説明

引戸構造体

【課題】 引戸の開閉時の制動及び閉時の引戸停止の動作性を有効に調整し閉時の縦枠と引戸の衝撃、振動や騒音、手指を挟む怪我の発生、引戸閉時の隙間を有効に解消し、開閉操作性を向上させ、引戸を長期に使用しても戸板の走行速度の制動力が弱くなるといったことがなく、戸板閉時の戸板停止状態を安定させ、極めて開閉操作性に優れた引戸構造体を提供する。
【解決手段】 上枠、下枠、左右縦枠からなる引戸枠と、該引戸枠内を上下枠に沿って左右に滑動する戸板と、上部ガイドレール、下部ガイドレールからなり、戸板上端縁にガイドランナー、戸板下端縁に走行具が取り付けられ、ガイドレールによって戸板の走行がガイドされ、走行具によって戸板が走行する引戸構造体であって、戸板上端縁の戸閉まり側の端部に走行緩衝装置を設けるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建物などに使用される引戸構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅等の建物に使用されている引戸を開閉する際、開閉操作時に力が入りすぎて引戸が勢い良く縦枠に衝突することが多々あった。また、衝突によって引戸が振動したり、騒音が発生したり、場合によっては手指を挟んで怪我をする事故が発生するといった問題があった。
【0003】
そのため、引戸が縦枠に衝突することによって引き起こされる振動、騒音を防止したり、手指を挟んで思わぬ怪我をするといった事故を防ぐために従来からさまざまな工夫がなされている。例えば、引戸下部にある戸車の回転が増大するのに伴って摩擦係数の大きな当接部材が突出し、湾曲部材に接触して戸車の回転を減速させる機構を有する引戸の制動装置に関する記載がある。(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平8−151851号公報(第2−3頁、第1図)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特開平8−151851号公報に記載されている引戸の制動装置は、戸板下端縁に設けられた回転体とゴム材質からなる当接部材の接触による両部材の摩擦力によって回転体の回転を弱め、このことによって、戸板の走行速度を制動する仕組みであるので、引戸を長期間開閉操作すると、前記両部材に摩滅が生じ、制動力が弱くなる。すなわち、引戸の長期耐久性能に自ずと限界が生じていた。
【0006】
また、一旦取り付け施工された引戸も長期間の使用により、縦枠上下枠等の建て付け状態が変化し、せっかく取り付けられた引戸を再度調整する必要性が多々生じていた。戸車の上下調整のみならず、制動機構や停止機構の微調整を、こまめに精確良く、しかも、確実に実施する必要がある。
【0007】
しかし、前記特開平8−151851号公報に記載の、回転体とゴム材質からなる当接部材の接触による両部材の摩擦力によって回転体の回転を弱める構造では、前記両部材に摩滅が生じ、制動力が弱くなり、引戸の長期耐久性能に限界があるといった問題点があった。
【0008】
また、戸板閉時に、よく注意して完全に閉めるように心がけないと、戸板の戸先側端縁と縦枠との間に若干の隙間が生じる場合が多々あった。特に長期間引戸を使用して建て付けが少し悪くなった場合、縦枠と戸板の戸先側端縁との隙間解消が困難になっていた。
【0009】
また、回転体とゴム材質からなる当接部材の接触による両部材の摩擦力が摩滅によって弱くなりすぎると、戸板開時においては、急に戸板が開くトラブルについても良く注意しないと問題となることが多々あった。また、前記両部材の摩擦力が強くなりすぎると、戸板開時において、戸板を開く際に過大な力を要し非常に開けづらくなるといった問題点もあった。
【0010】
本発明の目的は、引戸を閉める際、及び、開く際の制動及び閉時の引戸停止の動作性を有効に調整することで、閉時の縦枠と引戸の衝撃、及び、振動や騒音、また、それらの間に手指を挟むことによる怪我の発生を有効に解消し、さらに、引戸閉時における縦枠との隙間を解消し、戸板を閉める際も、また、開く際も、スム−ズに開閉が可能で、しかも、引戸を長期間使用し、開閉操作を長期間にわたって実施しても、戸板の走行速度の制動力が弱くなるといったことがなく、戸板閉時において戸板停止状態を安定的に保持でき、戸板開時においても急に戸板が開くこともなく、また、戸板を開く際に過大な力を要することもなくスムーズに開けることができ、極めて開閉操作性に優れた引戸構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載の引戸構造体は、上枠、下枠、左右縦枠からなる引戸枠と、該引戸枠内を上下枠に沿って左右に滑動する戸板とからなり、上枠に上部ガイドレールが設けられ、前記戸板の上端縁に走行ガイド部及びガイドランナーが設けられ、前記下枠に下部ガイドレールが設けられ、戸板下端縁に戸板の下部走行具が設けられ、前記上部と下部のガイドレールによって戸板の走行がガイドされ、前記走行ガイド部及びガイドランナーと、前記下部走行具によって戸板が走行する引戸構造体であって、戸板上端縁及び上部ガイドレールの戸閉まり側の端部に走行緩衝装置が設けられていることを特徴とする。
【0012】
このような構成から、引戸構造体の戸板上端縁及び上部ガイドレールの戸閉まり側の端部に走行緩衝装置が設けられているので、引戸を閉める時、前記走行緩衝装置の働きで、引戸をほどよく制動することが可能で、引戸を勢いよく閉めた時に引戸が縦枠に衝突して生じる衝撃や振動や騒音を有効に防止し、しかも、手指を縦枠と引戸の間に誤って挟んで思わぬ怪我をするといった危険が防止できる。
【0013】
本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の引戸構造体において、前記走行緩衝装置が上部ガイドレール内の戸閉まり側の端部に設けられた係止具と戸板上端縁の戸閉まり側の端部に設けられた緩衝治具とからなり、前記係止具は上部ガイドレール内に取り付け固定する平板片と該平板片から垂下して設けられ、上部ガイドレールに平板片によって固定されている係止ピンとからなり、前記緩衝治具は、戸板上端縁の戸閉まり側の端部に設けられ、係止ピンをくわえ込み、又は、くわえ込み解除が自在な構成とされ、係止ピンを脱着自在とするキャッチ部と、他端部に設けられ、オイルダンパーを固定する固定部と、その間に設けられるオイルダンパーとからなり、前記キャッチ部の後端縁にオイルダンパーの戸閉まり側の端部が固定され、この状態でキャッチ部が戸板上端縁の戸閉まり側の端部に戸板に対して固定非固定自在な構成とされており、戸板の閉時、上枠内の上部ガイドレールから垂下して設けられている前記係止ピンを、緩衝治具のキャッチ部にくわえ込ませた状態のまま戸板を閉方向に付勢させると、前記キャッチ部の固定が解除され、キャッチ部が係止ピンをくわえたまま上部ガイドレールに対して固定され、戸板に対して移動し、キャッチ部と固定部の距離が縮小し、戸板が閉方向に付勢されながら移動し、オイルダンパーが縮む際の抵抗力が生じ、このようなオイルダンパーの働きで前記付勢力に抵抗が働き、戸板の閉まり方向の走行速度にブレーキが作動し、このことで戸板の戸閉まり速度を適宜調整可能としたことを特徴とする。
【0014】
