説明

建物の基礎構造および建物の複合基礎構造

【課題】建物の壁面を構成するL字形の構造体を斜め方向に連ねた連続体を有する建物の基礎構造において、資材/施工数量を低減するとともに2次元的な耐荷力を増大させ、作業効率の向上を図る。
【解決手段】建物1の基礎構造10において、建物1は、X軸方向へ延びる梁6aと、Y軸方向へ延びる梁6bとを柱4を介して交互に連結してなり、その壁面を構成する梁連続体5a,5bを有するとともに、1建物の内方に位置する内側柱4iが方向Aに沿う直線上に配置されている。基礎構造10は、方向Aに延在し、内側柱4iを支持する主基礎梁12と、建物1の外方に位置する外側柱4oを支持すべく、方向Aと直交する方向に延在するとともに、主基礎梁12に連結された複数の従基礎梁13とを有するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合住宅やオフィスビルなどの建物の基礎構造に係り、特に、平面視でL字形を呈する構造体を直線状に連ねて壁面を構成する連続体を有する建物の基礎構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マンションやアパートなどの集合住宅では、複数の長方形の住戸が直列配置され、建物全体の平面形状が長方形あるいはこの長方形の建物がL字形やコ字形に連結されることが多かった。このような建物の場合、平面上で直交するXY座標のX軸、Y軸上に柱が配置され、X軸、Y軸方向に隣接する柱同士が梁によって連結されるラーメン構造を採るのが一般的である。そして、建物の基礎は、柱の建て込み位置を連結するようにX軸およびY軸に沿って鉄筋コンクリートからなる基礎梁で連結することにより建造される。
【0003】
一方、各住戸の採光や通風、戸建て感などを改善するために、各住戸の平面形状がL字形とされ、L字の内側(鋭角側)の2面とL字の端面の少なくとも一方が採光可能な開放面となるように配置された集合住宅が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05−321491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の考えに基づき、L字形の複数の住戸を斜め方向に連続的に(雁行状に)配置すると、図12に示すように、建物101の壁面の一部(一断面の壁面)が、平面上で直交するXY座標のX軸に沿う梁106aとY軸に沿う梁106bとによるL字を斜め方向に連ねた形状を呈する集合住宅となる。そして柱104がX軸、Y軸に沿って配置され、建物101内部においてX軸、Y軸方向に隣接する柱104同士が梁106cによって連結された架構となる。なお、破線で閉形状に示す住戸102の平面形状が、図11に示すようなL字形の場合だけでなく、各住戸102を区画する壁が梁106cと一致する位置に設けられることによって矩形状となる場合にも、同一形状の架構を有する建物となることがある。そして、建物の基礎構造110は、杭基礎の場合、図示しない基礎杭が柱104の位置に合わせて配置され、各基礎杭をX軸およびY軸に沿って鉄筋コンクリートの基礎梁111で連結する構造が採られ、布基礎の場合、各柱104の建て込み位置を連結するように、下端にフーチングを有する基礎梁111をX軸およびY軸に沿って構築する構造が採られるのが一般的である。
【0006】
しかしながら、住戸102が梁106の方向と異なる斜めの方向Aにずれていく雁行状の建物に対して、図11に示すように柱104を配置すると、柱104や基礎杭の本数が多くなり、資材数量の増大や作業量の増大を招いてしまう。また、建物101が延在する方向Aが柱104と梁106とによって構成される架構の方向(X軸、Y軸)とずれているため、基礎構造110は、その架構連続性がなくなり、2次元的な耐荷力が小さくなって効果的な耐荷力を発揮できない。さらに、基礎構造110の架構連続性が低いため、掘削工や型枠工などの各種作業の連続性も低下し、作業効率が悪い。
【0007】
