説明

床装置およびこれに用いられる床パネル

【課題】人に違和感を与えずに発電効率を十分に高めることができる床装置およびこれに用いられる床パネルを提供する。
【解決手段】床装置は、床材1と、床材1の振動によって発電する発電装置2と、発電装置2の発電によって充電する蓄電池32を含む蓄電装置3とを備える。発電装置2は、圧電素子よりなる圧電体51および圧電体51より面積が広く圧電体51に同心状に設けられた振動板52を有する圧電振動子5と、振動板52と結合して圧電振動子5の周囲に設けられた薄厚部材6と、薄厚部材6の外周部で薄厚部材6を支持し、床材1に接して設けられた支持部材8とを含む。発電装置2は、支持部材8を介して床材1の振動が薄厚部材6および圧電振動子5に伝達して圧電振動子5が変形することによって発電する。薄厚部材6は、外周方向に山部622および谷部621の少なくともいずれかを含むコルゲーション62が環状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電機能を有する床装置およびこれに用いられる床パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から家庭内の電力は電力会社から供給されているが、最近は温室効果ガスを排出しない太陽光発電パネルを取り付けて、自前で電力を賄う家が多くなってきている。
【0003】
ところが、太陽光発電は、太陽光エネルギーを直接電力に変換するため、発電量が天候に左右され、夜間に発電することはできない。また、大掛かりな太陽光発電パネルを屋根の上に取り付けるため、家のデザインの邪魔になり、美観を大きく損なうという問題があった。
【0004】
このような問題を解決する手段として、特許文献1には、圧力によって発電する発電装置が開示されている。特許文献1に記載された発電装置は、圧電素子と振動板とが接合された構造を有し、圧電素子の中心が軸に支えられ、振動板の周囲が他の軸に支えられている。振動板を支えている軸は、圧力が直接加わる緩衝板に接合されている。この発電装置は、緩衝板に圧力が加わると、てこの原理を利用して圧電素子を変形させることによって、発電することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−154745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された従来の発電装置では、圧電素子の変形が小さいため、圧電素子の変形によって発生する発電の効率を十分に高めることができない、という問題があった。
【0007】
また、特許文献1に記載された従来の発電装置では、てこの原理を利用して圧電素子を変形させるため、緩衝板を沈み込ませる必要があった。このため、住宅などの床に設置されると、歩くたびに住人に違和感を与えることになる。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みて為され、本発明の目的は、人に違和感を与えずに発電効率を十分に高めることができる床装置およびこれに用いられる床パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の床装置は、床材と、前記床材の振動によって発電する発電装置と、前記発電装置の発電によって充電する蓄電池を含む蓄電装置とを備え、前記発電装置は、圧電素子よりなる圧電体および前記圧電体より面積が広く当該圧電体に同心状に設けられた振動板を有する圧電振動子と、前記振動板と結合して前記圧電振動子の周囲に設けられた薄厚部材と、前記薄厚部材の外周部で当該薄厚部材を支持し、前記床材に接して設けられた支持部材とを含み、前記支持部材を介して前記床材の振動が前記薄厚部材および前記圧電振動子に伝達して前記圧電振動子が変形することによって発電し、前記薄厚部材は、外周方向に山部および谷部の少なくともいずれかを含むコルゲーションが環状に形成されていることを特徴とする。
【0010】
この床装置において、前記蓄電装置は、前記圧電振動子の変形によって発生した交流電圧を直流電圧に変換して前記蓄電池に供給するAC/DCコンバータを含むことが好ましい。
【0011】
この床装置において、1つの前記床材に対して前記発電装置が複数設けられていることが好ましい。
【0012】
この床装置において、前記薄厚部材は、前記圧電振動子と前記薄厚部材とからなる振動体が共振するときの定在波の腹になる位置に前記コルゲーションが形成されていることが好ましい。
