説明

引戸の戸袋および引戸の戸袋の施工方法

【課題】強度を保ちつつ容易に作成できる引戸の戸袋を提供することを目的とする。
【解決手段】引戸の戸袋は、互いに平行に離間して対向配置された2つの波形鋼板1aと、前記2つの波形鋼板1aの外側に設けられた壁面材3とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引戸の戸袋および引戸の戸袋の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、引戸の戸袋の内部構造は軸組みで作成され、強度が確保されていた。例えば、図8に示す戸袋用フレーム100は、少なくとも縦枠部となる縦芯材101A、101Bと上端芯材102と下端芯材103から構成される。ここで、縦芯材101Bは、2つの縦芯材要素101a,101bが離間して平行に設けられ、引戸を収納するための開口部が形成されていた。そして、矩形状の戸袋用フレーム100の内側に配置され、戸袋用フレーム100の中央部において戸袋用フレーム100の上下と接合される縦方向に長尺な縦芯材104が設けられ、前記縦芯材104と戸袋用フレーム100とを横方向に接合する複数の横芯材105が設けられた軸組構造において、戸袋の強度を確保していた。そして、戸袋用フレームと縦芯材等に壁面材等が取付けられて、引戸の戸袋が作成されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−238923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、引戸の戸袋を軸組みで作成する方法においては、戸袋用フレーム100内に複数の縦芯材104および複数の横芯材105を個々に取付ける必要があるため、手間を要していた。更に、引戸を収納する収納部106は、壁面材間の狭い空間に設けられ、互いに対向する縦芯材104.104間と互いに対向する横芯材間105,105とで形成されるため、縦芯材104と横芯材105の取付けに高い精度が要求されていた。
【0005】
そのため、強度を保ちつつ容易に作成できる引戸の戸袋および引戸の戸袋の施工方法を提供することが望まれる。
【0006】
本発明は、強度を保ちつつ容易に作成できる引戸の戸袋および引戸の戸袋の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題の少なくとも一つを解決するために、請求項1に記載の引戸の戸袋に係る発明は、例えば、図1、図2に示すように、
互いに平行に離間して対向配置された2つの波形鋼板1aと、
前記2つの波形鋼板1aの外側に設けられた壁面材3と、
を備えていることを特徴とする。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、互いに平行に離間して対向配置された2つの波形鋼板1aと、前記2つの波形鋼板1aの外側に設けられた壁面材3とを備えることにより、波形鋼板1aの強度を戸袋に利用でき、戸袋を軸組みで作成する必要がなくなるため、強度を保ちつつ容易に作成できる引戸の戸袋を提供できる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、例えば、図1、図6に示すように、
請求項1に記載の引戸の戸袋において、
前記2つの波板鋼板1a,1aの一端部を連結する連結部材5,6,7を更に備えるこ
とを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、連結部材5,6,7により前記2つの波板鋼板1a,1aの一端部を連結することにより、2つの波板鋼板1a,1aの間隔を一定にすることができるため、引戸の厚みに合わせて、2つの波板鋼板1a,1aの間隔を所望の間隔にすることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、例えば、図1〜図3に示すように、
請求項1または2に記載の引戸の戸袋において、
前記波形鋼板1a,1aは、複数の一定の平面幅を有する山部1cと複数の一定の平面幅を有する谷部1dとから構成され、縦方向に山部1cおよび谷部1dが延びるように配置され、前記壁面材3と前記山部1cとが面で接していることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、複数の一定の平面幅を有する山部1cと複数の一定の平面幅を有する谷部1dとから構成され、縦方向に山部1cおよび谷部1dが延びるように配置され、前記壁面材3と前記山部1cとが面で接していることにより、縦方向における戸袋の強度を特に強くすることができ、山部1cと壁面材3との接触面が横方向に広くなるため、ビス8等により壁面材3を波形鋼板1aに容易に固定できる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、例えば、図1、図4に示すように、