本発明は、このような背景に鑑みなされたもので、建物の壁面を構成するL字形の構造体(梁など)を斜め方向に連ねた連続体を有する建物の基礎構造において、資材/施工数量を低減するとともに2次元的な耐荷力を増大させ、作業効率の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、第1の発明は、第1の方向(X)へ延びる構造体(梁6a)と、第1の方向(X)と略直交する第2の方向(Y)へ延びる構造体(梁6b)とを交差部(柱4)を介して交互に連結してなり、建物(1)の壁面を構成する連続体(5)を有するとともに、交差部(4)のうち建物(1)の内方に位置する内側交差部(4i)が直線(A方向)に略沿って配置してなる建物の基礎構造(10)であって、内側交差部(4i)を支持すべく、前記直線(A方向)に略沿って延在する主基礎梁(12)と、交差部(4)のうち建物(1)の外方に位置する外側交差部(4o)を支持すべく、前記直線(A方向)と略直交する方向に延在するとともに、主基礎梁(12)に連結された複数の従基礎梁(13)とを有するようにする。なお、建物の壁面とは、住戸の外壁の他、バルコニーや廊下、通路などの手摺り壁などを含むものである。
【0009】
これによれば、主基礎梁が直線に略沿って延在するため、基礎構造の架構連続性が増すとともに、外側交差部を支持する従基礎梁が主基礎梁に連結されることにより、基礎構造の2次元的な耐荷力も確保される。また、主基礎梁が直線状となるため、作業効率も良い。さらに、この基礎構造によれば、建物では意匠計画を重視し、基礎構造では構造計画を重視するといったように、それぞれの計画の要求を満足することのできる合理的な設計が可能となる。
【0010】
また、第2の発明は、第1の発明に係る建物の基礎構造(10)において、建物(1)は、対向する2つの壁面が前記連続体(5)によってそれぞれ構成されるようにするとよい。
【0011】
これによれば、資材/施工数量の低減、2次元的な耐荷力の確保、および作業効率の向上を実現しつつ、各連続体がそれぞれ1つの主基礎梁とこれに連結する従基礎梁によって支持されるような幅寸法の大きな建物についても適用可能となる。
【0012】
また、第3の発明は、第2の発明に係る建物の基礎構造(10)において、2つの主基礎梁(12)を連結する連結基礎梁(16)を更に有するようにする。
【0013】
これによれば、2つの連続体に対する基礎構造が互いに連結されることで、主基礎梁の延在方向だけでなく、その直角方向についても架構連続性が増すとともに、これに伴って基礎構造の2次元的な耐荷力も増大する。
【0014】
また、第4の発明は、第1の発明に係る建物の基礎構造(10)おいて、建物(1)は、対向する2つの壁面が連続体(5a,5b)によってそれぞれ構成され、一方の連続体(5a)における内側交差部(4i)と他方の連続体(5b)における内側交差部(4i)とが同一の直線に略沿うように配置され、従基礎梁(13)が主基礎梁(12)の両側面に連結されるようにする。
【0015】
これによれば、2つの連続体における外側交差部を支持する従基礎梁が1本の主基礎梁に連結されるため、資材/施工数量を一層低減することができる。また、主基礎梁の両側面に従基礎梁が連結されることにより、基礎構造の幅寸法が大きくなってその2次元的な耐荷力が増大する。
【0016】
また、第5の発明は、第1〜第4に係る建物の基礎構造(10)の発明において、従基礎梁(13)における外側交差部(4o)を支持する部位を連結する補助基礎梁(14)を更に有するようにする。
【0017】
これによれば、外側交差部は、従基礎梁の延在方向だけでなく、補助基礎梁の延在方向についても高い剛性をもって基礎構造により支持される。これにより、基礎構造の2次元的な耐力が更に増大する。
【0018】
また、第6の発明は、第1〜第5に係る建物の基礎構造(10)の発明において、建物(1)が、第1の方向(X)へ延びる構造体(梁6a)と前記第2の方向(Y)へ延びる構造体(梁6b)との少なくとも一方における中間部に位置する中間交差部(4m)を有し、中間交差部(4m)を支持すべく、前記直線(A方向)と略直交する方向に延在するとともに、主基礎梁(12)に連結された短尺従基礎梁(15)を更に有するようにする。
【0019】
これによれば、中間交差部(4m)が設けられるることで構造体(梁6)スパンの長大化を防止し、一方または両方の構造体(6)の長さが大きな建物についても適用可能となる。
【0020】
また、第7の発明は、第1〜第6の発明に係る建物の基礎構造(10)において、建物(1)が平面L字形の住戸(2)を複数有し、1の住戸(2)のL字の一端面(2a)が隣接する住戸(2)のL字の外側面(2c)に連接するようにする。
【0021】
これによれば、これまで架構連続性がなく、形状が複雑で作業が煩雑だったL字形の連続住戸に対し、主基礎梁によって架構連続性が増大した直線状の基礎構造を採用可能となり、基礎構造の2次元的な耐荷力の増大と作業効率の向上とが可能となる。
