説明

延長管及びその延長管を用いた電気掃除機

【課題】伸縮の際のガタつきを抑え、構造的に引っ掛かりがない延長管及びこの延長管を用いた電気掃除機を提供する。
【解決手段】外管10と、内管11と、外管10の先端部側の内周側に固定された補強管13と、外管10と内管11との間に補強管13に隣接して配置されたシールパッキン12と、補強管13とともにシールパッキン12を挾持するシールパッキン固定リング14とを備える。外管10は、その内周面に、シールパッキン固定リング14を所定の位置に収めるためのリブ又は凸部20を備える。内管11の後端部は、最伸長した状態において、シールパッキン固定リング14の端部よりも後部側に位置し、且つ、外管10のリブ又は凸部20と長手方向において重複する位置にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮機能を有する延長管及びその延長管を用いた電気掃除機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から伸縮機能を有する延長管を用いた電気掃除機には、延長管の外管と内管とのシール構造において、内管の最伸長時にのみ内管とシールパッキンとが接触するように構成し、内管をスムーズに伸縮することができるようにしたものがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−36063号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、内管を最伸長させた場合には、内管の端面と外管の内側に配設されたシールパッキン固定リングの端面とが面一、又は内管の端面がシールパッキン固定リングの端面より短いことがある。
このような構造の場合には、シールパッキン固定リングを外管に固定するために、外管の内側に設けた複数のリブ又は凸部の内側寸法がシールパッキン固定リングの内径寸法より狭いと、内管を最伸長状態から縮める際に、内管の端面が前記リブ又は凸部に引っ掛かり、スムーズな伸縮操作が行えない場合があった。
また、前記リブ又は凸部がパッキン固定リングの内径寸法より狭くならないように、前記リブ又は凸部の高さを低くすると、内管を縮める際に、前記リブ又は凸部と内管の外周面との隙間が大きくなり、内管と外管との間のガタつきが大きくなり、使用者に不安感を与える場合があった。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、伸縮の際のガタつきを抑え、且つ構造的に引っ掛かりを無くした延長管及びこの延長管を用いた電気掃除機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る延長管は、
外管と、
前記外管内に摺動自在に挿入された内管と、
前記外管の先端部と前記内管との間に配置され、前記外管側に固定された補強管と、
前記外管と前記内管との間に前記補強管に隣接して配置され、リング状に形成され、前記内管の外周面と接触するとともに、前記外管の内周面と接触するシールパッキンと、
前記補強管とともに前記シールパッキンを管長さ方向に挾持するシールパッキン固定リングと
を備え、
前記外管は、その内周面に、前記シールパッキン固定リングを所定の位置に収めるためのリブ又は凸部を備え、
前記内管の後端部は、最伸長した状態において、前記外管のリブ又は凸部と管長さ方向において重複する位置にある。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る延長管によれば、最伸長した状態において、内管の後端部が、外管のリブ又は凸部と管長さ方向において重複する位置にあるようにしたので、リブ又は凸部の内径寸法がばらつきによってシ−ルパッキン固定リングの内径寸法より狭くなっていても、内管を最伸長状態から縮める操作においては、外管に設けられたリブ又は凸形状に引っ掛かることなくスムーズな伸縮操作を行うことができる。また、前記のように、リブ又は凸部の内径寸法は、シ−ルパッキン固定リングの内径寸法より狭くなっていても問題はないので、リブ又は凸部と内管の外周面との隙間を小さくすることができ、内管と外管との間のガタつきが小さくなり、伸縮の際のガタつきが抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1に係る電気掃除機の全体構成を示す模式図である。
【図2】図1の延長管を最縮長した模式図である。
