説明

廃棄物最終処分場の覆土構造

【課題】 従来に比べて効率良く施工でき、表層を被覆土層としてシートを敷設するだけの簡単な構造で通気性と防水性を確実なものにでき、このシートに通水機能をさらに付与することで下部廃棄物層への雨水の浸透量を制御でき、安定した覆土を得ることのできる廃棄物最終処分場の覆土構造を提供する。
【解決手段】 廃棄物層1と、粗粒土層2とその上層の細粒土層4とからなる被覆土層との間に、通気性防水シート3を勾配をもたせて敷設するとともに、この通気性防水シート3に通水及び通気用の開口部22を点在させ、該開口部22の縁を上方に立ち上げて筒状部21とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物最終処分場の覆土構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
廃棄物最終処分場においては、埋め立てられた廃棄物が適切に分解し、安定化するように図る必要があり、かつ、廃棄物の飛散防止と腐敗防止などのために埋め立てた廃棄物が表層に露出しないように廃棄物の表面に最終的に覆土等の表層を形成するようにしている。この表層を形成する最終覆土工法としては、一般の土砂などによる覆土工法または遮水シートやアスファルトなどの遮水基材を用いたキャッピング工法が選択的に用いられている。
【0003】
前記覆土工法には、従来、例えば、地盤材料のみによるキャピラリーバリア効果を利用する構造がある。これは、上層に砂等の細粒土、下層に礫等の粗粒土の2層構造として、保水性の差異すなわちpF値の差異(pF値;細粒土>粗粒土)および勾配を設けることで、上層の細粒土の保水力が限界高さまでは側方排水を促進させ、廃棄物層への浸透量を制御するものである。
【0004】
しかしながら、このような地盤材料のみによるキャピラリーバリア構造においては、一定の降雨強度以内ではバリア効果が保たれるが、降雨強度が一定の値を超過すると、下部砂層へ浸透が開始され、降雨量(降雨強度)が増すほど下部への浸透率(降雨強度に対する下部への浸透量の比)も大きくなり、かつその相関関係もバラツキが大きいため、この構造を用いて廃棄物層への浸透量を制御することは容易ではない。
【0005】
一方、前記覆土工法と併せて、遮水シートやアスファルトなどの遮水基材を用いたキャッピング工法を行う技術が、以下の特許文献において開示されている。
【特許文献1】特開2001−17933号公報
【0006】
これは図8に示すように、埋設廃棄物10の埋め立て領域の底部に動水勾配を付すとともに埋設廃棄物の下部領域を遮水層20で覆い、その外周面に透水層16を設けて、当該透水層16の内部もしくは外部に前記動水勾配に沿う導水路12を形成する。前記埋設廃棄物10の上表面に前記導水路12に至る動水勾配を付して遮水層20Aで覆い、前記遮水層20Aの上層に保水性(pF値)の小さい粗粒層24を設け、当該粗粒層の上層に保水性(pF値)の大きい細粒層26を設けて表土28で覆ったものである。
【0007】
これによれば、埋設廃棄物10に浸透する降雨量を大幅に減少させることが出来、廃棄物に雨水が浸透して有害物質により汚染された水が大量に発生することを防止できる。しかし、廃棄物を早期に安定化させるためには、適度の水と空気の循環による廃棄物の分解促進が必要であるところ、前記特許文献1の廃棄物埋設構造においては、遮水層20Aによる側方への排水効率が大きく、通常の降雨強度(10mm/h程度)では雨水は廃棄物層へほとんど浸透せず、廃棄物層に適度な水分量を供給することが出来ない。
【0008】
ここで、廃棄物層に適度な水分量を供給する技術として、幾つかの技術が以下の特許文献において開示されている。
【特許文献2】特許第3354920号公報
【特許文献3】特開平2004−73907号公報
【特許文献4】特開平2004−73908号公報
【0009】
特許文献2において開示されている廃棄物最終処分場の最終覆土工法では、廃棄物最終処分場の埋立地に埋め立てた廃棄物の表面に最終的に覆土等の表層を形成するに際し、この表層を透水性を有する部分と、遮水性または難透水性を有する部分とが混在するように形成するようにしている。
【0010】
