説明

廃棄物排出装置

【課題】 本発明は、斯かる実情に鑑み、作業者が、ドラム缶を叩いたり揺すったりすることなく収容された廃棄物を排出可能な廃棄物排出装置の提供を課題とする。
【解決手段】ドラム缶を保持可能なドラム缶保持体と、索条を連結可能な連結部を有するとともに、保持したドラム缶の中心線と交差する方向に延びる軸線周りで前記ドラム缶保持体を回転可能に軸支する支軸を有した支持体とを備え、該ドラム缶保持体を回転させてドラム缶を上下反転させる廃棄物排出装置において、前記ドラム缶保持体は、保持したドラム缶の上下方向で長手をなすレールが側面上に設けられ、前記レール及び前記支軸は、該レールの長手方向の両端間で該レールに沿って相対的に移動可能に構成され、該支軸が少なくともドラム缶の上端側にあるレールの一端に位置した状態でドラム缶保持体の回転中心になるように構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラム缶に収容された廃棄物を排出するときに使用される廃棄物排出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、廃棄物を一時的に収容しておくものとして、上端が開口したドラム缶が用いられている。該ドラム缶に収容された廃棄物は、廃棄処理や一時貯留するために、ドラム缶と共に処分場や一時保管場に移送され、作業者がドラム缶を上下反転させることにより、ドラム缶から一斉に排出される。
【0003】
ところで、廃棄物が収容されたドラム缶は、重量物であるため、作業者が少人数である場合、ドラム缶を上下反転させて廃棄物を排出することが困難である。そこで、廃棄物の排出作業を少人数であっても円滑に行うことができるようにするものとして、廃棄物排出装置が提供されている。
【0004】
かかる廃棄物排出装置は、例えば、前記ドラム缶を保持可能なドラム缶保持体と、クレーンのフックを掛止させて吊り下げ用の索条を連結するための連結部を有し、保持したドラム缶の中心線と交差する方向に延びる軸線周りで前記ドラム缶保持体を回転可能に支持する支持体とを備え、該ドラム缶保持体を回転させてドラム缶を上下反転させるようになっている(特許文献1、2、3参照)。
【0005】
これにより、上記構成の廃棄物排出装置は、クレーンによって吊り上げられた状態で、ドラム缶保持体とともにドラム缶を回転(上下反転)させることで、ドラム缶に収容された廃棄物を一斉に排出できるようになっている。
【0006】
そして、この種のものには、廃棄物が収容されたドラム缶の重心よりも低い位置に前記ドラム缶保持体の回転中心が設定され、ドラム缶の重心位置とドラム缶保持体の回転中心との相違(重心バランスの崩れ)によりドラム缶を上下反転させやすくしたものや(特許文献2参照)、ドラム缶保持体を回転させるための手動回転駆動装置を備え、作業者が少ない力でドラム缶を回転させることができるように構成されたものがある(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−252084号公報
【特許文献2】特開平11−322079号公報
【特許文献3】特開2000−63072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ドラム缶に収容された廃棄物は、該ドラム缶内で密集した状態になっていることがあり、ドラム缶を上下反転させるだけでは完全に排出されないことがある。そのため、作業者は、ドラム缶を叩いたり、揺すったりするといった煩雑な作業を行って、排出されなかった廃棄物を取り出す必要があった。
【0009】
そこで、本発明は、かかる実情に鑑み、作業者が直接廃棄物を取り出す手間を削減し、ドラム缶に収容された廃棄物の排出効率を向上させることのできる廃棄物排出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る廃棄物排出装置は、上端が開口したドラム缶を保持可能なドラム缶保持体と、吊り下げ用の索条を連結可能な連結部を有するとともに、保持したドラム缶の中心線と交差する方向に延びる軸線周りで前記ドラム缶保持体を回転可能に軸支する支軸を有した支持体とを備え、該ドラム缶保持体を回転させてドラム缶を上下反転させる廃棄物排出装置において、前記ドラム缶保持体は、保持したドラム缶の上下方向と対応する方向で長手をなすレールが側面上に設けられ、前記レール及び前記支軸は、該レールの長手方向の両端間で該レールに沿って相対的に移動可能に構成され、該支軸が少なくともドラム缶の上端側にあるレールの一端に位置した状態でドラム缶保持体の回転中心になるように構成されていることを特徴とする。
