説明

廃棄スプリングマットレスの圧縮方法およびそれに使用する装置

【課題】 廃棄すべきスプリングマットレスを圧縮することにより、容積を小さくして取扱いを容易にする。
【解決手段】 平行に保持された2本の棒部材の間にスプリングマットレスの面の端部を挿入し、前記2本の棒部材同士の位置関係はそのままの状態でこれらの棒部材を回転することによりスプリングマットレスを棒部材に巻き付け、巻き付けられた状態のスプリングマットレスを前記2本の棒部材と平行な方向に圧縮し、圧縮されたスプリングマットレスに紐部材を巻き付けて結束し、その後前記2本の棒部材を抜き取る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は廃棄すべきスプリングマットレスの減容化、すなわち容積を小さくして取扱いを容易にするための方法およびそれに使用する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スプリングマットレスは多数のコイルスプリングが並べて配置され、その周囲が布地で覆われて、長方形の面を有する板状になっている。生活様式の変化に伴いスプリングマットレスの需要が増大しており、これに伴い廃棄される数も増大している。このためその処分方法に関しても種々検討されており、例えば解体してスプリングと外装材料などの可燃物とに分離し、スプリングは鉄屑として利用することが行なわれている。そのためにマットレスの外装体を剥離して内部のスプリングユニットから分離するための専用の装置も使われている。しかしながらこのような設備を有する解体工場に送られるスプリングマットレスはそのままの形態であるので嵩張り、運搬効率が悪いという問題があった。
【0003】
このような問題を解決する手段として、特開2005−323895公報にはスプリングマットレスの運搬効率を改善するために圧縮する方法および装置が示されている。これによると長方形の圧縮室の中にスプリングマットレスを投入し、圧縮板部材によりスプリングマットレスの鏡面、すなわち板状をなしている板面と平行な方向から圧縮して押し潰して圧縮するというものである。そして圧縮中の状態で紐部材により結束することになる。
【特許文献1】特開2005−323895公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特開2005−323895公報のスプリングマットレスの圧縮方法は容積を小さくする点では問題ないが、1方向からだけの圧縮であるので縦横どの方向の寸法も小さくするものではない。一方、スプリングマットレスは分解せずに全体をスクラップとして利用する方法も考えられている。すなわち転炉などの製鋼炉にスクラップとして装入する場合、可燃物が付帯していることは格別問題にならないので分解の手間を省くものである。この場合もスプリングマットレスそのままの形態では炉中に装入することはできないので、圧縮することが必要であるが、特にスクラップとして使用する場合には3次元の各方向の寸法が圧縮された形にするのが取扱いに便利である。本発明はこのような点を考慮した廃棄マットレスの圧縮方法および圧縮装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は前記課題を解決するものであって、廃棄すべきスプリングマットレスを圧縮して容積を減少させる方法において、平行に保持された2本の棒部材の間にスプリングマットレスの面の端部を挿入し、前記2本の棒部材同士の位置関係はそのままの状態でこれらの棒部材を回転することによりスプリングマットレスを棒部材に巻き付け、巻き付けられた状態のスプリングマットレスを前記2本の棒部材と平行な方向に圧縮し、圧縮されたスプリングマットレスに紐部材を巻き付けて結束し、その後前記2本の棒部材を抜き取ることを特徴とする廃棄スプリングマットレスの圧縮方法である。
【0006】
