説明

建設機械

【課題】 リザーブタンクとラジエータとを繋ぐホース部材が邪魔にならないように配置し、防塵ネットを熱交換装置に簡単に設けられるようにする。
【解決手段】 仕切カバー17には、防塵ネット16よりも冷却風の流れ方向の上流側のネット上流空間A側に位置して第1のホース挿通口18を設けると共に、防塵ネット16よりも下流側のネット下流空間B側に位置して第2のホース挿通口19を設ける。この上で、リザーブタンク20とラジエータ13とを接続するホース部材23は、リザーブタンク20から第1のホース挿通口18を通して仕切カバー17の後側に配置し、第2のホース挿通口19を通して仕切カバー17の前側に配置してラジエータ13に接続する構成としている。従って、ホース部材23の中間部23Cは、防塵ネット16の邪魔にならない仕切カバー17の後側に配置できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車体フレーム上にエンジンの冷却水を冷却するラジエータを含む熱交換装置を備えた油圧ショベル等の建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械の代表例としての油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体と、該上部旋回体の前,後方向の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置とにより構成されている。
【0003】
上部旋回体は、車体の支持構造体を形成する旋回フレームと、該旋回フレームの後部に設けられ作業装置との重量バランスをとるカウンタウエイトと、該カウンタウエイトの前側に位置して前記旋回フレーム上に左,右方向に延びる横置き状態で搭載されたエンジンと、該エンジンに設けられ外部の空気を冷却風として吸込む冷却ファンと、該冷却ファンよりも冷却風の流れ方向の上流側に位置して該冷却ファンと対面して設けられ冷却風によってエンジン冷却水を冷却するラジエータを含む熱交換装置とを備えている。
【0004】
旋回フレームは、前側に作業装置が取付けられる左,右の縦板と該各縦板の外側に位置して前,後方向に延びた左,右のサイドフレームとを有している。熱交換装置とカウンタウエイトとの間には、このカウンタウエイトの前側を左,右方向に延びるように仕切カバーが立設されている。
【0005】
一方、熱交換装置を挟んで冷却ファンと反対側には、熱交換装置と対面して防塵ネットが配置され、この防塵ネットによって熱交換装置の上流側を覆うことによりラジエータ等に塵埃、虫等の異物が詰まるのを防止している。
【0006】
さらに、防塵ネットよりも冷却風の流れ方向の上流側のネット上流空間に位置して仕切カバーには、ラジエータに供給する冷却水を貯えるリザーブタンクが設けられている。このリザーブタンクは、ホース部材によってラジエータと接続されている。ここで、ホース部材は、冷却水を円滑に流通できるように、リザーブタンクとラジエータとの間を直線的に延びることにより最短距離で接続されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−46233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、熱交換装置の冷却風の上流側に設けられた防塵ネットは、ラジエータ等に塵埃、虫等の異物が付着するのを防止するものである。このために、防塵ネットは、その周囲を熱交換装置に密着させて遮蔽状態とする必要がある。
【0009】
しかし、特許文献1のように、リザーブタンクとラジエータとの間をホース部材で直線的に接続した場合、このホース部材は、防塵ネットのカウンタウエイト側を通ることになる。そこで、ホース部材を防塵ネットのカウンタウエイト側に通した状態でも、仕切カバーとの間を異物が通過しないように遮蔽するためには、防塵ネットの一部に切欠き部、屈曲部等の特殊な加工を施したり、防塵ネットとホース部材との隙間を埋めるためのシール部材を設けたりしなくてはならない。この結果、防塵ネットの形状が複雑になり、製造コストが嵩んでしまうという問題がある。
