説明

建設機械の冷却構造

【課題】冷却ファン、オイルクーラ、及び戻り配管等の配置に制約を受けずに戻り配管を流れる作動油を十分に冷却することができる建設機械の冷却構造の提供。
【解決手段】エンジン12の駆動力で回転する油圧ポンプ14と、作動油を貯蔵する作動油タンク15と、作動油を冷却するオイルクーラ17と、油圧ポンプ14に接続されて作動油を制御する多連バルブ16と、多連バルブ16からオイルクーラ17へ作動油を戻す第1の戻り配管20Aと、オイルクーラ17から作動油タンク15へ作動油を戻す第2の戻り配管20Bとを備え、これら第1の戻り配管20A及び第2の戻り配管20Bは、断面が円形状の通常配管部20A1等と、この通常配管部20A1等に連設され、短辺が通常配管部20A1等の半径よりも小さい楕円状断面部20A2等とをそれぞれ有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多連バルブからオイルクーラを介して作動油タンクへ作動油を戻す戻り配管を備えた建設機械の冷却構造に係り、特にこの戻り配管を流れる作動油を冷却する冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に油圧ショベル等で知られる旋回式の建設機械は、履帯等を有して走行する走行体と、走行体の上方に連結されて左右方向に旋回する旋回体と、この旋回体の前方に設けられ、各アクチュエータを有して掘削等の作業を行うフロント作業機とから構成されている。
【0003】
この旋回体は、エンジンの駆動力で回転する油圧ポンプと、この油圧ポンプに吸入される作動油を貯蔵する作動油タンクと、作動油を冷却するオイルクーラと、油圧ポンプに接続されて油圧ポンプから吐出される作動油、すなわち圧油を制御する多連バルブとを備えている。また、旋回体は、多連バルブからオイルクーラへ油を戻す戻り配管と、オイルクーラから作動油タンクへ油を戻す戻り配管とを備えている。ここで、便宜的にこれらの戻り配管をそれぞれ第1の戻り配管、第2の戻り配管と呼ぶことにする。
【0004】
このように構成される建設機械の旋回体は、エンジンが駆動されることによって油圧ポンプが作動油タンクから吸入した圧油を多連バルブへ供給し、多連バルブはこの圧油を各アクチュエータに導く。これにより、例えばフロント作業機を駆動することができ、掘削等の作業を行う。
【0005】
そして、各アクチュエータから多連バルブに戻った油は高温となるので、多連バルブから第1の戻り配管を通ってオイルクーラで冷却され、冷却された油は第2の戻り配管を通って作動油タンクへ戻る。
【0006】
しかし、建設機械の種類によっては旋回体内のエンジン、オイルクーラ、及び戻り配管等の構造配置の関係から戻り配管がエンジンの熱によって加熱されることがある。そのため、多連バルブからオイルクーラを介して作動油タンクへ戻る過程で作動油の温度が上昇し、この作動油を適正な温度まで冷却するためにオイルクーラが大型化することが問題となっていた。
【0007】
そこで、多連バルブから作動油タンクに作動油を戻す戻り配管が、旋回体内の冷却ファンを回転駆動したときに発生する冷却風の流れ方向に対しほぼ直交する方向に延びる放熱配管部を備え、この冷却風によって放熱配管部内を流通する作動油を冷却する旋回式建設機械が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−55921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1に開示された従来の旋回式建設機械は、放熱配管部を旋回体内の冷却ファンによる冷却風の流れ方向に対してほぼ直交させる必要があるので、旋回体内に備えられる冷却ファン、オイルクーラ、及び戻り配管等の配置が制約される。そのため、十分な長さの放熱配管部を設けるスペースがない建設機械等、あるいは旋回体内の構成によって放熱配管部を冷却風の流れ方向に対して直交させることができない建設機械等に適用することができない問題がある。
【0010】
なお、上述の旋回式建設機械では、冷却風を当てる放熱配管部は多連バルブからオイルクーラに作動油を流入させる側の配管、すなわち第1の戻り配管に設けられており、オイルクーラから作動油タンクに作動油を流入させる側の配管、すなわち第2の戻り配管には設けられていない。そこで、この第2の戻り配管にも第1の戻り配管と同様に放熱配管部を設けた場合、これら第1の戻り配管及び第2の戻り配管の放熱配管部を冷却ファンの冷却風の流れ方向に対しほぼ直交する方向に配置させる必要があるので、オイルクーラ、第1の戻り配管及び第2の戻り配管の構成が複雑となり、これらの配設が困難である。したがって、第2の戻り配管に放熱配管部を備えて作動油を冷却することができない問題がある。
