説明

引き出し部材

【課題】取手レス引き出しにおいて、上下の引き出しの隙間を塞ぐことができるとともに、この隙間の背面側のキャビネット内の空間をデッドスペースとすることなく、収納空間として有効に利用可能とする。
【解決手段】上引き出し5と下引き出し6の間に引き出し部材2を配置して、上引き出し5と下引き出し6の間の隙間13を塞ぐようにするとともに、引き出しの手がかり空間31を形成し、この引き出し部材2は、下引き出し6に固定される固定部23と、上引き出し5に当接する当接部24とからなり、固定部23によって下引き出し6の前板10の内側に下側手がかり空間31を形成するとともに、当接部24によって上引き出し5の前板の内側に上側手がかり空間32を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引き出し部材に関し、特に、引き出しの間の収納空間の無駄をなくすために、引き出しの前板の内側に取り付ける引き出し部材に関する。
【背景技術】
【0002】
図8(a)、(b)は、従来知られている、システムキッチンや洗面化粧台等において、取手のない引き出し(以下、「取手レス引き出し」と言う。)を有する従来のキャビネット60の正面図及び断面図を示している。
【0003】
このような取手レス引き出し61では、図8(b)の一部を図8(d)、(e)に拡大図で示すように、上引き出し5及び下引き出し6を引き出すために、上引き出し5の前板9の下部及び下引き出し6の前板10の上部に、それぞれの背面側から手をかけるための隙間13が必要である。
【0004】
しかし、この隙間13を塞いでキャビネット60内を密閉するために、図8(c)に示すような取手レス用の閉鎖部材62がキャビネット60の本体に固定されている。具体的には、取手レス用の閉鎖部材62の両端部をL型金具等(図示しない。)でキャビネット60の両側の側板に固定される構成としている。
【0005】
ところで、引き出し前板の下部裏側に帯状のフィラーを突出して設けた構成は公知である(特許文献1参照)。そして、上方の引き出しの下部裏側に軟質の隠し部材を設け上下の引き出しの前板部の間の隙間を隠す構成は公知である(特許文献2参照)。
【0006】
さらに、引き出し前板の上部に取り付ける取手で、固定部を前板の裏側に設けたものは公知である(特許文献3参照)。そして、家具側方の隙間カバー材で、カバー材と取り付け部材を軟質樹脂材で繋いだものは公知である(特許文献4参照)。
【特許文献1】特許第3501061号公報
【特許文献2】特許第3501084号公報
【特許文献3】特開2004−216075号公報
【特許文献4】特開2004−305288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図8に示す従来の引き出し61では、図8(e)に示すように、取手レス用の閉鎖部材62がキャビネット60の本体に固定されており、下引き出しに丈の高い瓶等の物品63を収納しようとすると、下引き出し6を引き出す際に取手レス用の閉鎖部材62に丈の高い物品63等がひっかかってしまい収納できない。よって、キャビネット60の本体内であって取手レス用の閉鎖部材62の背面側の空間がデッドスペースとなって収納用空間として利用することができないという問題がある。
【0008】
又、従来の、引き出し前板の下部裏側に帯状のフィラーを突出して設けた構成(特許文献1参照)、或いは上方の引き出しの下部裏側に軟質の隠し部材を設け上下の引き出しの前板部の間の隙間を隠す構成(特許文献2参照)は、あくまでも上下の隙間を覆うために設けたものであり、取手レス引き出しにおいて上下の引き出しの隙間から引き出しの裏側に手をかけて引き出す構成を前提としたものではないので、実際、取手レス引き出しにこのような従来例のフィラーや隠し部材を適用したら、引き出しの裏側に手をかけることができなくなってしまう。
【0009】
