説明

引出式担架を有するシャワーバス装置

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本考案は、寝たきり老人等の入浴に使用する引出式担架を有するシャワ−バス装置に関する。
【0002】
【従来の技術】シャワ−バス装置は、開閉自在な蓋体を備える浴槽内にあって担架上に入浴者を仰臥させ、その入浴者に対して、給湯機構に連なるノズル機構から噴出する湯を供与するように構成されるものであるが、かかるシャワ−バス装置の従来例としては、実公昭51−2049号公報や、実開昭63−1529号公報に見られるようなものが存在している。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】ところで、従来の技術のうち前者の実公昭51−2049号公報記載のものでは、担架が浴槽内に固定的に設置されており、開放態勢の蓋体が近辺に存在する制約状態のもとで、ストレッチヤから浴槽縁を越えて担架へ、又、担架から浴槽縁を越えてストレッチャへ入浴者を乗せ換えねばならないので、介助者による乗せ換え作業が行い辛くて、介助者には大きな労力負担となるという問題点があった。
【0004】その点、後者の実開昭63−1529号公報記載のものは、ストレッチャを担架移乗用レールを設けたシャワ−バス装置専用に構成し、このストレッチャに乗せて運んできた担架を、ストレッチャ及び浴槽内に設けた担架移乗用レ−ルに沿って動かして浴槽内にセットするように構成されているので、前者に比べると介助労力が軽減されることにはなっているのであるけれども、専用のストレッチヤを必要とする上、担架をストレッチャと浴槽との間でスライド移行させる為の担架移乗用レ−ルの合致連結が容易ではないといった問題点の残るものであった。
【0005】
【課題を解決するための手段】本考案の目的は、ストレッチヤから担架、担架からストレッチャへの入浴者の乗せ換えを、専用ストレッチャを必要とせず、従来のものに比べて格段に軽減された介助労力でもって行えるようにすることにあり、この目的達成のために次の技術手段を講じたものである。
【0006】すなわち、本考案における引出式担架を有するシャワ−バス装置は、蓋体(2)を備える浴槽(4)に収納される担架(10)上に入浴者を仰臥させ、その入浴者に対して上下ノズル機構(5)(6)から湯を供与するようになしたシャワ−バス装置において、前記担架(10)を浴槽(4)の内部に設置されるレ−ル(11)に沿って引出自在に設けてあることを特徴とするものである。
【0007】
【実施例】つぎに、本考案の実施例について図面を参照して説明する。図1は本考案に係る引出式担架を有するシャワ−バス装置の全体斜視図、図2は本考案装置の要部斜視概略図、図3は本考案装置における担架の一部を裏面側から見た斜視部分図、図4は該担架にストレッチャを接続した状態を示す側面図、図5は蓋体及び上部体の長辺方向の長さを本体よりやや短くした装置の斜視図である。
【0008】図示の引出式担架を有するシャワ−バス装置は、本体(1)と、開閉自在の蓋体(2)を備える上部体(3)とからなる浴槽(4)内に、上下方向に所定間隔をおいて二段に位置する上下ノズル機構(5)(6)を装設し、それらの上下ノズル機構に適温の湯を供給する給湯機構(図示省略)、ボディシャンプ−を供給するボディシャンプ−供給部などを連通連設して構成されている。
【0009】前記給湯機構は、湯源に直結する湯用定圧ポンプ、水リザ−ブタンクに連通する水用定圧ポンプ、湯と水を混合して任意の温度の湯を作るミキシングバルブ、給湯ラインなどによって構成され、ボディシャンプ−供給部は、給湯機構の前記給湯ラインの適当な部位に連通連設されるものとなっており、これらの運転操作は、運転表示部(7)において行えるようになっており、また、他の種々の運転操作も運転表示部(7)において行えるようになっている。
【0010】また、(8)は入浴者の胸部及び背中部に対応するノズルのシャワ−温度をやや低くするために設けられた放熱フィン、(9)は上部体に開設された首出部である。
【0011】上記のような引出式担架を有するシャワ−バス装置において、上下ノズル機構(5)(6)の間には入浴者が横臥する担架(10)が装備されるが、この担架装備構造が本考案にあっては次のようになっている。