また本発明は、廃棄すべきスプリングマットレスを圧縮して容積を減少させるための装置であって、対象となるスプリングマットレスの鏡面の短辺以上の長さの2本の棒部材が、スプリングマットレスの厚み以上の間隔で平行になるように両端部を保持部材に着脱可能に結合されており、前記それぞれの保持部材は前記棒部材に平行な回転軸に結合されて回転駆動され、2本の棒部材の回転範囲より外側に圧縮面を有する固定圧縮板と移動圧縮板が棒部材と直交して設けられ、前記移動圧縮板を棒部材と平行方向に移動する移動機構を有することを特徴とする廃棄スプリングマットレスの圧縮装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の廃棄スプリングマットレスの圧縮方法によれば、スプリングマットレスを結果的に全方向から圧縮する形になり、極めて効率的に圧縮できる。したがって圧縮した状態でスクラップとして転炉や電気炉に装入することもできる。また本発明の廃棄スプリングマットレスの圧縮装置はスプリングマットレスを容器に入れて圧縮するような装置に比して小型であって簡便に設置でき、操作も容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は本発明の廃棄スプリングマットレスの圧縮方法を工程順に示す図である。図1(a)は装置の構成を示しているが、ここでは原理的な構成要素についてのみ記載されており、装置の詳細な構成は後に述べる。平行に保持された2本の棒部材2が、これら棒部材同士の位置関係はそのままの状態で回転軸4によって回転できるようになっている。さらに固定圧縮板5と移動圧縮板6とが前記棒部材と直角に設けられており、これら圧縮板は2本の棒部材2が貫通した状態で回転できるように穴があいている。固定圧縮板5は例えば上部が固定されているが、移動圧縮板6は上部が図示しないスライドレールにはめ込まれて棒部材と平行に移動可能になっており、ねじ送り機構などの図示しない移動装置により移動される。
【0009】
図1(b)は工程の開始状態を示しているが、2本の棒部材2が上下に並んだ位置に停止しており、圧縮の対象であるスプリングマットレス1の面の端部を2本の棒部材の間に挿入する。この状態において回転軸4により棒部材2を矢印Aのように回転すると、スプリングマットレスは棒部材の周りに巻取られるが、これによりスプリングマットレスはスプリングが縮む方向に圧縮される。図1(c)はその途中の状態を示しているが、さらに巻取りを続行しスプリングマットレスの終端まで完全に巻取る。そして巻取った状態で図1(d)に示すように移動圧縮板6を矢印Bの方向に移動することにより、固定圧縮板5との間で棒部材2と平行な方向にも圧縮される。
【0010】
このように圧縮されたスプリングマットレスには結束バンドなどの紐部材7を巻付けて結束を行なったのち、棒部材2を抜き取って装置から取り外す。図1(e)はこのようにして圧縮が完了したスプリングマットレスを示している。上記のように圧縮したスプリングマットレスから抜き取るため、それぞれの棒部材2は両端部をこれの保持部材から外せるようになっている。なお棒部材2に巻付けられたスプリングマットレスが紐部材で固定される前に緩むのを防止するために、スプリングマットレスの巻付けられた個所を押さえるローラ(図示せず)を設けても良い。また紐部材は棒部材と平行な方向にも掛ける必要があるが、移動圧縮板6の移動による圧縮を開始する前に紐部材を通しておき、圧縮が完了してから締めて固定すれば良い。
【0011】
以上が本発明の廃棄スプリングマットレスの圧縮方法であるが、この方法を実施するための装置について詳細に説明する。図2および図3は本発明の廃棄スプリングマットレスの圧縮装置のそれぞれ正面図と側面図であり、図4は図2のX−X′矢視断面図である。2本の棒部材2が両端部を左右の保持部材11に結合されている。それぞれの保持部材は2本の棒部材が貫通する2つの管111とこれらの管の両端部を結合する2枚の小判形の保持板112から構成され、前記保持板の中心部には回転軸4が固定されている。左右それぞれの回転軸4は左右それぞれの支柱12に設けられた軸受(図示せず)により保持されている。そして一方の回転軸にはハンドル13が取付けられ、手動で回転できるようになっている。
【0012】
2本の棒部材2は保持部材11の2つの管111に挿入されて支持されるが、図示しないピンを棒部材と前記の管を貫通して挿入することにより抜け出ないように固定されている。棒部材を抜き取るときには上記のピンを取り外せば良い。なお図2ないし図4の位置では棒部材2を抜き取るさいに支柱12が邪魔になるので、支柱に2つの棒抜き穴121(図3)を設けてここから抜き取れるようにすれば良い。また図2ないし図4の装置の場合、図3において2aで示したように2本の棒部材がほぼ水平に並ぶ位置まで回転して抜き取ることもできる。なお回転軸4は2本の棒部材から等距離の位置にあることがスプリングマットレスの円滑な巻取りのために好ましい。また2本の棒部材の間隔はスプリングマットレスの厚さよりある程度大きくても差し支えないので、スプリングマットレスが容易に挿入できる間隔にしておけば良い。
