説明

廃棄物処理方法および廃棄物処理システム

【課題】 太陽電池セルの製造ラインにおいて、処理すべき廃棄物の数を減らし、廃棄物の処理に要する管理業務を簡略化し、廃棄費用を削減する。
【解決手段】 太陽電池セルの製造ライン35から排出される廃棄物を液体廃棄物と固体廃棄物とを分離して回収する廃棄物回収手段11と、液体廃棄物供給手段12と、固体廃棄物供給手段13と、液体廃棄物識別手段14と、固体廃棄物を液体廃棄物に溶解する混合溶解手段15と、各動作を制御する制御手段30とを含む廃棄物処理システム10であって、液体廃棄物に溶解し得る固体廃棄物を選択し、固体廃棄物を液体廃棄物に溶解することによって、廃棄物の数を減らす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物処理方法および廃棄物処理システムに関する。さらに詳しくは、本発明は、太陽電池セルの製造ラインから排出される固体廃棄物および液体廃棄物を効率良く処理する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光を電気エネルギに変換する太陽電池は、石油、石炭、天然ガスなどの化石燃料に代わるエネルギ源として注目を集め、多くの研究開発がなされている。結晶材料を用いて製造される結晶系太陽電池は、発電量が相対的に多く、長期的な作動信頼性にも優れることから、現在の太陽電池の主流になっている。
【0003】
図3は、結晶系太陽電池の1種であるシリコン結晶系太陽電池1の構造を模式的に示す断面図である。シリコン結晶系太陽電池1は、p型シリコン基板2と、p型シリコン基板2の厚み方向における一方の面(受光面)に形成されるn型層3と、n型層3の表面に形成される反射防止層4と、p型シリコン基板2の厚み方向における他方の面に形成されるアルミニウム電極5と、反射防止層4をp型シリコン基板2の厚み方向に貫通してn型層3に接触するように形成される銀電極6と、アルミニウム電極5をp型シリコン基板2の厚み方向に貫通してp型シリコン基板2に接触するように形成される銀電極7と、銀電極6,7表面を被覆するように形成されるはんだ層8とを含んで構成される。
【0004】
このシリコン結晶系太陽電池1の製造工程は、エッチング工程と、n型層形成工程と、反射防止膜形成工程と、電極形成工程と、はんだ被覆工程とを含む。
【0005】
エッチング工程では、p型シリコン基板2をアルカリ溶液でエッチングする。エッチングによりウエハ屑およびシリコンが溶解したアルカリ廃液が発生する。
【0006】
n型層形成工程では、p型シリコン基板2の厚み方向における一方の面(受光面)に、n型ドーパントであるリン酸化ケイ素化合物(Phospho Silicate Glass、以後「PSG」と称す)を含む液体ソースをスピンコーティング法で塗布し、乾燥および加熱することでn型ドーパントを拡散させ、厚さ0.4μm程度のn型層3を形成する。この液体ソースは、PSGの他に酢酸エチルおよびエタノールといった溶媒を含み、PSGが酸化リンとケイ酸エチルとの複合体である場合の組成比は、酸化リン:ケイ酸エチル:酢酸:エタノール=1:1.4:1.2:16.6w/vである。液体ソースを乾燥および加熱することにより、PSGがゲル状に固化した工程不要物であるPSG化合物が生成する。また、n型層3を形成した後の接合リークを防止するために、p型シリコン基板2の他方の面における外周部分に、酸化チタン化合物(Titanium-Glass、以後「TG」と称す)と溶媒とを含む液体ソースをスピンコーティング法により塗布し、乾燥および加熱することで酸化チタン膜が形成される。この液体ソースは、TGがチタン酸イソプロピルおよび溶媒がイソプロパノールである場合、たとえば、チタン酸エチル:イソプロパノール=1:42v/vの組成比を有する。コーティングの際に、この液体ソースが粉末状に固化し、工程不要物であるTG化合物が生成する。n型層形成工程で生成するPSG化合物およびTG化合物はいずれも産業廃棄物として処理されるべきものである。
【0007】
反射防止膜形成工程では、n型層形成の際の加熱によりp型シリコン基板2の表面に形成される酸化膜をフッ酸洗浄により除去した後、SiHガスとNHガスとを用いてP−CVD法(プラズマ化学気相成長法)により窒化ケイ素をn型層3の表面に堆積させ、反射防止膜4を形成する。この工程では、未反応のSiHガスとNHガスとが残存するのを避け得ず、これらのガスはプロパンガスなどを用いて燃焼および無害化されるけれども、燃焼時にSiHの酸化物である酸化ケイ素の粉末が生成する。酸化ケイ素は水を混合して顆粒状に造粒した後に廃棄される。また、酸化膜除去後のフッ酸も廃棄処理が必要である。
【0008】
電極形成工程では、厚み方向においてp型シリコン基板2のn型層3が形成された面の反対側の面には、銀電極7形成予定部分を除いてアルミニウムペーストをスクリーン印刷法により塗布し、乾燥および酸化性雰囲気中での焼成を行ってアルミニウム電極5を形成した。次いで、n型層3表面をパターニングした後、n型層3表面およびその反対側の面の所定箇所に銀ペーストをスクリーン印刷法により塗布し、酸化性雰囲気中で焼成して銀電極6,7を形成する。
【0009】
はんだ被覆工程では、銀電極6,7の表面にはんだを被覆する。
さらに全工程において、基板に処理を施す際の基板との接触などにより、ウエハ屑が発生する。
【0010】
このように、シリコン結晶系太陽電池1の製造工程によれば種々の廃棄物が発生し、それぞれの廃棄物が指定の保管場所にて一定期間分別保管された後、廃棄物の種類に応じた廃棄処理が行われるのが一般的である。たとえば、ウエハ屑、反射防止膜形成工程の酸化ケイ素などは一般的な廃棄物業者、エッチング工程のアルカリ廃液は化学薬品関連の処理業者、反射防止膜形成工程のフッ酸廃液はフッ酸リサイクル業者、廃フラックス、PSG化合物、TG化合物などは産業廃棄物指定業者に処理が委託される。すなわち、従来の太陽電池の製造工程では、廃棄物毎の分別保管、保管場所の選定、廃棄物毎の廃棄業者の選択といった廃棄物処理の管理業務が煩雑であるとともに、たとえば、酸化ケイ素の顆粒化などの廃棄前処理にコストを要し、廃棄費用が増大するという問題がある。
【0011】
太陽電池における課題の1つとして、太陽電池の普及を拡大するために、生産コストの低下が求められる。また、太陽電池製造ラインにおいては、効率的な生産システムの構築が不可欠になる。このような観点からは、従来の太陽電池製造ラインは、廃棄物毎の処理を必要とするので、生産コストの低下を実現することが難しく、さらに効率的な生産システムとは言い難い。
