説明

廃棄物最終処分場の覆土構造、廃棄物最終処分場の覆土方法

【課題】廃棄物を分解するために、廃棄物まで雨水の10〜20%程度を浸透可能であるとともに、覆土構造内に浸入したそれ以外の雨水を排水することが可能であり、かつ、従来に比べて厚さを抑えることのできる廃棄物の最終処分場の覆土構造を提供する。
【解決手段】廃棄物の最終処分場の覆土構造1は、廃棄物層6の上方に設けられた路盤層5と、路盤5層の上方に設けられた排水性アスファルトコンクリート層4と、排水性アスファルトコンクリート層4の上面に敷設された通水性シート3と、通水性シート3の上方に盛られた覆土層2と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物最終処分場の覆土構造及び覆土方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、廃棄物の最終処分場では、埋め立てられた廃棄物の飛散等を防止するとともに、その上部を有効利用できるように、廃棄物の上部に覆土をおこなっている。このような覆土構造には、廃棄物を分解するために、廃棄物まで雨水の10〜20%程度を浸透可能である機能(以下、雨水調整機能という)、及び、覆土構造内に浸入したそれ以外の雨水を排水する機能(以下、雨水排水機能という)を備えることが求められる。
【0003】
このような機能を備えた覆土構造として、例えば、特許文献1には、廃棄物の上方に開口を有する通気性防水シートを敷設し、この通気性防水シートの上方に粗粒土層と、細粒土層とを下からこの順で設け、これら粗粒土層と細粒土層との境界に勾配を設ける構成が記載されている。かかる構成によれば、粗粒土層と細粒土層の境界において、雨水がキャピラリーバリア効果により保持され、勾配に沿って外部まで流れるため、雨水排水機能が確保され、また、通気性防水シートの開口を調整することにより、廃棄物まで到達する雨水の量を調整することができるため、雨水調整機能を確保することができる。
【特許文献1】特開2006―231156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の覆土構造では、粗粒土層と細粒土層の間でキャピラリーバリア効果を発生させるためには、これら粗粒土層と細粒土層とを200mm程度の厚さとしなければならず、覆土の厚さが厚くなり、その分、廃棄物を埋設することができる埋め立て容積が低減してしまうこととなる。
【0005】
本発明は、上記の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、雨水調整機能及び雨水排水機能を備えた覆土構造の厚さを低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の廃棄物最終処分場の覆土構造は、廃棄物の上方に設けられた排水性アスファルトコンクリート層と、前記排水性アスファルトコンクリート層の上面に敷設された通水シートと、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記の覆土構造において、前記廃棄物と、前記排水性アスファルトコンクリート層との間に設けられた砂利層と、前記通水シートの上方に盛られた覆土層と、を備えてもよい。
また、前記排水性アスファルトコンクリート層の上面は、平面上の所定の位置に向かって下方に傾斜するように構成されており、前記通水シートの上方の前記所定の位置に、外部へ通じる排水用の配管が埋設されていてもよい。
また、前記通水シートは通気性を有し、前記覆土層を通り、地上まで到達するように通気管が設けられていてもよい。
【0008】
また、本発明の廃棄物最終処分場の覆土方法は、前記廃棄物の上方に排水性アスファルトコンクリート層を設け、前記排水性アスファルトコンクリート層の上面に通水シートを敷設することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、排水性アスファルトコンクリート層及び通水シートが一部の雨水を通水可能であるため、覆土構造に雨水調整機能及び雨水排水機能を持たせることができる。さらに、これら排水性アスファルトコンクリート層及び通水シートは、従来の土砂層を設けることにより雨水調整機能及び雨水排水機能を確保する方法における土砂層の厚さに比べて厚さを抑えることができるため、廃棄物を埋設することができる埋め立て容積を増加させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の覆土構造の一実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態の最終処分場の覆土構造1を示す鉛直断面図である。同図に示すように、覆土構造1は、廃棄物層6の上方に設けられた路盤層5と、路盤層5の上方に設けられた排水性アスファルトコンクリート層4と、排水性アスファルトコンクリート層4の上面に敷設された通水性シート3と、通水性シート3の上方に設けられた覆土層2とにより構成される。
