強化排出装置設計
本発明は、排出装置を通る流動抵抗を有意に増加させることなく、サイフォン管において生成される圧力の量を有意に増加させる強化排出装置要素を提供する。本発明はさらに、作動機構として強化排出装置要素を備えている呼吸作動型吸入デバイスを備えている。
一実施形態において、呼吸作動型吸入デバイスは、薬剤粒子のエアロゾル製剤を含む加圧キャニスタをさらに備え、キャニスタは、デバイスが作動するとすぐにデバイスの中へエアロゾル製剤を放出するために、プライムレス弁をさらに備えている。
一実施形態において、呼吸作動型吸入デバイスは、薬剤粒子のエアロゾル製剤を含む加圧キャニスタをさらに備え、キャニスタは、デバイスが作動するとすぐにデバイスの中へエアロゾル製剤を放出するために、プライムレス弁をさらに備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経口吸入による粒子状薬剤の送達で使用するための定量吸入器デバイスおよびその要素に関し、具体的には、強化性能を有する排出装置要素、および一連の動作流速にわたって増加した圧力降下を最小限化しながら、サイフォン圧力降下を増加させるために、そのような強化排出装置を採用する呼吸作動型加圧定量吸入器に関する。
【背景技術】
【0002】
長年、肺への薬剤装填エアロゾルの経口吸入送達が、薬剤送達の効果的な手段となっている。粒子状薬剤を送達するために効果的である一種類のデバイスは、薬剤製剤を含む、絞り弁を伴う加圧キャニスタを含む。定量吸入器の「押して呼吸する」バージョンでは、キャニスタは、上部を露出したままキャニスタの下部分を覆う筐体から成る、アクチュエータ内に配置される。絞り弁は、筐体の基礎の内側のサンプ/オリフィスアセンブリの中へ着座する。オリフィスは、弁軸に対して鋭角で配置され、90度の角度で筐体に取り付けられ、マウスピースで終端する導管をほぼ通して、粒子状製剤の放出を方向付ける。薬剤を投与するために、ユーザは、デバイスのマウスピースの周囲で唇を密閉し、キャニスタの露出部分を筐体の中へ押下しながら同時に吸引する(吸気呼吸)。キャニスタは、絞り弁を作動させる方式で下向きに平行移動し、したがって、ユーザが吸入するにつれて呼吸管の中へ引き込まれる、エアロゾルプルームとしての薬剤の放出を引き起こす。一部のユーザがエアロゾルプルームの放出を吸気呼吸と協調させることは困難であり得る。
【0003】
「押して呼吸する」作動型吸入器に関連する問題に対処するために、ユーザが吸気呼吸を行うと自動的に薬剤のエアロゾルプルームを放出する、改良型吸入器デバイスが開発されている。これらは、「呼吸作動型加圧定量吸入器」(「BApMDI」)と称される。例示的なBApMDIデバイスでは、カバーを開くことによって圧縮されるバネを使用して、作動を実行することができる。このバネエネルギーは、BApMDIがユーザの呼吸によって誘起されるまで貯蔵され、ユーザの呼吸時に、バネ力が、加圧キャニスタを押下して、ユーザの呼吸の中へのエアロゾル化薬剤のプルームの放出を引き起こすように適用される。そのような誘起機構は、排出装置要素に依存し、排出装置要素は、収縮ゾーンの中で狭くなる流路を有するベンチュリを含み、吸気呼吸の局所流速を増加させて、デバイスを作動させるために好適なサイフォンを作成する働きをする。
【0004】
BApMDIデバイスが当技術分野の改良を表すが、バネエネルギーを誘起する(したがって、デバイスを作動させる)ために必要とされるエネルギー(圧力降下)は、通常の人間の呼吸によって適用することができるものを超え得ることが分かっている。これは特に、ユーザが低下した肺機能を有する、またはユーザが成人の肺活量を持たない若者である場合の問題を提示し得る。したがって、通常の人間の呼吸による作動を可能にする誘起機構を伴う改良型BApMDIデバイスを提供する必要性が、当技術分野に残っている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
向上した性能特性を有する強化排出装置要素を提供することが、本発明の目的である。本発明は、従来の排出装置のサイフォンの入口頂点を包囲する収縮ゾーンの中への突出または構造の導入が、排出装置にわたる圧力降下を有意に増加させることなく、流量の関数としてサイフォン圧力降下を有意に増加させるという発見から生じる。これは、予想外であり、排出装置の中空孔の内壁に沿った任意の構造または修正部材を含むことが、その要素のサイフォン圧力降下を増加させるのに役立ち得るが、排出装置にわたってより高い圧力降下ももたらし、したがって、修正排出装置の性能に悪影響を及ぼすという当技術分野の既存の知識に反したものである。本発明の強化排出装置は、呼吸作動型吸入器デバイスを誘起するために必要とされる吸気流量を低減し、したがって、若年管患者にとって、および低下した肺機能を持つ患者にとって、経口吸入された薬剤の送達を促進するために使用することができる。
【0006】
本発明の一側面では、(a)入口および出口を伴う導管と、(b)外面および内面であって、内面は、入口から出口まで延在する中空孔を形成し、略平滑かつ連続的な曲面である、外面および内面と、(c)入口と出口との間の中空孔の一部分の直径の縮小によって形成される、収縮ゾーンであって、収縮ゾーンは、主要入口および出口の直径よりも小さい直径を有する、収縮ゾーンと、(d)内面中空孔上および収縮ゾーン内に配置される修正部材であって、修正部材は、収縮ゾーンの直径および断面積を局所的に縮小する構造または突出である、修正部材と、(e)そのようなチャネルを通して排出装置の外面と中空孔の内面との間に流体連通を確立する、サイフォンチャネルであって、チャネルは、修正部材に隣接して位置付けられるか、またはそれによって包囲される、サイフォンチャネルとを含む、強化排出装置要素が提供される。
【0007】
いくつかの変化例では、強化排出装置は、高さ(H)を伴う修正部材を有し、収縮ゾーンは、半径(R)を有し、修正部材の高さ(H)の物理的寸法は、収縮ゾーンの半径(R)の物理的寸法の0.65倍を超えない。いくつかの変化例では、収縮ゾーンの半径(R)の物理的寸法に対する修正部材の高さ(H)の物理的寸法の比は、約0.16から約0.55の範囲内である。なおも他の変化例では、強化排出装置は、排出装置の主軸に沿った長さ(L)を伴う修正部材を有し、収縮ゾーンは、排出装置の主軸に沿った長さ(LCZ)を有し、修正部材の長さ(L)の物理的寸法は、収縮ゾーンの長さ(LCZ)の物理的寸法の0.75倍を超えない。加えて、収縮ゾーンの長さ(LCZ)の物理的寸法に対する修正部材の長さ(L)の比は、約0.25から約0.75の間である。他の変化例では、強化排出装置は、排出装置の主軸に沿った長さ(L)を伴う修正部材を有し、収縮ゾーンは、半径(R)を有し、収縮ゾーンの半径(R)の物理的寸法に対する修正部材の長さ(L)の物理的寸法の比は、約1.2から約3.0の範囲内である。随意で、修正部材は、収縮ゾーンの断面積を21%以下分、減少させるようにサイズ決定され、および/または収縮ゾーンの半径(R)の周辺を囲む修正部材の突出の広がりは、60度から120度の間であり得る。なおもさらなる変化例では、強化排出装置要素における修正部材の存在は、修正部材がない排出装置要素と比較すると、中空孔を通る空気流のための面積を10%以下分、制限するが、強化排出装置と同じ入口および出口の直径、同じ収縮ゾーンの直径、および同じ全体的な排出装置の長さ(LE)を有する。
【0008】
本発明の別の側面では、呼吸作動型吸入デバイスが提供される。デバイスは、上記説明されるような強化排出装置を含む作動アセンブリを特徴とし、吸気呼吸とともに排出装置要素を通って流れる空気は、デバイスを作動させるために好適である、サイフォンチャネルにおける低圧力降下を生成するように作用する。いくつかの変化例では、呼吸作動型吸入デバイスは、加圧定量吸入器である。他の変化例では、呼吸作動型吸入デバイスはさらに、薬剤粒子のエアロゾル製剤を含む加圧キャニスタを含み、加圧キャニスタはさらに、デバイスの作動時にデバイスの中へエアロゾル製剤を放出するためのプライムレス弁を含む。
【0009】
本発明のなおもさらなる側面では、排出装置が提供される。排出装置は、以下の要素であって、(a)外面、および導管の内面を形成する孔であって、孔は、収縮ゾーンを形成するように、細長い導管の長さの一部分に沿って縮小直径を有する、外面および孔と、(b)収縮ゾーン内に位置する開口であって、開口は、排出装置の外面と孔との間に通路を形成する、開口と、(c)内面から孔の中へ内向きに突出する構造であって、構造は、開口に隣接して、またはその周囲に配置され、構造の存在は、流体の流動が細長い導管を通って移動している場合に、開口に隣接して強化された陰圧を生成するが、構造の存在は、細長い導管を通る流体の流動に対する圧力抵抗の実質的な付随する増加を生成しない、構造とを有する、細長い導管を含む。
【0010】
いくつかの変化例では、構造は、高さ(H)を有し、収縮ゾーンは、半径(R)を有し、構造の高さ(H)の物理的寸法は、収縮ゾーンの半径(R)の物理的寸法の0.65倍を超えない。他の変化例では、収縮ゾーンの半径(R)の物理的寸法に対する構造の高さ(H)の物理的寸法の比は、約0.16から約0.55の範囲内である。なおも他の変化例では、構造は、導管の主軸に沿った長さ(L)を有し、収縮ゾーンは、排出装置の主軸に沿った長さ(LCZ)を有し、構造の長さ(L)の的寸法は、前縮ゾーンの長さ(LCZ)の物理的寸法の0.75倍を超えない。加えて、収縮ゾーンの長さ(LCZ)の物理的寸法に対する構造の長さ(L)の比は、約0.25から約0.75の間であり得る。他の変化例では、構造は、導管の主軸に沿った長さ(L)を有し、収縮ゾーンは、半径(R)を有し、収縮ゾーンの半径(R)の物理的寸法に対する構造の長さ(L)の物理的寸法の比は、約1.2から約3.0の範囲内である。随意で、構造は、収縮ゾーンの断面積を21%以下分、減少させるようにサイズ決定される。なおもさらなる変化例では、排出装置における構造の存在は、そのような構造がない排出装置と比較すると、孔を通る空気流を10%以下分、制限するが、排出装置と同じ物理的寸法を有する。
【0011】
本発明の別の側面では、呼吸作動型吸入デバイスが提供される。デバイスは、上記で説明されるような排出装置を含む作動アセンブリを特徴とし、吸気呼吸に伴う排出装置を通って流れる空気は、前記デバイスを作動させるために好適である、サイフォンチャネルにおける低圧力降下を生成するように作用する。いくつかの変化例では、呼吸作動型吸入デバイスはさらに、薬剤粒子のエアロゾル製剤を含む、加圧キャニスタを含み、加圧キャニスタはさらに、デバイスの作動時にデバイスの中へエアロゾル製剤を放出するためのプライムレス弁を含む。
【0012】
