説明

床下用吸着シ−ト

【課題】 家屋の床下で発生し、健康に害を及ぼす可能性のある有害ガスを吸着する。
【解決手段】 通気性を有し、凹凸のあるシ−トに吸着体を固着させ、床下用吸着シ−トとする。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は最近の木造住宅の事情、即ち高気密高断熱化および高耐久性を考慮した床下用資材、即ち床下に白蟻発生防止のために散布されている白蟻駆除剤や、基礎構造木材に含浸ないし塗布された防腐剤から発生する気化ガスを、人体が吸着して健康に害がおよぶことを防止するために開発された床下用吸着シ−トに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
最近の住宅は省エネルギ−のため、高気密、高断熱工法がとられており、また住宅構造物の耐久性を向上させるために床下構造材、即ち土台、大引、根太などや、地盤に白蟻駆除剤や防腐剤を含浸させ、または塗布および散布することで耐久性を向上させている。
【0003】
この様な高気密高断熱化、高耐久性住宅では、床下や床下材に含浸または塗布および散布された白蟻駆除剤や防腐剤薬剤に用いられる薬剤が、極微量ながらも気化し、これらの気化ガスは床下に滞留する。
そしてこれらの気化ガスは、床板を透って住宅室内に充満するものと考えられる。
この様な白蟻駆除剤や防腐剤に用いられる薬剤より気化したガスには、発ガン性の物質が含まれ、また悪臭が発生することから、人体に害をおよぼす恐れがあると考えられる。
【0004】
上記の対策として従来は、木炭を床下に直接置く方法(実用新案登録第3032372号)や、微細多孔質板にオゾンを通過させる脱臭ボ−ド(特開平8−717号)や、芯材の石膏にゼオライト粒子を混在させた建材(特願平9−125538号)を使用する方法等があった。
しかしながらこれらの方法は、いずれも脱臭効果が悪く、更に美観を損なう、高価であるなどの問題点があり、また工事施工においても取扱が不便であるという欠点があった。
【0005】
【考案が解決しようとする課題】
本考案はこの様な課題に鑑みなされたものである。
その目的とするところは、透湿性があり更に予想される有害ガスを吸着し、住宅室内への浸入を防止して健康阻害を回避するものであり、しかも軽量で柔軟性に富み取扱い易く、脱臭性能の優れた床下用吸着シ−トを提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本考案は、これらの課題を解決するために鋭意研究した結果なされたものであり、その構成は次のとおりである。
すなわち、本考案は1.通気性を有し表面に凹凸のあるシ−トにシ−トの通気性を阻害しない状態で吸着体を固着したことを特徴とする床下用吸着シ−トに存する。
また2.通気度0.1〜100cc/cm2/secであり、密度が0.01〜1.0g/cm3である1.記載の床下用吸着シ−トに存する。
また3.凸部の高さが0.1〜3.0mm、面積比が通気性シ−ト表面の10〜70%である1.記載の床下用吸着シ−トに存する。
また4.吸着体が、平均粒子径1.0〜30.0μm、細孔の比表面積100〜5,000cm2/gである1.記載の床下用吸着シ−トに存する。 また5.吸着体が、シ−ト材に対し重量比で10〜50%固着している1記載の床下用吸着シ−トに存し、以上を用いて上記課題を解決しようとするものである。
【0007】
次に、本考案の床下用吸着シ−トの主要構成について説明する。
【0008】
本考案に用いるシ−トの基材としては、通気性のある各種の合成繊維あるいは天然繊維の単独ないし混合糸からなる編織布或いは不織布、フエルト等が用いられる。
通気性を有するシートは、密度 0.01〜1.0cm3が適当であり、好ましくは0.05〜0.8g/cm3が好適である。
【0009】
次にシ−トを臭気等を吸着する床下材として使用する場合、吸着率を向上させるために、臭気等のガスとシ−トとの接触面積を増大させることが考えられる。