【0012】本体(1)の正面側における長辺壁部の高さを、本体(1)の左右両短辺壁部よりも低く形成し、前記長辺壁部の上端よりも高くなる左右両短辺壁部の各内側に左右レ−ル(11)(11)を対向敷設する。
【0013】左右レ−ル(11)(11)の各一方は、図2にみられるように、上下方向に所定の間隔を置いて平行に短辺壁部の内面に固定される一対の上下レ−ル部材(11a)(11b)からなり、これらの上下レ−ル部材(11a)(11b)の間に、担架(10)側に設置される担架側ロ−ラ−(12)を挾み、差し込み、引出し移動可能に支持するものとなっている。
【0014】(13)(14)は、上下レ−ル部材のロ−ラ−転動面に突設された上下突部であって、これらの上下突部に、上下レ−ル部材に当接して転動する担架側ロ−ラ−が接触することによって、担架が或る位置まで差し込まれたこと及び或る位置まで引き出されたことを介助者に認識させるようになっていると共に、担架側ロ−ラ−が上下突部に当って担架の摺動に大きな抵抗を加え、担架の摺動の前後方向の限界点にて摺動を阻止する。
【0015】また、(15)は、担架側ロ−ラ−を上下レ−ル部材間に導入案内するために入り口部分に設けられた浴槽側ロ−ラ−であり、(16)(17)は、担架が最大引出位置に引き出されたときに衝合するように、担架と本体の短辺壁とに対応設置された担架側ストッパ−、浴槽側ストッパ−である。
【0016】さらに、(18)は、本体(1)の正面側における長辺壁部の上端部に付設される水切りブラシで、引き出される担架に付着した湯を拭い取って浴槽外に持ち出さないようにする為に設けられている。また、(19)はストレッチャである。
【0017】しかして、入浴を行うに際し、上記のように浴槽にセットされている担架(10)を引き出すと、最大引出位置になったところで担架側ストッパ−(16)、浴槽側ストッパー(17)が衝合して抜け外れが阻止されて、その位置に担架(10)が維持される。
【0018】担架の最大抜き出し位置では、担架の左右端縁部の下部を浴槽側ローラーで支持し、担架の左右端側部の担架側ローラーを上レール(11a)で押さえている。
【0019】浴槽側ローラーの高さ位置に対する上レールの高さ位置を適宜に調整した上固定することにより、担架の上下方向移動余裕を大きくしたり小さくしたり適宜に選択の上固定される。
【0020】また、上レールと浴槽側ローラーの上下方向における間隔、又は上レールと下レール間の上下方向におけける間隔を、調整の上固定取着することにより、担架の引き出し先端の上下方向に適宜な移動余裕を持たせ、担架を引き出し先端とストレッチャの接続状態を良好にしているので、ストレッチャの高さに多少のバラツキがあっても、床の勾配に対して、担架とストレッチャの接続対応が可能となり、一般的なストレッチャを用いて入浴できるので、専用ストレッチャを用意する手間や、そのコストが省け経済的である。
【0021】又、万一上ストッパーが下ストッパーに掛止されなかったとしても、上突部に担架側ローラーが当って担架の抜け外れを防止し、さらに、上レールを下レールよりやや長目にして担架の抜け外れを防止するようにしている。
【0022】この状態において、入浴者を乗せたストレッチャ(19)を担架(10)に横付けし、ストレッチャ(19)から担架(10)に入浴者を乗せ移す。担架の引き出し方向先端部は、ストレッチャの上面に僅か重ねて載せるか又は突き合わして、ストレッチャ上に横臥させた入浴者の背部に担架を位置させ、入浴者を仰臥するように回転させて担架に移乗させる。
【0023】入浴者が乗った担架を再び浴槽へ押し込むと、担架および入浴者が浴槽内の所定部位に位置される。
【0024】入浴者が浴槽内の所定部位に位置した後は、上部体(3)の蓋体(2)を閉じて、運転表示部(7)より給湯機構などを所期のように働かせることによって入浴を行うことができる。入浴が終われば、蓋体(2)を開き、上述とは逆に担架(10)を引き出して、その担架(10)にストレッチャ(19)を横付けし、ストレッチャ(19)上に入浴終了者を乗せ移すのである。