具体的には、透水性を有する部分と、遮水性または難透水性を有する部分とを、帯状に交互に形成するとともに、全ての遮水性または難透水性を有する部分を傾斜面に形成し、かつ、その下縁にそって排水施設を設け、遮水性または難透水性を有する部分に降った雨水を地表水として埋立地外に排水するようにしたものであり、透水性を有する部分と遮水性または難透水性を有する部分の比率を、降雨量に応じて可変にできるようにしている。
【0011】
また、特許文献3に記載の技術は、廃棄物処分場において、埋立完了した廃棄物の上面を覆う所定厚み、かつ所定透水係数の浸透調節層と、浸透調節層上に設置された雨水貯留槽と、貯留槽上を覆う最終覆土層とを備え、貯留槽の底面には適宜開口率で小孔を形成し、降雨により覆土層を通過して貯留槽内に一時貯留された雨水が小孔および浸透調節層を通じて順次所定水量で廃棄物内に浸透させるようにしたものである。
【0012】
また、特許文献4に記載の技術は、廃棄物処分場において、埋立完了した廃棄物の上面に、処分場の中央から周縁に至るにつれて傾斜する勾配の最終覆土を施し、覆土上を遮水シートで覆うとともに、遮水シートに所定の開口率で複数のスリットないし小孔を開け、該スリットないし小孔を通じて遮水シート上に降り注ぐ降雨の一部を覆土を通じて廃棄物内に浸透させるものである。
【0013】
しかし、特許文献2に記載の技術は、覆土工法とキャッピング工法との異なる工法で同時に、または交互に施工することになり、施工性がよくない。しかも、遮水性または難透水性を有する部分だけを傾斜面に形成するものであるため、さらに施工性のよくないものになっている。
【0014】
また、特許文献3、4に記載の技術は、廃棄物への雨水の浸透量を調節できるものではあるが、特許文献3に記載の技術はそのための構造として貯留槽の設置を必要とし、設備全体が大掛かりなものになる。特許文献3に記載の技術は、遮水シートを敷設するだけですむが、覆土構造として遮水シートが最上層になり、露出するため、そのままでは埋立地を緑化して公園などとして利用することができない。
【0015】
このような問題に対して、雨水の浸透量を調節できるとともに、施工性が良く、設備全体が大掛かりなものとなることなく、覆土構造として遮水シートが最上層に露出しない技術として、以下の特許文献に記載の技術が存在する。
【特許文献5】特願2004−018126
【特許文献6】特願2004−201239
【0016】
特許文献5に記載の技術は、図9に示すように、廃棄物11の上に敷設する下層覆土材15上に、全面に多数の凹部18と凸部13をスポット的に設け、凸部13の頂部に雨水浸透・発生ガス排気のための開口17を形成したシート9を敷設し、更にその上面に上層覆土材19を敷設して転圧し、シート9の凹凸を上下の覆土層内に食い込ませるものである。なお、図中8はシート9の凹凸を重ね合わせた継ぎ目であり、7は上層覆土材19を覆う表層材である。
【0017】
これによれば、雨水は凸部の頂部に設けた開口から浸透するから、雨水浸透調整機能および発生ガス排出機能を確保できるとともに、シートの敷設に際しては覆土表面を畝状に形成するなどの手間を要せず、シートを容易に敷設できて施工性が良い。
【0018】
また、特許文献6に記載の技術は、図10に示すように、廃棄物層1の上に勾配をもたせて形成する粗粒土層(礫層)2と、この粗粒土層2の上に敷設されて、点在する複数の小孔5により形成される通水部を設けた通気性防水シート3と、この通気性防水シート3の上に形成される細粒土層(砂層)4とで構成する。また、小孔5には、開口縁に鉛直な立ち上がり部6を形成する。
【0019】
これにより、キャピラリーバリア機能を備えたシートに通水機能が付与されることになり、基本的な機能である防水性と通気性を確保することができる。また、細粒土層4内の鉛直浸透水のみを小孔5の開口内に浸入させて下方に浸透させることができ、また、通気性防水シート3表面を流れる水は立ち上がり部6の存在により小孔5から下方に浸透することが阻止されるから、小孔5の開口部の面積のみで下方への浸透量を確実に制御できる。そして通気性防水シート3の敷設に際しては覆土表面を畝状に形成するなどの手間を要せず、通気性防水シート3を容易に敷設できて施工性が良い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかし、特許文献5または特許文献6の技術においては、シートを被覆土層間に配置するため、廃棄物を埋め立てた後、被覆土を敷設し、その上からシートを敷設した後に再び被覆土を敷設することとなり、施工時に被覆土の敷設工程が2回に分断されて行われることとなるため、工程数削減について更に検討する余地があると言える。
