説明

引抜きコードを備える補聴器イヤプラグ

補聴器用イヤプラグ(1)であり,上記イヤプラグは,弾性材料から作られており,かつユーザが外耳道の外に上記イヤプラグ(1)を引っぱることができるようにするグリップを提供する引抜きコード(4)を備えている。上記引抜きコード(4)は部分的に上記弾性材料中に配置され,かつ部分的に上記イヤプラグの外側に配置される。上記弾性材料中に上記引抜きコードの位置を固定するために,上記弾性材料中に配置される上記引抜きコードの一部に固定膨隆部(6)が配置されている。上記引抜きコードは上記弾性材料に結合される。この発明はさらに上記イヤプラグを製造する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,補聴器および補聴器を作成する方法に関する。より詳細にはこの発明は,弾性材料から作られ,かつイヤプラグを外耳道の外に引っぱるための引抜きコードを備える補聴器用イヤプラグに関する。この発明はさらに上記イヤプラグを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
補聴器の一般的な分類の一つに,耳の後ろに置かれるハウジングおよび補聴器ユーザの外耳道内に配置されるイヤモールドまたはイヤプラグを備える耳掛けタイプのものがある。上記耳掛けユニットにおいて音声信号がピックアップされ,増幅されかつ処理されることでユーザの聴覚障害が適切に補償され,音チューブを通した音響信号として,または上記イヤモールド内に配置されたレシーバもしくはスピーカへのワイヤを通した電気信号として,上記イヤプラグに伝達される。
【0003】
ソフトで(soft),柔軟性があり(pliable),かつ弾性のある(resilient)イヤモールドは,外耳道壁の形状に非常に容易に順応し,したがって補聴器ユーザにとって非常に快適なものとなるので,多くの補聴器ユーザに好まれている。さらに,ソフトかつ弾性の外側表面(outer surface)は外耳道の幾何学的形状の変化に対して連続的に適合することができる。このような幾何学的形状の変化は,たとえば補聴器ユーザが咀嚼をしたりあくびをしたりしたときに生じる。
【0004】
上記弾性イヤプラグが耳道の個々の形状にフィットするようにカスタマイズもされていると,耳道内のあらゆる局所的な機械的加圧が最小になるので,最適なソリューションになりうる。カスタム・フィットの弾性イヤプラグはPCT/EP2008/063663に記載の方法によって製造することができる。
【0005】
このようなイヤプラグを外耳道から取外すことができるようにするために,引抜きコードがしばしば設けられている。引抜きコードはイヤプラグから外に,かつ上記外耳道のちょうど外側にまたは上記イヤプラグの外側の近くに飛び出し,補聴器を装着している人物は二本の指で上記引抜きコードを掴み,かつ上記外耳道から上記イヤプラグを引抜くことができる。
【0006】
国際特許公開WO−A1−98/51125は補聴器用イヤモールドを開示しており,上記イヤモールドはシリコンといったソフトでかつ柔軟な材料から作られている。上記イヤモールドは,外耳道への快適なフィットを得,かつ摩擦および機械的巡り合わせ(mechanical lucking)の両方によって耳内に上記イヤモールドを保持するためのフィン(fins)を備えている。上記イヤモールドはさらにイヤモールドを外に引っぱるための引抜きコードを備えている。
【0007】
引抜きコードを備えるソフトでかつ柔軟なイヤプラグまたはイヤモールドの既知のソリューションが抱える問題は,上記引抜きコードを,切れることなくかつ上記ソフトでかつ柔軟な材料から外れてしまわないように十分に強い構造にすることが困難であることである。
【発明の開示】
【0008】
この問題は,補聴器用イヤプラグを記載する請求項1に記載の発明によって解決され,上記引抜きコードは部分的に上記弾性材料中に配置されており,かつ部分的に上記イヤプラグの外側に配置されており,上記弾性材料中において上記引抜きコードの位置(position)を固定するために,上記弾性材料中に配置された上記引抜きコードの一部に(on the part of the extraction cord)固定膨隆部(a securing bulge)が配置されており(arranged),上記引抜きコードは上記弾性材料に結合(固着)されている(bonded)。
【0009】
このソリューションは,非常に強く,かつ簡単には上記弾性材料から抜取れない引抜きコードを有するイヤプラグを提供する利点を持つ。適切な接着材,または正しい位置に上記引抜きコードを位置させかつ保持させた後に上記弾性材料を硬化することのいずれかによって,上記結合を達成することができ,これによって上記弾性材料は上記引抜きコードに結合することになる。