【0010】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、リザーブタンクとラジエータとの間でホース部材が邪魔にならないように配置することにより、熱交換装置に対して防塵ネットを簡単に取付けることができるようにした建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による建設機械は、車体の支持構造体を形成し前側に作業装置が取付けられる車体フレームと、前記作業装置との重量バランスをとるために該車体フレームの後部に設けられたカウンタウエイトと、前記車体フレーム上に設けられたエンジンと、該エンジンを動力源として回転することにより外部の空気を冷却風として吸込む冷却ファンと、該冷却ファンよりも冷却風の流れ方向の上流側に位置して該冷却ファンと対面して設けられ冷却風によってエンジン冷却水を冷却するラジエータを含む熱交換装置と、該熱交換装置を挟んで前記冷却ファンと反対側に位置して該熱交換装置と対面して配置された防塵ネットと、前記熱交換装置と前記カウンタウエイトとの間に立設され前記カウンタウエイトの前側を延びる仕切カバーと、前記防塵ネットよりも冷却風の流れ方向の上流側のネット上流空間に位置して該仕切カバーに設けられ前記ラジエータに供給する冷却水を貯えるリザーブタンクと、該リザーブタンクと前記ラジエータとを接続するホース部材とを備えてなる。
【0012】
そして、上述した課題を解決するために、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記防塵ネットのカウンタウエイト側の端面と前記仕切カバーとの間は、前記ネット上流空間を前記防塵ネットよりも下流側のネット下流空間に対し冷却風の流れを遮蔽する構成とし、前記仕切カバーには、前記ネット上流空間側に位置して第1のホース挿通口を設けると共に、前記ネット下流空間側に位置して第2のホース挿通口を設け、前記ホース部材は、前記リザーブタンクから前記第1のホース挿通口を通して前記仕切カバーの後側に配置し、前記第2のホース挿通口を通して前記仕切カバーの前側に配置して前記ラジエータに接続する構成としたことにある。
【0013】
請求項2の発明は、前記仕切カバーには、前記第2のホース挿通口と前記ホース部材との隙間を埋めるシール部材を設ける構成としたことにある。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、仕切カバーには、防塵ネットよりも冷却風の流れ方向の上流側のネット上流空間側に位置して第1のホース挿通口を設けると共に、防塵ネットよりも冷却風の流れ方向の下流側のネット下流空間に位置して第2のホース挿通口を設ける構成としている。この上で、ホース部材は、リザーブタンクから前記第1のホース挿通口を通して前記仕切カバーの後側に配置し、前記第2のホース挿通口を通して前記仕切カバーの前側に配置して前記ラジエータに接続する構成としている。
【0015】
従って、防塵ネットのカウンタウエイト側の端面と仕切カバーとの間が、ネット上流空間をネット下流空間に対し冷却風の流れを遮蔽する構成となっていても、ホース部材の中間部は、防塵ネットを避けて仕切カバーの後側に配置することができる。これにより、防塵ネットは、ホース部材に邪魔されることなく、熱交換装置に対面する位置に設けることができる。
【0016】
この結果、防塵ネットは、ホース部材を避けるための特殊な加工を施す必要がなくなるから、例えば加工が容易な四角形状に形成でき、製造コストを削減することができる。しかも、四角形状の防塵ネットは、熱交換装置の上流側でネット上流空間とネット下流空間との間を隙間なく覆うことができるから、塵埃や虫を確実に捕えることができ、熱交換装置を清浄に保つことができる。また、四角形状の防塵ネットは、その単純な構造によって熱交換装置に対し容易に取付けたり、取外したりすることができる。さらに、防塵ネット以外にも、例えばインタクーラ、コンデンサ等をラジエータに対面する位置に容易に設けることができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、仕切カバーには、第2のホース挿通口とホース部材との隙間を埋めるシール部材を設ける構成としている。従って、第2のホース挿通口とホース部材との隙間からネット下流空間に塵埃、虫等が侵入するのを防止でき、熱交換装置をより一層清浄に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係る油圧ショベルを示す正面図である。
【図2】作業装置の一部と外装カバーとを省略した状態の油圧ショベルを示す拡大平面図である。
【図3】エンジン、熱交換装置等を搭載した旋回フレームを示す平面図である。
【図4】熱交換装置、防塵ネット、仕切カバー、リザーブタンク等を図2中の矢示IV−IV方向から見た要部拡大の外観斜視図である。
【図5】防塵ネットを取外した状態を図4と同様位置から見た要部拡大の外観斜視図である。