【0013】
この床装置において、前記支持部材は、互いに嵌め合った状態で位置固定される第1の支持体および第2の支持体を有し、前記第1の支持体および前記第2の支持体が位置固定されたときに当該第1の支持体および当該第2の支持体が嵌め合う部位で前記薄厚部材の外周部を挟持して当該薄厚部材を支持することが好ましい。
【0014】
この床装置において、前記薄厚部材は、前記圧電振動子の振動方向に突出して前記第1の支持体および前記第2の支持体に挟持されることが好ましい。
【0015】
本発明の床パネルは、前記床装置に用いられる床パネルであって、床材と、前記床材の振動によって発電する発電装置とを備え、前記床材の内部には空洞が形成され、前記発電装置は、前記床材の前記空洞に内蔵されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、薄厚部材にコルゲーションが形成されることによって、床材の振動で圧電振動子の変位を高くすることができるので、人に違和感を与えずに発電量を多くすることができ、発電効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態1に係る床装置の構成を示す概略図である。
【図2】同上に係る床装置の外観斜視図である。
【図3】同上に係る圧電振動子の構成図である。
【図4】同上に係る圧電振動子および薄厚部材であって、(a)は固着前の分解斜視図、(b)は固着後の斜視図である。
【図5】同上に係る薄厚部材の製造方法を時系列に示す図である。
【図6】同上に係る振動体を発音体として用いた場合の音圧レベル特性を示す図である。
【図7】同上に係る薄厚部材の変形例であって、(a)はコルゲーションとして谷部、山部が形成されている場合の断面図、(b)はコルゲーションとして山部、谷部が形成されている場合の断面図、(c)はコルゲーションとして谷部のみが形成されている場合の断面図、(d)はコルゲーションとして山部のみが形成されている場合の断面図である。
【図8】同上に係る圧電振動子および薄厚部材の変形例であって、固着前の分解斜視図である。
【図9】実施形態2に係る床装置のコルゲーションの位置を説明する図である。
【図10】同上に係る床装置の振動体の変位を示す図である。
【図11】実施形態3に係る床装置の要部を示す図である。
【図12】同上に係る振動体を発音体として用いた場合の音圧レベル特性を示す図である。
【図13】実施形態4に係る床装置の要部であって、(a)は前面側支持体と後面側支持体とが嵌め合う前の断面図、(b)は前面側支持体と後面側支持体とが嵌め合った状態の断面図である。
【図14】実施形態5に係る床装置の要部であって、(a)は前面側支持体と後面側支持体とが嵌め合う前の断面図、(b)は前面側支持体と後面側支持体とが嵌め合った状態の断面図である。
【図15】実施形態6に係る床装置に用いられる床パネルであって、(a)は床材の内部を示す斜視図、(b)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の実施形態1〜6では、発電機能を有する床装置について説明する。各実施形態の床装置は、例えば住宅などに取り付けられて用いられる。取り付けられる場所としては、例えば居間または廊下などがある。また、各実施形態の床装置は、ベランダなどで子供が遊ぶためのフロアパネルとして用いることもできる。
【0019】
(実施形態1)
実施形態1に係る床装置は、図1に示すように、床材1と、床材1の振動によって発電する複数(図示例では2つ)の発電装置2,2と、各発電装置2の発電によって充電する蓄電池32を有する蓄電装置3とを備えている。床材1と発電装置2とで床パネルを構成する。
【0020】
床材1は、図2に示すように、厚さ1mm〜3mm程度の木材をそれぞれ木目が互いに直交するように重ね、熱と圧力とをかけて接着されて形成された積層合板である。床材1の表面には、厚み数百μmの化粧板(木目調)が貼り付けられ、塗装されている。
【0021】
図1に示す発電装置2は、振動体4と、弾性体7と、支持部材8とを備えている。振動体4は、圧電振動子5と薄厚部材6とからなる。
【0022】
圧電振動子5は、圧電体51と振動板52とが積層されたユニモルフ構造である。図3に示すように、圧電体51および振動板52は、ともに円板形状である。
【0023】