【0022】
また、第8の発明は、第1〜第7の発明に係る建物の基礎構造(10)において、建物(1)との間に免震構造体が介装されるようにする。
【0023】
この発明によれば、建物から基礎構造に伝わる荷重が免震構造体によって低減されるため、基礎構造の部材寸法を小さくすることが可能となり、更に資材/施工数量が低減される。
【0024】
さらに、第9の発明は、建物の複合基礎構造(30,40)であって、第1〜第8の発明に係るいずれかの建物の基礎構造(10)を複数有し、隣接する基礎構造(10)の端部が互いに連結されるようにする。
【0025】
これによれば、主基礎梁を有する複数の基礎構造が、例えばV字形やW字形、コ字形、三角形、矩形などに連結されることにより、様々な平面形状の建物に適用可能となるとともに、建物全体に対する一体の基礎構造として、その2次元的な耐荷力が大幅に向上する。
【発明の効果】
【0026】
発明によれば、建物の壁面を構成するL字形の構造体を斜め方向に連ねた連続体を有する建物の基礎構造において、その資材/施工数量が低減されるとともに、2次元的な耐荷力の増大、作業効率の向上が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1実施形態に係る建物の概略平面図
【図2】第1実施形態に係る基礎構造の概略平面図
【図3】図2に示す基礎構造の第1変形実施形態を示す概略平面図
【図4】図2に示す基礎構造の第2変形実施形態を示す概略平面図
【図5】図2に示す基礎構造の第3変形実施形態を示す概略平面図
【図6】図2に示す基礎構造の第4変形実施形態を示す概略平面図
【図7】第2実施形態に係る基礎構造の概略平面図
【図8】第3実施形態に係る基礎構造の概略平面図
【図9】第4実施形態に係る基礎構造の概略平面図
【図10】第5実施形態に係る建物の概略平面図
【図11】第5実施形態に係る基礎構造の概略平面図
【図12】従来技術に係る建物および基礎構造の平面を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0029】
≪第1実施形態≫
先ず、図1および図2を参照して本発明に係る第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態に係る建物1の概略平面図である。建物1は、同一平面形状の複数階から構成された集合住宅であり、その下面と基礎構造10との間に積層ゴムなどからなる図示しない免震装置3が介装されて免震構造とされている。各階は、破線で模式的に示す壁3(3a,3b,3c)によって同一形状の複数の住戸2を構成している。ここで、壁3は、壁体の他、扉、窓、あるいはバルコニーの手摺りなどを含む概念を示すものとする。各住戸2は、直交するX,Y平面座標の座標軸に平行配置された壁3によって閉形状のL字形に区画されている。1つの住戸2において、図面上側のL字端面2aは、図面上側に隣接する住戸2のL字外側面2cに連接し、図面下側のL字端面2bは、図面下側に隣接する住戸2のL字内側面2dと面一となっている。そして、建物1は、複数の住戸2が雁行状に配置されることで、X軸、Y軸に対して傾斜するA方向に延在している。なお、建物1は、各階の住戸数が上層階ほど少なくなるような構成や、住戸2の形状が、L字形と矩形との組み合わせ、あるいは矩形のみの組み合わせなど、異なる平面形状となる構成であってもよい。
【0030】
建物1はラーメン構造とされており、建物1の壁面は、対向する2つの外壁3a,3bと、これらに沿って延在する梁連続体5a,5bと、外壁3a,3bおよび梁連続体5a,5bの連結部を構成する複数の柱4(交差部)、すなわち、内側柱4iおよび外側柱4o(以下、これらを総称する場合には柱4と記す。)とによって構成されている。梁連続体5a,5bは、X軸に沿う梁6a(構造体)と、Y軸に沿う梁6b(構造体)とが柱4を介して交互に連結してなり、屈折しながら方向Aに延在している。また、柱4は、建物1の外方、すなわち外壁3a,3bが突出する屈折部に位置する外側柱4oと、建物1の内方、すなわち外壁3a,3bが凹陥する屈折部に位置する内側柱4iとによって構成されている。そして、建物1の内部には、住戸2間を仕切る内壁3cが設けられている他、内側柱4iと隣接する梁6aまたは梁6bとを連結する梁6cが架設されている。これら梁連続体5a,5b、梁6cおよび壁3は、階ごとに設けられ、それぞれ柱4を連結する。