本願発明は、従来の取手レス引き出しにおける上記のような問題点を解決することを目的とするものであり、引き出しの隙間を塞ぎ、しかもその背面側のデッドスペースを収納空間として有効利用する構成を実現する引き出し部材を実現することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記課題を解決するために、上引き出しと下引き出しの間に配置され、上引き出しと下引き出しの間を塞ぐとともに、引き出しの手がかり空間を形成する引き出し部材であって、下引き出しに固定される固定部と、上引き出しに当接する当接部とからなり、固定部によって下引き出しの前板の内側に下側手がかり空間を形成するとともに、当接部によって上引き出しの前板の内側に上側手がかり空間を形成し、下側手がかり空間と上側手がかり空間で一体の手がかり空間を形成することを特徴とする引き出し部材を提供する。
【0011】
本発明は上記課題を解決するために、上引き出しと下引き出しの間に配置され、上引き出しと下引き出しの間を塞ぐとともに、引き出しの手がかり空間を形成する引き出し部材であって、上引き出しに固定される上部材と、下引き出しに固定される下部材からなり、上部材と下部材は各々引き出しに固定される固定部と、上引き出しと下引き出しの間を塞ぐ閉塞部とで構成され、上部材と下部材は上引き出しと下引き出しの間に上下対をなして対称的に配置され、上部材と下部材の各々の固定部によって、上引き出しと下引き出しの各々の前板の内側に手がかり空間を形成することを特徴とする引き出し部材を提供する。
【0012】
本発明は上記課題を解決するために、引き出しとキャビネットの前桟又は天板の間に配置され、引き出しと前桟又は天板の間を塞ぐとともに、引き出しの手がかり空間を形成する引き出し部材であって、引き出しに固定される固定部と、前桟又は天板に当接する当接部とからなり、固定部によって引き出しの前板の内側に手がかり空間を形成することを特徴とする引き出し部材を提供する。
【0013】
上記引き出し部材は、その固定部を硬質樹脂で、当接部または閉塞部を軟質樹脂で一体の押し出し成型品とすることが好ましい。
【0014】
上記引き出し部材は、その固定部が、前板の内側の角部に係合する位置決め部を備えていることが好ましい。
【0015】
上記引き出し部材が又は上記引き出し部材に対して、引き出しの正面側から見て左右端にパッキン部材を備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る引き出し部材によれば、次のような顕著な効果が生じる。
(1)上引き出し又は下引き出しの内側に手をかけて引き出すことができるとともに、上下の引き出しの間の隙間の背面側のキャビネット内の空間をデッドスペースとすることなく、収納空間として有効に利用することができるようになる。
(2)引き出し部材は、引き出しの前板裏面に装着すればよいので、引き出し部材及びその取付構造が簡単となる。
(3)前面側から見て、上下の引き出しの間の隙間を塞ぐことができるから、見栄えも良く、キャビネット内を閉じて塵、埃、虫等から保護できる。
【0017】
(4)引き出し部材を最上段の引き出しに取り付けることで、最上段の引き出しとキャビネットの前桟若しくは天板の間の隙間を塞ぐことができるから、見栄えも良く、キャビネット内を閉じて塵、埃、虫等から保護できる。
(5)最上段の引き出しとキャビネットの前桟若しくは天板の間の隙間の背面側のキャビネット内の空間をデッドスペースとすることなく、収納空間として利用することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明に係る引き出し部材を実施するための最良の形態を実施例に基づき図面を参照して、以下説明する。
【実施例1】
【0019】
図1及び図2は、本発明に係る引き出し部材の実施例1の構成を説明する図である。図1(a)及び(b)は、本発明に係る引き出し部材を適用したキャビネット1を閉じた状態の正面図及び断面図を示している。キャビネット1は、キッチンのキャビネットでもよいし、洗面化粧台のキャビネットでもよい。図1(c)は、本発明に係る引き出し部材2の斜視図である。
【0020】
