説明

建築物における内外空気の流通抑制システム

【課題】 建築物の出入り口における内外空気の流通をなるべく少なくする。
【解決手段】 開閉扉4,4を備える建築物1の出入り口3に隣接させて風除ブース10を形成して,風除ブース10内の空気を排気する排気ファン20を設け,排気ファン20の排気を建築物1の外部に導く第1の流路25と建築物1の内部に導く第2の流路26を形成し,建築物1の外部の気圧が内部の気圧よりも高い時は,風除ブース10内の空気を第1の流路25を通じて建築物1の外部に送り,建築物1の内部の気圧が外部の気圧よりも高い時は,風除ブース10内の空気を第2の流路26を通じて建築物1の内部に送るように制御する制御手段を設けたことを特徴とする,建築物1における内外空気の流通抑制システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,事務所ビル,商業ビルなどといった業務用ビル,ホール,その他の各種建築物において,出入り口を通じて内外空気が流通することを抑制するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に建築物の内部は,その目的に応じて温度,湿度,清浄度などを好適な範囲に保つべく,種々の空調が行われる。このため,建築物に人が出入りしたり,物品などを搬入出する際に出入り口が開かれると,建築物の内部と外部の差圧,温度差などに従って出入り口を通じて建築物の内外の空気が流通し,空調の無駄を生じさせてしまう。特に高層化,気密化が進んだ建築物などでは,煙突効果等の影響で建築物内外の空気の流通が大きくなりやすく,空調エネルギコストの増大に加え,風圧による扉の故障,居住者の空調不快感助長などといった問題も生ずる。
【0003】
そこで従来より,建築物の出入り口に回転扉や,エアカーテン,二重扉などを設けることにより,建築物の出入り口におけるそのような内外空気の流通を防止する対策が採られていた。通常,回転扉方式は円柱体の空間を回転扉で4カ所程度に仕切り,その区切られた空間に人が入った状態で,回転扉が回転することにより,建築物への出入りを可能にしている。この回転扉方式では,円柱体の内面に回転扉の側縁が常に接することで,建築物の出入り口における内外空気の流通を防止している。
【0004】
エアカーテン方式は,建築物の出入り口の上部或いは左右に設置した空気吹出口から速い気流を出入り口と平行に吹くことによりエアーカーテンを作り,内外空気の流通を防止するものである。例えば特許文献1(特開平5−288384号公報)には,建築物の内外の気圧差によってエアーカーテンの吹出し角度を制御する装置が開示されている。
【0005】
二重扉方式は,建築物の出入り口に風除室を設けて,この風除室と建築物の外部の間,及びこの風除室と建築物の内部の間に扉をそれぞれ設け,扉を二重化することで内外空気の流通を防止するものである。また,例えば特許文献2(特開平10−132354号公報)に開示されるように,風除室の前後にそれぞれエアーカーテンを設けたようなものも知られている。
【0006】
【特許文献1】特開平5−288384号公報
【特許文献2】特開平10−132354号公報
【0007】
しかしながら,回転扉方式は,回転扉の回転速度によって出入り口を通過できる人数が制限されるため,短時間に人の出入が集中する建築物には不向きである。また,回転扉方式は,円柱体の内面と回転扉の側縁の間に人などが挟まれる危険性がある。
【0008】
一方,エアカーテン方式は,建築物の内外の気圧差が大きい場合,エアカーテンが破られることがある。また,出入り口を通る人に高速の気流が直接作用するため,不快感を抱かせることも心配される。
【0009】
また,二重扉方式は,扉同士が近い場合や,人の出入りなどが多い場合は二枚の扉が同時に開いてしまい,効果が薄れてしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は,建築物の出入り口における内外空気の流通をなるべく少なくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる目的を達成するために,本発明によれば,開閉扉を備える建築物の出入り口に隣接させて風除ブースを形成し,該風除ブース内の空気を排気する排気ファンを設け,前記排気ファンの排気を建築物の外部に導く第1の流路と建築物の内部に導く第2の流路を形成し,建築物の外部の気圧が内部の気圧よりも高い時は,前記風除ブース内の空気を前記第1の流路を通じて建築物の外部に送り,建築物の内部の気圧が外部の気圧よりも高い時は,前記風除ブース内の空気を前記第2の流路を通じて建築物の内部に送るように制御する制御手段を設けたことを特徴とする,建築物における内外空気の流通抑制システムが提供される。
