説明

弁装置の固定構造及びマニュアル弁

【課題】 取付スペースの小型化を図るとともにその組付け性を向上させることのできる弁装置の固定構造を提供すること。
【解決手段】 栓体ハウジング16には、外側面16aに開口する第1凹部21と、該第1凹部21の底面21aに凹設された第2凹部22とからなる収容凹部17が形成され、第2凹部22には、逆止弁8、9が配設され、第1凹部21には、マニュアル弁14が配設される。第1凹部21の開口部近傍の内周面には螺子溝が螺刻された雌螺子部45が形成され、マニュアル弁14は、そのハウジング35が、この雌螺子部45に螺着されることにより第1凹部21内に固定される。そして、各逆止弁8,9は、第2凹部22の底面22aとハウジング35の底部35aとの間に挟持され、その締結力により第2凹部22内に押圧固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素等の高圧ガスを貯蔵するガスタンクに用いられる弁装置の固定構造及びマニュアル弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ガスタンクの開口部を閉塞する栓体には、ガスタンク内部とその外部とを連通する複数の流路、及び該各流路内の高圧ガスの流通を遮断するマニュアル弁等、複数の弁装置が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−210296号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、近年、燃料電池車等に搭載される水素用ガスタンクにおいては、貯蔵容量の増加を図るため一層の高圧化が進められており、その高圧化に応じたより高い信頼性、或いは高精度の調圧性能を実現すべく、上記弁装置数も増加傾向にある。例えば、ガスタンク内に水素ガスを充填する充填路には、上記マニュアル弁の他、貯蔵水素の逆流を防止する逆止弁が設けられるが、高圧化に応じた信頼性を確保するためには、この逆止弁を多重化して冗長性を持たせることが望ましい。しかしながら、このような多数の弁装置を上記従来技術のごとく既存の固定構造で各々配置するとすれば、栓体の肥大化を招くことになり、加えてその組付けも煩雑なものとなるという問題がある。
【0004】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、取付スペースの小型化を図るとともにその組付け性を向上させることのできる弁装置の固定構造及びマニュアル弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、高圧ガスを貯蔵するガスタンクの開口部を閉塞する栓体ハウジングに複数の弁装置を固定する弁装置の固定構造であって、前記栓体ハウジングの外側面に開口する収容凹部を形成するとともに該収容凹部の内周面に雌螺子部を形成し、該雌螺子部に前記栓体ハウジングの外側から開閉操作可能なマニュアル弁を螺着することにより、該マニュアル弁と前記収容凹部との間に少なくとも一の弁装置を押圧固定すること、を要旨とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、前記マニュアル弁は、有底筒状をなし内部に前記高圧ガスの流路が形成されるとともに底部には弁座が形成された弁ハウジングと、前記弁座に対して着離可能に弁ハウジング内に設けられた弁体と、前記弁ハウジングの開口部に回動操作可能に螺着されるとともに一端が前記弁体に当接される操作螺子とを備え、前記弁体は、前記回動操作に基づき前記弁座に着離されるものであって、前記弁ハウジングの外周面に形成された雄螺子部と前記雌螺子部とが螺合されることにより前記収容凹部に螺着され、前記底部にて前記弁装置を押圧することにより該弁装置を固定すること、を要旨とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、前記弁ハウジングは、前記底部を有する第1プラグと、前記操作螺子が螺着される第2プラグとからなり、前記第1プラグ及び前記第2プラグは、各々個別に前記収容凹部に螺着されること、を要旨とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、前記マニュアル弁と前記収容凹部との間に押圧固定される前記弁装置は、有底筒状のハウジングと、該ハウジング内に軸線方向に沿って摺動可能に収容された弁体と、前記ハウジングの開口部を閉塞するとともに前記弁体が着離される弁座が形成された蓋体とを備え、ガスタンク内のガス圧により前記弁体が前記弁座に着座する逆止弁であって、前記蓋体は、弾性材料からなり、前記マニュアル弁の締結力に基づき弾性変形することにより、前記ハウジングの開口部をシールすること、を要旨とする。