キャビネット1は、キャビネット1の桟3上に天板4が載置されており、前方に引き出し可能な複数段の引き出し5〜8を備えている。1段目の引き出し5の前板9と2段目の引き出し6の前板10の間、及び3段目引き出し7の前板11と4段目の引き出し8の前板12の間には、それぞれ隙間13、14があり、この隙間13、14に使用者は手を差し込んで、隙間13、14の上方の1段目、3段目の引き出し5、7(以下、「上引き出し」と言う。)又は下方の2段目、4段目の引き出し6、8(以下、「下引き出し」と言う。)を引き出すことが可能である。
【0021】
本発明は、上引き出しと下引き出しの間の隙間を塞ぐための引き出し部材2を下引き出しに固定する構成を特徴とするものである。以下の実施例では、上引き出し及び下引き出しの例として、図2(a)に示すように、1段目の引き出し5及び2段目の引き出し6の構成において説明する。なお、図2(b)は、図2(a)の引き出し部材2の取付部分の構造を拡大して示す図である。
【0022】
上引き出し5(1段目の引き出し)は側板15、底板16、前板9及び背板17(図1(b)参照)から成る。前板9は、その下端が底板16の下面より下方になるように、側板15及び底板16に固定されている。前板9の下端から底板16までの間の部分である前板9の下部の内側部分18(図2(b)の要部拡大図参照)は手がかり部として機能する。下引き出し6(2段目の引き出し)も上引き出しと同様の構造であり、側板19、底板20、前板10及び背板21(図1(b)参照)から成る。
【0023】
上引き出し5と下引き出し6は、図2(a)に示すように、それぞれの前板9、10が互いに間隔D1だけ離れるように配置され、この間隔D1に対応したキャビネット1内の空間(これを、「上下引き出し間の空間22」という。)が存在する。
【0024】
図2(a)、(b)に示すように、上引き出し5と下引き出し6の間に位置し、上下引き出し間の空間22を塞いで閉じるための引き出し部材2が下引き出し6の内側に固定されている。より詳細には、上引き出し5の前板9と下引き出し6の前板10の内側であって、概ね上下の引き出しの前板9、10の間に位置するように、引き出し部材2が下引き出し6の上部内側に固定され、上下引き出し間の空間22を塞いで閉じるような構成とされる。
【0025】
引き出し部材2は、図1(c)にその斜視図を示し、図2(b)にその断面図を示すが、全体的には横長の部材であり、下部の固定部23と上部の可撓性を有する当接部24とから成る。固定部23は硬質樹脂で、当接部24は軟質樹脂で、一体押し出し成形によって形成されている。硬質樹脂はABS樹脂等の材料から形成し、軟質樹脂はスチレン系エラストマー等から形成するとよい。
【0026】
なお、引き出し部材2は、固定部23と当接部24を別体でそれぞれ形成し、当接部24を固定部23に貼着等で取り付けるようにして形成してもよい。例えば、固定部23を硬質樹脂又はアルミニウム等の金属で形成し、当接部24を軟質樹脂で形成し、当接部24を固定部23に接着剤で貼着して形成してもよい。
【0027】
固定部23は、取付部25と支持部26とを備えている。取付部25は、下引き出し6の前板の内側に当接する垂直部分27と下引き出し6の上面に当接係合する係合部分28とを備え、断面略 ┐型の形状(フック形状)をしている。
【0028】
取付部25の係合部分28は、下引き出し6の前板10の内側の角部に係合することで、固定部23を前板10に対して簡単に位置決めする位置決め部として機能する。このような位置決め部を設けると、固定部23を引き出し6の前板10に簡単且つ正確に位置決めして取り付けられるから取付の作業性を向上させることができる。
【0029】
支持部26は、垂直部分27からキャビネット1内に水平に伸びる水平部分29と起立部分30とを備え、断面略 」型の形状をしている。
【0030】
引き出し部材2は、図2(b)に示すように、その取付部25が下引き出し6の前板10の上部内側に当接して位置決めされ、ねじで固定して取り付けられる。取付部25と支持部26との間に形成されているくぼみが、下側手がかり空間31となる。使用者は、図2(c)に示すように、この下側手がかり空間31から取付部25の内側に手をかけて、下引き出し6を前方に引き出すことができる。