【0010】
他の実施態様において,上記引抜きコードは,上記引抜きコードを引っぱるときに指が滑ってしまうことを防止するために,保持手段を備えている。これにより,上記引抜きコードの指による良好なグリップが容易に達成され,同時に上記引抜きコードの長さを最小にとどめることができる。好ましくは,上記保持手段は液滴形状(droplet shaped)または実質的に液滴形状(substantially droplet shaped)であり,上記引抜きコードの末端に配置されている。このような形状は製造が容易であり,かつ皮膚を痛めることのあるすべてのエッジ(any edges)を回避する。
【0011】
他の実施態様において,上記固定膨隆部は円錐形状または実質的に円錐形状であり,上記円錐部の軸(the axis of the core)が上記引抜きコードの長手方向と平行または実質的に平行であり,最大の横断面領域(the largest cross sectional area)を有する上記円錐部の部分が上記弾性材料から外にのびる上記引抜きコードの末端に面している(向いている)(facing)。これは引っぱり方向または耳の中から外への方向でもある。この形状は,狭い穴を通して上記引抜きコードを入れるため,および上記弾性イヤプラグ材料から上記引抜きコードが引き抜かれてしまうのを防止するための両方において,最適な形状であることが分かった。
【0012】
他の実施態様において,上記固定膨隆部が,上記イヤプラグが右耳に用いられるものであることを示す第1の色マーク,または上記イヤモールドが左耳に用いられるものであることを示す第2の色マークの一方を備えている。これは,簡単かつ永続性のある上記イヤプラグのマーキングのやり方であり,補聴器ユーザにこれらを簡単に認識させることができる。好ましくは,上記イヤプラグが上記外耳道内に無いときに上記色を見ることができるようにするために,上記弾性材料は少なくとも幾分(いくらか)透明である(at least partially transparent)。
【0013】
他の実施態様において,上記引抜きコードは15−25mm,好ましくは18−22mmの全長を持つ。この範囲は,上記引抜きコードを必要以上に目立たせることないようにしつつ,上記引抜きコードを指で簡単にグリップするために適切であることが分かった。
【0014】
第2の発明は引抜きコードを備える弾性イヤプラグを製造する方法に関するもので,弾性イヤモールド用材料を用意し,上記材料から弾性イヤプラグを形成し,長手方向および横断面領域を有する引抜きコードを用意し,上記引抜きコードはその長手の一部に上記引抜きコードの残りの部分の横断面領域よりも大きな横断面領域を有する膨隆部を備えるものである。上記方法は,上記引抜きコードの上記一部の上記膨隆部が上記材料中に入れられ,かつ上記イヤプラグ材料の外側に上記引抜きコードの末端を持つように,上記引抜きコードを部分的に上記弾性イヤモールド材料中に入れる(entering)ステップを含む。上記方法はさらに,上記引抜きコードを上記弾性イヤモールド材料に結合するステップを含む。
【0015】
この方法によって機械的に強い(a mechanical strong)引抜きコードを備えるイヤプラグが製造される。
【0016】
他の実施態様において,上記方法は,上記引抜きコード用に上記弾性材料に穴(a hole)を設け,その後に上記引抜きコードを上記弾性材料中に入れるステップを含む。好ましくは,上記引抜きコードはその後に適切な接着材(a suitable glue)を付加することによって結合される。このような接着材は好ましくは上記引抜きコードよりも前に上記穴に入れられるか,または上記引抜きコードに直接に与えられる。上記方法に代わる実施態様では,上記引抜きコードが上記弾性イヤモールド材料中に入れられた後にこの材料が硬化される。好ましくは,上記引抜きコードはその後上記イヤモールド材料の上記硬化によって結合される。
【0017】
上記方法の他の実施態様において,上記膨隆部を含む上記引抜きコードは射出成形によって製造される。速くかつ正確な製造が促進される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】引抜きコードを備えるイヤプラグを示す。
【実施例】
【0019】
以下,図面を参照してこの発明の実施例を詳細に説明する。
【0020】