【0013】
また図2ないし図4において5は固定圧縮板、6は移動圧縮板であって、それぞれ丸穴51、61が開いていて2本の棒部材2が貫通した状態で回転できるようになっており、丸穴より外側が圧縮面となる。これら圧縮板の外形寸法は棒部材に巻付けられたスプリングマットレスの径が大体包含されるかそれ以上にすれば良い。固定圧縮板5は2本の支柱12間に設けられた角型のビーム15に、棒部材2と直交した状態で上部を固定されている。一方、移動圧縮板6は上部にリニアモーションベアリング16が取付けられ、ビーム15に取付けられたスライドレール17に沿って棒部材2と直交した状態で移動できるようになっている。
【0014】
さらに移動圧縮板6には送りねじ18が貫通してこれと結合したナット19が取付けられており、送りねじの回転により上記のようにスライドレール17に沿った移動が行なわれる。20は送りねじを回転させるモータである。移動圧縮板6の停止位置を設定するために、図示しないリミットスイッチをビーム15に沿って移動可能に設け、任意の位置で固定できるようしても良い。これにより移動圧縮板6にリミットスイッチが押されてモータを停止させることができる。またモータの負荷電流を測定し、これが急上昇したときを圧縮の終点とすることもできる。
【0015】
以上が本発明の廃棄スプリングマットレスの圧縮装置の基本的な構成であるが、本発明の範囲内において追加や変更もできる。例えば先に述べたようにスプリングマットレスの巻付けられた個所を押さえるローラを設けても良く、また巻付けられつつあるスプリングマットレスを後方に引張ることにより固く巻付けられるようにしても良い。また紐部材の巻付け装置を付加することもできる。また2本の棒部材の回転は処理回数あたりの回転数が少ないことと大きな力を必要としないことから図2ないし図4の装置では手動にしているが、動力で行なうようにしても良いことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)ないし(e)は本発明の廃棄スプリングマットレスの圧縮方法を工程順に示す図
【図2】本発明の廃棄スプリングマットレスの圧縮装置の正面図
【図3】本発明の廃棄スプリングマットレスの圧縮装置の側面図
【図4】図2のX−X′矢視断面図
【符号の説明】
【0017】
1 スプリングマットレス
2 棒部材
4 回転軸
5 固定圧縮板
6 移動圧縮板
7 紐部材
11 保持部材
12 支柱
13 ハンドル
15 ビーム
16 リニアモーションベアリング
17 スライドレール
18 送りねじ
19 ナット
20 モータ
51、61 丸穴
111 管
112 保持板
121 棒抜き穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄すべきスプリングマットレスを圧縮して容積を減少させる方法において、平行に保持された2本の棒部材の間にスプリングマットレスの面の端部を挿入し、前記2本の棒部材同士の位置関係はそのままの状態でこれらの棒部材を回転することによりスプリングマットレスを棒部材に巻き付け、巻き付けられた状態のスプリングマットレスを前記2本の棒部材と平行な方向に圧縮し、圧縮されたスプリングマットレスに紐部材を巻き付けて結束し、その後前記2本の棒部材を抜き取ることを特徴とする廃棄スプリングマットレスの圧縮方法。
【請求項2】
廃棄すべきスプリングマットレスを圧縮して容積を減少させるための装置であって、対象となるスプリングマットレスの鏡面の短辺以上の長さの2本の棒部材が、スプリングマットレスの厚み以上の間隔で平行になるように両端部を保持部材に着脱可能に結合されており、前記それぞれの保持部材は前記棒部材に平行な回転軸に結合されて回転駆動され、2本の棒部材の回転範囲より外側に圧縮面を有する固定圧縮板と移動圧縮板が棒部材と直交して設けられ、前記移動圧縮板を棒部材と平行方向に移動する移動機構を有することを特徴とする廃棄スプリングマットレスの圧縮装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−296197(P2007−296197A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−127805(P2006−127805)
【出願日】平成18年5月1日(2006.5.1)
【出願人】(591045840)日鐵物流株式会社 (6)
【Fターム(参考)】