説明

廃止工法及び新設管敷設工法

【課題】鉄製の不使用導管の廃止作業や新設管の敷設作業が容易な各工法を提供する。
【解決手段】不使用導管1aの廃止工法は、不使用導管1aの両端を開放し、不使用導管1aの口径及び延長に応じて不使用導管1aを腐食させる微生物を含む流動化処理土30の不使用導管1aへの充填量及び配合を決定し、この決定された充填量及び配合に基づいて微生物を含む流動化処理土30を現場で製造し又は決定された充填量及び配合に基づいて予め製造された流動化処理土30を現場に搬送する工程と、流動化処理土30のうちの所定粒径を超える処理土を取り除いて粒度調整する工程と、粒度調整された流動化処理土30を不使用導管1a内のいずれか一端から注入して管内に充填する工程を有する。新設管敷設工法は、前記廃止工法を含み、この廃止工法の後に、不使用導管1aの上方位置に新設管40を浅埋して導管1に接続して導管1を連通状態にする工程を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄製の不使用埋設管の廃止工法及び不使用埋設管に替わる新設管を敷設する新設管敷設工法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路下の埋設管が他工事関連での入替、或いは腐食した経年管入替等で不要となり不使用埋設管となった場合、一般的に道路管理者よりこれを掘り上げて撤去するように指導されるので、原則として不使用埋設管を撤去するのが望ましいが、道路交通事情や撤去工事による沿線住民への迷惑等を考慮すると、不使用埋設管の一部を残置せざるを得ない場合がある。このような不使用埋設管をそのまま放置すると、管の損傷部分から土砂が流入して道路が陥没したり亀裂が生じたりする問題が発生する。そこで、特許文献1に記載されているように、不使用埋設管内にウレタン化合物と水を注入して管内に発泡ウレタンを形成可能な充填材を充填する技術が開発されている。
【0003】
このような不使用埋設管の一部を残置したり、不使用埋設管内に充填材を充填したりするいずれの場合にも、掘削作業中にこのような不使用埋設管が現れる場合がある。このような場合には、不使用埋設管の撤去が必要となるが、そのためには配置管の長さ相当の範囲にわたって道路を掘削する必要があり、また道路使用許可の手続が必要となり、土木,舗装工事に多大の時間と費用を要し、迅速に対応できないという不都合が生じる。
【0004】
また浅埋が承認された現状において、不使用埋設管の上方位置に新設管を敷設する場合、不使用埋設管を撤去するために、新設管の新設位置よりさらに下方を掘削する必要があり、新設配管の敷設工事の進捗に支障をきたす虞が生じる。
【0005】
そこで、特許文献2に記載されているように、不使用埋設管の一端周辺に立坑を掘り、この立坑に破砕カッター式マシンを挿入し、不使用埋設管を破壊しながら不使用埋設管に沿って移動させ、マシンの後端側から破壊された管のガラや土砂を立坑に排出させ、不使用埋設管が取り除かれたスペースに土を充填する埋設管撤去復旧工法が開発されている。
【0006】
この復旧工法によれば、不使用埋設管の上方位置に新設管を浅埋する場合、新設管の新設位置よりさらに下方を掘削しなくても、マシンによって不使用埋設管を撤去することができるので、新設管の敷設工事の進捗に支障をきたす虞はない。
【0007】
【特許文献1】特開2000−145400号公報
【特許文献2】特開平7−317958号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この従来の復旧工法は、マシンの後端にマシンの移動に応じて仮管を順次接続し、これら接続された仮管を介して破砕された管のガラや土砂を排出し、不使用埋設管の他端まで仮管が到達すると、仮管を引き抜きつつ仮管が取り除かれたスペースに土を充填しなければならないので、不使用埋設管の撤去を容易に行うことができないという問題がある。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みて提案されたものであり、不使用埋設管の廃止作業が容易な廃止工法を提供するとともに、手間をかけずに新設管の敷設が可能な新設管敷設工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような課題を解決するために、本発明の廃止工法は、鉄製の不使用埋設管(例えば、実施形態における不使用導管1a)を廃止する廃止工法であって、不使用埋設管の両端を開放し、不使用埋設管の口径及び延長に応じて該不使用埋設管を腐食させる微生物を含む流動化処理材(例えば、実施形態における流動化処理土30)の不使用埋設管への充填量及び配合を決定し、この決定された充填量及び配合に基づいて微生物を含む流動化処理材を現場で製造し又は決定された充填量及び配合に基づいて予め製造された流動化処理材を現場に搬送する工程と、流動化処理材のうちの所定粒径を超える処理材を取り除いて粒度調整する工程と、粒度調整された流動化処理材を不使用埋設管内のいずれか一端から注入して管内に充填する工程とを有すること特徴とする。