圧電体51は、圧電効果を有する圧電素子(ピエゾ素子)からなる。圧電素子としては、例えば厚さが0.05mm以上0.15mm以下のチタン酸ジルコン酸鉛(PZT、lead zirconium titanate)が用いられている。チタン酸ジルコン酸鉛は、三元系金属酸化物であるチタン酸鉛とジルコン酸鉛の混晶である。本実施形態で用いられるチタン酸ジルコン酸鉛の密度は、8.0×10kg/cmである。
【0024】
振動板52は、圧電体51より直径が長くて面積が大きく、例えば厚さが0.1mm以上0.25mm以下の真鍮である。本実施形態で用いられる真鍮の密度は、8.4×10kg/cm以上8.5×10kg/cm以下の範囲である。圧電体51の厚さと振動板52の厚さは同等であることが好ましい。振動板52は、例えばエポキシ接着剤などによって、圧電体51と同心状に圧電体51の表面に接着される。
【0025】
なお、振動板52は、例えば厚さが0.05mm以上0.1mm以下の42アロイ(ニッケルを42%含む鉄ニッケル系合金)であってもよい。42アロイの密度は、8.15×10kg/cmである。
【0026】
圧電体51の表面には、厚さが2μm程度の銀によって電極が設けられている。図4(b)に示すように、圧電体51の電極にはリード線53が接続され、振動板52にはリード線54が接続されている。リード線53,54には、蓄電装置3と電気的に接続するためのコネクタ55が接続されている。圧電体51の電極とリード線53との接続および振動板52とリード線54との接続には、例えば鉛フリーはんだがそれぞれ用いられる。圧電体51および振動板52が振動すると、圧電体51の歪みによって、圧電振動子5に電圧が発生する。つまり、圧電振動子5は、圧電体51の変形によって発電する。
【0027】
薄厚部材6は、図4(a)に示すように、ドーナツ形状(環状)に形成された樹脂フィルム(プラスチックフィルム)である。樹脂フィルムとしては、例えばPEI(ポリエーテルイミド)やPC(ポリカボネイト)、PEN(ポリエーテルナフタレード)などの熱可塑性樹脂が用いられている。薄厚部材6の厚さは、75μm以上188μm以下の範囲が好ましい。薄厚部材6の内周部には、図1に示すような段差形状部61が形成されている。段差形状部61の内径は、圧電振動子5を周囲から嵌合することができる大きさである。薄厚部材6は、段差形状部61で圧電振動子5と嵌合した状態で、例えばシリコーン接着剤やエポキシ接着剤などによって、圧電振動子5(振動板52)に接着される。これにより、薄厚部材6は、図4(b)に示すように、振動板52と結合して、圧電振動子5の周囲に設けられる。上記のように薄厚部材6に段差形状部61が形成されていることによって、圧電振動子5が薄厚部材6に確実に取り付けられ、取付位置も一定にすることができる。
【0028】
薄厚部材6には、図1に示すように、外周方向に複数(図示例では3つ)の谷部621,621,621および複数(図示例では2つ)の山部622,622を含むコルゲーション62が環状に形成されている。薄厚部材6は、コルゲーション62によって外周方向に伸縮する蛇腹構造であり、圧電振動子5を弾性的に保持する。コルゲーション62としては、谷部621と山部622が交互に形成されていてもよいし、谷部621のみが連続して形成されていてもよいし、山部622のみが連続して形成されていてもよい。薄厚部材6がコルゲーション62を有する構成のほうが、薄厚部材6がコルゲーション62を有しない構成よりも、圧電振動子5の振動を大きくすることができるので、発電効率を高めることができる。
【0029】
薄厚部材6の製造方法について一例を説明する。まず、図5(a)に示すように、厚さが一定の樹脂フィルム91を金型92とゴム材93との間に置き、金型92を所定の温度に加熱する。金型92はコルゲーション62の形状に加工されている。その後、図5(b)に示すように、樹脂フィルム91を挟んで金型92をゴム材93に押圧する。その後、図5(c)に示すように、金型92を開いて樹脂フィルム91を取り外す。樹脂フィルム91には、金型92の形状にしたがってコルゲーション62が形成される。このようにコルゲーション62が形成された樹脂フィルム91が薄厚部材6となる。なお、上述の薄厚部材6の製造方法において、金型92を加熱するのではなく、樹脂フィルム91を加熱してもよい。また、上述の薄厚部材6の製造方法において、ゴム材93に代えて、圧縮空気であってもよい。
【0030】
