説明

座標軸を持つ文字練習帳

【課題】従来の練習帳は文字を一字ずつ正方形枠内に中心線を入れる程度で、バランスの良い字を習得するには数多くの経験を積む事が必要であった。誰が書いても文字の書き出し、各文字部位の占める位置関係、特に払いのはみ出し等文字部位が示す美しい特徴が前後左右の文字バランスと共に習得出来る文字練習帳を提供する。
【解決手段】美しい文字を習得するための練習帳で、日本語文字の持つ特徴を表現するために適した比率として縦:横12:10の方形状の枠(A)内に所定の座標(a,b,c)を定め、その座標上に点画を配置することにより文字を美しく表現し、字形を整える為の各部位の方向と長さを容易に習得できる。この座標は文字の部位の長さ(トメ、ハネ、ハライなど)を拘束するものではなく、部位の方向性と長さを合理的に位置決めするための座標を示すものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、全ての文字の字形、文字部位の組み立て方により、美しいバランスの良い文字を練習し、当該文字の前後に連なる文字への関連も含め、座標値に従って練習・習得する文字練習帳に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば手本となる文字を正方形の枠内に十字状の罫線を表示し、その中に手本となる文字を表示し、上からなぞり書きするか、枠と罫線のみを表示した練習帳上に手本を見ながら繰り返し練習することによって点画の配置、字形等を覚える方法であった。また、これに類似した方法として長方形の大きな枠内に小形の正方形を配し、その正方形を更に罫線により6等分した枠内に文字の特徴、注意する部分を強調し判り易くするため、その部分を着色するなど目印をし部位の入る位置を判り易くするような練習帳があった。更に、方形状の枠内に十字の破線を表示し予め記入された模書練習用の枠を交互に配置し、手本文字の払い、曲がりなどを強調する部分をマーカーで色表示しているものや、字形バランスをイメージさせる直線や曲線からなる囲み線を記した練習帳や、右上がり斜線を等間隔に引き日本字の右上がり傾向を身体的特徴として表現した練習帳などがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−69799
【特許文献2】特開平7−205571
【特許文献3】特開2007−307714
【特許文献4】特開8−185115
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように従来の練習帳は文字を一字ずつ正方形枠内に中心線を入れる程度で練習することはできても、字形を整え文字の全体値やその文字の部位の数学的位置決めが明確に示されていなかったため、バランスの良い字を習得するには数多くの経験を積む事が必要であった。また字の大きさ、点画など方形状の全体空間の中で各部首にどの程度の占有率が与えられているかを見定めるのではなく、全て手本のなぞり書きまたはこれに類似する方法に依存しており、全ての文字を正方形枠内または斜線や罫線で示された枠内に収める事を絶対条件とした文字練習方法が主であった、しかし文字には各々固有の特徴があり、凝縮して枠内に収めようとするため、払い、撥ね、曲がりが特徴となる字形ではこの部分の筆質に無理が生じ、文字全体が萎縮し美しい字形にならないばかりか、前後、左右の文字とのバランスを失う結果となっていた。これを解決する具体的、合理的な方法はなく枠内にさえ入っていれば字形の大小、部位の方向性、その長さ太さは様々でよく、止め、撥ね、払い、曲がり、そり等の点画について具体的、合理的に説明出来る方法は示されていなかったばかりか、各部位の位置決めはもとより、文字が複数並ぶとき、他の文字との関係を考慮した文章全体のバランス等を練習・習得する手立ては全くなく問題であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
文字を分解すると、大別して1、1/2(2分の1)、1/3(3分の1)、1/4(4分の1)、1/6(6分の1)等それぞれ縦・横があり、各部位の点画の長さ・方向・位置の3つの要素のバランスを取るための手段として、方形状の枠線の中に縦・横・上下3分割の破線と、その破線を横切る中心線並びに方形枠線右側上下コーナーより左側方形枠線に達する10度線をもって構成する座標軸(線)を配置し、手本文字が座標の中でどの様な位置を占めるかを文字と図形で示すとともに、払い、撥ね、曲がり等の先端部分は10度線等一部の補助線上からはみ出す事が許されるとする座標値を習得する事によって、誰が書いても文字の書き出し、各文字部位の占める位置関係、特に払いのはみ出し等文字部位が示す美しい特徴が前後左右の文字バランスと共に習得出来る文字練習帳を提供することが出来る。
【発明の効果】
【0006】