【0011】
この発明によれば、不使用埋設管内にこれを腐食させる微生物を含む流動化処理材を充填するので、不使用埋設管は微生物によって除々に腐食して土にかえる。このため、不使用埋設管を撤去することなく不使用埋設管を除去することができ、不使用埋設管の廃止作業を容易にすることができ、不使用埋設管を掘り上げて撤去する場合と比較して作業コストを安価にすることができる。また道路占有料等の費用の負担を軽くすることができ、さらに電気的腐食と異なり他の埋設管に支障を与える事態を未然に防止することができる。さらに不使用埋設管には流動化処理材が充填されるので、不使用埋設管が腐食し若しくは折損等しても管内に土砂等が流入する虞はなく、地盤沈下等を抑制することができる。また流動化処理材は、不使用埋設管の口径及び延長に応じて不使用埋設管への充填量と配合が決定されるとともに、所定粒径を超える処理材が取り除かれるので、不使用埋設管に対応した流動性のよい処理材を不使用埋設管に供給することができ、不使用埋設管に処理材を隙間無く確実に充填することができる。
【0012】
また本発明の流動化処理材は、水、土、モルタルを含むことを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、流動化処理材は水、土、モルタルを含むので、他のガス管工事やライフライン工事の施工時に不使用埋設管が障害となる場合、不使用埋設管は流動化処理材によって腐食し、可燃ガスも含まず、産業廃棄物でもないので、流動化処理材が充填された不使用埋設管を容易に除去且つ処理することができる。また、不使用埋設管は流動化処理材によって腐食して土にかえり、流動化処理材は産業廃棄物でもないので、不使用埋設管を埋設したまま放置することに対する路管理者の許諾を得やすい環境を作ることができる。
【0014】
また本発明の微生物は、硫酸塩還元バクテリア及び鉄バクテリアの少なくともいずれかを含むことを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、微生物が硫酸塩還元バクテリア及び鉄バクテリアの少なくともいずれかを含むことで、鉄製の不使用埋設管を容易に腐食させて土にかえすことができる。
【0016】
また本発明の新設管敷設工法は、鉄製の不使用埋設管に替わる新設管を敷設する新設管敷設工法であって、請求項1に記載の廃止工法を行った後に、不使用埋設管の上方位置に新設管を浅埋して不使用埋設管を切り離した埋設管(例えば、実施形態における導管1)に新設管を接続して埋設管を連通する工程を行うことを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、不使用埋設管の撤去作業を行うことなく不使用埋設管の上方位置に新設管を浅埋して埋設管に接続するので、新設位置より下方を掘削する必要がなくなり、新設管の敷設を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係わる廃止工法によれば、不使用埋設管の両端を開放し、不使用埋設管の口径及び延長に応じて該不使用埋設管を腐食させる微生物を含む流動化処理材の不使用埋設管への充填量及び配合を決定し、この決定された充填量及び配合に基づいて微生物を含む流動化処理材を現場で製造し又は決定された充填量及び配合に基づいて予め製造された流動化処理材を現場に搬送する工程と、流動化処理材のうちの所定粒径を超える処理材を取り除いて粒度調整する工程と、粒度調整された流動化処理材を不使用埋設管内のいずれか一端から注入して管内に充填する工程を有し、新設管敷設工法によれば、廃止工法を行った後に、不使用埋設管の上方位置に新設管を浅埋して不使用埋設管を切り離した埋設管に該不使用埋設管の替わりに新設管を接続して埋設管を連通する工程を行うことで、不使用埋設管の廃止作業が容易な廃止工法を提供することができるとともに、手間をかけずに新設管を敷設可能な新設管敷設工法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係わる廃止工法及び新設管敷設工法の好ましい実施の形態を図1及び図2に基づいて説明する。本実施の形態は、道路下に埋設されてガスが流通する鉄製の導管(例えば、ねずみ鋳鉄管)の一部が不使用となり、この不使用導管を廃止する場合を例にして説明する。先ず、廃止工法について説明する。
【0020】