【0021】
また、施工の際の現地発生土を分級して使用する場合には、廃棄物の埋め立ての後、現地発生土の分級作業を終えてからでないと被覆土及びシートの敷設ができないため、作業効率について改善の余地があると言える。
【0022】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、従来に比べて効率良く施工でき、表層を被覆土層としてシートを敷設するだけの簡単な構造で通気性と防水性を確実なものにでき、このシートに通水機能をさらに付与することで下部廃棄物層への雨水の浸透量を制御でき、安定した覆土を得ることのできる廃棄物最終処分場の覆土構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
前記目的を達成するため、請求項1記載の本発明は、廃棄物層と被覆土層との間に、遮水シートを勾配をもたせて敷設するとともに、この遮水シートに通水及び通気用の開口部を点在させ、該開口部の位置を遮水シート面よりも高く形成したことを要旨とするものである。
【0024】
請求項1記載の本発明によれば、遮水シートを勾配をもたせて敷設するとともに、この遮水シートに通水及び通気用の開口部を点在させ、該開口部の位置を遮水シート面よりも高く形成したから、降雨時には開口部に鉛直に流入する雨水のみが下方の廃棄物層に浸透し、その他の雨水は筒状部に遮られることにより開口部に流入することなく、遮水シートの勾配に従って側方に排水される。すなわち、開口部の面積によって、廃棄物層に浸透する雨水の量を制御することが出来る。
【0025】
また、この遮水シートを、廃棄物層と被覆土層との間に敷設するようにしたから、廃棄物を埋め立てて遮水シートを敷設した後に被覆土層を敷設する工程を1工程で済ませることができ、被覆土層として分級した現地発生土を使用する場合であっても、廃棄物の埋め立て後、遮水シートの敷設中に分級を行うことが出来、分級作業が終わるまで施工作業を中断する必要が無い。よって、廃棄物層に浸透する雨水の量を制御可能とした上で、従来に比べ作業効率良く施工することができる。
【0026】
なお、遮水シートは表層に位置せず、表層を被覆土層とすることから、覆土構造をそのまま緑化して公園などとして利用することも可能である。
【0027】
請求項2記載の本発明は、開口部は縁を上方に立ち上げて筒状部とすることを要旨とするものである。
【0028】
請求項2記載の本発明によれば、前記作用に加えて、開口部の位置を遮水シート面よりも高く形成するのに簡単で確実な方法を提供するものであり、エンボスとする場合に比べて、その高さ位置を開口部径および周囲の高さを変えずに自由に設定できる。
【0029】
請求項3記載の本発明は、被覆土層は、遮水シートの直上に位置する粗粒土層と、粗粒土層の直上に位置する細粒土層とを設け、粗粒土層と細粒土層との境界に勾配を持たせることを要旨とするものである。
【0030】
請求項3記載の本発明によれば、筒状部を設けた遮水シートによる雨量調節機能に加えて、粗粒土層と細粒土層との保水性の差異によるキャピラリーバリア効果が加わり、廃棄物層に浸透する雨量の制御をより一層確実なものとすることができる。すなわち、粗粒土層と細粒土層とのキャピラリーバリア構造単体では、降雨強度が一定の値を超過すると、下部の粗粒土層へ浸透が開始されてしまい、廃棄物層への浸透量を制御することは困難であるが、筒状部を設けた遮水シートによる雨量調節機能が加わることにより、降雨強度にかかわらず、廃棄物層への雨水の浸透量を一定に保つことが出来る。
【0031】
そしてこのような相乗効果を得るために、更に別途遮水シートを追加するなど、人工材料からなる別部材を必要としないから、従来に比べて自然環境に悪影響を及ぼすことも無い。なお、粗粒土としては例えば礫を、細粒土としては例えば砂を使用することができる。
【0032】
請求項4記載の本発明は、粗粒土層と細粒土層との境界を、筒状部上端よりも上側に位置付けることを要旨とするものである。
【0033】
請求項4記載の本発明によれば、粗粒土層と細粒土層との境界が筒状部上端よりも上側に位置するから、降雨の際にはまず、粗粒土層と細粒土層との保水性の差異によるキャピラリーバリア効果により、粗粒土層に流入する雨量が制限され、その後更に筒状部に流入する雨水のみが廃棄物層に浸透することとなり、粗粒土層と細粒土層との保水性の差異によるキャピラリーバリア効果と、筒状部を設けた遮水シートによる雨量調節機能とを、いずれも充分に発揮させることが出来る。