【0012】
前記風除ブース内の空気を前記第1の流路を通じて建築物の外部に送る時は,前記風除ブース内と建築物の内部との間の風速を0に近付けるように,前記排気ファンの排気量を制御し,前記風除ブース内の空気を前記第2の流路を通じて建築物の内部に送る時は,前記風除ブース内と建築物の外部との間の風速を0に近付けるように,前記排気ファンの排気量を制御しても良い。また,前記開閉扉が開かれた時にのみ,前記排気ファンを稼動させても良い。更に,前記開閉扉が開かれた時に,前記排気ファンを稼動させる他,前記開閉扉が閉じている状態において,前記排気ファンを稼動させて前記風除ブース内の空気を前記第1の流路を通じて建築物の外部に送ることが可能なように構成されていても良い。
【発明の効果】
【0013】
例えば建築物の外部の気圧が建築物の内部の気圧よりも高い場合に開閉扉が開かれると,出入り口を通じて建築物の外部から内部に向って空気が入り込もうとする。また逆に建築物の内部の気圧が建築物の外部の気圧よりも高い場合に開閉扉が開かれると,出入り口を通じて建築物の内部から外部に向って空気が流れ出ようとする。
【0014】
そこで,本発明にあっては,建築物の外部の気圧が内部の気圧よりも高い場合には,風除ブース内の空気を第1の流路を通じて建築物の外部に送る。これにより,建築物の外部から風除ブース内に入り込んだ空気を,建築物の内部に流れ込む前に,風除ブースにおいて排気ファンによって吸い込み,第1の流路を通じて建築物の外部に戻してしまう。こうして,建築物の外部の空気が風除ブースから建築物の内部に流れ込むことを抑制する。
【0015】
また本発明にあっては,建築物の内部の気圧が外部の気圧よりも高い場合には,風除ブース内の空気を第2の流路を通じて建築物の内部に送る。これにより,建築物の内部から風除ブース内に入り込んだ空気を,建築物の外部に流れ出る前に,風除ブースにおいて排気ファンによって吸い込み,第2の流路を通じて建築物の内部に戻してしまう。こうして,建築物の内部の空気が出入り口を通じて建築物の外部が流れ出ることを抑制する。
【0016】
ここで,風除ブース内の空気を第1の流路を通じて建築物の外部に送っている場合は,排気ファンによる排気量が少な過ぎると相対的に風除ブース内の圧力が高くなるので,建築物の外部から風除ブース内に入り込んだ空気が,更に建築物の内部に向って入り込んでしまう。また逆に排気ファンによる排気量が多過ぎると相対的に風除ブース内の圧力が低くなるので,建築物の内部の空気が風除ブース内に入り込み,排気ファンによって風除ブース内から排気されて建築物の外部に流れ出てしまう。
【0017】
そこで,風除ブース内の空気を第1の流路を通じて建築物の外部に送っている場合は,風除ブースと建築物の内部との境界位置における風速を検知する。そして,風除ブース内から建築物の内部に向って空気が流れ込んでいることが検知された場合は,排気ファンの排気量を増やすように駆動を制御する。これにより,風除ブース内の気圧を相対的に下げ,風除ブース内から建築物の内部に向って空気が流れ込まないようにする。また逆に,建築物の内部から風除ブース内へ空気が流れ込んでいることが検知された場合は,排気ファンの排気量を減らすように駆動を制御する。これにより,風除ブース内の気圧を相対的に上げ,建築物の内部から風除ブース内へ空気が流れ込まないようにする。こうして,風除ブース内の空気を第1の流路を通じて建築物の外部に送っている場合は,風除ブース内と建築物の内部との間の風速を0に近付けるように,排気ファンの排気量を制御することにより,風除ブース内と建築物の内部との間での空気の移動を抑制でき,その結果,建築物の外部の空気が風除ブースから建築物の内部に流れ込んでしまうことを確実に抑制でき,また,建築物の内部の空気が風除ブースから建築物の外部に流れ出てしまうことを確実に抑制できるようになる。なお,排気ファンの排気量を可変に制御できるように,排気ファンの駆動をインバータ制御すると良い。
