説明

床面構造体

【課題】 テラスやバルコニーなどの床面に、床板材を止め具を用いずに、置き敷きしながら、隣接する床板材の隅部側面間を、係止片を介して連結するだけで、風による浮き上がり作用を解消できる安定した床面構造体を提供する。
【解決手段】隣接する一対の床板材1の相対向する側面5の間を跨ぐ位置と、この一対の床板材1のうちの一方の床板材1と、その床板材の対角線上にある別の床板材1の隅部側面7の間とを、それぞれ両端に係止フック9を有する係止片8,11により連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物のテラスやバルコニーなどの表面に、基枠上へ床板を取付けることで形成された方形の床板材を、互いに連結するようにして置くだけの作業で、床面を構成することのできる床面構造体の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりこの種の床面構造体としては、方形状の基枠へ床板を取付けて構成した床板材の周辺に、雄雌形継手の係止体と受体とを交互に設けて、隣接するそれぞれの床板材を、係止体と受体とを連結させながら、床板材の全面と半面を選択的に接続することで、全体として配設できるようにした構造体が知られている。
【0003】
また、この種の床面構造体は、主として、テラスやバルコニーなどの屋外に用いられる例が多いが、それぞれの床板材は、テラスやバルコニーなどの床表面に置き敷きされるだけで、床表面とは構造的に接続されていないために、強風時に、床板材の端面から裏面方向へ進入する風の力や、風が床板材上を吹き抜けるときに生ずる負圧力によって、個々の床板材が浮き上がって飛散するという問題がある。また、このような問題を防ぐために一部の床板材に風抜け用の開口部を設けるようにした構造であるとか、個々の床板材の周囲をロープにより連結するという構造も知られている。
【0004】
【特許文献1】登録実用新案第3050920号公報
【特許文献2】特開平11−50644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に示される床面構造体は、隣接する各床板材を、周辺に設けられた雄雌形継手の係止体と受体とを連結することにより互いに接続するので、全ての床板材が置き敷かれた状態では、それぞれの床板材が一枚の面として構成され、全体が安定した構造として接続されているように見受けられる。
【0006】
しかし、それぞれの床板材は、雄雌形継手の係止体と受体とが、それぞれ上下方向に落とし込まれることで接続されているだけで、テラスやバルコニーなどの床面とは構造的に接続されていないために、強風時に床板材の端面から裏面内へ進入する風の圧力や、風が床板材の上方を通過する際の負圧力によって、床板材が浮き上がるような力を受け、各床板材を接続している継手の係止体と受体とが、上下方向に移動することで連結状態が外れて、床板材の配列状態が崩れたり、飛散するという問題点を有している。
【0007】
一方、特許文献2に示される床面構造体では、一部の床板材に風抜け用の開口部を設けるので、開口部にごみが詰まって、効果的な風抜け作用を期待することができなくなるという問題点を有している。
【0008】
また、この床面構造体では、通常の床板材と風抜け用の開口部を設けた床板材とを接続する構造として、それぞれの床板材の裏面に連結部材を配置して、この連結部材の一端は通常の床板材の裏面に連結し、他端は風抜け用の開口部を設けた床板材の裏面に連結するので、床板材の置き敷き作業の際に、連結部材の一端は一方の床板材に連結できても、連結部材の他端は外側から見えない床板材の裏面に位置して、手暗がりとなるので、接続作業が行いにくいという問題点を有している。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、従来におけるこの種の床面構造体の問題点を解消するため、床板材をテラスやバルコニーなどの床表面に置き敷きする際に、互いに隣接する床板材の隅部側面間を係止片を介して連結することで、手暗がりのような作業しにくい状態とならずに、簡単な操作で全ての床板材を確実に連結できて、風による浮き上がり作用を的確に解消できるようにした床面構造体の提供を目的とする。
【0010】
本発明はそのための具体的手段として、基枠上に床板を取付けた方形状の床板材を、側面を交互に隣接するように配列する床面構造体であって、隣接する一対の床板材の相対向する側面間を跨ぐ位置にあって、前記の相対向する両側面と直交する同じ向きの平行な側面における隅部側面間を、両端に係止フックを有する直状の係止片により連結し、前記一対の床板材のうちの、一方の床板材の側面と相対向する位置に、別の床板材を配置する時には、この床板材と、この床板材の対角線上に位置している床板材における隅部側面間を、両端に係止フックを有する湾曲状に折り曲げた係止片により連結することを特徴とする。
【0011】
床板材は、それぞれの隅部側面間が、直状及び湾曲状に折り曲げた係止片により連結されるとともに、床板材の相対向する側面間に、嵌め合わされた状態で摺動することにより、継手の接触面間に摩擦力を生じる鉤形継手を設けるような構造が好ましい。
【0012】
基枠側面に設けられる嵌め合い形の鉤形継手が、基枠側面の鉤形継手突出面に、基枠の長さ方向に沿ったリブを有するとともに、基枠側面から前記リブの突出幅分を含む長さを備えたアームと、このアームの先端を直角方向に折曲げたフックとを備え、このフック内側面と前記リブ外側面との間の空間内に、相対向する相手方継手のフックが、上方から摺動可能な隙間が残るように落とし込まれて、フック相互が互いに係合されているような構造であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
