建築物及びその建築方法
【課題】木造建築物の利点と鉄筋コンクリート造建築物の利点を両方兼ね備えた建築物の建築方法の提供。
【解決手段】基礎11を構築する基礎構築工程と、基礎11の上側に、外面に木板12aが貼られて天井等に木板12cが貼られた木造建築物12を建築する木造工程と、基礎11の底版部11b1の上側に鉄筋13aを木板12aに沿って配置するとともに、天井裏となる空間に天井スラブ形成用の鉄筋13bを木板12cに沿って配置する配筋工程と、基礎11の底版部11b1の上側に外壁形成用の型枠20を立て、型枠20で木造建築物12の外面を鉄筋13aとともに囲う型枠設置工程と、型枠20と木板12aとの隙間、及び木板12cの上部空間にコンクリート30を流し込むコンクリート注入工程と、を経て、鉄筋コンクリート製の外壁と、天井スラブ又は床スラブとが木造建築物12に対して一体化された建築物の建築。
【解決手段】基礎11を構築する基礎構築工程と、基礎11の上側に、外面に木板12aが貼られて天井等に木板12cが貼られた木造建築物12を建築する木造工程と、基礎11の底版部11b1の上側に鉄筋13aを木板12aに沿って配置するとともに、天井裏となる空間に天井スラブ形成用の鉄筋13bを木板12cに沿って配置する配筋工程と、基礎11の底版部11b1の上側に外壁形成用の型枠20を立て、型枠20で木造建築物12の外面を鉄筋13aとともに囲う型枠設置工程と、型枠20と木板12aとの隙間、及び木板12cの上部空間にコンクリート30を流し込むコンクリート注入工程と、を経て、鉄筋コンクリート製の外壁と、天井スラブ又は床スラブとが木造建築物12に対して一体化された建築物の建築。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造建築物と鉄筋コンクリート造建築物との利点を兼ね備えた建築物と、その建築方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
木造建築物は、建築コストが安い、工期が短い、改築が容易である、木のぬくもりや調湿作用により快適である、といった利点を有している反面、強度や耐震性や耐津波性や断熱性や耐火性については、鉄筋コンクリート造建築物と比較して劣っていた。一方、鉄筋コンクリート造建築物は、強度や耐震性や断熱性や耐火性には優れているものの、建築コストが高い、工期が長い、改築が困難である、無機質である、湿気がこもりやすい、などの欠点を有していた。このような実状に鑑みてか、これまでには、木造建築物に鉄筋コンクリート造建築物の要素を取り入れた建築物の建築方法も提案されるようになっている。
【0003】
例えば、特許文献1には、木造建築物の屋外側に、ケイ酸カルシウム板などの不燃材料製パネルからなる層を設け、さらにその屋外側に、軽量気泡コンクリートパネルからなる層を設けた建築物が記載されている。これにより、従来の木造建築物よりも耐火性を向上することができる旨が記載されている。しかし、特許文献1の建築物は、天井や床は、従来の木造建築物と同様であり、必ずしも鉄筋コンクリート造建築物と同等の強度を有しているとは言い難かった。加えて、複数枚の軽量気泡コンクリートパネルを継ぎ合わせた構造であるため、鉄筋コンクリート造建築物並みの耐津波性を発揮することもできない。
【0004】
また、特許文献2には、建築物の木造部分にプレキャスト型のコンクリートフレームを組み込んで補強した建築物が記載されている。コンクリートフレームの形態は門型となっており、建築物の木造部分における外壁に沿った箇所と、屋根下の部分(最上階の屋根裏)とを補強する。しかし、特許文献2の建築物は、木造建築物の形態に対応するプレキャスト型のコンクリートフレームを予め用意しなければならず、その施工や運搬が大変であった。このため、特許文献2の建築物は、建築コストが高くなるおそれがあった。また、木造部分における殆どの部分が露出するため、断熱性や耐火性については、従来の木造建築物と比較して大差はなかった。
【0005】
木造建築物並みの工期の短さ、建築コストの安さ、改築容易性及び快適性を有し、鉄筋コンクリート造建築物並みの強度や耐震性や耐火性や耐津波性を発揮できる建築物があればよいのであるが、そのような建築物は、これまでに存在しなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−299194号公報
【特許文献2】特開2009−108666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、木造建築物並みの工期の短さ、建築コストの安さ、改築容易性及び快適性を有し、鉄筋コンクリート造建築物並みの強度や耐震性や耐火性や耐津波性を発揮できる建築物を提供するものである。また、この建築物を好適に建築できる建築物の建築方法を提供することも本発明の目的である。
秘密意匠で合格していた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、[1]立ち上がり部の外周に沿って底版部が形成された基礎を構築する基礎構築工程と、[2]基礎における立ち上がり部で囲まれた部分の上側に、その外面に鉛直面形成用の木板が貼られて、その天井又は床に水平面形成用の木板が貼られた構造の木造建築物を建築する木造工程と、[3]基礎における立ち上がり部よりも外側の底版部の上側に外壁形成用の鉄筋を鉛直面形成用の木板に沿って配置するとともに、木造建築物の天井裏又は床下となる空間に天井スラブ形成用又は床スラブ形成用の鉄筋を水平面形成用の木板に沿って配置し、木造建築物の外面に設けられた開口部から天井スラブ形成用又は床スラブ形成用の鉄筋を外側に出して外壁形成用の鉄筋に連結する配筋工程と、[4]基礎における立ち上がり部よりも外側の底版部の上側に外壁形成用の型枠を立てて、該型枠で木造建築物の外面を外壁形成用の鉄筋とともに囲う型枠設置工程と、[5]外壁形成用の型枠と鉛直面形成用の木板との隙間、及び水平面形成用の木板の上部空間にコンクリートを流し込むコンクリート注入工程と、[6]前記コンクリートを養生させるコンクリート養生工程と、を経て、木造建築物の外面に鉄筋コンクリート製の外壁を該外面に一体化した状態で形成するとともに、木造建築物の天井又は床に貼られた水平面形成用の木板の上部空間に鉄筋コンクリート製の天井スラブ又は床スラブを水平面形成用の木板及び前記鉄筋コンクリート製の外壁と一体化した状態で形成することを特徴とする建築物の建築方法を提供することによって解決される。以下においては、この建築方法を「第一実施態様の建築方法」と呼ぶことがある。
【0009】
本発明の建築方法で建築された建築物は、木造建築物における外面と天井面(又は床面)に鉄筋コンクリート製の外壁と天井スラブ(又は床スラブ)が一体化された構造となっているため、非常に強度や耐火性に優れたものとなっており、地震や津波、火事といった災害に強いものとなっている。また、断熱性に優れ、省エネルギー化も容易なものとなっている。さらに、本発明の建築方法では、木造建築物の外面に貼られた鉛直面形成用の木板や、天井や床に貼られた水平面形成用の木板をコンクリート用の型枠として利用することができることや、鉄筋コンクリート造の外壁を構築している間に、内側の木造建築物部分の内装などの工事を並行して進めることができるので、従来の鉄筋コンクリート製の建築物と比較して、工期を大幅に短縮して製造コストを大幅に削減することも可能となっている。さらにまた、本発明の建築方法で建築された建築物は、その内側は、通常の木造建築物であるので、木のぬくもり感じられる快適な空間となっているだけでなく、改築なども容易に行えるものとなっている。特に、鉄筋コンクリート製の外壁を構築した後は、建築物の強度は、前記外壁でも維持することができるので、従来の木造建築物を改築する場合よりも、柱や内壁を取り外す際の自由度が高く、自由なレイアウトで改築を行うことができる。そして、木の調湿作用により、その外壁は鉄筋コンクリートであるにもかかわらず、湿気がこもらず、快適な居住空間をつくりだすことが可能なものとなっている。本発明の建築方法により得られた建築物は、一般家屋としてだけでなく、アパートやマンション、あるいは事業所用の建築物など、各種建築物として好適である。本発明の建築方法で建築される建築物の回数も特に限定されないが、通常、一階建てから五階建て程度である。また、本発明の建築方法は、地下を有する建築物を建築する場合にも好適に採用できる。
【0010】
本発明の建築物の建築方法では、木造工程において天井又は床の一部に水平面形成用の木板を貼らずに空白部を設け、該空白部の下側の部分を下側コンクリート梁形成用の型枠で覆い、コンクリート注入工程において下側コンクリート梁形成用の型枠で覆われた部分にもコンクリートを流し込むことにより、天井スラブ又は床スラブから下側に突出する鉄筋コンクリート製の下側コンクリート梁が形成することも好ましい。また、コンクリート注入工程において水平面形成用の木板の上部空間にコンクリートを注入する際に、後に天井スラブ又は床スラブとなる部分の上側を局所的に上側コンクリート梁形成用の型枠で囲み、コンクリート注入工程において上側コンクリート梁形成用の型枠で囲まれた部分にもコンクリートを流し込むことにより、天井スラブ又は床スラブから上側に突出する鉄筋コンクリート製の上側コンクリート梁が形成することも好ましい。これらの構成を採用することにより、天井スラブや床スラブの強度をさらに高めることが可能になる。また、耐力壁や柱の本数を削減しても建築物が十分な強度を発揮できるようになるので、部屋を広く確保できるだけでなく、そのレイアウトの自由度も高くなる。
【0011】
また、本発明の建築物の建築方法では、木造工程において鉛直面形成用の木板から外方に金具を外方に突き出させ、配筋工程において前記金具と前記外壁形成用の鉄筋とを連結することも好ましい。金具と外壁形成用の鉄筋との連結は、鉛直面形成用の木板から外方に突出するU字ボルト(金具)の内側に鉄筋を通すなど、金具に鉄筋を直接的に連結する場合だけでなく、前記U字ボルト(金具)と鉄筋とを別の金具や針金などで結束するなど、金具に鉄筋を間接的に連結する場合も含む。これにより、鉄筋コンクリート製の外壁と木造建築物の外面(鉛直面形成用の木板)との一体性を高めることが可能になり、建築物の強度をさらに高めることができる。
【0012】