【0011】
路盤層5は、廃棄物層6の上面の凹凸を吸収するために設けられ、砂利が敷き詰められてなり、非常に大きな通水性及び通気性を有する。また、路盤層5は、その厚さが150mm〜200mm程度であり、上面が水平視において後述する集排水管10の位置に向かって下方に3%程度の勾配で傾斜するように形成されている。
【0012】
排水性アスファルトコンクリート層4は、厚さは50mm程度の空隙率の高い排水性アスファルトコンクリートが硬化してなり、路盤層5の上面に設けられた傾斜に合わせて、3%程度の勾配で傾斜している。排水性アスファルトコンクリート層4は空隙率を調整することにより、通水性を調整することができる。また、排水性アスファルトコンクリートは内部に空隙を有するため、通気性を有している。さらに、排水性アスファルトコンクリート層4は変形追従性を備えており、廃棄物層6の一部に沈下が生じた場合であっても、沈下による変形に追従して変形することができる。
【0013】
排水性アスファルトコンクリート層4の上面には、通水性シート3が密着するように敷設されている。通水性シート3は通水性及び通気性を有するシート状部材からなる。このような通水性シート3としては、例えば、東洋紡績株式会社製の防根透水シートや旭化成ジオテック株式会社製の通気防水シートなどを用いることができる。本実施形態では、排水性アスファルトコンクリート層4と通水性シート3とが一体となった状態で、10〜20%程度の通水性が確保されるように、排水性アスファルトコンクリート層4の空隙率や厚み等が調整されている。
【0014】
覆土層2は、厚さ500mm〜1500mm程度の土砂が通水性シート3の上に盛られてなり、60%程度の通水性を有する。覆土層2内には、水平視において20〜30mおきに水平方向に延びるように集排水管10が埋設されている。集排水管10は、その先端が覆土構造1の外部まで到達しており、後述するように、通水性シート3上面に沿って集排水管まで到達した雨水は集排水管10を通して外部に排出される。また、覆土層2の下端から地表面まで上下方向に延びるようにガス排出用配管11が埋設されている。
【0015】
廃棄物層6の廃棄物を有機分解するためには、水分が供給される必要がある。このため、覆土構造1には雨水の10〜20%程度を廃棄物層6まで透過する通水性が求められる。図2は、覆土構造1における雨水の流れを示す鉛直断面図である。本実施形態では、覆土層2が60%程度の通水性を有し、さらに、通水性シート3及び排水性アスファルトコンクリート層4が20%程度の通水性を有するため、雨水の10〜20%程度が通水性シート3を通過する。また、通水性シート3及び排水性アスファルトコンクリート層4を通過した雨水は、通水性の大きい路盤層5を通って廃棄物層6まで到達し、これにより、雨水調整機能が確保されることとなる。
【0016】
また、通水性シート3まで到達した雨水のうち、廃棄物を有機分解するのに必要な分は通気性シート3及び排水性アスファルトコンクリート層4を通過するものの、残りの雨水は通水性シート3又は排水性アスファルトコンクリート層4により遮水される。この遮水された雨水は、通水性シート3及び排水性アスファルトコンクリート層4が傾斜しているため、傾斜の勾配に沿って集排水管10まで流れる。そして、集排水管10まで到達した雨水は集排水管10を通して外部に排出されることにより、雨水排水機能が確保されることとなる。
【0017】
また、廃棄物層6の廃棄物が有機分解されるとガスが発生する。図3は、廃棄物層6から発生したガスの流れを示す鉛直断面図である。本実施形態では、路盤層5、排水性アスファルトコンクリート層4及び通水性シート3は通気性を有するため、廃棄物層6から発生したガスは、これら路盤層5、排水性アスファルトコンクリート層4及び通水性シート3を通過して、覆土層2まで到達する。そして、覆土層2まで到達したガスはガス排出用配管11を通って地上に排出されることとなる。
【0018】
以上したように、本実施形態によれば、排水性アスファルトコンクリート層4を設けるとともに、排水性アスファルトコンクリート層4の上面に通水性シート3を敷設することとしたため、覆土構造1に雨水調整機能及び雨水排水機能を持たせることができる。そして、これら排水性アスファルトコンクリート層4及び通水性シート3は、従来の土砂層を設けることにより雨水調整機能及び雨水排水機能を確保する方法における土砂層の厚さに比べて厚さを抑えることができるため、廃棄物を埋設することができる埋め立て容積を増加させることができる。