このような構成から、引戸の戸板を閉める時、前記係止ピンを、緩衝治具のキャッチ部にくわえ込ませた状態のまま戸板を閉方向に付勢させると、前記キャッチ部の固定が解除され、キャッチ部が係止ピンをくわえたまま上部ガイドレールに対して固定され、戸板に対して移動し、キャッチ部と固定部の距離が縮小し、戸板が閉方向に付勢されながら移動する際、前記オイルダンパーの働きで、引戸閉時の走行速度をよりいっそう適度に制動することが可能で、引戸を勢いよく閉めた時に引戸が縦枠に衝突して生じる衝撃や振動や騒音や指の怪我の防止にとって、よりいっそう好適である。すなわち、戸板を閉める際も、また、開く際も、スム−ズに開閉可能で、しかも、引戸を長期間使用し、開閉操作を長期間にわたって実施しても、戸板の走行速度の制動力が弱くなるといったことがない引戸構造体を提供することができる。
【0015】
本発明の請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の引戸構造体において、前記緩衝治具のキャッチ部と固定部を結ぶコイルバネが設けられており、コイルバネの戸閉まり側の端部がキャッチ部に係止され、他端部が固定部に係止され、コイルバネの伸縮にともない戸板が係止ピンに対して移動自在な構成とされ、前記緩衝治具のキャッチ部は、戸板の戸閉まり側の端部位置においてその位置を戸板に対して維持固定し又は固定を解除自在とする構成のロックが設けられており、戸板閉時、前記キャッチ部が係止ピンをくわえ込み、キャッチ部を押すと前記ロックが外れ、逆に、戸板開時、キャッチ部が戸板の戸閉まり側の端部位置にまで戻ると前記ロックが掛かる構成とされ、戸板閉時に前記キャッチ部が係止ピンをくわえ込み前記ロックが外れると、キャッチ部が係止ピンをくわえたまま上部ガイドレールに対して固定されたまま、戸板に対して移動し、コイルバネが伸長位置から収縮位置まで縮む方向のコイルバネの収縮力で、戸板が閉方向に付勢され、逆に、戸板開時に前記キャッチ部が戸閉まり側の端部位置にまで戻ると、前記ロックが掛かかることを特徴とする。
【0016】
このような構成から、引戸構造体の戸板を閉める際、キャッチ部が係止ピンをくわえ込むと、キャッチ部のロックが外れ、キャッチ部が係止ピンをくわえたまま上部ガイドレールに対して固定され戸板に対して移動し、前記コイルバネの収縮力で戸板が閉方向に付勢されるが、前記オイルダンパーの働きで、戸板の戸閉まり側の端縁が縦枠に近づく際に戸板の閉まり方向の走行速度にブレーキが作動し、戸板の戸閉まり速度が遅くなり、適正な速度で戸板を閉めることが可能となる。
【0017】
さらに、万が一、縦枠に当接する直前で停止し戸板が完全に閉まりきらずに、縦枠と戸板の戸時まり側の端縁との間に若干の隙間が発生しそうになっても、前記緩衝治具のキャッチ部と固定部を結ぶコイルバネが設けられているので、戸板閉時にコイルバネの縮む方向の力で戸板が閉方向に付勢され、戸板と縦枠との隙間が解消する。しかも戸板の停止状態を安定的に保持できる。
【0018】
また、戸板開時においても、前記オイルダンパーとコイルバネの働きで、戸板が急に開くといったトラブルの防止にも役立ち、スム−ズな引戸の開閉が可能となる。
【0019】
本発明の請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の引戸構造体において、前記走行緩衝装置のコイルバネの一方の端部を係止する前記固定部の取り付け位置がコイルバネの長さ方向に沿って移動可能とされ、コイルバネの固定部位置が適正位置に調整可能な構成とされ、コイルバネの伸長位置から収縮位置までの長さを自在に調節することができることを特徴とする。
【0020】
このような構成から、コイルバネの一方の端部を係止する前記固定部の取り付け位置がコイルバネの長さ方向に沿って移動可能とされ、コイルバネの固定部位置が適正位置に調整可能な構成とされ、コイルバネの伸長位置から収縮位置までの長さを自在に調節することができるので、コイルバネが作用する力の強弱の調整が可能となる。従って、戸板閉時において、縦枠と戸板の隙間が生じる傾向を解消するには、前記コイルバネの伸長位置から収縮位置までの長さを大きくしバネの縮む力を大きくすればよい。また、逆に、戸板開時において、戸板を開ける際に過大な力を要し開けづらいといった場合には、前記コイルバネの伸長位置から収縮位置までの長さを小さくし、バネの縮む力を小さくすればよい。
【0021】
本発明の請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の引戸構造体において、前記走行緩衝装置の緩衝治具の前記キャッチ部が弾性体からなる波型段部で構成され、前記走行緩衝装置の係止具の平板片に調整孔が設けられ、該調整孔は、戸板の走行方向と略直交方向に細長い形状の長穴であり、該長穴を利用して前記平板片が戸板の走行方向と略直交方向に位置を微調整可能に設けられ、戸板上端縁の戸閉まり側の端部に設けられている走行緩衝装置の後部近傍に走行ガイド部が設けられ、戸板上端縁の他端部にガイドランナーが設けられ、前記走行ガイド部とガイドランナーは、偏心回転可能とする円盤状の回転体と、その下部に設けられている鋸歯部が形成された調整体で構成されており、前記係止具の平板片の調整孔による平板片の位置、走行ガイド部の回転体を偏心回転させることによる回転体の位置、ガイドランナーの回転体を偏心回転させることによる回転体の位置をそれぞれ適正な位置に微調整可能な構成とされていることで、戸板走行方向の左右バランスが微調整可能とされていることを特徴とする。
【0022】
このような構成から、前記走行緩衝装置の緩衝治具の前記キャッチ部が弾性体からなる波型段部で構成されているので、戸板閉時において、係止ピンのくわえ込みの際、係止ピンが波型段部にくわえ込まれ、しかも、波型段部が弾性体からなるので、適度な力で係止ピンを保持することが可能となる。
【0023】
また、前記係止具の平板片の調整孔による平板片の戸板厚み方向の位置、走行ガイド部の回転体を偏心回転させることによる回転体の戸板厚み方向の位置、ガイドランナーの回転体を偏心回転させることによる回転体の戸板厚み方向の位置をそれぞれ適正な位置に微調整可能となる。すなわち、戸板の走行方向と略直交方する方向(戸板厚み方向)に調整可能に設けられているので、引戸の走行時に、戸板走行方向に対して戸板の左右方向のバランスが適度に調整可能になる。従って、戸板走行性が極めて向上する。
【発明の効果】
【0024】
請求項1に記載の発明によれば、引戸構造体の戸板上端縁及び上部ガイドレールの戸閉まり側の端部に走行緩衝装置が設けられているので、引戸を閉める時、前記走行緩衝装置の働きで、引戸をほどよく制動することが可能で、引戸を勢いよく閉めた時に引戸が縦枠に衝突して生じる衝撃や振動や騒音を有効に防止し、しかも、手指を縦枠と引戸の間に誤って挟んで思わぬ怪我をするといった危険が防止できる。
【0025】
請求項2に記載の発明によれば、引戸の戸板を閉める時、前記係止ピンを、緩衝治具のキャッチ部にくわえ込ませた状態のまま戸板を閉方向に付勢させると、前記キャッチ部の固定が解除され、キャッチ部が係止ピンをくわえたまま上部ガイドレールに対して固定され、戸板に対して移動し、キャッチ部と固定部の距離が縮小し、戸板が閉方向に付勢されながら移動する際、前記オイルダンパーの働きで、引戸閉時の走行速度をよりいっそう適度に制動することが可能で、引戸を勢いよく閉めた時に引戸が縦枠に衝突して生じる衝撃や振動や騒音や指の怪我の防止にとって、よりいっそう好適である。すなわち、戸板を閉める際も、また、開く際も、スム−ズに開閉可能で、しかも、引戸を長期間使用し、開閉操作を長期間にわたって実施しても、戸板の走行速度の制動力が弱くなるといったことがない。