【図6】図4中の仕切カバー、リザーブタンク、ホース部材等を拡大して示す外観斜視図である。
【図7】仕切カバー、ホース部材からリザーブタンクを取外した状態を示す分解斜視図である。
【図8】仕切カバーを単体で示す外観斜視図である。
【図9】図6中の矢示IX−IX方向から見た仕切カバー、リザーブタンク、ホース部材等を左サイドフレーム、カウンタウエイト、熱交換装置、防塵ネットと一緒に示す横断面図である。
【図10】図9中の仕切カバー、リザーブタンク、ホース部材、防塵ネット等を拡大して示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態に係る建設機械の代表例として、エンジンを搭載した油圧ショベルを例に挙げ、図1ないし図10に従って詳細に説明する。
【0020】
図1において、1は建設機械としてのクローラ式の油圧ショベルを示している。この油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載され、該下部走行体2と共に車体を形成する上部旋回体3と、該上部旋回体3の前,後方向の前側に俯仰動可能に設けられ土砂の掘削作業等を行う作業装置4とにより大略構成されている。
【0021】
ここで、油圧ショベル1は、上部旋回体3が下部走行体2の車幅内にほぼ収まる小旋回機として構成されている。図2に示す如く、この場合の上部旋回体3は、少なくとも後側が下部走行体2の車幅内にほぼ収まるように略円形状をなし、全体としてコンパクトに形成されている。
【0022】
5は上部旋回体3の支持構造体を形成する車体フレームとしての旋回フレームである。図3に示す如く、この旋回フレーム5は、前,後方向に延びる厚肉な鋼板等からなる底板5Aと、該底板5A上に立設され、左,右方向に所定の間隔をもって前,後方向に延びた左縦板5B、右縦板5Cと、該各縦板5B,5Cの外側に間隔をもって配置され、前,後方向に延びた左サイドフレーム5D,右サイドフレーム5Eと、前記底板5A、各縦板5B,5Cから左,右方向に張出し、その先端部に前記左,右のサイドフレーム5D,5Eを支持する複数本の張出しビーム5Fとにより構成されている。図2に示すように、各縦板5B,5Cの前側には、作業装置4が俯仰動可能に取付けられ、後側には後述のエンジン8等が搭載されている。
【0023】
6は旋回フレーム5の左前側に搭載されたキャブである(図1、図2参照)。このキャブ6は、オペレータが搭乗するもので、内部にはオペレータが着座する運転席、走行用の操作レバー、作業用の操作レバー(いずれも図示せず)等が配設されている。
【0024】
7は旋回フレーム5の後部に取付けられたカウンタウエイトである。このカウンタウエイト7は、作業装置4との重量バランスをとるもので、円弧状をした重量物として形成されている。この円弧状のカウンタウエイト7では、その前面部の左,右方向の中央位置が左,右方向に直線状に延びた中央平坦面部7Aとなり、該中央平坦面部7Aの両側が前側に傾斜して延びた左傾斜面部7B、右傾斜面部7Cとなっている。カウンタウエイト7は、旋回動作時でも上部旋回体3の後側が下部走行体2の車幅内にほぼ収まるように、旋回中心に近い位置に配置されている。
【0025】
8は旋回フレーム5の後側に設けられたエンジンで、該エンジン8は、左,右方向に延在する横置き状態に搭載されている。エンジン8の左側には冷却ファン8Aが設けられ、該冷却ファン8Aは、エンジン8を動力源として回転駆動されることにより、外気を冷却風として吸込み、後述する熱交換装置11のラジエータ13、オイルクーラ14、インタクーラ15に供給するものである。一方、エンジン8の前側に設けられた排気マニホールド8Bには、排気ガスを利用してエンジン8の各気筒内に空気を強制的に送り込むための過給機8Cが設けられている。さらに、エンジン8の内部には、冷却水が流通するウォータジャケット(図示せず)が設けられ、このウォータジャケットはラジエータ13に接続されている。
【0026】
9はエンジン8の右側に設けられた油圧ポンプである。この油圧ポンプ9は、エンジン8によって駆動されることにより、後述の作動油タンク26から供給される作動油を昇圧(加圧)して吐出するものである。また、各種アクチュエータを駆動して戻される作動油は、後述のオイルクーラ14によって冷却された後に作動油タンク26に戻される。
【0027】
10はキャブ6の後側から側方に亘って旋回フレーム5に設けられた外装カバーである。この外装カバー10は、旋回フレーム5上に搭載されたエンジン8、油圧ポンプ9、熱交換装置11等を覆うものである。また、外装カバー10は、エンジン8の冷却ファン8Aが回転駆動されたときに、上流側に位置する側面ドア10Aから外気を冷却風として流入させ、各部を冷却して暖まった冷却風を下流側の側面ドア(図示せず)から外部に流出させるものである。
