説明

建築基礎構造の施工方法

【課題】 建物の沈下や傾斜を従来工法よりも低減することのできる建築基礎構造を提供する。また、施工費用や施工期間を従来工法よりも低減することのできる建物基礎構造を提供することを提供する。
【解決手段】 本発明の建築基礎構造の施工方法は、整地面1上に土木シート2が敷設され、該土木シート2上に砂利3が敷きつめられ、該砂利3の上にドライモルタル4が敷きつめられ、しかる後に、その上に発泡樹脂ブロック5,6,6′が敷設されて下部基礎構造が構成され、該下部基礎構造上に上部基礎構造7が形成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建築基礎構造の施工方法に係り、特に、地下水位が高い軟弱地盤に建物を建設する場合に好適な建築基礎構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、地下水位が高い軟弱地盤に建物を建設する場合には、縦物の沈下を防止するために、根切りを行った後に発泡樹脂ブロックを敷設して下部基礎構造とし、この上にコンクリートを打設してベタ基礎構造を有する上部基礎構造を形成する方法が知られている。
【0003】
また、地面を掘削した上で一部に溝を形成し、ここに排水材を設置した上でさらに発泡樹脂ブロックを配置し、この発泡樹脂ブロック上にコンクリートを打設して上部基礎構造を形成する方法も知られている。
【特許文献1】実開平4−117040号公報
【特許文献2】特開平9−273160号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述の基礎構造では、地下水位が高い軟弱地盤に建物を建てた場合に、地下水位の変化や地下水流などによって発泡樹脂ブロックの下に敷き詰めた砕石や砂が流出し、発泡樹脂ブロックの支持力が失われることにより建物の沈下を招くことが多く、また、地下水位の変化によって支持力の均一性が損なわれ、建物が傾斜することが多いという問題点がある。
【0005】
また、上記の発泡樹脂ブロックによる下部基礎構造には、建物の重量に起因する地盤反力が加わるため、基礎構造の基礎梁(地中梁)で囲まれた領域の中央部が上方へ持ち上げられるという問題がある。これを防止するには、発泡樹脂ブロックで構成される下部基礎構造上に構築する鉄筋の本数を増大させてスラブの強度を高める必要があるので、施工費用や施工時間が余分にかかることになる。
【0006】
さらに、建物が鉄筋コンクリート造のビル等のように大きな重量を有するものである場合には、建物の重量と基礎地盤の耐力とのバランスを図るために、地面を深く掘削して大量の発泡樹脂ブロックを厚く配置する必要があるので、施工費用や施工時間がさらに増大するという問題点がある。
【0007】
その上、上記の基礎構造では、コンクリートが硬化するまでの数日間は、建物本体の工事が開始できないため、施工期間が長くなるという問題点がある。
【0008】
そこで、本発明は上記問題点を解決するものであり、その課題は、建物の沈下や傾斜を従来工法よりも低減することのできる建築基礎構造を提供することにある。また、別の課題は、施工費用や施工期間を従来工法よりも低減することのできる建物基礎構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
斯かる実情に鑑み、本発明の建築基礎構造の施工方法は、整地面上に土木シートが敷設され、該土木シート上に砂利が敷きつめられ、該砂利の上にドライモルタルが敷きつめられ、しかる後に、その上に発泡樹脂ブロックが敷設されて下部基礎構造が構成され、該下部基礎構造上に上部基礎構造が形成されることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、整地面上に敷設した土木シート上に砂利を敷き、その上にドライモルタル(空練りモルタル)を敷くことによって、建物の沈下や傾きが防止される。これは、土木シートを敷設せずに砂利を敷く場合に比べて砂利が土木シートによって保持されるため、地盤の不動化を図ることができるためである。また、砂利上に砂を敷く場合には砂利上に水が滲出すると砂が流出したり移動したりするのに対して、本発明では、ドライモルタルが吸水し、硬化するため、ドライモルタルの流出や移動を防止することができるとともに、発泡樹脂ブロックの敷設部分への水の上昇を妨げることができる。なお、砂利上に敷設されるドライモルタルは、整地面のレベル調整や平坦化を図るために用いることができるので、発泡樹脂ブロックの設置精度を高めることが可能になる。さらに、上記のように建物の沈下や傾斜が抑制可能な基礎構造とすることにより、建物の重量負担を軽くするための発泡樹脂ブロックの使用量を削減することができるとともに、整地面の深さを確保するための地面の掘削量も削減できるため、施工費用及び施工時間を低減することができる。