【0026】
請求項3に記載の発明によれば、引戸構造体の戸板を閉める際、キャッチ部が係止ピンをくわえ込むと、キャッチ部のロックが外れ、キャッチ部が係止ピンをくわえたまま上部ガイドレールに対して固定され戸板に対して移動し、前記コイルバネの収縮力で戸板が閉方向に付勢されるが、前記オイルダンパーの働きで、戸板の戸閉まり側の端縁が縦枠に近づく際に戸板の閉まり方向の走行速度にブレーキが作動し、戸板の戸閉まり速度が遅くなり、適正な速度で戸板を閉めることが可能となる。
【0027】
さらに、万が一、縦枠に当接する直前で停止し戸板が完全に閉まりきらずに、縦枠と戸板の戸時まり側の端縁との間に若干の隙間が発生しそうになっても、前記緩衝治具のキャッチ部と固定部を結ぶコイルバネが設けられているので、戸板閉時にコイルバネの縮む方向の力で戸板が閉方向に付勢され、戸板と縦枠との隙間が解消する。しかも戸板の停止状態を安定的に保持できる。
【0028】
また、戸板開時においても、前記オイルダンパーとコイルバネの働きで、戸板が急に開くといったトラブルの防止にも役立ち、スム−ズな引戸の開閉が可能となる。
【0029】
請求項4に記載の発明によれば、コイルバネの一方の端部を係止する前記固定部の取り付け位置がコイルバネの長さ方向に沿って移動可能とされ、コイルバネの固定部位置が適正位置に調整可能な構成とされ、コイルバネの伸長位置から収縮位置までの長さを自在に調節することができるので、コイルバネが作用する力の強弱の調整が可能となる。従って、戸板閉時において、縦枠と戸板の隙間が生じる傾向を解消するには、前記コイルバネの伸長位置から収縮位置までの長さを大きくしバネの縮む力を大きくすればよい。また、逆に、戸板開時において、戸板を開ける際に過大な力を要し開けづらいといった場合には、前記コイルバネの伸長位置から収縮位置までの長さを小さくし、バネの縮む力を小さくすればよい。
【0030】
請求項5に記載の発明によれば、前記走行緩衝装置の緩衝治具の前記キャッチ部が弾性体からなる波型段部で構成されているので、戸板閉時において、係止ピンのくわえ込みの際、係止ピンが波型段部にくわえ込まれ、しかも、波型段部が弾性体からなるので、適度な力で係止ピンを保持することが可能となる。
【0031】
また、前記係止具の平板片の調整孔による平板片の戸板厚み方向の位置、走行ガイド部の回転体を偏心回転させることによる回転体の戸板厚み方向の位置、ガイドランナーの回転体を偏心回転させることによる回転体の戸板厚み方向の位置をそれぞれ適正な位置に微調整可能となる。すなわち、戸板の走行方向と略直交方する方向(戸板厚み方向)に調整可能に設けられているので、引戸の走行時に、戸板走行方向に対して戸板の左右方向のバランスが適度に調整可能になる。従って、戸板走行性が極めて向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明の詳細を図面に従って説明する。図1は本発明の引戸構造体の正面図、図2は本発明の引戸構造体の要部拡大斜視図である。図中、符号の1は戸板、eは戸板の戸閉まり側の端縁、2は上枠、3は下枠、4は縦枠、5は走行緩衝装置、5aは係止具、Hは係止具の平板片、Pは係止具の係止ピン、Jは係止具の調整孔、5bは緩衝治具、Kは緩衝治具のケース本体、Cはキャッチ部、Mは開口部、Dは波型段部、Yは係止部、Uはオイルダンパー、Bはコイルバネ、Tは固定部、Gは走行ガイド部、R1は回転体、R2は調整体、Eは鋸歯部、6は上部ガイドレール、7は下部ガイドレール、8はガイドランナー、R1は回転体、R2は調整体、Eは鋸歯部、9は戸板の下部走行具、10は中方立、Sはストッパー、Qはロックを示す。
【0033】
図1において、本発明の引戸構造体の詳細について述べる。図1の正面図に示すように、本発明の引戸構造体は、上枠2、下枠3、左右縦枠4で、引戸枠が形成され、該引戸枠内を上枠2と下枠3に沿って左右に平行方向に滑動する戸板1が設けられている。本例では、前記戸板1は片引戸の例で説明する。片引戸の場合は、引戸枠の左右間口方向の略中程に垂直方向に縦部材としての中方立10が上枠2と下枠3の間に設けられている。本例では片引戸の例で説明するが、両引戸、又は、3枚引戸以上のものであってもよいものとする。
【0034】
上枠2に上部ガイドレール6が装着されており、下枠3に下部ガイドレール7が装着されている。このようにして、前記上部と下部のガイドレールによって戸板1の走行がガイドされている。また、前記戸板1の上端縁の所定位置に走行ガイド部G及びガイドランナー8が設けられている。本例では、走行ガイド部Gは、戸板1の上端縁の戸閉まり側の端部に設けられている走行緩衝装置5の後部近傍位置に設けられ、戸板1の上端縁の他方の端部に、ガイドランナー8が設けられている。さらに、前記戸板1の下端縁の所定位置に戸板の下部走行具9が設けられている。本例では、戸板1の下端縁の左右両端部近傍に各1個づつ設けられている。このようにして、前記走行ガイド部G及びガイドランナー8と、下部走行具9によって、戸板1が走行する構成である。
【0035】
上記したように、本発明の引戸構造体は、戸板1の上端縁の戸閉まり側の端部に本発明の走行緩衝装置5が設けられている。戸板1を閉める時、前記走行緩衝装置5の働きで、戸板1をほどよく制動することが可能で、戸板1を勢いよく閉めた時に戸板1が縦枠4に衝突して生じる衝撃や振動や騒音を有効に防止し、しかも、手指を縦枠4と戸板1の間に誤って挟んで思わぬ怪我をするといった危険が防止できる。
【0036】
さらに、上枠2の上部ガイドレール6の戸板開方向の端部の所定位置にストッパーSが設けられており、戸板1の開時に戸板の進行方向の端縁と縦枠4とが勢いよく衝突し、思わぬ指詰め怪我をしたり、また、戸板1の衝突衝撃音が大きすぎることによる騒音の発生を有効に防止できる。
【0037】
前記ストッパーSは、上部ガイドレール6の戸板開方向の端部の所定位置に設けられており、例えば、コイルバネ、板バネ等の弾性部材、ウレタン樹脂発泡体、ポリエチレン樹脂発泡体等の合成樹脂発泡体等からなる軟質部材を好適なものとして例示できる。前記ストッパSは上部ガイドレール6内にビス等で所定位置に取り付け固定されている。本例では正面視右開きの片引き戸の戸板1で構成された引戸構造体ゆえ、図1の向かって右側の縦枠4の近傍にストッパーSが取り付けられている。この取り付け位置を、右縦枠4に近づけるか又は遠ざけるかを、戸板1の走行具合を見て丁度良い位置に調整できると、戸板開閉具合が良くなり使い勝手が向上する。下記に詳述するように、ストッパーSの取り付け箇所を長穴とし、取り付け位置を長穴を利用して調整可能にすると、引戸構造体の使い勝手が向上する。
【0038】
すなわち、ストッパーSを向かって左右間口方向に移動させることが簡単にできることが望ましい。そのため、上記したように、ストッパーSを係止している取り付けビスを左右に移動させることができるような構成とすることが望ましい。図示しないが、上部ガイドレール6にストッパー取り付けベース板を設け、この取り付けベース板にビス止めする構造とし、該取り付けベース板に左右間口方向に長い、長穴を形成しておいて、この長穴を利用して取付ビスが左右間口方向に移動可能な構造とする。そして、この取り付けビスの移動に伴って、ストッパーも左右間口方向に移動可能となる。このようにして、ストッパーSを左右間口方向に移動させ、調整を行うことができる構造とすることが引戸の開閉操作性の向上にとって好適である。このため、戸板開閉操作性が極めて向上するのである。
