説明

引き出し付き家具

【課題】この発明は引き出しが飛び出すのを防止するとともに、引き出すときの操作を容易に行なえるようにした引き出し付き家具を提供することにある。
【解決手段】前面が開口し内部に引き出し11が出し入れ可能に設けられた家具本体2と、引き出しの下部に前後方向に貫通して移動可能に設けられた駆動軸22と、引き出しの前面下部に駆動軸の一端に連結して設けられた把手24と、引き出しの背面に回動可能に設けられ引き出しが家具本体に収納されているときに家具本体の後部内面に設けられたストッパ部材44に係合して引き出しの移動を阻止する係止体42と、駆動軸の引き出しの背面から突出した他端に設けられ把手に指を掛けて引き出しを引き出すときに、駆動軸が把手とともに引き出しに対して移動することで係止体を係合部との係合が外れる方向に回動させる解除部材32とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は箱型状の家具本体に引き出しが出し入れ可能に設けられた引き出し付き家具に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば箪笥などの家具は、前面が開口した箱型状の家具本体を有し、この家具本体内には複数の引き出しが出し入れ可能に収容されている。このような引き出し付きの家具においては、上記引き出しが家具本体に対して出し入れ自在な構造であるため、たとえば地震などで家具が前後方向に大きく揺れると、引き出しが飛び出してくるということがあった。
【0003】
そこで、地震などで家具が前後方向に大きく揺れても、引き出しが飛び出すことのないようにした家具が開発されており、そのような先行技術は、たとえば特許文献1に示されている。
【0004】
特許文献1に示された引き出し付きの家具は、引き出しの前板に凹部を形成し、この凹部の一部を覆う状態で上記前板に把手を設ける。上記凹部には押圧部材を上下動可能に設け、さらに前板の凹部よりも後方には下端を引き出しの下端面に開口した縦孔を形成する。
【0005】
上記縦孔には上下動可能に係止棒を挿通し、この係止棒の上端部を上記縦孔と上記凹部を連通する横孔から上記凹部に突出させ、この突出部分を上記押圧部材に連結する。上記係止棒の下端は上記引き出しを支持する棚板の上記縦孔の下端に対向する位置に形成された係止孔に係合する。
【0006】
したがって、上記係止棒の下端が上記係止孔に係合していれば、上記引き出しが家具本体から飛び出してくるのが防止される。また、上記押圧部材を押し上げて係止棒を連動させ、その係止棒の下端を棚板の係止孔から外した状態で、上記把手に指を掛けて引き出しを前方へ引けば、その引き出しを前方へ引き出すことができるようになっている。
【特許文献1】特開平8−280460号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に示された構成の家具によると、引き出しを引き出す際、まず押圧部材を上昇方向へ押圧して係止棒を上昇させ、その係止棒と係合孔との係合を外した後、把手に指を掛けて引き出しを引き出し方向に引くことになる。
【0008】
上記押圧部材を移動させる方向は上下方向であり、上記引き出しを引き出す方向は水平方向である。そのため、上記引き出しを引き出すためには、押圧部材を移動させる上昇方向の操作と、引き出しを引き出すための水平方向の操作を順次行なわなければならないから、引き出しの引き出し操作が2段階となり、操作がし難いということがあった。
【0009】
しかも、引き出しの前板に押圧部材を設けることがきる凹部を形成したり、この凹部の奥にさらに係止棒を挿通する縦孔を形成しなければならないため、引き出しの前板の厚さをかなり厚くしなければならなくなり、コストが上昇するということもある。
【0010】
この発明は、引き出しを家具本体から飛び出さないよう確実に保持することができ、しかも引き出す際には簡単な操作で行えるようにした引き出し付き家具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、出し入れ可能な引き出しを有する引き出し付き家具であって、
前面が開口し内部に上記引き出しが出し入れ可能に設けられた家具本体と、
上記引き出しの下部に前後方向に貫通して移動可能に設けられた駆動軸と、
上記引き出しの前面下部に上記駆動軸の一端に連結して設けられた把手と、
上記引き出しの背面に回動可能に設けられこの引き出しが上記家具本体に収納されているときに上記家具本体の後部内面に設けられた係合部に係合して上記引き出しの移動を阻止する係止体と、
上記駆動軸の上記引き出しの背面から突出した他端に設けられ上記把手に指を掛けて上記引き出しを引き出すときに、上記駆動軸が上記把手とともに上記引き出しに対して移動することで上記係止体を上記係合部との係合が外れる方向に回動させる解除部材と
を具備したことを特徴とする引き出し付き家具にある。
【0012】
上記把手には、上記引き出しの前面に設けられたガイド孔に移動可能に係合して上記把手が上記駆動軸を中心にして回転するのを阻止するガイドピンが設けられていることが好ましい。
【0013】