その方法として表面に凹凸をつけることが有効である。
すなわち、図3に示すようにシ−トに凹凸(7)を付けることによって、合板(2)や床板(6)と吸着シ−ト(3)との間の空間が増大し、臭気などのガス吸着能が向上する。
【0010】
また、シ−トに凹凸を付与する方法としては、編織布或いは不織布、フェルトなどの製織ないし製造時に付与する方法と、シ−ト状の状態で強制的に付与する方法とがある。
後者の方法としては、加熱し得る炭素鋼製のロ−ラに適当な深さの彫刻を施した型付けカレンダ−の使用や、加熱下のもとロ−プ状で連続的にシワを付与する方法などがあるが、これらに特定されるものではない。
【0011】
本考案のシ−トに強制的に凹凸を付与する場合、形状保持の点から、素材としては合成繊維か化学繊維、もしくはそれらと天然繊維との混合品からなるシ−トが望ましい。
【0012】
本考案に用いる吸着剤は、吸着性能を効率良く発揮させるために、吸着物質は一定の粒状の形状に成形しておく必要があり、平均粒子径1.0〜30.0μm、細孔の比表面積100〜5,000cm2/gが好適である。
具体的には、活性炭、シリカゲル、ゼオライト等の多孔質体を単独、或いは混合して用いられる。
粒子径はコールターカウンター法により、比表面積は簡易BET法により求めた。
【0013】
次に吸着剤のシ−トへの担持方法としては、通常の方法、例えばシ−ト材を処理液に浸漬しマングルで所定量まで絞るパッティング・マングル法、また片面のみに付与するグラビアロール法、同じく片面のみに付与するコーティング法、含浸しスリットロールでしごく方法等が適用できるが、これらの方法に特定されるものではない。
【0014】
吸着剤のシ−トへの付与量はシ−ト材に対し、重量比で10〜50%、好ましくは20〜40%の固形分量の吸着剤を固着させる。
【0015】
本考案に使用する固着剤としては、ポリビニ−ルアルコ−ル、ポリ酢酸ビニ−ル、ポリエポキシ、アクリル酸エステル、ポリエステル、ポリウレタン等の合成樹脂が用いられる。
【0016】
次に、本考案を図面に基づき更に詳細に説明する。
【0017】
図2および図3は、吸着シ−トの住宅床下材への実施例を示したもので、根太(4)と合板(2)または床板(6)の間に床下用吸着シート(3)を配したものであり、更に図3は、吸着シ−トに付与した凹凸(7)の拡大図をあわせて示したものである。
また、直接床下地盤の上に吸着シ−ト(3)を敷いても、前述と同様の効果が期待できる。
更に、吸着シ−ト(3)の片面に格子やストライプ状の線を等間隔にて予め印刷または捺染にて書き込んでおけば、吸着シ−ト(3)を住宅に施工する場合、作業性の向上を図ることができる。
【0018】
【実施例】
次に本考案の実施例について述べるが、本考案は必ずしも以下の実施例に限定されるものではない。
【0019】
【実施例1】
基材のシートとして、一般的に用いられている不織布(通気度80cc/cm2/sec、目付け120g/cm2、見掛け密度0.48g/cm3、エステルスパンボンド(ユニチカ(株)社製)を用いた。
次に、表1に示した実施例1に従い 吸着剤 クラレコ−ルGG (クラレケミカル(株)社製)
(活性炭、粒子径−5μm) シリシア440 (富士シリシア化学(株)社製)
(シリカゲル、粒子径−5μm) 固着剤 ウルトラゾ−ルK50(ガンツ化成(株)社製)
(アクリル樹脂、固形分45%)
水 からなる組成液を調整した。
次に、基材のシ−トに組成液をマングルにて付与した。マングルのピックアップは160%であった。
次いで、温度170℃にてチャンバ−内で乾燥し、最後にカレンダ−(ユリロ−ル(株)社製)を使用し、180℃×3ton×20m/分の条件にて凹凸加工を施した。
これにより、凸部の高さ1.2mm、凸部の面積を通気性シ−ト表面の50%とした吸着シ−トを得ることができた。
【0020】
【実施例2】
実施例1と同様のシ−トを用い、表1に示した実施例2の組成液を作成した。