【0012】
このような現状に鑑み、たとえば、ウエハ屑を回収し、圧縮工程、酸浸漬工程、純水浸漬工程、乾燥工程、一方の電極形成工程、PN結合形成工程、他方の電極形成工程を経て太陽電池を製造する方法が提案される(たとえば、特許文献1)。特許文献1の技術では、ウエハ屑が有効利用されるけれども、化学薬品の廃液、PSG化合物、TG化合物、酸化ケイ素などの処理については一切言及がない。
【0013】
【特許文献1】特開2002−9320号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、太陽電池セルの製造ラインにおいて、廃棄物毎の分別保管、保管場所の選定、廃棄物毎の廃棄業者の選択といった廃棄物処理の管理業務を減少させ、廃棄前処理をほとんど省略することができ、廃棄費用を低下させ得る廃棄物処理方法および廃棄物処理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねる過程で、固体廃棄物を液体廃棄物に溶解し、廃棄物の種類を削減するという新規な着想を得た。この着想に基づいてさらに研究を重ねた結果、固体廃棄物を液体廃棄物に溶解するにしても、固体廃棄物と液体廃棄物との組み合わせが重要になることを見出した。たとえば、PSG化合物とTG化合物との混合物をアルカリ廃液に溶解しようとしても充分に溶解させることは不可能であるけれども、PSG化合物のみをアルカリ廃液に溶解すれば、PSG化合物を完全に溶解でき、廃棄物の種類を減らすことが可能になる。したがって、本発明者は、液体廃棄物と液体廃棄物に溶解し得る固体廃棄物とを選択し、これらを混合するような方法および該方法を実行するシステムを形成すれば、目的に叶う廃棄物処理を実現し得ることを見出し、本発明を完成した。
【0016】
本発明は、
太陽電池セルの製造ラインから液体廃棄物と固体廃棄物とを分離して回収する廃棄物回収工程と、
廃棄物回収工程において回収される液体廃棄物の種類を識別する液体廃棄物識別工程と、
液体廃棄物識別工程において識別される液体廃棄物の種類に応じて、液体廃棄物と混合する固体廃棄物を選択する固体廃棄物選択工程と、
液体廃棄物識別工程において種類が識別される液体廃棄物と固体廃棄物選択工程において選択される固体廃棄物とを混合し、固体廃棄物を液体廃棄物に溶解させる混合溶解工程とを含むことを特徴とする廃棄物処理方法である。
【0017】
また本発明の廃棄物処理方法は、
液体廃棄物識別工程において種類が識別される液体廃棄物がアルカリ水溶液またはフッ酸であり、
固体廃棄物選択工程において選択される固体廃棄物が酸化ケイ素であることを特徴とする。
【0018】
さらに本発明の廃棄物処理方法は、
液体廃棄物識別工程において種類が識別される液体廃棄物がアルカリ水溶液またはフッ酸であり、
固体廃棄物選択工程において選択される固体廃棄物がリン酸化ケイ素化合物であることを特徴とする。
【0019】
さらに本発明の廃棄物処理方法は、
液体廃棄物識別工程において種類が識別される液体廃棄物がアルカリ水溶液であり、
固体廃棄物選択工程において選択される固体廃棄物がウエハ屑であることを特徴とする。
【0020】
また本発明は、
太陽電池セルの製造ラインから液体廃棄物と固体廃棄物とを分離して回収する廃棄物回収手段と、
廃棄物回収手段により回収される液体廃棄物の種類を識別する液体廃棄物識別手段と、
液体廃棄物識別手段により識別される液体廃棄物の種類に応じて、該液体廃棄物と混合する固体廃棄物を選択する固体廃棄物選択手段と、
液体廃棄物識別手段により識別される液体廃棄物と、固体廃棄物選択手段により選択される固体廃棄物とを混合し、固体廃棄物を液体廃棄物に溶解するための混合槽と、液体廃棄物および固体廃棄物の混合槽への供給量を検知する供給量検知手段とを備える混合溶解手段と、
混合槽に液体廃棄物を供給する液体廃棄物供給手段と、
混合槽に固体廃棄物を供給する固体廃棄物供給手段とを含むことを特徴とする廃棄物処理システムである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、太陽電池セルの製造ラインから液体廃棄物と固体廃棄物とを分離して回収する廃棄物回収工程と、廃棄物回収工程において回収される液体廃棄物の種類を識別する液体廃棄物識別工程と、液体廃棄物識別工程において識別される液体廃棄物の種類に応じて、液体廃棄物と混合する固体廃棄物を選択する固体廃棄物選択工程と、液体廃棄物識別工程において種類が識別される液体廃棄物と固体廃棄物選択工程において選択される固体廃棄物とを混合し、固体廃棄物を液体廃棄物に溶解させる混合溶解工程とを含むことを特徴とする廃棄物処理方法が提供される。すなわち、本発明廃棄物処理方法の最大の特徴は、液体廃棄物と該液体廃棄物に溶解し得る固体廃棄物とを混合し、固体廃棄物を液体廃棄物中に溶解させることである。これによって、特殊な化学薬品、材料などを新たに使用することなく、従来の太陽電池製造ラインを利用して、従来から知られる7種類の主要廃棄物を最大3種類まで減らすことができる。したがって、処理費用、保管場所のスペースなどの削減などを図ることができる。
【0022】
また本発明によれば、液体廃棄物がアルカリ水溶液またはフッ酸である場合には、固体廃棄物として酸化ケイ素を用いるのが好ましい。酸化ケイ素はアルカリ水溶液またはフッ酸に迅速にかつ多量に溶解するので、廃棄物処理のさらなる簡略化を図ることができる。
【0023】
また本発明によれば、液体廃棄物がアルカリ水溶液またはフッ酸である場合には、固体廃棄物としてリン酸化ケイ素化合物を用いるのも好ましい。リン酸化ケイ素化合物もアルカリ水溶液またはフッ酸に迅速かつ多量に溶解するので、廃棄物処理のさらなる簡略化を図ることができる。
【0024】
また本発明によれば、液体廃棄物がアルカリ水溶液である場合には、固体廃棄物としてウエハ屑を用いるのが好ましい。ウエハ屑はアルカリ水溶液に迅速かつ多量に溶解するので、廃棄物処理のさらなる簡略化を図ることができる。
【0025】