【0011】
本発明において、複数の前記発泡樹脂ブロックが相互に接着剤を介して接着固定された状態で敷設されることが好ましい。発泡樹脂ブロックを設置面上に敷設する場合、所定の大きさの複数の発泡樹脂ブロックを隙間なく敷き詰めることが好ましいが、複数の発泡樹脂ブロックを単に敷き詰めるだけでは、特に地下水位が高い地盤の場合、施工中に水が滲出して発泡樹脂ブロックが浮き上がり、発泡樹脂ブロックの敷設表面に不陸が生ずるため、上部基礎構造の形成に支障が生ずる。本発明では、複数の発泡樹脂ブロックを接着剤によって接着固定するため、発泡樹脂ブロックを強固に一体化させることができることから、下部基礎構造の表面の不陸の発生を防止できる。
【0012】
この場合において、前記発泡樹脂ブロックは、前記発泡樹脂ブロック間の接着固定部が重ならないように複数層に積層配置されることが好ましい。これによれば、複数層の発泡樹脂ブロックが接着固定部の平面的にずれた態様で積層されることによって、下部基礎構造の強度が均一化されるため、基礎構造の一体化及び剛性をさらに高めることができる。
【0013】
本発明において、前記発泡樹脂ブロックを覆うスラブと、該スラブと一体に設けられた基礎梁とを有する前記上部基礎構造が形成され、前記基礎梁に囲まれたスラブの中央部には、前記発泡樹脂ブロックが欠落し、前記発泡樹脂ブロックの下層に直接臨む中央支持部が設けられることが好ましい。これによれば、中央支持部による重量増及び発泡樹脂ブロックの欠落による浮力の低減により、地盤反力によるスラブの中央部の盛り上がりを防止することができるとともにスラブ自体の剛性も向上するため、鉄筋量及びスラブの厚さを低減できることから、基礎地盤に与える負荷重量を軽減できると同時に施工費用及び施工時間の低減を図ることができる。
【0014】
本発明において、前記発泡樹脂ブロックを覆うスラブと、該スラブと一体に設けられた基礎梁とを有する前記上部基礎構造が形成され、前記スラブが外周に設けられた前記基礎梁より外側に張り出した外周張出部を備えた構造とされ、該外周張出部上に前記発泡樹脂ブロックが配置されることが好ましい。これによれば、外周張出部を設けることで建物を支持する地盤面積を増大させ、基礎地盤の負担重量を軽減することができるとともに、外周張出部上に発泡樹脂ブロックを配置することで、外周張出部上に及ぼされる埋め戻し土の重量も軽減できる。
【0015】
本発明において、前記上部基礎構造の周囲においては、周辺土壌より比重の大きい埋め戻し層が形成されることが好ましい。上部基礎構造の周囲に周辺土壌より比重の大きい埋め戻し層を形成することで、建物の重量に起因する逆ヒービングを防止することができるため、建物の沈下や傾斜をさらに低減できる。また、この埋め戻し層を、大地震時にクイックサンド現象(墳砂現象)が生じたときの排水路として機能させることも可能になる。この埋め戻し層には砕石等の砂利などを用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。図1は、本発明に係る第1実施形態の施工方法によって形成された建築基礎構造を示す概略断面図である。本実施形態の施工方法では、地面を根切り(掘削)して整地面1を形成し、この整地面1の一部に、基礎構造の基礎梁が構成される予定部分に対応させて溝1aを形成し、その後、整地面1上に土木シート2を敷設する。この土木シート2は、ナイロン系、ポリプロピレン系等の繊維を編み込んだものなど、砂利の保持力に優れたものであることが好ましい。防水性を有するものが好ましいが、例えば、以下の砂利3を通さないものであれば網の目状に形成されたものであっても構わない。その後、上記の溝1a内において土木シート2上に砂利3を敷き、さらにその上にドライモルタル4を敷いて平坦性及び表面レベルを確保する。砂利3は砕石等を用いることが好ましく、ドライモルタル(空練りモルタル)は実質的に水を含まない粉状、粒状の結着材であり、例えば、砂にセメントを混合したものを用いることが好ましい。