請求項3に記載の引戸の戸袋において、
前記波形鋼板1a,1aの山部1cと前記壁面材3とは、縦方向および横方向において、それぞれ複数個所において、ビス8で固定されていることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、前記波形鋼板1a,1aの山部1cと前記壁面材3とが、縦方向および横方向において、それぞれ複数個所において、ビス8で固定されていることにより、前記波形鋼板1a,1aの山部1cが複数個所においてビス8で壁面材3側に引き付けられて固定されるため、波形鋼板1a,1aが戸袋内部において移動することがなく、戸袋の収納空間を確実に確保することができる。
【0015】
請求項5に記載の引戸の戸袋の施工方法に係る発明は、例えば、図6、図7に示すように、
床23上に間仕切り壁を組むことで、当該間仕切り壁に矩形の引き戸用開口部25を形成し、
前記引き戸用開口部25の一部に、連結部材5,6,7と、この連結部材5,6,7を挟んで連結部材5,6,7に取付けられる波板鋼板1a,1aとを有する戸袋本体を設け、前記波板鋼板1a,1a上に壁面材3を取り付けることを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、前記引き戸用開口部25の一部に、連結部材と、この連結部材を挟んで連結部材に取付けられる波板鋼板1a,1aとを有する戸袋本体を設け、前記波板鋼板1a,1a上に壁面材3を取り付けることにより、波形鋼板1a,1aによる強度を戸袋に利用でき、戸袋を軸組みで作成する必要がなくなるため、強度を保ちつつ容易に作成できる引戸の戸袋を作成できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、強度を保ちつつ容易に作成できる引戸の戸袋および引戸の戸袋の施工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る引戸の戸袋の一例を示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は図1(a)のA部の拡大図である。
【図2】同、(a)は図1のI−I断面図、(b)は図2(a)のA部の拡大図である。
【図3】本発明に係る引戸の戸袋の波板パネルの一例を示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は斜視図である。
【図4】本発明に係る引戸の戸袋の一例を示す図であり、壁面材の取り付け例を示す斜視図である。
【図5】同、図4のI−I断面図である。
【図6】本発明に係る引戸の戸袋を施工する手順の一例を示す図であり、(a)は引き戸用開口部において縦連結部材と上部連結部材と下部連結部材とを取り付けた状態を示す斜視図、(b)は図6(a)の部分拡大図を示し、(c)は図6(b)の拡大部分に取付けられる波板パネルの一例を示す斜視図である。
【図7】同、壁面材と化粧枠の取付け例を示す斜視図である。
【図8】従来の引戸の戸袋の軸組み構造一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
本発明の引戸の戸袋は、パネル工法により構築される建築物の部屋の間仕切りにおいて適用されるものである。
【0020】
なお、パネル工法とは、壁や床、屋根などの構成要素を予め工場でパネル化し、施工現場でパネルを組み立てて建築物を構築する施工方法である。パネル工法に用いられるパネルは、主に木質パネルであり、縦横の框材を矩形状に組み立てるとともに、矩形枠の内部に補助棧材を縦横に組み付け、框材と補助棧材との両面もしくは片面に、面材を貼設したものである。
【0021】
<実施の形態>
図1、図2において、戸袋10は、少なくとも、互いに平行に離間して対向配置された2つの波形鋼板1aと、前記2つの波形鋼板1aの外側に設けられた壁面材3とを備えている。そして、図1、図6に示すように、戸袋10は、前記2つの波板鋼板1a,1aの一端部を連結する連結部材として、縦連結部材5と上部連結部材6と下部連結部材7を更に備えている。
【0022】