【0031】
図2は第1実施形態に係る基礎構造10の概略平面図である。建物の基礎構造10は、柱4の建て込み位置にそれぞれ打ち込まれた図示しない複数の基礎杭と、各基礎杭の杭頭を連結する基礎梁11とから構成されている。基礎梁11は、内側柱4iを支持すべく、方向Aの直線に沿って延在するように構築された1本の主基礎梁12と、外側柱4oを支持すべく、方向Aと略直交する方向に延在するとともに、主基礎梁12に連結された複数の従基礎梁13a,13b(以下、総称する場合、従基礎梁13と記す。)とから構成されている。各従基礎梁13は、すべて同一長さを有し、主基礎梁12における内側柱4iが配置された部位に連結されている。
【0032】
このように、主基礎梁12が方向Aの直線に略沿って延在するため、基礎構造10の架構連続性が増している。また、建物1の柱4および基礎構造10の杭の本数が少なくて済むこと、および、2つの梁連続体5a,5bにおける外側柱4oを支持する従基礎梁13a,13bが1本の主基礎梁12に連結されることにより、資材/施工数量が大幅に低減されている。更に、主基礎梁12の両側方に従基礎梁13a,13bがそれぞれ連結されることにより、基礎構造10の幅寸法が大きくなり、大きな2次元的耐荷力が確保される。また、主基礎梁12が直線状となるため、掘削作業など、基礎構造10を構築に関して高い作業効率が実現される。さらに、建物1と基礎構造10との間に免震装置3が介装されていることにより、基礎構造10の部材寸法が小さく設計され、更に資材/施工数量が低減されている。そして、建物1の意匠計画を様々に変更したとしても、構造計画を重視して合理的な基礎構造10の設計が可能となっている。
【0033】
<第1変形実施形態>
次に、第1実施形態における第1変形実施形態について図3を参照しながら説明する。なお、説明にあたり、第1実施形態と同一の作用、機能を有する要素については同一の符号を付し、第1実施形態と異なる点について説明する。また、以下の変形実施形態においても同様とする。図3は、図2に示す基礎構造10の第1変形実施形態を示す概略平面図である。本変形実施形態に係る建物1は、第1実施形態と異なる平面形状のL字形の住戸2を複数有している。そのため、従基礎梁13は、主基礎梁12における内側柱4iの中間部に連結されている。
【0034】
このような形態を採っても、基礎構造10は、第1実施形態と同様の効果を奏するとともに、様々な平面形状の建物に対して適用できるようになる。
【0035】
<第2変形実施形態>
次に、図4を参照して第1実施形態における第2変形実施形態について説明する。基礎梁11は、外側柱4oのうち、主基礎梁12が延在する方向Aに対して一方(図面左上)に位置する外側柱4oを支持する部位において従基礎梁13aを連結し、方向Aに延在する補助基礎梁14aと、外側柱4oのうち、主基礎梁12が延在する方向Aに対して他方(図面右下)に位置する外側柱4oを支持する部位において従基礎梁13bを連結し、方向Aに延在する補助基礎梁14bとを更に有している。主基礎梁12の両側方に位置する外側柱4oは、それぞれ方向Aに沿って配置されているため、補助基礎梁14a,14bは共に、方向Aに沿う直線上に延在する。
【0036】
本変形実施形態によれば、従基礎梁13における外側柱4oを支持する部位が補助基礎梁14aまたは補助基礎梁14bによって連結されるため、外側柱4oが、A方向と直交する方向(従基礎梁13の延在方向)だけでなく、A方向(補助基礎梁14a,14bの延在方向)についても高い剛性をもって基礎構造10に支持される。これにより、基礎構造10の2次元的な耐力が更に増強されている。
【0037】
<第3変形実施形態>
次に、図5を参照して第1実施形態における第3変形実施形態について説明する。本変形実施形態は、第1変形実施形態と第2変形実施形態とを組み合わせたものであり、従基礎梁13a,13bが主基礎梁12における内側柱4iの中間部位に連結され、主基礎梁12の両側方に位置する外側柱4oがそれぞれ補助基礎梁14a,14bに連結されている。このような形態とすることにより、第1、第2変形実施形態による効果を両立させることができる。
【0038】
<第4変形実施形態>
さらに、図6を参照して第1実施形態における第4変形実施形態について説明する。本変形実施形態では、一方の梁連続体5a(図1参照)によって連結される内側柱4iと、他方の梁連続体5b(図1参照)によって連結される内側柱4iとが、共に方向Aと平行に配置されているが、僅かに離間する直線上に配置されているため、主基礎梁12が小さな角度で屈折しながら方向Aに延在している。