【0009】
請求項5に記載の発明は、有底筒状をなし内部に流路が形成されるとともに底部には弁座が形成された弁ハウジングと、前記弁座に対して着離可能に弁ハウジング内に設けられた弁体と、前記弁ハウジングの開口部に回動操作可能に螺着されるとともに一端が前記弁体に当接される操作螺子とを備え、前記弁体は、前記回動操作に基づき前記弁座に着離されるマニュアル弁であって、前記弁ハウジングは、外周面に雄螺子部を有し、被装着体の収容凹部内に螺着されることにより、該収容凹部と前記底部との間に固定対象物を押圧固定可能であること、を要旨とする。
【0010】
請求項6に記載の発明は、前記弁ハウジングは、前記底部を有する第1プラグと、前記操作螺子が螺着される第2プラグとからなり、前記第1プラグ及び前記第2プラグは、各々個別に前記螺着が可能であること、を要旨とする。
【0011】
(作用)
マニュアル弁は、ガスタンク外部からの開閉操作を可能とすべくその外部に露出される部分(操作螺子)を有する。そのため、栓体ハウジングにマニュアル弁を配設する際には、必然的に栓体ハウジングの外側面に開口する収容凹部を形成することになる。
【0012】
従って、上記請求項1〜請求項4に示すように、マニュアル弁とともに栓体ハウジングに配設される弁装置をこの収容凹部内に集約し、マニュアル弁を固定(螺着)する際の締結力により、収容凹部とマニュアル弁との間に弁装置を押圧固定することで、その取付スペースを最小化することができる。更に、栓体ハウジングの外側から弁装置を収容凹部内に順次嵌挿し、その後同収容凹部内にマニュアル弁を螺着するだけで済むため、その組付けも容易なものとなる。
【0013】
尚、請求項2に示すように、収容凹部内に螺着された弁ハウジングの締結力によりその底部にて弁装置を押圧固定するとともに、弁ハウジングの開口部に螺着された操作螺子の回動操作により弁体を弁座に着離させる構成とした場合、操作螺子とともに弁ハウジングが回転する、所謂「連れ回り」が発生する可能性がある。そのため、この連れ回りに伴う締結力の過剰による弁装置の破損、或いはその不足によるシール性の毀損といった不具合を防止するため、操作螺子の回動操作に要するトルクは、弁ハウジングの締結トルクよりも低く設定することが望ましい。
【0014】
この点、請求項3に記載の構成によれば、弁体を操作螺子側に押圧するガス圧が極めて高く上記のような連れ回りが発生しやすい状態にある場合であっても、弁装置を押圧する第1プラグと、操作螺子が螺着される第2プラグとが別体であり、且つ各々個別に螺着されるため、第2プラグが連れ回りしたとしても、第1プラグには影響を及ぼさない。従って、弁装置を固定する押圧力を常に最適な値に維持することができ、更に、第2プラグの締結トルクが第1プラグに影響しないことから、第2プラグをより強固に締結して連れ回りの発生自体を抑制することができる。
【0015】
また、請求項4に記載の構成によれば、逆止弁を簡素な構成で収容凹部内に固定し、及びそのシール性を確保することができる。尚、このような構成と採用した場合、上記連れ回りの影響が顕著に現れるため、上記請求項3の構成を併用するとよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、取付スペースの小型化を図るとともにその組付け性の向上を可能とする弁装置の固定構造及びマニュアル弁を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(第1の実施形態)
以下、本発明を水素用ガスタンクに具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、本実施形態のガスタンク1は、水素ガスを貯蔵するタンク本体2と、その開口部2aを閉塞する栓体3とを備えており、同栓体3には、ガスタンク1(タンク本体2)の内部とその外部を連通する複数の流路及び該各流路内の水素ガスの流通を制御する複数の弁装置が設けられている。
【0018】
具体的には、本実施形態のガスタンク1では、栓体3には、ガスタンク1内に水素ガスを充填するための充填路5、ガスタンク1内の水素ガスを外部に供給するための供給路6、及びガスタンク1内の水素ガスを外部に放出するための開放路7が形成されている。
【0019】
また、充填路5には、ガスタンク1内に貯蔵された水素ガスの逆流を防止するための2つの逆止弁8,9が配置されており、供給路6には、電磁開閉弁10及び減圧弁12が配置されている。そして、これらの各流路(5〜7)には、該各流路内の水素ガスの流通を遮断すべく外部から手動により操作可能なマニュアル弁13〜15が配置されている。
