説明

引出し及び多連式机システム

【課題】小さい物を整理して収容できる重宝な引出しを提供する。
【手段】引出し7は、前板12と左右側板13と底板14と後ろ板15とを備えており、これらで囲われた部分が主収容部17になっている。前板12は側板13の左右両側に張り出しており、この張り出し部にキャップ21を装着することによってポケット部22が形成されている。ポケット部22にクリップやコイン、消しゴムなどの小物を入れて整理できる。また、ポケット部22で脚3の前面を隠すことにより、多数の机ユニット1の引出し群の前面のラインを一直線状に揃えてスッキリしたデザインと成すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、引出し及びこれを備えた多連式机システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、引出しは前板と左右側板と後ろ板とを備えているが、収容した物品が内部で乱雑になることがある。特に、小さいもの(例えばクリップ類や消しゴムなど)は引出しの内部に散乱しやすい。
【0003】
この点については、収容部の前部を左右横長の壁で仕切ることによって小物収納部と成すことが行われている。他方、特許文献1には、前板を上向きに開口した形状と成して、前板に小物を主要できるポケット部を形成すること、換言すると、主収容部の手前側にポケット部を形成することが記載されている。
【特許文献1】特開2003−164345号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
引出しにおいて主収容部を隔壁で前後に仕切ると小物の整理に便利であるが、仕切り壁の手前の前収納部は左右に長いため、やはり、小物が散乱することがある。他方、特許文献1においても小物類を整理することは可能であるが、デザイン的に極めて特殊であるため、事務用机のような通常の机には適用し難いという問題がある。
【0005】
本願発明は、この問題を解消することを課題とするものである。
【0006】
ところで、机を左右に並設して多連式机システムと成す場合、左右に配置した天板を一つの脚で支持する(すなわち左右の机ユニットの脚を共用する)と、机システム全体として部材を節約できて好適である。そして、多連式机システムにおいて、天板の下面に設けた引出しの前端を一直線状に揃えて体裁を整えたい場合があるが、従来は、脚を挟んだ両側に引出しが配置されているため、すなわち、脚の前面が露出するため、引出し群の前面のラインが脚で途切れて美的効果を発揮することが難しいという問題があった。
【0007】
本願発明は、この問題を解消することも課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は引出しと多連式机システムとを含んでいる。そして、前板と左右の側板で仕切られた主収容部の左右外側のうちいずれか一方又は両方に、小物を収納可能な上向き開口のポケット部を設けている。
【0009】
他方、多連式机システムの発明は、請求項2の構成になっている。すなわち、天板の下面箇所に引出しが装架されている複数の机ユニットを、左右に隣り合った天板の側面が突き合わさるようにして配置し、左右に隣り合った2枚の天板の端部を共通した一つの脚で支持して成る机システムにおいて、前記引出しは、前板と左右の側板で仕切られた主収容部の左右外側のうち少なくとも前記脚に近い部分でかつ前部に横向きに張り出したポケット部を設けており、前記ポケット部を脚の手前に位置させている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1のように構成すると、主収容部の外側になるポケット部に小物を収容できるため、小物を整理することができる。特に、実施形態のようにポケット部を前部のみに設けると、ポケット部の中で小物が散乱することはないため、整理機能がより向上する。また、ポケット部は主収容部の左右外側に設けているため特許文献1のようなデザイン的な違和感はなく、オフィス用机のような通常の机やテーブル類にも支障なく適用できる。
【0011】
また、請求項2のように構成すると、左右の天板を1つの脚で支持してなる多連式机システムを構成するにおいて、引出しのポケット部で脚の前面を隠せるため、多数の引出しの前面を一直線状に揃えることができ美感を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
(1).第1実施形態(図1〜図4)
図1〜図4では第1実施形態を示している。図1は多連式机システムの斜視図であり、1枚の天板2を有する机ユニット1が左右に並設されて多連式机システムを構成し、かつ、前後の多連式机システムが背中合わせに配置されている。
【0014】
左右に隣り合った天板2は1つの脚3又は袖キャビネット4で支持されており、多連式机システムの左右端部を構成する部分では天板2の端部は一つの脚3又は袖キャビネット4で支持されている。脚3は、中空板状の基部の上端と下端からアームが前向きに延びているいわゆるL脚となっており、従って、平面視では前後方向に細長い形状である。上アームを符号3aで示している。
