説明

座席付育児器具

【課題】使用中に親と子供とが相互にコミュニケーションを図ることができる座席付育児器具を提供する。
【解決手段】乳母車11は、座席形成部材と、座席形成部材上に配置される操作部材15と、座席形成部材上の操作部材15から離れた位置に配置されて、操作部材15の操作に伴って動作する動作部材16と、操作部材15および動作部材16を動作可能に連結する連結手段18とを備える。そして、操作部材15および動作部材16のうちの一方は、座席上の子供の手の届く領域に配置され、他方は座席上の子供の手の届く領域を越えた位置に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、座席付育児器具、特に使用中に親と子供がコミュニケーションを図ることができる座席付育児器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の座席付育児器具は、例えば、特開2005−254837号公報(特許文献1)に記載されている。同公報に記載されている座席付育児器具は、子供が着座する座席と、座席の上方を覆う幌とを備える乳母車であって、幌から座席の前方位置に様々な形状の吊下げおもちゃが吊下げられている。そして、上記構成の乳母車によれば、着座した子供が様々な形状の吊下げおもちゃを見て楽しむことができると記載されている。
【特許文献1】特開2005−254837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特開2005−254837号公報(特許文献1)に記載されている吊下げおもちゃは、見て楽しむだけのものに過ぎないので、乳母車に座っている子供と乳母車を押す親とが、この吊下げおもちゃを通してコミュニケーションを図ることは難しい。一方、親としては、子供の状態を確認するために親子の間でコミュニケーションを図ることができるのが望ましい。
【0004】
そこで、この発明の目的は、使用中に親と子供とが相互にコミュニケーションを図ることができる座席付育児器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に係る座席付育児器具は、座席形成部材と、座席形成部材上に配置される操作部材と、座席形成部材上の操作部材から離れた位置に配置されて、操作部材の操作に伴って動作する動作部材と、操作部材および動作部材を動作可能に連結する連結手段とを備える。そして、操作部材および動作部材のうちの一方は、座席上の子供の手の届く領域に配置され、他方は座席上の子供の手の届く領域を越えた位置に配置されている。
【0006】
一実施形態として、動作部材は座席上の子供の手の届く範囲に配置されており、操作部材は、座席上の子供の手の届く領域を越えた位置に配置されている。
【0007】
上記構成の座席付育児器具は、座席付育児器具の使用中に親が操作部材を操作して子供の前方領域に配置された動作部材を動作させる。子供は動作部材の動作に興味を持って触ったり、喜んで声を発したりするので、親と子供との間でコミュニケーションを図ることができる。
【0008】
一実施形態として、座席付育児器具は乳母車である。
【0009】
好ましくは、乳母車は、座席の前方に位置する前ガード部材と、乳母車を移動操作する押棒とを備える。そして、第1操作部材は押棒に設けられ、第1動作部材は前ガード部材に設けられている。
【0010】
さらに好ましくは、前ガード部材には第2操作部材が設けられ、押棒には第2操作部材の操作に伴って動作する第2動作部材が設けられており、第2操作部材と第2動作部材とは、第2連結手段によって動作可能に連結されている。
【0011】
例えば、乳母車を押す親には、座席に座っている子供の表情等を確認することができない場合がある。そこで、この発明を乳母車に適用することにより、親と子供との間でコミュニケーションを図ることができると共に、座席上の子供の状態を確認するためにも利用することができる。
【0012】
さらには、座席上の子供の手の届く位置にも操作部材を設けて、押棒に設けられた動作部材を操作可能とすることにより、親から子、子から親の双方向のコミュニケーションが可能となる。
【0013】
一実施形態として、操作部材は空気を送り出すポンプであり、動作部材はポンプから供給される空気によって動作するものであり、連結手段は空気通路である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1〜図4を参照して、この発明の一実施形態に係る座席付育児器具を説明する。なお、図1は座席付育児器具としての乳母車11を示す図、図2は操作部材の構成を示す図、図3および図4は動作部材の構成を示す図である。
【0015】
まず、図1を参照して、乳母車11は、座席形成部材と幌とを備える。座席形成部材は、子供が着座する座席12と、座席12の前方領域に配置される前ガード部材13と、乳母車11を移動操作する押棒14と、操作部材15と、動作部材16(2つの動作部材16a,16bを総称して「動作部材16」とする)と、連結手段18(2つの連結手段18a,18bを総称して「連結手段18」とする)とを有する。
【0016】