廃止工法は、図1(フローチャート)に示すように、配管に関する作業と流動化処理土の製造作業がある。先ず、ステップ1において不使用導管の隔離作業を行う。この作業は、図2(a)(断面図)に示すように、埋設された導管1のうち廃止対象となる不使用導管1aの両端部が露出するようにこれら両端部周辺に立坑20を掘削する。そして立坑20内に露出した導管1に穿孔を設けてガス遮断バッグ5を導管1及び不使用導管1a内に挿入して膨張させて不使用導管1aを含む導管1のガス流通を遮断する。そして、図2(b)(断面図)に示すように、不使用導管1aを導管1から切断して分離し、切断された不使用導管1aの両端に開口する開口部に封止栓7を装着して開口部を塞ぐとともに、不使用導管1a内に残るガスを空気に置換し、不使用導管1aを導管1から隔離した状態にする。
【0021】
不使用導管1aが隔離状態になると、図1に示すステップ2において、不使用導管1a内に流動化処理土を充填するための準備作業を行う。この充填準備作業は、立坑20に露出する不使用導管1aの一方側端部と他方側端部に不使用導管1a内に連通する孔部8,9を形成して不使用導管1aの両端を開放する。そして、不使用導管一方側端部に設けられた孔部8に下端部を接続して上端側を立坑20に沿って上方へ延ばした接続管10を設置し、接続管10の上端部に接続管10内に流動化処理土を入れる充填ホッパー12を接続して設置する。不使用導管他方側端部に設けられた孔部9には、この孔部9に下端部を接続して上端側を立坑20に沿って上方へ延ばしたエアー排出管14を設置する。
【0022】
一方、流動化処理土充填準備作業と並行して、不使用導管1aに注入される流動化処理土30の製造作業を行う。この製造作業には、作業現場に来る前に予め工場等で行われる作業が含まれている。即ち、流動化処理土30の製造作業は、不使用導管1aの口径及び延長より、ステップ3において不使用導管1aを腐食させる微生物を含む流動化処理土の不使用導管1aへの充填量を決定し、ステップ4において微生物を含む流動化処理土の配合を決定する。流動化処理土30は、水,土,モルタル(セメントペーストと砂の混合物)を含み、微生物は硫酸塩還元バクテリア及び鉄バクテリアの少なくともいずれかを含む。そして、ステップ5において、流動化処理土30の成分となる土や砂のうち所定粒径(例えば、10mm)を超える土等をふるいによって取り除く。そして、粒径調整された砂にセメントペーストを混ぜてモルタルを製造し、モルタルに水、土及び微生物を混ぜて流動化処理土30を製造する(ステップ6)。工場等で予め製造された流動化処理土30を、コンクリートミキサー車等の作業車によって作業現場に運ぶ。
【0023】
なお、流動化処理土30は、工場等で予め製造される場合の他に、作業現場で流動化処理土30を製造してもよい。この場合には、小型で移送が可能な攪拌装置及びふるいを作業現場に搬送し、これら攪拌装置及びふるいを使用して流動化処理土30を製造する。
【0024】
そして、流動化処理土30が作業現場に運ばれると、作業現場にふるいを設置し、流動化処理土30をふるいに供給して、所定粒径(例えば、10mm)を超える処理土をさらに取り除いて流動化処理土30の粒土調整を行う(ステップ7)。これによって、大きな粒径の処理土を殆ど取り除くことができ、流動性のよい流動化処理土30を得ることができる。そして、ステップ8において、所定粒径を超える処理土を取り除いて集めて流動化処理土30の製造が完了する。
【0025】
そして、ステップ9において、この流動化処理土30を不使用導管1aに充填する流動化処理土充填作業を行う。この充填作業は、図2(b)に示すように、流動化処理土30を充填ホッパー12に供給することから始まる。流動化処理土30が充填ホッパー12に供給されると、流動化処理土30は接続管10内を自重によって下方に流れて孔部8を通って不使用導管1a内に流入する。そして、流動化処理土30は不使用導管1a内の一方側から他方側へ流れるとともに、不使用導管1a内の空気がエアー排出管14を流れて大気に放出される。このため、不使用導管1a内は流動化処理土30によって充填される。
【0026】
なお、不使用導管1aは、掘削された立坑20の間で切り回されたり切り下げ切り上げられたりして屈曲している場合や、一方側が他方側より高い位置に位置して傾斜するように延びたりしている場合がある。このため、不使用導管1aの口径や延長に応じて流動化処理土30の流動性を調整しても、流動化処理土30が不使用導管1aの全域にわたって充填されない虞がある。そこで、不使用導管1aが上下方向に傾斜して延びる場合には、傾斜する不使用導管1aの高い方の不使用導管端部に接続管10を接続し、不使用導管1aの途中に切り下げ切り上げ等がある場合には、エアー排出管14に吸引機(図示しない)を接続して不使用導管1a内を流れる流動化処理土30を強制的に吸引してもよい。
【0027】