さらに、本発明の建築物の建築方法では、木造工程において、木造建築物の上面に屋根を施工すると好ましい。従来の建築方法によりコンクリート造建築物を建築する際には、雨が降った日は、作業ができないため仕事を中止するしかなかった。このため、工期が延びることを避けられなかった。しかし、木造工程において屋根を施工することにより、それ以降の工程(内装工程など、木造建築物の内部で行う工程のほか、配筋工程、型枠設置工程、コンクリート注入工程又はコンクリート養生工程なども含む。)を天候に左右されることなく行うことが可能になり、工期を短くすることができる。配筋工程以降の工程に移行する際には、屋根は、少なくともその屋根下地が施工されていればよいが、屋根の上葺き材まで施工してもよい。このとき、屋根の上面に太陽光発電モジュールを設置することも好ましい。太陽光発電モジュールは、本発明の建築方法により施工される建築物の完成直前に設置してもよいが、木造建築物に屋根を施工した直後に設置することもできる。後者の場合には、太陽光発電モジュールで発電された電力を以降の工程で使用する工具を駆動するための電力や照明の電力などとして利用することが可能であり、省エネルギー化を図ることもできる。木造工程の上棟日のうちに屋根を施工して、太陽光発電モジュールを設置することも可能である。
【0013】
ところで、上記課題は、[1]基礎を構築する基礎構築工程と、[2]基礎における周縁部を残した内側部分の上側に、その外面に鉛直面形成用の木板が貼られて、その天井又は床に水平面形成用の木板が貼られた構造の木造建築物を建築する木造工程と、[3]基礎における周縁部の上側に外壁形成用の鉄筋を鉛直面形成用の木板に沿って配置するとともに、木造建築物の天井裏又は床下となる空間に天井スラブ形成用又は床スラブ形成用の鉄筋を水平面形成用の木板に沿って配置し、木造建築物の外面に設けられた連結口から天井スラブ形成用又は床スラブ形成用の鉄筋を外側に出して外壁形成用の鉄筋に連結する配筋工程と、[4]基礎における周縁部の上側に外壁形成用の型枠を立てて、該型枠で木造建築物の外面を外壁形成用の鉄筋とともに囲う型枠設置工程と、[5]外壁形成用の型枠と鉛直面形成用の木板との隙間、及び水平面形成用の木板の上部空間にコンクリートを流し込むコンクリート注入工程と、[6]前記コンクリートを養生させるコンクリート養生工程と、を経て、木造建築物の外面に鉄筋コンクリート製の外壁を該外面に一体化した状態で形成するとともに、木造建築物の天井又は床に貼られた水平面形成用の木板の上部空間に鉄筋コンクリート製の天井スラブ又は床スラブを水平面形成用の木板及び前記鉄筋コンクリート製の外壁と一体化した状態で形成することを特徴とする建築物の建築方法を提供することによっても解決される。以下においては、この建築方法を「第二実施態様の建築方法」と呼ぶことがある。第一実施態様の建築方法では、基礎構築工程において、木造建築物のために基礎に立ち上がり部を形成したが、第二実施態様の建築方法では、基礎構築工程に置いて、基礎に立ち上がり部を形成せず、木造工程において、基礎の底版部に直接木造建築物を建築する。本発明の建築方法によれば、鉄筋コンクリート製の外壁で木造建築物が囲われた状態となるために、必ずしも、木造建築物の基礎となる部分に立ち上がり部を形成する必要がない。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によって、木造建築物並みの工期の短さ、建築コストの安さ、改築容易性及び快適性を有し、鉄筋コンクリート造建築物並みの強度や耐震性や耐火性や耐津波性を発揮できる建築物を提供することが可能になる。特に、木造建築物がそのまま内側の型枠になるので、支保工などを用いることなく、垂直方向や水平方向のレベル出しが容易に行える。また、この建築物を好適に建築できる建築物の建築方法を提供することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第一実施態様の建築物の建築方法において、基礎構築工程を終えた直後の建築物の鉛直断面を示した断面図である。
【図2】本発明の建築物の建築方法において、木造工程を終えた直後の建築物の鉛直断面を示した断面図である。
【図3】本発明の第一実施態様の建築物の建築方法において、配筋工程を終えた直後の建築物の鉛直断面を示した断面図である。
【図4】本発明の第一実施態様の建築物の建築方法において、木造工程で鉛直面形成用の木板から突出して設けた金具に対して配筋工程で外壁形成用の鉄筋を連結した状態における前記金具周辺の水平断面を示した断面図である。
【図5】本発明の第一実施態様の建築物の建築方法において、型枠設置工程を終えた直後の建築物の鉛直断面を示した断面図である。
【図6】本発明の第一実施態様の建築物の建築方法において、コンクリート注入工程を終えた直後の建築物の鉛直断面を示した断面図である。
【図7】本発明の第一実施態様の建築物の建築方法において、天井スラブ又は床スラブに下側コンクリート梁及び上側コンクリート梁を形成した状態を、図6におけるA部に相当する部分を拡大して示した断面図である。
【図8】本発明の第一実施態様の建築物の建築方法において、型枠撤去工程を終えた直後の建築物の鉛直断面を示した断面図である。
【図9】本発明の第一実施態様の建築物の建築方法において、鉄筋コンクリート製の外壁に鉄筋コンクリート製の柱を形成した状態を、図6における水平断面で切断した断面図である。
【図10】本発明の第二実施態様の建築物の建築方法において、コンクリート注入工程を終えた直後の建築物の鉛直断面を示した断面図である。
【図11】本発明の第三実施態様の建築物の建築方法において、木造工程を終えた状態の建築物の鉛直断面を示した断面図である。
【図12】本発明の第三実施態様の建築物の建築方法において、コンクリート注入工程を行っている途中(1階部分のコンクリート注入工程を終えた直後)の建築物の鉛直断面を示した断面図である。
【図13】本発明の第三実施態様の建築物の建築方法において、コンクリート注入工程を行っている途中(2階部分のコンクリート注入工程を終えた直後)の建築物の鉛直断面を示した断面図である。
【図14】本発明の第三実施態様の建築物の建築方法において、コンクリート注入工程を終えた直後(3階部分のコンクリート注入工程を終えた直後)の建築物の鉛直断面を示した断面図である。
【図15】本発明の第三実施態様の建築物の建築方法において、型枠撤去工程を終えた直後の建築物の鉛直断面を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の建築物及びその建築方法の好適な実施態様について、図面を用いてより具体的に説明する。本発明の建築物の建築方法は、上述したように各種の建築物を建築する際に使用することができるし、その階数も特に限定されないが、以下においては、二階建ての一般家屋を建築する場合を例に挙げて説明する。本実施態様の建築方法では、基礎構築工程と、木造工程と、配筋工程と、型枠設置工程と、コンクリート注入工程と、コンクリート養生工程と、型枠撤去工程と、仕上工程とを経て、家屋を建築する。以下、これらの工程について順番に説明する。
【0017】
[基礎構築工程]
図1は、第一実施態様の建築方法において、基礎構築工程を終えた直後の建築物の鉛直断面を示した断面図である。基礎構築工程では、図1に示すように、立ち上がり部11aの外周に沿って底版部11b1が形成された基礎11を構築する。基礎11は、基礎構築用の型枠内に鉄筋を配置してコンクリートを流し込み、該コンクリートを養生させた後、型枠を撤去することにより構築される。基礎11は、立ち上がり部11aの内側の区画に底版部11b2が設けられていない「布基礎」であってもよいが、本実施態様では、立ち上がり部11aの内側の区画に底版部11b2が設けられた「べた基礎」を採用している。これにより、家屋10の耐震性や耐津波性をさらに向上することができる。
【0018】
基礎11の下側には図示省略の基礎杭を埋設し、該基礎杭を基礎11と一体化させておくことも好ましい。基礎11には、通常、図示省略の通気用開口部や、各種配管を通すための配管用開口部が設けられる。一階床下や建築物外部に図示省略の送風機を設置して、前記配管用開口部に通した配管を通じて外気が一階床下に導入されるようにすることも好ましい。これにより、完成後の建築物に湿気がさらにこもりにくくすることが可能になる。基礎構築工程を終えると、木造工程を開始する。立ち上がり部11aよりも外側の底版部11b1には、後述する配筋工程で鉄筋13を建てるための複数の穴11cを所定間隔で設けている。ここでは、地上のみに建築物を建築する場合について説明したが、地下を有する建築物を建築する際には、該当部分を地下に掘り下げ、その部分に基礎11に相当する部分を形成するとよい。
【0019】
[木造工程]
基礎構築工程が完了すると、木造工程を開始する。図2は、第一実施態様の建築方法において、木造工程を終えた直後の建築物の鉛直断面を示した断面図である。木造工程では、図2に示すように、基礎11における立ち上がり部11aで囲まれた部分の上側に、その外面に鉛直面形成用の木板12aが貼られて、その天井又は床に水平面形成用の木板12c(本実施態様の建築方法においては天井板)が貼られた構造の木造建築物12を建築する。木造工程は、プレカットされた木材を使用すると工期を短縮できるし、建築コストを安く抑えることもできる。ところで、図2などには、建築物の屋根を描いていないが、木造建築物12、あるいは完成後の建築物には、必要に応じて屋根を設けてもよい。屋根は、片流れ屋根や切り妻屋根や寄棟屋根などを採用することができ、ガルバニウム鋼板や瓦やスレートなど各種の屋根材をしようすることができる。屋根を平らな陸屋根とする場合には、最上階における天井部分の天井スラブを形成する際に、それが陸屋根の形状となるように、後述する型枠20を配置するとよい。
【0020】
木造建築物12の外面には、後述する配筋工程において鉄筋13bを通すための、あるいは後述するコンクリート注入工程においてコンクリートを流し込んで、鉄筋コンクリート製の外壁と、天井スラブ又は床スラブと一体化させるための連結口12dを設けておく。連結口12dは、通常、各階の境界部分(本実施態様の建築方法においては、木造建築物の一階部分と二階部分の間)に設けられる。連結口12dは、木板12aに穴を開けることなどによって形成してもよいが、一階部分に貼られる木板12aと、二階部分に貼られる木板12aとの間に隙間を設けることにより形成すると好ましい。これにより、後述する天井スラブや床スラブをその略全周部(柱や筋交いや配管が存在しない略全ての部分)で鉄筋コンクリート製の外壁と一体化させることが可能になり、得られる建築物の強度などをさらに高めることが可能になる。また、コンクリート注入工程において、型枠20と鉛直面形成用の木板12aとの間に流し込んだコンクリートが連結口12dから水平面形成用の木板12cの上部空間に流れ込みやすくすることも可能になる。連結口12dの高さ(縦の長さ)は、木造建築物12の寸法などによっても異なり、特に限定されないが、通常、10〜100cm、好ましくは20〜80cm程度である。
【0021】