【0017】
次に、上記溝1a内のドライモルタル4上に発泡樹脂ブロック5を敷き詰める。この発泡樹脂ブロック5としては、発泡ポリスチレン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリエチレンなどを所定形状に成形したブロック体を用いることができる。比重が小さい点では発泡ポリスチレンが最も好ましい。また、比重が小さいものであれば、発泡樹脂とコンクリートとを混合して硬化させたものであっても構わない。この発泡樹脂ブロック5上には後述する基礎梁が配置されるので、発泡樹脂ブロック5としては長期的に十分な支持耐力を有するものであることが好ましい。
【0018】
また、上記溝1a以外の領域では、土木シート2上に上記と同様の砂利3及びドライモルタル4を敷設する。ここで、図1に示すように、上記溝1a内に配置された発泡樹脂ブロック5の表面と、溝1a以外の領域のドライモルタル4の表面とがほぼ同じ高さになるように構成することが好ましい。そして、上記溝1a以外の領域のドライモルタル4上にも、発泡樹脂ブロック6,6′が敷設される。このとき、発泡樹脂ブロック6,6′として上記発泡樹脂ブロック5と同じ材質で構成されたものを用いることができる。ただし、通常、発泡樹脂ブロック5の荷重負荷は発泡樹脂ブロック6,6′の荷重負荷よりも大きいので、発泡樹脂ブロック5としては、発泡樹脂ブロック6,6′よりも長期許容応力が大きな材料を用いることが好ましい。
【0019】
図示のようにドライモルタル4上には複数の発泡樹脂ブロック6,6′が敷き詰められるように敷設される。このとき、隣接する発泡樹脂ブロック6,6′は相互に接着剤(例えば、ウレタン系の接着剤など)で接着固定される。また、発泡樹脂ブロック6は図示のように複数積層された状態で敷設されることが好ましい。このとき、下層と上層の発泡樹脂ブロック6間もまた、上記接着剤で接着固定されることが望ましい。このように複数の発泡樹脂ブロック6,6′を相互に接着固定することで、整地面1上に敷き詰められた発泡樹脂ブロック6,6′が一体化され、支持面の面精度も向上し、その後の作業性も向上する。なお、上記の接着固定は、溝1a内に敷き詰められた発泡樹脂ブロック5間においても行われることが好ましい。
【0020】
上記発泡樹脂ブロック6の積層構造は、発泡樹脂ブロック6の下層の接着固定部の位置と、すぐ上層の接着固定部の位置とが(すなわち、上下に隣接する接着固定部の位置同士が)平面方向にずれるように構成されている。すなわち、発泡樹脂ブロック6の積層態様は、各種のレンガ積みの手法で積層されることが好ましい。このようにすると、複数の樹脂ブロック6の一体性を高めることができるため、下層基礎構造の剛性を高めることができる。
【0021】
本実施形態では、さらに、発泡樹脂ブロック6の基礎梁形成領域に臨む側に発泡樹脂ブロック6′が配置され、この発泡樹脂ブロック6′は、発泡樹脂ブロック6の複数層分の厚さを有している。図示例の場合、基礎梁側に1層の発泡樹脂ブロック6′が配置され、この発泡樹脂ブロック6′の内側に2層の発泡樹脂ブロック6が積層されている。そして、発泡樹脂ブロック6′の厚さと、発泡樹脂ブロック6の2層分の厚さとが実質的に同一となっている。なお、このときの発泡樹脂ブロック6の積層数は2層に限らず、3層以上であってもよい。このようにすると、下部基礎構造を構成する複数の発泡樹脂ブロック6,6′の一体性がさらに強化されるとともに、基礎梁の型枠としても機能する発泡樹脂ブロック6′が厚さ方向に一つのブロックで構成されるため、型枠精度を容易に(すなわち、煩雑な位置決め作業を行わなくても)高めることができる。
【0022】
本実施形態では、上記発泡樹脂ブロック6′は、その底面の一部が上記発泡樹脂ブロック5上に配置されている。これによって、発泡樹脂ブロック5と6,6′の一体性を高めることができるとともに、後述する基礎梁の底部が発泡樹脂ブロック5上にのみ配置される構造とすることができる。ここで、発泡樹脂ブロック5と6′を上記と同様に接着固定することが望ましい。
【0023】