文字枠の縦横比を10:12にする事により、日本語の一般的字形に適合し易い枠形であると共に、3分の1の補助線は多くの文字部位の止め、払い、撥ねなど文字形成上絶対に必要な補助線となり、他の知財権で一部確立している多数の縦線、横線、斜線を引いた練習用紙(帳)とは構成内容を異にするものであり、字形を整え、前後の文章を構成する文字とのバランスを保つことの出来る最小限の座標軸を示すものである。特に中心線と上下の10度線をも含める座標の位置関係を習得することにより前述〔0004〕並びに〔0005〕で述べた課題、手段の解決に対応した美しいバランスの取れた文字の練習・習得を早め、正確な字を早く覚える効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明にかかわる文字練習帳の文字枠の構成を示す図。次の請求項1−3で示す補助線の位置を示す。
【図2】本発明にかかわる文字練習帳の頁の一例を示す図。綴じ込まれる練習帳の各頁の用紙には、縦形練習用紙、横形練習用紙があり、日常性の高い文字を配置すると共に、偏、つくり等部首から成る文字を表示し、練習帳とするもの。
【図3】本発明にかかわる文字練習帳の練習頁の一枠に文字3a、3bを示し、実施例の説明で詳細を示す。
【実施例】
【0008】
図1は、本発明にかかわる文字練習帳の練習頁の一文字の文字枠Aを示すものである。枠内に上下左右均等三分割した補助線a並びにbと、上下に10度線cを設け、枠内縦横中心線aを実線で示したものを座標軸とする文字枠を示している。
【0009】
図2には、図1で示した文字枠が練習用紙として印刷されており、左横枠縦一列に予め選定した手本文字が印刷されている用紙、並びに上段横一列に手本文字を印刷した用紙を各々用意し、ヨコ形練習用タテ形練習用として準備するものを練習帳とし、綴じこんだものになっている。
【0010】
更に練習用紙3は文字固有の特徴を示す太目の手本文字を配し、練習枠下欄にその文字の練習の注意点を示し、日本字の持っている部位の一つ一つの特徴を練習・習得するための練習用紙を練習帳内に交互に配置されている。
【0011】
図3は、図2文字練習用紙3に示す文字「様」を取り出したもので、文字の枠内における座標上に各部位の位置関係を示す図である「様」全体の配置は木偏が縦左側補助線と外枠で形成される3分の1の空間を有し、つくりは右3分の2を占有しながら○印で示す各部位の位置の主要な部分が上下10度線、外枠線、縦横中心との関係から枠に拘束されず且つ枠内座標上でバランスを保っている事を示す。この場合上下10度の補助線が字形創出の大きな目安となることを示すものである。
【0012】
更に練習用紙3から取り出した文字「美」は文字枠全体の空間の上下均等を示し、図3bで示す一画目の入る位置が左補助線と上方10度線の交差上○印1に起筆が入り、二画目は右より補助線と10度線の交差点との位置関係を示している。三画目以降の横画は左から右上がり10度線に平行に引く事により、羊偏のバランスをとり、枠下半分の「大」の字がこれを支えるバランスとなっている。この場合、図3b2に示す七画目の横画は、下側3分割補助線の下側から補助線上向きに書き上げ、左右外枠線いっぱいに引く事が「美」の字を形とる要点であることを示し、座標線の役割が美しくバランスの取れた練習用紙であることを示す。
【0013】
尚、図1で示す文字枠内の座標はカナ文字を除く日本文字全体の練習帳を指しており、練習用紙の手本文字のレベルを選択することにより各層の実用書写練習の対応が可能である。
【0014】
手本文字部分には単一文字だけでなく熟語や短い文章を入れ、練習枠座標を活用することにより、文字の流れ、バランス、美しさ等の調和を図ることが可能である。このバランスは各文字枠に示す座標のどの位置に偏が配置され、起筆の位置がどこか等を座標軸を中心に覚えイメージする事により実施することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
図1に示す文字練習帳に使用する文字枠は正方形より10:12の縦伸び長方形が日本字の一般的な字形及び字体の各部位構成からみて合理性が高いとする文字練習帳。
【請求項2】
図1に示す方形枠A内の縦横中心線aと上下枠線より各々1/3、左右枠線より各々1/3補助線b(破線)罫線を入れ、方形上下、左右3分割をなす文字練習帳。
【請求項3】
方形枠A右側上下コーナーより左側方形枠線に向け10度線cを表示し、請求項1並びに2で示す縦横中心線、上下左右3分割補助線と10度線の組合せを座標軸とする文字練習帳。
【請求項4】
前記請求項1−3で示す座標軸(線)内か、形成する空間に占める各々の字形の部位の占有率とその形状を習得する事により、美しく正確な文字練習が出来る文字練習帳。
【請求項5】
前記請求項1−3並びに請求項4を加え、練習帳用紙図2並びに図3に示すごとく左一列、上段一列に手本字を表示し、枠内右よりに座標のみを表示し、一例で示す図3a並びにbを参考に練習を重ねる事の出来る文字練習帳。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−245838(P2011−245838A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132439(P2010−132439)
【出願日】平成22年5月23日(2010.5.23)
【出願人】(510161750)有限会社彩華 (1)