【0020】
図2に示すように、栓体3を構成する栓体ハウジング16には、その外側面16aに開口する収容凹部17が形成されており、同収容凹部17には、充填路5を構成する第1流路18及び第2流路19が連通されている。そして、充填路5に配置される上記各逆止弁8、9及びマニュアル弁14は、この収容凹部17内に固定されている。
【0021】
詳述すると、図3に示すように、収容凹部17は、栓体ハウジング16の外側面16aに開口する第1凹部21と、該第1凹部21の底面21aに凹設された第2凹部22とからなり、第1凹部21の底面21a近傍の側壁21bにはタンク外部に連通する第1流路18が開口され、第2凹部22の底面22aにはタンク内部に連通する第2流路19が開口されている。そして、第2凹部22には、逆止弁8、9が配設され、第1凹部21には、マニュアル弁14が配設されている。
【0022】
各逆止弁8,9は、有底筒状をなすハウジング23,24と、該各ハウジング23,24の開口部を閉塞する蓋体25,26と、各ハウジング23,24内にその軸線方向に沿って移動可能に収容された弁体27,28とを備えている。
【0023】
各ハウジング23,24の底部23a,24a、及び各蓋体25,26には、各ハウジング23,24内と外部とを連通する貫通孔29,30及び31,32が形成されており、これら各貫通孔29,30及び31,32は、それぞれ各ハウジング23,24内に収容された弁体27,28と同軸となる位置に形成されている。そして、各蓋体25,26に設けられた貫通孔31,32の周縁には、各弁体27,28が接離する弁座33,34が形成されている。
【0024】
各逆止弁8,9は、その(各ハウジング23,24の)底部23a,24aが第2流路19側となるように、第2凹部22内に配設されている。具体的には、奥側(底面22a側、同図中左側)の逆止弁8は、その底部23aが第2凹部22の底面22aに当接するように配設され、手前側(開口部側、同図中右側)の逆止弁9は、その底部24aが奥側の逆止弁8の蓋体25に当接するように配設されている。尚、各逆止弁8,9の外周にはシール部材としてOリング8c,9cが嵌装されている。そして、第2流路19と逆止弁8の貫通孔29、及び逆止弁8の貫通孔31と逆止弁9の貫通孔30とが連通され、タンク本体2内のガス圧によって各弁体27,28が弁座33,34に着座することにより、水素ガスの逆流が防止されるようになっている。
【0025】
一方、マニュアル弁14は、有底筒状をなすハウジング35と、ハウジング35内にその軸線方向に沿って摺動可能に収容された弁体36と、該弁体36を操作するための操作螺子37とを備えており、ハウジング35は、その底部35aが逆止弁9の蓋体26に当接するように第1凹部21内に配設されている。そして、ハウジング35の底部35aには、逆止弁9の貫通孔32に連通される貫通孔38が形成され、底部35a近傍の側壁35bには第1流路18に連通される貫通孔39が形成されている。そして、弁体36の外周には、シール部材としてOリング36cが嵌装されている。
【0026】
即ち、第1流路18に導入された水素ガスは、ハウジング35の側壁35bに形成された貫通孔39を介して同ハウジング35内に流入する。そして、その底部35aに形成された貫通孔38から各逆止弁8,9を介して第2流路19に流入することによりタンク本体2内に充填されるようになっている。
【0027】
本実施形態では、ハウジング35の底部35aに形成された貫通孔38の周縁には、弁体36が着離される弁座40が形成されており、弁体36は、弁バネ41の弾性力によりこの弁座40から離間する方向、即ちハウジング35の開口部35c側(図中右方向)に向かって付勢されている。
【0028】
また、ハウジング35の開口部35cの内周面には、螺子溝が螺刻された雌螺子部42が形成されており、操作螺子37は、その基端部37bがガスタンク1の外部に露出された状態で同雌螺子部42に螺着されている。操作螺子37の基端部37bには、六角穴43が形成されており、操作螺子37は、この六角穴43により回動操作可能、即ちその軸線方向への移動が操作可能となっている。そして、操作螺子37の先端部37aには、弁バネ41に付勢された弁体36の基端部36bが当接されている。尚、本実施形態では、操作螺子37の先端部37aは、先端側に向かって凸となる半球状に形成されており、弁体36の基端部36bに対して点接触で当接されている。
【0029】