また、本実施形態の場合、後述する基礎梁で囲まれる領域の中央部に、図5に示すように、発泡樹脂ブロック6の配置されない欠損部6xを島状に形成しておく。この欠損部6xの形成部分は地盤反力による発泡樹脂ブロック6の中央部の盛り上がりが生じやすい部分であり、この欠損部6xを設けることで、後述する上部基礎構造の形成により、基礎構造全体の平坦性を確保することができるとともに剛性を高めることができる。なお、一般的には、基礎梁は外周部だけではなく、内側にも形成されるため、図6に示すように、内側にも発泡樹脂ブロック5が配置される。ここで、内側に配置された発泡樹脂ブロック5によって平面的に囲まれた領域(基礎梁によって囲まれることとなるべき領域)、或いは、一部が内側に配置された発泡樹脂ブロックで囲まれ、残部が外周の発泡樹脂ブロック5で囲まれた領域が形成される場合など、発泡樹脂ブロック5によって囲まれた複数の領域が構成される場合には、図6に示すように当該領域の中央部に上記欠損部6xをそれぞれ形成すればよい。ただし、領域の面積が小さいなどの理由で後述する逆ヒービングの影響が少ないと考えられる領域では欠損部6xを形成しなくてもよい。
【0024】
次に、上記の発泡樹脂ブロック5上における発泡樹脂ブロック6′に対して、外側に間隔をもつように、図示しない型枠を対向配置させるとともに、発泡樹脂ブロック6′と上記型枠との間の部分に鉄筋を張り、さらに、発泡樹脂ブロック6,6′上にも鉄筋を張る。そして、この鉄筋を用いて発泡樹脂ブロック6′の上方にも図示しない内側の型枠を支持する。
【0025】
上記の状態で、上記の発泡樹脂ブロック5,6,6′で構成される下部基礎構造の上に、すなわち、内外の型枠の間及び発泡樹脂ブロック6,6′上にコンクリートを打設し、図1に示す上部基礎構造7を形成する。上部基礎構造7は、図示例の場合、発泡樹脂ブロック5上に形成された基礎梁7aと、発泡樹脂ブロック6,6′上に形成されたスラブ7bと、スラブ7bの中央部において上記欠損部6x内において発泡樹脂ブロック6の下層(ドライモルタル4)に直接臨む島状の中央充填部7cとを有している。このように構成された上部基礎構造7上には、例えば土台8aなどが設置され、この土台8a上に建物8が構築される。
【0026】
上記のように上部基礎構造7が形成されると、その周囲は砕石等の砂利などで埋め戻される。この埋め戻し層9は、周辺の土壌9′よりも比重が大きい素材で構成される。本実施形態の場合、上記土木シート2は根切りされた部分から周囲に延在するように敷設され、この土木シート2の外縁は上記埋め戻し層9に覆われた状態となる。ただし、土木シート2の外縁を地表に露出させてもよく、或いは、地表に設置した何らかの建設物に固定するようにしてもよい。いずれの場合でも、埋め戻し層9の下に土木シート2が配置されることで、埋め戻し層9の流出や移動を低減することができる。
【0027】
本実施形態では、整地面1上に土木シート2、砂利3、ドライモルタル4を順次に敷設し、その上に発泡樹脂ブロック5,6,6′を敷き詰めているため、発泡樹脂ブロック5,6,6′の下層の流出や移動を妨げることができ、これによって建物の沈下や傾斜を防止することができる。特に、土木シート2によって砂利3やドライモルタル4の流出や移動が抑制され、また、ドライモルタル4によって多少の水が滲出しても砂利3の上層部を硬化させて地盤の変化を抑制するので、きわめて軟弱な地盤でも確実に建物を支持することが可能になる。
【0028】
また、発泡樹脂ブロック5,6,6′は上記のように相互に接着固定されていること、接着固定部が平面的にずれるように積層されていることなどによって強固に一体化されるので、下部基礎構造全体の支持剛性が高くなり、その結果、多少の地盤の変化が生じても建物の傾斜を防止することが可能になる。
【0029】
さらに、上部基礎構造7にはスラブ7bの中央に島状の中央充填部7cが設けられているので、中央充填部7cの自重やスラブ7bの剛性向上に基づいて、地盤反力に起因するスラブ7bの盛り上がりを抑える効果を奏するため、建物の変形や沈下、傾斜等をさらに低減できる。特に、中央充填部7cが島状に構成されていることで、スラブ7bの盛り上がりに対して有効に作用するとともに、基礎梁のように広い範囲に形成する必要がないことから重量増も僅かで済むという利点がある。
【0030】