【0039】
本実施形態によれば、内側柱4iが直線上に一致するように配置されなくても、第1実施形態と同様の効果が奏され、様々な平面形状の建物に基礎構造10を適用できるようになる。なお、本変形実施形態では、一方の梁連続体5aによって連結される内側柱4iが1の直線上に配置され、他方の梁連続体5bによって連結される内側柱4iが他の直線上に配置されているが、それぞれの内側柱4iが各直線からずれた位置に配置されるような形態であってもよい。
【0040】
≪第2実施形態≫
次に、図7を参照して本発明に係る第2実施形態について説明する。なお、上記変形実施形態と同様に、説明にあたっては、第1実施形態と同一の作用、機能を有する要素については同一の符号を付し、第1実施形態と異なる点について説明する。図7は、第2実施形態に係る基礎構造10の概略平面図である。本実施形態では、一方の梁連続体5a(図1参照)によって連結される内側柱4iと、他方の梁連続体5b(図1参照)によって連結される内側柱4iとが、共に方向Aと平行に配置されているが、互いに離間する直線上に配置されている。そして、基礎梁11は、一方の梁連続体5aによって連結される内側柱4iを支持すべく、方向Aに延在する主基礎梁12aを含む基礎梁11aと、他方の梁連続体5bによって連結される内側柱4iを支持すべく、方向Aに延在する主基礎梁12bを含む基礎梁11bとから構成される。
【0041】
また、建物1は、Y軸方向へ延びる梁6b(図1参照)の中間部に位置する中間柱4mを有している。そして、基礎梁11a,11bは、外側柱4oを支持する従基礎梁13a,13bの他、中間柱4mを支持すべく、主基礎梁12が延在する方向Aと直交する方向に延在するとともに、主基礎梁12に連結された短尺従基礎梁15a,15bを更に有している。中間柱4mが梁6の中央に位置しているため、短尺従基礎梁15は従基礎梁13の1/2の長さとなる短尺とされている。
【0042】
このように、梁連続体5a,5bがそれぞれ主基礎梁12a,12bとこれに連結する従基礎梁13a,13bによって支持されるため、破線で示す住戸2が大きな面積を有する建物1に対しても基礎構造10を適用可能となっている。また、梁スパンが長大化することに対しては、中間柱4mを設けることで対処することができ、中間柱4mを短尺従基礎梁15a,15bで支持すること、および2本の主基礎梁12を有することにより、資材/施工数量の低減と、2次元的な耐荷力の確保と、作業効率の向上とが高次元で実現される。
【0043】
≪第3実施形態≫
次に、図8を参照して本発明に係る第3実施形態について説明する。なお、説明にあたっては、第2実施形態と異なる点について説明する。本実施形態では、基礎梁11が、主基礎梁12aと主基礎梁12bとを連結する複数の連結基礎梁16を更に有している。各連結基礎梁16は、方向Aと直交する方向に延在しており、主基礎梁12aにおける従基礎梁13aが連結された部位と、主基礎梁12bにおける従基礎梁13bが連結された部位との中間位置にその両端が連結されている。このように、2つの梁連続体5a,5bに対する基礎梁11a,11bが互いに連結されることにより、基礎構造10の2次元的な耐荷力が大幅に増大している。
【0044】
≪第4実施形態≫
次に、図9を参照して本発明に係る第4実施形態について説明する。図9は、第4実施形態に係る基礎構造10の概略平面図である。本実施形態は、図4に示す第1実施形態の第2変形実施例と比較して2倍の本数の従基礎梁13(13b,13c)が主基礎梁12の一方に配置された基礎梁11を正方形に4組配置することで、複合基礎構造30が構成されている。すなわち、4つの雁行状の建物1が正方形に配置されている。各建物1は、主基礎梁12の一方に、図示しない共用廊下を支持する廊下用柱4cを有しており、この廊下用柱4cを支持すべく、従基礎梁13cが主基礎梁12と補助基礎梁14bとを連結している。そして、4つの建物1に対する各基礎梁11は、その両端部が隣接する基礎梁11と連結されている。具体的には、矩形内側角部の廊下用柱4cが隣接する2つの建物1によって共用されることにより、従基礎梁13cと補助基礎梁14bとが相互に連結し、隣接する2つの建物1の矩形外側端部の外側柱4oが補助基礎梁14cによって連結されている。