図3に示すように、波板パネル1は、波板鋼板1aと調整材1bとで構成されている。図1〜図3に示すように、波板鋼板1a,1aは、複数の一定の平面幅を有する山部1cと複数の一定の平面幅を有する谷部1dとから構成され、縦方向に山部1cおよび谷部1dが延びるように配置され、前記壁面材3と前記山部1cとが面で接している。波板鋼板1aの両端部には、山部1cの裏面に調整材1bが縦方向に延設してビス8で取付けられている。ここで、調整材1bは、例えば、合板等の木材からなり、波板鋼板1aに調整材1bを釘で固定してもよい。また、戸袋10の引戸を収納する開口部側の調整材1bには、化粧枠受け9bがビス等により取付けられ、化粧枠受け9bに化粧枠9aの一部がはめ込まれるようして取付けられている。
【0023】
図6(b)に示すように、縦連結部材5は、縦連結部材要素5a,5bからなる。縦連結部材要素5aは、壁パネル20の側面の厚み方向中央に縦方向に接着剤、釘等により固定される。そして、縦連結部材要素5bは、縦連結部材要素5bに縦方向に接着剤、釘等により固定される。
【0024】
図6に示すように、上部連結部材6は、上部連結部材要素6a,6b,6cが吊戸レール6dにコ字状に取付けられ構成され、下り壁パネルの下面の厚み方向中央に横方向に延
設して取付けられている。上部連結部材6は、図5に示すように、下り壁パネルのフレーム21aにビス8等で取付けられる。ここで、図5に示すように、波板鋼板1a,1aの上部において、波形鋼板1aの谷部1dは、上部連結部材6にビス8が斜め上方を向くようにねじ込まれ取付けられている。吊戸レール6dには、ローラ2aを保持するローラ保持部材2bを介して、吊戸2が開閉可能に取付けられている。
【0025】
下部連結部材7は、上部連結部材6の真下の床23上に上部連結部材6と平行な下部連結部材7が取り付けられている。ここで、図5に示すように、波板鋼板1a,1aの下部において、波形鋼板1aの谷部1dは、下部連結部材7にビス8が斜め下方を向くようにねじ込まれ取付けられている。下部連結部材7は、床仕上げ材24と同じ厚さであることが床面の段差をなくす点で望ましい。
【0026】
縦連結部材5と上部連結部材6と下部連結部材7とに波板パネル1を取付けると、波板パネル1の山部1cの平面と壁パネル20平面とが横方向において同一面となるように取付けられている。また、波板パネル1の山部1cの平面と下り壁パネル21の平面とが縦方向において同一面となるように取付けられている。そのため、図7に示すように、壁面材3を壁パネル20にビス8で取り付け、壁面材3を波板パネル1と下り壁パネル21にビス8で取り付けた場合、互いに隣り合う壁面材3の接合部に段差が生じることがない。また、図4に示すように、前記波形鋼板1a,1aの山部1cと前記壁面材3とは、縦方向および横方向において、それぞれ複数個所において、ビス8で固定されている。ここで、波板鋼板1a,1a上に壁面材3を複数のビス8で取り付ける場合、壁面材3および波板鋼板1aに穴を開けて、壁面材3側に波板鋼板1aが引き付けられて固定されるため、ドリルビスを用いるのが望ましい。
【0027】
本実施の形態によれば、互いに平行に離間して対向配置された2つの波形鋼板1aと、前記2つの波形鋼板1aの外側に設けられた壁面材3とを備えることにより、波形鋼板1aの強度を戸袋に利用でき、戸袋を軸組みで作成する必要がなくなるため、強度を保ちつつ容易に作成できる引戸の戸袋を提供できる。
【0028】
また、本実施の形態によれば、連結部材5,6,7により前記2つの波板鋼板1a,1aの一端部を連結することにより、2つの波板鋼板1a,1aの間隔を一定にすることができるため、引戸の厚みに合わせて、2つの波板鋼板1a,1aの間隔を所望の間隔にすることができる。
【0029】
また、本実施の形態によれば、複数の一定の平面幅を有する山部1cと複数の一定の平面幅を有する谷部1dとから構成され、縦方向に山部1cおよび谷部1dが延びるように配置され、前記壁面材3と前記山部1cとが面で接していることにより、縦方向における戸袋の強度を特に強くすることができ、山部1cと壁面材3との接触面が横方向に広くなるため、ビス8等により壁面材3を波形鋼板1aに容易に固定できる。
【0030】
また、本実施の形態によれば、前記波形鋼板1a,1aの山部1cと前記壁面材3とが、縦方向および横方向において、それぞれ複数個所において、ビス8で固定されていることにより、前記波形鋼板1a,1aの山部1cが複数個所においてビス8で壁面材3側に引き付けられて固定されるため、波形鋼板1a,1aが戸袋内部において移動することがなく、戸袋の収納空間を確実に確保することができる。
【0031】
(引戸の戸袋の施工方法)
図6、図7に示すように、矩形状の壁パネル20,20の間に壁パネル20より縦方向に短い矩形状の下り壁パネル21を接着剤、釘等で接合して床23上に間仕切り壁を組むことで、前記下り壁パネル21の下方に矩形の引き戸用開口部25を形成する。そして、