なお、薄厚部材6は、樹脂フィルム91に代えて、木材パルプを原材料とする紙であってもよいし、コウゾ、ミツマタ、竹などの非木材植物を原材料とする紙であってもよい。また、薄厚部材6は、不織布であってもよいし、不織布に接着剤を含浸して剛性を持たせた材料であってもよい。さらに、薄厚部材6は、ポリエステルにウレタンコートを施した材料であってもよいし、チタンやアルミニウムなどであってもよい。
【0031】
図1に示す弾性体7は、例えば熱可塑性エラストマまたはポリウレタンフォームなどによって環状に形成された部材である。弾性体7は、後述の前面側支持体81と薄厚部材6との間に設けられている。
【0032】
支持部材8は、互いに嵌め合った状態で位置固定される前面側支持体81および後面側支持体82を備え、薄厚部材6の周囲に設けられている。前面側支持体81は第1の支持体としての機能を有し、後面側支持体82は第2の支持体としての機能を有している。
【0033】
前面側支持体81は、熱可塑性材料によって円筒状に形成された部材である。例えば、前面側支持体81には難燃性ABS樹脂が用いられている。前面側支持体81は、床材1に接触して固定されて設けられている。前面側支持体81は、弾性体7と同時成形(二色成形、ダブルモールド)によって形成される。これにより、前面側支持体81の後面(挟持面)811に弾性体7が設けられる。
【0034】
後面側支持体82は、熱可塑性材料によって円筒状に形成された部材である。例えば、後面側支持体82には難燃性ABS樹脂が用いられている。後面側支持体82の前面(挟持面)821には、凹所が形成されている。
【0035】
上記のような構造の前面側支持体81および後面側支持体82に対して、後面側支持体82の挟持面821に薄厚部材6の外周部が載置される。その後、前面側支持体81および後面側支持体82は、前面側支持体81の挟持面811と後面側支持体82の挟持面821とが対向し、前面側支持体81の挟持面811が後面側支持体82の凹所に入り込むことによって、互いに嵌め合う。その後、前面側支持体81および後面側支持体82は、互いに嵌め合った状態で位置固定される。前面側支持体81および後面側支持体82は、嵌め合った状態で位置固定されたときに前面側支持体81および後面側支持体82が嵌め合う部位で薄厚部材6の外周部を挟持して薄厚部材6を支持する。これにより、薄厚部材6が支持部材8に確実に取り付けられるので、支持部材8からの振動を薄厚部材6に伝達することができる。
【0036】
なお、前面側支持体81および後面側支持体82は、薄厚部材6を挟持した状態で接着剤によって接着固定されてもよい。接着剤としては、粘性の低いシリコーン接着剤や可視光硬化性樹脂が用いられる。
【0037】
このような構成の発電装置2は、支持部材8を介して床材1の振動が薄厚部材6および圧電振動子5に伝達して圧電振動子5が変形することによって発電する。
【0038】
蓄電装置3は、AC/DCコンバータ31と、蓄電池32とを備え、蓄電池32の充放電制御機能を有している。
【0039】
AC/DCコンバータ31は、圧電振動子5の変形により発生した交流電圧(交流電力)を直流電圧(直流電力)に変換して蓄電池32に供給する。床材1への振動は一定ではないから、圧電振動子5の振動ばらつきが大きくなる。つまり、AC/DCコンバータ31の入力電圧は変動が大きくなる。このため、AC/DCコンバータ31は、出力電圧の大きさを一定になるように調整している。これにより、AC/DCコンバータ31は、充電に適した電圧を蓄電池32に供給する。
【0040】
蓄電池32は、例えばニカド電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池または鉛蓄電池などであり、AC/DCコンバータ31で変換された直流電圧(直流電力)によって充電する。
【0041】
次に、本実施形態に係る床装置の動作について図1を用いて説明する。まず、床装置の上を人が歩いた場合に、床材1が振動する。床材1の振動は、支持部材8に伝達され、さらに薄厚部材6に伝達される。薄厚部材6は、床材1に連動して振動する。薄厚部材6の振動は、圧電振動子5に伝達される。発電装置2は、圧電振動子5の振動により、発電する。その後、蓄電装置3において、AC/DCコンバータ31が交流電圧を直流電圧に変換し、蓄電池32が充電する。
【0042】
上記の動作において、薄厚部材6にコルゲーション62が形成されているので、薄厚部材6の振動が大きくなる。それに伴い、圧電振動子5の振動も大きくなる。その結果、発電装置2での発電効率を高めることができる。
