説明

廃棄物のリサイクル方法

【目的】 自動車や建築物から発生する廃棄物のうち各種防音材、内装材等のスクラップ品から吸音・断熱材を製造することを目的とする。
【構成】 フェルト屑、ポリウレタンフォームチップ、その他を粉砕機によって細かく粉砕し、これを水に投入し、高速撹拌器により混合し、2重量%の濃度による分散液となした。この分散液に対して繊維長平均5mmのポリプロピレン繊維を分散液に対して5重量%の割合で投入し、再び高速撹拌器により撹拌分散し、原料液を得た。これを平坦な底の略正方形の金型に静かに入れ、上型にて密封加圧しつつ、真空ポンプにて吸引し、脱水を行なった。略脱水の完了した段階で金型を130℃にて約30秒加熱して、脱型し吸音・断熱材を得た。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は廃棄物のリサイクル方法に関し、吸音・断熱材や各種の内装材を廃棄物によって製造する方法に関する。詳細には、水中に不連続繊維成分、あるいはポリウレタンフォーム材、ポリスチレンフォーム材や塩化ビニルシート材、粉砕された故紙等を、単独、あるいは数種類の混合物を分散させ、この水分散液にバインダー成分を均一に分散せしめ、吸引脱水、あるいは加圧、加熱加圧によって、容易に吸音・断熱材や各種の内装材を得られる廃棄物のリサイクル方法である。
【0002】
【従来の技術】現在、産業廃棄物は社会的に大きな問題となっている。自動車1つを取り上げてみても、使用されなくなった自動車の数は年々増大し、その廃棄された自動車の部品もまた産業廃棄物となっている。ところが、自動車の骨格を構成する鉄部は再び鉄に再生が可能であるが、その内側の各種の内装材、吸音材、遮音材、断熱材、外側の合成樹脂製の部品等は、その多くが単なる産業廃棄物となっていてリサイクルされていない。その原因はこれらの多くが熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂を原材料としていて、これをリサイクルするには多大のコストを必要とするために経済的に引き合わなかったためである。
【0003】しかしながら、既に地球環境問題、有限の資源の枯渇問題、廃棄物処理能力の限界等などの理由から、これらの廃棄物のリサイクルへの取り組みは社会的な要請となっており、従来は廃棄物として処分されてきた物を再び利用するための技術の開発が必要となってきた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、従来全く利用されていなかった自動車の吸音・遮音材等の防音材部品、内装材に使用されている各種の合成樹脂品、外装材に使用されている合成樹脂品、建築、建材分野において同様に廃棄物となっていた繊維製品や合成樹脂製品を、これらの用途に再び利用できるリサイクル方法を実現する点にある。
【0005】
【課題を解決するための手段】かかる課題を解決せんとして、本発明者らは鋭意研究の結果、廃棄物を水中に混合分散し、熱可塑性樹脂繊維をバインダーとしてこれに混合し、脱水加圧加熱することによりリサイクルを可能としたものである。しかして本発明の要旨は、
【0006】主として自動車や建築物から発生する廃棄物を細かく粉砕し、この粉砕物を水中に分散させ、該分散液に5〜50重量%の熱可塑性繊維を混入し、均一分散後に脱水、加熱することを特徴とする廃棄物のリサイクル方法。上記粉砕物中に合成樹脂性、植物性、動物性及び鉱物性の不連続繊維成分を含むことを特徴とする廃棄物のリサイクル方法。上記粉砕物中に合成樹脂フォーム材細片を含むことを特徴とする廃棄物のリサイクル方法。上記粉砕物中に塩化ビニル、酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、瀝青質物等の合成樹脂シート材細片を含むことを特徴とする廃棄物のリサイクル方法。バインダー成分が、熱可塑性繊維、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂の中から選ばれる少なくとも1種類であることを特徴とする廃棄物のリサイクル方法。に存する。