【0018】
一方,風除ブース内の空気を第2の流路を通じて建築物の内部に送っている場合は,排気ファンによる排気量が少な過ぎると相対的に風除ブース内の圧力が高くなるので,建築物の内部から風除ブース内に流れ込んだ空気が,更に建築物の外部に流れ出てしまう。また逆に排気ファンによる排気量が多過ぎると相対的に風除ブース内の圧力が低くなるので,建築物の外部の空気が風除ブース内に入り込み,排気ファンによって風除ブース内から排気されて建築物の内部に入り込んでしまう。
【0019】
そこで,風除ブース内の空気を第2の流路を通じて建築物の内部に送っている場合は,風除ブースと建築物の外部との境界位置における風速を検知する。そして,風除ブース内から建築物の外部に向って空気が流れ出ていることが検知された場合は,排気ファンの排気量を増やすように駆動を制御する。これにより,風除ブース内の気圧を相対的に下げ,風除ブース内から建築物の外部に向って空気が流れ出ないようにする。また逆に,建築物の外部から風除ブース内へ空気が流れ込んでいることが検知された場合は,排気ファンの排気量を減らすように駆動を制御する。これにより,風除ブース内の気圧を相対的に上げ,建築物の外部から風除ブース内へ空気が流れ込まないようにする。こうして,風除ブース内の空気を第2の流路を通じて建築物の外部に送っている場合は,風除ブース内と建築物の外部との間の風速を0に近付けるように,排気ファンの排気量を制御することにより,風除ブース内と建築物の外部との間での空気の移動を抑制でき,その結果,建築物の内部の空気が風除ブースから建築物の外部に流れ出ることを確実に抑制でき,また,建築物の外部の空気が風除ブースから建築物の内部に入り込むことを確実に抑制できるようになる。なおこの場合も,排気ファンの駆動をインバータ制御しておけば,排気ファンの排気量を可変に制御することが可能である。
【0020】
なお,開閉扉が閉じている間は,建築物の出入り口における内外空気の流通が開閉扉によって遮断される。そのため,開閉扉が開かれた時にだけ排気ファンを稼動させるように制御して,風除ブース内の空気を前記第1の流路もしくは前記第2の流路を通じて排気させても良い。そうすれば,必要な時にだけ建築物の内外空気の流通を防止することにより,エネルギコストを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下,本発明の好ましい実施の形態を図面を参照にして説明する。図1は,本発明の実施の形態にかかる流通抑制システムを備えた建築物1の内部構造を示す縦断面図である。図2は,同じ建築物1の横断面図である。建築物1は,例えば事務所ビル,商業ビルなどといった業務用ビル,ホールなどである。
【0022】
建築物1の外壁2には,人が出入りしたり,物品の搬入出などを行うための出入り口3が開口している。出入り口3には,自動的に左右に開くことが可能な一対の開閉扉4,4が取り付けられている。これら開閉扉4,4は,常時は出入り口3を閉じているが,出入り口3に人や物品が近付くと,それを検知して出入り口3の左右に開き,出入り口3付近に人や物品が存在する間,出入り口3を開放するようになっている。
【0023】
出入り口3から建築物1の内側に入ったすぐの位置には,出入り口3に隣接するようにして風除ブース10が形成されている。風除ブース10の両側方は側板11,11によって塞がれており,風除ブース10の上方は通気性のある天井ボード12によって覆われている。この場合,天井ボード12自体を通気性のある材料で構成しても良いし,天井ボード12にパンチング孔やスリット等の開口部を形成して天井ボード12に通気性を持たせても良い。風除ブース10の外部側(図1,2における左側)は,出入り口3が位置している。前述のように,常時は,出入り口3は開閉扉4,4によって閉じられており,出入り口3に人や物品が近付いた場合にのみ,出入り口3が開放されるようになっている。一方,風除ブース10の内部側(図1,2における右側)は,常時開放された通路口13になっている。この実施の形態では,通路口13には,出入り口3に設けられた開閉扉4,4のような人や物品の通過を遮るものは存在せず,人や物品が近付いた場合に限らず,常に通路口13は開かれた状態になっている。
【0024】
