説明

座席

【課題】 簡単な構成で、幼児等を確実に保持できるシートベルトを有する座席を提供する。
【解決手段】 乳母車10の座席は、座部30と、座部30に連続して設けられた背もたれ部32とを有する。乳母車10は、一端を座部30の中央部に固定された股ベルト18と、股ベルト18の他端に接続され、その後方端が、背もたれ部32の上方に設けられた肩部貫通孔35a、35bを通過して背もたれ部32の背後に導かれる、一対の肩ベルト14a、14bと、背もたれ部32の背後で肩部貫通孔35a、35bに近接して位置し、一対の肩ベルト14a、14bの他方側端を長さ調節可能に受入れるとともに、一対の肩ベルト14a、14bが肩部貫通孔35a、35bから、前方に抜け出るのを禁止するベルト調整ロック部材39a、39bとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、乳母車、育児椅子、車椅子等に使用される座席に関し、特に幼児等を確実に保持できるシートベルトを有する座席に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、たとえば、乳母車に使用される座席には、座部に取付けられた股ベルトと、股ベルトに対して、着脱自在に取付けられた、左右の腰ベルトの3点式のシートベルトが設けられていた。幼児が小さい間は、動きが少ないので、このような3点式のシートベルトでも特に問題はない。しかしながら、幼児が成長するにつれて、幼児は、乳母車の中で動くようになり、3点式のシートベルトでは、幼児が乳母車の中で、立ち上がったりするようになる。これは、危険であるので、幼児を乳母車の中で安全に保持する必要があり、チャイルドシートのような、5点式のシートベルトの採用が考えられる。
【0003】
そのような、5点式のシートベルトを採用した座席を乳母車に適用した例が、たとえば、特公平5−15249号公報(特許文献1)に記載されている。同公報によれば、5点式シートベルトの2本の肩ベルトの端部が、背当て部の背面に取付けられた巻取り機構に取付けられ、巻取り機構は、巻取り方向の力を付勢して幼児を保持するようになっている。
【特許文献1】特公平5−15249号公報(図1〜図4等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の、乳母車に使用される、5点式のシートベルトを有する座席は、上記のように構成されていた。座席のシートベルトは、常時巻取り方向に付勢されており、幼児は確実に所定の力で保持されるが、乳母車においては、ここまで強固な固定は不要であるとともに、巻取り機構が設けられているため、構成が複雑であり、折り畳み式乳母車への適用が困難である等の問題があった。
【0005】
この発明は上記のような問題点に着目してなされたもので、簡単な構成で、幼児等を確実に保持できるシートベルトを有する座席を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る、座部と、前記座部に連続して設けられた背もたれ部とを有する座席は、一端を座部の中央部に固定された股ベルトと、股ベルトの他端に接続され、その後方端が、背もたれ部の上方に設けられた肩部貫通孔を通過して背もたれ部の背後に導かれる、一対の肩ベルトと、背もたれ部の背後で肩部貫通孔に近接して位置し、一対の肩ベルトの他方側端を長さ調節可能に受入れるとともに、一対の肩ベルトが肩部貫通孔から、前方に抜け出るのを禁止するベルト調整ロック部材とを含む。
【0007】
一対の肩ベルトが、股ベルトの他端に接続され、背もたれ部の上方に設けられた肩部貫通孔を通過して背もたれ部の背後に導かれ、背もたれ部の背後で肩部貫通孔に近接して位置するベルト調整ロック部材によって、その長さを調節されるとともに、肩ベルトが肩部貫通孔から、前方に抜け出るのを禁止される。
【0008】
その結果、簡単な構成で、幼児等を確実に保持できるシートベルトを有する座席を提供できる。
【0009】
好ましくは、ベルト調整ロック部材は、背もたれ部の背面の上方に取付けられている。
【0010】
この取り付けは、ベルト調整ロック部材が、紐を介して背もたれ部の背面の上方に取付けられてもよいし、ベルト調整ロック部材は、一対の肩ベルトにのみ連結されるように取付けられてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、この発明の一実施の形態に係る座席が、乳母車に適用された場合における、座席を示す斜視図である。図1(A)は乳母車の座席の正面側の斜視図であり、図1(B)は、図1(A)に示した乳母車の座席の背もたれ部の背面側を示す斜視図である。
【0012】
図1を参照して、この実施の形態においては、乳母車10の座席は、座部30と、座部30に連続して設けられた背もたれ部32と、座部30および背もたれ部32をサポートする図示の無い本体フレームと、本体フレームに接続され、前後方向に設けられた脚41a、41b(後脚については参照番号を省略)と、脚41a、41bの下端部に設けられた車輪43a、43bとを含む。
【0013】