【0039】
また、このストッパーSは上部ガイドレール6にだけ取り付けておいてもよいし、また、下部ガイドレール7にのみ取り付けておいてもよい。また、上下ガイドレールの両方に取り付けておいても、勿論よいものとする。
【0040】
前記戸板1及び、引戸枠等を構成する、上枠2、下枠3、左右縦枠4、中方立10等は、本例では、木質系部材で構成されている。例えば、LVL、合板等を芯材とし、表面に突板、単板、樹脂化粧シート、樹脂化粧紙等を貼着して仕上げられた材料が、強度、耐久性、外観仕上がり性等を考慮すると好適である。
【0041】
また、前記上部ガイドレール6、下部ガイドレール7、走行緩衝装置5、走行ガイド部G、ガイドランナー8、戸板の下部走行具9等は、硬質の合成樹脂成型体、金属製などからなる。例えば、合成樹脂成型体としては、ABS樹脂成型体、硬質ウレタン樹脂成形体、硬質塩ビ樹脂成型体等を好適なものとして例示できる。また、金属製のものとしては、アルミ、ステンレス、鋼板等を好適なものとして例示できる。
【0042】
また、引戸枠を組み立てるには、左右縦枠4と上枠2、下枠3を組み立て、引戸枠を歪み等に注意して組み立てる。組み立ての具体的な方法は、一例として、先ず最初に、上枠2及び下枠3に上部ガイドレール6及び下部ガイドレール7を取り付けビスで取り付けておく。そして、組み立て構造は、本例では、縦枠4を縦勝ち構造とする。次に、上枠2と下枠3の左右両端部から木ダボを突出させておいて、一方、左右縦枠4の上下端部の内々面に木ダボと嵌合するダボ穴を設けておく。続いて、縦枠4を左右に各1本づつ計2本配置し、上枠2と下枠3を、縦枠4の上下端の内々に位置させ、前記木ダボをダボ穴に嵌入させ木工用ボンドを併用して引戸枠を組み立てる。
【0043】
戸板1には、その上端縁の戸閉まり側の端部に本発明の走行緩衝装置5を取り付け、該走行緩衝装置5の後部近傍に走行ガイド部Gを取り付ける。さらに、戸板1の上端縁の所定位置(戸板1の戸開き側の端部近傍)にガイドランナー8を取り付け、戸板1の下端縁の左右両端部近傍に各1個づつ戸板の下部走行具9を取り付けておく。
【0044】
また、前記ガイドランナー8の取り付け位置は、本例では、前記したように、戸板1の上端縁の戸板開方向の端部の近傍に設けられている。前記走行ガイド部Gとガイドランナー8は、形状は略円筒体を有し、上部ガイドレール6内に嵌挿して取り付けられ、戸板開閉操作に従って、走行ガイド部G及びガイドランナー8が上部ガイドレールの内面に接しつつ回転しながら戸板1と共に上部ガイドレール6内を平行方向に走行移動し、戸板1がその走行方向と略直交方向(戸板1の厚み方向)に横振れすることを有効に防止する働きがある。
【0045】
前記戸板走行具9は、戸板1の下端縁の左右両端部近傍に各1個づつ設けられており、例えば、戸車方式の走行具9が好適なものとして例示できる。円盤状のコロが戸板1の開閉操作に従って移動する際、前記コロが下部ガイドレール7の表面上を下部ガイドレール7上面に支持されながら回転しつつ走行する仕組みとされている。
【0046】
図2において、本発明の引戸構造体に用いられている走行緩衝装置5について詳述する。戸板1の上端縁の戸閉まり側の端部に本発明の走行緩衝装置5が設けられている。該走行緩衝装置5の働きで、戸板1を閉める時、戸板1をほどよく制動することが可能となり、戸板1を勢いよく閉めた時に発生する衝撃や振動や騒音を有効に防止できる。戸板1の閉時において、本例では、戸板1が向かって左方向へ閉操作移動し、最終的に戸板1の戸閉まり側の端縁e(本例では向かって左側の側端縁)が、左縦枠4に当接し、戸板1の閉操作が完了する。この際、戸板1の走行緩衝装置5が取り付けられていないと、戸板1の戸閉まり側の端縁eが左縦枠4の内側表面に衝突し、該衝突の際の衝撃が大きくなりすぎ、戸板1を勢いよく閉めた時、衝撃や振動や騒音が発生したり、また、左縦枠4の内面と戸板1の戸閉まり側の端縁eの間に手指を詰めて思わぬ怪我をするといったことも多々あったが、このことが有効に防止できる。さらに、戸板1の戸閉まり側の端縁eと左縦枠4との間に、戸板1が閉まりきらないことによる隙間等の発生を有効に防止できる。
【0047】
本発明の走行緩衝装置5は、上部ガイドレール6内に設けられた係止具5aと戸板1の上端縁の戸閉まり方向の端部に設けられている緩衝治具5bとで構成されている。また、前記係止具5aは上部ガイドレール6内部の所定の位置(戸閉まり側の端部近傍)に取り付け固定されている平板片Hと該平板片Hの略中央部から下方へ垂下して設けられている係止ピンPとで構成されている。さらに、前記係止ピンPは上部ガイドレール6に対して位置が固定されている。さらに、係止ピンPは、下記のキャッチ部Cにくわえ込みまたはくわえ込み解除が自在な構成とされている。
【0048】
また、前記緩衝治具5bは係止ピンPをくわえ込むキャッチ部Cと、オイルダンパーUの一方の端部を固定する固定部Tと、オイルダンパーUと、オイルダンパーUの下方において、オイルダンパーUに沿って設けられているコイルバネBと、それらを内蔵するケース本体Kで構成されている。詳述すると、前記オイルダンパーU及びコイルバネBは前記戸閉まり側の端部をキャッチ部Cの箇所で固定され、他端部を前記固定部Tの箇所で固定されている。
【0049】
前記係止具5aを構成する平板片Hは幅が上部ガイドレール6の内法寸法に見合う寸法とされており、上部ガイドレール6の戸閉まり側の端部にビスなどによって取り付け固定されている。平板片Hには、該平板片の長さ方向の両端部近傍に、調整孔Jが設けられており、該調整孔Jを利用して取付ビスなどによって平板片Hが上部ガイドレール6内に取り付け固定されている。このように平板片H及び係止ピンPは、上部ガイドレール6の所定の位置(縦枠4の戸閉まり側の端部から約70〜120mm程度離れた位置)に上部ガイドレール6から下方に垂下して取り付け固定されている。この平板片Hの取り付け固定は平板片Hの条溝Jを利用し、取り付けビスが上部ガイドレール6の天面を貫通し、上枠2にねじ込まれるようにして取り付け固定する。このようにすると、係止具5aが強固にしっかりと固定できる。
【0050】
また、前記調整孔Jは上部ガイドレール6の長さ方向とは直交方向(戸板1の厚み方向)に細長い形状の長穴とされている。このように長穴として形成されているので、取り付けビスを緩め、長穴を利用して前記平板片Hを上部ガイドレール6の長さ方向とは直交方向(戸板1の厚み方向)に若干移動させ、平板片Hの取り付け位置を微調整し、このことによって、前記係止ピンPの位置(上部ガイドレールの幅方向に対する位置、すなわち、戸板の厚み方向位置)を微調整することが可能な構造である。引戸開閉操作時において、戸板1の走行具合を確認し、必要に応じて、前記したような微調整を行うことができる。従って、係止ピンPの位置(戸板厚み方向位置)と、それをくわえ込むキャッチ部Cの位置(戸板厚み方向位置)を微調整して合致させることができる。
【0051】