また本発明によれば、液体廃棄物と固体廃棄物とをそれぞれ別々に回収する廃棄物回収手段と、液体廃棄物の種類を識別する液体廃棄物識別手段と、液体廃棄物の種類に応じて固体廃棄物を選択する固体廃棄物選択手段と、液体廃棄物識別手段により識別される液体廃棄物と、固体廃棄物選択手段により選択される固体廃棄物とを混合して固体廃棄物を溶解する混合槽を備える混合溶解手段と、液体廃棄物供給手段と、固体廃棄物供給手段とを含む廃棄物処理システムが提供される。本発明の廃棄物処理システムによれば、太陽電池の製造ラインに大幅でコストの掛かる設備を増設することなく、処理すべき主要な廃棄物の種類を7種から3種にまで減らすことが可能になり、それに伴って、処理費用、保管場所のスペースなどの削減が可能になり、太陽電池の製造コストを低下させ、太陽電池の普及に寄与し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の廃棄物処理方法は、廃棄物回収工程と、液体廃棄物識別工程と、固体廃棄物選択工程と、混合溶解工程とを含む。
【0027】
廃棄物回収工程では、太陽電池セルの製造ラインにおけるエッチング工程、n型層形成工程、反射防止膜形成工程、電極形成工程およびはんだ被覆工程の各工程から排出される廃棄物を回収する。廃棄物には液体廃棄物と固体廃棄物とがあり、液体廃棄物が僅かに固形物を含んでいるか、または固体廃棄物がわずかな液状成分を含んでいる場合があるので、濾過、遠心分離、沈殿槽を用いる分離方法などの一般的な固液分離方法により、固体廃棄物と液体廃棄物とに分離して回収する。以後、混合溶解工程において混合されるまで、固体廃棄物と液体廃棄物とは別々に扱われる。なお、太陽電池セルの製造ラインにおける主な廃棄物は、表1に示すとおりである。
【0028】
【表1】

【0029】
これらの廃棄物のうち、ウエハ屑とは、太陽電池セルに用いられる多結晶シリコン基板、単結晶シリコン基板などの半導体基板の微小断片である。
【0030】
液体廃棄物識別工程では、回収工程で回収される液体廃棄物の種類を判別する。本発明の方法では、前述のように、回収される液体廃棄物の種類が予め判っているので、太陽電池セルの製造ラインにおけるどの工程由来の廃棄物であるかということと、各廃棄物の化学的および物理的な特性も周知であることから、液体廃棄物の種類を判別することは容易である。たとえば、pH、粘度などの特性は各液体廃棄物に固有の値になるので、それらの物性を測定すれば、容易に判別できる。
【0031】
固体廃棄物選択工程では、液体廃棄物識別工程において判別される液体廃棄物の種類に応じて、該液体廃棄物に溶解し得る固体廃棄物を選択する。太陽電池セルの製造ラインにおいて発生する固体廃棄物の種類も予め判明しているので、その中から、該液体廃棄物に溶解し得る固体廃棄物を選択すればよい。
【0032】
混合溶解工程では、液体廃棄物識別工程において種類が判別された液体廃棄物と、固体廃棄物選択工程において液体廃棄物の種類に応じて選択された固体廃棄物とを混合して溶解することによって、従来は2種の廃棄物として処理されてきた前述の液体廃棄物と固体廃棄物とが1つの廃棄物として取扱いされることが可能になり、主に従来からある液体廃棄物の廃棄処理方法をそのまま利用して処理することができる。したがって、固体廃棄物の処理費用がほぼ全部削減されることになる。なお、固体廃棄物の液体廃棄物の溶解は、連続式およびバッチ式のいずれかで実施できる。
【0033】
本発明の廃棄物処理方法を実現する廃棄物処理システムとしては、固体廃棄物を液体廃棄物に溶解して廃棄物の種類を減らすことができるシステムであれば特に制限されず、たとえば、図1に示す廃棄物処理システム10が挙げられる。図1は、本発明の実施の第1形態である廃棄物処理システム10の構成を模式的に示す系統図である。
【0034】
廃棄物処理システム10は、太陽電池セル製造ライン35のエッチング工程、n型層形成工程、反射防止膜形成工程、電極形成工程およびはんだ被覆工程の各工程から排出される廃棄物を回収する廃棄物回収手段11と、廃棄物回収手段11により回収される液体廃棄物を液体廃棄物識別手段14ひいては混合溶解手段15の混合槽16に送給する液体廃棄物供給手段12と、廃棄物回収手段11により回収される固体廃棄物を混合溶解手段15の混合槽に送給する固体廃棄物供給手段13と、廃棄物回収手段11により回収される液体廃棄物の種類を識別する液体廃棄物識別手段14と、液体廃棄物識別手段14により識別される液体廃棄物の種類に応じて、該液体廃棄物と混合する固体廃棄物を選択する図示しない固体廃棄物選択手段と、液体廃棄物識別手段14により識別される液体廃棄物と、固体廃棄物選択手段により選択される固体廃棄物とを混合して固体廃棄物を液体廃棄物に溶解する混合槽16と液体廃棄物の混合槽16への供給量を検知する液体廃棄物供給量検知手段17と固体廃棄物の混合槽16への供給量を検知する図示しない固体廃棄物供給量検知手段とを備える混合溶解手段15と、廃棄物処理システム10における各動作を制御する制御手段30とを含んで構成される。
【0035】
廃棄物回収手段11aは、太陽電池セル製造ライン35のエッチング工程から排出される廃棄物を回収し、液体廃棄物と固体廃棄物(液体成分を含有するペースト状固体廃棄物をも含む)とに分別する手段である。廃棄物回収手段11aは、エッチング工程から排出される廃棄物を固液分離手段21aに送給する第1の配管20aと、エッチング工程から排出される廃棄物を液体廃棄物と固体廃棄とに分離する固液分離手段21aと、固液分離手段21aにより分離される液体廃棄物を液体廃棄物貯留手段24aに送給する第2の配管22aと、固液分離手段21aにより分離される固体廃棄物を固体廃棄物貯留手段25aに送給する第3の配管23aと、液体廃棄物を貯留する液体廃棄物貯留手段24aと、固体廃棄物を貯留する固体廃棄物貯留手段25aとを含んで構成される。
【0036】
第1の配管20a、第2の配管22aおよび第3の配管23aには、たとえば、アルカリ水溶液、フッ酸、フラックスなどの液体廃棄物、ウエハ屑、PSG化合物、TG化合物、酸化ケイ素、ペースト付きウエスなどの固体廃棄物などに腐食されることがない材料からなるパイプなどが用いられる。なお、第3の配管23aには、固体廃棄物の送給のために図示しない真空吸引式のポンプが取り付けられても良い。
【0037】
固液分離手段21aには、液体廃棄物と固体廃棄物とを含む廃棄物の固液分離に用いられる一般的な固液分離装置を使用でき、たとえば、濾過層を有する固液分離装置、沈殿槽を有する固液分離装置、遠心分離機を備える固液分離装置などが挙げられる。なお、廃棄物は常に液体廃棄物と固体廃棄物と含むものではなく、液体または固体廃棄物のみのものもある。そのような場合は、液体廃棄物または固体廃棄物は単に固液分離手段21aを通過するだけで、そのまま液体廃棄物貯留手段24aまたは固体廃棄物貯留手段25aに送給される。
【0038】