【0025】また、浴槽内部の清掃やメンテナンスの際には、担架(10)を最大引出位置に引き出して少し持ち上げ、担架側ストッパ−(16)が浴槽側ストッパ−(17)に衝合しないように上方にずらし、浴槽側ストッパーの上方を担架側ストッパーが越して担架を抜き外し、担架が浴槽上にない状態で清掃作業等を行うことができる。
【0026】外した担架を再び差し込む場合は、担架側ロ−ラ−(12)を、本体に敷設された上下レ−ル部材(11a)(11b)の入口にそれぞれ臨ませて押し込むと、担架側ロ−ラ−(12)が、浴槽側ロ−ラ−(15)にガイドされて上下レ−ル部材(11a)(11b)の間に入り込んで当接転動し、担架(10)は浴槽内にセットされる。
【0027】なお、図示の実施例では、本体(1)の左右短辺壁部に対向敷設する一対の左右レ−ル(11)(11)で担架を支承するように構成しているが、担架支承構造は図示のものに限定されず、図示を省略するが、例えば、一組のレ−ル(11)を中央部に手前から奥行き方向に配設して、そのレ−ルに担架をスライド移動自在に取付け、担架の左右両端部は、本体に設ける単なる支え部材に保持させるように変形構成する等、種々の手段が採れるのである。
【0028】又、図5に示すものは、入浴者の頭を完全に外に出す為に蓋体を長辺方向で本体よりやや短かくした場合の実施例である。
【0029】
【考案の効果】以上に説明してきたように、本考案における引出式担架を有するシャワ−バス装置は、開閉自在な蓋体(2)を備える浴槽(4)に収納される担架(10)上に入浴者を仰臥させ、その入浴者に対して上下ノズル機構(5)(6)から湯を供与するようになしたシャワ−バス装置において、前記担架(10)を浴槽(4)の内部に設置されるレ−ル(11)に沿って引出自在に設けたものであるから、作業に制約を受ける狭い浴槽内部分から外部の広い部分に担架を引き出して、作業し易い状態のもとで、ストレッチヤから担架、担架からストレッチャへの入浴者の乗せ換えをすることができ、介助労力が著しく軽減される。
【0030】又、専用ストレッチャが不要であり、汎用の一般的ストレッチャを使用することができる為、経費の節約につながる。又、専用ストレッチャの移乗用レールと浴槽の移乗用レールとを合致させるといった手数の係る作業が不要である為、入浴者をストレッチャと担架間で移乗させるに係る作業が容易になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案装置の全体斜視図である。
【図2】本考案装置の要部斜視概略図である。
【図3】本考案装置における担架の一部を裏面側から見た斜視部分図である。
【図4】本考案装置における担架にストレッチャを接続した状態を示す側面図である。
【図5】本考案装置の蓋体及び上部体の長辺方向の長さを本体より短かくしたものの斜視図である。
【符号の説明】
2 蓋体
4 浴槽
5 上ノズル機構
6 下ノズル機構
10 担架
11、11 左右レ−ル

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】蓋体(2)を備える浴槽(4)に収納される担架(10)上に入浴者を仰臥させ、その入浴者に対して上下ノズル機構(5)(6)から湯を供与するようになしたシャワ−バス装置において、前記担架(10)を浴槽(4)の内部に設置されるレ−ル(11)に沿って引出自在に設けてあることを特徴とする引出式担架を有するシャワ−バス装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【登録番号】第2527495号
【登録日】平成8年(1996)11月18日
【発行日】平成9年(1997)2月26日
【考案の名称】引出式担架を有するシャワーバス装置
【国際特許分類】
【出願番号】実願平3−6488
【出願日】平成3年(1991)1月22日
【公開番号】実開平4−103133
【公開日】平成4年(1992)9月4日
【出願人】(000103471)オージー技研株式会社 (109)
【参考文献】
【文献】特開 昭58−159748(JP,A)
【文献】実開 昭63−1529(JP,U)
【文献】実開 平4−40636(JP,U)