天井ボード12で区切られることによって風除ブース10の上部に形成された排気チャンバ14には,風除ブース10内の空気を天井ボード12を通じて排気する排気ファン20が設けられている。排気ファン20は,出入り口3と通路口13のほぼ中間位置の上方に配置されており,後述するように,出入り口3から風除ブース10内に入り込んだ建築物1の外部の空気及び通路口13から風除ブース10内に入り込んだ建築物1の内部の空気のいずれも,排気ファン20によって等しく排気できるようになっている。排気ファン20には,稼動量を調節するインバーター21が接続されている。このインバーター21によって,風除ブース10内の空気の排気量を調節できるようになっている。
【0025】
排気チャンバ14内において,排気ファン20の吐出側には,ダクト22の下端が接続されている。ダクト22の上端には,外部側ダクト25と内部側ダクト26が接続されている。後に詳しく説明するように,外部側ダクト25が,排気ファン20の排気を建築物1の外部に送る第1の流路を形成し,内部側ダクト26が,建築物1の内部に送る第2の流路を形成している。そして,風除ブース10内から排気した空気を,ダクト22から,外部側ダクト25と内部側ダクト26の何れにも送ることができるようになっている。
【0026】
外部側ダクト25は,建築物1の外壁2に配置された外排気口30に連通している。外排気口30は,外部側ダクト25内から建築物1の外部(屋外)に向って排気させるように開口している。外部側ダクト25には,モータ駆動される開閉ダンパ31が介装されている。開閉ダンパ31には,そのモータ駆動による開閉を操作するドライバ32が接続されている。開閉ダンパ31を開くと,風除ブース10内から排気した空気を,外部側ダクト25を通して外排気口30から建築物1の外部に向って排気させる流路(第1の流路)が開かれるが,開閉ダンパ31を閉じると,風除ブース10内から排気した空気は,外部側ダクト25を通ることができず,建築物1の外部に向って排気されなくなる。
【0027】
内部側ダクト26は,建築物1の内部(屋内)に向って開口する内排気口35に連通している。内排気口35は,風除ブース10の内部側となる通路口13の上方に配置された壁面36に支持されている。内部側ダクト26には,モータ駆動される開閉ダンパ37が介装されている。開閉ダンパ37には,そのモータ駆動による開閉を操作するドライバ38が接続されている。開閉ダンパ37を開くと,風除ブース10内から排気した空気を,内部側ダクト26を通して内排気口35から建築物1の内部に送る流路(第2の流路)が形成されるが,開閉ダンパ37を閉じると,風除ブース10内から排気した空気は,内部側ダクト26を通ることができず,建築物1の内部に向って送られなくなる。
【0028】
排気ファン20の稼動量を調節するインバーター21,外部側ダクト25に介装された開閉ダンパ31を開閉操作するドライバ32,及び,内部側ダクト26に介装された開閉ダンパ37を開閉操作するドライバ38は,何れも制御手段40によって制御される。建築物1の外部において検出部41で検出された気圧と,風除ブース10において検出部42で検出された気圧が,差圧計39に入力されている。後述するように,検出部42は,開閉扉4,4が閉じられている状態で検出した気圧を差圧計39に入力するようになっている。上述のように風除ブース10の内部側に形成された通路口13は常時開放されているので,開閉扉4,4が閉じられた状態では,風除ブース10内の気圧は,建築物1の内部の気圧と等しくなっている。このため,検出部42は,建築物1の内部の気圧を検出して差圧計39に入力することになる。これにより,差圧計39は,開閉扉4,4が閉じられた状態において,検出部41,42でそれぞれ検出された気圧により,建築物1の内外の差圧を検出し,それを制御手段40に入力するようになっている。
【0029】
また,建築物1の外部と風除ブース10との境界となる出入り口3には,風速センサ43が設けられており,この風速センサ43で検出された出入り口3における風速が,制御手段40に入力されている。同様に,風除ブース10と建築物1の内部との境界となる通路口13には,風速センサ44が設けられており,この風速センサ44で検出された出入り口3における風速が,制御手段40に入力されている。その他,制御手段40には,開閉扉4,4の開閉なども情報として入力されている。そして制御手段40は,後述するように,これら気圧センサ41,42及び風速センサ43,44で検出された気圧及び風速や開閉扉4,4の開閉などに基いて,排気ファン20の稼動及び開閉ダンパ31,32の開閉を制御するようになっている。