液体廃棄物貯留手段24aは、液体廃棄物を貯留するための内部空間を有する中空容器状部材であり、たとえば、液体廃棄物により腐食を受けることがない材料で構成されたタンク、金属製タンクの内部表面に液体廃棄物により腐食を受けない材料を含む被覆層が形成されたタンクなどが挙げられる。液体廃棄物貯留手段24aの内部には、液体廃棄物の貯留量を検知するために、図示しない液面高さ検知センサが設けられる。液面高さ検知センサによる検知結果は制御手段30の記憶部に入力される。該記憶部には液体廃棄物貯留手段24aにおける液面高さと供給量との関係を示すデータが予め入力されており、制御手段30の演算部において検知結果と前記データとを比較することによって、その時点での供給量が決定される。また、液体廃棄物貯留手段24aの内部には、液体廃棄物を攪拌するために、回転軸体の側面に1対または複数対の攪拌羽根を取り付けた攪拌装置などが設けられてもよい。後述するように、液体廃棄物貯留手段24aから液体廃棄物供給手段16を介して、液体廃棄物識別手段12に液体廃棄物を送給する。
【0039】
固体廃棄物貯留手段25aは、固体廃棄物を貯留するための内部空間を有する中空容器状部材であり、たとえば、固体廃棄物により腐食を受けることがない材料で構成されたタンク、金属製タンクの内部表面に固体廃棄物により腐食を受けない材料を含む被覆層が形成されたタンクなどが挙げられる。その下部外側には、固体廃棄物の貯留量を検知するために、図示しない重量検知センサが設けられる。重量検知センサによる検知結果は制御手段30の記憶部に入力される。該記憶部には固体廃棄物貯留手段25aにおける固体廃棄物の種類に応じた重量と供給量との関係を示すデータが予め入力されており、制御手段30の演算部において検知結果と前記データとを比較することによって、その時点での供給量が決定される。なお、太陽電池セルの製造ライン35においては、前述のように、1つの工程で2種以上の固体廃棄物が発生することがあるけれども、これらは一度に排出されるものではなく、その工程の進行にともなって順を追って排出されるものである。したがって、固体廃棄物の数に応じて、固体廃棄物貯留手段25aである中空容器状部材を増設することによって対応が可能になる。後述するように、固体廃棄物貯留手段25aから固体廃棄物供給手段17を介して、混合溶解手段13の混合槽14に固体廃棄物を送給する。その際、固体廃棄物供給手段17における固体廃棄物の流過性を向上させるために、固体廃棄物貯留手段25a内の固体廃棄物に、固体廃棄物を溶解し得る液体廃棄物を適量添加することもできる。
【0040】
廃棄物回収手段11aによれば、エッチング工程から排出される廃棄物が第1の配管20aを介して固液分離手段21aに送給され、そこで液体廃棄物と固体廃棄物とに分別され、液体廃棄物は第2の配管22aを介して液体廃棄物貯留手段24aに送給されて貯留され、また固体廃棄物は第3の配管23aを介して固体廃棄物貯留手段25aに供給されて貯留される。
【0041】
廃棄物回収手段11aには、従来の廃棄物処理システムにおいて用いられるものをそのまま利用できる。
【0042】
廃棄物回収手段11b,11c,11d,11eは、それぞれ太陽電池セル製造ライン35のn型層形成工程、反射防止膜形成工程、電極形成工程またははんだ被覆工程から排出される廃棄物を液体廃棄物と固体廃棄物とに分別して貯留する以外は、廃棄物回収手段11aに類似の構造を有するので、同一の参照符号を付し、さらに各参照符号の末尾に、n型層形成工程から排出される廃棄物の廃棄物回収手段であることを示す「b」、反射防止膜形成工程から排出される廃棄物の廃棄物回収手段であることを示す「c」、電極形成工程から排出される廃棄物の廃棄物回収手段であることを示す「d」またははんだ被覆工程から排出される廃棄物の廃棄物回収手段であることを示す「e」を付し、説明を省略する。
【0043】
液体廃棄物供給手段12は、一端が液体廃棄物貯留手段24a,24b,24c,24d,24eに接続され、他端が液体廃棄物識別手段14を介して混合溶解手段15の混合槽16に接続され、液体廃棄物貯留手段24a,24b,24c,24d,24eに貯留される液体廃棄物を混合槽16に送給するための中空配管状部材であり、たとえば、液体廃棄物による腐食を受けない材料で構成される配管が用いられる。液体廃棄物貯留手段24a,24b,24c,24d,24eとの接続部近傍の液体廃棄物供給手段12には、それぞれ、図示しないポンプおよび電磁式開閉弁が取り付けられる。ポンプの作動及び電磁開閉弁による液体廃棄物供給手段12の開閉は、制御手段32により制御される。制御手段32は、その演算部が、たとえば、図示しない液面高さ検知センサによる検知結果に基づいて、液体廃棄物貯留手段24a内に所定量の液体廃棄物が貯留されたと判定した場合には、その判定結果に基づいて制御部がポンプと電磁式開閉弁とに制御信号を送付し、電磁式開閉弁を開放しかつポンプを作動させる。これによって、液体廃棄物貯留手段24a内の液体廃棄物は液体廃棄物識別手段14に送給され、そこで一旦貯留されて種類を判別された後、混合槽16に送給される。このような一連の動作は液体廃棄物貯留手段24aに限定されるものではなく、他の液体廃棄物貯留手段においても同様に実施される。
【0044】
固体廃棄物供給手段13は、一端が固体廃棄物貯留手段25a,25b,25c,25d,25eに接続され、他端が混合溶解手段15の混合槽16に接続され、固体廃棄物貯留手段25a,25b,25c,25d,25eに貯留される固体廃棄物を混合槽16に送給するための中空配管状部材であり、たとえば、固体廃棄物による腐食を受けない材料で構成される配管が用いられる。固体廃棄物貯留手段25a,25b,25c,25d,25eとの接続部近傍の固体廃棄物供給手段13には、それぞれ図示しない真空ポンプおよび電磁式開閉弁が取り付けられる。真空ポンプの作動および電磁式開閉弁による固体廃棄物供給手段13の開閉は、制御手段30により制御される。制御手段32は、その演算部が、たとえば、図示しない重量検知センサによる検知結果に基づいて、固体廃棄物貯留手段25a内に所定量の固体廃棄物が貯留されたと判定した場合には、その判定結果に基づいて制御部が真空ポンプと電磁式開閉弁とに制御信号を送付し、電磁式開閉弁を開放しかつ真空ポンプを作動させる。これによって、固体廃棄物貯留手段25a内の液体廃棄物は混合槽16に送給される。このような一連の動作は固体廃棄物貯留手段25aに限定されるものではなく、他の液体廃棄物貯留手段においても同様に実施される。
【0045】