【0011】
上記構成の廃棄物排出装置によれば、例えば、クレーンのフックを連結部に掛けて索条を連結し、索条を引き上げて前記支持体を吊り上げると、支軸が前記レールの一端(ドラム缶の開口側のレール端)でドラム缶保持体を軸支した状態になる。すなわち、前記ドラム缶保持体は、レールの一端が支軸に係止されて支持体に吊支された状態になる。そして、前記支軸がレールの一端に位置した状態でドラム缶保持体の回転中心となるように構成されているため、前記ドラム缶保持体は、前記ドラム缶の中心線と直交する方向において支軸と相対的に回転することができる。これにより、作業者は、前記ドラム缶保持体の下端部を持ち上げることによって、前記レールの一端に位置した支軸を回転中心にしてドラム缶保持体とともにドラム缶を回転させることができる。
【0012】
そして、前記レールは、ドラム缶保持体の側面上に設けられているため、ドラム缶保持体と共に回転することになる。そうすると、前記レールの他端(ドラム缶の下端側にあるレールの他端)が前記レールの一端(ドラム缶の開口側のレールの一端)よりも高い場所に位置した状態になり、ドラム缶の荷重でレールが支軸上を移動する。そのため、レールが設けられたドラム缶保持体、及び該ドラム缶保持体に保持されたドラム缶は、該レールとともに移動することになる。
【0013】
そして、前記ドラム缶保持体は、レールが支軸上を移動し、該レールの他端部が該支軸によって係止されるに伴って衝撃を受けることになる。これにより、ドラム缶に収容された廃棄物は、密集した状態であっても、ドラム缶から勢いよく排出される。従って、前記廃棄物排出装置は、作業者が、ドラム缶内に残留した廃棄物を直接排出する手間を削減することができ、排出効率を向上させることができる。
【0014】
本発明の一態様として、前記レールは、ドラム缶保持体が保持したドラム缶の上下方向と対応する方向に長手をなして真っ直ぐに形成されていてもよい。このようにすれば、レールが全長に亘って加速しながら支軸上を移動することができる。すなわち、ドラム缶保持体及びドラム缶は、レールの形態(真っ直ぐな形態)に対応して加速しながら移動できる。そのため、前記ドラム缶は、レールの他端が支軸に係止されるに伴って強い衝撃を受けることになる。これにより、ドラム缶に収容された廃棄物は、密集した状態であっても、ドラム缶から勢いよく排出されることになる。従って、前記廃棄物排出装置は、作業者がドラム缶内に残留した廃棄物を直接排出する手間を削減することができ、排出効率を向上させることができる。
【0015】
本発明の他態様として、前記レールは、ドラム缶保持体が保持したドラム缶の上下方向と同方向で長手をなして真っ直ぐに形成された少なくとも二つ以上のレール形成部で構成され、該二つ以上のレール形成部は、保持したドラム缶の上下方向と対応する方向に順々に並び、かつ該方向と直交する一方向に向けて、順々に変位した状態で連結されていてもよい。
【0016】
このようにすれば、該レールは、階段状になり、レール形成部同士の連結部分に段差が形成される。これにより、レールの段差(レール形成部同士の連結部分)が支軸上を通過するとき、レールの軌道(ドラム缶保持体の進行方向)が急激に変わり、レールが該支軸に打ち付けられた状態になる。そのため、ドラム缶保持体、及びドラム缶は、レールの軌道が急激に変化するに伴って衝撃を受けることになる。
【0017】
これにより、ドラム缶に収容された廃棄物は、ドラム缶内で揺さぶられて解れた状態になり、密集した状態であってもドラム缶から排出される。従って、前記廃棄物排出装置は、作業者がドラム缶内に残留した廃棄物を直接排出する手間を削減することができ、排出効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明の廃棄物排出装置は、作業者が直接廃棄物を取り出す手間を削減し、ドラム缶に収容された廃棄物の排出効率を向上させることができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第一実施形態に係る廃棄物排出装置の正面図を示す。