また、前記平板片Hの下方に設けられている係止ピンPは、前記緩衝治具5bのキャッチ部C内にくわえ込ませる構造ゆえ、キャッチ部Cの内部に十分嵌挿される程度の十分な長さを有している。さらに、キャッチ部Cは弾性体からなる波型段部Dで構成されている。緩衝治具5bを構成するキャッチ部Cは、戸閉まり側端部に、係止ピンPを取り込むのに十分な大きさを有する開口部Mを備え、該開口部Mに続いて波型段部Dからなる係止部Yが形成されている。この波型段部Dは材質が弾性体で構成されている。
【0052】
それゆえ、戸板閉時において、係止ピンPのくわえ込みの際、係止ピンPがキャッチ部Cの開口部Mから嵌挿され、続いて、弾性体からなる波型段部Dに達し、この箇所で係止ピンPがキャッチされ、くわえ込まれたままで弾性体の復元力で押さえ込まれて維持される。波型段部Dを構成する弾性体は、例えば、軟質又は半硬質のウレタン樹脂成型体、ポリエチレン樹脂成型体、ウレタン樹脂発泡体、ポリエチレン樹脂発泡体、合成ゴム、天然ゴム等を好適なものとして例示できる。
【0053】
また、細長い直方体状のケース本体Kが戸板1の上端縁の戸閉まり側の端部に設けられ、該ケース本体K内に、前記オイルダンパーU及びコイルバネBがキャッチ部Cとともに内蔵されている。
【0054】
戸板1の閉時、戸板1を戸閉まり方向に移動させると、戸板上端縁の戸閉まり側の端部に設けられているキャッチ部Cが、上部ガイドレール6から垂下して位置固定状態で設けられている係止ピンPをくわえ込み、キャッチ部Cを押すと、キャッチ部Cを戸板1に対して所定位置(戸板上端縁の戸閉まり側の端部)に固定しているロックQが外れ、逆に、キャッチ部Cが戸板1の戸閉まり側の端部位置にまで戻ると、前記ロックQが掛かる構成とされている。
【0055】
戸板閉時、このロックQの構成は、例えば、一例として、緩衝治具5bのケース本体Kから上方に向けて、突出又は引っ込みが自在とされる小突起が設けられ、該小突起はバネで上方へ突出状態で付勢されている。前記小突起は突出状態でロックQが掛かった状態であり、小突起が引っ込む状態でロックQが解除された状態である。この小突起は正面から見ての形状で、三角形状であり、戸閉まり側の端縁が垂直壁で、戸開き側の端縁が約45度以下の斜壁を有する三角形状である。ロック状態において、キャッチ部Cの後端を前記垂直壁で支える構成である。ロックQが解除されると前記小突起が引っ込む構成である。
【0056】
戸板閉時に、係止ピンPがキャッチ部Cを押すと、ロックQが解除され、小突起が引っ込み、キャッチ部CがロックQを通り過ぎることができる。逆に、戸板開時においては、キャッチ部Cの先端部が、ロックQの小突起の斜壁に当接し、ロックQに掛かる力の分力の約半分が下方に作用し、ロックQの小突起がバネの力に抗して引っ込む。このことでキャッチ部CがロックQを通り過ぎることができる。そして、キャッチ部CがロックQを通り過ぎると、ロックQの小突起がバネの付勢力で突出し、ロックQが掛かる。このようにして、キャッチ部Cは戸板1の戸閉まり側の端部にまで達する。この状態でロックQが掛かっている状態である。
【0057】
このロックQは、小突起をバネで上方へ付勢させているが、バネの下端縁において、クランプ状の回転子が設けられており、回転子先端がバネに連結している。キャッチ部Cが戸板上端縁の戸閉まり側の端部位置にある時(戸板1が開いている状態の時)は、この小突起が突出しており、キャッチ部Cの後端を支え、キャッチ部Cが後方へ移動しない構成とされている。
【0058】
そして、戸板1の閉時、係止ピンPがキャッチ部Cを押すと、キャッチ部Cの下端部の爪がクランプ状の回転子先端部を押し、回転子を回転させ、バネを下方へ引っ張る方向に作用し、小突起が引っ込み、このことで、ロックQが解除される構成とされている。キャッチ部Cの下端縁が前記小突起の上に乗ると、前記爪が外れ、小突起がバネで押し上げられるが、キャッチ部Cの底部で押圧され突出できない。キャッチ部Cが通り過ぎると小突起が突出する。この状態では、小突起が突出しているが、ロックQが解除された状態である。キャッチ部Cが係止ピンPをくわえ込んだまま、コイルバネBの収縮力によって戸板開方向へと移動し、この反作用によって、戸板1の戸閉まり側の端縁eは、左縦枠4に向けて付勢される。このようにして、縦枠4との隙間が生じることもなく確実に戸板1を閉めることができる。
【0059】
また、逆に戸板開時、戸板1を開方向へ移動させると、キャッチ部Cの先端部が、ロックQの小突起の斜壁に当接し、ロックQに掛かる力の分力の約半分が下方に作用し、ロックQがバネの力に抗して引っ込み、キャッチ部CがロックQを通り過ぎることができる。そして、キャッチ部CがロックQを通り過ぎると、ロックQの小突起が突出してロックQが掛かる。このように、戸板開時、戸板1を開ける方向に手で移動させると、キャッチ部Cが、ロックQを通り過ぎると、ロックQの小突起がバネの付勢力で突出してロックQが掛かる。
【0060】
ロックQの構成の一例を上記に詳述したが、この構成のロックに限定されるものではない。前記キャッチ部Cが戸板1の戸閉まり側の端部位置において、その位置を戸板1に対して維持固定し、又は、固定を解除自在とする構成のロックであれば、この構成以外のロックQであっても、勿論良いものとする。
【0061】
上記に詳述した如く、戸板1の閉時、上枠2内の上部ガイドレール6から垂下して設けられている前記係止ピンPを、緩衝治具5bのキャッチ部Cの波型段部Dにくわえ込ませた状態のまま、戸板1を閉方向に付勢させると、係止ピンPがキャッチ部Cを押し、ロックQが外れ、キャッチ部Cが係止ピンPをくわえたまま、前記コイルバネBの収縮力で、キャッチ部Cと固定部Tの距離が縮小する。しかし、前記オイルダンパーUが縮む際の抵抗力が生じる。このようなオイルダンパーUの働きで、前記付勢力に抵抗が働き、戸板1の閉まり方向の走行速度にブレーキが作動し、このことで戸板1の戸閉まり速度を適宜調整可能とされている。
【0062】
すなわち、前記キャッチ部Cが係止ピンPをくわえ込み、キャッチ部Cを押すと、前記ロックQが外れ、キャッチ部Cが戸板1に対して移動し戸板1が閉まる。
【0063】
逆に、戸板開時、キャッチ部Cが戸板1に対して移動し、(このとき、オイルダンパーUが伸長するが、その際、適度な抵抗力が働き、戸板1が急激に開くことによるトラブル等の解消になる。さらに、コイルバネBが伸長することになるが、その際のコイルバネBの抵抗力も働いて戸板1が急激に開くことによるトラブル等の解消になる。)戸板1の戸閉まり側の端部位置にまで戻ると、前記ロックQが掛かる構成とされている。
【0064】
すなわち、戸板閉時に前記キャッチ部Cが係止ピンPをくわえ込み、前記ロックQが外れると、キャッチ部Cが係止ピンPをくわえたまま、上部ガイドレール6に対して固定されたまま、戸板1に対して移動し、コイルバネBが伸長位置から収縮位置まで縮む方向のコイルバネBの収縮力で、戸板1が閉方向に付勢され、逆に、戸板開時に前記キャッチ部Cが戸板1の戸閉まり側の端部位置にまで戻ると、前記ロックQが掛かかる。
【0065】
上記のように、引戸の戸板1を閉める時、前記オイルダンパーUの働きで、引戸閉時の走行速度をよりいっそう適度に制動することが可能で、引戸を勢いよく閉めた時に引戸が縦枠4に衝突して生じる衝撃や振動や騒音や指の怪我の防止にとって、よりいっそう好適である。さらに、戸板開時においても、前記コイルバネBの働きで引戸閉時の走行速度をよりいっそう適度に制動することが可能で戸板1が急激に開くことによるトラブル等の解消になる。すなわち、戸板1を閉める際も、また、開く際も、スム−ズに開閉可能で、しかも、引戸を長期間使用し、開閉操作を長期間にわたって実施しても、戸板1の走行速度の制動力が弱くなるといったことがない引戸構造体が実現する。