液体廃棄物識別手段14は、液体廃棄物供給手段12を介して液体廃棄物貯留手段24a,24b,24c,24d,24eのいずれか1つから送給されてくる液体廃棄物がアルカリ水溶液、フッ酸またはフラックスのいずれを含むものであるかを識別するものであり、たとえば、液体廃棄物を一時的に貯留する図示しない貯留槽と、貯留槽内の液体廃棄物の物性を測定する図示しない装置とを含んで構成される。物性を測定する装置には、個々の液体廃棄物に特有の物性を測定できるものであれば特に制限はなく、各種機器分析装置を使用できる。さらに本発明の廃棄物処理システム10では、液体廃棄物の種類が予め判っているので、pHセンサ、粘度センサなどの簡易測定機器を使用して液体廃棄物を識別することもできる。たとえば、pHセンサによる検知結果を制御部30の記憶部に入力する。該記憶部には、各液体廃棄物のpHが予め入力されているので、演算部において検知結果と予め入力されるデータとを比較することによって、液体廃棄物の種類が判定される。
【0046】
液体廃棄物識別手段14において、液体廃棄物の種類が識別されると、制御手段30は2つの動作を実施する。一方の動作は、液体廃棄物識別手段14中に一時的に貯留される液体廃棄物を、液体廃棄物制御手段12を介して混合槽16に送給することである。液体廃棄物識別手段14と混合槽16との間に存在する液体廃棄物制御手段12には、図示しないポンプと電磁式開閉弁とが取り付けられている。制御手段30の制御部は、演算部における液体廃棄物の種類が判定されたことを認識して、ポンプおよび電磁式開閉弁に制御信号を送り、電磁式開閉弁を開放してポンプを作動させ、液体廃棄物識別手段14中の液体廃棄物を混合槽16に送給する。
【0047】
他方の動作は、識別された液体廃棄物に溶解し得る固体廃棄物を選択することである。制御部30によるこの動作が固体廃棄物選択手段に当たる。制御手段30の記憶部には、各液体廃棄物に溶解し得る固体廃棄物のリスト、固体廃棄物貯留手段25a,25b,25c,25d,25eに貯留される固体廃棄物の種類および固体廃棄物貯留手段25a,25b,25c,25d,25eにおける固体廃棄物の貯留量が予め入力される。太陽電池セルの製造ライン35において、各工程で排出される固体廃棄物の種類は予め定まっているので、固体廃棄物貯留手段25a,25b,25c,25d,25eに貯留される固体廃棄物の種類を記憶部に入力することが可能になる。液体廃棄物と該液体廃棄物に溶解し得る固体廃棄物の組み合わせとしては、アルカリ水溶液またはフッ酸(液体廃棄物)と酸化ケイ素(固体廃棄物)、アルカリ水溶液またはフッ酸(液体廃棄物)とリン酸化ケイ素化合物(固体廃棄物)、アルカリ水溶液(液体廃棄物)とウエハ屑(固体廃棄物)などが挙げられる。制御手段30の演算部は、記憶部から液体廃棄物の判定結果と記憶部に予め入力される各データとを取り出し、判定された液体廃棄物の種類から、それに適する固体廃棄物を選択するとともに、選択された固体廃棄物がどの固体廃棄物貯留手段に貯留されているかを判定する。判定された液体廃棄物に溶解し得る固体廃棄物が複数ある場合は、固体廃棄物貯留手段における当該固体廃棄物の貯留量の多い方を選択する。演算部による判定結果に応じて、制御部は、固体廃棄物供給手段13における、演算部により選択された固体廃棄物貯留手段との接続部近傍に取り付けられた真空ポンプおよび電磁式開閉弁に制御信号を送付し、電磁式開閉弁を開放しかつ真空ポンプを作動させ、固体廃棄物を混合槽16に送給する。
【0048】
混合溶解手段15は、液体廃棄物供給手段12および固体廃棄物供給手段13ならびに排液管19が接続され、液体廃棄物と固体廃棄物とが供給される混合槽16と、図示しない回転駆動手段により支持されて矢符の方向に回転駆動する軸体と該軸体の鉛直方向下部に設けられる1対または複数対の攪拌羽根とを有し、混合槽16中の内容物を攪拌混合する攪拌装置18と、液体廃棄物の混合槽16への供給量を検知する液体廃棄物供給量検知手段19と、混合槽16外側の鉛直方向下部に設けられて、固体廃棄物の混合槽16への供給量を検知する図示しない固体廃棄物供給量検知手段とを含む。
【0049】
混合槽16には、液体廃棄物供給手段12から液体廃棄物が供給され、固体廃棄物供給手段13から固体廃棄物が供給され、攪拌装置18の回転により液体廃棄物と固体廃棄物とが混合され、固体廃棄物が液体廃棄物に溶解され、廃棄物溶液が生成する。固体廃棄物の溶解効率を向上させるためには、液体廃棄物の所定量を供給した後に、固体廃棄物の所定量を供給するように制御するのが好ましい。この廃棄物溶液は、廃棄物溶液を構成する液体廃棄物および固体廃棄物の種類に応じて、3つの排液管19から図示しない所定の廃棄物溶液貯留タンクに送給される。混合槽16には、液体および固体廃棄物による腐食を受けることがない材料からなるかまたは金属製タンクの内面に前記材料を含む被覆層が形成された開放式タンク、密閉式タンクなどが用いられる。
【0050】
液体廃棄物供給量検知手段17には、たとえば、光学センサなどの液面高さ検知センサが用いられる。液体廃棄物供給量検知手段17による検知結果を制御手段30の記憶部に入力し、記憶部には混合槽16の内径値も予め入力されているので、演算部において前記検知結果と内径値とから、混合槽16に供給された液体廃棄物の液量を算出し、所定量に達すると判定する場合には、その判定結果に応じて制御部から、液体廃棄物識別手段14と混合溶解手段15との間の液体廃棄物供給手段12に備えられる図示しないポンプおよび電磁開閉弁に制御信号を送り、ポンプを停止させかつ電磁開閉弁を閉鎖することによって、液体廃棄物の供給を停止する。所定量に達しない場合は液体廃棄物の供給を継続し、達した時点で前記のように供給を停止すればよい。
【0051】
固体廃棄物供給量検知手段には、たとえば、重量検知センサが用いられる。重量検知センサは、混合槽16の重量を測定することにより、間接的に固体廃棄物の供給量を検知する。重量検知センサは制御手段30に電気的に接続され、重量検知センサによる検知結果は制御手段30の記憶部に入力される。重量検知センサには、たとえば、荷重センサなどを使用できる。重量検知センサによって、まず液体廃棄物の供給が完了する時点で第1回目の重量検知を行い、第1回目の検知結果は制御手段30の記憶部に入力される。次いで、固体廃棄物の供給を行い、固体廃棄物を供給するポンプの設定および能力に応じて、適宜第n回目(ここでnは2以上の整数)の重量検知を行う。第n回目の検知結果は制御手段30の記憶部に入力され、演算部において第1回目と第n回目との検知結果が比較される。固体廃棄物の供給量が所定量に達したと演算部が判定すると、演算部の判定結果に応じて、制御部は液体廃棄物識別手段14と混合溶解手段15との間の液体廃棄物供給手段12に備えられる図示しないポンプおよび電磁開閉弁に制御信号を送り、ポンプを停止させかつ電磁開閉弁を閉鎖することによって、固体廃棄物の供給を停止する。所定量に達しない場合は固体廃棄物の供給を継続し、達した時点で前記のように供給を停止すればよい。