【0011】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、冷却ファン、オイルクーラ、及び戻り配管等の配置に制約を受けずに戻り配管を流れる作動油を十分に冷却することができる建設機械の冷却構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明の建設機械の冷却構造は、エンジンの駆動力で回転する油圧ポンプと、この油圧ポンプに吸入される作動油を貯蔵する作動油タンクと、前記作動油を冷却するオイルクーラと、前記油圧ポンプに接続されて前記油圧ポンプから吐出される前記作動油を制御する多連バルブと、前記多連バルブから前記オイルクーラへ前記作動油を戻す第1の戻り配管と、前記オイルクーラから前記作動油タンクへ前記作動油を戻す第2の戻り配管とを備えた建設機械の冷却構造において、前記第1の戻り配管及び前記第2の戻り配管のうち少なくとも一方は、断面が円形状の通常配管部と、この通常配管部に連設され、中心に近い内面と中心から遠い内面のうちの前記近い内面と、前記中心までの距離が前記通常配管部の半径よりも小さい異形断面部とを有することを特徴としている。
【0013】
このように構成した本発明は、第1の戻り配管及び第2の戻り配管のうち少なくとも一方に備えられた異形断面部が中心に近い内面と中心から遠い内面のうちの近い内面と、その中心までの距離が通常配管部の半径よりも小さいので、この異形断面部を通過する作動油の温度を異形断面部の表面に効率よく伝え、通常配管部よりも熱を放射し易くなっている。そのため、第1の戻り配管又は第2の戻り配管に冷却風を当てなくても放熱性を向上させることができ、旋回体内に備えられる冷却ファン、オイルクーラ、及び戻り配管等の配置に制約を受けずに第1の戻り配管又は第2の戻り配管を流れる作動油を十分に冷却することができる。
【0014】
なお、本発明は、第1の戻り配管と第2の戻り配管のそれぞれに通常配管部と異形断面部とを有する場合でも、オイルクーラ、第1の戻り配管及び第2の戻り配管の構成が複雑となることがなく、これらの配設を容易に行うことができるので、第1の戻り配管及び第2の戻り配管から作動油の熱を放熱することができる。このように、第1の戻り配管及び第2の戻り配管のそれぞれが、通常配管部と異形断面部とを有する場合には、作動油の熱をより放熱することができる。
【0015】
また、本発明に係る建設機械の冷却構造は、前記発明において、前記異形断面部の断面形状は楕円形状であることを特徴としている。このように構成すると、通常の配管にプレス加工等の簡単な加工を行うことにより、容易に第1の戻り配管又は第2の戻り配管に異形断面部を設けることができ、製作コストを抑えることができる。
【0016】
また、本発明に係る建設機械の冷却構造は、前記異形断面部の内面を有する前記第1の戻り配管又は前記第2の戻り配管は、前記異形断面部の内面と前記通常配管部の内面とを連設させるテーパ状部を備えたことを特徴としている。このように構成すると、異形断面部を有する第1の戻り配管又は第2の戻り配管を流通する作動油が異形断面部から通常配管部を流れる際に受ける抵抗を減少させることができるので、この抵抗によって作動油の温度が上昇することを防ぎ、放熱性を向上させることができる。
【0017】
また、本発明に係る建設機械の冷却構造は、前記発明において、前記異形断面部は内壁に凹凸を有することを特徴としている。このように構成すると、異形断面部を有する第1の戻り配管又は第2の戻り配管を流通する作動油が異形断面部を流れる際に乱流を生じさせることができるので、作動油の温度分布の偏りをなくして放熱させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の建設機械の冷却構造は、第1の戻り配管及び第2の戻り配管のうち少なくとも一方が、断面が円形状の通常配管部と、この通常配管部に連設され、中心に近い内面と中心から遠い内面のうちの近い内面と、中心までの距離が通常配管部の半径よりも小さい異形断面部とを有している簡単な構成としており、第1の戻り配管又は第2の戻り配管の異形断面部から通常配管部に比べて十分な熱を放射することができる。すなわち、旋回体内に備えられる冷却ファン、オイルクーラ、及び戻り配管等の配置に制約を受けずに作動油の熱を十分に放射することができる。これにより、従来技術におけるような十分な長さの放熱配管部を設けるスペースがない建設機械等、あるいは旋回体内の構成によって放熱配管部を冷却風の流れ方向に対して直交させることができない建設機械等にも適用することができ、従来に比べて汎用性及び放熱性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る冷却構造の第1実施形態が備えられる建設機械の一例として挙げた油圧ショベルを示す側面図である。