【0034】
請求項5記載の本発明は、筒状部の高さを、遮水シートの直上に位置する1層目の被覆土層の高さの2/3以上とすることを要旨とするものである。
【0035】
請求項5記載の本発明によれば、筒状部の高さを、遮水シートの直上に位置する1層目の被覆土層の高さの2/3以上とすることで、雨水の廃棄物層への浸透率を安定させることができる。これは、遮水シートの直上に位置する1層目の被覆土層に雨水が浸透した際、その層の下部に雨水が滞留した場合であっても、筒状部の上端はその層の2/3以上の高さの上部に位置して、滞留した雨水が筒状部に流入しにくくなるためと考えられる。
【0036】
請求項6記載の本発明は、筒状部の高さを4cm以上とすることを要旨とするものである。
【0037】
請求項6記載の本発明によれば、筒状部の高さを4cm以上としたから、雨量が多く遮水シート上に雨水が滞留するような場合であっても、滞留した雨水は充分な高さを有する筒状部の上部からは容易に流入することができず、雨量調節機能を維持することが出来る。
【発明の効果】
【0038】
以上述べたように、本発明の廃棄物最終処分場の覆土構造は、従来に比べて効率良く施工でき、表層を被覆土層としてシートを敷設するだけの簡単な構造で通気性と防水性を確実なものにでき、このシートに通水機能をさらに付与することで下部廃棄物層への雨水の浸透量を制御でき、安定した覆土を得ることのできるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、図面について本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は本発明の廃棄物最終処分場における覆土構造の第1実施形態を示す縦断正面図である。図1に示すように、本実施形態の廃棄物最終処分場における覆土構造は、廃棄物層1を勾配を持たせて埋め立て、その直上に、遮水シートとしての通気性防水シート3を敷設し、その上に更に、下層の粗粒土層2と上層の細粒土層4とからなる被覆土層を、廃棄物層1及び通気性防水シート3と同様に勾配を持たせて敷設してなる。また、粗粒土として礫を、細粒土として砂を使用する。
【0040】
通気性防水シート3は、通水及び通気用の開口部22を千鳥状に配置して点在させ、該開口部22の位置を遮水シート面よりも高く形成するため、開口部22の縁を上方に立ち上げることにより筒状部21を設ける。通気性防水シート3の全面積に対する開口部22の面積の割合は、5%程度とする。
【0041】
なお、開口部22の位置を遮水シート面よりも高く形成するには前記筒状部21を設けることの他にエンボス加工により台形山状にすることなどが考えられる。
【0042】
前記筒状部21による場合は、筒状部21の高さは例えば4cmとし、粗粒土層2の厚みを6cmとする。すなわち、粗粒土層2と細粒土層4との境界を、筒状部21の上端よりも上側に位置付けるようにする。
【0043】
これにより、降雨時に細粒土層4と粗粒土層2との境界で、キャピラリーバリア効果により雨水が勾配に沿って側方に排水され、粗粒土層2に流入する雨量が表層である細粒土層4上に降り注ぐ雨量よりも減少する。
【0044】
一方、雨量が多い場合には、降雨強度が一定の値を超過すると、下層である粗粒土層2へ浸透が開始されるが、筒状部21の開口部22に鉛直に流入する雨水のみが通気性防水シート3下方の廃棄物層1に浸透し、その他の雨水は図2にも示すように、筒状部21に遮られることにより、開口部22に流入することなく通気性防水シート3の勾配に従って側方に排水される。すなわち、開口部22の面積によって、廃棄物層1に浸透する雨水の量を制御することが出来る。
【0045】
図3は、本発明の廃棄物最終処分場における覆土構造の第2実施形態を示す縦断正面図である。本実施例も前記第1実施例同様に、廃棄物層1を勾配を持たせて埋め立て、その直上に、筒状部21を備える遮水シートとしての通気性防水シート3を敷設し、その上に更に、粗粒土層2を敷設するが、粗粒土層2の厚みを筒状部21の高さと略同等にし、筒状部21の上端に覆い被せるようにして、金網23を敷設する。そしてこの金網23を粗粒土層2との境界として、その上に表層となる細粒土層4を敷設する。