【0030】
さて,以上のように構成された流通抑制システムの運転について説明すると,先ず,建築物1の出入り口3に取付けられた開閉扉4,4が閉じられている場合は,出入り口3を通じて建築物1の外部と風除ブース10内とで空気が流通する心配がなく,建築物1の外部と建築物1の内部との間で空気が流通する心配がない。したがって,このように開閉扉4,4が閉じている場合は,制御手段40は,排気ファン20の稼動を停止させる。建築物1の内外の空気の流通は,開閉扉4,4によって防がれた状態である。
【0031】
また,このように開閉扉4,4が閉じている状態において,建築物1の外部で検出部41によって検出された気圧と,風除ブース10内で検出部42で検出された気圧が,差圧計39に入力される。この場合,開閉扉4,4が閉じられていることにより,風除ブース10内の気圧は建築物1の内部の気圧と等しいので,差圧計39は,検出部41から入力された気圧と検出部42から入力された気圧により,建築物1の内外の差圧を検出する。そして,このように検出された差圧が制御手段40に入力される。こうして制御手段40は,建築物1の外部の気圧と建築物1の内部の気圧のどちらが高圧であるかを,開閉扉4,4が閉じられた状態において予め把握することができる。
【0032】
次に,建築物1に対して人が出入りする場合や,物品などを搬入出する場合は,出入り口3に人や物品などが近付くことにより,開閉扉4,4が出入り口3の左右に開き,出入り口3が開放される。そして,このように出入り口3は開放されたことにより,出入り口3を通じて建築物1の内外の空気が流通する状態となる。
【0033】
そこで,このように開閉扉4,4が開いて出入り口3が開放された場合は,制御手段40に開閉扉4,4が開いたことが入力され,これにより,制御手段40は排気ファン20の稼動を開始させる。そして,開放された出入り口3を通じて建築物1の外部から風除ブース10内に入ってきた空気を,もしくは,通路口13を通じて建築物1の内部から風除ブース10内に入ってきた空気を,風除ブース10内においてダクト22内に吸い込み,第1の流路である外部側ダクト25を通じて建築物1の外部に排気するか,もしくは,第2の流路である内部側ダクト26を通じて建築物1の内部に排気する。
【0034】
この場合,前述のように開閉扉4,4が開かれる前の状態において,制御手段40は建築物1の内外の差圧を予め把握しているので,制御手段40は,開閉扉4,4が開かれた際に,建築物1の外部と建築物1の内部のどちらから風除ブース10内に空気が流れ込んでくるかを予想することができる。
【0035】
即ち,例えば開閉扉4,4が開かれる前の状態において,建築物1の外部の気圧が建築物1の内部の気圧よりも高い場合であれば,開閉扉4,4が開かれると同時に,建築物1の外部の空気が出入り口3から風除ブース10内に空気が流れ込み,更に建築物1の内部に流れ込もうとする。そこで,このように建築物1の外部の気圧が建築物1の内部の気圧よりも高くなっていた場合は,制御手段40は,ドライバ32,38を制御することによって,外部側ダクト25に介装された開閉ダンパ31を開き,内部側ダクト26に介装された開閉ダンパ37を閉じるように操作する。これにより,ダクト22を外部側ダクト25から外排気口30に連通させた状態にする。なお,このような開閉ダンパ31,37の開閉操作は,開閉扉4,4が開かれる直前に行っても良いし,開閉扉4,4が開かれる前に予め行っておいても良い。
【0036】
そして,開閉扉4,4が開かれたと同時に排気ファン20の稼動を開始することにより,出入り口3を通じて建築物1の外部から風除ブース10内に入ってきた空気を,建築物1の内部に流れ込む前に,風除ブース10内において強制的にダクト22内に吸い込み,第1の流路である外部側ダクト25を通じて建築物1の外部に排気する。こうして,建築物1の外部の空気が風除ブース10から建築物1の内部に流れ込んでしまうことを抑制する。
【0037】