【0015】
天板2は脚3又は袖キャビネット4に連結されており、また、脚3又は袖キャビネット4は机ユニット1を構成する背面部材5に連結されている。前後の机ユニット1において背面部材5は共用されている。符号6は机上パネルである。天板2の下面箇所には引出し7を配置している。以下、図2以下の図面も参照して引出し7について説明する。
【0016】
図2のうち(A)は天板2を仮想線で示した平面図、(B)は(A)のB−B視断面図、図3は引出し7の斜視図、図4は引出し7の要部を示す分離斜視図である。
【0017】
図2(A)に示すように、左右に隣り合った天板2は脚3の左半分と右半分とで支持されている。図示していないが、天板2は金具類を使用して脚3に連結(固定)されている。天板2の下面箇所には、左右のレール8を介して引出し7が脚3に近接した状態で配置されている。図2(A)では右側の天板2の下面にしか引出し7を表示していないが、左側の天板2の下面箇所にも脚3に近接した状態で引出し7を配置することは可能である。
【0018】
本実施形態の天板2はスチール製(勿論、木製等でもよい)であり、図2(B)に示すように、表面板8を左右長手の複数の溝型補強フレーム10で支持した構造であり、補強フレーム10に左右一対のレール8を取り付けて、このレール8に引出し7を前後動自在に装架している。
【0019】
例えば図3から容易に理解できるように、引出し7は、樹脂製の前板(前エッジといってもよい)12と、左右の側板13と、前板12及び側板13に固定した底板14とを備えており、底板14の後端に後ろ板15を折り曲げ形成している。
【0020】
側板13には、その上端に位置した角形部13aと下端に位置した下ガイド片13bとを外側に張り出すように形成しており、図2(B)に示すように、角形部13aをレール8で支持している。レール8の前部と側板13の後部とにはスライダー16を設けている。本実施形態では側板13と底板14とを別体に構成しているが、側板13を底板14に折り曲げ形成することも可能である。
【0021】
前板12と左右側板13と後ろ板15とで囲われた部分が主収容部17となっているが、図3及び図4から理解できるように、底板14の前部に左右長手の仕切り壁18を上向きに膨出形成することにより、主収容部17のうち手前側の部分を幅狭の前収納部17aと成している。底板14は前収納部17aの箇所で段が高くなっており、その前端に上向きの前面板14aを折り曲げ形成し、更に、前面板14aの上端に前向き片14bを折り曲げ形成している。
【0022】
図3及び図4に示すように、前板12は、側板13の前端及び底板14の前面板が突き合わさる基部12aと、その下部に設けた前向き張り出し部12bと、基部12aの下部に設けた後ろ向き張り出し部12cとを備えており、このため、前板12の前面は段違い状になっている。これは主としてデザイン的な要請に基づくものであり、前面をフラットに形成することも可能である。
【0023】
底板14の前端部は前板12の後ろ向き張り出し部12cに重なっている。このため、机の使用者は前板12の後ろ向き張り出し部12cの後面に指を掛けることができる。つまり、主収容部17の前部を段が高い前収納部17aと成したことにより、前板12の後ろ向き張り出し部12cを引手部と成すことができるのであり、従って、前板12に引手穴を設けてたり、別途引手片を設けたりする必要はない。
【0024】
前板12における基部12aには、側板13の前端部が嵌まる角形凹所19と底板14の前向き片14bが嵌まる横長溝20とを形成している。このため、前板12と側板13及び底板14とはガタツキのない状態にきっちりと固定される。なお、前板12と底板14とはビス等で固定されている。
【0025】
前板12は側板13の左右外側に張り出しており、張り出し部にキャップ21を装着することにより、主収容部17における前収納部17aの左右外側に張り出したポケット部22が形成されている。
【0026】
キャップ21は、上方及び前方に開口した本体部21aと、前板12の左右側端面に重なる端板21bとを備えており、端板21bに複数本(2本)のピン23を突設し、このピン23を前板12の端面に形成した穴24に強制的に嵌め込でいる。キャップ21には、側板13との干渉を回避するための逃がし部21cを形成しており、このため、ポケット部22の空所は逃がし部21cの箇所で僅かの深さしかない。
【0027】
本実施形態では、キャップ21と前板12とが共同してポケット部22を構成しているが、独立したポケット体を形成してこれを前板12又は側板13に固定したり、或いは、前板12の左右端部にポケット部22を一体形成したりすることも可能である。いずれにしても、ポケット部22にクリップやコイン、消しゴム等の小さい物を入れることができるため、小物の整理用として重宝である。
【0028】