【図2】第一実施形態に係る廃棄物排出装置の側面図を示す。
【図3】第一実施形態に係る廃棄物排出装置のドラム缶保持体が吊支されている状態での支軸を含むレールの断面図であって、図1のA−A断面図を示す。
【図4】第一実施形態に係る廃棄物排出装置のドラム缶保持体がスライドしている状態での支軸を含むレールの断面図を示す。
【図5】第一実施形態に係る廃棄物排出装置の側面図であって、ドラム缶保持体を回転させている状態を示す。
【図6】第一実施形態に係る廃棄物排出装置の側面図であって、ドラム缶保持体がスライドしている状態を示す。
【図7】本発明の第二施形態に係る廃棄物排出装置における、ドラム缶保持体が吊支されている状態での支軸を含むレールの断面図であって、図1のA−Aに相当する断面図を示す。
【図8】第二実施形態に係る廃棄物排出装置の側面図であって、ドラム缶保持体を回転させている状態を示す。
【図9】第二実施形態に係る廃棄物排出装置の側面図であって、ドラム缶保持体がスライドしている状態を示す。
【図10】第二実施形態に係る廃棄物排出装置の部分断面図であって、錘部の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の第一実施形態に係る廃棄物排出装置について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0021】
本実施形態に係る廃棄物排出装置は、上端が開口したドラム缶内に収容された廃棄物を排出するために、該ドラム缶を上下反転させるものである。該廃棄物排出装置は、図1及び図2に示すように、上端が開口したドラム缶Bを保持可能なドラム缶保持体(以下、単に保持体という)10と、吊り下げ用の索条を連結可能な連結部20を有するとともに、保持したドラム缶Bの中心線CLと交差する方向に延びる軸線周りで前記保持体10を回転可能に軸支する支軸22(図1参照)を有した支持体21とを備えている。該廃棄物排出装置1は、保持したドラム缶Bの上下方向と対応する方向で長手をなすレールRが前記保持体10の側面上に設けられている。レールR及び支軸22は、当該レールRの長手方向の両端間で該レールRに沿って相対的に移動可能に構成されている。そして、該支軸22は、少なくともドラム缶Bの上端側にあるレールRの一端に位置した状態で保持体10の回転中心になるように構成されている。
【0022】
具体的に説明すると、本実施形態に係る廃棄物排出装置1において、前記保持体10は、保持したドラム缶Bの転倒(前記中心線CLと交差する方向への傾倒)を防止するための転倒防止体100と、ドラム缶Bの脱落(前記中心線CLと同方向への移動)を防止するための脱落防止手段13(図1参照)とを備えている。
【0023】
前記転倒防止体100は、ドラム缶Bを配置可能な底部101と、該底部101の前記中心線CLと同方向における上端部に基端部が連設され、該ドラム缶Bの側面及び背面を覆うことが可能な壁部102と、該ドラム缶Bの前面を覆うように配置され、該壁部102に開閉可能に取り付けられた開閉部103とを有している。
【0024】
前記底部101は、円板状の底板104と、該底板104の周縁に起立して設けられた環状の起立部105とを有している。該起立部105は、底板104に載せたドラム缶Bの下端部を全周に亘って覆うことができるように形成されている。
【0025】
前記壁部102及び前記開閉部103は、それぞれ円弧板状に形成されている。具体的には、前記壁部102は、前記起立部105と曲率が同一の円弧をなし、周方向の長さが前記起立部105の半周よりも僅かに長く設定されている。そして、前記壁部102は、周方向と直交方向の一端(下端)が、前記起立部105の上端に連結されている。
【0026】
そして、前記壁部102及び前記開閉部103は、それぞれの周方向における一端部同士がヒンジ106を介して連結されている。これにより、開閉部103は、図1に示すように壁部102の周方向の両端間を開閉できるようになっている。さらに、前記壁部102及び前記開閉部103は、周方向における他端部同士を留め具107によって連結可能な構造になっている。これにより、前記開閉部103が前記壁部102の開放された部分を閉じた状態で維持できるようになっている。
【0027】