また,このように風除ブース10内の空気を第1の流路である外部側ダクト25を通じて建築物1の外部に送り出す場合は,制御手段40は,風速センサ44によって検出された風除ブース10と建築物1の内部との間の通路口13における風速に基いて,インバーター21によって排気ファン20の稼動量を調節する。即ち,風除ブース10内から建築物1の内部に向って空気が流れ込んでいることが風速センサ44によって検出された場合は,制御手段40は,インバーター21によって排気ファン20の排気量を増やすように駆動を制御する。すると,ダクト22内への排気量が増加することによって風除ブース10内の気圧が相対的に低下するので,風除ブース10内から建築物1の内部に向って空気が流れ込まないようになる。また逆に,建築物1の内部から風除ブース10内へ空気が流れ出ていることが風速センサ44によって検出された場合は,制御手段40は,インバーター21によって排気ファン20の排気量を減らすように駆動を制御する。すると,ダクト22内への排気量が減少することによって風除ブース10内の気圧が相対的に上昇するので,建築物1の内部から風除ブース10内へ空気が流れ出ないようになる。
【0038】
こうして,風除ブース10内の空気を第1の流路である外部側ダクト25を通じて建築物1の外部に送り出す場合は,風速センサ44によって検出される風除ブース10と建築物1の内部との間の通路口13における風速を0に近付けるように,制御手段40が排気ファン20の排気量を制御することにより,風除ブース10内と建築物1の内部との間での空気の移動を防止することが可能となる。その結果,建築物1の外部の空気が風除ブース10から建築物1の内部に流れ込むことを更に確実に抑制でき,また,建築物1の内部の空気が風除ブース10から建築物1の外部に流れ出ることを更に確実に抑制できるようになる。なお,排気ファン20の稼動量はインバーター21によって調節されるので,制御手段40は,排気ファン20を任意の排気量に制御できる。
【0039】
また,例えば開閉扉4,4が開かれる前の状態において,建築物1の外部の気圧が建築物1の内部の気圧よりも低い場合であれば,開閉扉4,4が開かれると同時に,建築物1の内部の空気は通路口13を通って風除ブース10内に流れ込み,更に建築物1の外部に流れ出ようとする。そこで,このように建築物1の外部の気圧が建築物1の内部の気圧よりも低くなっていた場合は,制御手段40は,ドライバ32,38を制御することによって,外部側ダクト25に介装された開閉ダンパ31を閉じ,内部側ダクト26に介装された開閉ダンパ37を開くように操作する。これにより,ダクト22を内部側ダクト26から内排気口35に連通させた状態にする。なお,このような開閉ダンパ31,37の開閉操作も,開閉扉4,4が開かれる直前に行っても良いし,開閉扉4,4が開かれる前に予め行っておいても良い。
【0040】
そして,開閉扉4,4が開かれたと同時に排気ファン20の稼動を開始することにより,通路口13から風除ブース10内に流れ込んできた建築物1の内部の空気を,風除ブース10内からダクト22内に吸い込み,第2の流路である内部側ダクト26を通じて建築物1の内部に戻す。こうして,通路口13を通じて建築物1の内部から風除ブース10内に入り込んだ空気を,建築物1の外部に流れ出る前に,風除ブース10において排気ファン20によって強制的にダクト22内に吸い込み,第2の流路である内部側ダクト26を通じて建築物1の内部に戻すようにする。こうして,建築物1の内部の空気が風除ブース10から建築物1の外部に流れ出ることを抑制する。
【0041】
また,このように風除ブース10内の空気を第2の流路である内部側ダクト26を通じて建築物1の内部に戻す場合,制御手段40は,風速センサ43によって検出された風除ブース10と建築物1の外部との間の出入り口3における風速に基いて,インバーター21によって排気ファン20の稼動量を調節する。即ち,風除ブース10内から出入り口3を通じて建築物1の外部に向って空気が流れ出ていることが風速センサ43によって検出された場合は,制御手段40は,インバーター21によって排気ファン20の排気量を増やすように駆動を制御する。これにより,風除ブース10内からダクト22内への排気量が増加して風除ブース10内の気圧が相対的に低下するので,風除ブース10内から建築物1の外部に向って空気が流れ出ないようになる。また逆に,建築物1の外部から出入り口3を通じて風除ブース10内へ空気が流れ込んでいることが風速センサ43によって検出された場合は,制御手段40は,インバーター21によって排気ファン20の排気量を減らすように駆動を制御する。これにより,風除ブース10内からダクト22内への排気量が減少して風除ブース10内の気圧が相対的に上昇するので,建築物1の外部から風除ブース10内へ空気が流れ込まないようになる。