本発明に従って修正されている排出装置要素から、向上した性能を得ることができることが、本発明の特定の利点である。強化排出装置は、吸気呼吸の局所流速を増加させ、デバイスを作動させるために好適なサイフォンを作成するために、呼吸作動型加圧定量吸入器(BApMDI)デバイスで使用することができ、低下した肺機能を持つ患者、有意な肺機能を持たない若者が、これらの便利で効率的な薬剤送達デバイスを使用することを可能にする。また、本発明の強化排出装置を生産するために、単純かつ再現可能な生産方法を使用できることも、本発明の特定の利点である。
【0013】
本開示および明細書を読むと、本発明のこれらおよび他の目的、側面、変化例、および利点が、当業者に容易に想起されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、従来の排出装置要素の断面図である。
【図2】図2は、図1の従来の排出装置要素の斜視切断図である。
【図3】図3は、その種々の重要パラメータを示す、従来の排出装置要素の概略図である。
【図4】図4は、本発明に従って生産された、強化排出装置要素の断面図である。
【図5】図5は、図4の強化排出装置要素の斜視切断図である。
【図6A】図6Aは、図4および5の強化排出装置の実施形態の修正部材の切断側面斜視図である。
【図6B】図6Bは、図4および5の強化排出装置の実施形態の修正部材の切断軸方向図である。
【図7】図7は、従来の排出装置および本発明に従って生産された強化排出装置要素といった、2つの排出装置要素の性能試験結果(排出装置にわたる付随する圧力降下に対して描画されたサイフォン圧力降下)を描写する。
【図8A】図8Aは、本発明に従って生産された、軽い、中間の、および重い修正部材を有する強化排出装置要素の性能試験結果(2つの異なる流体流量におけるサイフォン圧力降下に対する修正部材の高さ(H)のプロット)を表す。
【図8B】図8Bは、本発明に従って生産された、軽い、中間の、および重い修正部材を有する強化排出装置要素の2つの異なる流体流量における性能試験結果(排出装置抵抗(排出装置にわたる圧力降下)に対する修正部材の高さ(H)のプロット)を表す。
【図9A】図9Aは、従来の排出装置および本発明に従って生産された強化排出装置の性能試験結果(2つの異なる流体流量におけるサイフォン圧力降下に対する修正部材の高さ(H)のプロット)を比較する。
【図9B】図9Bは、従来の排出装置および本発明に従って生産された強化排出装置の性能試験結果(2つの異なる流体流量における排出装置抵抗(排出装置にわたる圧力降下)に対する修正部材の高さ(H)のプロット)を比較する。
【図10】図10は、作動機構として本発明に従って生産された強化排出装置を組み込む、BApMDIデバイスの切断図を描写する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を詳細に説明する前に、本発明は、特に例示された排出装置要素である、呼吸作動型加圧定量吸入器デバイスに限定されず、またはそのようなものとしての製造過程パラメータは、当然ながら変化する場合があることを理解されたい。また、本明細書で使用される技術用語は、本発明の特定の実施形態を説明する目的のためにすぎず、限定的となることを目的としていないことも理解されたい。
【0016】
本明細書で使用される場合、「排出装置」は、入口および出口を有し、排出装置の入口および出口にわたって適用される圧力降下の影響を受けて、流体がそれを通して引き込まれ、または送出される、細長い導管(中空孔またはチャネル)またはベンチュリである。導管を通る中空孔は通常、円筒形断面を有するが、楕円形、卵形、平滑長方形、または他の非対称断面を有することができる。中空孔は、その内側に位置する収縮ゾーンを有し、入口の直径は、軸方向長さの一部分に対するより小さい直径に収束し、収縮ゾーンを形成し、出口において、入口の直径に近い直径まで広がる。収束半角は通常、軸中心線から外れて17度から25度の範囲内である。広がり半角は通常、軸中心線から外れて3.5度から7.5度である。収縮ゾーンの軸方向長さは、中空孔の直径の2〜5倍の範囲である。収縮直径に対する入口の直径の比は、チョークまたはl/βと呼ばれる。流体が収縮ゾーン内で排出装置を通過するにつれて、ベルヌーイ方程式によって表されるベンチュリ効果の結果である、収縮ゾーンを通る流体の増加した流速の結果として、減圧が生成される。サイフォン管は、排出装置の外壁(サイフォン入口)から、収縮ゾーンと軸が一致する管状ダクトの内壁(サイフォン出口)上の場所まで貫通する。ジョバンニ・ベンチュリにちなんで名付けられたベンチュリ効果により、管状ダクトの内壁における圧力と、排出装置の外壁における圧力との差に等しい圧力降下が、サイフォンチャネルにわたって生成される。サイフォン圧力降下は、サイフォン管を通して管の中へ流体を引き込むために使用することができる。
【0017】
排出装置は、多くの商業的用途で有用である。排出装置は、タンクミキサーとして使用することができる。タンクの内容物の中へ排出装置を沈め、排出装置を通して流体を送出することによって、排出装置は、排出装置を通して排出される各容量に対して最大4〜5倍の流体を引き込む。このようにして、排出装置を使用すると、はるかに小さいポンプの使用を伴って同じ量の混合を達成することができる。
【0018】
排出装置はまた、消火用途のための発泡体の生成においても有用である。そのような用途では、特殊発泡ノズル用の構成要素である排出装置を通して水が排出される。排出装置を通る水流は、種々の発泡剤を引き込む。次いで、発泡体がノズルから噴出され、ある種類の火を消すために使用されるように、空気がこの混合物に対して送出される。排出装置はまた、可燃性液体が送出される必要があり、ポンプを用いて可燃性液体を直接送出することが危険となる場合にも非常に有用である。
【0019】
従来の排出装置の断面図が図1に描写されている。図中、矢印Aは、排出装置入口(115)から排出装置出口(120)へと進む、排出装置(100)の中空孔(110)を通る流体流動の方向を示す。サイフォン入口(115)は、収縮ゾーン(125)まで狭くなる。サイフォン入口(140)は、収縮ゾーン(125)内の地点で排出装置壁(135)内に位置する。排出装置の側壁(135)を貫通し、かつサイフォン出口(160)における内壁(150)を貫通する、サイフォンチャネル(130)がある。内壁(150)の表面は、サイフォン出口(160)において、かつ、中空孔(110)の全長に沿って平滑かつ連続的である。これは、流体流動の乱流を引き起こし、それにより、排出装置の効率性を低減する、排出装置の内面上の不整形が存在するべきではないと、標準教示が規定するためである。図2は、矢印Aが中空孔(110)を通る流体流動の方向を示す、図1の排出装置(100)の斜視切断図である。サイフォン出口(160)上の加速流体流動は、サイフォン入口(140)で圧力降下を引き出させる。
【0020】
図1および2で描写されるもの等の従来の排出装置は、吸気呼吸の局所流速を増加させて、デバイスを作動させるために好適なサイフォンを作成するために、BApMDIデバイスで使用することができる。例示的なBApMDIデバイスは、デバイスを作動させるように、ユーザの呼吸によってバネエネルギーを誘起することができる、米国特許第5,954,047号、第6,026,808号、および第6,905,141号で説明されているデバイスを含む。加えて、排出装置は、米国特許第5,657,749号および第6,948,496号で説明されている吸入器デバイスに組み込まれる。動作中、排出装置は、概して、入口から、吸気流の局所速度を増加させる収縮ゾーンまで狭くなる流路直径を伴うベンチュリから成る。サイフォンは、収縮ゾーン内に位置し、ベルヌーイ方程式によって、サイフォンの入口頂点上の増加した速度は、排出装置に進入する周囲圧力(PAmbient)よりも低い圧力(Pinlet Apex)を生成し、したがって、サイフォンを作成する。BApMDIデバイスでは、サイフォンは、可変容量チャンバに接続される。サイフォンが排出装置の収縮領域の中へ空気を引き込むにつれて、可変容量チャンバが空になる。誘起点において、可変容量チャンバがつぶれるように十分空にされ、したがって、BApMDIの放出機構(例えば、圧縮バネの解放)を始動させる。チャンバ容量、排出装置のサイズ、形状および構成、ならびにサイフォンの直径等の設計パラメータの適切な選択によって、BApMDIデバイスは、所望量の吸気呼吸の力による作動を引き起こすように設計することができる。この機構は、肺送達に適切であり、広範囲のユーザに対する吸気パターンに自動的に順応する一貫した放出タイミングを可能にする。
【0021】
概して、当技術分野では、ベルヌーイ方程式を適用することにより、収縮ゾーンの直径を狭くすることによって、つまり、排出装置のチョークを増加させることによって、排出装置によって生成されるサイフォン圧力降下を増加させることができると理解される。これは、タイミングよくデバイスを作動させるために相当の力が必要とされる構成のBApMDIデバイスにおける誘起機構を調整する非常に有用なパラメータであり得る。しかしながら、収縮ゾーンの直径が狭くなるにつれて、排出装置を通して空気を移動させにくくなり、排出装置にわたる圧力降下がポアズイユ方程式に従って増加する。結果として、一部のユーザは、そのような増加した収縮および増加した排出装置圧力降下を有するデバイスを誘起するための十分な肺機能を持たない場合があるので、収縮(チョーク)を増加させるための排出装置の修正が、BApMDIデバイスを動作不能にする場合がある。したがって、BApMDIデバイスで使用するための改良型排出装置を設計することに関して、有意な工学トレードオフがある。具体的には、排出装置の収縮の増加(増加したチョーク)は、サイフォン管上で引き出される圧力降下(サイフォン圧力降下)の付随する増加を引き起こし、それにより、作動力を増加させることが見込まれる。しかしながら、収縮ゾーンの直径のそのような減少は、排出装置を通る流体流動に対して、より大きな抵抗を引き起こし、排出装置にわたる圧力降下をもたらし、場合によっては、強化サイフォン圧力降下によって実現される増加を妨げる。これは、一連の次第に小さくなるストローを通してカップから流体を引き出そうとすることと考えることができる。したがって、収縮した排出装置を通して吸気しようとするユーザが、そのような有意な収縮を有する、そのような排出装置にわたって、通常の呼吸をすることが困難または不可能と感じるため、サイフォン圧力降下を増加させる(したがって作動力を増加させる)ようにチョークを有意に増加させる工学技法の適用は、排出装置を動作不能にすることが見込まれる。
【0022】