図2(A)に示すように、左右に隣り合った天板2は1つの脚3で支持されているが、左右の天板2に設けた引出し7のポケット部22は互いに近接しており、脚3の上アームは左右に隣り合ったポケット部7の後方に隠れている。このため、多連式机において、引出し群の前面のラインを一直線状に揃えてスッキリとした体裁を得ることができる。
【0029】
なお、袖キャビネット4における最上段の引出し4aの上部前面も天板用引出し7の前板12と側面視で同じ段違い状に形成されており、このため、天板の引出し7と袖キャビネット4の上段引出し4aの前面のラインも一直線状に揃っていて美感に優れている。
【0030】
多連式机システムの左又は右端の箇所、及び、机ユニット1を単体で使用する場合は、天板2は脚3の上面全体に重なるが、この場合は、脚3における上フレーム3aの前面全体が引出し7のポケット部22で隠れている。従って、ポケット部22の左右幅寸法は脚3におこる上アーム3aの左右横幅よりもやや大きい寸法に設定している。
【0031】
ところで、図2(C)に示すように、引出し7の前面と脚3における上アーム3aの前面をおおよそ揃えることも可能である。この場合、引出し7と脚3の上アーム3aとの間隔はできるだけ詰まっているのが美感の点から好ましい。
【0032】
そして、レール8の取り付け位置は一定であることから、1つの脚3で1枚の天板2だけを支持する場合はポケット部22を備えていない引出しを使用し、1つの脚で2枚の天板2を支持する場合はポケット部22を備えた引出し7を使用することにより、引出し7と脚3との間の隙間をごく小さくした状態を保持して美感を確保することができる。
【0033】
本実施形態のように前板12にキャップ21を取り付けることでポケット部22を設ける構成にすると、ポケット部22を備えている引出し7と備えていない引出し7とで側板13及び底板14を兼用できる利点がある(前板だけを交換したらよい)。また、ポケット部22を備えていない引出しと備えた引出し7を併用する場合は、前板12を左右側板からはみ出ない長さとして、これにポケット部22を取り付けることにより、引出し自体をポケット部のあるものと無いものとに兼用することも可能である。
【0034】
(2).他の実施形態
図5では第2実施形態を示している。この実施形態では、ポケット部22は金属板製(スチール製)又は樹脂製であり、左右側板13に沿って前後方向に長く延びている(従って、この実施形態では、脚3と引出し7との関係は図2(C)の仕様になる。)
そして、ポケット部22をレール8による支持部に兼用している。このようにポケット部22を細長い形状に形成すると、ボールペンや定規のような長い物を整理てきる利点がある。図5(B)に一点差で示すように、ポケット部22を蓋(カバー)25で覆うことも可能である(この点は第1実施形態も同じである)。
【0035】
(3).その他
本願発明は上記の実施形態の他にも様々に具体化できる。例えば、適用対象としては机やテーブルの引出し7に限らず、キャビットやワゴンの引出しに適用することも可能である。また、引出しの素材には限定はなく、木製や樹脂製であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】多連式机システムの斜視図である。
【図2】(A) は天板を仮想線で示した平面図、(B) は(A) の B-B視断面図、(C) は引出しの他の配置形態を示す部分平面図である。
【図3】引出しの斜視図である。
【図4】引出しの要部を示す分離斜視図である。
【図5】第2実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
1 机ユニット
2 天板
3 脚
7 引出し
8 レール
12 前板
13 側板
14 底板
17 主収容部
21 キャップ
22 ポケット部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前板と左右の側板で仕切られた主収容部の左右外側のうちいずれか一方又は両方に、小物を収納可能な上向き開口のポケット部を設けている、
引出し。
【請求項2】
天板の下面箇所に引出しが装架されている複数の机ユニットを、左右に隣り合った天板の側面が突き合わさるようにして配置し、左右に隣り合った2枚の天板の端部を共通した一つの脚で支持して成る机システムであって、
前記引出しは、前板と左右の側板で仕切られた主収容部の左右外側のうち少なくとも前記脚に近い部分でかつ前部に横向きに張り出したポケット部を設けており、前記ポケット部を脚の手前に位置させるか、又は、ポケット部を脚の左右側面に近接させている、
多連式机システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−117473(P2007−117473A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−314640(P2005−314640)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【出願人】(000139780)株式会社イトーキ (833)
【Fターム(参考)】