図1は引抜きコード4を備えるイヤプラグ1の実施例を示すもので,イヤプラグ部2は特定の外耳道に対してカスタム・フィットされている。上記イヤプラグ2はソフトで,柔軟性を持ち,かつ弾性の材料,たとえばシリコンによって作られている。上記イヤプラグ2はオープンスペース3ないし孔を備えており,そこにレシーバが配置されるまたは音チューブが接続される。このスペースはイヤプラグを貫通しており,上記イヤプラグが外耳道内に配置されたときに上記外耳道の開口端(open end)に面する(facing)開口端表面8と鼓膜に面する内側表面9とをつないでいる。レシーバ(図示略)はこのスペース中に固定することができる。レシーバは電気ワイヤによって補聴器の耳掛けハウジング部に接続される。補聴器が耳掛け部中にレシーバを有するタイプのものであれば,上記スペース3中に端部が位置しかつ上記イヤプラグ1に固定される音チューブを通して,音は上記イヤプラグに伝達される。
【0021】
引抜きコード4は,補聴器ユーザが,上記電気ワイヤまたは上記音チューブを引っぱることで上記イヤプラグを引抜くことを防止するために重要である。そのようなことが繰返し行われると,これらの部材の故障(機能不全)(failure)につながる。
【0022】
上記引抜きコード4は,コード部ないしシャフト部7,ノブ(knob)の形状をした保持手段5,および顎(barb)の形状を持つ膨隆部(膨らみ部)(bulge part)ないし円錐形状の膨隆部6を備えている。引抜きコードを上記イヤプラグ材料中の箇所(a point)10に位置させるときに上記膨隆部6は上記イヤプラグ材料の内部に配置させなければならない。上記膨隆部は円錐形状以外の形状を持つものであってもよい。重要なことは,上記引抜きコードを上記イヤプラグ材料中の穴の中に挿入することが簡単で,かつ上記膨隆部が,その形状によってかつ接着ないし固着によって,上記イヤプラグ材料の外に引抜かれるのに対して対抗することである。上記コード部7には2つ以上の膨隆部,たとえば1つではなく2つの円錐部を設けることができる。しかしながら,上記イヤプラグ材料中には通常多くのスペースはないので,上記引抜きコードの体積(大きさ)(volume)は,上記イヤプラグ材料の安定性ないし強度を低めないように最小に留めるべきである。
【0023】
一例において上記引抜きコードはポリアミドまたはナイロンからつくられ,上記シャフトまたはコード部7は約0.5mmの直径を持ちかつ約16mmの長さを持つ。上記引抜きコードの全長は約20mmであり,上記ノブ5は約2mmの直径を持ち,上記円錐部6は約2mmの上記コードの長手軸に沿う長さを持つ。上記円錐部の最大径は約2mmである。実際上は,様々なサイズのイヤプラグにフィットするように上記引抜きコードは様々な長さで製造される。
【0024】
上記引抜きコードは,上記3つの部分を含んでワンステップで型に入れて作ることができる(may be moulded in one step)。これに代えて,上記コード部7および上記ノブ5を第1ステップにおいて作成し,上記円錐部6を第2ステップにおいて作成して次にたとえば接着によって上記コード部7に取り付けることができる。これによって上記円錐部を違う色でさらには別の材料で製造することが簡単になる。上記円錐部6の色は,通常上記イヤプラグ部2のほぼ(いくらか)透明の材料(the more or less transparent material)を通して視認することができる。上記イヤプラグを目立たなくするために,上記引抜きコード4の上記コード部7およびノブ5も通常は透明である。同一人物用の2つのイヤプラグのそれぞれにおける上記円錐部6を異なる色で作ると,たとえば,右側イヤプラグの円錐部を赤色で,左側イヤプラグの円錐部を青色で作ると,いずれのイヤプラグをいずれの耳にはめなければならないかを思い出すことが上記人物にとって容易になる。
【0025】
上記円錐部の色づけの利点は,上記色づけはシリコン表面を色づけるよりもさらに永続性を持つこと,上記円錐部の色づけがすり減らないこと,および色表示するための非カスタマイズの規格部品に依拠することで,物流(logistics)がより簡単になることにある。
【0026】
上記イヤプラグの上記弾性材料は,好ましくはシリコンである。好ましいシリコンはバイオポア(the Biopor)であり,これは生物適合性(bioconpatible)を持つ。しかしながら,他の弾性材料,たとえばソフトアクリル(soft acrylic)を用いることもできる。上記イヤプラグは,通常は,補聴器を使用する人物の外耳道の形状およびサイズを表すデータに基づいて形成された型内において成形される。用いられるシリコンの種類に依存して,上記シリコンの硬化には様々な方法を用いることができる。上記硬化の方法の例として,熱,紫外線放射および2成分シリコンの混合(mixing of a two-component silicone)が挙げられる。上記弾性材料は好ましくは生物適合性のものとすべきである。弾性材料は押圧後に元の形状に戻る材料として理解される。
【0027】
上記引抜きコードは好ましくは射出成形によって製造されるが,当業者によって示される他の製造方法も適用することができる。