上記駆動軸を上記引き出しの背面方向へ付勢した第1のばねと、上記駆動軸が上記第1のばねの付勢力によって移動した状態において上記係止体を上記係合部に係合する回動方向に付勢する第2のばねが設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、把手に指を掛けて引き出しを引き出す方向へ引くだけで、把手に連結された駆動軸が引き出しに対して移動して係止体と係合部との係合が解除されるから、それまで移動不能に保持されていた引き出しを引き出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の一実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は家具としての箪笥1を示す斜視図であって、この箪笥1は前面が開口した箱型状の家具本体2を有する。この家具本体2は、天板3、一対の側板4、背面板5(図2に示す)及び底板(図示せず)形成されている。この家具本体2の前面開口には幅方向に沿う複数の仕切り桟7(図2と図3に1つだけ図示)が上下方向に所定間隔で架設されている。
なお、家具本体2の前面下部には、家具本体2の内部が露出するのを防止する下部覆い板8が設けられている。
【0016】
上記家具本体2の各仕切り桟7によって仕切られた部分にはそれぞれ引き出し11が出し入れ可能に収容されている。上記引き出し11は図2乃至図4に示すように前板12と後板13の幅方向の両端部が側板14によって連結されて矩形枠体が形成されているとともに、この枠体の下面開口部には底板15が設けられている。それによって、引き出し11は上面が開口した箱型状に形成されている。
【0017】
上記前板12の前面にはこの前板12よりも大きい前面飾り板17が周辺部を上記前板12の周縁部から外方へ突出させて設けられている。一対の側板14の外面の高さ方向中途部にはインナガイド18が長手方向に沿って設けられ、このインナガイド18は上記家具本体2の一対の側板4の内面に前後方向に沿って設けられたアウタガイド19にスライド可能に係合している。
【0018】
それによって、各引き出し11は上記家具本体2に対して出し入れ可能となっており、家具本体2内へ収納したときに上記前面飾り板17の下端部内面が上記仕切り桟7に当たることで、収納位置が規制されるようになっている。
【0019】
図2と図3に示すように、上記前面飾り板17、前板12及び後板13の下端部で、上記底板15よりも下側の部分にはそれぞれ通孔21が穿設されている。これらの通孔21には駆動軸22がスライド可能に挿通されている。つまり、駆動軸22は引き出し11の前後方向に貫通して設けられている。
【0020】
上記駆動軸22の上記前面飾り板17から突出した先端は下面に手掛け凹部23が形成された把手24が背面の幅方向中途部を連結して設けられている。この把手24の背面の幅方向両端部には図4に示すように一対のガイドピン25が突設されていて、これらガイドピン25は上記前面飾り板17の前面に開口して形成された一対のガイド孔26にスライド可能に挿通されている。
【0021】
それによって、上記把手24は上記駆動軸22の軸芯を中心にして回転するのが阻止された状態で、上記前面飾り板17に対して接離する方向に移動可能となっている。
なお、上記前面飾り板17の前面下部の上記把手24の両側には、図1に示すように帯板状の飾り桟27が設けられている。
【0022】
図5(a),(b)に示すように、上記駆動軸22の上記引き出し11の後板13から突出した後端部にはワッシャ31と、このワッシャ31よりも大径な円盤状の解除部材32とが第1のばね33を介してスライド可能に外嵌されている。上記駆動軸22の後端部にはめねじ34が形成され、このめねじ34にはナット35が螺合されている。
【0023】
それによって、上記駆動軸22は上記第1のばね33の復元力によって後退方向に弾性的に付勢され、その付勢力によって先端に連結された把手24が上記前面飾り板17に圧接している。なお、第1のばね33は引き出し11をスライドさせる抵抗よりも弱い力で圧縮変形するものが用いられている。
【0024】
上記引き出し11の後板13の外面下部の幅方向中央部、つまり上記駆動軸22の上記後板13から突出した後端部に対応する部分には図5(a),(b)に示すように一対の支持片36(一方のみ図示)が設けられた基部材37がねじ38によって取付け固定されている。
【0025】
上記一対の支持片36には支軸39が架設されていて、この支軸39には帯板状の作動杆41の一端部が回動可能に支持されている。この作動杆41の一端部には先端部に斜面42aを有する鉤部42bが設けられた係止体42の基端部が連結固定されている。
【0026】
上記支軸39には上記作動杆41と上記基部材37との間に第2のばね43が設けられ、上記係止体42を図5(a)に示す状態で弾性的に保持している。その状態において、上記係止体42の先端部の鉤部42bは係合部としてのL字状のストッパ部材44の一辺に所定間隔で対向している。
【0027】
上記ストッパ部材44は上記家具本体2の背面板5の内面に設けられた桟45に他辺がねじ46によって取付け固定されている。それによって、上記家具本体2が地震などで前後方向に大きく揺れて上記引き出し11が家具本体2から飛び出す方向にスライドしようとすると、上記係止体42の鍔部42aが上記ストッパ部材44に係合して上記引き出し11が家具本体2から飛び出すのが阻止されるようになっている。
【0028】