【0028】
11はエンジン8の冷却ファン8Aに対面するように旋回フレーム5の後側に設けられた熱交換装置を示している。この熱交換装置11は、温度上昇した各種の流体を冷却風により冷却するものである。図3、図4、図5に示すように、熱交換装置11は、後述の支持枠体12、ラジエータ13、オイルクーラ14、インタクーラ15等により大略構成されている。
【0029】
12は熱交換装置11の外枠をなす支持枠体である。この支持枠体12は、エンジン8の冷却ファン8Aによる冷却風の流れ方向と直交する方向、即ち、本実施の形態のように左,右方向に延在する横置き状態に搭載されたエンジン8では、上部旋回体3の前,後方向が横幅方向となるように配置されている。この支持枠体12は、ラジエータ13、オイルクーラ14、インタクーラ15等を取囲んで支持する枠構造体として形成されている。
【0030】
図5、図9に示すように、支持枠体12は、ラジエータ13、オイルクーラ14等を横方向から挟む状態で設けられた第1の側面板12A、第2の側面板12Bと、該各側面板12A,12Bの上側位置で該各側面板12A,12B間を連結する上面板12Cと、前記各側面板12A,12Bの下側位置で該各側面板12A,12B間を連結する下面板(図示せず)と、冷却ファン8Aを取囲んで設けられたエンジン8側のファンカバー12D(図3参照)とにより構成されている。そして、支持枠体12は、例えば各側面板12A,12Bの下部等が旋回フレーム5の張出しビーム5Fにボルト止めされている。
【0031】
支持枠体12には、左,右方向の下側の外側位置に各側面板12A,12Bに亘り、後述する防塵ネット16の下端部を支持するためのネット支持部材12Eが前,後方向に延びて設けられている。一方、上面板12Cには、防塵ネット16の上側部分を取付けるためのネット取付ブラケット12Fが例えば前,後方向に離間した2箇所に設けられている。
【0032】
13は支持枠体12内に設けられた熱交換器の1つとなるラジエータである。このラジエータ13は、支持枠体12内のカウンタウエイト7側寄りに位置し、エンジン8の冷却ファン8Aによる冷却風の流れ方向に対し直交するように、旋回フレーム5の前,後方向を横幅方向として配置されている。
【0033】
ラジエータ13は、エンジン8を冷却して温度上昇したエンジン冷却水を冷却するもので、上部タンク13A、下部タンク(図示せず)および放熱部13Bにより大略構成され、各タンク13Aがエンジン8のウォータジャケットに接続される。ラジエータ13は、上部タンク13Aが支持枠体12の上面板12Cにボルト止めされ、下部タンクが下面板にボルト止めされている。
【0034】
ここで、ラジエータ13の上部タンク13Aには、横幅方向のほぼ中間部に位置して給水口13Cが設けられ、該給水口13Cにはキャップ13Dが取付けられている。給水口13Cには、後述するホース部材23の他端部23Bが接続され、冷却水が減少したときには、減少した分の冷却水を後述のリザーブタンク20から補給するようになっている。
【0035】
14は支持枠体12内にラジエータ13と並列に設けられた熱交換器の1つとなるオイルクーラである。このオイルクーラ14は、支持枠体12内のキャブ6側寄りに位置し、ラジエータ13とほぼ同一の平面をなすように配置されている。オイルクーラ14は、ラジエータ13とほぼ同様に、上部タンク、下部タンクおよび放熱部により大略構成され、支持枠体12にボルト止めされている。
【0036】
15はラジエータ13、オイルクーラ14を挟んで冷却ファン8Aと反対側に設けられ熱交換器の1つとなるインタクーラである。このインタクーラ15は、エンジン8の過給機8Cから流入する吸気を冷却してエンジン8の吸気側に向け流出するものである。インタクーラ15は、ラジエータ13とオイルクーラ14の上側位置に対面して配置されている。インタクーラ15は、キャブ6側に位置する前部タンク15Aと、カウンタウエイト7側に位置する後部タンク15Bと、各タンク15A,15B間を前,後方向に延びた放熱部15Cとにより大略構成されている。インタクーラ15は、流入側となる前部タンク15Aがエンジン8の過給機8Cに接続され、流出側となる後部タンク15Bがエンジン8の吸気側に接続されている。
【0037】
このように構成された熱交換装置11は、支持枠体12、ラジエータ13、オイルクーラ14、インタクーラ15等が後述の防塵ネット16等と一緒に、例えば1つの組立ユニットとして旋回フレーム5上に取付けられている。また、熱交換装置11には、例えばインタクーラ15の下側の空きスペースにコンデンサ、燃料クーラ等を配置することもできる。