すなわち、前記開閉部103が前記壁部102の開放された部分を閉じた状態において、前記壁部102と前記開閉部103とが一体となって平面視円環状をなすようになっている。これにより、前記転倒防止体100は、壁部102及び開閉部103がドラム缶Bを包囲するため、ドラム缶Bを転倒させることなく保持可能な構造になっている。
【0028】
前記脱落防止手段13は、一方向に長手をなして形成された取付ベース13aと、取付ベース13aに挿通される受止部材13bとを備えている。そして、該受止部材13bは、一方向に長手をなして形成された挿通部131と、該挿通部131の長手方向における一端部から、突出するように一体形成され、前記転倒防止体100が保持したドラム缶Bの開口端部を押さえることができる受止部133とを備えている。
【0029】
前記挿通部131は、他端側に雄ネジ(採番しない)が形成されており、前記取付ベース13aに挿通されている。そして、該挿通部131は、取付ベース13aに挿通された状態において、他端部が取付ベース13aの下端から突き出るようになっている。さらに、該挿通部131は、取付ベース13aの下端から突き出た他端部に前記ナット132が螺合されている。そして、前記受止部材13bは、前記挿通部131が前記取付ベース13aに挿通された状態において、受止部133の先端部が前記転倒防止体100に保持されたドラム缶Bの開口端部に接触可能に形成されている。
【0030】
前記脱落防止手段13は、前記転倒防止体100に保持させたドラム缶Bの開口端部に受止部133の先端部を接触させた状態でナット132を締め付けることにより、該ドラム缶Bの開口端を押さえつけるようになっている。これにより、前記脱落防止手段13は、ドラム缶Bを前記中心線CLと同方向において移動することを防止することができる。
【0031】
本実施形態に係る廃棄物排出装置1は、前記レールRを形成するためのレール部材11が設けられている。図2に示すように、該レール部材11は、一方向に長手をなして形成され、前記壁部102に固設された部分と反対側(外周向きの面)の位置に溝部110が形成されている。
【0032】
さらに、前記溝部110は、図3に示すように、前記中心線CLと対応する方向で長手をなして真っ直ぐに形成されたストレート部111と、該ストレート部111の長手方向の両端に連続して形成された円形部112とを備えている。ストレート部111及び円形部112は、中心が前記中心線CLと対応する方向における一直線上に位置するように配置されている。
【0033】
これにより、本実施形態に係る廃棄物排出装置1は、前記溝部110(ストレート部111)の両側にレールRが形成されている。そして、前記レール部材11は、図1に示すように、対称となるように前記壁部102の両側面上に設けられている。これにより、前記レールRが保持体10の両側面上に設けられる。
【0034】
そして、本実施形態に係る廃棄物排出装置1において、前記支持体21は、互いに対峙した一対の第一支持体形成部210と、前記中心線CLに交差する方向に長手をなして形成され、長手方向における両端部が該第一支持体形成部210のそれぞれの一端部に接合された第二支持体形成部211とで構成されている。さらに、前記支持体21は、第二支持体形成部211の長手方向における中央部に、索条を連結可能な連結部20が固着されている。また、前記支持体21は、各該第一支持体形成部210の他端部に支軸22が連設されている。そして、前記支持体21は、排出作業を行う際、保持体10に干渉しないように形成されている。
【0035】
前記連結部20は、互いに間隔を有して対峙した一対の取付部200と、一方向に長手をなし、長手方向における一端部が各取付部200の一端部に接続された係止部201とを備え、略コの字状に形成されている。そして、該連結部20は、各取付部200の他端部が前記第二支持体形成部211の長手方向における中央部に固着される。これにより、該連結部20は、索条(クレーンのフック)を連結することができるようになっている。
【0036】
そして、前記支軸22は、角柱状に形成されている。すなわち、該支軸22は、図3に示すように、中心線CLと直交する方向から見た形状(以下、軸断面形状という)が、矩形状に形成されている。本実施形態に係る該支軸22は、軸断面形状が長方形状に形成されている。さらに、該支軸22は、矩形状に形成された部分の全ての角が丸みを帯びるように形成されている。
【0037】