従来のこの種の床面構造体では、特許文献1に示されるように、それぞれの床板材の四つの側面を、雄雌形継手により連結する構造が一般的であったが、この雄雌形継手による連結は、一方の床板材の継手に他方の床板材の継手を上方から落とし込んで連結する方式なので、全ての床板材が互いに連結されたとしても、風の進入により床板材が浮き上がるような力を受けると、継手には上方への浮き上がり力を抑える手段がないために、床板材の連結が簡単に外れて接続構造が崩れてしまうという問題点があった。
【0014】
このような問題に対し、本発明の床面構造体では、隣接する一対の床板材の相対向する側面間を跨ぐ位置と、この一対の床板材のうちの一方の床板材とその床板材の対角線上にある別の床板材の隅部側面間とを、それぞれ両端に係止フックを有する係止片により連結するので、隣接する各床板材の隅部側面が係止フックを介して互いにスクラムを組んだような形で連結されることになり、最終的に全ての床板材が接続された状態では、風の進入による床板材の浮き上がり現象のような上下方向への動きを抑えて、床板材が外れることのない強力な接続構造とすることができる。
【0015】
また、本発明の床面構造体では、隣接するそれぞれの床板材の相対向する側面間を両端に係止フックを有する係止片により連結するので、先に配置された床板材の側面と、次に配置される床板材の側面とが手暗がりになることなく露呈されて、係止片の両端の係止フックを床板材の両側面に簡単に挿着することができ、さらに、互いに対角線上にある床板材の隅部側面間が、内側に湾曲する係止片により連結されるため、係止片が邪魔にならずに、次の床板材を隣接して配置することができ、置き敷き作業を能率よく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の床面構造体は、隣接する床板材の相対向する側面間を、両端に係止フックを有する係止片により連結する事を特徴とするが、実施に際しては、それぞれの床板材の四つの周側面にそれぞれ雄雌形継手を設けて、隣接する各床板材を雄雌形継手により連結するとともに、隣接する床板材の相対向する側面間を両端に係止フックを有する係止片により連結することが好ましく、これによって、床板材裏面への風の進入や、通過風圧に伴う負圧力による床板材の浮き上がりを抑制できる、強力な床板材の接続構造とすることができる。
【実施例】
【0017】
次に、本発明に係る床面構造体の構成を図面に示す実施例について説明すると、この床面構造体は、図1に示すように、プラスチック製の基枠2の上に、プラスチック製廃材等を原料として成形した床板3を取付けた、方形状の床板材1を床面4上に交互に隣接して配列する構造からなっている。
【0018】
交互に隣接して配列される床板材1は、床面4上に一個の床板材1aが配置された後に、この床板材1aの隣に別の床板材1bを配置するが、その際、両床板材1a,1bの相対向する側面5a,5b間を跨ぐ位置にあって、前記の相対向する両側面5a,5bと直交する同じ向きの平行な側面6a,6bにおける隅部側面7a,7b間には、図4に示したような、両端に係止フック9を有する直状の係止片8が連結されている。
【0019】
この直状の係止片8の両端に設けられる係止フック9は、先端にかえし9aが設けられていて、この係止フック9が隅部側面7a,7bに開設された止め孔10内へ挿着されると、この止め孔10の裏側にかえし9aが引っ掛かって強力な連結作用を得ることができる。
【0020】
また、床板材1a,1bの配置に引きつづいて、前記一対の床板材1a,1bのうちの、一方の床板材1aの側面6aと相対向する位置に、別の床板材1cを配置する時には、この床板材1cと、この床板材1cの対角線上に位置している床板材1bにおける隅部側面7b,7c間に、両端に係止フック12を有する湾曲状に折り曲げた係止片11が連結される。
【0021】
前記の直状の係止片8及び湾曲状に折り曲げた係止片11は、ポリプロピレンあるいはナイロンなどのように、強靱で、かつ、自由に折り曲げられる合成樹脂により直状に成形されていて、床板材1a,1bにおける平行な側面6a,6bの隅部側面7a,7b間を連結する際には、この係止片8が直状のままで使用される。
【0022】
一方、床板材1cと、この床板材1cの対角線上に位置している床板材1bとの隅部側面7b,7c間を、係止片によって連結する際には、図5のように、両端の係止フック12が90度相違する方向へ向くように、係止片11を湾曲状に折り曲げることによって使用する。なお、湾曲状に折り曲げた係止片11は、連結の際に、直状の係止片8を折り曲げて使用する、ということに限定されることはなく、成形の段階で最初から湾曲状に成形されるようなものであってもよい。
【0023】
図3で示すように、床板材1bと床板材1cに隣接する位置に、さらに次の床板材1dを連結する場合、床板材1bと床板材1cとの隅部7b,7cには、既に直状係止片8と湾曲状係止片11が連結されているので、床板材1dの隅部7dは、係止片を用いて床板材1bと床板材1cの隅部7b,7cに連結することができない。
【0024】
しかし、この床板材1dにおける隅部7d以外の隅部、例えば隅部7eは、床板材1cの隅部7fと連結され、床板材1dの隅部7gは、床板材1dと対角線上に配置された床板材1eの隅部7hと連結されているので、三個の隅部が係止片により連結されてさえいれば、一個の隅部が係止片により連結されていなくても、風による浮き上がり力を的確に抑えることができ、相互の連結が外れるという心配はない。