上記引き出し11を家具本体2から引き出す場合には、引き出し11の前面に設けられた把手24に指を掛けて引き出し11を引き出す方向へ引く。把手24を引くと、引き出し11が前方へスライドする前に図3と図5(b)に示すように上記把手24に連結された駆動軸22が第1のばね33を圧縮変形させて把手4とともに前方へスライドする。
【0029】
上記引き出し11がスライドせずに上記駆動軸22がスライドすると、この駆動軸22の後端に設けられた解除部材32が上記引き出し11の後板13外面に設けられた作動杆41の他端を押圧し、この作動杆41を第2のばね43の付勢力に抗して図5(a)に矢印で示す時計方向へ回動させる。
【0030】
上記作動杆41が回動すれば、上記係止体42が連動する。それによって、図5(b)に示すように係止体42の鉤部42bがストッパ部材44の他辺から外れる位置に変位するから、上記引き出し11を家具本体2から引き出すことが可能となる。
【0031】
引き出し11を家具本体2から引き出した後、把手24から指を離せば、駆動軸22が第1のばね33の復元力によって引き出し11に対して後退する方向へ移動し、解除部材32が作動杆41から離れる。それによって、作動杆41は第2のばね43の復元力によって図5(a)に矢印で示す時計方向と逆方向に回動する。
【0032】
家具本体2から引き出された引き出し11を収納するため、引き出し11を家具本体2に押し込むと、引き出し11の前面飾り板17が仕切り桟7に当たる前に、第2のばね43の復元力によって回動した係止体2の鉤部42bの斜面42aがストッパ部材44の他辺に当たって上記係止体2が作動杆41とともに第2のばね43の付勢力に抗して図5(a)に矢印で示す時計方向へ回動したのち、上記ストッパ部材44の他辺を過ぎると、上記鉤部42bが上記他辺に対向する位置に復元する。
【0033】
それによって、上記引き出し11は上記鉤部42bと上記ストッパ部材44との係合によって引き出し不能な状態に戻る。
【0034】
このように、上記構成の箪笥1によれば、家具本体2に収納された引き出し11は、掛止体42の鉤部42bとストッパ部材44との係合によって引き出し不能な状態に保持されているから、地震などによって家具本体2が前後方向に大きく揺れても、上記引き出し11が家具本体11から飛び出してくるのを防止することができる。
【0035】
上記家具本体2内に引き出し不能に収納保持された引き出し11を引き出す場合には、把手24に指を掛けてこの把手24を引く。それによって、把手24とともに駆動軸22が引き出しに対してスライドするから、そのスライドによって掛止体42の鉤部42bとストッパ部材44との係合が外れ、上記引き出し11が引き出し可能となる。
【0036】
すなわち、家具本体2内に引き出し不能に保持された引き出し11を引き出す場合、鉤部42bとストッパ部材44と係合を外すためだけの操作をすることなく、把手24に指を掛けて上記引き出し11を引くだけで、家具本体2から引き出すことができるため、引き出し11の引き出し操作を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この発明の一時氏の形態を示す家具としての箪笥の斜視図。
【図2】引き出しを引き出す前の状態を示す引き出しの断面図。
【図3】引き出しを引き出した状態を示す引き出しの断面図。
【図4】引き出しの把手が設けられた前端部分を家具本体を断面して示す平面図。
【図5】(a)は引き出しの後端部に設けられた掛止体とストッパ部材の引き出しを引き出す前の状態を示す説明図、(b)同じく掛止体とストッパ部材の引き出しを引き出した状態を示す説明図。
【符号の説明】
【0038】
2…家具本体、11…引き出し、22…駆動軸、24…把手、32…解除部材、33…第1のばね、41…作動杆、42…係止体、43…第2のばね、44…ストッパ部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出し入れ可能な引き出しを有する引き出し付き家具であって、
前面が開口し内部に上記引き出しが出し入れ可能に設けられた家具本体と、
上記引き出しの下部に前後方向に貫通して移動可能に設けられた駆動軸と、
上記引き出しの前面下部に上記駆動軸の一端に連結して設けられた把手と、
上記引き出しの背面に回動可能に設けられこの引き出しが上記家具本体に収納されているときに上記家具本体の後部内面に設けられた係合部に係合して上記引き出しの移動を阻止する係止体と、
上記駆動軸の上記引き出しの背面から突出した他端に設けられ上記把手に指を掛けて上記引き出しを引き出すときに、上記駆動軸が上記把手とともに上記引き出しに対して移動することで上記係止体を上記係合部との係合が外れる方向に回動させる解除部材と
を具備したことを特徴とする引き出し付き家具。
【請求項2】
上記把手には、上記引き出しの前面に設けられたガイド孔に移動可能に係合して上記把手が上記駆動軸を中心にして回転するのを阻止するガイドピンが設けられていることを特徴とする請求項1記載の引き出し付き家具。
【請求項3】
上記駆動軸を上記引き出しの背面方向へ付勢した第1のばねと、上記駆動軸が上記第1のばねの付勢力によって移動した状態において上記係止体を上記係合部に係合する回動方向に付勢する第2のばねが設けられていることを特徴とする請求項1記載の引き出し付き家具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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