サイフォン入口の頂点に隣接する収縮ゾーン内の極めて局部的な領域を占める突出または構造(効果的には構造的収縮)を導入することにより、排出装置にわたる圧力降下を有意に増加させることなく、排出装置におけるサイフォン圧力降下を劇的に増加させることができることが発見された。これらの局部的な構造または突出は、本明細書では「修正部材」と呼ばれる。デバイスを作動させるためのBApMDIデバイスにおける強化排出装置設計の使用は、たとえデバイスを正しく操作するために増加したサイフォン圧力降下を必要とする場合にも、機能低下したユーザでさえもそのようなデバイスを作動させることができることを意味する。修正部材(極めて局部的な突出または構造)は、ベンチテスト装置に排出装置を挿入する過程の一部として、発明者らが排出装置の外側から従来の排出装置のサイフォン開口に鋭いプローブを挿入したときに、意図せず発見された。プラスチック排出装置開口の中へのプローブの挿入は、開口の内周の周囲のプラスチックの変形、および排出装置の収縮ゾーン孔における小型円錐台状突出の作成を引き起こした。ベンチテスト装置を用いた排出装置の性能の後続の試験時に、排出装置サイフォン圧力が劇的に増加することが分かったが、排出装置にわたる有意な(有害な)圧力降下はなかった。後続の試験が現象を確認し、具体的な修正が、排出装置の収縮ゾーンの中で効果的な修正部材を作成するために、強化排出装置設計の中へ設計されている(および射出成形機器が製造されている)。
【0023】
ここで図3を参照すると、本発明を説明するために、排出装置のいくつかの重要特徴が描写されている。排出装置の3つの主要パラメータは、排出装置の長さ(LE)、入口の内径(Di)、および出口の内径(Do)を含む。別の重要パラメータは、喉状部分の直径(Dt)である。排出装置は、Diから、集束ゾーンと呼ばれる部分を通りDtまで狭くなる。次いで、収縮ゾーンと呼ばれる、喉状部分の直径(Dt)を有する領域がある。次いで、直径は、出口の直径(Do)が入口の直径(Di)に通常等しいものに達するまで、再び増加する。この領域は、ひろがり領域と呼ばれる。サイフォン圧力降下、および排出装置にわたる圧力降下は、排出装置の入口における圧力(PInlet)、排出装置の出口における圧力(POutlet)、サイフォンにおいて排出装置に進入する周囲圧力(PAmbient)、および入口の頂点における圧力入口(PInlet Apex)といった、測定値を使用して決定することができる。
【0024】
「Fluid Meters, Their Theory and Application, Report of ASME Research Committee on Fluid Meters」第6版(1971)を参照すると、排出装置サイフォンによって生成されるサイフォン圧力降下(ΔPsiphon)は、非粘性(invisid)subMach 1フローに対するベルヌーイ方程式によって表される。
ΔPsiphon=(PAmbient−PInlet Apex)=Q2ρ(1/A2−1/a2)2gc(gf/cm2)、式中、
ρ=標準温度および圧力(STP)による空気密度=0.001193gm/cm3、
gc=重力定数=982.14(gm/gf)(cm/sec2)、
a=喉状部分の断面積=πDt2/4、および
A=入口の断面積=πDi2/4である。
【0025】
層流を伴う任意の導管を通る流量および圧力降下は、ポアズイユ方程式によって表すことができる。
Q=体積流量=gcρ(PInlet−POutlet)d4/128mLE(cm3/sec)
したがって、排出装置にわたる圧力降下(ΔPeductor)は、ポアズイユ方程式を再編成し、ベンチュリα2とβとの関数である損失係数(1−ΔPEloss)を含むことによって決定することができる。
ΔPeductor=(PInlet−POutlet)=DQ128μLE/πgcDmean4(1−ΔPEloss)(gf/cm2)、式中、
α2=分岐ノズル半角=7.5度、
β=入口の直径で割った喉状部分の直径(Dt/Di)=0.339gm/sec−cm、
STPμairにおける空気粘度=0.000179、および
ΔPEloss=示差圧力損失(%)=e(1.883+(0.253α2)+(−0.327βα2)+(0.494β))
上記の数学的技法を使用して、サイフォン圧力降下および排出装置全体にわたる圧力降下の両方を、既知の寸法の排出装置設計案に対する種々の流速において予測することができる。次いで、これらの予測圧力降下を、種々のモデル排出装置の測定圧力降下値と比較することができる。驚いたことに、上記の技法が本発明の強化排出装置設計に適用された場合、予測値は測定された排出装置性能を十分に表すことができない。具体的には、(収縮ゾーン中の修正部材によって提供される追加収縮に基づく)サイフォン圧力降下の予測増加がある場合、排出装置にわたる圧力降下の対応する予測値は、その圧力降下の大きさを有意に過大評価する。実際に、本発明の強化排出装置設計を用いて、排出装置にわたる圧力降下の不要な付随する増加を伴わずに、サイフォン圧力降下の有意な増加を達成することができる。場合によっては、本発明の強化排出装置設計は、排出装置にわたる圧力降下における10%以下の最小低減で、サイフォン圧力降下を有意に増加させる。これは、劇手に向上した性能特性を有する排出装置設計をもたらす。
【0026】
本発明の強化排出装置は、収縮ゾーンにおける排出装置の内壁上に位置する修正部材(突出または構造)を備える。突出のサイズおよび形状は、サイフォン出口を包囲する容量に制限され、それは、収縮ゾーンの長軸に沿った長さ(L)、突出または構造が収縮ゾーンの表面より上側に突出する最大量である高さ(H)、および収縮ゾーン壁によって形成される曲面の弓形(θまたはシータ)(収縮ゾーンの短軸に対してある角度を有する断面円弧)によって規定される。ある実施形態では、サイフォンチャネルは、修正部材を通って延在し、好ましくは、サイフォンチャネルは、修正部材を形成する突出または構造の軸中央を通って延在する。他の実施形態では、突出または構造は、サイフォン出口に隣接する。突出または構造は、サイフォン入口頂点を包囲する場所のみでの圧力の増加した低減を引き起こし、流体の局所流速を増加させ、頂点における圧力の低減をもたらす。しかしながら、突出または構造の主要パラメータが以下の条件を満たす場合、排出装置の導管の断面積の減少による流動抵抗の増加がほとんどないか、または全くない:突出または構造の高さ(H)が、収縮ゾーンの半径(R)の0.65倍を超えない;排出装置の長軸に沿った突出または構造の長さ(L)が、収縮ゾーンの長さ(LCZ)の0.75倍を超えない;および、修正部材を形成する突出または構造が、収縮ゾーンの断面積を約21%以下しか減少させないように、収縮ゾーンの半径の周辺を囲む突出または構造の広がり(θ)が120度を超えない。ある実施形態では、突出または構造の高さ(H)と収縮ゾーンの半径(R)との間の比は、約0.16から0.55の間である。さらなる実施形態では、排出装置の長軸に沿った突出または構造の長さ(L)と収縮ゾーンの半径(R)との間の比は、約1.2から3.0の間である。なおもさらなる実施形態では、収縮ゾーンの半径の周辺を囲む突出または構造の広がり(θ)は、約30度から80度の間である。
【0027】
本発明の強化排出装置の実施形態の断面図が、図4に描写されている。図中、矢印Aは、排出装置入口(215)から排出装置出口(220)へと進む、排出装置(200)の中空孔(210)を通る流体流動の方向を示す。サイフォン入口(215)は、収縮ゾーン(225)まで狭くなる。サイフォン入口(240)は、収縮ゾーン(225)内の地点で排出装置壁(235)内に位置する。側壁(235)を貫通し、内壁(250)を通過するサイフォンチャネル(230)がある。サイフォンチャネル(230)はまた、修正部材(265)によって提供される突出または構造を通過し、サイフォン出口(260)で終端する。図5は、矢印Aが中空孔(210)を通る流体流動の方向を示す、図4の排出装置(200)の斜視切断図である。修正部材(265)およびサイフォン出口(260)の上の加速流体流動は、排出装置にわたる圧力降下の不適切な付随する増加を伴わずに、サイフォン入口(240)における強化サイフォン圧力降下を引き出させる。したがって、排出装置の孔の中の収縮ゾーンの断面積の減少にもかかわらず、排出装置を通る流動抵抗の有意な増加がほとんどないか、または全くない。
【0028】
図6Aは、図4および5の排出装置の実施形態の修正部材(265)の切断側面斜視図であり、収縮ゾーンの長軸に沿った修正部材の長さ(L)は、図4および5の実施形態での収縮ゾーンの全長(LCZ)に対して示されている。図6Bは、図4および5の排出装置の実施形態の修正部材(265)の切断軸方向図であり、修正部材(265)の高さ(H)、および修正部材の収縮ゾーン壁によって形成される曲面の弓形(θ)も示されている。
【0029】
本発明による強化排出装置要素の向上した性能を実証するために、同一の主要排出装置パラメータ(同一の排出装置の長さ(LE)、同一の入口の内径(Di)、同一の出口の内径(Do)、同一の喉状部分の直径(Dt)、および同一の収縮ゾーンの長さ(LCZ))を有する、2つの排出装置が生産された。第1の排出装置(002)は、従来の排出装置であり、第2の排出装置(003)は、本発明に従って生産された、修正部材を収縮ゾーンの中に含んだ。2つの排出装置要素は、サイフォン圧力降下について、および排出装置にわたる圧力降下について試験された。図7は、種々の流速における排出装置の試験の結果を描写し、具体的には、従来の排出装置(002)および本発明に従って修正された強化排出装置要素(003)について生成された、サイフォン圧力降下(垂直軸)に対して描画された排出装置を通る流動(水平軸)のプロットを示す。各水平データ点に位置する、4つのデータ点がある。菱形(◆)は、従来の排出装置(002)を通る抵抗(排出装置にわたる圧力降下)を表し、三角(▲)は、強化排出装置(003)を通る抵抗(排出装置にわたる圧力降下)を表す。図に示すように、種々の試験流速(5、10、15、20、25、30、35、40、45、および55リットル/分(LPM))において、2つの異なる排出装置に対する排出装置にわたる圧力降下を表す2つのデータ点(◆および▲)は、ほぼ同一であり、排出装置の孔の中の収縮ゾーンの断面積の減少にもかかわらず、強化排出装置(003)における修正部材の追加が、その排出装置を通る流動抵抗の増加をもたらさなかったことを実証した。
【0030】