【0066】
さらに詳述すると、戸板1の戸閉まり側の端部にあるキャッチ部Cに、係止ピンPがくわえ込まれる前の状態(戸板1が開いている状態)においては、緩衝治具5bの端部に設けられたオイルダンパーUは、キャッチ部Cと固定部Tとの間に設けられ、その両端部はキャッチ部Cと固定部Tの箇所で固定されている。このような構成でオイルダンパーUは、定常状態にあり、伸長方向にも、また、収縮方向にも付勢されていない。
【0067】
また、前記オイルダンパーUを伸長させる際にはある程度の力が必要で、また、収縮させる際にもある程度の力が必要である。しかし、オイルダンパーUは、伸長及び収縮過程の任意の位置において、いずれの方向にも付勢されていない。そして、前記オイルダンパーUの固定部Tの位置は、オイルダンパーUが伸縮しても、変化しないが、キャッチ部Cの箇所において、オイルダンパーUの先端が固定されており、戸板1が開いている状態において、キャッチ部Cは戸板1の戸閉まり側の端部に、前記ロックQによって位置固定されている。そして、ロックQが掛かったり、又は、ロックQが解除されたりが、自在とする構成とされている。このような構成でオイルダンパーUが設けられている。また、前記オイルダンパーUのすぐ下にコイルバネBが設けられている。
【0068】
前記コイルバネBについて詳述すると、前記緩衝治具5bにおいて、キャッチ部Cと固定部Tを結ぶコイルバネBが設けられており、コイルバネBの戸閉まり側の端部がキャッチ部Cに係止され、他端部が固定部Tに係止され、この状態で、キャッチ部CとオイルダンパーUの戸閉まり側の端部が連結され、オイルダンパーUの他端部が固定部Tに係止されている。コイルバネB及びオイルダンパーUはこのような連結状態で固定されている。
【0069】
さらに、上記で詳述したように、前記緩衝治具5bのキャッチ部Cは、戸板1の戸閉まり側の端縁位置において、その位置を維持固定し、又は、固定を解除自在とする構成の、前記ロックQが設けられている。そして、戸板1の閉時、キャッチ部Cが係止ピンPをくわえ込み、係止ピンPがキャッチ部Cを押すと、前記ロックQが外れ、キャッチ部Cが係止ピンPをくわえ込んだまま上部ガイドレール6に対して位置が固定されているので、キャッチ部Cは戸板1に対して移動することになる。キャッチ部Cが移動可能となると、コイルバネBの伸縮にともなって、戸板1が上下のガイドレール6、7に沿って、走行可能な構成とされている。
【0070】
このように、コイルバネBが伸縮自在な構成とされ、戸板閉時に、前記キャッチ部Cが係止ピンPをくわえ込み、前記ロックQが外れると、コイルバネBが伸長位置から収縮位置まで縮む方向の力が作用し、該コイルバネBの収縮力で、戸板1が閉方向に付勢される構成である。
【0071】
戸板閉時、戸板1を閉める方向に手で移動させ、前記係止ピンPがキャッチ部Cの開口部Mにくわえ込まれると、前記ロックQが解除され、キャッチ部Cが係止ピンPをくわえ込んだまま、引き込み、ゆっくりと戸板1が閉まる。このとき、前記オイルダンパーUの収縮時の抵抗が働き、急に閉まるといったことがなく、戸板1にブレーキが掛かり、ゆっくりと戸板1が閉まるのである。
【0072】
すなわち、この時、前記コイルバネBの収縮力が作用している。そして、キャッチ部Cの位置は、上部ガイドレール6に対して位置固定されており、戸板1に対しては移動可能な構成とされている。このようにして、コイルバネCの収縮につれて、オイルダンパーUが適度に抵抗を示しながら、コイルバネBの伸縮につれてオイルダンパーUがゆっくりと適度な速度で収縮する。このようにして、戸板1は戸板閉時の走行方向に平行方向にゆっくりと移動する。
【0073】
さらに、戸板1を閉めた際の閉め終わりにおいて、縦枠4の内面と、戸板1の戸閉まり側の端縁eとの間に隙間が発生しそうになった場合、前記コイルバネBの収縮力の働きで、戸板1を戸閉まり方向に完全に引き込み、前記隙間等が発生しない。
【0074】
また、戸板開時、戸板1を開ける方向に手で移動させると、コイルバネBを伸長させる際の抵抗力が多少働くが、それを乗り越えて、キャッチ部Cが戸板1の戸閉まり側の端縁位置にまで戻ると、前記ロックQが掛かる構成とされており、戸板開時において、戸板1を開ける方向に手で移動させると、キャッチ部Cが戸板1の戸閉まり側の端縁位置にまで戻り、この位置で、前記ロックQが掛かり、コイルバネBの収縮力が戸板1の走行に影響しない状態に戻る。続いて、係止ピンPがキャッチ部Cから開放され、コイルバネBの伸長状態を維持したまま、戸板1を開方向へ移動させることができる。
【0075】
このように、戸板1が完全にしまった状態から、戸板1を開方向へコイルバネBの収縮力とオイルダンパーUの伸長する際の抵抗力を適度にうけながら、キャッチ部Cが戸板の上端縁の戸閉まり側の端部に戻るまでの間、戸板1は開ける際の適度な抵抗力を受ける。このことで、急激に戸板が開くことによるトラブルも解消される。戸板1は手でゆっくりと、戸板開方向へ移動させることができる。オイルダンパーUやコイルバネBの働きで急に開くことがなく、適度な速度でゆっくりと開けることができる。このようにして、戸板1のスムーズな開閉が可能となる。
【0076】
また、前記走行緩衝装置5のコイルバネBの一方の端部を係止する前記固定部Tの取り付け位置は、コイルバネBの長さ方向に沿って移動可能な構造とされている。コイルバネBの伸長位置から収縮位置までの長さを自在に変えることができるものである。
【0077】
このように、コイルバネBの一方の端部を係止する前記固定部Tの取り付け位置が、コイルバネBの長さ方向に沿って移動可能とされている。
【0078】
前記固定部Tの取り付け位置を移動可能にする構造としては、一例として、コイルバネBの固定部Tの構造を、固定片(図示せず)にコイルバネBの端部を引っ掛ける構造とし、該固定片を前記ケース本体Kに取り付けビスで取り付ける構造とする。さらに、前記固定片をケース本体K内部において、戸板走行方向と平行方向に移動調整可能な構造とする。例えば、一例として、前記固定片を取り付けるための取り付けビスの取り付け孔を戸板走行方向に細長い長穴とする構造でもよい。また、別の方法として、調整ネジ(図示ぜず)を用意し、調整ネジの先端を前記固定片に当接させ、調整ネジをネジ込んだり、また、逆にネジ戻したりすることで、固定片を移動させる構造とすることができる。このようにして、コイルバネBの固定部Tを微調整し、固定部とキャッチ部Cとの距離を変化させ微調整することで、コイルバネが作用する力の大きさを調整することが可能となる。
【0079】
コイルバネBの伸長位置から収縮位置までの長さを自在に変えることができるので、コイルバネBが作用する力の調整が可能となる。従って、戸板閉時において、縦枠4と戸板1の戸閉まり側の端縁eとの間に隙間が生じる傾向を解消するには、前記コイルバネBの伸長位置から収縮位置までの長さを大きくし、コイルバネBの縮む力を大きくすればよい。また、逆に、戸板開時において、戸板1を開ける際に、過大な力を要し開けづらいといった場合には、前記コイルバネBの伸長位置から収縮位置までの長さを小さくし、コイルバネBの縮む力を小さくすればよい。
【0080】