【0038】
16は熱交換装置11に取付け、取外し可能に設けられた防塵ネットである。この防塵ネット16は、熱交換装置11を挟んでエンジン8の冷却ファン8Aと反対側に位置してラジエータ13、オイルクーラ14、インタクーラ15と対面して配置されている。防塵ネット16は、冷却ファン8Aによって吸込まれた冷却風中の塵埃、虫等を捕らえるものである。図4に示すように、防塵ネット16は、上,下方向に長尺な長方形状に形成された正面ネット部16Aと、該正面ネット部16Aの上部から屈曲してエンジン8側に延びた前,後方向に長尺な長方形状の上面ネット部16Bとにより逆L字状に屈曲して構成されている。
【0039】
ここで、防塵ネット16は、正面ネット部16Aの下端部を支持枠体12のネット支持部材12Eに係合させ、この状態で上面ネット部16Bをネット取付ブラケット12Fに取付ける。これにより、防塵ネット16は、左,右方向の外側となる左側から供給される冷却風中に混在した塵埃、虫等を正面ネット部16Aによって捕らえることができる。一方、上面ネット部16Bは、上側から給される冷却風中の塵埃、虫等を捕らえることができる。
【0040】
防塵ネット16は、後述の理由によってホース部材23を避ける必要がないから、単純な長方形状体の組合せによって形成することができ、構成を簡略化して安価に製造することができる。この場合、図10に示すように、長方形状の防塵ネット16は、正面ネット部16Aのカウンタウエイト7側となる後端面16A1を上,下方向に直線状に形成することができるから、この後端面16A1を後述する仕切カバー17のネット支持板17Eに隙間なく当接させることができる。これにより、図9に示すように、防塵ネット16は、仕切カバー17と協働して後述のネット上流空間Aをネット下流空間Bに対して冷却風の流れを遮蔽することができる。
【0041】
17は熱交換装置11とカウンタウエイト7との間に位置して旋回フレーム5上に立設された仕切カバーである。この仕切カバー17は、カウンタウエイト7の前側となる熱交換装置11の後部位置から旋回フレーム5の左サイドフレーム5Dの後部に向け斜め前側に延びた板状体として構成されている。図8に示すように、仕切カバー17は、平板状の板体からなり、旋回フレーム5に取付けた状態で左,右方向の外側の上側が四角形状の切欠部17A1となった平板部材17Aと、該平板部材17Aの切欠き部17A1を囲むように該平板部材17Aに取付けられた逆L字状の屈曲部材17Bとにより、縦長な長方形状の外形をもって形成されている。
【0042】
平板部材17Aには、その外側の下側部位に取付ブラケット17Cが設けられ、該取付ブラケット17Cは、旋回フレーム5の左サイドフレーム5D後部に取付けることができる。平板部材17Aの外側の中間位置には、後述する第1のホース挿通口18の下側に位置して2個のねじ穴17Dが設けられている。この2個のねじ穴17Dは、後述のタンク取付ブラケット21を取付けるためのボルト22が螺着されるものである。
【0043】
さらに、平板部材17Aには、切欠部17A1の熱交換装置11側の端縁に沿うようにネット支持板17Eが上,下方向に延びて設けられている。このネット支持板17Eは、横断面L字状に折曲げられた長尺な板体からなり、平板部材17Aの前面側に一体的に取付けられている。図10に示すように、ネット支持板17Eは、防塵ネット16を支持枠体12に取付けたときに、正面ネット部16Aの後端面16A1に当接して防塵ネット16を内側から支持するものである。ここで、ネット支持板17Eは、正面ネット部16Aの後端面16A1に当接することにより、隙間から塵埃や虫が通過しないように、ネット上流空間Aとネット下流空間Bとの間で冷却風の流れを遮蔽することができる。
【0044】
仕切カバー17は、平板部材17Aの下端部を旋回フレーム5の張出しビーム5Fにボルト止めし、下側の取付ブラケット17Cを左サイドフレーム5Dの後部にボルト止めすることにより、図2、図9に示すように、カウンタウエイト7の左傾斜面部7Bに対面する位置に、該左傾斜面部7Bと所望の隙間Sをもってほぼ平行に配置されている。この隙間Sには後述するホース部材23の中間部23Cを通すことができる。
【0045】