座部30と背もたれ部32との間には、シートベルト12が設けられている。シートベルト12は、座部30の前方中央部に設けられた股ベルト18と、股ベルト18に取付けられた接続具20と、座部30の後方両端部に固定された腰ベルト16a、16bと、腰ベルト16a、16bに連続して設けられ、背もたれ部32の上方向に延びる肩ベルト14a、14bとを含む。腰ベルト16a、16bと肩ベルト14a,14bとは、接続具20で股ベルト18と一体化され、5点式のシートベルト12を構成する。
【0014】
肩ベルト14a,14bは、背もたれ部32の上部に設けられた2つの肩部貫通孔35a,35bを通って背後に導かれ、図1(B)に示すように、背面側で、ベルト調整ロック部材39a、39bに係合している。ベルト調整ロック部材39a、39bは肩部貫通孔35a,35bに近接して位置し、背もたれ部32の背面の上部に縫いつけられて、固定されている。
【0015】
図2は、図1(A)において、矢印IIで示す方向から見た、5点式シートベルト12の中央部に設けられた接続具20と、接続具20に接続される肩ベルト14a、14b、腰ベルト16a、16bおよび股ベルト18の接続状態を示す図である。なお、この図では、図1と異なり、股ベルト18は、股パッド19を介して座部30に接続される。
【0016】
図2を参照して、接続具20は、下部に股ベルト18を通過させる股ベルト通過穴25を有する股ベルト係止部23を備えた本体21と、肩ベルト14a、14bに、肩ベルト通過穴24a,24bを介して取付けられた、2つのタングプレート22a、22bを着脱可能に連結する、本体21の内部に設けられたロックおよびロック解除機構(図示無し)と、本体21の両側部に設けられ、図中矢印で示すように、座部30の幅方向に押すことによって、タングプレート22a、22bの本体21へのロックを解除するロック解除ボタン26a、26bとを含む。
【0017】
ロック解除ボタン26a、26bの押し方向は、図に示すように、座部30の幅方向であり、従来のワンタッチ式の場合のように、幼児のお腹を押す方向でないため、幼児の体に優しいロック解除が可能になる。
【0018】
股ベルト18の長さは調節可能であり、股ベルト通過穴25に係合している側の反対側の端部18aは、座部30に固定された図中点線で示す股パッド19に固定されている。図2に示すように、接続具20以外の部分は、股パッド19で覆われ、幼児の股部を保護している。
【0019】
図3は、座部30および背もたれ部32を示す図である。ここでは、シートベルト12の図示は省略している。図3を参照して、座部30の、背もたれ部32の付け根近傍の両端部には、腰ベルト16a,16bの一端を座部の下面側で固定するために、腰ベルト16a,16bを下面側へ通すための、腰ベルト用貫通孔28a、28bが設けられている。また、座部30の中央部には、股ベルト18に接続された股パッド19の端部が接続されている。股パッド19の上部には、接続具20を覆うための、接続具カバー19aが設けられている(図2には図示無し)。
【0020】
腰ベルト16a、16bが、座部30の背もたれ部32の付け根近傍の両端部でその下面側に固定されているため、乳母車10に乗った幼児の骨盤位置を拘束できる。
【0021】
なお、腰ベルト16a、16bの一端は、座部30の上面側で固定してもよい。
【0022】
背もたれ部32の上方には、上記したように、一対の肩ベルト14a、14bを背面側へ通すための、肩部貫通孔35a、35bが設けられている。この肩部貫通孔35a,35bは、図に示すように、固定して2箇所設けてもよいし、幼児のサイズに応じて適合できるよう、上下方向に複数組設けてもよい。
【0023】
次に、背もたれ部32の背面について説明する。図4は、図1(B)において、矢印IVで示す、背もたれ部32の背面を示す拡大図である。図4を参照して、背もたれ部32の背面の上部には、上記した肩部貫通孔35a、35bが設けられている。この肩部貫通孔35a、35bを通過した肩ベルト14a、14bの端部は、肩ベルト14a、14bの長さを調節するための、ベルト調整ロック部材39a、39bに係合している。
【0024】
上記のように、背面側に延びる肩ベルト14a、14bが、背もたれ部32の上部に固定されたベルト調整ロック部材39a、39bに固定されるため、チャイルドシートにおける5点式シートベルトの場合のように、背もたれ部32の背面の中央部を通って、肩ベルト14a、14bが背もたれ部32の下端部まで延びることはない。その結果、背もたれ部32の背面部中央を、図4に示すように、袋部33や、図示のない、通気部として利用可能である。通気部として利用する場合は、上記した、幼児のサイズに適合するための、上下方向に設けられた複数組の肩部貫通孔35を通気孔として利用してもよい。
【0025】
次にベルト調整ロック部材39a、39bについて説明する。ベルト調整ロック部材39a、39bは、平行な複数の長溝を有するプレートであって、その一端は、紐である、固定ベルト38a、38bを介して、背もたれ部32の背面側の縫製部37a、37bに固定されており、それによって、ベルト調整ロック部材39a、39bが背もたれ部32の表側に抜け出さないようにされている。肩ベルト14a、14bは、ベルト調整ロック部材39a、39bの上記した複数の長溝に挟まれた平行な棒状部材に係合し、その端部を引くことによって、肩ベルト14a、14bの長さの調節が可能となる。
【0026】
なお、ここで、固定ベルト38a、38bとなる紐は、所定の径を有する紐状のもの、ベルト、所定の幅を有する帯状部材等を含むものとする。