【図2】図1に示す油圧ショベルの旋回体に備えられる本発明に係る冷却構造の第1実施形態の構成を示す平面図である。
【図3】図2に示す冷却構造の第1実施形態に備えられる戻り配管の要部を示す図であり、(a)図は楕円状断面部を示す平面図、(b)図は(a)図に示す楕円状断面部の側面図、(c)図は(a)図のA−A断面図、(d)図は(a)図のB−B断面図である。
【図4】本発明に係る建設機械の冷却構造の第2実施形態に備えられる戻り配管の要部を示す図であり、(a)図は楕円状断面部を示す平面図、(b)図は(a)図に示す楕円状断面部の側面図である。
【図5】本発明に係る建設機械の冷却構造の第3実施形態に備えられる戻り配管の三日月状断面部の断面を拡大して示す図である。
【図6】本発明に係る建設機械の冷却構造の第4実施形態に備えられる戻り配管の上下湾曲形成断面部の断面を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る建設機械の冷却構造を実施するための形態を図に基づいて説明する。
【0021】
[第1実施形態]
図1は本発明に係る冷却構造の第1実施形態が備えられる建設機械の一例として挙げた油圧ショベルを示す側面図、図2は図1に示す油圧ショベルの旋回体に備えられる本発明に係る冷却構造の第1実施形態の構成を示す平面図、図3は図2に示す冷却構造の第1実施形態に備えられる戻り配管の要部を示す図であり、(a)図は楕円状断面部を示す平面図、(b)図は(a)図に示す楕円状断面部の側面図、(c)図は(a)図のA−A断面図、(d)図は(a)図のB−B断面図である。
【0022】
図1に示すように、本発明に係る建設機械の冷却構造の第1実施形態は、建設機械、例えば油圧ショベル1に適用される。この油圧ショベル1は、走行体2と、この走行体2の上側に配置され、旋回フレーム3aを有する旋回体3と、この旋回体3の前方に取り付けられて上下方向に回動するフロント作業機4とから構成されている。また、旋回体3は、前方にキャブ7を備え、後方にカウンタウェイト6を備え、また、これらキャブ7及びカウンタウェイト6の間にエンジンルーム5を備えている。
【0023】
この旋回体3は、図2に示すように、エンジンルーム5に収容されるエンジン12を冷却する冷却ファン13と、エンジン12の駆動力で回転する油圧ポンプ14と、この油圧ポンプ14に吸入される作動油を貯蔵する作動油タンク15と、作動油を冷却するオイルクーラ17と、このオイルクーラ17に隣接した位置に配置されたラジエータ18及びインタークーラ19と、油圧ポンプ14に接続されて油圧ポンプ14から吐出され、フロント作業機4を駆動するアクチュエータ等に供給される作動油を制御する多連バルブ16とを備えている。
【0024】
また、旋回体3は、多連バルブ16からオイルクーラ17へ作動油を戻す第1の戻り配管20Aと、オイルクーラ17から作動油タンク15へ作動油を戻す第2の戻り配管20Bとを備え、この第2の戻り配管20Bは両端にクランプ30を介して固定されている。さらに旋回体3には、多連バルブ16及び第1の戻り配管20Aの作動油の温度が低くオイルクーラ17へ流入する抵抗が大きい場合に多連バルブ16から作動油タンク15へ直接作動油を戻すバイパスとしての戻り配管21が設けられている。
【0025】
図3に示すように、第1の戻り配管20Aは、(c)図に示す断面が円形状の通常配管部20A1と、この通常配管部20A1に(a)(b)図に示すテーパ状部20aを介して連設され、断面が楕円形状であって短辺が通常配管部20A1の半径よりも小さい(d)図に示す楕円状断面部20A2とを有している。
【0026】
第2の戻り配管20Bも図示しないが、前述した第1の戻り配管20Aと同様に、断面が円形状の通常配管部と、この通常配管部にテーパ状部を介して連設され、断面が楕円形状であって短辺が通常配管部の半径よりも小さい楕円状断面部とを有している。なお、第2の戻り配管20Bは楕円状断面部の両端の通常配管部にそれぞれクランプ30が取り付けられて固定されている。また、第1の戻り配管20A及び第2の戻り配管20Bの楕円状断面部20A2等は、通常の配管をプレス加工することによって形成されている。
【0027】