【0046】
この構成によっても、金網23によって仕切られる細粒土層4と粗粒土層2との境界によりキャピラリーバリア効果が発揮され、通常の降雨時にはこの境界の勾配に沿って雨水を側方に排水するとともに、降雨量が多いときには、このキャピラリーバリア構造だけでは制御しきれず粗粒土層2に流入する雨水を、筒状部21を設ける通気性防水シート3によりコントロールする。
【0047】
次に、第1実施例の覆土構造と、他の覆土構造とについて、降雨時の廃棄物層への雨水の浸透を排除する排除率を比較した実験結果について図7を参照して説明する。なお、比較実験を行った覆土構造は、以下の5つのタイプの覆土構造である。
【0048】
1つめの覆土構造は図4に示すように、廃棄物層1の上に金網23を挟んで細粒土層4を6cmの厚さに敷設し、その上に粗粒土層2を敷設した後、更にその上に細粒土層4を敷設したものである。すなわち、通気性防水シート3を使用せず、被覆土層を3層構造としたものであり、図7のグラフにおいて▲印(シート無 砂(6cm))で示す。
【0049】
2つめの覆土構造は図5に示すように、直径7cmの穴25を設けた通気性防水シート3を廃棄物層1の上に敷設して、その上に細粒土層4のみを6cmの厚さに敷設して被覆土層としたものであり、図7のグラフにおいて×印(シート有(直径7cmの穴)砂(6cm))で示す。
【0050】
3つめの覆土構造は図6に示すように、開口部22の縁を立ち上げて高さ2cmの筒状部21を設けた通気性防水シート3を廃棄物層1の上に敷設して、その上に細粒土層4のみを6cmの厚さに敷設して被覆土層としたものであり、図7のグラフにおいて□印(シート+筒(2cm)砂(6cm))で示す。
【0051】
また、4つめの覆土構造及び5つめの覆土構造は前記3つめの覆土構造と同様に、筒状部21を設けた通気性防水シート3を廃棄物層1の上に敷設し、その上に細粒土層4のみを6cmの厚さに敷設して構成するが、4つめの覆土構造については筒状部21の高さを4cmとして図7のグラフにおいて◆印(シート+筒(4cm)砂(6cm))で示す。また、5つめの覆土構造については筒状部21の高さを6cmとして図7のグラフにおいて△印(シート+筒(6cm)砂(6cm))で示す。
【0052】
以上、5つのタイプの覆土構造と、第1実施例の覆土構造とについて、降水量と雨水の排除率との関係について調べた結果は、図7に示す通りとなった。なお、第1実施例の覆土構造における雨水の排除率は、●印(シート+筒(4cm)礫(6cm))で示す。
【0053】
まず、降水量が20mm/h以下の場合には、いずれのタイプの覆土構造においても、排除率を95%以上に保っている。しかし、降水量が20mm/hを超えてからは、1つめの覆土構造、2つめの覆土構造及び3つめの覆土構造においては急激に排除率が下がり、降水量が30mm/hに達した段階で排除率は85%以下にまで落ちた。なお、4〜6つめの覆土構造においては、降水量が30mm/hに達した段階ででも、排除率を85%以上に保つことができた。
【0054】
この4〜6つめの覆土構造は、いずれも筒状部2の高さが、通気性防水シート3の直上に位置する1層目の被覆土層の高さの2/3以上であるという点で共通している。なお、通気性防水シート3の直上に位置する1層目の被覆土層とは、4つめ及び5つめの覆土構造においては細粒土層4であり、6つめの覆土構造においては粗粒土層2である。また、4つめ及び6つめの覆土構造では、筒状部2の高さは4cmであり、5つめの覆土構造では、筒状部2の高さは6cmであり、いずれも4cm以上の高さを有する。
【0055】
以上より、降水量が30mm/h以上に達しても雨水の排除率を85%以上に保つためには、筒状部21を設ける遮水シートとしての通気性防水シート3を廃棄物層1の上に敷設してその上に被覆土層を敷設するとともに、筒状部21の高さを4cm以上とすること、若しくは、筒状部2の高さを、通気性防水シート3の直上に位置する1層目の被覆土層の高さの2/3以上とすることが必要であることが分かる。
【0056】
これは、筒状部2の高さを4cm以上とすることで、雨量が多く通気性防水シート3上に雨水が滞留するような場合であっても、滞留した雨水は充分な高さを有する筒状部2の上部からは容易に流入することができず、雨量調節機能を維持することが出来るためと考えられる。
【0057】