【0052】
このようにして、混合槽16には所定量の液体廃棄物および固体廃棄物が供給され、攪拌装置18による攪拌を受けて、固体廃棄物が液体廃棄物に溶解した廃棄物溶液が得られる。廃棄物溶液は、液体廃棄物および固体廃棄物の種類に応じて、3本の排液管19に接続される3種の貯留槽のうちから、同種の廃棄物溶液を貯留する貯留槽に選択的に排出され、最終的に廃棄される。
【0053】
混合溶解手段15によれば、液体廃棄物供給量検知手段17および固体廃棄物供給量検知手段の作用によって所定量の液体廃棄物および固体廃棄物が混合槽16に供給され、攪拌装置18の回転により固体廃棄物を液体廃棄物に溶解して廃棄物溶液が得られ、該廃棄物溶液の種類に応じて排液管19を選択し、図示しない3種の貯留槽に送給され、廃棄される。排液管19の選択は、廃棄物溶液に含まれる液体廃棄物および固体廃棄物の種類に応じて、制御手段30により制御される。制御手段30の記憶部には、排液管19に接続される貯留槽がどのような廃棄物溶液を貯留するものであるかが予め入力され、さらに混合槽16中の廃棄物溶液に含まれる液体廃棄物および固体廃棄物の種類も入力される。したがって、これらのデータを演算部で比較し、当該廃棄物溶液を排出すべき排液管を選択し、排液管の排出口を開放することによって、同種の廃棄物溶液を貯留する貯留槽に排出される。
【0054】
制御手段30は、たとえば、CPU(中央処理装置)を含むマイクロコンピュータなどによって実現される処理回路であり、記憶部と演算部と制御部とを有し、廃棄物処理システム10の全動作特に廃棄物処理動作を制御する。記憶部には、たとえば、リードオンリィメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ハードディスクドライブ(HDD)などを使用できる。
【0055】
図2は、図1に示す廃棄物処理システム10における廃棄物処理動作を示すフローチャートである。
【0056】
工程S1では、液体廃棄物が液体廃棄物貯留手段24a,24b,24c,24d,24eのいずれか1つから液体廃棄物識別手段14に送給され、液体廃棄物識別手段14において液体廃棄物の種類が特定(識別)される。
【0057】
液体廃棄物の液体廃棄物識別手段14への送給は、制御手段30により制御される。制御手段30の記憶部には、液体廃棄物貯留手段24a,24b,24c,24d,24e内の液体廃棄物量が所定量に達した時の液面高さデータが予め入力されている。また、液体廃棄物貯留手段24a,24b,24c,24d,24eの内部には図示しない液面高さ検知センサが設けられ、該センサによる検知結果は制御手段30の記憶部に入力される。演算部において、検知結果と液面高さデータとが比較され、たとえば、液体廃棄物貯留手段24a内の液体廃棄物量が所定量に達したと判定されると、その判定結果に応じて、制御手段30の制御部は液体廃棄物貯留手段24aの直ぐ下流側の液体廃棄物供給手段12に取り付けられる図示しないポンプおよび電磁開閉弁に制御信号を送り、電磁開閉弁を開放し、ポンプを作動させて液体廃棄物貯留手段24a内の液体廃棄物を液体廃棄物識別手段14へ送給する。その際、液体廃棄物貯留手段24b,24c,24d,24eの直ぐ下流側の液体廃棄物供給手段12に備えられる電磁開閉弁は閉鎖され、ポンプは停止状態にある。
【0058】
液体廃棄物識別手段14には、たとえば、pHセンサが用いられる。太陽電池セル製造ライン35から排出される液体廃棄物はそれぞれ特有のpH値を有するので、pHを測定するという簡易な操作によって、液体廃棄物の種類を容易に識別できる。制御手段30の記憶部には、各液体廃棄物のpH値などの物性値が予め入力される。pHセンサによる検知結果は、制御手段30の記憶部に入力され、演算部において記憶部から取り出される各液体廃棄物のpH値と比較されて判定される。
【0059】
工程S2では、種類が特定(判定)された液体廃棄物を、液体廃棄物識別手段14から混合溶解手段15に送給する。制御手段30は、液体廃棄物の種類が判定されたことに応じて、液体廃棄物識別手段14と混合溶解手段15との間における液体廃棄物供給手段12に備えられるポンプおよび電磁式開閉弁に制御信号を送り、電磁式開閉弁を開放してポンプを作動させ、液体廃棄物を混合溶解手段15の混合槽16に送給する。
【0060】
工程S3では、液体廃棄物の混合槽16への供給量を調整する。供給量の調整は、たとえば、混合溶解手段15における混合槽16の内部に設けられる液体廃棄物供給量検知手段17、具体的には液面高さ検知センサを用いて行われる。制御手段30の記憶部には、混合槽16における液面高さと供給量との関係が数値データとして入力される。演算部において、液体廃棄物供給量検知手段17による検知結果と、前記数値データとを比較すれば、その時点での供給量が所定量に達しているか否かを判定できる。本実施の形態では、液体廃棄物の混合槽16への供給量を10〜11kgとする。供給量が所定量に達していなければ、工程S2に戻って、液体廃棄物の混合槽16への供給を継続する。供給量が所定量に達していれば、工程S4に進む。
【0061】
工程S4では、工程S2における液体廃棄物の種類の判定結果に応じて、液体廃棄物に適する固体廃棄物を特定する。
【0062】
制御手段30は、工程S2における液体廃棄物の種類の判定結果に応じて、記憶部に予め入力される液体廃棄物に溶解し得る固体廃棄物のリストから適切な固体廃棄物を選択し、固体廃棄物が複数ある場合には、固体廃棄物貯留手段25a,25b,25c,25d,25eにおける固体廃棄物の貯留状況を照合し、貯留量の多い固体廃棄物を選択する。たとえば、選択された固体廃棄物が酸化ケイ素であるとすれば、制御部は演算部による判定結果に応じて、固体廃棄物供給手段13の固体廃棄物貯留手段25c(太陽電池セルの製造ライン35における反射防止膜形成工程から排出される固体廃棄物すなわち酸化ケイ素を貯留する)との接続部近傍に取り付けられる図示しない真空ポンプおよび電磁式開閉弁に制御信号を送り、電磁式開閉弁を開放して真空ポンプを作動させ、酸化ケイ素を溶解槽16に送給する。
【0063】
工程S5では、所定量の液体廃棄物が供給されている混合槽16に、攪拌装置18を矢符の方向に回転駆動させながら固体廃棄物の供給を行い、固体廃棄物を液体廃棄物に溶解させる。