【0043】
図6は、本実施形態の振動体4を発音体として用いた場合の音圧レベル特性(図6の(1))を示す。振動体4の変位量と音圧レベルとには相関があり、音圧レベルが高くなるほど変位量も大きくなる。図6には、比較例として、薄厚部材にコルゲーションが形成されていない振動体(比較例1)の音圧レベル特性(図6の(2))と、薄厚部材6のない振動体(比較例2)の音圧レベル特性(図6の(3))とが示されている。本実施形態の振動体4は、直径35mmの圧電振動子5にドーナツ形状の薄厚部材6が接着されて直径50mmとした構成である。比較例1は、直径35mmの圧電振動子に、コルゲーションのない薄厚部材が接着されて直径50mmとした構成である。比較例2は、直径50mmの圧電振動子のみである。図6の音圧レベル特性は、これらの振動体に40Vp−pの電圧を印加して、振動体から1m前方の位置における音圧レベルを測定した結果である。本実施形態の振動体4は、図6(b)に示すように、比較例1および比較例2に比べて、最大(3次共振付近)の音圧レベルが高くなっている。
【0044】
これにより、本実施形態の振動体4の変位量は比較例1および比較例2よりも大きいといえるから、本実施形態の発電装置2では、発電量を多くすることができる。
【0045】
以上の説明より、本実施形態の床装置では、圧電振動子5の周囲に設けられた薄厚部材6にコルゲーション62が形成されることによって、薄厚部材6も反曲して圧電振動子5の変形(振動)を大きくすることができる。これにより、発電量を多くすることができ、発電効率を高めることができる。
【0046】
本実施形態のように居室内での人の移動によって生じる振動を利用して発電する方式は、天候に左右されず、かつ、床材1の表面側から発電装置2が見えないので、デザイン性を損なうこともない。したがって、居住者が意識することなく、発電装置2で発電させることができる。
【0047】
また、本実施形態の床装置によれば、圧電振動子5の変形によって発生した交流電圧を直流電圧に変換することによって、蓄電池32への蓄電を容易に行うことができる。
【0048】
さらに、本実施形態の床装置によれば、複数の圧電振動子5,5の各々の変形によって発生した電荷の合計を蓄電池32に蓄電させることができるので、発電効率をさらに高めることができる。
【0049】
なお、本実施形態のコルゲーション62としては、図7(a)(b)に示すように谷部621と山部622の両方が形成されていてもよいし、図7(c)に示すように谷部621のみが形成されていてもよいし、図7(d)に示すように山部622のみが形成されていてもよい。
【0050】
本実施形態の変形例として、薄厚部材6は、図8に示すように、円板状に形成された樹脂フィルム(円形樹脂フィルム)であってよい。本変形例においても、本実施形態と同様に、薄厚部材6は、振動板52と結合して圧電振動子5の周囲に設けられる(図4(b)参照)。
【0051】
また、前面側支持体81および後面側支持体82は、薄厚部材6の外周部全体を挟持して薄厚部材6を支持するのではなく、薄厚部材6の外周部の一部を挟持して薄厚部材6を支持してもよい。例えば、前面側支持体81および後面側支持体82は、薄厚部材6の中心を挟んで対向する位置(2点)で薄厚部材6の外周部を挟持してもよいし、薄厚部材6の外周方向において120°ごとに離れた位置(3点)で薄厚部材6の外周部を挟持してもよい。また、前面側支持体81および後面側支持体82は、薄厚部材6の外周方向において90°ごとに離れた位置(4点)で薄厚部材6の外周部を挟持してもよい。この場合、弾性体7としては、環状に形成された部材ではなく、挟持位置の大きさに応じた部材を用いればよい。なお、前面側支持体81および後面側支持体82が薄厚部材6を挟持する位置の数は、2点〜4点に限定されず、5点以上であってもよい。
【0052】
本実施形態の変形例として、弾性体7は、前面側支持体81と薄厚部材6との間ではなく、後面側支持体82と薄厚部材6との間に設けられていてもよい。本変形例の床装置は、後面側支持体82と弾性体7とが熱可塑性材料であって同時成形されることによって、後面側支持体82と弾性体7とを一体にした構造を実現することができる。
【0053】