【0045】
このように、雁行状に延在する4つの建物1を支持する各基礎梁11が直交する向きに配置され、且つ相互に連結されることにより、4つの基礎梁11が一体となって複合基礎構造30をなし、その2次元的な耐力が大幅に向上している。そして、基礎梁11が廊下用柱4cなどの建物の壁面を構成しない柱を支持する基礎を兼ねることで、更なる資材/作業量の低減が実現される。また、補助基礎梁14cにおける廊下用柱4cを支持する部位に従基礎梁13aが設けられたことで、基礎梁11の更なる2次元的耐架力の向上が図られている。
【0046】
≪第5実施形態≫
更に、図10、図11を参照して本発明に係る第5実施形態について説明する。図10は、第5実施形態に係る複合建物21の概略平面図である。複合建物21は、壁23aなどによって略L字形の同一形状に区画された10戸の住戸2と、複合建物21の四隅に配置された矩形状の4戸の住戸2sとによって各階が構成されている。なお、図中に示す破線は、住戸2,2sを区画する壁3の他、住戸2,2sに設けられたバルコニー、共用廊下7、住戸2,2sの連設する角部に設けられたメーターボックス8、および、エレベータと直通階段からなる昇降設備9を示している。各住戸2,2sを区画する壁3は、直交するX,Y平面座標の座標軸に平行配置されている。そして、各住戸2が雁行状に配置されることで、複合建物21を構成する4つの連続住戸部22がX軸、Y軸に対して傾斜する方向Aまたは方向Aと直交する方向に延在している。
【0047】
連続住戸部22の壁面は、複合建物21の外方壁面をなす外壁23aと、複合建物21の内方壁面をなす廊下手摺り壁23bと、これらに沿って延在する梁連続体5a,5bと、梁連続体5a,5bの連結部を構成する複数の柱4によって構成されている。なお、ここでは、バルコニーではなく住戸2の外壁23aおよびこれに沿う梁連続体5aと、廊下手摺り壁23bおよびこれに沿う梁連続体5bとが特許請求の範囲に記す建物の壁面に対応している。柱4は、建物1の外方に位置する外側柱4oと、建物1の内方に位置する内側柱4iとによって構成されている。また、連続住戸部22の内部には、X軸およびY軸方向に隣接する内側柱4iを連結する梁6cが架設されている。
【0048】
図11は第5実施形態に係る複合基礎構造40の概略平面図である。複合基礎構造40は、4つの基礎構造10によって構成され、各基礎構造10は、柱4の建て込み位置に打ち込まれた図示しない複数の基礎杭と、各基礎杭の杭頭を連結する基礎梁11とから構成されている。
【0049】
各基礎梁11は、内側柱4iのうち複合建物21の外方に位置する内側柱4iを支持すべく、方向Aまたは方向Aと直交する方向に延在するように構築された1本の主基礎梁12を有している。また、各基礎梁11は、外側柱4oのうち複合建物21の外方に位置する外側柱4oを支持すべく、方向Aと略直交する方向または方向Aに延在するとともに、主基礎梁12に連結された複数の従基礎梁13aを有している。各従基礎梁43はすべて同一長さとされている。
【0050】
更に、各基礎梁11は、内側柱4iのうち複合建物21の内方に位置する内側柱4iを支持すべく、方向Aと直交する方向または方向Aに延在するとともに、主基礎梁12に連結された複数の従基礎梁13cと、外側柱4oのうち複合建物21の内方に位置する外側柱4oを支持すべく、方向Aと直交する方向または方向Aに延在するとともに、主基礎梁12に連結された複数の従基礎梁13dとを有している。各従基礎梁13cはすべて従基礎梁13aと同一長さとなっており、各従基礎梁13dはすべて従基礎梁13cよりも長い同一長さとなっている。
【0051】
このように、1つの連続住戸部22の対向する壁面が2つの梁連続体5a,5bを有する場合に、一方の梁連続体5aにおける内側柱4iのみを連結する主基礎梁12を1本設け、他方の梁連続体5bにおける内側柱4iを、主基礎梁12に連結する従基礎梁13cによって支持する構成とすることにより、図8に示す連結基礎梁16を設けることなく2つの梁連続体5a,5bに対する基礎構造を連結することができる。
【0052】