【0028】
上記引抜きコード4は,様々なやり方で上記イヤプラグ材料中に配置することができる。その一つは,上記弾性イヤプラグ材料を最初に硬化させて,たとえば穿孔(drilling)によって上記引抜きコード用の穴をあけることである。この穴の直径は上記シャフトまたはコード部7の直径よりもやや大きいものとされるが,上記円錐部6の最大径よりも小さいものとされる。これにより接着のための十分なスペースを残して上記引抜きコードを上記材料中に入れるのが簡単になり,かつ上記引抜きコードが抜けにくくなる。
【0029】
上記イヤプラグ材料中に上記引抜きコードを配置する他のやり方は,硬化させる前に上記材料中に引抜きコードを配置することである。この場合接着は必要とされず,それは硬化のとき上記材料が上記引抜きコードに結合する(bond)からである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
補聴器用イヤプラグであって,上記イヤプラグは弾性材料から作られており,かつユーザが外耳道の外に上記イヤプラグを引っぱることができるようにするグリップを提供する引抜きコードを備えており,上記引抜きコードが部分的に上記弾性材料中に配置され,かつ部分的に上記イヤプラグの外側に配置されており,上記弾性材料中において上記引抜きコードの位置を固定するために,上記弾性材料中に配置された上記引抜きコードの一部に固定膨隆部が配置されており,上記引抜きコードが上記弾性材料に結合されている,
補聴器用イヤプラグ。
【請求項2】
上記引抜きコードは,上記引抜きコードを引っぱって上記イヤプラグを引抜くための指用のグリップを提供する保持手段を備えている,
請求項1に記載のイヤプラグ。
【請求項3】
上記保持手段は液滴形状または実質的に液滴形状であり,かつ上記引抜きコードの末端に配置されている,請求項2に記載のイヤプラグ。
【請求項4】
上記固定膨隆部は円錐形状または実質的に円錐形状であり,上記円錐の軸が上記引抜きコードの長手方向に平行または実質的に平行であり,最大の横断面領域を持つ上記円錐部の部分が上記弾性材料の外側にのびる上記引抜きコードの末端に面している,
請求項1から3のいずれか一項に記載のイヤプラグ。
【請求項5】
上記固定拡張部が,上記イヤプラグが右耳に用いられるものであることを示す第1の色マーク,または上記イヤモールドが左耳に用いられるものであることを示す第2の色マークの一方を備えている,請求項1から4のいずれか一項に記載のイヤプラグ。
【請求項6】
上記弾性材料が少なくとも幾分透明である,請求項5に記載のイヤプラグ。
【請求項7】
弾性イヤモールド用の材料を用意し,
上記材料から弾性イヤプラグを形成し,
長手方向および横断面領域を備える引抜きコードを用意し,上記引抜きコードは,その長手の一部に上記引抜きコードの残りの部分の横断面領域よりも大きな横断面領域を有する膨隆部を備えるものであり,
上記引抜きコードの上記一部の上記膨隆部が上記材料中に入れられ,かつ上記引抜きコードの末端が上記イヤプラグ材料の外側にのびるように,上記引抜きコードを部分的に上記弾性イヤモールド材料中に入れ,
上記引抜きコードを上記弾性イヤモールド材料に結合する,
引抜きコードを備える弾性イヤプラグの製造方法。
【請求項8】
上記引抜きコード用に上記弾性材料中に穴を設け,その後に上記弾性材料中に上記引抜きコードを入れる,請求項7に記載の方法。
【請求項9】
上記引抜きコードは適切な接着材を付加することによって結合される,請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
上記引抜きコードが上記弾性イヤモールド材料中に入れられ,その後にこの材料が硬化される,請求項7に記載の方法。
【請求項11】
上記引抜きコードは上記イヤモールド材料の硬化によって結合される,請求項10に記載の方法。
【請求項12】
上記拡張部を含む上記引抜きコードは射出成形によって製造される,請求項7から11のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2013−517653(P2013−517653A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−548356(P2012−548356)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【国際出願番号】PCT/EP2010/050570
【国際公開番号】WO2011/088887
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(500011045)ヴェーデクス・アクティーセルスカプ (99)