また、戸板1の上端縁の走行緩衝装置5の後部近傍に走行ガイド部Gが設けられている。また、戸板1の上端縁の他端部にガイドランナー8が設けられている。前記走行ガイド部Gとガイドランナー8は、戸板1の厚み方向に偏心した位置を軸芯として回転可能とする円盤状の回転体R1と、その下部に設けられ、鋸歯部Eが形成された調整体R2で構成されている。前記回転体R1は偏心位置を回転の軸芯として回転する仕組みゆえ、戸板1の走行性の左右バランスを微調整することができる。
【0081】
戸板1の厚み方向に偏心した位置を軸芯として回転可能とする円盤状の回転体R1ゆえ、回転体R1が戸板1の厚み方向に対して偏心した位置を軸芯として回転しつつ、戸板1が走行するような調整が可能となり、戸板1を走行方向から見て、左右方向にバランスよく微調整された走行が可能となる。
【0082】
すなわち、走行ガイド部G及びガイドランナー8は、鋸歯部Eが形成された調整体R2と、該調整体R2と軸芯で連結され上部に位置する回転体R1で構成されている。前記調整体R2の軸芯は戸板1の厚み方向の中心線上になく、該中心線上から若干距離だけ離間し偏心した位置にもってくるように調整可能な構成とされている。回転体R1の回転の軸芯と調整体R2の回転の軸芯は一致しており、さらに、前記調整体R2は基本的には、戸板1の開閉操作につれて回転せず、停止状態である。回転するのはその上部にある回転体R1である。回転体R1が上部ガイドレール6内を回転しながら、戸板1が上部ガイドレール6の長手方向に沿って移動する仕組みである。
【0083】
戸板1の厚み方向の中心線上に一致して回転しない基部が設けられている。そして、前記調整体R2の回転の軸芯は、前記基部の中心点と偏心した点を回転の中心に持つ構成である。このようにして、調整体R2の回転の軸芯は戸板1の厚み方向の中心線上から若干距離だけ離間した位置(偏心した位置)にある。さらに調整体R2とその上部の回転体R1とは、回転の中心軸を一致させてある。調整体R2に形成されている鋸歯部Eを、若干回転させると、その下部にある基部の中心点を中心として、調整体R2の軸芯が円弧の軌跡を描くようにして移動し、しかも、調整体R2と回転体R1とは中心軸が一致させてあるので、このことによって、回転体R1の回転の軸芯位置と、戸板1の厚み方向の中心線との間の距離が微調整可能な構成である。このように、回転体R1の回転の軸芯を戸板中心線から見て偏心させた位置にもってくるように微調整が簡単にできる構成である。
【0084】
このように、回転体R1が戸板1の厚み方向に対して偏心した位置を軸芯として回転させることで、戸板1の走行の左右バランスを調整可能となる。従って、戸板1が走行方向から見て戸板1の厚み方向に偏って施工されていても、左右方向にバランスよく微調整された走行が可能となる。
【0085】
さらに、詳述すると、このような調整は、下部にある調整体R2に形成されている鋸歯部Eの鋸歯にマイナスドライバーの先端部を当接させ鋸歯に加力し調整体R2を若干回転させて、基部の中心と調整体R2の中心を偏心させ、このことによって、回転体R1の回転の軸芯位置を左右方向(戸板厚み方向)に微調整することが可能となり、調整体R2は回転しないで、回転体R1の回転の軸芯位置を微調整することができる。
【0086】
この戸板1の微調整は、戸板1を取り外すことなく、戸板1を引戸枠に取り付けたままで行うことができる。また、この偏心調整は、走行ガイド部Gと、ガイドランナー8の両方でおこなってもよいし、また、いずれか片方でもよい。必要に応じて、このように、微調整することで、戸板1の走行具合(左右のバランス)をスムーズなものとすることができる。
【0087】
このように、回転体R1を偏心位置で回転するように微調整することで、引戸走行時に前記走行ガイド部Gとそれとは他方の戸板上端部に設けられているガイドランナー8とが上部ガイドレール6内を微調整されて走行移動し、戸板走行方向の左右バランスが微調整可能とされた構造である。
【0088】
さらに詳述すると、走行ガイド部G及びガイドランナー8の回転体R1の取り付け位置が戸板1の走行方向と略直交する方向(戸板厚み方向)に微調整可能に設けられている。そのため、引戸の走行時に、前記走行ガイド部Gが、それとは他方の戸板上端縁に設けられているガイドランナー8と共に、上部ガイドレール6内を走行移動し、戸板走行方向に対して戸板1の左右方向のバランスが適度に調整可能になる。従って、戸板走行性が極めて向上する。
【0089】
また、前記走行緩衝装置5の係止具5aの平板片Hの所定位置に調整孔Jが設けられている。該調整孔Jは、戸板1の走行方向と略直交方向(戸板の厚み方向)に細長い形状の長穴である。該長穴を利用して前記平板片Hが戸板1の走行方向と略直交方向(戸板の厚み方向)に取り付け位置を微調整可能な構成とされている。前記平板片Hの位置を戸板1の走行方向と略直交方向(戸板の厚み方向)に微調整することによってもまた、戸板1を走行方向から見て、左右方向にバランスよく微調整された走行が可能となる。
【0090】
また、前記係止具5aの平板片Hの調整孔Jによる平板片Hの位置の微調整、走行ガイド部Gの回転の軸芯位置の微調整、ガイドランナーの回転の軸芯位置の微調整の、それぞれのうちの、少なくとも1つを適正な位置に微調整することで、戸板走行方向の左右バランスが微調整可能とされているのである。
【0091】
本例では、前記走行ガイド部G及びガイドランナー8は、平面視円形を有する円筒体からなる。該円筒体の上部は回転体R1からなり、その下部には調整体R2が設けられており、さらにその下部に基部が設けられている。さらに、それぞれの調整体R2には鋸歯部Eが設けられている。この鋸歯部Eの鋸歯にマイナスドライバーの先端部を当接させ鋸歯に加力し調整体R2を若干回転させて、基部に対して、調整体R2を偏心回転させ、調整体R2の回転の軸芯を左右方向(戸板の厚み方向)に微調整することができる。このようにして回転体R1の回転の軸芯を左右方向(戸板の厚み方向)に微調整することができるのである。このように、回転体R1は戸板厚み方向に若干偏心した位置を回転の軸芯として回転しつつ、上部ガイドレール6の内部を移動する。このようにして、戸板1の走行具合を向上させることができる。
【0092】
しかも、従来の引戸はいちいち戸板1を引戸枠から取り外してから、さらに、回転体の取付ビスを、一旦、取り外して、丁度良い位置に取付直すといったように、手間のかかる作業性の悪い微調整を行っていたが、本発明の構成においては、戸板1を取り外すことなく、戸板1を引戸枠に取り付けたままで行うことができる。
【0093】
また、詳述すると、前記走行ガイド部G及びガイドランナー8の下部にある調整体R2は、上記のように、その円周上に沿って鋸歯部Eが形成されており、しかも、該調整体R2は、下方の基部に対して、偏心位置を中心に偏心回転させることができる。偏心回転させると、調整体R2と戸板上端縁との位置関係において、調整体R2の位置が戸板走行方向と直角方向(戸板厚み方向)に若干移動する。この調整体R2は戸板1の走行につれて回転しない。そして、回転体R2の中心と回転体R1の中心が一致した状態で上下に接続されている。戸板走行につれて回転するのは回転体R1の方である。調整体R2の働きは、回転体R1の取り付け位置(回転の軸芯)を戸板厚み方向に微調整することである。戸板1の走行具合を見て、ガイドランナー8及び走行ガイド部Gを微調整することで、戸板1の走行具合を向上させることができる。前記鋸歯部Eの働きは、調整体R2を偏心回転させる時にマイナスドライバーの先端を鋸歯部Eのきざみ目に当接させることで戸板1を取り付けたまま極めて簡単に調整できることにある。調整体R2の中心を戸板厚み方向へ偏心させ、このことで回転体R1の回転の軸芯(中心)を戸板厚み方向へ偏心させることができる。