また、上部基礎構造7の周囲には周辺の土壌9′よりも比重の大きい埋め戻し層9が形成されるので、建物の重量に起因する逆ヒービング(周辺の土壌が建物の重量によって押し上げられる現象)を抑制することができるため、建物の沈下や傾斜をさらに抑制できる。また、この埋め戻し層9は、大地震時にクイックサンド現象(墳砂現象)が生じたときの排水路として機能する。特に、砕石等の砂利を用いて埋め戻し層9を形成することで、排水機能を高めることができる。
【0031】
次に、図2を参照して、本発明に係る第2実施形態の建築基礎構造の施工方法について説明する。この実施形態において、整地面11は地面を一様に根切りし、ほぼ平坦に整地したものである。また、この整地面11上に敷設された土木シート12、砂利13、ドライモルタル14、発泡樹脂ブロック16はそれぞれ上記第1実施形態で説明したものと同じ素材を用いることができ、同様に施工することができるので、これらの説明は省略する。ただし、本実施形態の場合、整地面11は全体がほぼ平坦に形成され、また、発泡樹脂ブロック16も全体的に平坦に敷き詰められた状態となっている。さらに、発泡樹脂ブロック16の積層方法や接着固定方法についても第1実施形態と同様である。
【0032】
本実施形態では、ほぼ平坦に敷き詰めた発泡樹脂ブロック16上に上部基礎構造17を形成する。この上部基礎構造17は基礎梁17aとスラブ17bを有し、その形成方法は基本的に第1実施形態と同様であるが、本実施形態の場合、スラブ17bの外周部に、外周の基礎梁17aから外側に張り出す外周張出部17cが設けられている。この外周張出部17cは、外周の基礎梁17aより内側にあるスラブ17bと連続した平坦な底面を備えている。
【0033】
外周張出部17cの上には発泡樹脂ブロック18が配置される。この発泡樹脂ブロック18は基本的に上記発泡樹脂ブロック16と同様の材料で構成することができる。発泡樹脂ブロック18は、外周張出部17cの上面とともに外周の基礎梁17aの外側面に接した状態で配置されることが望ましい。特に、上部基礎構造17と一体化させてその剛性を高めるために、外周張出部17cと外周の基礎梁17aの少なくとも一方に対して発泡樹脂ブロック18を接着固定等により固定することが望ましい。
【0034】
なお、本実施形態でも、上部基礎構造17の周囲に埋め戻し層9を形成することが好ましい。また、上部基礎構造17の基礎梁17a上に土台8aを有する建物8が構築される点でも第1実施形態と同様である。ただし、本実施形態の場合、土台8aの一部に支持梁8bを掛け渡し、この支持梁8bと、スラブ17bの中央部(基礎梁17aで囲まれた領域の中央部分)との間に支持束8cを介在させることによってスラブ17bの剛性を高めている。
【0035】
本実施形態では、外周張出部17cを設けることで、建物8を支持する地盤面積が増大するので、地盤耐力が小さい場合でも建物8の沈下や傾斜を抑制することができる。また、外周張出部17c上に発泡樹脂ブロック18が配置されるので、外周張出部17cに加わる埋め戻し層9の重量を軽減することができるため、地盤への負担をさらに低減することができる。
【0036】
なお、本実施形態において、上記第1実施形態と同様にスラブ17bの中央部に島状の中央充填部を設けるようにしてもよい。また、この場合、上記支持束8cを設ける必要は必ずしもないが、上記支持束8cを支持梁8bと中央充填部17cとの間に介在させても構わない。
【0037】
最後に、図3及び図4を参照して本発明に係る第3実施形態の施工方法について説明する。この実施形態では、基本的に上記各実施形態と同様の下部基礎構造を有するので、その説明は省略する。なお、図示例では、第1実施形態と同様の整地面1、土木シート2、砂利3、ドライモルタル4、発泡樹脂ブロック5,6,6′を設けているが、第2実施形態と同様に構成しても構わない。
【0038】
本実施形態では、下部基礎構造を形成した後に、上部基礎構造の一部の基礎梁27のみをコンクリート等によって形成する。そして、この基礎梁27上に土台や柱を形成し、建物28の枠組みを形成する。この方法では、基礎梁27の形成工程におけるコンクリート等の養生に要する期間(硬化期間)が第1実施形態及び第2実施形態に比べて短くなるので、建物28の枠組みの築造を早期に開始することができるという利点がある。そして、その後、スラブ27b′や島状の中央充填部27c′等を含む上部基礎構造部分27′(基礎梁27を除いた部分)の形成を行う。このとき、上部基礎構造部分27′の形成とともに2階以上の床を構成する床スラブ29の形成を同時に行うことが可能である。また、上部基礎構造部分27′の形成工程と並行して建物28の建築を続けることができる。