【0031】
起立部分30の上端は、図2(b)に示すように、上引き出し5の前板9の下端より、間隔D2を介して下方になるように形成されている。このように、起立部分30の上端は、上引き出し5の前板9の下端より下方に形成されているから、固定部23が硬質樹脂で形成されていても、下引き出し6の前方への引き出し動作に際して、起立部分30の上端が上引き出し5の前板9に干渉することなく開閉動作の妨げとなることがない。
【0032】
軟質樹脂で形成されている当接部24は、支持部26の上端から上引き出し5の前板9の内側に向けて伸びるように形成されており、上下の引き出し5、6を閉じた状態では、図2(b)に示すように、当接部24の上端が上引き出し5の前板9の内側に当接するように構成されている。この状態では、上引き出し5の前板9の内側と当接部24との間に空間が形成されるような構成とし、この空間が上側手がかり空間32となる。
【0033】
使用者は、図2(d)に示すように、上側手がかり空間32から上引き出し5の前板9の内側に手をかけて、上引き出し5を前方に引き出すことができる。なお、当接部24は軟質樹脂で形成されているので、使用者は上側手がかり空間32から上引き出し5の前板9の内側に手をかける際に、当接部24をキャビネット1の内方(図2(b)、(d)中の右方)に押しのけることもでき、当接部24が邪魔となることはない。なお、下側手がかり空間31と上側手がかり空間32で一体の手がかり空間が形成されている。
【0034】
図3(a)は、起毛(フリンジ)を有するパッキン33を引き出し部材2の左右両側端に貼り付けた構成である。そして、図3(b)は、軟質パッキン34を引き出し部材2の固定部23の左右両側端に貼り付けた構成である。このような構成とすると、引き出しを閉めた状態でのキャビネット1と引き出し部材2の左右両側端との隙間を封止して、キャビネット1内の気密性を高めるとともに、塵や埃が入り込んだり、害虫等が侵入したりすることを防止できる。
【0035】
なお、起毛付きパッキン33、軟質パッキン34は、引き出し部材2の固定部23の左右両側端にそれぞれ貼り付けた構成としているが、このような構成とすることなく、図示はしないが、起毛付きパッキン33、軟質パッキン34を、キャビネット1の両側の側板に互いに向き合うように貼り付ける等して固定し、引き出し部材2を閉じた際に、引き出し部材2の内側又は前側に当接し、キャビネット1と引き出し部材の左右両側端との隙間を封止する構成としてもよく、引き出し部材2とは別体のパッキン部材とセットするようなものでもよい。
【0036】
(変形例)
図3(c)、(d)は、それぞれ本発明の実施例1の引き出し部材の変形例(別の態様)である引き出し部材35、36を示す図である。この引き出し部材35、36は、図2(b)に示す実施例1の引き出し部材2とほぼ同じ構成であるが、固定部23の取付部は、それぞれ支持部26の水平部分29と直交する垂直部分37を有するが、図2(b)に示すような係合部分28のない簡単な構造としたものである。
【0037】
この引き出し部材2は、図3(c)、(d)に示すように、下引き出し6の前板10の上部内側において、固定部26によって下側手がかり空間31を形成するように取り付けられる。この場合、図3(c)では、下引き出し6の前板10の上端より水平部分29を下方にずらした状態で、固定部23をねじで下引き出し6の前板10に固定する。
【0038】
(実施例1の作用)
本発明の実施例1の作用を、図1〜3及び図4で以下説明する。図1、2は、本発明の引き出し部材2を適用したキャビネット1を閉じた状態であるが、図4(a)〜(c)は、下引き出し6内に物が収納されている使用状態を説明する図である。
【0039】
引き出しが閉じられている状態では、引き出し部材2は、図1、図2(a)、図4(a)に示すように、当接部24が上引き出し5の前板9の内側に当接し、キャビネット1内が密閉される。なおこの場合、図3(a)、(b)に示すような起毛付きパッキン33、軟質パッキン34を引き出し部材2の左右両側端に貼り付けて設けると、よりキャビネット1の密閉性を高めることができ、塵、埃、害虫等が入りにくくなる。