木板12a,12cの種類も特に限定されない。本実施態様の建築方法においては、木板12a,12cとしてプレカットされた合板を採用している。木造建築物12における木板12aは、後述するコンクリート注入工程でコンクリート30を注入する際に内枠として機能する。通常、コンクリート成形用の内枠は、その垂直出しが困難であるが、本実施態様の建築方法では、予め垂直出しされた柱に対して貼った木板12aを内枠として使用するので、内枠の垂直出しにかかる手間を軽減することができる。また、木造建築物12における木板12cは、コンクリート注入工程でコンクリート30を注入する際に下枠として機能する。通常、コンクリート成形用の下枠は、その水平出しに支保工などを要し手間がかかるが、本実施態様の建築方法では、予め水平出しされた天井に張った木板12cを下枠として使用するので、下枠の水平出しにかかる手間を軽減することができる。
【0022】
木造建築物12は、木造工程の段階では、外壁の仕上げを行わず、木板12aが外面に剥き出したままにしておく。木造建築物12は、外面が合板12aにより形成されるのであれば、その具体的な工法は限定されない。ツーバイフォーパネル工法などのパネル工法のほか、軸組工法(在来工法)において外面を合板貼りとする工法などが例示される。電線用の配線や配管、上下水道用の配管などは、従来の木造住宅と同様、壁の中や天井裏や床下に設置することができ、鉄筋コンクリート造建築物と比較して自由度が高い。木造工程においては、窓12eやドアなどの開口部を設けてサッシや扉を取り付けるほか、床板12bなども施工する。窓12eやドアなどの取付は、後述する鉄筋コンクリート製の外壁に対してではなく、木造建築物12に対して行うので、容易に行える。ところで、後述する配筋工程以降の各工程は、上述した木造工程が完了していなくても、少なくとも木造建築物12の外面に合板12aが貼られた状態であれば開始することができる。このように、配筋工程以降の各工程と木造工程とを並行して行うことで、工期を短縮することができる。
【0023】
ところで、木造建築物12の断熱は、内断熱と外断熱のいずれであってもよい。内断熱は、通常、木造建築物12の外面を形成する木板12aの内側(柱と柱の間における壁の内側となる部分。この部分には、各種配線や各種配管が配置されることもある。)にグラスウールなどの断熱材を充填することにより行う。外断熱は、通常、木板12aの外面にポリスチレンフォームやウレタンフォームからなる断熱パネルを貼り付けることにより行う。
【0024】
[配筋工程]
図3は、第一実施態様の建築方法において、配筋工程を終えた直後の建築物の鉛直断面を示した断面図である。配筋工程では、図3に示すように、基礎11における立ち上がり部11aよりも外側の底版部11b1の上側に外壁形成用の鉄筋13aを鉛直面形成用の木板12aに沿って配置する。また、木造建築物12の天井裏又は床下となる空間に天井スラブ形成用又は床スラブ形成用の鉄筋を水平面形成用の木板12cに沿って配置し、木造建築物12の外面に設けられた連結口12dから天井スラブ形成用又は床スラブ形成用の鉄筋13bを外側に出して外壁形成用の鉄筋13aに連結する。外壁形成用の鉄筋13aは、基礎11における立ち上がり部11aよりも外側の底版部11b1の上面に設けられた穴11cに、鉄筋13を合板12aに対して平行となるように立てていき、これらの鉄筋を他の鉄筋やワイヤーなどで横方向に連結することに設置する。使用する鉄筋13の太さは、特に限定されないが、通常、直径が13〜16mm程度のものが使用される。
【0025】
また、配筋工程においては、図4に示すように、木板12aから外方に突き出た金具12fと鉄筋13とを連結することも好ましい。図4は、第一実施態様の建築方法において、木造工程で鉛直面形成用の木板12aから突出して設けた金具12fに対して配筋工程で外壁形成用の鉄筋13を連結した状態における金具12f周辺の水平断面を示した断面図である。図4の例では、木造建築物12における梁と柱などを接続するためのU字ボルト12f(金具)の内部に鉄筋13を通すことにより、金具12fと鉄筋13を連結している。これにより、後述する鉄筋コンクリート製の外壁と木造家屋12との一体性を高めることができる。
【0026】
配筋工程においては、所定箇所に、梁型(鉄筋梁)や柱型(鉄筋柱)を設けることも好ましい。これにより、得られる建築物の強度をさらに高めることができる。本実施態様の建築方法においては、図3に示すように、1階部分と2階部分との境界における外壁を形成する部分に梁型13dを設けるとともに、図7に示すように、天井スラブ又は床スラブにおける下側コンクリート梁又は上側コンクリート梁を形成する部分に梁型13dを設けている。また、図9に示すように、外壁を形成する部分に、柱型13eを設けている。梁型13dや柱型13eは、建築物の構造などに応じて適宜配置することができる。
【0027】
[型枠設置工程]
配筋工程が完了すると型枠設置工程を開始する。図5は、第一実施態様の建築方法において、型枠設置工程を終えた直後の建築物の鉛直断面を示した断面図である。型枠設置工程では、図5に示すように、基礎11における立ち上がり部11aよりも外側の底版部11b1の上側に外壁形成用の型枠20を立てて、型枠20で木造建築物12の外面を外壁形成用の鉄筋13aとともに囲う。本実施態様の建築方法において、型枠20は、複数枚の合板(コンパネ)により構築しているが、サイディングボードなど、外面に意匠が施された板を使用してもよい。また、型枠20として、枠内にメッシュが貼られたメッシュ型枠を使用することも好ましい。これにより、施工性をさらに向上させることが可能になる。メッシュ型枠は、コンクリートの打設状況が外から目視できる、複雑な形状にも対応できる、厚みが薄いためにぎりぎりまで建築物を建築することができる、などの特徴を有している。型枠20の垂直出し(鉛直出し)は、既に垂直出しが行われている木造建築物12の外面(木板12a)を基準に行えばよいので容易である。型枠20の内面と木造建築物12の外面(合板12aの外面)との間隔は、特に限定されない。しかし、この間隔が狭すぎると、得られる建築物の外壁の強度が低下するおそれがあるし、この間隔が広すぎると、使用するコンクリートの量が膨大になり、建築コストが高くなるおそれがある。このため、型枠20の内面と木造建築物12の外面との間隔は、通常、5〜50cm程度とされ、好ましくは、10〜20cm程度とされる。本実施態様の建築方法において、前記間隔は15cmとしている。木造建築物12に窓12aやドアなどの開口部が設けられている場合には、後述するコンクリート注入工程において、当該開口部の外側にコンクリート14が流れ込まないように型枠20を配置する。
【0028】
[コンクリート注入工程及びコンクリート養生工程]
型枠設置工程が完了すると、コンクリート注入工程を開始する。図6は、第一実施態様の建築方法において、コンクリート注入工程を終えた直後の建築物の鉛直断面を示した断面図である。コンクリート注入工程では、図6に示すように、外壁形成用の型枠20と鉛直面形成用の木板12aとの隙間、及び水平面形成用の木板12cの上部空間にコンクリート30を流し込む。コンクリート注入工程は、一気に行ってもよいが、所望の箇所全体にコンクリート30が流れ込むように、通常、所定高さ毎に又は所定区画毎に段階的にコンクリート30を注入していく。本実施態様の建築方法においては、まず、一階部分の天井スラブ(二階部分の床スラブ)が形成される高さまでコンクリート30を流し込み、その後、二階部分の天井スラブが形成される高さまでコンクリート30を流し込むようにしている。コンクリート30は、通常、型枠20と木板12aとの隙間から注入するが、天井スラブを形成するコンクリート30は、二階部分の室内から床板12bを外して行ってもよい。注入するコンクリート30としては、軽量コンクリートや普通コンクリートや重量コンクリートなど、各種のものを使用することができる。コンクリート注入工程が完了すると、コンクリート養生工程を開始し、コンクリート30を養生させる。
【0029】
図7は、第一実施態様の建築方法において、天井スラブ又は床スラブに下側コンクリート梁及び上側コンクリート梁を形成した状態を、図6におけるA部に相当する部分を拡大して示した断面図である。下側コンクリート梁は、図7に示すように、天井又は床の一部(隣り合う一対の梁12gの隙間)に水平面形成用の木板12cを貼らずに空白部を設け、該空白部の下側の部分(前記一対の梁12gの下面)を下側コンクリート梁形成用の型枠21で覆っておき、コンクリート注入工程において型枠21で覆われた部分の上側にもコンクリート30が流れ込むようにすることにより形成される。これにより、前記一対の梁12gの対向面を下側コンクリート梁形成用の型枠21として機能させることが可能になり、使用する部材の数を減らすことができる。
【0030】
また、上側コンクリート梁は、図7に示すように、水平面形成用の木板12cの上部空間にコンクリート30を注入する際に、後に天井スラブ又は床スラブとなる部分の上側を局所的に上側コンクリート梁形成用の型枠22で囲んでおき、コンクリート注入工程において型枠22で囲まれた部分にもコンクリート30が流れ込むようにすることにより形成される。上側コンクリート梁を形成する際には、型枠22の上方からコンクリート30を注入するとよい。下側コンクリート梁や上側コンクリート梁は、天井スラブや床スラブに梁状に設けられ、得られる建築物の強度などを高める。本実施態様の建築方法では、下側コンクリート梁及び上側コンクリート梁が形成される部分に梁型12cを埋め込んでいる。これにより、得られる下側コンクリート梁及び上側コンクリート梁の強度をさらに高めることができる。
【0031】
ところで、本実施態様の建築方法では、下側コンクリート梁と上側コンクリート梁とを同じ場所に設けたが、この態様に限定されない。すなわち、下側コンクリート梁のみを所定箇所に設けてもよいし、上側コンクリート梁のみを所定箇所に設けてもよいし、下側コンクリート梁と上側コンクリート梁とを異なる箇所に設けてもよい。下側コンクリート梁や上側コンクリート梁を施工するか否か、あるいはそれらを設ける場所は、建築物の構造などに応じて適宜決定する。
【0032】
図9は、本発明の第一実施態様の建築物の建築方法において、鉄筋コンクリート製の外壁に鉄筋コンクリート製の柱を形成した状態を、図6における水平断面で切断した断面図である。図9のB部(木造建築物12の外壁を構成する隣り合う一対の柱12hの間の部分)では、木造建築物12の外面を形成する鉛直面形成用の木板12aを貼らずに、木造建築物12の外側からその内装の下地材12fが覗くようにしている。このような状況でコンクリート30を流し込むと、前記一対の柱12hの対向面と下地材12fの外面が内枠として機能して、B部に鉄筋コンクリート製の柱を形成することができる。これにより、得られる建築物の強度をさらに高めることが可能になり、スパンを広く確保することも可能になる。本実施態様の建築方法では、B部に柱型13e(鉄筋柱)を立てており、B部に形成される鉄筋コンクリート製の柱の強度をさらに高めている。
【0033】
[型枠撤去工程]