【0027】
このベルト調整ロック部材39a、39bによる、肩ベルト14a、14bの取付け状態の模式図を図5(A)に示す。図5(A)に示すように、この実施の形態においては、固定ベルト38a、38bによって、肩部貫通孔35a、35bに近接するように配置されたベルト調整ロック部材39a、39bによって、肩ベルト14a、14bの長さ調節と、抜け防止が行なわれている。
【0028】
次に、この発明の他の実施の形態について説明する。上記実施の形態においては、ベルト調整ロック部材39a、39bの一端を紐状の固定ベルト38を用いて、背もたれ部32の背面側で縫製によって固定した。これに対して、この実施の形態においては、ベルト調整ロック部材39a、39bを固定しない。この場合のベルト調整ロック部材39a、39bによる、肩ベルト14a、14bの取付け状態の模式図を図5(B)に示す。図5(B)に示すように、この実施の形態においては、ベルト調整ロック部材39a、39bは、一対の肩ベルト14a、14bにのみ連結されて、肩ベルト14a、14bの長さ調節と、抜け防止が行なわれている。
【0029】
すなわち、この実施の形態においては、図5(B)に示すように、肩部貫通孔35a、35bの孔の寸法をベルト調整ロック部材39a、39bより小さくしておく。それによって、ベルト調整ロック部材39a、39bは肩部貫通孔35a,35bを通過できないため、ベルト調整ロック部材39a、39bが背もたれ部32の表側に抜け出る心配はない。
【0030】
なお、上記実施の形態においては、乳母車にこの発明の一実施の形態に係る座席を適用した場合について説明したが、これに限らず、育児椅子や車椅子等の座席についても、同様に適用される。
【0031】
また、上記実施の形態においては、腰ベルトに連続して肩ベルトが設けられる場合について説明したが、これに限らず、腰ベルトと肩ベルトとは、別々に設けられ、それらが、股ベルトに取付けられた接続具に接続される構成であってもよい。
【0032】
また、腰ベルトは無しで、肩ベルトのみが股ベルトに取付けられた接続具に接続され構成であってもよい。
【0033】
また、上記実施の形態においては、一対の肩ベルトのそれぞれに設けられたベルト調整ロック部材で、背もたれ部の背面側で固定する場合について説明したが、これに限らず、ベルト調整ロック部材を個別に設けることなく、一体化して、それを背もたれ部の背面側で固定してもよい。
【0034】
上記実施の形態においては、股ベルトは股パッドを介して座部に固定されている場合について説明したが、これに限らず、股パッドを介することなく、股ベルトを直接座部に固定してもよい。
【0035】
図面を参照してこの発明の一実施形態を説明したが、本発明は、図示した実施形態に限定されるものではない。本発明と同一の範囲内において、または均等の範囲内において、図示した実施形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
この発明にかかる座席は、簡単な構成で、幼児等を確実に保持できるシートベルトを有するため、シートベルトを有する座席として、有利に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この発明の一実施の形態に係る乳母車を示す図である。
【図2】図1(A)において矢印IIで示す部分の矢視図である。
【図3】乳母車の座部と背もたれ部とを示す図である。
【図4】図1(B)において矢印IVで示す部分の矢視図である。
【図5】ベルト調整ロック部材による、肩ベルトの取付け状態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0038】
10 乳母車、12 シートベルト、14 肩ベルト、16 腰ベルト、18 股ベルト、19 股パッド、20 接続具、21 本体、22 タングプレート、28 腰ベルト用貫通孔、30 座部、32 背もたれ部、35 肩部貫通孔39 ベルト調整ロック部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座部と、前記座部に連続して設けられた背もたれ部とを有する座席であって、
一端を前記座部の中央部に固定された股ベルトと、
前記股ベルトの他端に接続され、その後方端が、前記背もたれ部の上方に設けられた肩部貫通孔を通過して前記背もたれ部の背後に導かれる、一対の肩ベルトと、
前記背もたれ部の背後で前記肩部貫通孔に近接して位置し、前記一対の肩ベルトの他方側端を長さ調節可能に受入れるとともに、前記一対の肩ベルトが前記肩部貫通孔から、前方に抜け出るのを禁止するベルト調整ロック部材とを含む、座席。
【請求項2】
前記ベルト調整ロック部材は、前記背もたれ部の背面の上方に取付けられている、請求項1に記載の座席。
【請求項3】
前記ベルト調整ロック部材は、紐を介して前記背もたれ部の背面の上方に取付けられている、請求項2に記載の座席。
【請求項4】
前記ベルト調整ロック部材は、前記一対の肩ベルトにのみ連結されている、請求項2に記載の座席。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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