【0040】
使用者が下引き出し6を開く時には、図2(c)、図4(a)、(b)に示すように、手を下側手がかり空間31内に入れ、その前板10の上部内側に掛けて前方に引き出せばよい。使用者が上引き出し5を開く時には、図2(d)に示すように、手を上側手がかり空間32内に入れてその前板9の下部内側に掛けて前方に引き出せばよい。
【0041】
ところで、図8に示すような従来のキャビネット60では、前述のとおり、下引き出し6に丈の高い瓶63等を収納しようとすると、その上端が取手レス用の閉鎖部材62に引っ掛かって下引き出し6が開かなくなるので収納できない(図8(e)参照)。このために、キャビネット60の上下の引き出し5、6間の空間内への収納が制限され、キャビネット60内にデッドスペースが生じてしまう。
【0042】
しかし、本願発明では、図4(a)〜(c)に示すように、下引き出し6に丈の高い瓶38等が収納され、下引き出し6から上下引き出し間の空間22内に瓶38の上端が伸びていても、図4(b)、(c)に示すように、引き出し部材2は下引き出し6とともに前方に引き出すことができるから、瓶38が引き出し部材2に引っ掛かることがないので、下引き出し6をスムースに前方に開くことができる。
【0043】
よって、本発明によれば、上下引き出し間の空間22をデッドスペースとすることなく、収納空間として有効に活用することができる。
【0044】
なお、下引き出し6を開く際には、図4(a)に示すように、引き出し部材2の当接部24が上引き出し5の前板9の内側に当接するが、当接部24は軟質樹脂で形成されているから、図4(b)に示すように、キャビネット1の内方側にめくれて、なんら支障なく引き出すことができる。
【実施例2】
【0045】
図5、6は、実施例2を説明する図である。この実施例2の引き出し部材40、41は、図5(a)の上下にそれぞれ断面を示し、図5(b)の上下にそれぞれ斜視図を示すような、全体的には横長の部材である。この実施例2では、引き出し部材40は上部材として、引き出し部材41は下部材として、図6(a)に示すように上下一対をなすように、上下の引き出し5、6の前板9、10にそれぞれ取り付けて使用する構成を特徴とする。
【0046】
上部材、下部材として上下一対をなす引き出し部材40、41は、それぞれ図5(a)、(b)に示すように、互いに略同じ構造であるが、図5(a)、(b)に示す例では、後述するように互いの閉塞部42、43の断面形状が異なる。引き出し部材40は、固定部44と可撓性の閉塞部42とから成り、引き出し部材41は、固定部44と可撓性の閉塞部43とから成る。
【0047】
引き出し部材40、41は、実施例1と同様に、それぞれ固定部44は硬質樹脂で、閉塞部42、43は軟質樹脂で、一体押し出し成型することで形成する。固定部44は、取付部45と支持部46とを備えている。
【0048】
取付部45は、上下の引き出し5、6の前板9、10の内側に当接する垂直部分47と、下引き出し6の上面又は上引き出し5の下面に当接係合する係合部分48とを備え、断面略 ┐型の形状(フック形状)をしている。この取付部45は、実施例1の引き出し部材2の取付部25と同様に、引き出しの前板9、10の角部に係合して固定部44を前板9、10に対して簡単に位置決めする位置決め部として機能する。
【0049】
支持部46は、垂直部分47からキャビネット1内に水平に伸びる水平部分49と起立部分50とを備え、断面略 」型の形状をしている。図6(a)に示すように、上引き出し部材40は、前板9に固定した状態で、支持部46の起立部分50の下端が前板9の下端と略同じ位置(高さ)となるように、形成されている。同様に、下引き出し部材41は、前板10に固定した状態で、支持部46の起立部分50の上端が前板10の上端と略同じ位置(高さ)となるように、形成されている。
【0050】