また、弾性体7は、前面側支持体81と薄厚部材6との間と、後面側支持体82と薄厚部材6との間との両方に設けられていてもよい。つまり、床装置に2つの弾性体7が設けられていてもよい。この場合、前面側支持体81と後面側支持体82と弾性体7とが熱可塑性材料であって、前面側支持体81と一方の弾性体7とが同時成形され、後面側支持体82と他方の弾性体7とが同時成形される。これにより、前面側支持体81と一方の弾性体7とを一体にした構造および後面側支持体82と他方の弾性体7とを一体にした構造を実現することができる。
【0054】
(実施形態2)
実施形態2に係る床装置は、薄厚部材6において、後述するような特定の位置にコルゲーション62が形成されている点で、実施形態1に係る床装置と相違する。なお、実施形態1の床装置と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0055】
本実施形態の薄厚部材6は、図9に示すように、振動体4が共振するときの定在波の腹になる位置にコルゲーション62が形成されている。なお、実施形態1の薄厚部材6と同様の機能については説明を省略する。
【0056】
図10は、振動体4の3次共振付近の周波数の振動に対して、薄厚部材6において腹になる位置にコルゲーション62が形成されている場合(図10の実線)と、薄厚部材6において腹以外の位置にコルゲーション62が形成されている場合(図10の破線)との変位特性を示す。
【0057】
図9の変位特性では、薄厚部材6において腹になる位置にコルゲーション62が形成されている場合のほうが、薄厚部材6の変位が大きいだけではなく、圧電振動子5の変位も大きくなっている。
【0058】
以上、本実施形態の床装置によれば、振動体4が共振するときの定在波の腹になる位置にコルゲーション62が形成されていることによって、圧電振動子5の変位をさらに大きくすることができるので、圧電効率をさらに高めることができる。
【0059】
(実施形態3)
実施形態3に係る床装置は、図11に示すように前面側支持体81および後面側支持体82の挟持面811,821がテーパ状に形成されている点で、実施形態1に係る床装置(図1参照)と相違する。なお、実施形態1の床装置と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0060】
本実施形態の前面側支持体81の挟持面811と後面側支持体82の挟持面821は、傾斜してテーパ状に形成されている。つまり、前面側支持体81および後面側支持体82には、前面側支持体81および後面側支持体82が嵌め合う部位に、薄厚部材6の外周側から中心側に向けて傾斜する挟持面811,821が形成されている。水平面からの傾斜角(テーパ角)θ1は2°〜10°が好ましい。さらに好ましい範囲は2°〜4°である。
【0061】
本実施形態の薄厚部材6は、図11の上方向に突出して前面側支持体81および後面側支持体82に挟持される。つまり、薄厚部材6は、前面側支持体81のテーパ状の挟持面811および後面側支持体82のテーパ状の挟持面821で弾性体7とともに挟持されるので、外周側から中心側に向けて傾斜するいわゆるコーン型の形状になる。本実施形態では、薄厚部材6は、振動板52において圧電体51が設けられた面とは反対面の方向(図11の上方向)へ突出して前面側支持体81および後面側支持体82に挟持される。
【0062】
図12は、本実施形態の振動体4を発音体として用いた場合の音圧レベル特性を示す。振動体4の変位量と音圧レベルとには相関があり、音圧レベルが高くなるほど変位量も大きくなる。図12には、傾斜角θ1が2°の場合(図12の(1))と4°の場合(図12の(2))と8°の場合(図12の(3))とが示されているとともに、比較例として、薄厚部材6が傾斜していない場合(図12の(4))とが示されている。本実施形態の振動体4は、直径35mmの圧電振動子5にドーナツ形状の薄厚部材6が接着されて直径50mmとした構成である。図12の音圧レベル特性は、これらの振動体に40Vp−pの電圧を印加して、振動体から1m前方の位置における音圧レベルを測定した結果である。図12より、薄厚部材6が傾斜しているほうが、薄厚部材6が傾斜していない場合に比べて、低周波領域での音圧レベルが高くなっている。
【0063】
これにより、薄厚部材6が傾斜している振動体4の変位量は、薄厚部材6が傾斜していない振動体4よりも大きいといえるから、本実施形態の発電装置2では、発電量をさらに多くすることができる。
【0064】