以上で具体的実施形態についての説明を終えるが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、建物1にラーメン構造を採用し、梁6が構造体を、柱4が交差部をそれぞれなしているが、建物1の構造はこれに限られず、壁式構造や、壁式ラーメン構造など、他の構造を建物1に採用してもよい。例えば、壁式構造を建物に採用した場合、構造体には壁が、交差部には壁の交差部が、連続体には壁連続体がそれぞれ該当することとなる。また、上記実施形態では、基礎構造10が杭基礎とされているが、基礎構造の種類はこれに限られず、直接基礎とすることも当然に可能である。また、上記実施形態では、建物1を集合住宅として記載しているが、建物の用途はこれに限られず如何なる用途に適用してもよく、さらに、免震建物に限られるものでもない。これら変更の他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 建物
2 住戸
2a 上側のL字端面
2b 下側のL字端面
2c L字外側面
2d L字内側面
3 壁
4 柱(交差部)
4i 内側柱
4o 外側柱
4m 中間柱
4c 廊下用柱
5a,5b 梁連続体(連続体)
6a,6b,6c 梁(構造体)
10 基礎構造
11 基礎梁
12 主基礎梁
13(13a,13b,13c,13d) 従基礎梁
14a,14b,14c 補助基礎梁
15 短尺従基礎梁
16 連結基礎梁
21 複合建物
30,40 複合基礎構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向へ延びる構造体と、当該第1の方向と略直交する第2の方向へ延びる構造体とを交差部を介して交互に連結してなり、建物の壁面を構成する連続体を有するとともに、
前記交差部のうち前記建物の内方に位置する内側交差部が直線に略沿って配置してなる建物の基礎構造であって、
前記内側交差部を支持すべく、前記直線に略沿って延在する主基礎梁と、
前記交差部のうち前記建物の外方に位置する外側交差部を支持すべく、前記直線と略直交する方向に延在するとともに、前記主基礎梁に連結された複数の従基礎梁と
を有することを特徴とする建物の基礎構造。
【請求項2】
前記建物は、対向する2つの壁面が前記連続体によってそれぞれ構成されたことを特徴とする、請求項1に記載の建物の基礎構造。
【請求項3】
前記2つの主基礎梁を連結する連結基礎梁を更に有することを特徴とする、請求項2に記載の建物の基礎構造。
【請求項4】
前記建物は、対向する2つの壁面が前記連続体によってそれぞれ構成され、一方の連続体における内側交差部と他方の連続体における内側交差部とが同一の直線に略沿うように配置され、
前記従基礎梁が前記主基礎梁の両側面に連結されたことを特徴とする、請求項1に記載の建物の基礎構造。
【請求項5】
前記従基礎梁における前記外側交差部を支持する部位を連結する補助基礎梁を更に有することを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の建物の基礎構造。
【請求項6】
前記建物が、前記第1の方向へ延びる構造体と前記第2の方向へ延びる構造体との少なくとも一方における中間部に位置する中間交差部を有し、
前記中間交差部を支持すべく、前記直線と略直交する方向に延在するとともに、前記主基礎梁に連結された短尺従基礎梁を更に有することを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の建物の基礎構造。
【請求項7】
前記建物が平面L字形の住戸を複数有し、1の住戸のL字の一端面が隣接する住戸のL字の外側面に連接することを特徴とする、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の建物の基礎構造。
【請求項8】
前記建物との間に免震構造体が介装されたことを特徴とする、請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の建物の基礎構造。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の建物の基礎構造を複数有し、
隣接する基礎構造の端部が互いに連結されたことを特徴とする建物の複合基礎構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−189877(P2010−189877A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−33397(P2009−33397)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(000174943)三井住友建設株式会社 (346)
【Fターム(参考)】