【0007】本発明における廃棄物とは、主として自動車、建築物に使用されていた吸音材、遮音材、内装材等が例示でき、特に繊維原材料のもの、合成樹脂を原材料とするもの等が使用できる。自動車用吸音材としては、エンジンルームのフード・インシュレーター、ダッシュボードに取り付けられるダッシュ・インシュレーター、ダッシュ・アウター、内装材としては成形天井材、ドアトリム、ピラーガーニッシュ、パーセルシェルフ、トランクルームカバー、フロアカーペット等が例示出来る。本発明において使用する不連続繊維成分としては、合成樹脂性繊維として、ビスコースレーヨン、アセテート、アクリル、ナイロン、ポリエステル、塩化ビニル等を挙げることができるし、植物性、動物性繊維としては、羊毛、綿、麻等を、鉱物性繊維としてはガラスウール、ロックウール等の繊維材料を挙げることができる。言うまでもなく、反毛、落綿、繊維屑等の産業廃棄物を開繊した繊維材料も好適に用いることができる。また、合成樹脂フォーム材細片としては、ポリウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム等各種の合成樹脂フォーム材の細片を例示することができる。これらのフォーム材は家具のクッション材料、建築物の吸音・断熱材、自動車のシート材、ヘッドレスト、ドアトリム等の内装材等に幅広く使用されている。合成樹脂シート材としては、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、瀝青質物等を原料とするシート状物の細片を例示することができる。これらもクッションフロア等の床材、壁材等建築内外装材、自動車の制振材、遮音材、内装材等に幅広く使用されている。
【0008】本発明において使用する、廃棄物を細かく粉砕した粉砕物を分散させる水は、特別な条件は無く、工業用に使用されている工業用水であれば問題無く使用できる。また、本発明に使用する熱可塑性繊維は、6−ナイロン、66−ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン等一般に公知の繊維が使用できる。繊維の長さは2〜10mm程度、繊維の太さは1〜10デニール程度のものが混合分散させる際の分散性が良好であり好ましい。加熱溶融温度の点からポリエチレン繊維が低温度で溶融するため製造時には好ましいが、ポリプロピレン繊維も好適に使用可能である。本発明に使用する熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂、ポリアミド樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)樹脂等が例示できる。本発明に使用する熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂等が例示できる。上記に例示した熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂の形態は、液体、粘稠体、粉体、ペレット状等様々であるが、本発明に使用できる樹脂としては、水に不溶若しくは難溶性であることが必要である。水に溶けるものであると、分散後に脱水した段階で水と共に排出されてしまい、バインダーとして機能しないからである。
【0009】廃棄物を細かく粉砕した粉砕物を分散させる濃度は、粉砕物のメッシュによって変化させる必要が有るが、2重量%〜15重量%であることが好ましい。2重量%未満の濃度であるとリサイクル品として吸音・断熱材を製造したい場合に、これらに必要な密度が確保できない虞れがあり、15重量%を超えると均一な分散、及び熱可塑性繊維等のバインダー成分との混合、分散が困難となる。但し他の用途のリサイクル品を製造する場合にはこの限りではない。
【0010】廃棄物を細かく粉砕した粉砕物を水中に分散させた分散液に、5〜50重量%のバインダー成分を混入することを特徴とするが、バインダー成分が5重量%未満の場合、リサイクル品として成形結合させるに充分な樹脂量が確保できず、バインダー成分としての結合性に劣り、バインダー成分が50重量%を超える場合、経済性に劣るという不具合がある。
【0011】廃棄物の中でも最も良好に使用できるものは、従来自動車・建築物に吸音材、断熱材、内装材として使用されていたレジンフェルト、ニードルフェルト、グラスウール、ロックウール、ポリウレタンフォーム、ポリプロピレンフォーム等の合成樹脂フォーム材、塩化ビニルシート、エチレン−酢酸ビニル共重合体等の合成樹脂シート材、アスファルトシート等の制振シート材といったものの廃棄物、いわゆるスクラップ品である。これらのスクラップ品を従来公知の粉砕手段によって、細かく粉砕したものが原材料として使用される。繊維成分を粉砕する場合には、不連続繊維成分として粉砕した時の繊維長は2〜10mm程度が好ましく、5mm前後の繊維長であればさらに好ましい。2mm未満の繊維長であるとリサイクル品として吸音・断熱材を製造する場合、充分な密度を得るのが困難であり、10mmを超える繊維長であると水に均一に分散させるのが難しい。廃棄物の粉砕品を水に均一に分散させる方法としては、高速撹拌器等の従来公知の分散手段が使用できる。