【0039】
以上説明したいずれの実施形態でも、上述のように建物の沈下や傾斜を防止できる効果がきわめて高いので、地盤が軟弱であっても、根切りの深さを低減したり、発泡樹脂ブロックの使用量を低減したりすることが可能になる。したがって、全体として施工費用の低減や工期の短縮を図ることができる。
【0040】
尚、本発明の施工方法及び基礎構造は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記第1実施形態では、図1及び図5に示すように下部基礎構造の外周部において閉曲線状に厚い発泡樹脂ブロック6′を配置しているが、このような発泡樹脂ブロック6′を配置せずに、基礎構造の平面形状に合わせて発泡樹脂ブロック6を切断するなどの方法で、図6に示すように定形の発泡樹脂ブロック6を敷き詰めるだけでも構わない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】第1実施形態の断面図。
【図2】第2実施形態の断面図。
【図3】第3実施形態の断面図。
【図4】第3実施形態の概略工程図。
【図5】第1実施形態の下部基礎構造の平面図。
【図6】異なる平面構造を有する下部基礎構造の平面図。
【符号の説明】
【0042】
1,11…整地面、2,12…土木シート、3,13…砂利、4,14…ドライモルタル、5,6,6′,16,18…発泡樹脂ブロック、7,17…上部基礎構造、7a,17a,27…基礎梁、7b,17b,27b′…スラブ、7c,27c′…中央充填部、8…建物、9…埋め戻し層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
整地面上に土木シートが敷設され、該土木シート上に砂利が敷きつめられ、該砂利の上にドライモルタルが敷きつめられ、しかる後に、その上に発泡樹脂ブロックが敷設されて下部基礎構造が構成され、該下部基礎構造上に上部基礎構造が形成されることを特徴とする建築基礎構造の施工方法。
【請求項2】
複数の前記発泡樹脂ブロックが相互に接着剤を介して接着固定された状態で敷設されることを特徴とする請求項1に記載の建築基礎構造の施工方法。
【請求項3】
前記発泡樹脂ブロックは、前記発泡樹脂ブロック間の接着固定部が重ならないように複数層に積層配置されることを特徴とする請求項2に記載の建築基礎構造の施工方法。
【請求項4】
前記発泡樹脂ブロックを覆うスラブと、該スラブと一体に構成された基礎梁とを有する前記上部基礎構造が形成され、前記基礎梁に囲まれた前記スラブの中央部には、前記発泡樹脂ブロックが欠落し、前記発泡樹脂ブロックの下層に直接臨む中央支持部が設けられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の建築基礎構造の施工方法。
【請求項5】
前記発泡樹脂ブロックを覆うスラブと、該スラブと一体に構成された基礎梁とを有する前記上部基礎構造が形成され、前記スラブが外周に設けられた前記基礎梁より外側に張り出した外周張出部を備えた構造とされ、該外周張出部上に前記発泡樹脂ブロックが配置されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の建築基礎構造の施工方法。
【請求項6】
前記上部基礎構造の周囲においては、周辺土壌より比重の大きい埋め戻し層が形成されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の建築基礎構造の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−274657(P2006−274657A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−94971(P2005−94971)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(505114592)
【出願人】(505114617)
【Fターム(参考)】