪止め部11を切削する車輪1の前後2箇所に設けているが、車輪1を持ち上げた際に車両2を固定し得る状態とするものであれば幾つ設けても良い。
【0043】
また、このように車両2を固定した状態で、切削する車輪1の真下となる固定レール5との接地点14より稍後方に設けた車輪持ち上げローラ出入部6の下方から車輪持ち上げローラ部8を上昇させ、車輪1のレール接触面4に当接し車輪1を上方に持ち上げると共に、この持ち上げた車輪1に当接している車輪持ち上げローラ部8の先端が回転し、車輪1を回転させる構成としている。
【0044】
この車輪持ち上げローラ部8は、水平方向に突設した円筒形基体17の先端にローラ先端部18を回転自在に設け、このローラ先端部18が固定レール5の下方から車輪持ち上げローラ出入部6を通過し上昇して、車輪1に当接し、車輪1を持ち上げ回転させたり、また、作業が終了したら下降し、車輪1を固定レール5上に下ろしたりしている。
【0045】
この車輪持ち上げローラ部8で持ち上げて回転させている車輪1に、縁切り部7より突出したバイト部3がこの車輪1のレール接触面4に当接し、所定の形状にレール接触面4を切削加工する構成としている。
【0046】
このバイト部3は、切削する車輪1の接地点の稍前方に設けた縁切り部7から、後方に傾きながら車輪1のレール接触面4に直角に当接する構成としている。
【0047】
更に、このバイト部3は、車輪1を切削する刃を有するバイト先端部15と進退機構を有するバイト基体部19とで構成し、バイト基体部19が後述するベース部9に固設され、バイト先端部15がバイト基体部19に進退自在に設けられ、車輪1を切削するときは縁切り部7から突出状態となり、切削が終了したら元の固定レール5の下に退避移動する構成としている。
【0048】
また、このバイト部3を設けたベース部9は、レール幅方向にスライド移動する移動機構を有し、バイト先端部15と後述する補助レール部10をレール幅方向の同一線上に設けた構成とし、このベース部9が固定レール5の幅方向のスライド移動のみによって、縁切り部7にバイト部3を配置したり、補助レール部10を配置したりすることができる構成としている。
【0049】
また、この補助レール部10は、縁切り部7と略同等の長さで固定レール5と同様の形状に形成し、ベース部9の上端部にベース部9と一体に設け、車輪1の切削が終了し、次の車輪1を切削するために車両2が前方に移動する際に、バイト先端部15を突出するために設けた縁切り部7の段差を通過することによる衝撃を回避するために、ベース部9が固定レール5幅方向にスライド移動し、この補助レール部10が縁切り部7に配置し、縁切り部7を埋め、固定レール5を結ぶことによって車両2をスムーズに通過させることができる構成としている。
【0050】
このようにバイト部3と補助レール部10をベース部9に配置したことで、車輪1を切削するときは縁切り部7からバイト部3が突出する位置に移動し、車輪1切削が終わり、バイト部3が退避し、次の車輪1を切削するために車両2が移動する際に、縁切り部7に補助レールが介在する位置に移動し車両2をスムーズに通過させることができ、この2つの移動動作が同時に行われる構成となっているので、車輪1切削の一連の作業時間を短縮可能とし、また、従来は、ベース部9と移動レール30の2つの移動機構が必要であったのに対して、本実施例は、レールシステム側の移動機構を排除し、ベース部9の1つの移動機構のみをバイト部3と補助レール部10で共有化したことで、装置の簡素化及び小型化が図られ、更に、製造コストも大幅に削減することができ、従って、製品を安価に提供することができる画期的な床下型車輪旋盤となる。
【0051】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0052】
1 車輪
2 車両
3 バイト部
4 レール接触面
5 固定レール
6 車輪持ち上げローラ出入部
7 縁切り部
8 車輪持ち上げローラ部
9 ベース部
10 補助レール部
11 車輪止め部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の車輪を車両から外すことなく前記車輪の下方からバイト部で前記車輪のレール接触面を切削する床下型車輪旋盤であって、前記車両をメンテナンスエリアに引き込むための固定レールに、この固定レールの幅方向の一部を凹状に切欠いた車輪持ち上げローラ出入部と、前記固定レールを縁切りした縁切り部とをレール長さ方向に並設し、前記固定レールの下方に前記車輪持ち上げローラ出入部から出入りし前記車輪を持ち上げながら回転させる車輪持ち上げローラ部を昇降自在に設け、且つ少なくとも前記固定レールの長さ方向と直交する固定レールの幅方向に移動するベース部を設け、このベース部に、前記縁切り部から傾斜状態に突出し前記車輪のレール接触面に当接して切削する前記バイト部と、前記縁切り部を車両が通過する際には前記縁切り部に介在する補助レール部とを設けたことを特徴とする床下型車輪旋盤。
【請求項2】
前記ベース部に前記バイト部と前記補助レール部とを前記固定レールの長さ方向と直交する固定レールの幅方向に並設し、前記ベース部が前記固定レールの長さ方向と直交する固定レールの幅方向にスライド移動することで、前記車輪のレール接触面を切削するときは前記バイト部が前記縁切り部に位置し、前記車両が前記縁切り部を通過し移動するときは前記バイト部が退避し前記補助レール部が前記縁切り部に位置する構成としたことを特徴とする請求項1記載の床下型車輪旋盤。
【請求項3】
前記車輪持ち上げローラ出入部と前記縁切り部の間の前記固定レールに前記切削を行う車輪が切削前及び切削後に接地する構成としたことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の床下型車輪旋盤。
【請求項4】
前記切削を行う車輪が切削前及び切削後に接地する接地点の前記固定レール長さ方向の前後いずれか一方側に前記車輪持ち上げローラ出入部を、他方側に前記縁切り部を近設して、前記縁切り部から前記切削する車輪側に傾斜状態に突出するバイト部が前記切削する車輪のレール接触面に当接する構成としたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の床下型車輪旋盤。
【請求項5】
前記車輪持ち上げローラ部が前記車輪持ち上げローラ出入部下方から真上方向に上昇し前記車輪を持ち上げる際に、前記車両を移動不能状態とする車輪止め部を、前記切削を行う車輪の少なくとも前後いずれか一方の前記車輪に設置したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の床下型車輪旋盤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−31312(P2011−31312A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−176959(P2009−176959)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(391029819)株式会社オーエム製作所 (34)
【Fターム(参考)】