しかしながら、2つの排出装置に対するサイフォン圧力降下が測定された場合、従来の排出装置(002)と強化排出装置(003)との間に有意な差があった。再び図7を参照すると、従来の排出装置(002)についてサイフォン出口において生成されるサイフォン圧力降下は、丸(●)で表され、強化排出装置(003)についてサイフォン出口において生成されるサイフォン圧力降下は、四角(■)によって表される。図に示すように、流速値が増加する(水平軸に沿って左から右に進む)につれて、従来の排出装置(002)に対するサイフォン圧力降下と強化排出装置(003)に対するサイフォン圧力降下との間の差が有意に増加する。例えば、40LPM(概して、通常の吸気呼吸の速度)において、強化排出装置サイフォン圧力降下(■)は、従来の排出装置圧力降下(●)よりもほぼ60ミリバール高く、これは、両方の排出装置にわたる付随する圧力降下が約2〜3ミリバール互に異なるのみであったので、意外であった。実際に、通常の吸気呼吸と関連する流量のほとんど(25〜40LPM)において、強化排出装置(003)は、従来の排出装置(002)と比較すると、有意に増加したサイフォン圧力降下、および付随するより低い抵抗(排出装置にわたる圧力降下)を有した。これは、流路の障害(修正部材の存在)のいかなる増加も、より高い抵抗をもたらすはずであると教示する、一般的な排出装置設計の原則に照らすと、予期しない結果であった。
【0031】
本発明に従って生産される、強化排出装置要素の向上した性能をさらに実証するために、同一の主要排出装置パラメータ(同一の排出装置長さ(LE)、同一の入口の内径(Di)、同一の出口の内径(Do)、同一の喉状部分の直径(Dt)、および同一の収縮ゾーン長さ(LCZ))を有する、いくつかの排出装置が生産された。第1の排出装置(Rev 002)は、射出成形によって生産された従来の排出装置であった。第2の排出装置(Rev 003)も、射出成形によって生産され、本発明による強化排出装置要素を形成するように、サイフォン出口を取り囲む成形修正部材(0.45mmの突出高さ(H)を伴う)を収縮ゾーンの中に含んだ。次に、(Rev 002)排出装置を生産するために使用された同じ射出成形過程によって生産された、従来の排出装置が、本発明による修正部材の3つのグループを生産するように手動で改変された。特に、本明細書では、それぞれ、重い、中間、および軽いと呼ばれる、強化排出装置の3つのグループが、サイフォンチャネルの中へ先細ツールを導入することによって手動で形成された。サイフォンチャネルの中への先細ツールの挿入は、排出装置の成形プラスチックの変形を引き起こし、サイフォン出口を取り囲む、排出装置の中空孔内の「火山状」修正部材をもたらした。先細ツールを挿入するために使用される力の量は、一連の異なる突出の高さ(H)を有する修正部材を生産するように、軽い、中間、および重いとして、主観的に適用された。次いで、軽い、中間の、および重い修正部材グループにおける各排出装置要素の実際の突出の高さ(H)が、光学的に測定された。排出装置要素の全ての収縮ゾーン中の中空孔の直径は、2.54mmであり、したがって、収縮ゾーンの半径(R)は、1.27mmであった。軽い、中間の、および重い強化排出装置グループにおける修正部材の光学的に測定された高さ(H)は、約0.2mmから約0.7mmに及んだ。
【0032】
ここで図8Aを参照すると、軽い、中間の、および重い修正部材グループについて、2つの流量(28.3LPMおよび45LPM)における修正部材の高さ(H)対サイフォン圧力降下のプロットが提示されている。図に示されるように、手動で修正した強化排出装置の全ては、増加した排出装置の効率を示し、より低い流体流量(28.3LPM)におけるサイフォン圧力降下は、約80ミリバール(軽い修正部材グループについて)から約120ミリバール(重い修正部材グループについて)に及んだ。より高い流体流量(45LPM)におけるサイフォン圧力降下は、約250ミリバール(軽い修正部材グループについて)から約375ミリバール(重い修正部材グループについて)に及んだ。軽い、中間の、および重い修正部材グループに対する付随する排出装置抵抗(排出装置にわたる圧力降下)が、図8Bに提示されている。具体的には、軽い、中間の、および重い修正部材グループについて、2つの流量(28.3LPMおよび45LPM)における排出装置抵抗(排出装置にわたる圧力降下)に対する修正部材の高さ(H)のプロットが提示されている。図に示されるように、より低い流体流量(28.3LPM)における排出装置抵抗は、約0.060KPa^0.5/LPM(軽い修正部材グループについて)から約0.063KPa^0.5/LPM(重い修正部材グループについて)に及ぶ。より高い流体流量(45LPM)における排出装置抵抗は、約0.063KPa^0.5/LPM(軽い修正部材グループについて)から約0.070KPa^0.5/LPM(重い修正部材グループについて)に及んだ。したがって、たとえ軽い、中間の、および重い修正部材グループが、修正部材の高さ(H)の増加とともに実質的に直線的に増加した、有意に強化されたサイフォン圧力降下性能を示したとしても、付随する排出装置低高性能は、3つ全てのグループにわたって比較的不変のままであった。
【0033】
手動で修正された強化排出装置(軽い、中間の、および重い修正部材グループ)を用いて得られた排出装置性能の結果と比較して、同じ試験パラメータを使用して、従来の排出装置(Rev 002)および射出成形された強化排出装置(Rev 003)の性能が試験された。ここで図9Aを参照すると、(H)=0である従来の排出装置(Rev 002)、および(H)=0.45mmである射出成形された強化排出装置(Rev 003)について、2つの流量(28.3LPMおよび45LPM)におけるサイフォン圧力降下に対する修正部材の高さ(H)のプロットが提示されている。図に示されるように、強化排出装置(Rev 003)は、従来の排出装置(Rev 002)と比較して増加した排出装置の効率を示し、より低い流体流量(28.3LPM)におけるサイフォン圧力降下は、約250ミリバール(Rev 003強化排出装置に対して)と比較して約60ミリバール(Rev 002従来の排出装置に対して)であり、より高い流体流量(45LPM)におけるサイフォン圧力降下は、約255ミリバール(Rev 003強化排出装置に対して)と比較して約175ミリバール(Rev 002従来の排出装置に対して)であった。従来の排出装置(Rev 002)および射出成形された強化排出装置(Rev 003)に対する付随する排出装置抵抗の結果(排出装置にわたる圧力降下)が、図9Bに提示されている。特に、従来の排出装置(Rev 002)および射出成形された強化排出装置(Rev 003)について、2つの流量(28.3LPMおよび45LPM)における排出装置抵抗(排出装置にわたる圧力降下)に対する修正部材の高さ(H)のプロットが、図9Bに提示されている。図に示されるように、より低い流体流量(28.3LPM)における排出装置抵抗は、(Rev 003強化排出装置に対する約0.053〜0.055KPa^0.5/LPMと比較して)Rev 002従来の排出装置については、約0.059〜0.060KPa^0.5/LPMであった。より高い流体流量(45LPM)における排出装置抵抗は、(Rev 003強化排出装置に対する約0.057KPa^0.5/LPMと比較して)Rev 002従来の排出装置については、約0.059KPa^0.5/LPMであった。したがって、強化排出装置(Rev003)は、軽い、中間の、および重い修正部材の強化排出装置を用いて同程度の性能強化(抵抗圧力の付随する増加を伴わない増加したサイフォン降下)を実証し、サイフォン圧力降下および抵抗圧力性能の両方において、従来の排出装置(Rev 002)よりも明らかに優れていた。
【0034】
本発明の強化排出装置設計によって提供される便益のなおもさらなる実施例は、強化排出装置が、BApMDIにとって主要な品質性能属性である、多大に向上した誘起一貫性を示すことである。この点に関して、排出装置要素を含むBApMDIデバイスは、人間用の医薬品で使用するための容認性を実証するように品質試験を受けなければならない。したがって、人間用の医薬品で使用するために製造されているデバイスは、容認可能な医薬性能を確保するように、作動圧力性能および一貫性について試験される。試験パラメータは、デバイス(呼吸)作動の容認可能な上限および下限を、それぞれ、47および25ミリバールに設定する。下限は、吸入器の偶発的な誘起を回避するために十分高い圧力に設定され、上限は、健常人が快適と感じる吸気呼吸の上限値を反映する、実験的に設定された値に設定される。従来の排出装置を含むBApMDIデバイスのサンプリングのための必要作動圧力の品質試験において、有意数の試験されたユニットが、作動圧力上限を優に上回ることが分かり、したがって、試験されたデバイスの70%が、品質仕様を満たすことができなかった。しかしながら、本発明に従って生産された強化排出装置要素を含むBApMDIデバイスの同様のサンプリングが、品質試験を受けた場合、試験されたデバイスの15%のみが、品質仕様を満たすことができなかった。これは、従来の排出装置の使用から本発明の排出装置へ切り替えることの結果として、製造効率の有意な向上を表し、そのような医薬品の全体的な商品原価の有意な改善において反映することができる。
【0035】
本発明の強化排出装置は、当業者に公知である標準過程および技法を使用して、および容易に入手可能である材料を使用して製造され得る。したがって、強化排出装置は、標準射出成形過程を使用して、プラスチック材料、例えば、ポリカーボネート等の医薬品グレードプラスチック(Makrolon、部品番号2458−550115、Bayer MaterialScience)から形成することができる。1つの好ましい実施形態では、強化排出装置は、3本のピンを採用する射出成形技法を使用して、ポリカーボネート材料から形成される(1本のピンは、排出装置の入口から、サイフォン出口の中央の上の修正部材の中間まで延在する、第2のピンは、排出装置の出口から、サイフォン出口の中央の上の修正部材の中間まで延在し、第1のピンと出会い、第3のピンは、サイフォン入口からサイフォン出口まで延在し、第1および第2のピンと出合う)。ピンを含む成形構成要素は、好ましくは、内面上、および修正部材の表面を含む排出装置の孔の全長に沿って、表面不整形の生成を回避するように、細かく研磨される。
【0036】
いったん製造されると、本発明の強化排出装置が有利に適用され得る多数の用途がある。1つのそのような用途は、人間の吸引がデバイスの作動のための誘起エネルギーを提供する、呼吸作動型吸入器の誘起機構にある。この点に関して、しばしば、呼吸作動型吸入器を誘起するために必要とされるエネルギー(圧力降下)が、通常の人間の呼吸によって適用することができるものよりも大きい場合がある。本発明は、誘起機構に有利に連結された場合、通常の人間の呼吸による作動を可能にする、サイフォンにわたる圧力降下を増幅する手段を提供する。排出装置の圧力降下の比例的増加を伴うことなく、強化排出装置のサイフォンにわたる圧力降下を増加させる能力は、小さな子供および健康状態が低下した者等の被験者さえも、呼吸作動型誘起機構を操作することを可能にする。