即ち、弁体36は、操作螺子37が回動操作されることにより、同操作螺子37とともにその軸線方向(図中左右方向)に移動し、その先端部36aが弁座40に対して着離する。そして、操作螺子37がハウジング35内に没入する方向に回動操作されることにより、その先端部36aが弁座40に着座し、これによりハウジング35内と逆止弁9とを連通する貫通孔38が閉塞されることにより、充填路5内における水素ガスの流通が遮断されるようになっている。
【0030】
次に、本実施形態のガスタンクにおける弁装置の固定構造について説明する。
本実施形態では、第1凹部21の開口部近傍の内周面には螺子溝が螺刻された雌螺子部45が形成されており、マニュアル弁14は、そのハウジング35が、この雌螺子部45に螺着されることにより第1凹部21内に固定されている。そして、各逆止弁8,9は、第2凹部22の底面22aとハウジング35の底部35aとの間に挟持され、その締結力により第2凹部22内に押圧固定されている。
【0031】
詳述すると、本実施形態では、マニュアル弁14のハウジング35は、底部35aを有する第1プラグ46と、操作螺子37が螺着される第2プラグ47とにより構成されており、これら第1プラグ46及び第2プラグ47の外周面には、それぞれ螺子山が螺刻された雄螺子部48,49が形成されている。尚、本実施形態では、弁体36は第1プラグ46内に収容されている。そして、第1プラグ46及び第2プラグ47は、その雄螺子部48,49が第1凹部21の内周面に形成された雌螺子部45に螺合されることにより、それぞれ第1凹部21内に固定(螺着)されている。
【0032】
具体的には、弁装置の組付け時には、先ず、第2凹部22内に各逆止弁8,9が嵌挿される。続いて、第2凹部22内に第1プラグ46が螺着され、その底部35aと第2凹部22の底面22aとの間に各逆止弁8,9が挟持されることにより、その締結力により同第2凹部22内に各逆止弁8,9が押圧固定される。尚、本実施形態では、各逆止弁8,9の蓋体25,26は、弾性材料(ポリイミド樹脂)により形成されており、該各逆止弁8,9のハウジング23,24の開口部に設けられた取着凹部23b,24b内に配設されることにより該各ハウジング23,24の開口部を閉塞している。そして、これら各蓋体25,26は、第1プラグ46の締結力(具体的には、それぞれ当接する逆止弁9の底部24a又は第1プラグ46の底部35a)により押圧され弾性変形することにより、そのシール性を確保するようになっている。また、第1プラグ46の外周面にはシール部材としてOリング46cが嵌装されている。そして、第1プラグ46により各逆止弁8,9が固定された後、第2凹部22内に第2プラグ47が螺着されるようになっている。尚、第2プラグ47は、第1プラグ46との間に若干の隙間が開くように螺着されている。
【0033】
また、本実施形態では、第1プラグ46の開口端には六角穴50が形成され、第2プラグ47の外側開口部47bの外周縁には、その外周が六角形状に形成されたフランジ部51が設けられている。そして、第1プラグ46及び第2プラグ47は、それぞれ、その六角穴50又はフランジ部51が操作されることにより、第1凹部21内に螺着されるようになっている。
【0034】
(第2の実施形態)
以下、本発明を具体化した第2の実施形態を図面に従って説明する。尚、説明の便宜上、第1の実施形態と同一の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図4に示すように、本実施形態では、マニュアル弁52は、各逆止弁8、9を押圧する底部53a及び操作螺子37が螺着される開口部53cが一体に形成されたハウジング53を有している。そして、このハウジング53が第1凹部21内に螺着される締結力により第2凹部22内に各逆止弁8、9を押圧固定するようになっている。
【0035】
〔第1の実施形態(図3)及び第2の実施形態(図4)の特徴(作用・効果)〕
以上、上記各実施形態によれば、以下のような特徴を得ることができる。
(1)栓体ハウジング16には、外側面16aに開口する第1凹部21と、該第1凹部21の底面21aに凹設された第2凹部22とからなる収容凹部17が形成され、第2凹部22には、逆止弁8、9が配設され、第1凹部21には、マニュアル弁14(52)が配設される。第1凹部21の開口部近傍の内周面には螺子溝が螺刻された雌螺子部45が形成され、マニュアル弁14(52)は、そのハウジング35(53)が、この雌螺子部45に螺着されることにより第1凹部21内に固定される。そして、各逆止弁8,9は、第2凹部22の底面22aとハウジング35(53)の底部35a(53a)との間に挟持され、その締結力により第2凹部22内に押圧固定される。
【0036】