【0064】
工程S6では、固体廃棄物の混合槽16への投入量(供給量)を検知し、固体廃棄物の供給を継続するか否かを決定する。供給量の調整は、たとえば、混合溶解手段15における混合槽16の外側下部に設けられる図示しない固体廃棄物供給量検知手段(重量検知センサ)を用いて行われる。制御手段30の記憶部には、混合槽16に所定量の液体廃棄物が供給された状態を基準にする、混合槽16の総重量と固体廃棄物の供給量との関係が数値データとして入力される。演算部において、重量検知センサによる検知結果と、前記数値データとを比較すれば、その時点での供給量が、所定量x±0.5x(kg)、すなわち0.5x〜1.5x(kg)の範囲内にあるか否かを判定できる。供給量が所定量に達していなければ、工程S5に戻って、固体廃棄物の混合槽16への供給を継続する。供給量が所定量に達していれば、工程S6に進む。
【0065】
工程S7では、混合槽16において、液体廃棄物と固体廃棄物との混合物の攪拌を継続する。
【0066】
工程S8では、固体廃棄物が液体廃棄物に完全に溶解しているか否かを確認する。この確認は、たとえば、目視などによっても行うことができる。完全に溶解していない場合は、工程S7に戻り、さらに攪拌を行う。完全に溶解している場合は、工程S9に進む。
【0067】
工程S9では、固体廃棄物が液体廃棄物に溶解して得られる廃棄物溶液を、固体廃棄物および液体廃棄物の種類に応じて3つの排液管19から選択して排出される。
【0068】
本実施の形態では、1種の液体廃棄物に1種の固体廃棄物を溶解するけれども、それに限定されず、可能であれば1種の液体廃棄物に2種以上の固体廃棄物を溶解させてもよい。その時、1種の液体廃棄物に2種以上の固体廃棄物を一度に溶解させてもよいけれども、好ましくは固体廃棄物を1種ずつ順次溶解させるのが好ましい。
【実施例】
【0069】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお本実施例において、太陽電池セルの基板には、多結晶シリコン基板を用いた。
【0070】
(実施例1)
太陽電池セルの製造ライン35において、エッチング工程から排出される液体廃棄物を貯留する液体廃棄物貯留手段24aには所定量である約100kgの液体廃棄物が貯留されたので、これを液体廃棄物識別手段14に送給し、pHの測定により、水酸化ナトリウム水溶液であることを識別した。この水酸化ナトリウム水溶液は、水酸化ナトリウム濃度約10重量%、液温約60℃であった。この水酸化ナトリウム水溶液を混合槽16に供給した。一方、水酸化ナトリウム水溶液に溶解させるのに適する固体廃棄物として酸化ケイ素粉末を選択し、反射防止膜形成工程から排出される固体廃棄物を貯留する固体廃棄物貯留手段25cから、約1kgの酸化ケイ素粉末を攪拌装置18の回転駆動下に混合槽16に供給し、酸化ケイ素粉末を水酸化ナトリウム水溶液に溶解させ、目視により酸化ケイ素粉末が完全に溶解したことを確認し、廃棄物溶液を得た。得られた廃棄物溶液は1種の廃棄物として取り扱うことができ、従来のアルカリ廃液と同様の廃棄処理に供した。これによって、飛散防止のために酸化ケイ素粉末を顆粒状に造粒する作業を行う必要がなくなり、その作業に要するコストを削減できた。
【0071】
(実施例2)
太陽電池セルの製造ライン35(太陽電池セルの基板として多結晶シリコン基板を使用)において、反射防止膜形成工程から排出される液体廃棄物を貯留する液体廃棄物貯留手段24cには所定量である約100kgの液体廃棄物が貯留されたので、これを液体廃棄物識別手段14に送給し、pHの測定により、フッ酸水溶液であることを識別した。このフッ酸水溶液は、フッ酸濃度約49重量%、液温約28℃であった。このフッ酸水溶液を混合槽16に供給した。一方、フッ酸水溶液に溶解させるのに適する固体廃棄物として酸化ケイ素粉末を選択し、反射防止膜形成工程から排出される固体廃棄物を貯留する固体廃棄物貯留手段25cから、約1kgの酸化ケイ素粉末を攪拌装置18の回転駆動下に混合槽16に供給し、酸化ケイ素粉末をフッ酸水溶液に溶解させ、目視により酸化ケイ素粉末が完全に溶解したことを確認し、廃棄物溶液を得た。得られた廃棄物溶液は1種の廃棄物として取り扱うことができ、従来のフッ酸廃液と同様の廃棄処理に供した。これによって、飛散防止のために酸化ケイ素粉末を顆粒状に造粒する作業を行う必要がなくなり、その作業に要するコストを削減できた。
【0072】
(実施例3)
酸化ケイ素粉末に代えてPSG化合物(固体廃棄物、n型層形成工程)を選択する以外は、実施例1と同様にし、廃棄物溶液を得た。得られた廃棄物溶液は1種の廃棄物として取り扱うことができ、従来のアルカリ廃液と同様の廃棄処理に供した。これによって、PSG化合物の廃棄処理コストを削減できた。
【0073】
(実施例4)
酸化ケイ素粉末に代えてPSG化合物を選択する以外は、実施例2と同様にし、廃棄物溶液を得た。得られた廃棄物溶液は1種の廃棄物として取り扱うことができ、従来のアルカリ廃液と同様の廃棄処理に供した。これによって、PSG化合物の廃棄処理コストを削減できた。
【0074】
(実施例5)
酸化ケイ素粉末1kgに代えてウエハ屑(固体廃棄物、エッチング工程)約100gを選択する以外は、実施例1と同様にして、廃棄物溶液を得た。得られた廃棄物溶液は1種の廃棄物として取り扱うことができ、従来のアルカリ廃液と同様の廃棄処理に供した。これによって、ウエハ屑の廃棄処理コストを削減できた。
【0075】
(実施例6)
実施例1と同様にして廃棄物溶液を得、この廃棄物溶液を混合槽16に貯留した状態で、固体廃棄物としてPSG化合物を選択し、n型層形成工程の固体廃棄物を貯留する固体廃棄物貯留手段25bからPSG化合物約0.5kgを攪拌下に混合槽16に供給して溶解させ、新たな廃棄物溶液を得た。この新たな廃棄物溶液は1種の廃棄物として取り扱うことができ、従来のアルカリ廃液と同様の廃棄処理に供した。これによって、酸化ケイ素粉末の顆粒化コストおよびPSG化合物の廃棄処理コストを削減できた。
【0076】
(実施例7)
PSG化合物約0.5kgに代えてウエハ屑(固体廃棄物、エッチング工程)約50gを選択する以外は、実施例6と同様にして、新たな廃棄物溶液を得た。この新たな廃棄物溶液は1種の廃棄物として取り扱うことができ、従来のアルカリ廃液と同様の廃棄処理に供した。これによって、酸化ケイ素粉末の顆粒化コストおよびPSG化合物の廃棄処理コストを削減できた。
【0077】
(実施例8)