【0037】
肺への粉末、噴霧、およびエアロゾルの送達を介した、局所的または全身的のいずれか一方である、薬剤の送達が、何十年も使用されてきた。噴霧器は、典型的には、患者によって吸入される空気流の中へ送達される噴霧またはエアロゾルを生成する。エアロゾルおよび噴霧はしばしば、薬剤の溶液を介して圧縮空気を与えることによって、または、薬剤溶液の非常に小さい液滴を生成するために、メッシュの開口を通して薬剤の溶液を押し進める振動メッシュの使用によって生成される。生成されたエアロゾルは、管類、および/または、正常に呼吸する患者の鼻および口を覆って定位置で保持される、フェイスマスクによって患者に送達される。この特徴の利点は、患者が、フェイスマスクを通して正常に息を吸うことしか要求されないことである。噴霧器は、薬用噴霧を患者に連続的に送達し、それにより、噴霧器が小児患者を治療するために有用となるため、呼吸を噴霧器と同期させる必要がない。
【0038】
非小児患者に対しては、手持ち式であり、補助機器または電気を必要としない定量吸入器(MDI、加圧MDIまたはpMDIとも呼ばれる)が開発された。MDIデバイスは、典型的には、加圧ガスと、薬剤の溶液および/または懸濁剤のいずれか一方である製剤とを含む、小型アルミニウムキャニスタから成る。キャニスタは、弁軸が圧縮された場合に、製剤の単回少量ボーラス(典型的には25〜100mL)を送達する絞り弁を有する。MDI吸入器デバイスは、キャニスタの弁端が筐体の中へ配置された状態でキャニスタが挿入される単純なプラスチック筐体で構成することができる。キャニスタの底部の一部分は、手動で筐体の中へさらに押し込むことができるように、筐体より上側で露出される。この動作は、弁軸を弁の本体の中へ押し込ませ、筐体の中への薬剤のボーラスを放出する。
【0039】
使用中、患者は、MDIデバイスのマウスピースを口まで上げて保持し、息をし始め、次いで、キャニスタを押し下げることによって薬剤のボーラスを手動で放出する。これは、患者の吸入によって生成される空気流の中へ薬剤のエアロゾルボーラスを放出する。この手動の器用さと呼吸タイミングの組み合わせは、小さな子供がMDIデバイスを効果的に使用することを除外する影響があるが、一部の成人もそのようなMDIデバイスを適正に使用することが困難と感じる。これらの懸念に対処するために、呼吸作動型MDIデバイスが開発された。初期バージョンは、その中に標準手動MDIデバイスが配置される先進的な筐体を含んだ。患者の吸入によって引き起こされる空気流を検出し、次いで、薬剤を送達するためにキャニスタを自動的に押下させる、機械および電子バージョンの両方がある。
【0040】
加圧キャニスタが患者の吸気呼吸流によって種々の方法で起動されるいくつかの呼吸作動型吸入器デバイスがある。多くは、プレートの回転が、何らかの種類の貯蔵エネルギーの放出を誘起して、定量吸入器(MDI)キャニスタ弁を起動するように、空気流の中に位置付けられ、機械的に連結される旋回可能プレートを配置することによって、起動される。米国特許第5,954,047号、第6,026,808号、および第6,905,141号は、カバーを開くことによってバネが圧縮され、次いで、患者がマウスピースを通して息を吸い込むことによってバネの貯蔵エネルギーが放出される、呼吸作動型加圧MDI(BApMDI)デバイスを説明している。吸気流は、サイフォン管を通して真空チャンバにおいて引き出される真空によって、可変容量チャンバの容量を低減させる、従来の排出装置を通って移動する。真空チャンバサイズが減少するにつれて、これは、機械的にトリガを解放し、貯蔵バネエネルギーに薬剤キャニスタを下向きに付勢させて、絞り弁を起動し、薬剤の投与量を分注する。TEMPO(登録商標) BApMDIデバイス(MAP Pharmaceuticals)、およびMaxair(登録商標) Autohaler(登録商標)、およびEasiBreathe MDIデバイス(Teva)等の、現在製造されているそのようなBApMDIデバイスがある。本発明の強化排出装置は、事実上、任意の流体流動の力を増幅するために使用することができ、そのような要素は、そのような圧力増幅が有益となる任意の種類のデバイスまたは装置で使用することができる。
【0041】
本発明のある実施形態では、強化排出装置は、TEMPO BApMDIデバイス(MAP Pharmaceuticals, Inc.)の改良バージョンを提供するために使用される。このデバイスは、加圧キャニスタを含み、プライムレス弁(primeless valve)アセンブリを有し、粉末薬剤の懸濁剤を伴うエアロゾル製剤を含む、呼吸作動型MDI吸入器デバイス(アクチュエータ)を含む。弁アセンブリは、熱可塑性のコア、本体、および計量チャンバ、ならびにバネを含む。弁アセンブリは、キャニスタの加圧内容物が計量チャンバに自由に流入および流出することを可能にするように特別に設計されている。計量チャンバへの製剤の自由な流入および流出は、キャニスタと計量チャンバとの間の流路の特定の設計によって達成される。弁は、弁が使用のために逆転された時にプライムするので、無駄なプライミングショットを発射する必要がない。弁は、好適な送達アクチュエータを用いて、逆(弁が下になった)配向で使用されることを目的としている。
【0042】
弁は、コアを弁の中へ押下することによって(アクチュエータとともに使用される場合、逆弁上のキャニスタベースに押し付けることによって)作動させられる。弁は、コアを押下した時、およびコアの側孔が計量チャンバに進入する前に、チャンバ内のコアの下端におけるスロットが内側座部を越えて通り過ぎ、製剤に対してチャンバを閉じるように設計されている。コアのさらなる押下は、コアの側孔が計量チャンバに進入することを可能にし、中空軸を通して製剤を放出することを可能にする。コアがバネによってその静止位置に戻されると、コアの下端におけるスロットは、計量チャンバに進入し、チャンバが再充填されることを可能にする。したがって、弁は、プライムレスであり、特に定量の製剤を放出することを目的としている。
【0043】
TEMPO吸入器は、充填キャニスタから患者の肺への呼吸同期型製剤送達を可能にするアクチュエータである。これは、患者が吸入した時に自動的に薬剤を分注し、深い肺への薬剤送達を可能にする。吸入器は、小型一体流量制御チャンバ(FCC)の中へ定量のエアロゾルを放出する。エアロゾルプルームは、滞留時間を増加させるため、にプルームをスピンさせて渦にすることによって、および側壁堆積を低減するための垂直側壁空気流にプルームをさらすことによって、このチャンバの中で減速させられる。増加した滞留時間は、製剤推進剤の蒸発を可能にし、放出されるプルームの中に呼吸用薬剤粒子の大部分を残す。吸入器の呼吸同期型トリガは、充填キャニスタを作動させ、ピーク流速または吸気容量とは無関係に、吸気サイクルの最初の半分(交換容量)以内でプルームを放出するように設計されている。
【0044】
TEMPOデバイスのトリガおよび作動アセンブリは、排出装置、ダイヤフラム、マニホールド、トリガ、およびクレードルといった種々の要素から成る。マウスピースを通した吸入は、吸入器を通して空気流を引き起こす。要素を通って流れる空気によって、低圧真空が排出装置のサイフォン穴において生成される。この真空は、ダイヤフラムを「引っ張り」、それは順に、トリガを移動させる。トリガ運動は、クレードルから支持材を除去し、次いで、クレードルは、バネ力を受けて自由に移動する。この運動は、クレードルに充填キャニスタを排出させ、弁を通した製剤放出をもたらす。コッキングレバーを閉じる動作は、バネ圧縮を解放し、マウスピースを覆う。
【0045】
TEMPOデバイスのFCCは、製剤の放出されるエアロゾルプルームを減速および制御するように設計されている。この動作は、チャンバの中のプルームの増加した滞留時間が、推進剤の蒸発を推進すること、および薬剤粒子を吸入空気流に混入させることを可能にする。FCCは、渦プレート、FCC後壁/噴霧ノズル、多孔質管、およびFCC前部といった、いくつかの要素から成る。吸入呼吸は、これらの要素のそれぞれを通して方向付けられる。
【0046】
FCC渦プレートは、噴霧ノズルの上流に位置する。吸入空気流の一部分が、FCC渦プレートを通して方向付けられ、空気を回転(渦)パターンで流れさせる。この渦動作は、空気流中の粒子の軸方向速度を低減し、推進剤の蒸発を可能にするようにFCC中の滞留時間を増加させる。渦パターンは、独自仕様の渦プレート設計によって達成される。
【0047】
FCC後壁に組み込まれた噴霧ノズルは、渦プレートによって生成される渦空気流の中へエアロゾルプルームを放出する。この渦プレートからのエアロゾルおよび空気の混合物は、FCC後壁/ノズル構成要素内の流動面積の増加によって低減される。FCC後壁/ノズルの排出口を通して引き込まれる吸入空気は、(1)全体的な流動抵抗を低減して患者の快適性を向上させ、および(2)十分な軸方向運動量を提供し、制御された渦プルームを駆動し、空気流を通り過ぎて、FCC前部およびマウスピースを通って患者の呼吸管の中へ進入させる働きをする。
【0048】
空気はまた、TEMPOデバイスにおける多孔質管の多孔質壁を通して引き込まれる。この流動は、壁上のエアロゾルの堆積を阻止する、チャンバの内壁に沿った緩衝層を形成する。吸入器を通して引かれる空気の別の部分は、FCC前部を通して引き込まれ、スプレーを横断して方向付けられる。この直交流衝突噴流は、エアロゾルプルームの速度を減速し、プルーム速度を吸入空気流とほぼ同じ速度まで低減する。
【0049】
本発明にしたがって生産される強化排出装置を組み込む、BApMDIデバイスの切断図が、図10に描写されている。吸入器デバイス(500)は、強化排出装置要素(510)と、プライムレス弁(530)を含む加圧キャニスタ(520)とを含む。吸入器デバイス(500)は、約135度の角度を介して、コッキングレバー(550)を持ち上げ、開くことによって、使用の準備ができる。レバーを持ち上げる動作は、マウスピース(540)の覆いを取り、使用のために吸入器を準備する。コッキングレバー(550)が持ち上げられるにつれて、レバー上のカムが2つのバネを圧縮し、それらは、加圧キャニスタ(520)を保持するクレードルに力を適用し、デバイスが作動させられる場合に充填キャニスタを作動させるためのエネルギーを提供する。デバイスを操作するために、患者は、マウスピース(540)の縁の周囲に唇で密閉を生成し、通常の吸気呼吸をし始める。空気が矢印(A)によって描写されるように吸入器デバイス(500)の中へ引き込まれるにつれて、吸気空気は、矢印(B)によって描写されるように強化排出装置(510)を通過し、バネエネルギーを放出し、矢印(E)によって描写されるように渦空気流の中へエアロゾル化薬剤の投与量を弁に放出させるのに十分である、サイフォン圧力降下を提供し、薬剤は、FCC(560)の中でさらに渦になった後、矢印(D)によって描写される空気流とともに、マウスピースを通して吸入器から退出し、患者の肺の中への薬剤の吸気を可能にする。