このように構成した本発明の一実施形態によれば、第1の戻り配管20Aに備えられた楕円状断面部20A2の短辺が通常配管部20A1の半径よりも小さいので、作動油の温度が効率よく第1の戻り配管20Aに伝わり、通常配管部20A1よりも楕円状断面部20A2の中心に近い内面から熱を放射し易くなっている。そのため、第1の戻り配管20Aに冷却風を当てなくても熱の放射性を向上させることができる。第2の戻り配管20Bにおいても前述と同様である。したがって、旋回体3内に備えられる冷却ファン13、オイルクーラ17、第1の戻り配管20A及び第2の戻り配管20Bの配置に制約をうけずに第1の戻り配管20A及び第2の戻り配管20Bを流れる作動油を十分に冷却することができる。これにより、従来技術におけるような十分な長さの放熱配管部を設けるスペースがない建設機械等、あるいは旋回体3内の構成によって放熱配管部を冷却風の流れ方向に対して直交させることができない建設機械等にも適用することができ、従来に比べて汎用性及び放熱性を向上することができる。
【0028】
なお、本発明の第1実施形態は、前述したように第1の戻り配管20Aだけでなく第2の戻り配管20Bも通常配管部と楕円状断面部とを有しているので、第1の戻り配管20Aだけが通常配管部20A1と楕円状断面部20A2とを有する場合に比べて、作動油の熱をより十分放熱することができる。
【0029】
また、本発明の第1実施形態は通常の配管にプレス加工を行うことにより、第1の戻り配管20A及び第2の戻り配管20Bに通常配管部20A1等及び楕円状断面部20A2等が塑性変形して通常配管部20A1等の表面積よりも楕円状断面部20A2等の表面積が増大するので、作動油の熱をより放射することができる。
【0030】
さらに、第1の戻り配管20A及び第2の戻り配管20Bの楕円状断面部20A2等は、通常の配管にプレス加工で第1の戻り配管20A及び第2の戻り配管20Bに楕円状断面部20A2等を容易に設けることができるので、第1の戻り配管20A及び第2の戻り配管20Bの製作コストを抑えることができる。
【0031】
また、本発明の第1実施形態は、第1の戻り配管20A及び第2の戻り配管20Bの楕円状断面部20A2等の内面と通常配管部20A1等の内面とを連設させるテーパ状部20a等により、第1の戻り配管20A及び第2の戻り配管20Bを流通する作動油が楕円状断面部20A2等から通常配管部20A1等をそれぞれ流れる際に受ける抵抗を減少させることができるので、この抵抗によって作動油の温度が上昇することを防ぎ、放熱性を向上させることができる。
【0032】
なお、本発明の第1実施形態では、第1の戻り配管20A及び第2の戻り配管20Bの楕円状断面部20A2等の多連バルブ16に対する向きを調整してこれら第1の戻り配管20A及び第2の戻り配管20Bを多連バルブ16、オイルクーラ17及び作動油タンク15にそれぞれ接続することにより、多連バルブ16上方への投影面積を通常の配管よりも小さくすることができる。これにより、図示しないスプールの交換作業やメンテナンス作業を簡便に行うことができる。
【0033】
[第2実施形態]
図4は本発明に係る建設機械の冷却構造の第2実施形態に備えられる戻り配管の要部を示す図であり、(a)図は楕円状断面部を示す平面図、(b)図は(a)図に示す楕円状断面部の側面図である。
【0034】
図4に示すように、本発明の第2実施形態が本発明の第1実施形態と異なるのは、第1の戻り配管20Aの楕円状断面部20A2が作動油の流れに沿って凸部40A及び凹部41Aを有していることである。また、第2の戻り配管20Bも楕円状断面部に前述と同様の凸部及び凹部を有しており、その他の構成は第1実施形態と同じである。
【0035】
このように構成した本発明の第2実施形態によれば、作動油が第1の戻り配管20A及び第2の戻り配管20Bの楕円状断面部20A2等を流れる際に作動油に乱流を生じさせることができるので、作動油の温度分布の偏りをなくすことができる。これにより、作動油の熱をより放射することができる。
【0036】
[第3実施形態]
図5は本発明に係る建設機械の冷却構造の第3実施形態に備えられる戻り配管の三日月状断面部の断面を拡大して示す図である。
【0037】
本発明の第3実施形態が本発明の第1実施形態と異なるのは、第1の戻り配管20A及び第2の戻り配管20Bが楕円状断面部20A2等ではなく三日月状断面部20A3等をそれぞれ有していることであり、その他の構成は第1実施形態と同じである。
【0038】