【図3】図1の延長管を最伸長した模式図である。
【図4】図2のA−A断面の模式図である。
【図5】図4のシールパッキンの断面図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係る延長管の断面の模式図である。
【図7】本発明の実施の形態3に係る延長管のB−B断面の模式図である。
【図8】図5のC部詳細図である。
【図9】図5のD部詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る電気掃除機の全体構成を示す模式図である。
掃除機本体101は、内部に集塵室102、電動送風機103等が設けられており、前面底部には前車輪104が設けられ、後部側の両側には後車輪105が設けられている。ホースユニット106を構成するホース107の一端は、掃除機本体101の吸込口に接続され、他端側には電源ボタンや操作ボタンなどを有する手元ハンドル108が設けられている。そして、手元ハンドル108の上流側(後述の床用吸込具113側を上流側と称する)には、アタッチメントであるノズルユニット109が固定又は着脱可能に接続されており、ノズルユニット109を構成するノズル本体110の下部にはノズル部111が着脱可能に連結されている。また、ノズル本体110には、ノズル部111とほぼ平行に延長管112が着脱可能に接続され、延長管112の吸込口には床用吸込具113が着脱可能に接続されている。なお、ノズルユニット109を取り外し、手元ハンドル108に延長管112を直接接続して使用することもできる。
【0010】
次に、図1の掃除機の動作を説明する。
図1の掃除機は、利用者が、掃除機本体101に設けられたコード(図示せず)を電源に接続し、手元ハンドル108に設けられた電源スイッチをONすると、電動送風機103が駆動される。電動送風機103の吸引力により床用吸込具113から吸引された塵埃等は、延長管112、ノズル本体110、ホースユニット106を通り、掃除機本体101に送られて集塵室102に集塵される。集塵室102に集塵された塵埃等はフィルタ(図示せず)で清浄化される。浄化された空気は、電動送風機103のモータや制御基板等を冷却し、排気口から外部へ排出される。延長管112は、掃除の開始前又は掃除中に必要に応じて利用者により伸縮操作される。この延長管112の詳細を図2〜図5を参照して参照して詳細に説明する。
【0011】
図2は、図1の延長管112を最縮長した模式図であり、図3は、延長管112を最伸長した模式図である。図4は、図2のA−A断面の模式図である。図5は、図4のシールパッキンの断面図である。なお、本発明において、外管及び内管の吸込口側を先端部側、手元ハンドル108側を後部側という。
【0012】
延長管112は、外管10と内管11を備えている。外管10は、その内周面には、後述のシールパッキン固定リング14を軸方向において係止するためのリブ又は凸部(以下、リブという)20が設けられている。また、外管10は、先端部側の上面にカバー15が設けられている。外管10の先端部側とカバー15との間には、内管ロック機構16が設けられている(図4参照)。内管ロック機構16は、カバー15に形成された開口部15aから上方に突出可能に設けられた操作ボタン16aと、内管11の係止部11aに係合する係合部16bと、操作ボタン16aと外管10との間に介装されたバネ部材16cとを備えている。定常的には、バネ部材16cのバネ力により、操作ボタン16aがカバー15に形成された開口部15aから上方に突出し、そして、開口部15aの縁15bを支点として係合部16bが内管11の係止部11aを押圧して内管11を外管10に係止(ロック)している。
【0013】
また、外管10の先端部側の内周側には、外径が外管10の内径とほぼ等しく、内径が内管11の外径とほぼ等しく形成された補強管13が固定されている。この補強管13は、高摺動性の材料から構成され、その後部側の外径は縮径されたものとなっている。補強管13は、本実施の形態では荷重を受けるY方向(図7参照)において上下2分割とし、上側補強管13aと下側補強管13bとから構成されているが、補強管13は内管11の荷重を受ける為の補強及び内管11の摺動性を維持する構造であれば、1部品で構成されてもよい。