【0050】
(実施例)
(実施例1)強化排出装置要素の生産
射出成形技法を使用して、原材料のポリカーボネートから本発明による強化排出装置を生産した。強化排出装置要素は、以下の相対的物理パラメータを有した。
−突出(修正部材)の高さ(H)と収縮ゾーンの半径(R)との比は、約0.16から0.65の間である。
−排出装置の長軸に沿った突出(修正部材)の長さ(L)と収縮ゾーンの長さ(LCZ)との間の比は、0.25から0.75の間である。
−収縮ゾーン半径の周辺を囲む突出(修正部材)の広がり(θ)は、60度から120度の間である。
−収縮ゾーンの断面積の縮小は、約21%を超えない。
【0051】
具体的には、図5〜6Bに図示されるような強化排出装置の一実施例「Rev003」は、以下の表1に記載されるような以下の物理的寸法を有した。
【0052】
【化1】
(実施例2)強化排出装置サイフォンによって生成される圧力降下
標準数学的技法を使用して、従来の排出装置(Rev 002)および本発明に従って生産される強化排出装置要素(Rev 003)についてのサイフォン圧力降下および排出装置にわたる圧力降下を推定し、次いで、これらの予測値を測定値と比較した。Rev 002およびRev 003排出装置は、同一の主要排出装置パラメータ(同一の排出装置の長さ(LE)、同一の入口の内径(Di)、同一の出口の内径(Do)、同一の喉状部分の直径(Dt)、および同一の収縮ゾーンの長さ(LCZ))を有した。ベルヌーイ方程式を使用して、排出装置に対する種々の流体流量における予測圧力降下値を計算した。
ΔPsiphon=(PAmbient−PInlet Apex)=Q2ρ(1/A2−1/a2)2gc(gf/cm2)、式中、
ρ=標準温度および圧力(STP)での空気密度=0.001193gm/cm3、
gc=重力定数=982.14(gm/gf)(cm/sec2)、
a=喉状部分の断面積=πDt2/4、および
A=入口の断面積=πDi2/4である。
【0053】
次いで、予測圧力降下値を、Rev 002およびRev 003排出装置の測定性能と比較した。比較の結果を、以下の表2に示す。
【0054】
【化2】
表2のΔ%列は、従来の排出装置(Rev 002)および本発明による修正部材を含んだ強化排出装置(Rev 003)について、ベルヌーイ方程式で予測したサイフォン圧力降下と測定されたサイフォン圧力降下との間のパーセント差を表す。図に示されるように、ベルヌーイ方程式は、従来の排出装置(Rev 002)について、流量の範囲(10〜53.2LPM)の大部分にわたって圧力降下を正確に予測し、したがって、Δ%は小さい。しかしながら、強化排出装置(Rev 003)については、ベルヌーイ方程式は、圧力降下を正確には予測せず、したがって、Δ%は大部分の流速に対して大きい。強化排出装置(Rev 003)に対するサイフォン圧力降下の絶対的増加は、最先端の排出装置設計に基づいて予期または予測されたであろうものよりも有意に大きい。
【0055】
別の予期しない便益は、強化排出装置(Rev 003)の収縮ゾーンの直径を効果的に減少させることによって、サイフォン圧力降下が増加させられた一方で、排出装置の圧力降下が同程度の流量で大幅に増加しなかったことである。これは、収縮ゾーンの中への修正部材の突出がその効果的な直径を狭くするにつれて、増加した排出装置の圧力降下を予測する、ポアズイユ方程式によって予測されるものに反する。サイフォン圧力降下の予期しない増加は、排出装置の圧力降下の増加の予期しない欠如とともに、ユーザが、より少ない労力でより低い流速においてデバイスを誘起することを可能にするという点で、強化排出装置を採用するBApMDIデバイスのユーザにとって非常に有益である。修正部材の突出は、排出装置の収縮ゾーンの直径の半径の0.65倍と同じくらいの高さを有し、30〜60LPMの吸入流速の典型的な範囲にわたってサイフォン圧力降下を最大約45%まで増加させながら、排出装置の圧力降下に大幅に影響を及ぼすことなく(例えば、10%以下)断面積を最大約21%分、縮小できることが分かっている。
【0056】
特定の実施形態が本明細書で説明されているが、本開示の方法、システム、および装置は、その精神から逸脱することなく、他の具体的形態で具現化され得ることが、当業者によって理解されるであろう。したがって、本実施形態は、全ての点において、本発明を制限せず、例証的として見なされる。むしろ、本発明の範囲および精神は、添付の請求項によって具現化される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、経口吸入による粒子状薬剤の送達で使用するための定量吸入器デバイスおよびその要素に関し、具体的には、強化性能を有する排出装置要素、および一連の動作流速にわたって増加した圧力降下を最小限化しながら、サイフォン圧力降下を増加させるために、そのような強化排出装置を採用する呼吸作動型加圧定量吸入器に関する。
【背景技術】
【0002】
長年、肺への薬剤装填エアロゾルの経口吸入送達が、薬剤送達の効果的な手段となっている。粒子状薬剤を送達するために効果的である一種類のデバイスは、薬剤製剤を含む、絞り弁を伴う加圧キャニスタを含む。定量吸入器の「押して呼吸する」バージョンでは、キャニスタは、上部を露出したままキャニスタの下部分を覆う筐体から成る、アクチュエータ内に配置される。絞り弁は、筐体の基礎の内側のサンプ/オリフィスアセンブリの中へ着座する。オリフィスは、弁軸に対して鋭角で配置され、90度の角度で筐体に取り付けられ、マウスピースで終端する導管をほぼ通して、粒子状製剤の放出を方向付ける。薬剤を投与するために、ユーザは、デバイスのマウスピースの周囲で唇を密閉し、キャニスタの露出部分を筐体の中へ押下しながら同時に吸引する(吸気呼吸)。キャニスタは、絞り弁を作動させる方式で下向きに平行移動し、したがって、ユーザが吸入するにつれて呼吸管の中へ引き込まれる、エアロゾルプルームとしての薬剤の放出を引き起こす。一部のユーザがエアロゾルプルームの放出を吸気呼吸と協調させることは困難であり得る。
【0003】
「押して呼吸する」作動型吸入器に関連する問題に対処するために、ユーザが吸気呼吸を行うと自動的に薬剤のエアロゾルプルームを放出する、改良型吸入器デバイスが開発されている。これらは、「呼吸作動型加圧定量吸入器」(「BApMDI」)と称される。例示的なBApMDIデバイスでは、カバーを開くことによって圧縮されるバネを使用して、作動を実行することができる。このバネエネルギーは、BApMDIがユーザの呼吸によって誘起されるまで貯蔵され、ユーザの呼吸時に、バネ力が、加圧キャニスタを押下して、ユーザの呼吸の中へのエアロゾル化薬剤のプルームの放出を引き起こすように適用される。そのような誘起機構は、排出装置要素に依存し、排出装置要素は、収縮ゾーンの中で狭くなる流路を有するベンチュリを含み、吸気呼吸の局所流速を増加させて、デバイスを作動させるために好適なサイフォンを作成する働きをする。
【0004】
BApMDIデバイスが当技術分野の改良を表すが、バネエネルギーを誘起する(したがって、デバイスを作動させる)ために必要とされるエネルギー(圧力降下)は、通常の人間の呼吸によって適用することができるものを超え得ることが分かっている。これは特に、ユーザが低下した肺機能を有する、またはユーザが成人の肺活量を持たない若者である場合の問題を提示し得る。したがって、通常の人間の呼吸による作動を可能にする誘起機構を伴う改良型BApMDIデバイスを提供する必要性が、当技術分野に残っている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
向上した性能特性を有する強化排出装置要素を提供することが、本発明の目的である。本発明は、従来の排出装置のサイフォンの入口頂点を包囲する収縮ゾーンの中への突出または構造の導入が、排出装置にわたる圧力降下を有意に増加させることなく、流量の関数としてサイフォン圧力降下を有意に増加させるという発見から生じる。これは、予想外であり、排出装置の中空孔の内壁に沿った任意の構造または修正部材を含むことが、その要素のサイフォン圧力降下を増加させるのに役立ち得るが、排出装置にわたってより高い圧力降下ももたらし、したがって、修正排出装置の性能に悪影響を及ぼすという当技術分野の既存の知識に反したものである。本発明の強化排出装置は、呼吸作動型吸入器デバイスを誘起するために必要とされる吸気流量を低減し、したがって、若年管患者にとって、および低下した肺機能を持つ患者にとって、経口吸入された薬剤の送達を促進するために使用することができる。
【0006】
本発明の一側面では、(a)入口および出口を伴う導管と、(b)外面および内面であって、内面は、入口から出口まで延在する中空孔を形成し、略平滑かつ連続的な曲面である、外面および内面と、(c)入口と出口との間の中空孔の一部分の直径の縮小によって形成される、収縮ゾーンであって、収縮ゾーンは、主要入口および出口の直径よりも小さい直径を有する、収縮ゾーンと、(d)内面中空孔上および収縮ゾーン内に配置される修正部材であって、修正部材は、収縮ゾーンの直径および断面積を局所的に縮小する構造または突出である、修正部材と、(e)そのようなチャネルを通して排出装置の外面と中空孔の内面との間に流体連通を確立する、サイフォンチャネルであって、チャネルは、修正部材に隣接して位置付けられるか、またはそれによって包囲される、サイフォンチャネルとを含む、強化排出装置要素が提供される。
【0007】
いくつかの変化例では、強化排出装置は、高さ(H)を伴う修正部材を有し、収縮ゾーンは、半径(R)を有し、修正部材の高さ(H)の物理的寸法は、収縮ゾーンの半径(R)の物理的寸法の0.65倍を超えない。いくつかの変化例では、収縮ゾーンの半径(R)の物理的寸法に対する修正部材の高さ(H)の物理的寸法の比は、約0.16から約0.55の範囲内である。なおも他の変化例では、強化排出装置は、排出装置の主軸に沿った長さ(L)を伴う修正部材を有し、収縮ゾーンは、排出装置の主軸に沿った長さ(LCZ)を有し、修正部材の長さ(L)の物理的寸法は、収縮ゾーンの長さ(LCZ)の物理的寸法の0.75倍を超えない。加えて、収縮ゾーンの長さ(LCZ)の物理的寸法に対する修正部材の長さ(L)の比は、約0.25から約0.75の間である。他の変化例では、強化排出装置は、排出装置の主軸に沿った長さ(L)を伴う修正部材を有し、収縮ゾーンは、半径(R)を有し、収縮ゾーンの半径(R)の物理的寸法に対する修正部材の長さ(L)の物理的寸法の比は、約1.2から約3.0の範囲内である。随意で、修正部材は、収縮ゾーンの断面積を21%以下分、減少させるようにサイズ決定され、および/または収縮ゾーンの半径(R)の周辺を囲む修正部材の突出の広がりは、60度から120度の間であり得る。なおもさらなる変化例では、強化排出装置要素における修正部材の存在は、修正部材がない排出装置要素と比較すると、中空孔を通る空気流のための面積を10%以下分、制限するが、強化排出装置と同じ入口および出口の直径、同じ収縮ゾーンの直径、および同じ全体的な排出装置の長さ(LE)を有する。