座席12には、座部、背もたれ部、およびシートベルトが設けられており、クッション性に富む素材で形成されている。前ガード部材13は、座席12の前方領域に位置し、座席12に座った子供の脱落を防止する。押棒14は、座席12の後方部から上方に立ち上がる一対の縦棒14a,14bと、一対の縦棒14a,14bの上端を相互に連結する上端連結部14cとを有し、全体として逆U字形状となっている。
【0017】
また、操作部材15および動作部材16は、座席形成部材上の互いに離れた位置に配置され、一方が座席12に座った子供の手の届く領域、他方が座席12に座った子供の手の届く領域を越えた位置に配置される。この実施形態において、操作部材15は、子供の手の届かない押棒14に配置され、乳母車11を押す親が操作する。一方、動作部材16は子供の手の届く前ガード部材13に配置され、操作部材15の操作に伴って所定の動作をする。さらに、連結手段18は、操作部材15および動作部材16を動作可能に連結するものであって、縦棒14bに沿って配置されている。
【0018】
次に、図2を参照して、操作部材15は、矩形形状のシート部材であって、任意の位置に複数の操作部15a,15bが配置されている。また、この操作部材15は端部に設けられた面ファスナ19a,19bによって上端連結部14cに巻きつけて固定される。さらに、操作部材15の表面には、各操作部15a,15bの位置を示すためのマークが描かれている。なお、この実施形態では、操作部15a,15bは空気を送り出すポンプであって、各操作部15a,15bには、連結手段としての空気通路18a,18bの一方側端部が連結されている。
【0019】
次に、図3および図4を参照して、2つの動作部材16a,16bは、座席12に座った子供の手の届く領域として前ガード部材13の任意の位置に配置されている。また、動作部材16aには、操作部15aから延びる空気通路18aの他方側端部が連結されており、動作部材16bには、操作部15bから延びる空気通路18bの他方側端部が連結されている。
【0020】
この実施形態では、動作部材16aは座席12に対面する面に絵が描かれた空気袋であって前ガード部材13の上に固定されている。そして、操作部15aを操作していない状態では萎んでおり(図3の状態)、操作部15aを圧縮して空気を供給すると膨張して立ち上がる(図4の状態)。ここで、操作部15aの内部容積は、動作部材16aの内部容積より大きくしておくことが望ましい。すなわち、操作部15aから空気を完全に排出しなくとも動作部材16aが膨らむようにしておくことで、操作性が向上する。一方、動作部材16bは笛であって前ガード部材13を包む布製カバーの下に収容されている。そして、操作部15bを圧縮して空気を供給することにより音を発する。
【0021】
上記構成の乳母車11は、子供が座席12に座り、親が押棒14を持って移動操作するので、乳母車11を使用している間は、親は直接子供の相手をすることができない。そこで、親が押棒14に配置された操作部15a,15bを操作して動作部材16を動作させると、子供は動作部材16の動作に興味を持って触ったり、喜んで声を発したりする。これにより、親と子供との間でコミュニケーションを図ることができると共に、親が座席12に座っている子供の状態を確認したい場合にも利用することができる。
【0022】
なお、この乳母車11の前ガード部材13には、座席12に座る子供が遊ぶことのできる玩具17が設けられている。この実施形態における玩具17は、押すと音を発する玩具である。このような玩具17を座席12に座った子供の手の届く領域に設けることによって、子供が玩具17を押して音を発した時に親が動作部材16を動かして応えれば、親と子供との間に双方向のコミュニケーションが可能となる。反対に、親が動作部材16aを動かした時に、子供が玩具17で応えてもよい。
【0023】
また、上記の実施形態においては、操作部材15を子供の手の届かない押棒14に設け、動作部材16を子供の手の届く前ガード部材13に設けた例を示したが、これに限ることなく、他の構成を採用することもできる。例えば、操作部材15を前ガード部材13に設け、動作部材16を押棒14に設けてもよいし、前ガード部材13および押棒14のそれぞれに、操作部材15と動作部材16とを両方設けてもよい。
【0024】
好ましくは、第1操作部材を押棒14に、第1操作部材の操作に伴って動作する第1動作部材を前ガード部材13に設けると共に、第2操作部材を前ガード部材13に、第2操作部材の操作に伴って動作する第2動作部材を押棒14に設けることによって、親と子供との間で双方向のコミュニケーションが可能となる。
【0025】
また、上記の実施形態においては、子供の手の届く領域の一例として前ガード部材13を、子供の手の届く領域を越えた位置の一例として押棒14を説明したが、これに限ることなく、それぞれ他の場所であってもこの発明の効果を得ることができる。
【0026】
また、上記の実施形態においては、2つの操作部15a,15bと、2つの動作部材16a,16bとを設けた例を示したが、これに限ることなく、1つ以上の操作部材と、対応する1つ以上の動作部材とがあれば、この発明の効果を得ることができる。また、操作部15a,15bは、図2のように1つの操作部材15に含まれていてもよいし、それぞれ別の場所に配置してもよい。