図5(a)、(b)に示すように、閉塞部42、43は、支持部46、46の起立部分50、50から延長して直線状に伸びるよう形成されている。そして、図6(a)に示すように、一対の引き出し部材40、41を上下引き出し5、6の前板9、10に固定した状態で、閉塞部42、43は、支持部46、46から下方、上方に伸び、互いに当接してキャビネットを閉じるように形成されている。
【0051】
この図5(a)、(b)に示す態様では、上引き出し部材40の閉塞部42は、その先端に向かうに従ってキャビネット1の内側に向けて傾斜し、下引き出し部材41の閉塞部43は、その先端に向かうに従ってキャビネット1の外側に向けて傾斜し、互いに対称的にテーパ状に形成されている。これにより、上下の引き出しに固定された場合に、図6(a)に示すように、閉塞部42、43は、互いに当接すると、その重なり部51は長手方向にわたって厚みが変わることなく重なり合うようになる。
【0052】
なお、上下の引き出し部材40、41は、図5(c)に示すように、互いに全く同じ構成のものであってもよい。即ち、図5(c)に示す上下の引き出し部材40、41は、それぞれ閉塞部42、43が先端に向けてキャビネット1の内外両側から徐々に細くなるようにテーパ状に形成されている。
【0053】
そして、図5(d)、(e)は、下引き出し部材41における固定部44の別の態様を示す図であり、下引き出し部材41を示すが、上引き出し部材40も同じである。図5(d)に示す固定部44は、その垂直部分47は支持部46との結合部よりさらに延長して伸びており、この伸びた部分を引き出し部材2の前板にねじ止め可能な構成としたものである。また、図5(e)に示す固定部44は、係合部分48がなく垂直部分47だけの構成としたものである。
【0054】
なお、図5に示す引き出し部材40、41についても、それぞれその両端に、実施例1と同様に、図3(a)に示すような起毛付きパッキン33又は図3(b)に示すような軟質パッキン34を、引き出し部材40、41の左右両側端に貼り付けた構成としてもよい。
【0055】
(実施例2の作用)
引き出し部材40は上部材として、引き出し部材41は下部材として、図6(a)に示すように、それぞれ上引き出し5の前板9の下部と下引き出し6の前板10の上部に、上下対称となるように、取り付けられる。この場合、上下の引き出し部材40、41の閉塞部42、43は互いに当接して重なり部51を形成し、キャビネットを閉じるように取り付けられる。そして、上下の引き出し部材40、41は、それぞれ垂直部分47と起立部分50との間に、上下の手がかり空間52、53が形成される。
【0056】
この実施例2によれば、上引き出し5の前板9と下引き出し6の前板10の間の寸法が若干異なった複数種のキャビネット1に対しても、上下の引き出し部材40、41の閉塞部42、43を、互いに当接して重なり合う範囲を若干異ならせ、キャビネットを閉じるように取り付けることができる。よって、いろいろな寸法のキャビネット1に、幅広く適用可能である。
【0057】
そして、図6(a)に示すように、下引き出し6内に収納した丈の高い物品54が、上引き出し5の前板9及び引き出し部材40の固定部44より下方の高さ(図6(a)の物品54では間隔D2の隙間がある。)であれば、その物品54は、図6(b)に示すように、前板9に干渉することなく、下引き出し6を前方に引き出すことができる。
【0058】
また、この引き出しの際に物品54が閉塞部42に当接しても、図6(b)に示すように、閉塞部42は可撓性であるから物品54で押しのけられて、その通過を阻害することはない。よって、本発明によれば、間隔D1で示される上下引き出し間の空間22をデッドスペースとすることなく、収納空間として有効に活用することができる。
【実施例3】
【0059】
図7は、実施例3を説明する図である。この実施例3では、実施例2と同様の引き出し部材41を、図7(a)に示すように、最上段の引き出し5(1段目の引き出し5)の前板9の上端に固定すると、引き出し5の上方の空間をデッドスペースとすることなく、収納空間として有効に利用することができる。
【0060】