また、補強管13の後部側には、シールパッキン固定リング14が補強管13と所定の間隔を隔てて配設されている。シールパッキン固定リング14は、外径及び内径が補強管13と等しく、また、補強管13と同じ材料で構成されており、そして、リブ20によりその軸方向の位置決めがなされ、外管10内の所定位置に係止されている。なお、補強管13を外管10に固定するには、例えばカバー15にリブ(図示せず)を形成して所定の位置に係止したり、或いはカバー15によらず、ねじや、溶着などによって固定してもよい。
【0014】
また、補強管13とシールパッキン固定リング14との間には、それらの小径部を跨るようにしシールパッキン12が配設されている。このシールパッキン12は、補強管13とシールパッキン固定リング14とによって管長さ方向に挾持されている。
このシールパッキン12は、例えばゴムの如き弾性を有する軟質材料により幅広のリング状に形成されている。そして、図5に示されるように、内周側の幅方向の中央部には、ゆるやかな曲面の断面形状でほぼ逆台形状の凸部12aが係止されており、この凸部12aは補強管13とシールパッキン固定リング14の間の間隔内に位置し、その先端部側がこれらの内周面から若干突出している。凸部12aの背面側(外周側)には、外管10側に開口する溝部12bが設けられている。溝部12bの両側にはゆるやかな曲面の断面形状でほぼ台形状の凸部12c、12dが設けられている。この凸部12a、12c、12dは、内管11の外周面及び外管10の内周面に当接(接触)し、少なくとも内管11の最伸長時には、これらと補強管13及びシールパッキン固定リング14との間に形成されるすき間をそれぞれシールする。
なお、シールパッキン12の形状は、図5の形状に限定されるものではなく、内管11の外周面にシールパッキン内側に設けた凸部が接触し、外管10の内周面にシールパッキン外側に設けた凸部が接触し、管内に流れる空気が外部に漏れないようにシールする構造であれば、どの様な形状でも構わない。
【0015】
また、シールパッキン固定リング14は、摺動する軸方向において、上記のように、外管10の内周面に設けられたリブ20によって外管10の所定位置に係止されている。そして、補強管13、シールパッキン固定リング14及びリブ20の内径寸法は同一となっており、内管11が外管10内に円滑に挿入できるように構成されている。
【0016】
また、内管11は、その長さ方向に沿って凹状の複数の係止部11aが外周面に形成されており、この係止部11aに内管ロック機構16の係合部16bが係合して外管10に係止される。また、この内管11は、最伸長した状態において、その後部側の端部がリブ20と重複した位置になるように、最も後部側に形成された係止部11aから後端部までの長さが設定されている。
【0017】
次に、延長管112の内管11を最伸長した状態及びその縮長について説明する。
シールパッキン固定リング14は、外管10内の摺動する軸方向において、外管10に設けられた複数のリブ20によって外管10内の所定位置に係止されている。内管11は、最伸長した状態において、その後端部がリブ20と重複した位置にある。そして、シールパッキン固定リング14の内周面と複数のリブ20の高さは等しくなるよう構成されている。このため、この状態から延長管112を縮めるために、内管ロック機構16を操作して内管11のロックを解除し内管11を手元ハンドル108側に移動させた場合には、内管11を円滑に操作することができる。例えば、従来のように、シールパッキン固定リング14の内周面よりリブ20の高さが低い場合には段差が生じ、内管11を移動させると内管11の後端面の外周面と複数のリブ20とに隙間が生じ、内管11には外管10とのガタが生じ、その結果、使用者には不安感を与える。しかし、本実施の形態においては、上記のように構成されているので、そのような不安感を与えることがない。
【0018】
また、内管11の後端部がリブ20と長さ方向において重複した位置にあるので、外管10に設けられたリブ20がシールパッキン固定リング14の内径寸法より狭くなったとしても、内管11を手元ハンドル108側に移動させる場合には、引っ掛かることなく円滑に内管11を操作することができる。また、前記のように、リブ20内径寸法は、シールパッキン固定リング14の内径寸法より狭くなっていても問題はないので、リブ20と内管11の外周面との隙間を小さくすることができ、内管11と外管10との間のガタつきが小さくなり、伸縮の際のガタつきが抑えられる。このように、引っ掛かりがなく、ガタつきが抑制されるので、掃除機の長寿命化が可能になっている。
【0019】
実施の形態2.