【0008】
本発明の別の側面では、呼吸作動型吸入デバイスが提供される。デバイスは、上記説明されるような強化排出装置を含む作動アセンブリを特徴とし、吸気呼吸とともに排出装置要素を通って流れる空気は、デバイスを作動させるために好適である、サイフォンチャネルにおける低圧力降下を生成するように作用する。いくつかの変化例では、呼吸作動型吸入デバイスは、加圧定量吸入器である。他の変化例では、呼吸作動型吸入デバイスはさらに、薬剤粒子のエアロゾル製剤を含む加圧キャニスタを含み、加圧キャニスタはさらに、デバイスの作動時にデバイスの中へエアロゾル製剤を放出するためのプライムレス弁を含む。
【0009】
本発明のなおもさらなる側面では、排出装置が提供される。排出装置は、以下の要素であって、(a)外面、および導管の内面を形成する孔であって、孔は、収縮ゾーンを形成するように、細長い導管の長さの一部分に沿って縮小直径を有する、外面および孔と、(b)収縮ゾーン内に位置する開口であって、開口は、排出装置の外面と孔との間に通路を形成する、開口と、(c)内面から孔の中へ内向きに突出する構造であって、構造は、開口に隣接して、またはその周囲に配置され、構造の存在は、流体の流動が細長い導管を通って移動している場合に、開口に隣接して強化された陰圧を生成するが、構造の存在は、細長い導管を通る流体の流動に対する圧力抵抗の実質的な付随する増加を生成しない、構造とを有する、細長い導管を含む。
【0010】
いくつかの変化例では、構造は、高さ(H)を有し、収縮ゾーンは、半径(R)を有し、構造の高さ(H)の物理的寸法は、収縮ゾーンの半径(R)の物理的寸法の0.65倍を超えない。他の変化例では、収縮ゾーンの半径(R)の物理的寸法に対する構造の高さ(H)の物理的寸法の比は、約0.16から約0.55の範囲内である。なおも他の変化例では、構造は、導管の主軸に沿った長さ(L)を有し、収縮ゾーンは、排出装置の主軸に沿った長さ(LCZ)を有し、構造の長さ(L)の的寸法は、前縮ゾーンの長さ(LCZ)の物理的寸法の0.75倍を超えない。加えて、収縮ゾーンの長さ(LCZ)の物理的寸法に対する構造の長さ(L)の比は、約0.25から約0.75の間であり得る。他の変化例では、構造は、導管の主軸に沿った長さ(L)を有し、収縮ゾーンは、半径(R)を有し、収縮ゾーンの半径(R)の物理的寸法に対する構造の長さ(L)の物理的寸法の比は、約1.2から約3.0の範囲内である。随意で、構造は、収縮ゾーンの断面積を21%以下分、減少させるようにサイズ決定される。なおもさらなる変化例では、排出装置における構造の存在は、そのような構造がない排出装置と比較すると、孔を通る空気流を10%以下分、制限するが、排出装置と同じ物理的寸法を有する。
【0011】
本発明の別の側面では、呼吸作動型吸入デバイスが提供される。デバイスは、上記で説明されるような排出装置を含む作動アセンブリを特徴とし、吸気呼吸に伴う排出装置を通って流れる空気は、前記デバイスを作動させるために好適である、サイフォンチャネルにおける低圧力降下を生成するように作用する。いくつかの変化例では、呼吸作動型吸入デバイスはさらに、薬剤粒子のエアロゾル製剤を含む、加圧キャニスタを含み、加圧キャニスタはさらに、デバイスの作動時にデバイスの中へエアロゾル製剤を放出するためのプライムレス弁を含む。
【0012】
本発明に従って修正されている排出装置要素から、向上した性能を得ることができることが、本発明の特定の利点である。強化排出装置は、吸気呼吸の局所流速を増加させ、デバイスを作動させるために好適なサイフォンを作成するために、呼吸作動型加圧定量吸入器(BApMDI)デバイスで使用することができ、低下した肺機能を持つ患者、有意な肺機能を持たない若者が、これらの便利で効率的な薬剤送達デバイスを使用することを可能にする。また、本発明の強化排出装置を生産するために、単純かつ再現可能な生産方法を使用できることも、本発明の特定の利点である。
【0013】
本開示および明細書を読むと、本発明のこれらおよび他の目的、側面、変化例、および利点が、当業者に容易に想起されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、従来の排出装置要素の断面図である。
【図2】図2は、図1の従来の排出装置要素の斜視切断図である。
【図3】図3は、その種々の重要パラメータを示す、従来の排出装置要素の概略図である。
【図4】図4は、本発明に従って生産された、強化排出装置要素の断面図である。
【図5】図5は、図4の強化排出装置要素の斜視切断図である。
【図6A】図6Aは、図4および5の強化排出装置の実施形態の修正部材の切断側面斜視図である。
【図6B】図6Bは、図4および5の強化排出装置の実施形態の修正部材の切断軸方向図である。
【図7】図7は、従来の排出装置および本発明に従って生産された強化排出装置要素といった、2つの排出装置要素の性能試験結果(排出装置にわたる付随する圧力降下に対して描画されたサイフォン圧力降下)を描写する。
【図8A】図8Aは、本発明に従って生産された、軽い、中間の、および重い修正部材を有する強化排出装置要素の性能試験結果(2つの異なる流体流量におけるサイフォン圧力降下に対する修正部材の高さ(H)のプロット)を表す。
【図8B】図8Bは、本発明に従って生産された、軽い、中間の、および重い修正部材を有する強化排出装置要素の2つの異なる流体流量における性能試験結果(排出装置抵抗(排出装置にわたる圧力降下)に対する修正部材の高さ(H)のプロット)を表す。
【図9A】図9Aは、従来の排出装置および本発明に従って生産された強化排出装置の性能試験結果(2つの異なる流体流量におけるサイフォン圧力降下に対する修正部材の高さ(H)のプロット)を比較する。
【図9B】図9Bは、従来の排出装置および本発明に従って生産された強化排出装置の性能試験結果(2つの異なる流体流量における排出装置抵抗(排出装置にわたる圧力降下)に対する修正部材の高さ(H)のプロット)を比較する。
【図10】図10は、作動機構として本発明に従って生産された強化排出装置を組み込む、BApMDIデバイスの切断図を描写する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を詳細に説明する前に、本発明は、特に例示された排出装置要素である、呼吸作動型加圧定量吸入器デバイスに限定されず、またはそのようなものとしての製造過程パラメータは、当然ながら変化する場合があることを理解されたい。また、本明細書で使用される技術用語は、本発明の特定の実施形態を説明する目的のためにすぎず、限定的となることを目的としていないことも理解されたい。
【0016】
本明細書で使用される場合、「排出装置」は、入口および出口を有し、排出装置の入口および出口にわたって適用される圧力降下の影響を受けて、流体がそれを通して引き込まれ、または送出される、細長い導管(中空孔またはチャネル)またはベンチュリである。導管を通る中空孔は通常、円筒形断面を有するが、楕円形、卵形、平滑長方形、または他の非対称断面を有することができる。中空孔は、その内側に位置する収縮ゾーンを有し、入口の直径は、軸方向長さの一部分に対するより小さい直径に収束し、収縮ゾーンを形成し、出口において、入口の直径に近い直径まで広がる。収束半角は通常、軸中心線から外れて17度から25度の範囲内である。広がり半角は通常、軸中心線から外れて3.5度から7.5度である。収縮ゾーンの軸方向長さは、中空孔の直径の2〜5倍の範囲である。収縮直径に対する入口の直径の比は、チョークまたはl/βと呼ばれる。流体が収縮ゾーン内で排出装置を通過するにつれて、ベルヌーイ方程式によって表されるベンチュリ効果の結果である、収縮ゾーンを通る流体の増加した流速の結果として、減圧が生成される。サイフォン管は、排出装置の外壁(サイフォン入口)から、収縮ゾーンと軸が一致する管状ダクトの内壁(サイフォン出口)上の場所まで貫通する。ジョバンニ・ベンチュリにちなんで名付けられたベンチュリ効果により、管状ダクトの内壁における圧力と、排出装置の外壁における圧力との差に等しい圧力降下が、サイフォンチャネルにわたって生成される。サイフォン圧力降下は、サイフォン管を通して管の中へ流体を引き込むために使用することができる。
【0017】
排出装置は、多くの商業的用途で有用である。排出装置は、タンクミキサーとして使用することができる。タンクの内容物の中へ排出装置を沈め、排出装置を通して流体を送出することによって、排出装置は、排出装置を通して排出される各容量に対して最大4〜5倍の流体を引き込む。このようにして、排出装置を使用すると、はるかに小さいポンプの使用を伴って同じ量の混合を達成することができる。
【0018】
排出装置はまた、消火用途のための発泡体の生成においても有用である。そのような用途では、特殊発泡ノズル用の構成要素である排出装置を通して水が排出される。排出装置を通る水流は、種々の発泡剤を引き込む。次いで、発泡体がノズルから噴出され、ある種類の火を消すために使用されるように、空気がこの混合物に対して送出される。排出装置はまた、可燃性液体が送出される必要があり、ポンプを用いて可燃性液体を直接送出することが危険となる場合にも非常に有用である。
【0019】
従来の排出装置の断面図が図1に描写されている。図中、矢印Aは、排出装置入口(115)から排出装置出口(120)へと進む、排出装置(100)の中空孔(110)を通る流体流動の方向を示す。サイフォン入口(115)は、収縮ゾーン(125)まで狭くなる。サイフォン入口(140)は、収縮ゾーン(125)内の地点で排出装置壁(135)内に位置する。排出装置の側壁(135)を貫通し、かつサイフォン出口(160)における内壁(150)を貫通する、サイフォンチャネル(130)がある。内壁(150)の表面は、サイフォン出口(160)において、かつ、中空孔(110)の全長に沿って平滑かつ連続的である。これは、流体流動の乱流を引き起こし、それにより、排出装置の効率性を低減する、排出装置の内面上の不整形が存在するべきではないと、標準教示が規定するためである。図2は、矢印Aが中空孔(110)を通る流体流動の方向を示す、図1の排出装置(100)の斜視切断図である。サイフォン出口(160)上の加速流体流動は、サイフォン入口(140)で圧力降下を引き出させる。