即ち、図示はしないが従来は、最上段の引き出し5の前板9とキャビネットの前桟3の間(又は最上段の引き出しの前板と天板4の間)を前方から隠すために、図8(b)に示すような取手レス用の閉鎖部材62をキャビネットの両側板の間に取り付けているが、そのような構成とすると、この取手レス用の閉鎖部材62に係合するような丈の高い物品は収納できない。
【0061】
しかしながらこの実施例3では、引き出し部材41を、図7(a)に示すとおり、その固定部44を最上段の引き出し5の前板9の上端内側に固定し、閉塞部43をキャビネットの前桟3の内側に当接するように、固定する構成とすると、キャビネット内の最上段の引き出し5と前桟3の間の隙間を閉じてキャビネット内を密閉し、害虫や塵、埃等の侵入を防止することができる。
【0062】
そして、このように引き出し部材41を、引き出し5の前板9に取り付ける構成とすると、キャビネットの前桟3の下端より下方の高さの物品55であれば、図7(b)に示すように、物品55が、引き出し部材41にも前桟3にも干渉することなく、引き出し5を前方に引き出すことができる。よって、引き出し5の上方であってキャビネット1の前桟3の下端までの空間56(図7(b)中、間隔D1で示す空間。)をデッドスペースとすることなく、収納空間として有効に活用することができる。なお、この実施例3においては、引き出し部材41の垂直部分47と起立部分50との間に、手がかり空間59が形成される。
【0063】
図7(c)に示す引き出し部材57は、最上段の引き出し5の前板9に取り付けるための専用の構造とした態様を示している。この態様では、例えば、引き出し5の前板9とキャビネットの前桟3との間隔が小さい場合等、その間隔に合わせて引き出し部材57の幅wを小さな寸法とする、或いは、前桟3への当接力をより強めるために、閉塞部58を図7(c)に示すような湾曲形状にする等、最上段の引き出し専用の構造に形成する。
【0064】
なお、図7(a)〜(c)では、引き出し部材41、57を、キャビネットの前桟3の下端が天板4の下端より下方にあるキャビネットに適用した例について説明したが、図7(d)に示すように、引き出し部材57を、天板5の下端がキャビネットの前桟3より下方にあるキャビネットに適用し、閉塞部58を天板4の内側に当接する構成としても同様の作用効果が生じる。
【0065】
以上、本発明に係る引き出し部材を実施するための最良の形態を実施例に基づいて説明したが、本発明はこのような実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的事項の範囲内でいろいろな実施例があることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上、本発明に係る引き出し部材をキッチン又は洗面化粧台のキャビネットに適用した例を説明したが、本発明の引き出し部材は、取手レスの引き出しであれば、一般の家具、その他密閉性の求められた業務用の引き出し等にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施例1を示し、(a)、(b)はキャビネットを閉じた状態での正面図、断面図を示し、(c)は本発明の引き出し部材の斜視図を示す。
【図2】本発明の実施例1を示し、(a)はキャビネットの断面の一部を示し、(b)は引き出し部材の断面及びその取付状態を示し、(c)、(d)は使用状態を示す図である。
【図3】本発明の実施例1を示し、(a)、(b)はパッキンを有する引き出し部材2を示し、(c)、(d)は引き出し部材2の変形例を示す。
【図4】本発明の実施例1の作用を説明する図であり、(a)、(b)は引き出しを開く前後の使用状態の拡大図を説明する図であり、(c)は引き出しを開いた全体の状態を示す。
【図5】(a)、(b)は本発明の実施例2の引き出し部材の構成を示し、(c)〜(e)は、実施例の別の態様を示す図である。
【図6】本発明の実施例2の作用を説明する図であり、(a)は引き出し部材を取り付けた状態であり、(b)は引き出しを開いた状態を説明する図である。
【図7】(a)、(b)は本発明の実施例3を説明する図であり、さらに(c)、(d)は、それぞれこの実施例3の別の態様を説明する図である。