18は仕切カバー17の左,右方向の外側寄りに位置して設けられた第1のホース挿通口を示している。図6、図7、図8に示すように、この第1のホース挿通口18は、平板部材17Aの切欠部17A1と屈曲部材17Bとによって囲まれた開口として形成されている。第1のホース挿通口18は、仕切カバー17のうち後述のネット上流空間A側に開口して設けられている。これにより、図10に示すように、リザーブタンク20から延びるホース部材23は、第1のホース挿通口18を通して仕切カバー17の後側に配置することができる。このように、ホース部材23の中間部23Cを防塵ネット16を避けた仕切カバー17の後側に配置することにより、防塵ネット16を単純な長方形状に形成することができる。
【0046】
19は仕切カバー17の左,右方向の内側に位置して設けられた第2のホース挿通口を示している(図8参照)。この第2のホース挿通口19は、仕切カバー17のうち後述のネット下流空間B側、即ち、防塵ネット16と熱交換装置11のラジエータ13との間に位置して仕切カバー17の平板部材17Aに横長な長円状の開口として設けられている。これにより、図9、図10に示すように、第1のホース挿通口18を通して仕切カバー17の後側に配置されたホース部材23は、第2のホース挿通口19を通して仕切カバー17の前側に再び配置することができ、ラジエータ13の給水口13Cに接続することができる。
【0047】
ここで、図9に示すように、防塵ネット16よりも冷却風の流れ方向の上流側、具体的には、平面視で仕切カバー17と防塵ネット16の正面ネット部16Aと旋回フレーム5の左サイドフレーム5Dとによって囲まれた範囲がネット上流空間A(図9中に格子模様で示す範囲)となっている。このネット上流空間Aは、エンジン8の冷却ファン8Aが回転駆動されたときに外部から吸込まれる冷却風の流れ方向で、防塵ネット16よりも上流側に位置する領域となっている。
【0048】
一方、平面視で支持枠体12内の空間がネット下流空間B(図9中に点模様で示す範囲)となっている。このネット下流空間Bは、防塵ネット16を通過した冷却風が流通する領域で、ラジエータ13、オイルクーラ14、インタクーラ15が配設されている。即ち、ネット下流空間Bは、冷却風の流れ方向で防塵ネット16よりも下流側に位置する空間となっている。
【0049】
20は仕切カバー17に設けられたリザーブタンクで、該リザーブタンク20は、ラジエータ13に供給する冷却水を貯えるものである。このリザーブタンク20は、ネット上流空間A内に位置して仕切カバー17の平板部材17Aに設けられている。リザーブタンク20は、直方体状の容器20Aからなり、該容器20Aの上面部には給水口20Bが設けられている。この給水口20Bには、キャップ20Cが着脱可能に取付けられ、該キャップ20Cの上部には、容器20A内と連通する2つのホース接続管20D,20Eが設けられている。容器20A内の底部近傍に開口した一方のホース接続管20Dには、後述のホース部材23が接続されている。容器20A内の上部に開口した他方のホース接続管20Eには、後述のドレンホース25が接続されている。
【0050】
図7に示すように、リザーブタンク20は、容器20Aの周囲を囲むようにコ字状のタンク取付ブラケット21を取付け、該タンク取付ブラケット21の両端部に挿通したボルト22を仕切カバー17のねじ穴17Dに螺着することにより、平板部材17Aの前面に取付けられている。
【0051】
23はリザーブタンク20とラジエータ13とを接続するホース部材を示している。このホース部材23は、リザーブタンク20とラジエータ13との間で冷却水を流通させるもので、例えば可撓性を有するゴムホース等によって形成されている。
【0052】
ここで、ホース部材23をリザーブタンク20とラジエータ13とに接続する場合の接続経路について、図9、図10を参照しつつ説明する。ホース部材23は、その一端部23Aがネット上流空間Aに位置してリザーブタンク20の一方のホース接続管20Dに接続され、中間部23Cがネット上流空間Aから第1のホース挿通口18を通して仕切カバー17とカウンタウエイト7の左傾斜面部7Bとの間の隙間Sに配置される。さらに、ホース部材23の中間部23Cは、前記隙間Sから第2のホース挿通口19を通して仕切カバー17の前側に位置するネット下流空間Bに配置され、このネット下流空間Bで他端部23Bがラジエータ13の給水口13Cに接続される。これにより、ホース部材23の中間部23Cは、防塵ネット16の位置で仕切カバー17の後側、即ち、仕切カバー17とカウンタウエイト7との間の隙間Sに退避させることができる。
【0053】