コンクリート養生工程が完了すると型枠撤去工程を開始する。図8は、第一実施態様の建築方法において、型枠撤去工程を終えた直後の建築物の鉛直断面を示した断面図である。型枠撤去工程では、型枠20を取り外して、図8に示すように、外壁を形成するコンクリート30の外面が剥き出しの状態とする。ただし、型枠20として、サイディングボードなど、外面に意匠が施された板を使用した場合や、メッシュ型枠を使用した場合などには、型枠20そそのまま残してもよい。また、内枠として使用された木造建築物12の木板12aなどは、そのまま残した状態とする。これにより、建築物の吸湿性や木の質感を維持することができる。また、通常の鉄筋コンクリート造建築物を建築する際には廃棄されている内枠に相当する部分をそのまま材料として用いることができるので、廃材を削減することもできる。コンクリート30は、木造建築物12の外面を形成する木板12aと一体化された状態となっており、鉄筋コンクリート製の外壁として、得られた建築物の強度や耐震性や耐火性や耐津波性や断熱性などを大幅に向上させる。
【0034】
[仕上工程]
型枠撤去工程が完了すると必要に応じて仕上工程を開始する。建築物の外壁は、コンクリートの打ちっぱなしであってもよいが、必要に応じて、塗装処理などの各種処理を施すこともできる。具体的には、モルタル仕上げや、タイル貼り仕上などが例示される。また、バルコニーやウッドデッキ、あるいは屋上の手摺りや外階段などのアクセサリーを取り付けることもできる。これらの施工は、この仕上工程において行う。また、仕上工程では、鉄筋コンクリート製の外壁における窓12eなどの開口部に重なる部分に、図示省略の鋼製扉を取り付けてもよい。これにより、建築物を台風や津波などの災害に対してより強いものとすることができる。窓12eなどの開口部付近における鉄筋コンクリート製の外壁と木造建築物12の木板12aとの境界部分や、前記鋼製扉と鉄筋コンクリート製の外壁との接触部分には、シリコーンゴムやゴムパッキンなどを施して水密性を高めておくと好ましい。
【0035】
[その他]
ここまでは、木造建築物12の四方全ての外面を鉄筋コンクリート製の外壁で囲った例について説明したが、本発明の技術的範囲はこれに限定されない。すなわち、木造建築物12の外面における一部のみを鉄筋コンクリート製の外壁で覆うようにしてもよい。この構成は、津波の被害が予想される地域などにおいて、できるだけ低コストで耐津波建築物を建築したい場合などに採用できる。具体的には、津波が襲来してくる方向(通常、海側)の外面のみを鉄筋コンクリート製の外壁で囲うようにするとよい。
【0036】
[第二実施態様の建築物の建築方法]
続いて、本発明の建築物の建築方法の他の実施態様について説明する。図10は、本発明の第二実施態様の建築物の建築方法において、コンクリート注入工程を終えた直後の建築物の鉛直断面を示した断面図である。図1〜9で示した第一実施態様の建築方法では、基礎構築工程において、木造建築物12のために基礎11に立ち上がり部11aを形成したが、第二実施態様の建築方法では、基礎構築工程に置いて、基礎11に立ち上がり部を形成せず、木造工程において、基礎の底版部11bに直接木造建築物12を建築している。これにより、立ち上がり部の構築に必要なコストを削減して、さらに低コストで建築物を建築することが可能になる。第一実施態様の建築方法で説明した各種構成(下側コンクリート梁、上側コンクリート梁、鉄筋コンクリート製の柱など)は、第二実施態様の建築方法でも好適に採用することができる。
【0037】
[第三実施態様の建築物の建築方法]
図11は、本発明の第三実施態様の建築物の建築方法において、木造工程を終えた状態の建築物の鉛直断面を示した断面図である。図12は、本発明の第三実施態様の建築物の建築方法において、コンクリート注入工程を行っている途中(1階部分のコンクリート注入工程を終えた直後)の建築物の鉛直断面を示した断面図である。図13は、本発明の第三実施態様の建築物の建築方法において、コンクリート注入工程を行っている途中(2階部分のコンクリート注入工程を終えた直後)の建築物の鉛直断面を示した断面図である。図14は、本発明の第三実施態様の建築物の建築方法において、コンクリート注入工程を終えた直後(3階部分のコンクリート注入工程を終えた直後)の建築物の鉛直断面を示した断面図である。図15は、本発明の第三実施態様の建築物の建築方法において、型枠撤去工程を終えた直後の建築物の鉛直断面を示した断面図である。
【0038】
第三実施態様の建築物の建築方法では、図11に示すように、木造工程において、木造建築物12の上面に屋根12iを施工している。このため、以降の工程を天候に影響されることなく行うことが可能になり、工期を短縮することができる。図11に示すように、木造建築物12が3階建て程度である場合には、上棟日のうちに屋根12iまで施工することができる。図11の状態において、屋根12iは、必ずしも屋根材(上葺き材)まで施工しなくても、少なくとも屋根下地までを施工していれば、木造建築物12の内部に雨が落ちるのを防ぐことができる。この場合には、屋根下地の上面を樹脂シートで覆うことなどにより、屋根下地を保護するとともに、雨漏りしないようにすると好ましい。この他、本発明者が別に開発した技術を採用すれば、上棟日のうちに屋根12iの上に太陽光発電モジュール12jを設置することも可能である。これにより、以降の工程で必要な電力の一部又は全部を太陽光発電モジュール12jで発電された電力で賄うことも可能になる。
【0039】
屋根12iの形態は、特に限定されず、片流れ屋根、切り妻屋根、寄棟屋根、陸屋根など、各種のものを採用することができるが、太陽光発電モジュール12jを設置する場合に発電面積を広く確保できる、小屋裏を広く確保できる、施工が容易である、屋根12iの勾配を大きくしてより雨漏りしにくい構造とすることができる、などの理由から、片流れ屋根が好ましい。第三実施態様の建築物の建築方法においても、図11に示すように、片流れ屋根を採用している。
【0040】
第三実施態様の建築物の建築方法において、屋根12iを施工した以降の工程は、既に説明した第一実施態様や第二実施態様の建築方法と同様の構成を採用することができる。ただし、第三実施態様の建築物の建築方法では、図12〜14に示すように、型枠設置工程とコンクリート注入工程とコンクリート養生工程を各階ごとに行っている。これにより、コンクリート注入工程を容易かつ確実に行うことができる。またこの際、木造建築物12の内装工程なども並行して行うことができる。最後に、型枠撤去工程を終えると、図15に示すように、建築物が完成する。
【符号の説明】
【0041】
10 建築物
11 基礎
11a 立ち上がり部
11b 底版部
11b1 底版部
11b2 底版部
11c 穴
12 木造建築物
12a 鉛直面形成用の木板
12b 床板
12c 天井板(水平面形成用の木板)
12d 連結口
12e 窓(開口部)
12f 下地板
12g 梁
12h 柱
12i 屋根
12j 太陽光発電モジュール
13 鉄筋
13a 外壁形成用の鉄筋
13b 天井スラブ形成用又は床スラブ形成用の鉄筋
13c コンクリート梁形成用の鉄筋
13d 梁型(鉄筋梁)
13e 柱型(鉄筋柱)
20 外壁形成用の型枠
21 下側コンクリート梁形成用の型枠
22 上側コンクリート梁形成用の型枠
30 コンクリート
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造建築物と鉄筋コンクリート造建築物との利点を兼ね備えた建築物と、その建築方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
木造建築物は、建築コストが安い、工期が短い、改築が容易である、木のぬくもりや調湿作用により快適である、といった利点を有している反面、強度や耐震性や耐津波性や断熱性や耐火性については、鉄筋コンクリート造建築物と比較して劣っていた。一方、鉄筋コンクリート造建築物は、強度や耐震性や断熱性や耐火性には優れているものの、建築コストが高い、工期が長い、改築が困難である、無機質である、湿気がこもりやすい、などの欠点を有していた。このような実状に鑑みてか、これまでには、木造建築物に鉄筋コンクリート造建築物の要素を取り入れた建築物の建築方法も提案されるようになっている。
【0003】
例えば、特許文献1には、木造建築物の屋外側に、ケイ酸カルシウム板などの不燃材料製パネルからなる層を設け、さらにその屋外側に、軽量気泡コンクリートパネルからなる層を設けた建築物が記載されている。これにより、従来の木造建築物よりも耐火性を向上することができる旨が記載されている。しかし、特許文献1の建築物は、天井や床は、従来の木造建築物と同様であり、必ずしも鉄筋コンクリート造建築物と同等の強度を有しているとは言い難かった。加えて、複数枚の軽量気泡コンクリートパネルを継ぎ合わせた構造であるため、鉄筋コンクリート造建築物並みの耐津波性を発揮することもできない。
【0004】
また、特許文献2には、建築物の木造部分にプレキャスト型のコンクリートフレームを組み込んで補強した建築物が記載されている。コンクリートフレームの形態は門型となっており、建築物の木造部分における外壁に沿った箇所と、屋根下の部分(最上階の屋根裏)とを補強する。しかし、特許文献2の建築物は、木造建築物の形態に対応するプレキャスト型のコンクリートフレームを予め用意しなければならず、その施工や運搬が大変であった。このため、特許文献2の建築物は、建築コストが高くなるおそれがあった。また、木造部分における殆どの部分が露出するため、断熱性や耐火性については、従来の木造建築物と比較して大差はなかった。
【0005】
木造建築物並みの工期の短さ、建築コストの安さ、改築容易性及び快適性を有し、鉄筋コンクリート造建築物並みの強度や耐震性や耐火性や耐津波性を発揮できる建築物があればよいのであるが、そのような建築物は、これまでに存在しなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−299194号公報
【特許文献2】特開2009−108666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、木造建築物並みの工期の短さ、建築コストの安さ、改築容易性及び快適性を有し、鉄筋コンクリート造建築物並みの強度や耐震性や耐火性や耐津波性を発揮できる建築物を提供するものである。また、この建築物を好適に建築できる建築物の建築方法を提供することも本発明の目的である。