【図8】従来例を説明する図であり、(a)、(b)はキッチンのキャビネット閉じた状態での正面図、断面図を示し、(c)は本発明の引き出し部材2の斜視図を示し、(d)、(e)は開く前後の使用状態の拡大図を説明する図である。
【符号の説明】
【0068】
1、60 キャビネット
2、35、36、40、41、57 引き出し部材
3 キャビネットの前桟
4 天板
5 1段目の引き出し(上引き出し、最上段の引き出し)
6 2段目の引き出し(下引き出し)
7、8 引き出し
9、10、11、12 前板
13、14 隙間
15、19 引き出しの側板
16、20 引き出しの底板
17、21 引き出しの背板
18 前板の下部の内側部分
22 上下引き出し間の空間
23、44 引き出し部材の固定部
24 引き出し部の当接部
25、45 固定部の取付部
26、46 固定部の支持部
27、37、47 取付部の垂直部分
28、48 取付部の係合部分
29、49 支持部の水平部分
30、50 支持部の起立部分
31、53 下側手がかり空間
32、52 上側手がかり空間
33 起毛付きパッキン
34 軟質パッキン
38、54、63 丈の高い物品
42、43、58 引き出し部材の閉塞部
55 物品
56 空間
59 手がかり空間
61 取手レス引き出し
62 取手レス用の閉鎖部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上引き出しと下引き出しの間に配置され、上引き出しと下引き出しの間を塞ぐとともに、引き出しの手がかり空間を形成する引き出し部材であって、下引き出しに固定される固定部と、上引き出しに当接する当接部とからなり、固定部によって下引き出しの前板の内側に下側手がかり空間を形成するとともに、当接部によって上引き出しの前板の内側に上側手がかり空間を形成し、下側手がかり空間と上側手がかり空間で一体の手がかり空間を形成することを特徴とする引き出し部材。
【請求項2】
上引き出しと下引き出しの間に配置され、上引き出しと下引き出しの間を塞ぐとともに、引き出しの手がかり空間を形成する引き出し部材であって、上引き出しに固定される上部材と、下引き出しに固定される下部材からなり、上部材と下部材は各々引き出しに固定される固定部と、上引き出しと下引き出しの間を塞ぐ閉塞部とで構成され、上部材と下部材は上引き出しと下引き出しの間に上下対をなして対称的に配置され、上部材と下部材の各々の固定部によって、上引き出しと下引き出しの各々の前板の内側に手がかり空間を形成することを特徴とする引き出し部材。
【請求項3】
引き出しとキャビネットの前桟又は天板の間に配置され、引き出しと前桟又は天板の間を塞ぐとともに、引き出しの手がかり空間を形成する引き出し部材であって、引き出しに固定される固定部と、前桟又は天板に当接する当接部とからなり、固定部によって引き出しの前板の内側に手がかり空間を形成することを特徴とする引き出し部材。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載の引き出し部材であって、固定部を硬質樹脂で、当接部または閉塞部を軟質樹脂で一体の押し出し成型品としたことを特徴とする引き出し部材。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4記載の引き出し部材であって、固定部が、前板の内側の角部に係合する位置決め部を備えていることを特徴とする引き出し部材。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の引き出し部材であって、引き出しの正面側から見て左右端にパッキン部材を備えていることを特徴とする引き出し部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−222248(P2007−222248A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−44586(P2006−44586)
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】