24は第2のホース挿通口19を覆うように仕切カバー17の平板部材17Aの前面に設けられたシール部材を示している。このシール部材24は、例えば弾性を有する発泡ウレタン材料等を用いて直方体状に形成され、切込24Aが形成されている。図6に示すように、シール部材24は、第2のホース挿通口19を覆いつつ、切込24Aにホース部材23を通すことにより、弾性力によってホース部材23との隙間を埋めることができる。これにより、シール部材24は、第2のホース挿通口19とホース部材23との隙間からネット下流空間Bに塵埃、虫等が侵入するのを防止でき、ラジエータ13等を清浄に保つことができる。
【0054】
25はリザーブタンク20の他方のホース接続管20Eに接続されたドレンホースである。このドレンホース25は、容器20Aに対して空気を出し入れ(呼吸)するもので、冷却水の一部が排出された場合でも周囲を汚さないように、その先端部は旋回フレーム5の下側まで延びている。
【0055】
26は油圧ポンプ9の前側に位置して旋回フレーム5上に設けられた作動油タンク(図2参照)で、該作動油タンク26は、油圧ポンプ9に供給する作動油を貯えるものである。なお、27は作動油タンク26の側方に設けられた燃料タンクを示している。
【0056】
本実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、次に、この油圧ショベル1の動作について説明する。
【0057】
まず、オペレータは、キャブ6に搭乗して運転席に着座する。この状態で走行用のレバーを操作することにより、下部走行体2を駆動して油圧ショベル1を前進または後退させることができる。また、運転席に着座したオペレータは、作業用のレバーを操作することにより、作業装置4等を動作させて土砂の掘削作業等を行うことができる。
【0058】
このように油圧ショベル1を稼動しているときには、エンジン8の冷却ファン8Aにより外装カバー10の側面ドア10A等から外部の空気を流入させ、この空気を冷却風として熱交換装置11のラジエータ13、オイルクーラ14、インタクーラ15に供給することにより、それぞれを流れる流体を冷却することができる。
【0059】
一方、防塵ネット16は、正面ネット部16Aの後端面16A1を仕切カバー17のネット支持板17Eに隙間なく当接させているから、ラジエータ13、オイルクーラ14、インタクーラ15の上流側全体を覆うことができる。これにより、防塵ネット16は、冷却風中の塵埃、虫等を確実に捕捉することにより、ラジエータ13、オイルクーラ14、インタクーラ15に塵埃、虫等が付着、堆積するのを防止することができる。特に、虫は油分を含んでおり、高温になったラジエータ13、オイルクーラ14、インタクーラ15に付着すると焼付いて除去するのに手間を要するから、虫の付着を防止することで清掃作業の負担を軽減することができる。
【0060】
かくして、本実施の形態によれば、仕切カバー17には、防塵ネット16よりも冷却風の流れ方向の上流側のネット上流空間A側に位置して第1のホース挿通口18を設けると共に、防塵ネット16よりも下流側のネット下流空間B側に位置して第2のホース挿通口19を設ける構成としている。この上で、リザーブタンク20とラジエータ13とを接続するホース部材23は、ネット上流空間Aに位置するリザーブタンク20から第1のホース挿通口18を通して仕切カバー17の後側、即ち、仕切カバー17とカウンタウエイト7の左傾斜面部7Bとの間の隙間Sに配置し、第2のホース挿通口19を通して仕切カバー17の前側に配置するネット下流空間Bでラジエータ13に接続する構成としている。
【0061】
従って、ホース部材23の中間部23Cは、仕切カバー17の後側に配置することができ、防塵ネット16を配置するのに邪魔にならないようにネット上流空間Aから退避させることができる。これにより、防塵ネット16は、正面ネット部16Aの後端面16A1を仕切カバー17のネット支持板17Eに隙間なく当接させることができ、この部分でのネット上流空間Aとネット下流空間Bとの間の冷却風の流れを遮蔽することができる。
【0062】
この結果、防塵ネット16は、ホース部材23を避けるための切欠き部や屈曲部等を設ける必要がなくなるから、加工や遮蔽が容易な四角形状に形成でき、製造コストを削減することができる。しかも、四角形状の防塵ネット16は、熱交換装置11の上流側を隙間なく覆うことができ、塵埃や虫を捕えるための捕捉性能を向上して熱交換装置11を清浄に保つことができる。また、防塵ネット16は、ホース部材23に邪魔されることなく、熱交換装置11の支持枠体12に対して容易に取付けたり、取外したりすることができる。さらに、ホース部材23を退避させたことにより、防塵ネット16以外にも、例えばコンデンサ、燃料クーラ等をラジエータ13に対面する位置に容易に設けることができる。
【0063】