このように、不使用導管1a内にこれを腐食させる微生物を含む流動化処理土30を充填することで、不使用導管1aは微生物によって除々に腐食して土にかえる。このため、不使用導管1aを撤去することなく不使用導管1aを除去することができ、不使用導管1aの廃止作業を容易にすることができる。また不使用導管1aを掘り上げて撤去する場合と比較して作業コストを安価にすることができ、さらに道路占有料等の費用の負担を軽くすることができ、また電気的腐食と異なり他の鉄製の埋設管に支障を与える事態を未然に防止することができる。また不使用導管1aに流動化処理土30が充填されるので、不使用導管1aが腐食し若しくは折損等しても管内に土砂等が流入する虞はなく、地盤沈下等を抑制することができる。また流動化処理土30は、不使用導管1aの口径及び延長に応じて不使用導管1aへの充填量と配合が決定されるとともに、所定粒径を超える処理土が取り除かれるので、不使用導管1aに対応した流動性のよい処理土を不使用導管1aに供給することができ、不使用導管1aに流動化処理土30を隙間無く確実に充填することができる。
【0028】
次に、新設管敷設工法について説明する。この工法は、前述した廃止工法を含み、この廃止工法を行った後に以下に記す工程を行う。このため、廃止工法については前述したのでその説明は省略する。
【0029】
廃止工法により不使用導管1aの廃止処理が完了すると、図2(c)(断面図)に示すように、不使用導管1aの上方位置に新設管を浅埋することができるように不使用導管1aの上方の周辺土を排土処理する。そして、図2(d)(断面図)に示すように、排土処理されて形成された穴23の底面に新設管40を敷設し、新設管40の一方側端部を切断された導管1の一方側端部に分岐継手43等を介して接続するとともに、新設管40の他方側端部を切断された導管1の他方側端部に分岐継手43'等を介して接続して、新設管40を介して導管1を連通状態にする。そして、掘削された穴23を埋め戻す。
【0030】
このように新設管40を敷設する場合、不使用導管1aの撤去が不要であり、また不使用導管1aの上方位置に新設管40を浅埋するので、排土作業や埋め戻し作業の労力が軽減されて、作業を迅速且つ低コストで行うことができる。
【0031】
なお、前述した実施例では、ガスが流通する埋設管(導管)について説明したが、水が流れる鉄製の埋設管であってもよい。
【0032】
〔実施例〕
不使用導管1aに供給される流動化処理土30の品質を表1に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
このような品質を有した流動化処理土に微生物を含ませたものを不使用導管1aに供給すると、不使用導管1a内に流動化処理土30が充填され、且つ不使用導管1aの腐食が促進されることを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施の形態に係わる廃止工法を示したフローチャートである。
【図2】廃止工法を含んだ新設管敷設工法を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 導管(埋設管)
1a 不使用導管(不使用埋設管)
30 流動化処理土(流動化処理材)
40 新設管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄製の不使用埋設管を廃止する廃止工法であって、
前記不使用埋設管の両端を開放し、該不使用埋設管の口径及び延長に応じて前記不使用埋設管を腐食させる微生物を含む流動化処理材の前記不使用埋設管への充填量及び配合を決定し、この決定された充填量及び配合に基づいて微生物を含む流動化処理材を現場で製造し又は決定された前記充填量及び前記配合に基づいて予め製造された前記流動化処理材を現場に搬送する工程と、
前記流動化処理材のうちの所定粒径を超える処理材を取り除いて粒度調整する工程と、
粒度調整された前記流動化処理材を前記不使用埋設管内のいずれか一端から注入して管内に充填する工程と
を有することを特徴とする廃止工法。
【請求項2】
前記流動化処理材は、水、土、モルタルを含むことを特徴とする請求項1に記載の廃止工法。
【請求項3】
前記微生物は、硫酸塩還元バクテリア及び鉄バクテリアの少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の廃止工法。
【請求項4】
鉄製の不使用埋設管に替わる新設管を敷設する新設管敷設工法であって、
前記請求項1に記載の廃止工法を行った後に、前記不使用埋設管の上方位置に新設管を浅埋して前記不使用埋設管を切り離した埋設管に前記新設管を接続して前記埋設管を連通する工程を行うことを特徴とする新設管敷設工法。

【図1】
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【図2】
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