秘密意匠で合格していた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、[1]立ち上がり部の外周に沿って底版部が形成された基礎を構築する基礎構築工程と、[2]基礎における立ち上がり部で囲まれた部分の上側に、その外面に鉛直面形成用の木板が貼られて、その天井又は床に水平面形成用の木板が貼られた構造の木造建築物を建築する木造工程と、[3]基礎における立ち上がり部よりも外側の底版部の上側に外壁形成用の鉄筋を鉛直面形成用の木板に沿って配置するとともに、木造建築物の天井裏又は床下となる空間に天井スラブ形成用又は床スラブ形成用の鉄筋を水平面形成用の木板に沿って配置し、木造建築物の外面に設けられた開口部から天井スラブ形成用又は床スラブ形成用の鉄筋を外側に出して外壁形成用の鉄筋に連結する配筋工程と、[4]基礎における立ち上がり部よりも外側の底版部の上側に外壁形成用の型枠を立てて、該型枠で木造建築物の外面を外壁形成用の鉄筋とともに囲う型枠設置工程と、[5]外壁形成用の型枠と鉛直面形成用の木板との隙間、及び水平面形成用の木板の上部空間にコンクリートを流し込むコンクリート注入工程と、[6]前記コンクリートを養生させるコンクリート養生工程と、を経て、木造建築物の外面に鉄筋コンクリート製の外壁を該外面に一体化した状態で形成するとともに、木造建築物の天井又は床に貼られた水平面形成用の木板の上部空間に鉄筋コンクリート製の天井スラブ又は床スラブを水平面形成用の木板及び前記鉄筋コンクリート製の外壁と一体化した状態で形成することを特徴とする建築物の建築方法を提供することによって解決される。以下においては、この建築方法を「第一実施態様の建築方法」と呼ぶことがある。
【0009】
本発明の建築方法で建築された建築物は、木造建築物における外面と天井面(又は床面)に鉄筋コンクリート製の外壁と天井スラブ(又は床スラブ)が一体化された構造となっているため、非常に強度や耐火性に優れたものとなっており、地震や津波、火事といった災害に強いものとなっている。また、断熱性に優れ、省エネルギー化も容易なものとなっている。さらに、本発明の建築方法では、木造建築物の外面に貼られた鉛直面形成用の木板や、天井や床に貼られた水平面形成用の木板をコンクリート用の型枠として利用することができることや、鉄筋コンクリート造の外壁を構築している間に、内側の木造建築物部分の内装などの工事を並行して進めることができるので、従来の鉄筋コンクリート製の建築物と比較して、工期を大幅に短縮して製造コストを大幅に削減することも可能となっている。さらにまた、本発明の建築方法で建築された建築物は、その内側は、通常の木造建築物であるので、木のぬくもり感じられる快適な空間となっているだけでなく、改築なども容易に行えるものとなっている。特に、鉄筋コンクリート製の外壁を構築した後は、建築物の強度は、前記外壁でも維持することができるので、従来の木造建築物を改築する場合よりも、柱や内壁を取り外す際の自由度が高く、自由なレイアウトで改築を行うことができる。そして、木の調湿作用により、その外壁は鉄筋コンクリートであるにもかかわらず、湿気がこもらず、快適な居住空間をつくりだすことが可能なものとなっている。本発明の建築方法により得られた建築物は、一般家屋としてだけでなく、アパートやマンション、あるいは事業所用の建築物など、各種建築物として好適である。本発明の建築方法で建築される建築物の回数も特に限定されないが、通常、一階建てから五階建て程度である。また、本発明の建築方法は、地下を有する建築物を建築する場合にも好適に採用できる。
【0010】
本発明の建築物の建築方法では、木造工程において天井又は床の一部に水平面形成用の木板を貼らずに空白部を設け、該空白部の下側の部分を下側コンクリート梁形成用の型枠で覆い、コンクリート注入工程において下側コンクリート梁形成用の型枠で覆われた部分にもコンクリートを流し込むことにより、天井スラブ又は床スラブから下側に突出する鉄筋コンクリート製の下側コンクリート梁が形成することも好ましい。また、コンクリート注入工程において水平面形成用の木板の上部空間にコンクリートを注入する際に、後に天井スラブ又は床スラブとなる部分の上側を局所的に上側コンクリート梁形成用の型枠で囲み、コンクリート注入工程において上側コンクリート梁形成用の型枠で囲まれた部分にもコンクリートを流し込むことにより、天井スラブ又は床スラブから上側に突出する鉄筋コンクリート製の上側コンクリート梁が形成することも好ましい。これらの構成を採用することにより、天井スラブや床スラブの強度をさらに高めることが可能になる。また、耐力壁や柱の本数を削減しても建築物が十分な強度を発揮できるようになるので、部屋を広く確保できるだけでなく、そのレイアウトの自由度も高くなる。
【0011】
また、本発明の建築物の建築方法では、木造工程において鉛直面形成用の木板から外方に金具を外方に突き出させ、配筋工程において前記金具と前記外壁形成用の鉄筋とを連結することも好ましい。金具と外壁形成用の鉄筋との連結は、鉛直面形成用の木板から外方に突出するU字ボルト(金具)の内側に鉄筋を通すなど、金具に鉄筋を直接的に連結する場合だけでなく、前記U字ボルト(金具)と鉄筋とを別の金具や針金などで結束するなど、金具に鉄筋を間接的に連結する場合も含む。これにより、鉄筋コンクリート製の外壁と木造建築物の外面(鉛直面形成用の木板)との一体性を高めることが可能になり、建築物の強度をさらに高めることができる。
【0012】
さらに、本発明の建築物の建築方法では、木造工程において、木造建築物の上面に屋根を施工すると好ましい。従来の建築方法によりコンクリート造建築物を建築する際には、雨が降った日は、作業ができないため仕事を中止するしかなかった。このため、工期が延びることを避けられなかった。しかし、木造工程において屋根を施工することにより、それ以降の工程(内装工程など、木造建築物の内部で行う工程のほか、配筋工程、型枠設置工程、コンクリート注入工程又はコンクリート養生工程なども含む。)を天候に左右されることなく行うことが可能になり、工期を短くすることができる。配筋工程以降の工程に移行する際には、屋根は、少なくともその屋根下地が施工されていればよいが、屋根の上葺き材まで施工してもよい。このとき、屋根の上面に太陽光発電モジュールを設置することも好ましい。太陽光発電モジュールは、本発明の建築方法により施工される建築物の完成直前に設置してもよいが、木造建築物に屋根を施工した直後に設置することもできる。後者の場合には、太陽光発電モジュールで発電された電力を以降の工程で使用する工具を駆動するための電力や照明の電力などとして利用することが可能であり、省エネルギー化を図ることもできる。木造工程の上棟日のうちに屋根を施工して、太陽光発電モジュールを設置することも可能である。
【0013】
ところで、上記課題は、[1]基礎を構築する基礎構築工程と、[2]基礎における周縁部を残した内側部分の上側に、その外面に鉛直面形成用の木板が貼られて、その天井又は床に水平面形成用の木板が貼られた構造の木造建築物を建築する木造工程と、[3]基礎における周縁部の上側に外壁形成用の鉄筋を鉛直面形成用の木板に沿って配置するとともに、木造建築物の天井裏又は床下となる空間に天井スラブ形成用又は床スラブ形成用の鉄筋を水平面形成用の木板に沿って配置し、木造建築物の外面に設けられた連結口から天井スラブ形成用又は床スラブ形成用の鉄筋を外側に出して外壁形成用の鉄筋に連結する配筋工程と、[4]基礎における周縁部の上側に外壁形成用の型枠を立てて、該型枠で木造建築物の外面を外壁形成用の鉄筋とともに囲う型枠設置工程と、[5]外壁形成用の型枠と鉛直面形成用の木板との隙間、及び水平面形成用の木板の上部空間にコンクリートを流し込むコンクリート注入工程と、[6]前記コンクリートを養生させるコンクリート養生工程と、を経て、木造建築物の外面に鉄筋コンクリート製の外壁を該外面に一体化した状態で形成するとともに、木造建築物の天井又は床に貼られた水平面形成用の木板の上部空間に鉄筋コンクリート製の天井スラブ又は床スラブを水平面形成用の木板及び前記鉄筋コンクリート製の外壁と一体化した状態で形成することを特徴とする建築物の建築方法を提供することによっても解決される。以下においては、この建築方法を「第二実施態様の建築方法」と呼ぶことがある。第一実施態様の建築方法では、基礎構築工程において、木造建築物のために基礎に立ち上がり部を形成したが、第二実施態様の建築方法では、基礎構築工程に置いて、基礎に立ち上がり部を形成せず、木造工程において、基礎の底版部に直接木造建築物を建築する。本発明の建築方法によれば、鉄筋コンクリート製の外壁で木造建築物が囲われた状態となるために、必ずしも、木造建築物の基礎となる部分に立ち上がり部を形成する必要がない。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によって、木造建築物並みの工期の短さ、建築コストの安さ、改築容易性及び快適性を有し、鉄筋コンクリート造建築物並みの強度や耐震性や耐火性や耐津波性を発揮できる建築物を提供することが可能になる。特に、木造建築物がそのまま内側の型枠になるので、支保工などを用いることなく、垂直方向や水平方向のレベル出しが容易に行える。また、この建築物を好適に建築できる建築物の建築方法を提供することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第一実施態様の建築物の建築方法において、基礎構築工程を終えた直後の建築物の鉛直断面を示した断面図である。
【図2】本発明の建築物の建築方法において、木造工程を終えた直後の建築物の鉛直断面を示した断面図である。
【図3】本発明の第一実施態様の建築物の建築方法において、配筋工程を終えた直後の建築物の鉛直断面を示した断面図である。
【図4】本発明の第一実施態様の建築物の建築方法において、木造工程で鉛直面形成用の木板から突出して設けた金具に対して配筋工程で外壁形成用の鉄筋を連結した状態における前記金具周辺の水平断面を示した断面図である。
【図5】本発明の第一実施態様の建築物の建築方法において、型枠設置工程を終えた直後の建築物の鉛直断面を示した断面図である。
【図6】本発明の第一実施態様の建築物の建築方法において、コンクリート注入工程を終えた直後の建築物の鉛直断面を示した断面図である。
【図7】本発明の第一実施態様の建築物の建築方法において、天井スラブ又は床スラブに下側コンクリート梁及び上側コンクリート梁を形成した状態を、図6におけるA部に相当する部分を拡大して示した断面図である。
【図8】本発明の第一実施態様の建築物の建築方法において、型枠撤去工程を終えた直後の建築物の鉛直断面を示した断面図である。
【図9】本発明の第一実施態様の建築物の建築方法において、鉄筋コンクリート製の外壁に鉄筋コンクリート製の柱を形成した状態を、図6における水平断面で切断した断面図である。
【図10】本発明の第二実施態様の建築物の建築方法において、コンクリート注入工程を終えた直後の建築物の鉛直断面を示した断面図である。
【図11】本発明の第三実施態様の建築物の建築方法において、木造工程を終えた状態の建築物の鉛直断面を示した断面図である。
【図12】本発明の第三実施態様の建築物の建築方法において、コンクリート注入工程を行っている途中(1階部分のコンクリート注入工程を終えた直後)の建築物の鉛直断面を示した断面図である。
【図13】本発明の第三実施態様の建築物の建築方法において、コンクリート注入工程を行っている途中(2階部分のコンクリート注入工程を終えた直後)の建築物の鉛直断面を示した断面図である。