【0042】
こうして,風除ブース10内の空気を第2の流路である内部側ダクト26を通じて建築物1の内部に戻す場合は,風速センサ43によって検出される風除ブース10と建築物1の外部との間の出入り口3における風速を0に近付けるように,制御手段40が排気ファン20の排気量を制御することにより,風除ブース10内と建築物1の外部との間での空気の移動を抑制することが可能となる。その結果,建築物1の内部の空気が風除ブース10を通って建築物1の外部に流れ出てしまうことを更に確実に抑制でき,また,建築物1の外部の空気が風除ブース10を通って建築物1の内部に入り込んでしまうことを更に確実に抑制できるようになる。なおこの場合も同様に,排気ファン20の稼動量はインバーター21によって調節されるので,制御手段40は,排気ファン20を任意の排気量に制御できる。
【0043】
以上に説明した本発明の実施の形態にかかる流通抑制システムによれば,建築物1の出入り口3を通じた内外空気の流通を防止することにより,空調効率を向上させることができる。この流通抑制システムは,既存の建築物1の出入り口3に隣接して風除ブース10を形成することによって容易に構築することができる。その場合,風除ブース10のスペースは小さなもので良く,また,実施の形態で説明したように風除ブース10の上部に排気ファン20を設ければ,駆動機器としての排気ファン20に人等が直接触れる心配がなく,人身災害の心配がない。また,風除ブース10の内部側を常時開放した通路口13とすることにより,人や物品の出入りをスムーズに行うことができる。また,風除ブース10内にはエアーカーテンのような高速の気流は生じないので,人に不快感を与える心配もない。
【0044】
加えて,この実施の形態で説明した流通抑制システムによれば,開閉扉4,4が閉じている状態でも,排気ファン20を稼動させて風除ブース10内の空気を第1の流路である外部側ダクト25を通じて建築物1の外部に排気させることにより,建築物1の内部や風除ブース10内を換気することも可能である。即ち,例えば建築物1の内部や風除ブース10内の温度上昇が検出されたような場合,排気ファン20を稼動させて風除ブース10内や建築物1の内部の空気を排気する。すると,排気によって建築物1の内部が負圧となって,別途設けられた図示しない外気取入口などから外気を建築物1の内部に取りこむことにより,外気導入によって温度上昇を抑制させることなども可能となる。
【0045】
なお図示の例では,開閉扉4,4によって開閉される出入り口3に隣接させて,建築物1の内側に入り込む位置に風除ブース10を形成した形態を示したが,風除ブース10は,開閉扉4,4によって開閉される出入り口3に隣接させて,建築物1の外側に突き出た格好で形成することもできる。また,建築物1の出入り口3を跨って,建築物1の内側と外側の両方に出るような形で風除ブース10を形成しても良い。いずれにしても建築物1の出入り口3に隣接させて風除ブース10を形成し,開閉扉4,4が開いて出入り口3が開放された際に,風除ブース10を通じて建築物1の外部と内部の間で流通しようとする空気を,建築物1の外部から内部に入り込む前に風除ブース10から建築物1の外部に戻し,あるいは,建築物1の内部から外部に流れ出る前に風除ブース10から建築物1の内部に戻すことにより,建築物1の内外の空気を流通を抑制すれば良い。
【0046】
なお,出入り口3を開閉させる開閉扉4,4を設けた形態を説明したが,開閉扉4,4を省略し,出入り口3を常時開放させて,排気ファン20によって風除ブース10内の空気を常に排気することも考えられる。地下鉄ホームへの出入り口など,人等の出入りが多く,かつ空調空気の流出を抑制したい箇所などには,開閉扉4,4を省略することも有効である。また,出入り口3に開閉扉4,4を設けると共に,風除ブース10の内部側の通路口13にも開閉扉を設けて,出入り口3に設けた開閉扉4,4と通路口13に設けた開閉扉の両方が開かれた場合にのみ排気ファン20によって風除ブース10内の空気を排気するようにしても良い。