即ち、マニュアル弁14(52)は、ガスタンク1の外部からの開閉操作を可能とすべくガスタンク1の外部に露出される操作螺子37を有する。そのため、栓体ハウジング16にマニュアル弁14(52)を配設する際には、必然的に栓体ハウジング16の外側面16aに開口する収容凹部17を形成することになる。従って、上記構成のように、マニュアル弁14(52)とともに充填路5上に配置される各逆止弁8、9を収容凹部17内に集約し、マニュアル弁14(52)を固定(螺着)する際の締結力により、収容凹部17とマニュアル弁14(52)との間に各逆止弁8、9を押圧固定する構成とすることで、その取付スペースを最小化することができる。更に、栓体ハウジング16の外側から各逆止弁8、9を第2凹部22内に順次嵌挿し、第1凹部21にマニュアル弁14(52)を螺着するだけで済むため、その組付け性を容易化することができる。
【0037】
(2)上記第1の実施形態では、マニュアル弁14のハウジング35は、各逆止弁8、9を押圧する底部35aを有する第1プラグ46と、操作螺子37が螺着される第2プラグ47とにより構成され、これら第1プラグ46及び第2プラグ47は、各々個別に第1凹部21内に固定(螺着)される。
【0038】
即ち、マニュアル弁14(52)は、第1凹部21内に螺着されたハウジング35(53)の締結力により各逆止弁8、9を押圧固定するとともに、このハウジング35の開口部35c(53c)に螺着された操作螺子37を回動操作することにより、弁体36を弁座40に着離させる構造である。そのため、この操作螺子37を回動操作する際に、操作螺子37とともにハウジング35が回転する、所謂「連れ回り」が発生する可能性がある。
【0039】
この点において、第1の実施形態のマニュアル弁14では、各逆止弁8、9を押圧する底部35aを有する第1プラグ46と、操作螺子37が螺着される第2プラグ47とを別体とし、各々個別に第1凹部21内に螺着するため、操作螺子37を回動操作する際に第2プラグ47が連れ回りしたとしても、第1プラグ46は連れ回りしない。従って、各逆止弁8、9を固定する押圧力を常に最適な値に維持することができる。そして、第2プラグ47の締結トルクが各逆止弁8、9を固定する押圧力に影響しないことから、第2プラグ47をより強固に締結して連れ回りの発生自体を抑制することができる。尚、上記第1の実施形態では、第2プラグ47に形成されたフランジ部51が栓体ハウジング16の外側面16aに圧接させることにより、第2プラグ47をより強固に締結するようになっている。
【0040】
特に、水素用ガスタンクのように、ガス圧が超高圧である場合、弁体36が操作螺子37側に押圧され、その圧力によって操作螺子37が回動しにくくなり、上記のような連れ回りが発生しやすい状態にある。また、ハウジング35の締結力によって、各逆止弁8,9の蓋体25,26を弾性変形させることによりそのシール性を確保する構成である。そのため、上記構成によって、より顕著な効果を得ることができる。
【0041】
尚、第2の実施形態では、こうした連れ回りに伴う締結力の過剰による各逆止弁8、9の破損、或いはその不足により各逆止弁8、9との間のシール性が毀損等の不具合を防止するため、操作螺子37の回動操作に要するトルクは、ハウジング35の締結トルクよりも低く設定することが望ましい。
【0042】
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記各実施形態では、本発明を水素用ガスタンクに具体化したが、これ以外の高圧ガスタンク等、その他の被装着体に具体化してもよい。
【0043】
・上記各実施形態では、充填路5に配置される逆止弁8,9及びマニュアル弁14(52)の固定構造に具体化したが、その他の流路に配置される弁装置の固定構造に具体化してもよい。即ち、マニュアル弁により押圧固定される弁装置は、逆止弁以外のものであってもよい。
【0044】
・また、上記各実施形態では、ハウジング35(53)の締結力によって、各逆止弁8,9の蓋体25,26を弾性変形させることによりそのシール性を確保する構成としたが、単に弁装置自体を固定するのみであってもよい。
【0045】
・第1の実施形態では、弁体36は第1プラグ46内に収容されることとしたが、弁体36が第2プラグ47内に収容されるように、第1プラグ及び第2プラグを形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】第1の実施形態のガスタンクの回路図。
【図2】第1の実施形態のガスタンクの開口部を閉塞する栓体の部分断面図。
【図3】第1の実施形態の弁装置の固定構造を示す断面図。