ここで、前記支軸22の軸断面形状と前記溝部110との寸法関係について説明する。該支軸22は、軸断面形状の対角線が、円形部112の直径よりも僅かに短く設定されている。これにより、支軸22は、円形部112に位置している状態において、前記中心線CLの交差する方向の軸線周りで回転可能になる。換言すると、前記保持体10、及び前記支持体21は、支軸22が円形部112に位置している状態で、前記中心線CLと交差する方向の軸線周りで相対的に回転可能になる。
【0038】
さらに、該支軸22は、軸断面形状の長手方向と直交する方向(以下、幅方向という)における長さが、前記ストレート部111の幅W(レールR,R間)よりも僅かに短く設定されている。これにより、レールR及び支軸22は、該レールRの長手方向の両端間で相対的に移動できるようになっている。すなわち、本発明に係る廃棄物排出装置1は、レールRが、支軸22上を移動できるようになっている。そのため、保持体10、及び該保持体10に保持されたドラム缶Bは、該レールRとともにレールRの両端間の距離でスライドすることができるようになっている。換言すると、レールRと支軸22とは、相対的に移動可能に構成されているため、支軸22がレールRに案内されて該レールRの両端の間で移動することができるようになっているとも言える。
【0039】
また、該支軸22は、軸断面形状の長手方向(以下、軸断面長手方向という)が、前記ドラム缶保持体10をスライドさせたい角度に一致させた状態で前記支持体21に連設されている。これにより、前記支軸22は、レールR(ストレート部111)の長手方向と、前記軸断面長手方向とが一致することによって、円形部112からストレート部111に進入することができるようになっている。
【0040】
本実施形態における廃棄物排出装置1は、上記の構成に加えて、前記保持体10の底部101に取り付けられた錘部120を備えている。該錘部120は、前記底板104と同じ形状で形成されている。また、該錘部120は、前記保持体10を上下反転させるために必要な重さになるように厚みが設定されている。さらに、該錘部120は、中心位置が前記保持体10の中心線と一致するようにして保持体10の下端部に取り付けられている。さらに、錘部120は、前記保持体10を反転させるときに索条が連結されるため、前記保持体10の回転を考慮して、下端連結部121が前記開閉部103側に取り付けられていることが好ましい。
【0041】
本実施形態に係る廃棄物排出装置1についての説明は以上である。続いて、ドラム缶Bに収容された廃棄物を排出させる作業について図3〜図6を参照しつつ説明する。
【0042】
まず、前記保持体10は、前記開閉部103を開いた状態にし、開口を上に向けたドラム缶Bを該保持体10の底部101に配置する。その後、開閉部103を閉じた状態にし、前記壁部102と前記開閉部103との他端部同士を留め具107で固定する。これで、前記底部101に配置したドラム缶Bの転倒を防止した状態にする。
【0043】
そして、前記受止部133の先端部が前記転倒防止体100に保持させたドラム缶Bの上端部に接触するように、前記挿通部131の他端部に螺合したナット132を締め付ける。前記受止部133がドラム缶Bの上端に当接すると、前記ドラム缶Bが前記中心線CLと同方向において移動しないように保持した状態になる。
【0044】
そして、作業者は、クレーンのフックを前記係止部201に掛止させて、該連結部20に索条Cを連結する。この状態で索条Cを引き上げて、前記支持体21を吊り上げる。そうすると、図3に示すように、前記廃棄物排出装置1は、前記支軸22が前記円形部112の一方(ドラム缶Bの上端側にある円形部112)に位置した状態で吊り上げられる。
【0045】
さらに、作業者は、別のクレーンのフックを前記下端連結部121に連結して索条Cを連結する。その後、図5に示すように、下端連結部121に連結した索条Cを引き上げると、前記保持体10は、該支軸22が円形部112に位置している状態で、前記中心線CLに交差する軸線周りで回転する。すなわち、別の索条Cの引き上げに伴い、前記保持体10と共にドラム缶Bが前記支軸22を回転軸として回転する。また、前記レールRについても保持体10と一緒に回転する。そして、前記支軸22の軸断面長手方向とストレート部111の長手方向とが一致すると、図4に示すように、支軸22上をレールR(ストレート部111)が移動する。
【0046】