【0047】
また,建築物1の内部の気圧を検出する検出部42を,風除ブース10に設けた形態を示したが,検出部42は,建築物1の内部であれば,必ずしも風除ブース10に設けなくても良く,建築物1の内部(風除ブース10内ではない位置)に検出部42を設けても良い。また,実施の形態では,内排気口35から建築物1の内部(屋内)に向って直接空気を吐出する例を示したが,内排気口35の代りに,建築物1の内部に設けられたロビーや機械室等に設けられた還気口(図示せず)を利用して建築物1の内部に空気を戻すようにしても良い。なお,いずれの場合も,建築物1の内部に空気を戻す際にフィルタによって除塵を行うようにしても良い。また,風除ブース10内から建築物1の内部に戻す空気を利用して,風除ブース10の内部側の通路口13にエアーカーテンを形成することも可能である。その他,開閉ダンパ31,37は,モータ駆動の他,空気などの流体を駆動源として作動するものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の流通抑制システムは,事務所ビル,商業ビルなどといった業務用ビルの他,ホール,倉庫等の他の建築物にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施の形態にかかる流通抑制システムを備えた建築物の内部構造を示す縦断面図である。
【図2】図1と同じ建築物の横断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 建築物
2 外壁
3 出入り口
4 開閉扉
10 風除ブース
11 側板
12 上板
13 通路口
20 排気ファン
21 インバーター
22 ダクト
25 外部側ダクト
26 内部側ダクト
30 外排気口
31 開閉ダンパ
32 ドライバ
35 内排気口
36 壁面
37 開閉ダンパ
38 ドライバ
40 制御手段
41,42 気圧検出部
43,44 風速センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉扉を備える建築物の出入り口に隣接させて風除ブースを形成し,該風除ブース内の空気を排気する排気ファンを設け,
前記排気ファンの排気を建築物の外部に導く第1の流路と建築物の内部に導く第2の流路を形成し,
建築物の外部の気圧が内部の気圧よりも高い時は,前記風除ブース内の空気を前記第1の流路を通じて建築物の外部に送り,建築物の内部の気圧が外部の気圧よりも高い時は,前記風除ブース内の空気を前記第2の流路を通じて建築物の内部に送るように制御する制御手段を設けたことを特徴とする,建築物における内外空気の流通抑制システム。
【請求項2】
前記風除ブース内の空気を前記第1の流路を通じて建築物の外部に送る時は,前記風除ブース内と建築物の内部との間の風速を0に近付けるように,前記排気ファンの排気量を制御し,前記風除ブース内の空気を前記第2の流路を通じて建築物の内部に送る時は,前記風除ブース内と建築物の外部との間の風速を0に近付けるように,前記排気ファンの排気量を制御することを特徴とする,請求項1に記載の建築物における内外空気の流通抑制システム。
【請求項3】
前記開閉扉が開かれた時にのみ,前記排気ファンを稼動させることを特徴とする,請求項1または2に記載の建築物における内外空気の流通抑制システム。
【請求項4】
前記開閉扉が開かれた時に,前記排気ファンを稼動させる他,前記開閉扉が閉じている状態において,前記排気ファンを稼動させて前記風除ブース内の空気を前記第1の流路を通じて建築物の外部に送ることが可能なように構成されていることを特徴とする,請求項1または2に記載の建築物における内外空気の流通抑制システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−17431(P2006−17431A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−198160(P2004−198160)
【出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【出願人】(000169499)高砂熱学工業株式会社 (287)