以上の説明より、本実施形態の床装置は、前面側支持体81および後面側支持体82にテーパ状の挟持面811,821が形成されることによって、薄厚部材6をコーン型の形状にすることができる。これにより、薄厚部材6が平面である場合に比べて、圧電振動子5の振動をさらに大きくすることができるので、発電効率をさらに高めることができる。
【0065】
(実施形態4)
実施形態4に係る床装置は、図13に示すように薄厚部材6が突部63,64を備えている点で、実施形態1に係る床装置(図1参照)と相違する。なお、実施形態1の床装置と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0066】
本実施形態の薄厚部材6は、前面側支持体81および後面側支持体82で挟持される部位に突部63,64を備えている。突部63は、前面側支持体81と対向する面(図13の上面)に設けられ、突部64は、後面側支持体82と対向する面(図13の下面)に設けられている。突部63,64は、薄厚部材6の他の部分と同じ材料である。なお、実施形態1の薄厚部材6(図1参照)と同様の機能については説明を省略する。
【0067】
突部63の先端面は薄厚部材6の内側の面65に対して傾斜し、突部64の先端面は薄厚部材6の内側の面66に対して傾斜している。これにより、薄厚部材6は、前面側支持体81および後面側支持体82で挟持されたときに、外周側から中心側に向けて傾斜するいわゆるコーン型の形状になる。水平面からの傾斜角θ2は2°〜10°が好ましい。さらに好ましい範囲は2°〜4°である。つまり、本実施形態の薄厚部材6は、振動板52において圧電体51が設けられた面とは反対面の方向(図13の上方向)へ突出して前面側支持体81および後面側支持体82に挟持されている。
【0068】
以上の説明より、本実施形態の床装置は、先端面が内側の面65,66に対して傾斜する突部63,64を薄厚部材6に備え、突部63,64が設けられた部位を前面側支持体81および後面側支持体82が挟持することによって、薄厚部材6をコーン型の形状にすることができる。これにより、薄厚部材6が平面である場合に比べて、圧電振動子5の振動をさらに大きくすることができるので、発電効率をさらに高めることができる。
【0069】
(実施形態5)
実施形態5に係る床装置は、図14に示すように前面側支持体81および後面側支持体82の挟持面811,821が凹凸に形成されている点で、実施形態1に係る床装置(図1参照)と相違する。なお、実施形態1の床装置と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0070】
本実施形態の前面側支持体81の挟持面811と後面側支持体82の挟持面821は、互いに重ならない位置に凸部812,822が形成されている。つまり、薄厚部材6が外周側から中心側に向けて傾斜するように、前面側支持体81および後面側支持体82の嵌め合う部位は、薄厚部材6の中心と外周部とを結ぶ方向において、互いに異なる凹凸に形成されている。凸部812,822は、エラストマによって形成された部材である。後面側支持体82の凸部822のほうが前面側支持体81の凸部812に比べて内側に形成されることによって、薄厚部材6を上方(図14(b)の上方)に突出させることができる。
【0071】
本実施形態の薄厚部材6は、前面側支持体81の凸部812および後面側支持体82の凸部822によって、前面側支持体81と後面側支持体82とで挟持された場合に外周側から中心側に向けて傾斜するいわゆるコーン型の形状になる。水平面からの傾斜角θ3は2°〜10°が好ましい。さらに好ましい範囲は2°〜4°である。つまり、本実施形態の薄厚部材6は、振動板52において圧電体51が設けられた面とは反対面の方向(図14(b)の上方向)へ突出して前面側支持体81および後面側支持体82に挟持されている。なお、実施形態1の薄厚部材6と同様の機能については説明を省略する。
【0072】
以上の説明より、本実施形態の床装置は、凸部812が形成された挟持面811と凸部822が形成された挟持面821とで薄厚部材6を挟持することによって、薄厚部材6をコーン型の形状にすることができる。これにより、薄厚部材6が平面である場合に比べて、圧電振動子5の振動をさらに大きくすることができるので、発電効率をさらに高めることができる。
【0073】
なお、実施形態3〜5の弾性体7は、前面側支持体81と薄厚部材6との間ではなく、後面側支持体82と薄厚部材6との間に設けられていてもよい。