【図14】本発明の第三実施態様の建築物の建築方法において、コンクリート注入工程を終えた直後(3階部分のコンクリート注入工程を終えた直後)の建築物の鉛直断面を示した断面図である。
【図15】本発明の第三実施態様の建築物の建築方法において、型枠撤去工程を終えた直後の建築物の鉛直断面を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の建築物及びその建築方法の好適な実施態様について、図面を用いてより具体的に説明する。本発明の建築物の建築方法は、上述したように各種の建築物を建築する際に使用することができるし、その階数も特に限定されないが、以下においては、二階建ての一般家屋を建築する場合を例に挙げて説明する。本実施態様の建築方法では、基礎構築工程と、木造工程と、配筋工程と、型枠設置工程と、コンクリート注入工程と、コンクリート養生工程と、型枠撤去工程と、仕上工程とを経て、家屋を建築する。以下、これらの工程について順番に説明する。
【0017】
[基礎構築工程]
図1は、第一実施態様の建築方法において、基礎構築工程を終えた直後の建築物の鉛直断面を示した断面図である。基礎構築工程では、図1に示すように、立ち上がり部11aの外周に沿って底版部11b1が形成された基礎11を構築する。基礎11は、基礎構築用の型枠内に鉄筋を配置してコンクリートを流し込み、該コンクリートを養生させた後、型枠を撤去することにより構築される。基礎11は、立ち上がり部11aの内側の区画に底版部11b2が設けられていない「布基礎」であってもよいが、本実施態様では、立ち上がり部11aの内側の区画に底版部11b2が設けられた「べた基礎」を採用している。これにより、家屋10の耐震性や耐津波性をさらに向上することができる。
【0018】
基礎11の下側には図示省略の基礎杭を埋設し、該基礎杭を基礎11と一体化させておくことも好ましい。基礎11には、通常、図示省略の通気用開口部や、各種配管を通すための配管用開口部が設けられる。一階床下や建築物外部に図示省略の送風機を設置して、前記配管用開口部に通した配管を通じて外気が一階床下に導入されるようにすることも好ましい。これにより、完成後の建築物に湿気がさらにこもりにくくすることが可能になる。基礎構築工程を終えると、木造工程を開始する。立ち上がり部11aよりも外側の底版部11b1には、後述する配筋工程で鉄筋13を建てるための複数の穴11cを所定間隔で設けている。ここでは、地上のみに建築物を建築する場合について説明したが、地下を有する建築物を建築する際には、該当部分を地下に掘り下げ、その部分に基礎11に相当する部分を形成するとよい。
【0019】
[木造工程]
基礎構築工程が完了すると、木造工程を開始する。図2は、第一実施態様の建築方法において、木造工程を終えた直後の建築物の鉛直断面を示した断面図である。木造工程では、図2に示すように、基礎11における立ち上がり部11aで囲まれた部分の上側に、その外面に鉛直面形成用の木板12aが貼られて、その天井又は床に水平面形成用の木板12c(本実施態様の建築方法においては天井板)が貼られた構造の木造建築物12を建築する。木造工程は、プレカットされた木材を使用すると工期を短縮できるし、建築コストを安く抑えることもできる。ところで、図2などには、建築物の屋根を描いていないが、木造建築物12、あるいは完成後の建築物には、必要に応じて屋根を設けてもよい。屋根は、片流れ屋根や切り妻屋根や寄棟屋根などを採用することができ、ガルバニウム鋼板や瓦やスレートなど各種の屋根材をしようすることができる。屋根を平らな陸屋根とする場合には、最上階における天井部分の天井スラブを形成する際に、それが陸屋根の形状となるように、後述する型枠20を配置するとよい。
【0020】
木造建築物12の外面には、後述する配筋工程において鉄筋13bを通すための、あるいは後述するコンクリート注入工程においてコンクリートを流し込んで、鉄筋コンクリート製の外壁と、天井スラブ又は床スラブと一体化させるための連結口12dを設けておく。連結口12dは、通常、各階の境界部分(本実施態様の建築方法においては、木造建築物の一階部分と二階部分の間)に設けられる。連結口12dは、木板12aに穴を開けることなどによって形成してもよいが、一階部分に貼られる木板12aと、二階部分に貼られる木板12aとの間に隙間を設けることにより形成すると好ましい。これにより、後述する天井スラブや床スラブをその略全周部(柱や筋交いや配管が存在しない略全ての部分)で鉄筋コンクリート製の外壁と一体化させることが可能になり、得られる建築物の強度などをさらに高めることが可能になる。また、コンクリート注入工程において、型枠20と鉛直面形成用の木板12aとの間に流し込んだコンクリートが連結口12dから水平面形成用の木板12cの上部空間に流れ込みやすくすることも可能になる。連結口12dの高さ(縦の長さ)は、木造建築物12の寸法などによっても異なり、特に限定されないが、通常、10〜100cm、好ましくは20〜80cm程度である。
【0021】
木板12a,12cの種類も特に限定されない。本実施態様の建築方法においては、木板12a,12cとしてプレカットされた合板を採用している。木造建築物12における木板12aは、後述するコンクリート注入工程でコンクリート30を注入する際に内枠として機能する。通常、コンクリート成形用の内枠は、その垂直出しが困難であるが、本実施態様の建築方法では、予め垂直出しされた柱に対して貼った木板12aを内枠として使用するので、内枠の垂直出しにかかる手間を軽減することができる。また、木造建築物12における木板12cは、コンクリート注入工程でコンクリート30を注入する際に下枠として機能する。通常、コンクリート成形用の下枠は、その水平出しに支保工などを要し手間がかかるが、本実施態様の建築方法では、予め水平出しされた天井に張った木板12cを下枠として使用するので、下枠の水平出しにかかる手間を軽減することができる。
【0022】
木造建築物12は、木造工程の段階では、外壁の仕上げを行わず、木板12aが外面に剥き出したままにしておく。木造建築物12は、外面が合板12aにより形成されるのであれば、その具体的な工法は限定されない。ツーバイフォーパネル工法などのパネル工法のほか、軸組工法(在来工法)において外面を合板貼りとする工法などが例示される。電線用の配線や配管、上下水道用の配管などは、従来の木造住宅と同様、壁の中や天井裏や床下に設置することができ、鉄筋コンクリート造建築物と比較して自由度が高い。木造工程においては、窓12eやドアなどの開口部を設けてサッシや扉を取り付けるほか、床板12bなども施工する。窓12eやドアなどの取付は、後述する鉄筋コンクリート製の外壁に対してではなく、木造建築物12に対して行うので、容易に行える。ところで、後述する配筋工程以降の各工程は、上述した木造工程が完了していなくても、少なくとも木造建築物12の外面に合板12aが貼られた状態であれば開始することができる。このように、配筋工程以降の各工程と木造工程とを並行して行うことで、工期を短縮することができる。
【0023】
ところで、木造建築物12の断熱は、内断熱と外断熱のいずれであってもよい。内断熱は、通常、木造建築物12の外面を形成する木板12aの内側(柱と柱の間における壁の内側となる部分。この部分には、各種配線や各種配管が配置されることもある。)にグラスウールなどの断熱材を充填することにより行う。外断熱は、通常、木板12aの外面にポリスチレンフォームやウレタンフォームからなる断熱パネルを貼り付けることにより行う。
【0024】
[配筋工程]
図3は、第一実施態様の建築方法において、配筋工程を終えた直後の建築物の鉛直断面を示した断面図である。配筋工程では、図3に示すように、基礎11における立ち上がり部11aよりも外側の底版部11b1の上側に外壁形成用の鉄筋13aを鉛直面形成用の木板12aに沿って配置する。また、木造建築物12の天井裏又は床下となる空間に天井スラブ形成用又は床スラブ形成用の鉄筋を水平面形成用の木板12cに沿って配置し、木造建築物12の外面に設けられた連結口12dから天井スラブ形成用又は床スラブ形成用の鉄筋13bを外側に出して外壁形成用の鉄筋13aに連結する。外壁形成用の鉄筋13aは、基礎11における立ち上がり部11aよりも外側の底版部11b1の上面に設けられた穴11cに、鉄筋13を合板12aに対して平行となるように立てていき、これらの鉄筋を他の鉄筋やワイヤーなどで横方向に連結することに設置する。使用する鉄筋13の太さは、特に限定されないが、通常、直径が13〜16mm程度のものが使用される。
【0025】
また、配筋工程においては、図4に示すように、木板12aから外方に突き出た金具12fと鉄筋13とを連結することも好ましい。図4は、第一実施態様の建築方法において、木造工程で鉛直面形成用の木板12aから突出して設けた金具12fに対して配筋工程で外壁形成用の鉄筋13を連結した状態における金具12f周辺の水平断面を示した断面図である。図4の例では、木造建築物12における梁と柱などを接続するためのU字ボルト12f(金具)の内部に鉄筋13を通すことにより、金具12fと鉄筋13を連結している。これにより、後述する鉄筋コンクリート製の外壁と木造家屋12との一体性を高めることができる。
【0026】
配筋工程においては、所定箇所に、梁型(鉄筋梁)や柱型(鉄筋柱)を設けることも好ましい。これにより、得られる建築物の強度をさらに高めることができる。本実施態様の建築方法においては、図3に示すように、1階部分と2階部分との境界における外壁を形成する部分に梁型13dを設けるとともに、図7に示すように、天井スラブ又は床スラブにおける下側コンクリート梁又は上側コンクリート梁を形成する部分に梁型13dを設けている。また、図9に示すように、外壁を形成する部分に、柱型13eを設けている。梁型13dや柱型13eは、建築物の構造などに応じて適宜配置することができる。
【0027】
[型枠設置工程]
配筋工程が完了すると型枠設置工程を開始する。図5は、第一実施態様の建築方法において、型枠設置工程を終えた直後の建築物の鉛直断面を示した断面図である。型枠設置工程では、図5に示すように、基礎11における立ち上がり部11aよりも外側の底版部11b1の上側に外壁形成用の型枠20を立てて、型枠20で木造建築物12の外面を外壁形成用の鉄筋13aとともに囲う。本実施態様の建築方法において、型枠20は、複数枚の合板(コンパネ)により構築しているが、サイディングボードなど、外面に意匠が施された板を使用してもよい。また、型枠20として、枠内にメッシュが貼られたメッシュ型枠を使用することも好ましい。これにより、施工性をさらに向上させることが可能になる。メッシュ型枠は、コンクリートの打設状況が外から目視できる、複雑な形状にも対応できる、厚みが薄いためにぎりぎりまで建築物を建築することができる、などの特徴を有している。型枠20の垂直出し(鉛直出し)は、既に垂直出しが行われている木造建築物12の外面(木板12a)を基準に行えばよいので容易である。型枠20の内面と木造建築物12の外面(合板12aの外面)との間隔は、特に限定されない。しかし、この間隔が狭すぎると、得られる建築物の外壁の強度が低下するおそれがあるし、この間隔が広すぎると、使用するコンクリートの量が膨大になり、建築コストが高くなるおそれがある。このため、型枠20の内面と木造建築物12の外面との間隔は、通常、5〜50cm程度とされ、好ましくは、10〜20cm程度とされる。本実施態様の建築方法において、前記間隔は15cmとしている。木造建築物12に窓12aやドアなどの開口部が設けられている場合には、後述するコンクリート注入工程において、当該開口部の外側にコンクリート14が流れ込まないように型枠20を配置する。