このように構成した本発明の第3実施形態によれば、第一実施形態と同様に、第1の戻り配管20A及び第2の戻り配管20Bの両方にそれぞれ備えられた三日月状断面部20A3等の中心に近い内面と中心から遠い内面のうちの近い内面と、その中心までの距離が通常配管部20A1等の半径よりも小さいので、作動油の温度が効率よく第1の戻り配管20A及び第2の戻り配管20Bに伝わり、通常配管部20A1等よりも三日月状断面部20A3等の中心に近い内面から熱を放射し易くなっている。そのため、旋回体3内に備えられる冷却ファン13、オイルクーラ17、第1の戻り配管20A及び第2の戻り配管20Bの配置に制約をうけずに第1の戻り配管20A及び第2の戻り配管20Bを流れる作動油を十分に冷却することができる。これにより、従来技術におけるような十分な長さの放熱配管部を設けるスペースがない建設機械等、あるいは旋回体3内の構成によって放熱配管部を冷却風の流れ方向に対して直交させることができない建設機械等にも適用することができ、従来に比べて汎用性及び放熱性を向上することができる。
【0039】
[第4実施形態]
図6は本発明に係る建設機械の冷却構造の第4実施形態に備えられる戻り配管の上下湾曲形成断面部の断面を拡大して示す図である。
【0040】
本発明の第4実施形態が本発明の第1実施形態と異なるのは、第1の戻り配管20A及び第2の戻り配管20Bが楕円状断面部20A2等ではなく上下湾曲形成断面部20A4等をそれぞれ有していることであり、その他の構成は第1実施形態と同じである。
【0041】
このように構成した本発明の第4実施形態によれば、第3実施形態と同様の効果が得られる他、第3実施形態の三日月状断面部20A3等よりも第1の戻り配管20A及び第2の戻り配管20Bの両方にそれぞれ備えられた上下湾曲形成断面部20A4等の内面のほうがより近いので、作動油の温度が効率よく第1の戻り配管20A及び第2の戻り配管20Bに伝わり、第1の戻り配管20A及び第2の戻り配管20Bの上下湾曲形成断面部20A4等のほうが三日月状断面部20A3等よりもさらに熱を放射し易くなっている。これにより、作動油の熱の放射性をより向上させることができる。
【符号の説明】
【0042】
1 油圧ショベル(建設機械)
2 走行体
3 旋回体
3a 旋回フレーム
4 フロント作業機
5 エンジンルーム
6 カウンタウェイト
7 キャブ
12 エンジン
13 冷却ファン
14 油圧ポンプ
15 作動油タンク
16 多連バルブ
17 オイルクーラ
18 ラジエータ
19 インタークーラ
20A 第1の戻り配管
20B 第2の戻り配管
21 戻り配管
20a テーパ状部
20A1 通常配管部
20A2 楕円状断面部(異形断面部)
20A3 三日月状断面部(異形断面部)
20A4 上下湾曲形成断面部(異形断面部)
30 クランプ
40A 凸部
41A 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの駆動力で回転する油圧ポンプと、この油圧ポンプに吸入される作動油を貯蔵する作動油タンクと、前記作動油を冷却するオイルクーラと、前記油圧ポンプに接続されて前記油圧ポンプから吐出される前記作動油を制御する多連バルブと、前記多連バルブから前記オイルクーラへ前記作動油を戻す第1の戻り配管と、前記オイルクーラから前記作動油タンクへ前記作動油を戻す第2の戻り配管とを備えた建設機械の冷却構造において、
前記第1の戻り配管及び前記第2の戻り配管のうち少なくとも一方は、断面が円形状の通常配管部と、この通常配管部に連設され、中心に近い内面と中心から遠い内面のうちの前記近い内面と、前記中心までの距離が前記通常配管部の半径よりも小さい異形断面部とを有することを特徴とする建設機械の冷却構造。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械の冷却構造において、
前記異形断面部の断面形状は楕円形状であることを特徴とする建設機械の冷却構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の建設機械の冷却構造において、
前記異形断面部の内面を有する前記第1の戻り配管又は前記第2の戻り配管は、前記異形断面部の内面と前記通常配管部の内面とを連設させるテーパ状部を備えたことを特徴とする建設機械の冷却構造。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の建設機械の冷却構造において、
前記異形断面部は内壁に凹凸を有することを特徴とする建設機械の冷却構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−42958(P2011−42958A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191061(P2009−191061)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】