また、仕切カバー17には、第2のホース挿通口19とホース部材23との隙間を埋めるシール部材24を設けているから、第2のホース挿通口19とホース部材23との隙間から塵埃、虫等が侵入するのを防止でき、熱交換装置11をより一層清浄に保つことができる。
【0064】
なお、実施の形態では、仕切カバー17の第1のホース挿通口18は、第2のホース挿通口19に比較して非常に大きな開口部として形成している。しかし、本発明はこれに限らず、第1のホース挿通口18は、第2のホース挿通口19と同様に、ホース部材23を通すことができる程度の小さな開口として形成してもよい。
【0065】
また、実施の形態では、熱交換装置11にラジエータ13とオイルクーラ14とインタクーラ15とを設けた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば熱交換装置11にラジエータ13とオイルクーラ14だけを設ける構成としてもよい。また、熱交換装置11にラジエータ13だけを設ける構成とすることもできる。一方、空調装置のコンデンサ、燃料クーラ等を配置する構成としてもよい。
【0066】
さらに、実施の形態では、建設機械としてクローラ式の油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばホイール式の下部走行体を備えた油圧ショベルに適用してもよい。さらに、例えば油圧クレーン、ホイールローダ等のエンジンを備えた他の建設機械にも広く適用できるものである。
【符号の説明】
【0067】
1 油圧ショベル(建設機械)
2 下部走行体(車体)
3 上部旋回体(車体)
4 作業装置
5 旋回フレーム(車体フレーム)
7 カウンタウエイト
8 エンジン
8A 冷却ファン
11 熱交換装置
12 支持枠体
13 ラジエータ
14 オイルクーラ
15 インタクーラ
16 防塵ネット
16A 正面ネット部
16A1 後端面
16B 上面ネット部
17 仕切カバー
18 第1のホース挿通口
19 第2のホース挿通口
20 リザーブタンク
23 ホース部材
23C 中間部
24 シール部材
A ネット上流空間
B ネット下流空間
S 仕切カバーとカウンタウエイトとの隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の支持構造体を形成し前側に作業装置が取付けられる車体フレームと、前記作業装置との重量バランスをとるために該車体フレームの後部に設けられたカウンタウエイトと、前記車体フレーム上に設けられたエンジンと、該エンジンを動力源として回転することにより外部の空気を冷却風として吸込む冷却ファンと、該冷却ファンよりも冷却風の流れ方向の上流側に位置して該冷却ファンと対面して設けられ冷却風によってエンジン冷却水を冷却するラジエータを含む熱交換装置と、該熱交換装置を挟んで前記冷却ファンと反対側に位置して該熱交換装置と対面して配置された防塵ネットと、前記熱交換装置と前記カウンタウエイトとの間に立設され前記カウンタウエイトの前側を延びる仕切カバーと、前記防塵ネットよりも冷却風の流れ方向の上流側のネット上流空間に位置して該仕切カバーに設けられ前記ラジエータに供給する冷却水を貯えるリザーブタンクと、該リザーブタンクと前記ラジエータとを接続するホース部材とを備えてなる建設機械において、
前記防塵ネットのカウンタウエイト側の端面と前記仕切カバーとの間は、前記ネット上流空間を前記防塵ネットよりも下流側のネット下流空間に対し冷却風の流れを遮蔽する構成とし、
前記仕切カバーには、前記ネット上流空間側に位置して第1のホース挿通口を設けると共に、前記ネット下流空間側に位置して第2のホース挿通口を設け、
前記ホース部材は、前記リザーブタンクから前記第1のホース挿通口を通して前記仕切カバーの後側に配置し、前記第2のホース挿通口を通して前記仕切カバーの前側に配置して前記ラジエータに接続する構成としたことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記仕切カバーには、前記第2のホース挿通口と前記ホース部材との隙間を埋めるシール部材を設ける構成としてなる請求項1に記載の建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−91926(P2013−91926A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233139(P2011−233139)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】