【0027】
また、上記の実施形態における連結手段18は空気通路である例を示したが、これに限ることなく、あらゆる構成を採用することができる。例えば、ワイヤを用いて操作部材15と動作部材16とを機械的に連結してもよいし、銅線等を用いて電気的に連結してもよい。さらには、有線に限らず無線電波によって連結してもよい。
【0028】
同様に、操作部材15や動作部材16にも任意の構成を採用することができる。例えば、操作部材15の他の例として電気信号を発するボタン等であってもよいし、動作部材16の他の例として光ったり回ったりするようなものであってもよい。
【0029】
また、上記の実施形態における玩具17として押すと音を発する玩具の例を示したが、これに限ることなく、押すと光を発するような玩具であってもよいし、鏡等を配置してもよい。
【0030】
また、上記の実施形態における押棒14は、一対の縦棒14a,14bの上端を上端連結部14cによって連結した逆U字形状の例を示したが、これに限ることなく、上端連結部14cを有しない構造の押棒14であってもよい。
【0031】
また、上記の実施形態における乳母車11は、押棒14が座席12の後方に位置する背面式の乳母車の例を示したが、これに限ることなく、対面式の乳母車であってもよいし、背面式と対面式とを切り替え可能な乳母車であってもよい。
【0032】
親と子供が対面した状態で乳母車を使用する場合、親と子供は互いの表情を見ることができる。そこで、親が操作部材15を操作して動作部材16を動作させると同時に動作部分に視線を移動させると、子供は親の視線を追って動作部材16に注目する(共同注視)。このように、動作部材16が親と子供との間に第3の因子として加わって三項関係を形成することによって、子供のコミュニケーション能力の発達に寄与することができる。
【0033】
さらに、上記の実施形態において、座席付育児器具は乳母車11の例を示したが、これに限ることなく、この発明は座席を有するあらゆる育児器具に適用することができる。例えば、チャイルドシートや子供椅子等であってもよい。
【0034】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
この発明は、親と子供がコミュニケーションを図ることのできる座席付育児器具に有利に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明の一実施形態に係る座席付育児器具を示す図である。
【図2】図1の操作部材の拡大図である。
【図3】図1の動作部材の拡大図であって、操作部材を操作していない状態を示す図である。
【図4】図1の動作部材の拡大図であって、操作部材を操作した状態を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
11 乳母車、12 座席、13 前ガード、14 押棒、14a,14b 縦棒、14c 上端連結部、15 操作部材、15a,15b 操作部、16,16a,16b 動作部材、17 玩具、18,18a,18b 連結手段、19a,19b 面ファスナ。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
座席形成部材と、
前記座席形成部材上に配置される操作部材と、
前記座席形成部材上の前記操作部材から離れた位置に配置されて、前記操作部材の操作に伴って動作する動作部材と、
前記操作部材および前記動作部材を動作可能に連結する連結手段とを備え、
前記操作部材および前記動作部材のうちの一方は、座席上の子供の手の届く領域に配置され、他方は座席上の子供の手の届く領域を越えた位置に配置されている、座席付育児器具。
【請求項2】
前記動作部材は、座席上の子供の手の届く範囲に配置されており、
前記操作部材は、座席上の子供の手の届く領域を越えた位置に配置されている、請求項1に記載の座席付育児器具。
【請求項3】
前記座席付育児器具は、乳母車である、請求項1または2に記載の座席付育児器具。
【請求項4】
前記乳母車は、座席の前方に位置する前ガード部材と、前記乳母車を移動操作する押棒とを備え、
前記操作部材は、前記押棒に設けられ、
前記動作部材は、前記前ガード部材に設けられている、請求項3に記載の座席付育児器具。
【請求項5】
前記前ガード部材には、第2操作部材が設けられ、
前記押棒には、前記第2操作部材の操作に伴って動作する第2動作部材が設けられており、
前記第2操作部材と前記第2動作部材とは、第2連結手段によって動作可能に連結されている、請求項4に記載の座席付育児器具。
【請求項6】
前記操作部材は、空気を送り出すポンプであり、
前記動作部材は、前記ポンプから供給される空気によって動作するものであり、
前記連結手段は、空気通路である、請求項1〜5のいずれかに記載の座席付育児器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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