【0012】分散液より水分を脱水する方法としては、ネット、金網状の格子状物、あるいは適当な大きさの型中に分散液を入れ、上方から上型を降ろして圧力をかけ、脱水する方法、加圧しつつ、真空吸引して脱水する方法、真空吸引のみで脱水する方法等が例示できる。このとき、金型に加熱装置が付属していれば、加圧しつつ加熱する、あるいは加圧吸引脱水しつつ加熱することにより、より効率的な脱水が可能となる。
【0013】加圧もしくは吸引により余分な水分、その他を除去したマット状物となす。廃棄物が主に繊維原料であった場合には、フェルト状のマットとなることもある。このマット状物を加熱乾燥炉に通し、熱可塑性繊維の樹脂分によりマット状物の中の各粉砕物を結合させるとともに、残存する水分を除去する。前記の様に加熱加圧、あるいは加圧吸引脱水しつつ加熱した場合も、次工程で加熱乾燥した場合も、100〜150℃で15〜50秒程度の加熱により、熱可塑性繊維等のバインダー成分が溶融し、分散物を相互に接着してバインダーとして機能する。
【0014】
【実施例】以下に実施例を挙げ本発明のより詳細な理解に供する。当然のことながら本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0015】
【実施例1】自動車のカーペット材として使用されていたスクラップ品に含まれるフェルト屑、ポリウレタンフォームチップ、その他を粉砕機によって細かく粉砕し、フェルト屑の平均繊維長は5mm程度とした。この原料を水に投入し、高速撹拌器により混合し、2重量%の濃度による分散液1となした。この分散液に対して繊維長平均5mmのポリプロピレン繊維を分散液に対して5重量%の割合で投入し、再び高速撹拌器により撹拌分散し、原料液1を得た。原料液1を平坦な底の略正方形の金型に静かに入れ、上型にて密封加圧しつつ、真空ポンプにて吸引し、脱水を行なった。略脱水の完了した段階で金型を130℃にて約30秒加熱して、脱型し吸音・断熱材1を得た。
【0016】
【実施例2】実施例1と同じ原料を水に投入し、高速撹拌器により混合し、15重量%の濃度による分散液2となした。この分散液に対して繊維長平均5mmのポリプロピレン繊維を分散液に対して50重量%の割合で投入し、再び高速撹拌器により撹拌分散し、原料液2を得た。原料液2を平坦な底の略正方形の金型に静かに入れ、上型にて密封加圧しつつ、真空ポンプにて吸引し、脱水を行なった。略脱水の完了した段階で金型を130℃にて約30秒加熱して、脱型し吸音・断熱材2を得た。
【0017】
【発明の効果】本発明になる廃棄物のリサイクル方法は、社会的に問題となりつつある産業廃棄物の再利用を経済的に行ない得るものである。すなわち廃車となった自動車から発生するフェルト製品や、プラスチックフォーム材、プラスチックシート材料の粉砕物を100%使用して吸音・断熱材を製造できるため、資源のリサイクルに貢献し、低価格にて吸音・断熱材を製造できるものである。これらの吸音・断熱材は従来のレジンフェルト、ニードルフェルト、合成樹脂フォーム材等を原材料とした吸音、断熱材と比較して、吸音性能、断熱性能が同等以上であり、上記従来品が使用されている自動車の吸音・遮音材、内装材、建築における断熱材、吸音材に使用することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 主として自動車や建築物から発生する廃棄物を細かく粉砕し、この粉砕物を水中に分散させ、該分散液に5〜50重量%のバインダー成分を混入し、均一分散後に脱水、加熱することを特徴とする廃棄物のリサイクル方法。
【請求項2】 粉砕物中に合成樹脂性、植物性、動物性及び鉱物性の不連続繊維成分を含むことを特徴とする請求項1に記載した廃棄物のリサイクル方法。
【請求項3】 粉砕物中に合成樹脂フォーム材細片を含むことを特徴とする請求項1に記載した廃棄物のリサイクル方法。
【請求項4】 粉砕物中に塩化ビニル、酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、瀝青質物等の合成樹脂シート材細片を含むことを特徴とする請求項1に記載した廃棄物のリサイクル方法。
【請求項5】 バインダー成分が、熱可塑性繊維、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂の中から選ばれる少なくとも1種類であることを特徴とする請求項1に記載した廃棄物のリサイクル方法。