この状態で、レールRは、一端部が他端部よりも低い場所に位置した状態になる。すなわち、前記保持体10と前記ドラム缶Bと前記錘部120との荷重が、常時下向きに働いているため、図6に示すように、レールRは、支軸22上を加速しつつ移動する。さらに、レールRが設けられた前記保持体10、及び該保持体10に保持されたドラム缶Bは、該レールRとともに移動する。換言すると、支軸22がレールRの一端から他端に向けてスライドするとも言える。
【0047】
そして、スライドしたレールRは、その他端部が支軸22に到達すると、スライドが強制的に止められる。すなわち、レールRは、該レールRの他端(レールRの終端となる円形部112)が該支軸22に係止される。そうすると、レールRが、支軸22に係止されるに伴って衝撃が発生し、該レールRが設けられた保持体10、及び該保持体10に保持されたドラム缶Bが衝撃を受けることになる。従って、ドラム缶Bに収容された廃棄物は解れた状態になってドラム缶Bから勢いよく排出される。
【0048】
さらに、該支軸22は、ストレート部111の他端部に形成された円形部112においても保持体10と相対的に回転することができるため、前記保持体10は、支軸22が他方の円形部112に到達すると、支軸22を回転中心として回転可能な状態になる。従って、別の索条CをさらにレールRとともに引き上げることによって、該保持体10に保持されたドラム缶Bの開口を完全に下に向けた状態にできるため、ドラム缶Bに収容された廃棄物は、一斉に排出される。さらに、ドラム缶Bは、保持体10に取り付けられた前記脱落防止手段13によって脱落しないように保持されているため、完全に上下反転した状態であっても脱落することはない。
【0049】
そして、廃棄物を排出した後は、別の索条Cの引き上げをゆるめて前記保持体10を回転させ、前記支軸22の軸断面長手方向と前記ストレート部111の長手方向とが一致すると、前記レールRの他端から一端に向けて移動する。これにより、前記廃棄物排出装置1を作業前の状態に戻すことができる。
【0050】
以上のように、本実施形態に係る廃棄物排出装置1は、ドラム缶B内に収容された廃棄物が密集状態であっても、排出することが可能である。そのため、前記廃棄物排出装置1は、作業者がドラム缶Bを叩いたり、揺すったりして残留した廃棄物を取り出す手間を削減することができ、排出効率を向上させることができるという優れた効果を奏し得る。
【0051】
続いて、本発明の第二実施形態について図7〜図10を参照しながら説明する。なお、本実施形態に係る廃棄物排出装置は、レールと錘部とが異なる以外、第一実施形態の廃棄物排出装置1と同一のものである。そのため、第一実施形態と相当する構成、又は同一の構成については、同一名称及び同一符号を付して説明を割愛し、レールと錘部とについてのみ説明することとする。
【0052】
図7に示すように、本実施形態に係る廃棄物排出装置において、レールR’,R’は、前記保持体10が保持したドラム缶Bの上下方向と同方向で長手をなして真っ直ぐに形成された少なくとも2つ以上のレール形成部113で構成されている。さらに、該二つ以上のレール形成部113は、保持したドラム缶Bの上下方向と対応する方向に順々に並び、かつ該方向に直交する一方に向けて、順々に変位した状態で連設されている。
【0053】
本実施形態に係る廃棄物排出装置において、前記レールR’を形成するためのレール部材11’が設けられている。該レール部材11’は、図3に示すように、一方向に長手をなして形成され、前記壁部102に連設された部分と反対側(外周向きの面)の位置に形成された溝部110’が形成されている。なお、本実施形態において該溝部110’は、四つのレール形成部113が連続して設けられることにより、階段状に形成されている。 ここで、前記レール形成部113と前記支軸22との寸法の関係について説明すると、該レール形成部113のそれぞれは、幅W’(レールR’,R’間)が前記支軸22の幅方向の長さよりも僅かに長く設定されている。さらに、該レール形成部113のそれぞれは、長さが前記支軸22の軸断面長手方向の長さ以上の長さに設定されている。
【0054】
さらに、前記レール形成部113のそれぞれは、前記中心線CL方向において、前記支軸22の軸断面長手方向の長さ以上の長さで隣り合うレール形成部113、113が重なるように配置されている。そして、前記レール形成部113のそれぞれは、前記ドラム缶Bの上下方向に一方側から他方側に向けて順々に並べられ、かつ該方向に直交する一方向に向けて、順々に変位した状態で配置されている。