前記引き戸用開口部25に面した前記壁パネル20の側面の厚み方向中央に、縦連結部材5を縦方向に取り付ける。更に、前記下り壁パネル21の下面の厚み方向中央に、上部連結部材6を横方向に取り付け、前記上部連結部材6の真下の床上に前記上部連結部材6と平行な下部連結部材7を取り付ける。前記縦連結部材5と前記上部連結部材6と前記下部連結部材7とを挟み込むように波板パネル1を接着剤、ビス8等で固定する。前記縦連結部材5と波板パネル1の調整材1bには接着剤を塗布して接着する。前記上部連結部材6と前記下部連結部材7とに波板鋼板1aの谷部1dをビス8で固定する。そして、波板鋼板1a,1aおよび調整材1b上に壁面材3を複数のビス8で取り付ける。波板鋼板1a,1a上に壁面材3を複数のビス8で取り付ける場合、壁面材3および波板鋼板1aに穴を開けて、壁面材3側に波板鋼板1aが引き付けられて固定されるため、ドリルビスを用いるのが望ましい。
【0032】
本実施の形態によれば、前記引き戸用開口部25において、前記縦連結部材5と前記上部連結部材6と下部連結部材7とを取り付け、前記縦連結部材5と前記上部連結部材6と前記下部連結部材7とを挟み込むように波板鋼板1a,1aを固定し、前記波板鋼板1a,1a上に壁面材3を取り付けることにより、波形鋼板1a,1aによる強度を戸袋に利用でき、戸袋を軸組みで作成する必要がなくなるため、強度を保ちつつ容易に作成できる引戸の戸袋を作成できる。
【0033】
(変形例)
上記実施の形態では、前記引き戸用開口部25に面した前記壁パネル20の側面の厚み方向中央に、縦連結部材5を縦方向に取り付け、前記下り壁パネル21の下面の厚み方向中央に、上部連結部材6を横方向に取り付け、前記上部連結部材6の真下の床上に前記上部連結部材6と平行な下部連結部材7を取り付けた例について説明した。これに限らず、工場で、前記縦連結部材5と前記上部連結部材6と前記下部連結部材7をコ字状に連結部材として作成し、現場で、引き戸用開口部25に前記連結部材を取付けるようにしてもよい。また、工場で、前記縦連結部材5と前記上部連結部材6と前記下部連結部材7のうち少なくとも一つを挟み込むように波板パネル1を設けた戸袋本体を作成し、現場で、引き戸用開口部25に戸袋本体を取付けるようにしてもよい。
【0034】
上記変形例においても、波形鋼板1a,1aによる強度を戸袋に利用でき、戸袋を軸組みで作成する必要がなくなるため、強度を保ちつつ容易に作成できる引戸の戸袋を作成できる。
【符号の説明】
【0035】
1 波板パネル
1a 波形鋼板
1c 山部
1d 谷部
3 壁面材
5 縦連結部材
6 上部連結部材
7 下部連結部材
8 ビス
100 戸袋用フレーム
101A 縦芯材
102 上端芯材
103 下端芯材
104 縦芯材
105 横芯材
106 収納部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行に離間して対向配置された2つの波形鋼板と、
前記2つの波形鋼板の外側に設けられた壁面材と、
を備えていることを特徴とする引戸の戸袋。
【請求項2】
請求項1に記載の引戸の戸袋において、
前記2つの波板鋼板の一端部を連結する連結部材を更に備えることを特徴とする引戸の戸袋。
【請求項3】
請求項1または2に記載の引戸の戸袋において、
前記波形鋼板は、複数の一定の平面幅を有する山部と複数の一定の平面幅を有する谷部とから構成され、縦方向に山部および谷部が延びるように配置され、前記壁面材と前記山部とが面で接していることを特徴とする引戸の戸袋。
【請求項4】
請求項3に記載の引戸の戸袋において、
前記波形鋼板の山部と前記壁面材とは、縦方向および横方向において、それぞれ複数個所において、ビスで固定されていることを特徴とする引戸の戸袋。
【請求項5】
床上に間仕切り壁を組むことで、当該間仕切り壁に矩形の引き戸用開口部を形成し、
前記引き戸用開口部の一部に、連結部材と、この連結部材を挟んで連結部材に取付けられる波板鋼板とを有する戸袋本体を設け、前記波板鋼板上に壁面材を取り付ける
ことを特徴とする引戸の戸袋の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−215039(P2012−215039A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81792(P2011−81792)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(307042385)ミサワホーム株式会社 (569)