【0028】
[コンクリート注入工程及びコンクリート養生工程]
型枠設置工程が完了すると、コンクリート注入工程を開始する。図6は、第一実施態様の建築方法において、コンクリート注入工程を終えた直後の建築物の鉛直断面を示した断面図である。コンクリート注入工程では、図6に示すように、外壁形成用の型枠20と鉛直面形成用の木板12aとの隙間、及び水平面形成用の木板12cの上部空間にコンクリート30を流し込む。コンクリート注入工程は、一気に行ってもよいが、所望の箇所全体にコンクリート30が流れ込むように、通常、所定高さ毎に又は所定区画毎に段階的にコンクリート30を注入していく。本実施態様の建築方法においては、まず、一階部分の天井スラブ(二階部分の床スラブ)が形成される高さまでコンクリート30を流し込み、その後、二階部分の天井スラブが形成される高さまでコンクリート30を流し込むようにしている。コンクリート30は、通常、型枠20と木板12aとの隙間から注入するが、天井スラブを形成するコンクリート30は、二階部分の室内から床板12bを外して行ってもよい。注入するコンクリート30としては、軽量コンクリートや普通コンクリートや重量コンクリートなど、各種のものを使用することができる。コンクリート注入工程が完了すると、コンクリート養生工程を開始し、コンクリート30を養生させる。
【0029】
図7は、第一実施態様の建築方法において、天井スラブ又は床スラブに下側コンクリート梁及び上側コンクリート梁を形成した状態を、図6におけるA部に相当する部分を拡大して示した断面図である。下側コンクリート梁は、図7に示すように、天井又は床の一部(隣り合う一対の梁12gの隙間)に水平面形成用の木板12cを貼らずに空白部を設け、該空白部の下側の部分(前記一対の梁12gの下面)を下側コンクリート梁形成用の型枠21で覆っておき、コンクリート注入工程において型枠21で覆われた部分の上側にもコンクリート30が流れ込むようにすることにより形成される。これにより、前記一対の梁12gの対向面を下側コンクリート梁形成用の型枠21として機能させることが可能になり、使用する部材の数を減らすことができる。
【0030】
また、上側コンクリート梁は、図7に示すように、水平面形成用の木板12cの上部空間にコンクリート30を注入する際に、後に天井スラブ又は床スラブとなる部分の上側を局所的に上側コンクリート梁形成用の型枠22で囲んでおき、コンクリート注入工程において型枠22で囲まれた部分にもコンクリート30が流れ込むようにすることにより形成される。上側コンクリート梁を形成する際には、型枠22の上方からコンクリート30を注入するとよい。下側コンクリート梁や上側コンクリート梁は、天井スラブや床スラブに梁状に設けられ、得られる建築物の強度などを高める。本実施態様の建築方法では、下側コンクリート梁及び上側コンクリート梁が形成される部分に梁型12cを埋め込んでいる。これにより、得られる下側コンクリート梁及び上側コンクリート梁の強度をさらに高めることができる。
【0031】
ところで、本実施態様の建築方法では、下側コンクリート梁と上側コンクリート梁とを同じ場所に設けたが、この態様に限定されない。すなわち、下側コンクリート梁のみを所定箇所に設けてもよいし、上側コンクリート梁のみを所定箇所に設けてもよいし、下側コンクリート梁と上側コンクリート梁とを異なる箇所に設けてもよい。下側コンクリート梁や上側コンクリート梁を施工するか否か、あるいはそれらを設ける場所は、建築物の構造などに応じて適宜決定する。
【0032】
図9は、本発明の第一実施態様の建築物の建築方法において、鉄筋コンクリート製の外壁に鉄筋コンクリート製の柱を形成した状態を、図6における水平断面で切断した断面図である。図9のB部(木造建築物12の外壁を構成する隣り合う一対の柱12hの間の部分)では、木造建築物12の外面を形成する鉛直面形成用の木板12aを貼らずに、木造建築物12の外側からその内装の下地材12fが覗くようにしている。このような状況でコンクリート30を流し込むと、前記一対の柱12hの対向面と下地材12fの外面が内枠として機能して、B部に鉄筋コンクリート製の柱を形成することができる。これにより、得られる建築物の強度をさらに高めることが可能になり、スパンを広く確保することも可能になる。本実施態様の建築方法では、B部に柱型13e(鉄筋柱)を立てており、B部に形成される鉄筋コンクリート製の柱の強度をさらに高めている。
【0033】
[型枠撤去工程]
コンクリート養生工程が完了すると型枠撤去工程を開始する。図8は、第一実施態様の建築方法において、型枠撤去工程を終えた直後の建築物の鉛直断面を示した断面図である。型枠撤去工程では、型枠20を取り外して、図8に示すように、外壁を形成するコンクリート30の外面が剥き出しの状態とする。ただし、型枠20として、サイディングボードなど、外面に意匠が施された板を使用した場合や、メッシュ型枠を使用した場合などには、型枠20そそのまま残してもよい。また、内枠として使用された木造建築物12の木板12aなどは、そのまま残した状態とする。これにより、建築物の吸湿性や木の質感を維持することができる。また、通常の鉄筋コンクリート造建築物を建築する際には廃棄されている内枠に相当する部分をそのまま材料として用いることができるので、廃材を削減することもできる。コンクリート30は、木造建築物12の外面を形成する木板12aと一体化された状態となっており、鉄筋コンクリート製の外壁として、得られた建築物の強度や耐震性や耐火性や耐津波性や断熱性などを大幅に向上させる。
【0034】
[仕上工程]
型枠撤去工程が完了すると必要に応じて仕上工程を開始する。建築物の外壁は、コンクリートの打ちっぱなしであってもよいが、必要に応じて、塗装処理などの各種処理を施すこともできる。具体的には、モルタル仕上げや、タイル貼り仕上などが例示される。また、バルコニーやウッドデッキ、あるいは屋上の手摺りや外階段などのアクセサリーを取り付けることもできる。これらの施工は、この仕上工程において行う。また、仕上工程では、鉄筋コンクリート製の外壁における窓12eなどの開口部に重なる部分に、図示省略の鋼製扉を取り付けてもよい。これにより、建築物を台風や津波などの災害に対してより強いものとすることができる。窓12eなどの開口部付近における鉄筋コンクリート製の外壁と木造建築物12の木板12aとの境界部分や、前記鋼製扉と鉄筋コンクリート製の外壁との接触部分には、シリコーンゴムやゴムパッキンなどを施して水密性を高めておくと好ましい。
【0035】
[その他]
ここまでは、木造建築物12の四方全ての外面を鉄筋コンクリート製の外壁で囲った例について説明したが、本発明の技術的範囲はこれに限定されない。すなわち、木造建築物12の外面における一部のみを鉄筋コンクリート製の外壁で覆うようにしてもよい。この構成は、津波の被害が予想される地域などにおいて、できるだけ低コストで耐津波建築物を建築したい場合などに採用できる。具体的には、津波が襲来してくる方向(通常、海側)の外面のみを鉄筋コンクリート製の外壁で囲うようにするとよい。
【0036】
[第二実施態様の建築物の建築方法]
続いて、本発明の建築物の建築方法の他の実施態様について説明する。図10は、本発明の第二実施態様の建築物の建築方法において、コンクリート注入工程を終えた直後の建築物の鉛直断面を示した断面図である。図1〜9で示した第一実施態様の建築方法では、基礎構築工程において、木造建築物12のために基礎11に立ち上がり部11aを形成したが、第二実施態様の建築方法では、基礎構築工程に置いて、基礎11に立ち上がり部を形成せず、木造工程において、基礎の底版部11bに直接木造建築物12を建築している。これにより、立ち上がり部の構築に必要なコストを削減して、さらに低コストで建築物を建築することが可能になる。第一実施態様の建築方法で説明した各種構成(下側コンクリート梁、上側コンクリート梁、鉄筋コンクリート製の柱など)は、第二実施態様の建築方法でも好適に採用することができる。
【0037】
[第三実施態様の建築物の建築方法]
図11は、本発明の第三実施態様の建築物の建築方法において、木造工程を終えた状態の建築物の鉛直断面を示した断面図である。図12は、本発明の第三実施態様の建築物の建築方法において、コンクリート注入工程を行っている途中(1階部分のコンクリート注入工程を終えた直後)の建築物の鉛直断面を示した断面図である。図13は、本発明の第三実施態様の建築物の建築方法において、コンクリート注入工程を行っている途中(2階部分のコンクリート注入工程を終えた直後)の建築物の鉛直断面を示した断面図である。図14は、本発明の第三実施態様の建築物の建築方法において、コンクリート注入工程を終えた直後(3階部分のコンクリート注入工程を終えた直後)の建築物の鉛直断面を示した断面図である。図15は、本発明の第三実施態様の建築物の建築方法において、型枠撤去工程を終えた直後の建築物の鉛直断面を示した断面図である。
【0038】
第三実施態様の建築物の建築方法では、図11に示すように、木造工程において、木造建築物12の上面に屋根12iを施工している。このため、以降の工程を天候に影響されることなく行うことが可能になり、工期を短縮することができる。図11に示すように、木造建築物12が3階建て程度である場合には、上棟日のうちに屋根12iまで施工することができる。図11の状態において、屋根12iは、必ずしも屋根材(上葺き材)まで施工しなくても、少なくとも屋根下地までを施工していれば、木造建築物12の内部に雨が落ちるのを防ぐことができる。この場合には、屋根下地の上面を樹脂シートで覆うことなどにより、屋根下地を保護するとともに、雨漏りしないようにすると好ましい。この他、本発明者が別に開発した技術を採用すれば、上棟日のうちに屋根12iの上に太陽光発電モジュール12jを設置することも可能である。これにより、以降の工程で必要な電力の一部又は全部を太陽光発電モジュール12jで発電された電力で賄うことも可能になる。
【0039】
屋根12iの形態は、特に限定されず、片流れ屋根、切り妻屋根、寄棟屋根、陸屋根など、各種のものを採用することができるが、太陽光発電モジュール12jを設置する場合に発電面積を広く確保できる、小屋裏を広く確保できる、施工が容易である、屋根12iの勾配を大きくしてより雨漏りしにくい構造とすることができる、などの理由から、片流れ屋根が好ましい。第三実施態様の建築物の建築方法においても、図11に示すように、片流れ屋根を採用している。