その後、実施例1と同条件にて処理した。
これにより、凸部の高さ1.2mm、凸部の面積通気性シ−ト表面の50%とした吸着シ−トを得ることができた。
【0021】
【比較例1】
実施例1と同様のシ−トを用い、表1に示した比較例1の組成液を作成した。
次に、基材のシ−トに組成液をマングルにて付与した。マングルのピックアップは160%であった。
次に温度170℃のチャンバ−内にて乾燥した。
【0022】
【比較例2】
実施例1と同様のシ−トを用い、表1に示した比較例2の組成液を作成し、比較例1と同様の処理を施した。
【0023】
【表1】


【0024】
【試験例】
次に本考案の試験例について図面を参照し説明する。
【0025】
図1は表1に示した組成液を用い、得られた本考案の吸着シ−ト及び比較とした吸着シ−トを使い、有害ガスとしてベンゼンを用いて行った吸着モデル試験の結果を示している。
図1において吸着剤に活性炭を多く使用した実施例1の方が速効性がある事を示しているが、30時間後を比較すると、原価的に安く製造できる実施例2の方法でも、同等の効果が得られる事を示している。
またシ−トの凹凸加工の有無比較では、凹凸無しの比較例1及び比較例2に対し、凹凸有りの実施例1及び実施例2の方がそれぞれ20〜40%、特に長時間後で吸着効果が優れていることを示している。
【0026】
本考案が優れる原因として、凹凸によりシ−トと臭気等のガスの接触面積の増大と、凹凸加工により皮膜破壊された表面部分からの吸着の増大が考えられる。
【0027】
本考案の効果を示す試験方法は、次のような方法で行った。
【0028】
シ−ト(40cm×40cm)をTEDLARバック(30L)に入れ、所定濃度量のベンゼンを窒素ガスとミックスしながら封入する。
そして、所定時間毎に、ガス検地管で吸引し、残留ベンゼン濃度を測定した。
【0029】
【本考案の効果】
本考案に於ける吸着シ−トは、床下に散布または含浸及び塗布された白蟻駆除または防腐剤の気化ガスを効率的に吸着することができる。
その結果、新築住宅に入居者が入るときに感ずる異臭もなく、またその後の入居者のシックハウス病等の心配もなく快適な生活が出来る。
更に、本考案の吸着シ−トは、取扱いが容易であることから床下の吸着材としてのみならず、壁下、天井裏等に使用することにより発生が予想される異臭性ガスや毒性薬剤ガスの吸着にも有効に利用可能である。
【提出日】平成9年12月19日

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 通気性を有し表面に凹凸のあるシ−トにシ−トの通気性を阻害しない状態で吸着体を固着したことを特徴とする床下用吸着シート。
【請求項2】 通気度0.1〜100cc/cm2/secであり、密度が0.01〜1.0g/cm3であることを特徴とする請求項1記載の床下用吸着シ−ト。
【請求項3】 凸部の高さが0.1〜3.0mm、凸部の面積比が通気性シ−ト表面の10〜70%であることを特徴とする請求項1記載の床下用吸着シ−ト。
【請求項4】 吸着体が、平均粒子径1.0〜30.0μm、細孔の比表面積100〜5,000cm2/gであることを特徴とする請求項第1記載の床下用吸着シ−ト。
【請求項5】 吸着体が、シ−ト材に対しに重量比で10〜50%固着していることを特徴とする請求項1記載の床下用吸着シ−ト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【登録番号】第3049400号
【登録日】平成10年(1998)3月25日
【発行日】平成10年(1998)6月9日
【考案の名称】床下用吸着シ−ト
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願平9−10546
【出願日】平成9年(1997)11月28日
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)