【0025】
図6は、床板材1の側面に対称形の鉤形継手13、23を設けて、各床板材1の接続を鉤形継手13、23による連結と、前記の隅部側面における係止片8,11の連結とを併用することにより、全体としての接続がさらに強化できるような構造を示している。
【0026】
この実施例で示した嵌め合い形の鉤形継手13、23は、図7、図9に示すように、基枠2の側面の鉤形継手突出面に、基枠2の長さ方向に沿ったリブ14、24を有するとともに、基枠2の側面から前記リブ14、24の突出幅分Hを含む長さを備えたアーム15、25と、このアーム15、25の先端を折曲げて設けたフック16、26とを備え、このフック16、26の内側面と前記リブ14、24の外側面との間の空間内に、相対向する対称形状の相手方継手のフック16、26が上方から摺動可能な隙間30が残るように落とし込まれて、フック16、26が互いに係合されている
【0027】
図1に示すように、床板材1の隅部側面を係止片8,11により連結する構造に、床板材1の側面を鉤形継手13、23により連結する構造を併設すると、鉤形継手13、23では、例えば、図9aに示すように、床板材1aのフック16の内側面と、床板材1bのフック26の内側面とが接触して係合している。
【0028】
この状態で、床板材1aが矢印方向からの風力を受けると、図9bのように、床板材1aのアーム15の外側面が床板材1bのリブ24と接触して上方へ押し上げられるとともに、床板材1bのフック26の外側面も床板材1aのリブ14と接触して上方へ押し上げられることにより、接触面に大きな摩擦力が発生し、床板材1の隅部側面を係止片8,11により連結する構造の作用と相俟って、床板材1の風による浮き上がり力をきわめて効率的に抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
この発明の床面構造体は、床板材をテラスやバルコニーなどの床表面に、止め具を用いずに、直接置き敷きしながら、互いに隣接する床板材の隅部側面間を、係止片を介して連結するだけで、手暗がりになるようなこともなく作業を進めることができるので、素人でも全ての床板材を簡単、かつ、確実に接続できて、風による浮き上がり作用を的確に解消でき、従来のこの種の床面構造体に比較してはるかに経済的で、利用可能性の高いものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る床面構造体の構成を示す斜視図。
【図2】この床面構造体の構成を示す部分側面図。
【図3】この床面構造体の接続展開時の形状を示す部分平面図。
【図4】床面構造体の連結に用いられる直状係止片の斜視図。
【図5】同じく床面構造体の連結に用いられる湾曲状係止片の平面図。
【図6】床板材に鉤形継手を併用した場合の形状を示す部分平面図。
【図7】図6に示した床板材の四隅部分の構成を拡大した平面図。
【図8】床板材に設けられる鉤形継手の形状を示す斜視図。
【図9】床板材に風力が作用したときの鉤形継手の動きを説明する断面図。
【符号の説明】
【0031】
1:床板材、
2:基枠、
3:床板、
4:床面、
5:側面、
6:側面、
7:隅部側面、
8:直状係止片、
9:係止フック、
10:止め孔、
11:湾曲状係止片、
12:係止フック、
13、23:鉤形継手、
14、24:リブ、
15、25:アーム、
16、26:フック、
30:隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基枠上に床板を取付けた方形状の床板材を、側面が交互に隣接するように配列する床面構造体であって、隣接する一対の床板材の相対向する側面間を跨ぐ位置にあって、前記の相対向する両側面と直交する同じ向きの平行な側面における隅部側面間を、両端に係止フックを有する直状の係止片により連結し、前記一対の床板材のうちの、一方の床板材の側面と相対向する位置に、別の床板材を配置する時には、この床板材と、この床板材の対角線上に位置している床板材における隅部側面間を、両端に係止フックを有する湾曲状に折り曲げた係止片により連結することを特徴とする。
【請求項2】
床板材の隅部側面間を、直状及び湾曲状に折り曲げた係止片により連結するとともに、床板材の相対向する側面間に、嵌め合わされた状態で摺動することにより、継手の接触面間に摩擦力を生じる鉤形継手を設けた請求項1の床面構造体。
【請求項3】
基枠側面に設けられる嵌め合い形の鉤形継手が、基枠側面の鉤形継手突出面に、基枠の長さ方向に沿ったリブを有するとともに、基枠側面から前記リブの突出幅分を含む長さを備えたアームと、このアーム先端を折曲げたフックとを備え、このフック内側面と前記リブ外側面との間の空間内に、相対向する相手方継手のフックが上方から摺動可能な隙間が残るように落とし込まれて、フック相互が互いに係合されている請求項2の床面構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−291603(P2007−291603A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−117009(P2006−117009)
【出願日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(504470831)ハンディテクノ株式会社 (15)