【0055】
そして、前記レール形成部113のそれぞれは、隣り合うレール形成部113に対して、ドラム缶Bの上下方向と直交する一方向で該レール形成部113の幅W’と同じ長さだけ変位した状態で順々に配置されている。これにより、該溝部110’は、階段状になり、該レール形成部113同士の連設部分に段差が形成される。さらに、前記溝部110’は、第一実施形態と同様、中心線CLと対応する方向における両端に前記円形部112が設けられている。
【0056】
これにより、本実施形態に係る廃棄物排出装置1’は、前記溝部110’(レール形成部113)の両側にレールR’が形成される。そして、前記レール部材11’は、図1に示すように、対称となるように前記壁部102の両側面上に設けられている。これにより、前記レールR’が保持体10の両側面上に形成される。
【0057】
続いて、前記底部101に取り付けられた錘部120’について説明する。該錘部120’は、図10に示すように平面視形状が前記底板104の平面視形状と一致するように形成され、中空構造の本体122と、該本体122に揺動可能に内装された揺動錘124と、該揺動錘124を該本体122の中心に向けた方向に付勢するための付勢手段123とを備える。そして、該本体122は、中心線CLと直交する方向に、長手をなした空間を有するように形成されている。さらに、前記揺動錘124は、重量が前記保持体10に与える揺さぶり効果を強めるために必要な重さに設定されている。また、該本体122は、前記底板104に対して着脱自在に取り付けられている。
【0058】
本実施形態に係る廃棄物排出装置1’についての説明は以上である。続いて、ドラム缶Bに収容された廃棄物を排出させる作業について図8及び図9を参照しつつ説明する。まず、第一実施形態と同様で、作業者は、前記転倒防止体100でドラム缶Bが転倒しないように保持する。さらに、作業者は、前記脱落防止手段13でドラム缶Bが前記中心線CLと同方向において移動しないように保持する。
【0059】
そして、作業者は、クレーンのフックを前記係止部201に掛止させて、該連結部20に索条Cを連結する。この状態で索条Cを引き上げて、前記支持体21を吊り上げる。そうすると、図3に示すように、前記廃棄物排出装置1は、前記支軸22が前記円形部112の一方(ドラム缶Bの上端側にある円形部112)に位置した状態で吊り上げられる。
【0060】
さらに、作業者は、別のクレーンのフックを前記下端連結部121に連結して索条Cを連結する。その後、図5に示すように、下端連結部121に連結した索条Cを引き上げると、前記保持体10は、該支軸22が円形部112に位置している状態で、前記中心線CLに交差する軸線周りで回転する。すなわち、別の索条Cの引き上げに伴い、前記保持体10と共にドラム缶Bが前記支軸22を回転軸として回転する。また、前記レールRについても保持体10と一緒に回転する。そして、前記支軸22の軸断面長手方向とレール形成部113の長手方向とが一致すると、支軸22上をレールR(レール形成部113)が移動する。
【0061】
そして、レールR’の段差(レール形成部113同士の連結部分)が支軸22上を通過するとき、レールR’の軌道(保持体10の進行方向)が急激に変わるため、レールR’が該支軸22に打ち付けられた状態になる。これにより、保持体10、及びドラム缶Bは、レールR’の軌道が急激に変化するに伴って発生する衝撃を受けることになる。従って、ドラム缶Bに収容された廃棄物は、該ドラム缶Bが揺さぶられたときと同じ効果を得ることができ、密集状態であっても、排出されやすくなる。
【0062】
また、前記揺動錘124は、前記レールR’が段差に沿って軌道を急激に変えるに伴い、前記本体122に内装された付勢手段123に打ち付けられる。そうすると、付勢手段123の反発で、揺動錘124は、本体122の中心に向けて付勢されることになる。そのため、該揺動錘124は、本体122内の空間を複数回往復することになる。
【0063】
これにより、ドラム缶Bに収容された廃棄物は、ドラム缶B内で揺さぶられて解れた状態になり、密集した状態であってもドラム缶Bから排出される。従って、前記廃棄物排出装置1’は、作業者が、ドラム缶B内に残留した廃棄物を直接排出する手間を削減することができ、排出効率を向上させることができるという優れた効果を奏し得る。