また、筒状部2の高さを、通気性防水シート3の直上に位置する1層目の被覆土層の高さの2/3以上とすることで、雨水の廃棄物層1への浸透率を安定させることができるのは、通気性防水シート3の直上に位置する1層目の被覆土層に雨水が浸透した際、その層の下部に雨水が滞留した場合であっても、筒状部2の上端はその層の2/3以上の高さの上部に位置するため、滞留した雨水が筒状部に流入しにくくなるものと考えられる。
【0058】
更に降水量が多くなると、2つめの覆土構造及び3つめの覆土構造においても雨水の排除率が下がってしまうが、第1実施例の覆土構造においては、降水量が60mm/h近くにまで達しても、雨水の排除率を3%程度に保つことが出来た。これは、細粒土層4と粗粒土層2との境界におけるキャピラリーバリア効果と、筒状部21を設けた通気性防水シート3による雨量調節機能との相乗効果によるものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の廃棄物最終処分場における覆土構造の第1実施形態を示す縦断正面図である。
【図2】第1実施形態の要部である通気性防水シートの平面図である。
【図3】本発明の廃棄物最終処分場における覆土構造の第2実施形態を示す縦断正面図である。
【図4】他のタイプの覆土構造の第1例を示す縦断正面図である。
【図5】他のタイプの覆土構造の第2例を示す縦断正面図である。
【図6】他のタイプの覆土構造の第3例を示す縦断正面図である。
【図7】各覆土構造における雨水の浸透の排除率と降水量との関係を示すグラフである。
【図8】従来の廃棄物最終処分場における覆土構造の第1例を示す縦断正面図である。
【図9】従来の廃棄物最終処分場における覆土構造の第2例を示す縦断正面図である。
【図10】従来の廃棄物最終処分場における覆土構造の第3例を示す縦断正面図である。
【符号の説明】
【0060】
1 廃棄物層 2 粗粒土層
3 通気性防水シート 4 細粒土層
5 小孔 6 立ち上がり部
7 表層材 8 継ぎ目部
9 シート 10、11 廃棄物
12 導水路 13 凸部
14 集水池 15 下層覆土材
16 透水層 17 開口
18 凹部 19 上層覆土材
20、20A 遮水層 21 筒状部
22 開口部 23 金網
24 粗粒層 25 穴
26 細粒層 28 表土

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物層と被覆土層との間に、遮水シートを勾配をもたせて敷設するとともに、この遮水シートに通水及び通気用の開口部を点在させ、該開口部の位置を遮水シート面よりも高く形成したことを特徴とする廃棄物最終処分場の覆土構造。
【請求項2】
開口部は縁を上方に立ち上げて筒状部とする請求項1記載の廃棄物最終処分場の覆土構造。
【請求項3】
被覆土層は、遮水シートの直上に位置する粗粒土層と、粗粒土層の直上に位置する細粒土層とを設け、粗粒土層と細粒土層との境界に勾配を持たせる請求項1または請求項2記載の廃棄物最終処分場の覆土構造。
【請求項4】
粗粒土層と細粒土層との境界を、筒状部上端よりも上側に位置付ける請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の廃棄物最終処分場の覆土構造。
【請求項5】
筒状部の高さを、遮水シートの直上に位置する1層目の被覆土層の高さの2/3以上とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の廃棄物最終処分場の覆土構造。
【請求項6】
筒状部の高さを4cm以上とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の廃棄物最終処分場の覆土構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−231156(P2006−231156A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−47140(P2005−47140)
【出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【出願人】(598015084)学校法人福岡大学 (114)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】