【0074】
(実施形態6)
実施形態6に係る床装置は、図15に示すように床材1に発電装置2が内蔵されている点で、実施形態1に係る床装置(図1参照)と相違する。なお、実施形態1の床装置と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。また、図15は、床パネル(床材1、発電装置2)のみを図示し、蓄電装置3(図1参照)の図示を省略している。
【0075】
本実施形態の床材1の内部には、図15(a)に示すように、芯枠11および複数の小角材12,12によって空洞13が形成されている。なお、実施形態1の床材1(図1参照)と同様の機能については説明を省略する。
【0076】
本実施形態の発電装置2は、図15(b)に示すように、床材1の空洞13に内蔵されている。なお、実施形態1の発電装置2(図1参照)と同様の機能については説明を省略する。
【0077】
以上、本実施形態の床装置によれば、デザイン性を損なわずに設置することができるので、圧電効率をさらに高めることができる。
【符号の説明】
【0078】
1 床材
13 空洞
2 発電装置
3 蓄電装置
31 AC/DCコンバータ
32 蓄電池
4 振動体
5 圧電振動子
51 圧電体
52 振動板
6 薄厚部材
62 コルゲーション
621 谷部
622 山部
8 支持部材
81 前面側支持体(第1の支持体)
82 後面側支持体(第2の支持体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床材と、前記床材の振動によって発電する発電装置と、前記発電装置の発電によって充電する蓄電池を含む蓄電装置とを備え、
前記発電装置は、
圧電素子よりなる圧電体および前記圧電体より面積が広く当該圧電体に同心状に設けられた振動板を有する圧電振動子と、
前記振動板と結合して前記圧電振動子の周囲に設けられた薄厚部材と、
前記薄厚部材の外周部で当該薄厚部材を支持し、前記床材に接して設けられた支持部材とを含み、
前記支持部材を介して前記床材の振動が前記薄厚部材および前記圧電振動子に伝達して前記圧電振動子が変形することによって発電し、
前記薄厚部材は、外周方向に山部および谷部の少なくともいずれかを含むコルゲーションが環状に形成されている
ことを特徴とする床装置。
【請求項2】
前記蓄電装置は、前記圧電振動子の変形によって発生した交流電圧を直流電圧に変換して前記蓄電池に供給するAC/DCコンバータを含むことを特徴とする請求項1記載の床装置。
【請求項3】
1つの前記床材に対して前記発電装置が複数設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の床装置。
【請求項4】
前記薄厚部材は、前記圧電振動子と前記薄厚部材とからなる振動体が共振するときの定在波の腹になる位置に前記コルゲーションが形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の床装置。
【請求項5】
前記支持部材は、互いに嵌め合った状態で位置固定される第1の支持体および第2の支持体を有し、前記第1の支持体および前記第2の支持体が位置固定されたときに当該第1の支持体および当該第2の支持体が嵌め合う部位で前記薄厚部材の外周部を挟持して当該薄厚部材を支持することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の床装置。
【請求項6】
前記薄厚部材は、前記圧電振動子の振動方向に突出して前記第1の支持体および前記第2の支持体に挟持されることを特徴とする請求項5記載の床装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の床装置に用いられる床パネルであって、
床材と、前記床材の振動によって発電する発電装置とを備え、
前記床材の内部には空洞が形成され、
前記発電装置は、前記床材の前記空洞に内蔵される
ことを特徴とする床パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−228069(P2012−228069A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93446(P2011−93446)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)