【0040】
第三実施態様の建築物の建築方法において、屋根12iを施工した以降の工程は、既に説明した第一実施態様や第二実施態様の建築方法と同様の構成を採用することができる。ただし、第三実施態様の建築物の建築方法では、図12〜14に示すように、型枠設置工程とコンクリート注入工程とコンクリート養生工程を各階ごとに行っている。これにより、コンクリート注入工程を容易かつ確実に行うことができる。またこの際、木造建築物12の内装工程なども並行して行うことができる。最後に、型枠撤去工程を終えると、図15に示すように、建築物が完成する。
【符号の説明】
【0041】
10 建築物
11 基礎
11a 立ち上がり部
11b 底版部
11b1 底版部
11b2 底版部
11c 穴
12 木造建築物
12a 鉛直面形成用の木板
12b 床板
12c 天井板(水平面形成用の木板)
12d 連結口
12e 窓(開口部)
12f 下地板
12g 梁
12h 柱
12i 屋根
12j 太陽光発電モジュール
13 鉄筋
13a 外壁形成用の鉄筋
13b 天井スラブ形成用又は床スラブ形成用の鉄筋
13c コンクリート梁形成用の鉄筋
13d 梁型(鉄筋梁)
13e 柱型(鉄筋柱)
20 外壁形成用の型枠
21 下側コンクリート梁形成用の型枠
22 上側コンクリート梁形成用の型枠
30 コンクリート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
立ち上がり部の外周に沿って底版部が形成された基礎を構築する基礎構築工程と、
基礎における立ち上がり部で囲まれた部分の上側に、その外面に鉛直面形成用の木板が貼られて、その天井又は床に水平面形成用の木板が貼られた構造の木造建築物を建築する木造工程と、
基礎における立ち上がり部よりも外側の底版部の上側に外壁形成用の鉄筋を鉛直面形成用の木板に沿って配置するとともに、木造建築物の天井裏又は床下となる空間に天井スラブ形成用又は床スラブ形成用の鉄筋を水平面形成用の木板に沿って配置し、木造建築物の外面に設けられた連結口から天井スラブ形成用又は床スラブ形成用の鉄筋を外側に出して外壁形成用の鉄筋に連結する配筋工程と、
基礎における立ち上がり部よりも外側の底版部の上側に外壁形成用の型枠を立てて、該型枠で木造建築物の外面を外壁形成用の鉄筋とともに囲う型枠設置工程と、
外壁形成用の型枠と鉛直面形成用の木板との隙間、及び水平面形成用の木板の上部空間にコンクリートを流し込むコンクリート注入工程と、
前記コンクリートを養生させるコンクリート養生工程と、
を経て、木造建築物の外面に鉄筋コンクリート製の外壁を該外面に一体化した状態で形成するとともに、木造建築物の天井又は床に貼られた水平面形成用の木板の上部空間に鉄筋コンクリート製の天井スラブ又は床スラブを水平面形成用の木板及び前記鉄筋コンクリート製の外壁と一体化した状態で形成することを特徴とする建築物の建築方法。
【請求項2】
木造工程において天井又は床の一部に水平面形成用の木板を貼らずに空白部を設け、該空白部の下側の部分を下側コンクリート梁形成用の型枠で覆い、
コンクリート注入工程において下側コンクリート梁形成用の型枠で覆われた部分にもコンクリートを流し込むことにより、
天井スラブ又は床スラブから下側に突出する鉄筋コンクリート製の下側コンクリート梁が形成されるようにした請求項1記載の建築物の建築方法。
【請求項3】
コンクリート注入工程において水平面形成用の木板の上部空間にコンクリートを注入する際に、後に天井スラブ又は床スラブとなる部分の上側を局所的に上側コンクリート梁形成用の型枠で囲み、
コンクリート注入工程において上側コンクリート梁形成用の型枠で囲まれた部分にもコンクリートを流し込むことにより、
天井スラブ又は床スラブから上側に突出する鉄筋コンクリート製の上側コンクリート梁が形成されるようにした請求項1又は2記載の建築物の建築方法。
【請求項4】
木造工程において鉛直面形成用の木板から外方に金具を外方に突き出させ、配筋工程において前記金具と前記外壁形成用の鉄筋とを連結する請求項1〜3いずれか記載の建築物の建築方法。
【請求項5】
木造工程において、木造建築物の上面に屋根を施工する請求項1〜4いずれか記載の建築物の建築方法。
【請求項6】
屋根の上面に太陽光発電モジュールを設置する請求項5記載の建築物の建築方法。
【請求項7】
基礎を構築する基礎構築工程と、
基礎における周縁部を残した内側部分の上側に、その外面に鉛直面形成用の木板が貼られて、その天井又は床に水平面形成用の木板が貼られた構造の木造建築物を建築する木造工程と、
基礎における周縁部の上側に外壁形成用の鉄筋を鉛直面形成用の木板に沿って配置するとともに、木造建築物の天井裏又は床下となる空間に天井スラブ形成用又は床スラブ形成用の鉄筋を水平面形成用の木板に沿って配置し、木造建築物の外面に設けられた連結口から天井スラブ形成用又は床スラブ形成用の鉄筋を外側に出して外壁形成用の鉄筋に連結する配筋工程と、
基礎における周縁部の上側に外壁形成用の型枠を立てて、該型枠で木造建築物の外面を外壁形成用の鉄筋とともに囲う型枠設置工程と、
外壁形成用の型枠と鉛直面形成用の木板との隙間、及び水平面形成用の木板の上部空間にコンクリートを流し込むコンクリート注入工程と、
前記コンクリートを養生させるコンクリート養生工程と、
を経て、木造建築物の外面に鉄筋コンクリート製の外壁を該外面に一体化した状態で形成するとともに、木造建築物の天井又は床に貼られた水平面形成用の木板の上部空間に鉄筋コンクリート製の天井スラブ又は床スラブを水平面形成用の木板及び前記鉄筋コンクリート製の外壁と一体化した状態で形成することを特徴とする建築物の建築方法。
【請求項8】
請求項1〜7いずれか記載の建築方法によって建築された建築物。
【請求項1】
立ち上がり部の外周に沿って底版部が形成された基礎を構築する基礎構築工程と、
基礎における立ち上がり部で囲まれた部分の上側に、その外面に鉛直面形成用の木板が貼られて、その天井又は床に水平面形成用の木板が貼られた構造の木造建築物を建築する木造工程と、
基礎における立ち上がり部よりも外側の底版部の上側に外壁形成用の鉄筋を鉛直面形成用の木板に沿って配置するとともに、木造建築物の天井裏又は床下となる空間に天井スラブ形成用又は床スラブ形成用の鉄筋を水平面形成用の木板に沿って配置し、木造建築物の外面に設けられた連結口から天井スラブ形成用又は床スラブ形成用の鉄筋を外側に出して外壁形成用の鉄筋に連結する配筋工程と、
基礎における立ち上がり部よりも外側の底版部の上側に外壁形成用の型枠を立てて、該型枠で木造建築物の外面を外壁形成用の鉄筋とともに囲う型枠設置工程と、
外壁形成用の型枠と鉛直面形成用の木板との隙間、及び水平面形成用の木板の上部空間にコンクリートを流し込むコンクリート注入工程と、
前記コンクリートを養生させるコンクリート養生工程と、
を経て、木造建築物の外面に鉄筋コンクリート製の外壁を該外面に一体化した状態で形成するとともに、木造建築物の天井又は床に貼られた水平面形成用の木板の上部空間に鉄筋コンクリート製の天井スラブ又は床スラブを水平面形成用の木板及び前記鉄筋コンクリート製の外壁と一体化した状態で形成することを特徴とする建築物の建築方法。
【請求項2】
木造工程において天井又は床の一部に水平面形成用の木板を貼らずに空白部を設け、該空白部の下側の部分を下側コンクリート梁形成用の型枠で覆い、
コンクリート注入工程において下側コンクリート梁形成用の型枠で覆われた部分にもコンクリートを流し込むことにより、
天井スラブ又は床スラブから下側に突出する鉄筋コンクリート製の下側コンクリート梁が形成されるようにした請求項1記載の建築物の建築方法。
【請求項3】
コンクリート注入工程において水平面形成用の木板の上部空間にコンクリートを注入する際に、後に天井スラブ又は床スラブとなる部分の上側を局所的に上側コンクリート梁形成用の型枠で囲み、
コンクリート注入工程において上側コンクリート梁形成用の型枠で囲まれた部分にもコンクリートを流し込むことにより、
天井スラブ又は床スラブから上側に突出する鉄筋コンクリート製の上側コンクリート梁が形成されるようにした請求項1又は2記載の建築物の建築方法。
【請求項4】
木造工程において鉛直面形成用の木板から外方に金具を外方に突き出させ、配筋工程において前記金具と前記外壁形成用の鉄筋とを連結する請求項1〜3いずれか記載の建築物の建築方法。
【請求項5】
木造工程において、木造建築物の上面に屋根を施工する請求項1〜4いずれか記載の建築物の建築方法。
【請求項6】
屋根の上面に太陽光発電モジュールを設置する請求項5記載の建築物の建築方法。
【請求項7】
基礎を構築する基礎構築工程と、
基礎における周縁部を残した内側部分の上側に、その外面に鉛直面形成用の木板が貼られて、その天井又は床に水平面形成用の木板が貼られた構造の木造建築物を建築する木造工程と、
基礎における周縁部の上側に外壁形成用の鉄筋を鉛直面形成用の木板に沿って配置するとともに、木造建築物の天井裏又は床下となる空間に天井スラブ形成用又は床スラブ形成用の鉄筋を水平面形成用の木板に沿って配置し、木造建築物の外面に設けられた連結口から天井スラブ形成用又は床スラブ形成用の鉄筋を外側に出して外壁形成用の鉄筋に連結する配筋工程と、
基礎における周縁部の上側に外壁形成用の型枠を立てて、該型枠で木造建築物の外面を外壁形成用の鉄筋とともに囲う型枠設置工程と、
外壁形成用の型枠と鉛直面形成用の木板との隙間、及び水平面形成用の木板の上部空間にコンクリートを流し込むコンクリート注入工程と、
前記コンクリートを養生させるコンクリート養生工程と、
を経て、木造建築物の外面に鉄筋コンクリート製の外壁を該外面に一体化した状態で形成するとともに、木造建築物の天井又は床に貼られた水平面形成用の木板の上部空間に鉄筋コンクリート製の天井スラブ又は床スラブを水平面形成用の木板及び前記鉄筋コンクリート製の外壁と一体化した状態で形成することを特徴とする建築物の建築方法。
【請求項8】
請求項1〜7いずれか記載の建築方法によって建築された建築物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−11157(P2013−11157A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226600(P2011−226600)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(508057069)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(508057069)
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