なお、上記の実施の形態1においては、管内の空気が外部に漏れないようにするためにシールパッキン12を設けた例について説明したが、管内の空気が外部に漏れても構わない場合の例を実施の形態2として説明する。
【0020】
図6は、本発明の実施の形態2に係る延長管の断面模式図であり、図3のA−A断面に相当する。補強管13は、図4のシールパッキン12及びシールパッキン固定リング14を無くし、その部位まで延長された長さとなっている。
本実施の形態2においては、上記のように構成したことにより、管内の空気のシールを除くと、上記の実施の形態1と同様な効果が得られており、更に、部品点数が少なくなり構造の簡素化が図られている。
【0021】
実施の形態3.
図7は、本発明の実施の形態3に係る延長管の断面模式図であり、図3のA−A断面に相当する。図8は、図7のC部詳細図であり、図9は、図7のD部詳細図である。
本実施の形態3に係る延長管112は、図8及び図9に示されるように、内管11の主に荷重を受けるY方向上下には、内管11の長さ方向に沿ってリブ21がそれぞれ形成されている。この複数のリブ21は、外管10とのガタつきを減らすのと、伸縮摺動及び荷重を受けることにより、補強管13、シールパッキン固定リング14及び外管10から受ける疵をリブ21に集中させる機能を果たしている。このような構成にしたことにより、内管11の外観面(外周面)に生じる疵を最小限に抑えることができる。また、外観面に受ける不特定多数の疵による内管11の摺動性の悪化を防止することができ、且つ、外観を損なうことなく維持することができる。なお、本実施の形態3は、上記の実施の形態1及び実施の形態2の両方に適用される。
【符号の説明】
【0022】
10 外管、11 内管、11a 係止部、12 シールパッキン、12a 凸部、12b 溝部、12c 凸部、12d 凸部、13 補強管、13a 上側補強管、13b 下側補強管、14 シールパッキン固定リング、15 カバー、15a 開口部、15b 縁、16 内管ロック機構、16a 操作ボタン、16b 係合部、16c バネ部材、20 リブ、21 リブ、101 掃除機本体、102 集塵室、103 電動送風機、104 前車輪、105 後車輪、106 ホースユニット、107 ホース、108 手元ハンドル、109 ノズルユニット、110 ノズル本体、111 ノズル部、112 延長管、113 床用吸込具。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外管と、
前記外管内に摺動自在に挿入された内管と、
前記外管の先端部と前記内管との間に配置され、前記外管側に固定された補強管と、
前記外管と前記内管との間に前記補強管に隣接して配置され、リング状に形成され、前記内管の外周面と接触するとともに、前記外管の内周面と接触するシールパッキンと、
前記補強管とともに前記シールパッキンを管長さ方向に挾持するシールパッキン固定リングと
を備え、
前記外管は、その内周面に、前記シールパッキン固定リングを所定の位置に収めるためのリブ又は凸部を備え、
前記内管の後端部は、最伸長した状態において、前記外管のリブ又は凸部と長手方向において重複する位置にあることを特徴とする延長管。
【請求項2】
外管と、
前記外管内に摺動自在に挿入された内管と、
前記外管の先端部側と前記内管との間に配置され、前記外管側に固定された補強管と、
前記外管は、その内周面に、前記補強管を所定の位置に収めるためのリブ又は凸部を備え、
前記内管の後端部は、最伸長した状態において、前記外管のリブ又は凸部と管長さ方向において重複した位置にあることを特徴とする延長管。
【請求項3】
前記内管は、その外周面に管長さ方向に沿って形成された複数のリブを備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の延長管。
【請求項4】
内部に集塵室及び電動送風機が設けられた掃除機本体と、
ホースの一端が前記掃除機本体に接続され、他端に手元ハンドルが設けられたホースユニットと、
前記ホースユニットの手元ハンドルに直接又は他の管部材を介して接続される請求項1〜3の何れか一項に記載の延長管と、
前記延長管の先端の開口部に接続される床用吸込具と
を備えたことを特徴とする電気掃除機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−377(P2012−377A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−140522(P2010−140522)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000176866)三菱電機ホーム機器株式会社 (1,201)
【Fターム(参考)】