【図4】第2の弁装置の固定構造を示す断面図。
【符号の説明】
【0047】
1…ガスタンク、2…タンク本体、2a…開口部、3…栓体、5…充填路、8,9…逆止弁、13〜15,52…マニュアル弁、16…栓体ハウジング、16a…外側面、17…収容凹部、18…第1流路、19…第2流路、21…第1凹部、21a…底面、22…第2凹部、22a…底面、23,24…ハウジング、23a,24a…底部、23b,24b…取着凹部、25,26…蓋体、27,28…弁体、29,30…貫通孔、31,32…貫通孔、33,34…弁座、35,53…ハウジング、35a,53a…底部、35c,53c…開口部、36…弁体、37…操作螺子、37a…先端部、37b…基端部、38,39…貫通孔、40…弁座、42…雌螺子部、45…雌螺子部、46…第1プラグ、47…第2プラグ、47b…底側開口部、48,49…雄螺子部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧ガスを貯蔵するガスタンクの開口部を閉塞する栓体ハウジングに複数の弁装置を固定する弁装置の固定構造であって、
前記栓体ハウジングの外側面に開口する収容凹部を形成するとともに該収容凹部の内周面に雌螺子部を形成し、該雌螺子部に前記栓体ハウジングの外側から開閉操作可能なマニュアル弁を螺着することにより、該マニュアル弁と前記収容凹部との間に少なくとも一の弁装置を押圧固定すること、を特徴とする弁装置の固定構造。
【請求項2】
請求項1に記載の弁装置の固定構造において、
前記マニュアル弁は、有底筒状をなし内部に前記高圧ガスの流路が形成されるとともに底部には弁座が形成された弁ハウジングと、前記弁座に対して着離可能に弁ハウジング内に設けられた弁体と、前記弁ハウジングの開口部に回動操作可能に螺着されるとともに一端が前記弁体に当接される操作螺子とを備え、前記弁体は、前記回動操作に基づき前記弁座に着離されるものであって、
前記弁ハウジングの外周面に形成された雄螺子部と前記雌螺子部とが螺合されることにより前記収容凹部に螺着され、前記底部にて前記弁装置を押圧することにより該弁装置を固定すること、を特徴とする弁装置の固定構造。
【請求項3】
請求項2に記載の弁装置の固定構造において、
前記弁ハウジングは、前記底部を有する第1プラグと、前記操作螺子が螺着される第2プラグとからなり、前記第1プラグ及び前記第2プラグは、各々個別に前記収容凹部に螺着されること、を特徴とする弁装置の固定構造。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の弁装置の固定構造において、
前記マニュアル弁と前記収容凹部との間に押圧固定される前記弁装置は、
有底筒状のハウジングと、該ハウジング内に軸線方向に沿って摺動可能に収容された弁体と、前記ハウジングの開口部を閉塞するとともに前記弁体が着離される弁座が形成された蓋体とを備え、ガスタンク内のガス圧により前記弁体が前記弁座に着座する逆止弁であって、
前記蓋体は、弾性材料からなり、前記マニュアル弁の締結力に基づき弾性変形することにより、前記ハウジングの開口部をシールすること、を特徴とする弁装置の固定構造。
【請求項5】
有底筒状をなし内部に流路が形成されるとともに底部には弁座が形成された弁ハウジングと、前記弁座に対して着離可能に弁ハウジング内に設けられた弁体と、前記弁ハウジングの開口部に回動操作可能に螺着されるとともに一端が前記弁体に当接される操作螺子とを備え、前記弁体は、前記回動操作に基づき前記弁座に着離されるマニュアル弁であって、
前記弁ハウジングは、外周面に雄螺子部を有し、被装着体の収容凹部内に螺着されることにより、該収容凹部と前記底部との間に固定対象物を押圧固定可能であること、
を特徴とするマニュアル弁。
【請求項6】
請求項5に記載のマニュアル弁において、
前記弁ハウジングは、前記底部を有する第1プラグと、前記操作螺子が螺着される第2プラグとからなり、前記第1プラグ及び前記第2プラグは、各々個別に前記螺着が可能であること、を特徴とするマニュアル弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−144841(P2006−144841A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−332793(P2004−332793)
【出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【出願人】(000003470)豊田工機株式会社 (198)
【出願人】(000241267)豊興工業株式会社 (63)
【Fターム(参考)】