【0064】
なお、本発明の廃棄物排出装置は、上記第一及び第二実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えることは勿論のことである。
【0065】
第一実施形態において、前記溝部110は、前記中心線CLに対応する方向に沿って真っ直ぐに形成されているが、これに限定されるものではない。例えば、前記溝部110は、上下に斜めになるように設けられていてもよい。
【0066】
また、第二実施形態において、前記レール形成部113のそれぞれは、前記中心線CLに対応する方向に沿って真っ直ぐに形成されているが、これに限定されるものではない。例えば、前記レール形成部113のそれぞれは、上下に斜めになるように設けられていてもよい。
【0067】
また、第二実施形態において、前記溝部110’は、四つの前記レール形成部113を有するように形成されていたが、これに限定されるものではない。例えば、前記溝部110’は、2つ以上のレール形成部113で構成してもよい。
【0068】
また、第一実施形態におけるレールR、及び第二実施形態におけるレールR’は、支軸22が、前記円形部112に位置した状態において、支軸22を軸心として保持体10を回転させることができ、かつ溝部110及び溝部110’の一端と他端とに亘ってスライドすることが可能であれば、前記開閉部103側に一つ設けられていてもよい。
【0069】
また、第一及び第二実施形態に置いて脱落防止手段13は、前記挿通部131の他端側に設けられた雄ネジをナット132で締め付けることにより固定していたが、これに限るものではなく、ラチェット構造を採用していてもよい。例えば、前記取付ベース130に歯車を内装し、前記挿通部の他端側に設けた雄ネジの代わりに環状の溝を長手方向に複数設け、歯車と係合するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1…廃棄物排出装置、10…保持体(ドラム缶保持体)、11…レール部材、13…脱落防止手段、13a…取付ベース、13b…受止部材、20…連結部、21…支持体、22…支軸、100…転倒防止体、101…底部、102…壁部、103…開閉部、104…底板、105…起立部、106…ヒンジ、107…留め具、110…溝部、111…ストレート部、112…円形部、113…レール形成部、120…錘部、121…下端連結部、122…本体、123…付勢手段、124…揺動錘、130…取付ベース、131…挿通部、132…ナット、133…受止部、200…取付部、201…係止部、210…第一支持体形成部、211…第二支持体形成部、B…ドラム缶、C…索条、CL…中心線、R…レール、W…幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端が開口したドラム缶を保持可能なドラム缶保持体と、吊り下げ用の索条を連結可能な連結部を有するとともに、保持したドラム缶の中心線と交差する方向に延びる軸線周りで前記ドラム缶保持体を回転可能に軸支する支軸を有した支持体とを備え、該ドラム缶保持体を回転させてドラム缶を上下反転させる廃棄物排出装置において、前記ドラム缶保持体は、保持したドラム缶の上下方向と対応する方向で長手をなすレールが側面上に設けられ、前記レール及び前記支軸は、該レールの長手方向の両端間で該レールに沿って相対的に移動可能に構成され、該支軸が少なくともドラム缶の上端側にあるレールの一端に位置した状態でドラム缶保持体の回転中心になるように構成されていることを特徴とする廃棄物排出装置。
【請求項2】
前記レールが、ドラム缶保持体が保持したドラム缶の上下方向と対応する方向に長手をなして真っ直ぐに形成されている請求項1に記載の廃棄物排出装置。
【請求項3】
前記レールが、ドラム缶保持体が保持したドラム缶の上下方向と同方向で長手をなして真っ直ぐに形成された少なくとも二つ以上のレール形成部で構成され、該二つ以上のレール形成部は、保持したドラム缶の上下方向と対応する方向に順々に並び、かつ該方向と直交する一方向に向けて、順々に変位した状態で連結されている請求項1に記載の廃棄物排出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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