実施例1で得られた廃棄物溶液(アルカリ廃液)に代えて実施例2で得られた廃棄物溶液(フッ酸廃液)を使用する以外は、実施例6と同様にして、新たな廃棄物溶液を得た。この新たな廃棄物溶液は1種の廃棄物として取り扱うことができ、従来のフッ酸廃液と同様の廃棄処理に供した。これによって、酸化ケイ素粉末の顆粒化コストおよびPSG化合物の廃棄処理コストを削減できた。
【0078】
(実施例9)
実施例3と同様にして廃棄物溶液を得、この廃棄物溶液を混合槽16に貯留した状態で、固体廃棄物として酸化ケイ素を選択し、反射防止膜形成工程から排出される固体廃棄物を貯留する固体廃棄物貯留手段25cから、約0.5kgの酸化ケイ素粉末を攪拌装置18の回転駆動下に混合槽16に供給して溶解させ、あらたな廃棄物溶液を得た。この新たな廃棄物溶液は1種の廃棄物として取り扱うことができ、従来のアルカリ廃液と同様の廃棄処理に供した。これによって、酸化ケイ素粉末の顆粒化コストおよびPSG化合物の廃棄処理コストを削減できた。
【0079】
(実施例10)
酸化ケイ素粉末0.5kgに代えてウエハ屑50gを選択する以外は、実施例9と同様にしてあらたな廃棄物溶液を得た。この新たな廃棄物溶液は1種の廃棄物として取り扱うことができ、従来のアルカリ廃液と同様の廃棄処理に供した。これによって、ウエハ屑およびPSG化合物の廃棄処理コストを削減できた。
【0080】
(実施例11)
実施例4と同様にして廃棄物溶液(フッ酸廃液)を得、この廃棄物溶液を混合槽16に貯留した状態で、固体廃棄物として酸化ケイ素粉末を選択し、反射防止膜形成工程から排出される固体廃棄物を貯留する固体廃棄物貯留手段25cから、約0.5kgの酸化ケイ素粉末を攪拌装置18の回転駆動下に混合槽16に供給して溶解させ、新たな廃棄物溶液を得た。この新たな廃棄物溶液は1種の廃棄物として取り扱うことができ、従来のフッ酸廃液と同様の廃棄処理に供した。これによって、酸化ケイ素粉末の顆粒化コストおよびPSG化合物の廃棄処理コストを削減できた。
【0081】
(実施例12)
実施例5と同様にして廃棄物溶液(アルカリ廃液)を得、この廃棄物溶液を混合槽16に貯留した状態で、固体廃棄物としてPSG化合物を選択し、n型層形成工程から輩出される固体廃棄物を貯留する固体廃棄物貯留手段25bから、約0.5kgのPSG化合物を攪拌装置18の回転駆動下に混合槽16に供給して溶解させ、新たな廃棄物溶液を得た。この新たな廃棄物溶液は1種の廃棄物として取り扱うことができ、従来のアルカリ廃液と同様の廃棄処理に供した。これによって、ウエハ屑およびPSG化合物の廃棄処理コストを削減できた。
【0082】
(実施例13)
PSG化合物に代えて酸化ケイ素粉末を選択する以外は、実施例12と同様にして、新たな廃棄物溶液を得た。この新たな廃棄物溶液は1種の廃棄物として取り扱うことができ、従来のアルカリ廃液と同様の廃棄処理に供した。これによって、酸化ケイ素粉末の顆粒化コストおよびウエハ屑の廃棄処理コストを削減できた。
表2に実施例1〜13における液体廃棄物および固体廃棄物を列記する。
【0083】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の廃棄物処理システムの構成を模式的に示す系統図である。
【図2】図1に示す廃棄物処理システムにおける廃棄物処理動作を示すフローチャートである。
【図3】シリコン結晶系太陽電池の構造を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0085】
10 廃棄物処理システム
11 回収手段
12 液体廃棄物供給手段
13 固体廃棄物供給手段
14 液体廃棄物識別手段
15 混合溶解手段
16 混合槽
17 液体廃棄物供給量検知手段
18 攪拌装置
19 排液管
20a,20b,20c,20d,20e 第1の配管
21a,21b,21c,21d,21e 固液分離手段
22a,22b,22c,22d,22e 第2の配管
23a,23b,23c,23d,23e 第3の配管
24a,24b,24c,24d,24e 液体廃棄物貯留手段
25a,25b,25c,25d,25e 固体廃棄物貯留手段
30 制御手段
35 太陽電池セルの製造ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池セルの製造ラインから液体廃棄物と固体廃棄物とを分離して回収する廃棄物回収工程と、
廃棄物回収工程において回収される液体廃棄物の種類を識別する液体廃棄物識別工程と、
液体廃棄物識別工程において識別される液体廃棄物の種類に応じて、液体廃棄物と混合する固体廃棄物を選択する固体廃棄物選択工程と、
液体廃棄物識別工程において種類が識別される液体廃棄物と固体廃棄物選択工程において選択される固体廃棄物とを混合し、固体廃棄物を液体廃棄物に溶解させる混合溶解工程とを含むことを特徴とする廃棄物処理方法。
【請求項2】
液体廃棄物識別工程において種類が識別される液体廃棄物はアルカリ水溶液またはフッ酸であり、
固体廃棄物選択工程において選択される固体廃棄物は酸化ケイ素であることを特徴とする請求項1記載の廃棄物処理方法。
【請求項3】
液体廃棄物識別工程において種類が識別される液体廃棄物はアルカリ水溶液またはフッ酸であり、
固体廃棄物選択工程において選択される固体廃棄物はリン酸化ケイ素化合物であることを特徴とする請求項1記載の廃棄物処理方法。
【請求項4】
液体廃棄物識別工程において種類が識別される液体廃棄物はアルカリ水溶液であり、
固体廃棄物選択工程において選択される固体廃棄物はウエハ屑であることを特徴とする請求項1記載の廃棄物処理方法。
【請求項5】
太陽電池セルの製造ラインから液体廃棄物と固体廃棄物とを分離して回収する廃棄物回収手段と、
廃棄物回収手段により回収される液体廃棄物の種類を識別する液体廃棄物識別手段と、
液体廃棄物識別手段により識別される液体廃棄物の種類に応じて、該液体廃棄物と混合する固体廃棄物を選択する固体廃棄物選択手段と、
液体廃棄物識別手段により識別される液体廃棄物と、固体廃棄物選択手段により選択される固体廃棄物とを混合し、固体廃棄物を液体廃棄物に溶解するための混合槽と、液体廃棄物および固体廃棄物の混合槽への供給量を検知する供給量検知手段とを備える混合溶解手段と、
混合槽に液体廃棄物を供給する液体廃棄物供給手段と、
混合槽に固体廃棄物を供給する固体廃棄物供給手段とを含むことを特徴とする廃棄物処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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