【0019】
また、路盤層5、排水性アスファルトコンクリート層4及び通水性シート3は通気性を有するため、廃棄物層6の廃棄物から発生したガスは、これら路盤層5、排水性アスファルトコンクリート層4及び通水性シート3を通過し、覆土層2の下端から地表面まで上下方向に延びるように設けられたガス排出用配管11を通じて、外部へ排出されることとなる。
【0020】
また、廃棄物層6に沈下が生じた場合には、排水性アスファルトコンクリート層4がこれに追従して変形する。このように排水性アスファルトコンクリート層4が変形することにより、排水性アスファルトコンクリート層4の遮水性が低下しても、上面に敷設された通水性シート3により遮水性の一部を確保することができるため雨水排水機能が大幅に低下することを防止できる。逆に、通水性シート3が破損しても、下方の排水性アスファルトコンクリート層4により遮水性の一部を確保することができるため雨水排水機能が大幅に低下することを防止できる。このため、雨水調整機能及び雨水排水機能を長期にわたって確保することができる。
【0021】
また、排水性アスファルトコンクリート層4のみで遮水性を確保しようとすると、排水性アスファルトコンクリート層4に目詰まりを生じてしまう虞があるが、排水性アスファルトコンクリート層4の上面に通水性シート3を敷設し、これら排水性アスファルトコンクリート層4及び通水性シート3により遮水性を確保することとしたため、排水性アスファルトコンクリート層4に到達する雨水の量が削減し、目詰まりを防止できる。
【0022】
なお、本実施形態では、通水性シート3により遮水された雨水を、集排水管10を通じて外部に排出することとしたが、これに限らず、覆土構造1の全体に亘って通水性シート3の上面を傾斜させることによっても、遮水された雨水を外部へ排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態の最終処分場の覆土構造を示す鉛直断面図である。
【図2】覆土構造における雨水の流れを示す鉛直断面図である。
【図3】廃棄物層から発生したガスの流れを示す鉛直断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 覆土構造
2 覆土層
3 通水性シート
4 アスファルトコンクリート層
5 路盤層
6 廃棄物層
10 集排水管
11 ガス排出用配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物の最終処分場の覆土構造であって、
廃棄物の上方に設けられた排水性アスファルトコンクリート層と、
前記排水性アスファルトコンクリート層の上面に敷設された通水シートと、を備えることを特徴とする
廃棄物最終処分場の覆土構造。
【請求項2】
請求項1記載の最終処分場の覆土構造であって、
前記廃棄物と、前記排水性アスファルトコンクリート層との間に設けられた砂利層と、
前記通水シートの上方に盛られた覆土層と、を備えることを特徴とする廃棄物最終処分場の覆土構造。
【請求項3】
請求項1又は2記載の廃棄物最終処分場の覆土構造であって、
前記排水性アスファルトコンクリート層の上面は、平面上の所定の位置に向かって下方に傾斜するように構成されており、
前記通水シートの上方の前記所定の位置に、外部へ通じる排水用の配管が埋設されていることを特徴とする廃棄物最終処分場の覆土構造。
【請求項4】
請求項1から3のうち何れか1項記載の廃棄物最終処分場の覆土構造であって、
前記通水シートは通気性を有し、
前記覆土層を通り、地上まで到達するように通気管が設けられていることを特徴とする廃棄物最終処分場の覆土構造。
【請求項5】
廃棄物の最終処分場の覆土方法であって、
前記廃棄物の上方に排水性アスファルトコンクリート層を設け、
前記排水性アスファルトコンクリート層の上面に通水シートを敷設することを特徴とする廃棄物最終処分場の覆土方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−22969(P2010−22969A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−188935(P2008−188935)
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】