【0094】
上記のように、前記走行緩衝装置5の緩衝治具5bの前記キャッチ部Cが弾性体からなる波型段部Dで構成されているので、戸板閉時において、係止ピンPのくわえ込みの際、係止ピンPが波型段部Dにくわえ込まれ、しかも、波型段部Dが弾性体からなるので、適度な力で係止ピンPを保持することが可能となる。
【0095】
また、前記係止具5bの平板片Hの調整孔Jによる平板片Hの戸板厚み方向の位置の微調整をおこなうこと、走行ガイド部Gの回転体R1を微調整された偏心位置で回転させること、ガイドランナー8の回転体R1を微調整された偏心位置で回転させること等のいずれか1つ以上を実施するとよい。このことで、戸板走行性が極めて向上する。すなわち、戸板1の走行方向と略直交する方向(戸板厚み方向)に、前記平板片H、走行ガイド部G、ガイドランナー8を微調整可能な構成とされている。このことで、引戸の走行時に、戸板走行方向に対して戸板1の左右方向のバランスが適度に調整可能になる。従って、戸板走行性が極めて向上する。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の引戸構造体の正面図。
【図2】本発明の引戸構造体の要部拡大斜視図。
【符号の説明】
【0097】
1 戸板
e 戸板の戸閉まり側の端縁
2 上枠
3 下枠
4 縦枠
5 走行緩衝装置
5a 係止具
H 係止具の平板片
P 係止具の係止ピン
J 係止具の調整孔
5b 緩衝治具
K 緩衝治具のケース本体
C キャッチ部
M 開口部
D 波型段部
Y 係止部
U オイルダンパー
B コイルバネ
T 固定部
G 走行ガイド部
R1 回転体
R2 調整体
E 鋸歯部
6 上部ガイドレール
7 下部ガイドレール
8 ガイドランナー
R1 回転体
R2 調整体
E 鋸歯部
9 戸板の下部走行具
10 中方立
S ストッパー
Q ロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上枠、下枠、左右縦枠からなる引戸枠と、該引戸枠内を上下枠に沿って左右に滑動する戸板とからなり、上枠に上部ガイドレールが設けられ、前記戸板の上端縁に走行ガイド部及びガイドランナーが設けられ、前記下枠に下部ガイドレールが設けられ、戸板下端縁に戸板の下部走行具が設けられ、前記上部と下部のガイドレールによって戸板の走行がガイドされ、前記走行ガイド部及びガイドランナーと、前記下部走行具によって戸板が走行する引戸構造体であって、戸板上端縁及び上部ガイドレールの戸閉まり側の端部に走行緩衝装置が設けられていることを特徴とする引戸構造体。
【請求項2】
前記走行緩衝装置が上部ガイドレール内の戸閉まり側の端部に設けられた係止具と戸板上端縁の戸閉まり側の端部に設けられた緩衝治具とからなり、前記係止具は上部ガイドレール内に取り付け固定する平板片と該平板片から垂下して設けられ、上部ガイドレールに平板片によって固定されている係止ピンとからなり、前記緩衝治具は、戸板上端縁の戸閉まり側の端部に設けられ、係止ピンをくわえ込み、又は、くわえ込み解除が自在な構成とされ、係止ピンを脱着自在とするキャッチ部と、他端部に設けられ、オイルダンパーを固定する固定部と、その間に設けられるオイルダンパーとからなり、前記キャッチ部の後端縁にオイルダンパーの戸閉まり側の端部が固定され、この状態でキャッチ部が戸板上端縁の戸閉まり側の端部に戸板に対して固定非固定自在な構成とされており、戸板の閉時、上枠内の上部ガイドレールから垂下して設けられている前記係止ピンを、緩衝治具のキャッチ部にくわえ込ませた状態のまま戸板を閉方向に付勢させると、前記キャッチ部の固定が解除され、キャッチ部が係止ピンをくわえたまま上部ガイドレールに対して固定され、戸板に対して移動し、キャッチ部と固定部の距離が縮小し、戸板が閉方向に付勢されながら移動し、オイルダンパーが縮む際の抵抗力が生じ、このようなオイルダンパーの働きで前記付勢力に抵抗が働き、戸板の閉まり方向の走行速度にブレーキが作動し、このことで戸板の戸閉まり速度を適宜調整可能としたことを特徴とする請求項1に記載の引戸構造体。
【請求項3】
前記緩衝治具のキャッチ部と固定部を結ぶコイルバネが設けられており、コイルバネの戸閉まり側の端部がキャッチ部に係止され、他端部が固定部に係止され、コイルバネの伸縮にともない戸板が係止ピンに対して移動自在な構成とされ、前記緩衝治具のキャッチ部は、戸板の戸閉まり側の端部位置においてその位置を戸板に対して維持固定し又は固定を解除自在とする構成のロックが設けられており、戸板閉時、前記キャッチ部が係止ピンをくわえ込み、キャッチ部を押すと前記ロックが外れ、逆に、戸板開時、キャッチ部が戸板の戸閉まり側の端部位置にまで戻ると前記ロックが掛かる構成とされ、戸板閉時に前記キャッチ部が係止ピンをくわえ込み前記ロックが外れると、キャッチ部が係止ピンをくわえたまま上部ガイドレールに対して固定されたまま、戸板に対して移動し、コイルバネが伸長位置から収縮位置まで縮む方向のコイルバネの収縮力で、戸板が閉方向に付勢され、逆に、戸板開時に前記キャッチ部が戸閉まり側の端部位置にまで戻ると、前記ロックが掛かかることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の引戸構造体。
【請求項4】
前記走行緩衝装置のコイルバネの一方の端部を係止する前記固定部の取り付け位置がコイルバネの長さ方向に沿って移動可能とされ、コイルバネの固定部位置が適正位置に調整可能な構成とされ、コイルバネの伸長位置から収縮位置までの長さを自在に調節することができることを特徴とする請求項3に記載の引戸構造体。
【請求項5】
前記走行緩衝装置の緩衝治具の前記キャッチ部が弾性体からなる波型段部で構成され、前記走行緩衝装置の係止具の平板片に調整孔が設けられ、該調整孔は、戸板の走行方向と略直交方向に細長い形状の長穴であり、該長穴を利用して前記平板片が戸板の走行方向と略直交方向に位置を微調整可能に設けられ、戸板上端縁の戸閉まり側の端部に設けられている走行緩衝装置の後部近傍に走行ガイド部が設けられ、戸板上端縁の他端部にガイドランナーが設けられ、前記走行ガイド部とガイドランナーは、偏心回転可能とする円盤状の回転体と、その下部に設けられている鋸歯部が形成された調整体で構成されており、前記係止具の平板片の調整孔による平板片の位置、走行ガイド部の回転体を偏心回転させることによる回転体の位置、ガイドランナーの回転体を偏心回転させることによる回転体の位置をそれぞれ適正な位置に微調整可能な構成とされていることで、戸板走行方向の左右バランスが微調整可能とされていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の引戸構造体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−287228(P2009−287228A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−138928(P2008−138928)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【出願人】(398051497)株式会社パル (65)