【0020】
図1および2で描写されるもの等の従来の排出装置は、吸気呼吸の局所流速を増加させて、デバイスを作動させるために好適なサイフォンを作成するために、BApMDIデバイスで使用することができる。例示的なBApMDIデバイスは、デバイスを作動させるように、ユーザの呼吸によってバネエネルギーを誘起することができる、米国特許第5,954,047号、第6,026,808号、および第6,905,141号で説明されているデバイスを含む。加えて、排出装置は、米国特許第5,657,749号および第6,948,496号で説明されている吸入器デバイスに組み込まれる。動作中、排出装置は、概して、入口から、吸気流の局所速度を増加させる収縮ゾーンまで狭くなる流路直径を伴うベンチュリから成る。サイフォンは、収縮ゾーン内に位置し、ベルヌーイ方程式によって、サイフォンの入口頂点上の増加した速度は、排出装置に進入する周囲圧力(PAmbient)よりも低い圧力(Pinlet Apex)を生成し、したがって、サイフォンを作成する。BApMDIデバイスでは、サイフォンは、可変容量チャンバに接続される。サイフォンが排出装置の収縮領域の中へ空気を引き込むにつれて、可変容量チャンバが空になる。誘起点において、可変容量チャンバがつぶれるように十分空にされ、したがって、BApMDIの放出機構(例えば、圧縮バネの解放)を始動させる。チャンバ容量、排出装置のサイズ、形状および構成、ならびにサイフォンの直径等の設計パラメータの適切な選択によって、BApMDIデバイスは、所望量の吸気呼吸の力による作動を引き起こすように設計することができる。この機構は、肺送達に適切であり、広範囲のユーザに対する吸気パターンに自動的に順応する一貫した放出タイミングを可能にする。
【0021】
概して、当技術分野では、ベルヌーイ方程式を適用することにより、収縮ゾーンの直径を狭くすることによって、つまり、排出装置のチョークを増加させることによって、排出装置によって生成されるサイフォン圧力降下を増加させることができると理解される。これは、タイミングよくデバイスを作動させるために相当の力が必要とされる構成のBApMDIデバイスにおける誘起機構を調整する非常に有用なパラメータであり得る。しかしながら、収縮ゾーンの直径が狭くなるにつれて、排出装置を通して空気を移動させにくくなり、排出装置にわたる圧力降下がポアズイユ方程式に従って増加する。結果として、一部のユーザは、そのような増加した収縮および増加した排出装置圧力降下を有するデバイスを誘起するための十分な肺機能を持たない場合があるので、収縮(チョーク)を増加させるための排出装置の修正が、BApMDIデバイスを動作不能にする場合がある。したがって、BApMDIデバイスで使用するための改良型排出装置を設計することに関して、有意な工学トレードオフがある。具体的には、排出装置の収縮の増加(増加したチョーク)は、サイフォン管上で引き出される圧力降下(サイフォン圧力降下)の付随する増加を引き起こし、それにより、作動力を増加させることが見込まれる。しかしながら、収縮ゾーンの直径のそのような減少は、排出装置を通る流体流動に対して、より大きな抵抗を引き起こし、排出装置にわたる圧力降下をもたらし、場合によっては、強化サイフォン圧力降下によって実現される増加を妨げる。これは、一連の次第に小さくなるストローを通してカップから流体を引き出そうとすることと考えることができる。したがって、収縮した排出装置を通して吸気しようとするユーザが、そのような有意な収縮を有する、そのような排出装置にわたって、通常の呼吸をすることが困難または不可能と感じるため、サイフォン圧力降下を増加させる(したがって作動力を増加させる)ようにチョークを有意に増加させる工学技法の適用は、排出装置を動作不能にすることが見込まれる。
【0022】
サイフォン入口の頂点に隣接する収縮ゾーン内の極めて局部的な領域を占める突出または構造(効果的には構造的収縮)を導入することにより、排出装置にわたる圧力降下を有意に増加させることなく、排出装置におけるサイフォン圧力降下を劇的に増加させることができることが発見された。これらの局部的な構造または突出は、本明細書では「修正部材」と呼ばれる。デバイスを作動させるためのBApMDIデバイスにおける強化排出装置設計の使用は、たとえデバイスを正しく操作するために増加したサイフォン圧力降下を必要とする場合にも、機能低下したユーザでさえもそのようなデバイスを作動させることができることを意味する。修正部材(極めて局部的な突出または構造)は、ベンチテスト装置に排出装置を挿入する過程の一部として、発明者らが排出装置の外側から従来の排出装置のサイフォン開口に鋭いプローブを挿入したときに、意図せず発見された。プラスチック排出装置開口の中へのプローブの挿入は、開口の内周の周囲のプラスチックの変形、および排出装置の収縮ゾーン孔における小型円錐台状突出の作成を引き起こした。ベンチテスト装置を用いた排出装置の性能の後続の試験時に、排出装置サイフォン圧力が劇的に増加することが分かったが、排出装置にわたる有意な(有害な)圧力降下はなかった。後続の試験が現象を確認し、具体的な修正が、排出装置の収縮ゾーンの中で効果的な修正部材を作成するために、強化排出装置設計の中へ設計されている(および射出成形機器が製造されている)。
【0023】
ここで図3を参照すると、本発明を説明するために、排出装置のいくつかの重要特徴が描写されている。排出装置の3つの主要パラメータは、排出装置の長さ(LE)、入口の内径(Di)、および出口の内径(Do)を含む。別の重要パラメータは、喉状部分の直径(Dt)である。排出装置は、Diから、集束ゾーンと呼ばれる部分を通りDtまで狭くなる。次いで、収縮ゾーンと呼ばれる、喉状部分の直径(Dt)を有する領域がある。次いで、直径は、出口の直径(Do)が入口の直径(Di)に通常等しいものに達するまで、再び増加する。この領域は、ひろがり領域と呼ばれる。サイフォン圧力降下、および排出装置にわたる圧力降下は、排出装置の入口における圧力(PInlet)、排出装置の出口における圧力(POutlet)、サイフォンにおいて排出装置に進入する周囲圧力(PAmbient)、および入口の頂点における圧力入口(PInlet Apex)といった、測定値を使用して決定することができる。
【0024】
「Fluid Meters, Their Theory and Application, Report of ASME Research Committee on Fluid Meters」第6版(1971)を参照すると、排出装置サイフォンによって生成されるサイフォン圧力降下(ΔPsiphon)は、非粘性(invisid)subMach 1フローに対するベルヌーイ方程式によって表される。
ΔPsiphon=(PAmbient−PInlet Apex)=Q2ρ(1/A2−1/a2)2gc(gf/cm2)、式中、
ρ=標準温度および圧力(STP)による空気密度=0.001193gm/cm3、
gc=重力定数=982.14(gm/gf)(cm/sec2)、
a=喉状部分の断面積=πDt2/4、および
A=入口の断面積=πDi2/4である。
【0025】
層流を伴う任意の導管を通る流量および圧力降下は、ポアズイユ方程式によって表すことができる。
Q=体積流量=gcρ(PInlet−POutlet)d4/128mLE(cm3/sec)
したがって、排出装置にわたる圧力降下(ΔPeductor)は、ポアズイユ方程式を再編成し、ベンチュリα2とβとの関数である損失係数(1−ΔPEloss)を含むことによって決定することができる。
ΔPeductor=(PInlet−POutlet)=DQ128μLE/πgcDmean4(1−ΔPEloss)(gf/cm2)、式中、
α2=分岐ノズル半角=7.5度、
β=入口の直径で割った喉状部分の直径(Dt/Di)=0.339gm/sec−cm、
STPμairにおける空気粘度=0.000179、および
ΔPEloss=示差圧力損失(%)=e(1.883+(0.253α2)+(−0.327βα2)+(0.494β))
上記の数学的技法を使用して、サイフォン圧力降下および排出装置全体にわたる圧力降下の両方を、既知の寸法の排出装置設計案に対する種々の流速において予測することができる。次いで、これらの予測圧力降下を、種々のモデル排出装置の測定圧力降下値と比較することができる。驚いたことに、上記の技法が本発明の強化排出装置設計に適用された場合、予測値は測定された排出装置性能を十分に表すことができない。具体的には、(収縮ゾーン中の修正部材によって提供される追加収縮に基づく)サイフォン圧力降下の予測増加がある場合、排出装置にわたる圧力降下の対応する予測値は、その圧力降下の大きさを有意に過大評価する。実際に、本発明の強化排出装置設計を用いて、排出装置にわたる圧力降下の不要な付随する増加を伴わずに、サイフォン圧力降下の有意な増加を達成することができる。場合によっては、本発明の強化排出装置設計は、排出装置にわたる圧力降下における10%以下の最小低減で、サイフォン圧力降下を有意に増加させる。これは、劇手に向上した性能特性を有する排出装置設計をもたらす。
【0026】
本発明の強化排出装置は、収縮ゾーンにおける排出装置の内壁上に位置する修正部材(突出または構造)を備える。突出のサイズおよび形状は、サイフォン出口を包囲する容量に制限され、それは、収縮ゾーンの長軸に沿った長さ(L)、突出または構造が収縮ゾーンの表面より上側に突出する最大量である高さ(H)、および収縮ゾーン壁によって形成される曲面の弓形(θまたはシータ)(収縮ゾーンの短軸に対してある角度を有する断面円弧)によって規定される。ある実施形態では、サイフォンチャネルは、修正部材を通って延在し、好ましくは、サイフォンチャネルは、修正部材を形成する突出または構造の軸中央を通って延在する。他の実施形態では、突出または構造は、サイフォン出口に隣接する。突出または構造は、サイフォン入口頂点を包囲する場所のみでの圧力の増加した低減を引き起こし、流体の局所流速を増加させ、頂点における圧力の低減をもたらす。しかしながら、突出または構造の主要パラメータが以下の条件を満たす場合、排出装置の導管の断面積の減少による流動抵抗の増加がほとんどないか、または全くない:突出または構造の高さ(H)が、収縮ゾーンの半径(R)の0.65倍を超えない;排出装置の長軸に沿った突出または構造の長さ(L)が、収縮ゾーンの長さ(LCZ)の0.75倍を超えない;および、修正部材を形成する突出または構造が、収縮ゾーンの断面積を約21%以下しか減少させないように、収縮ゾーンの半径の周辺を囲む突出または構造の広がり(θ)が120度を超えない。ある実施形態では、突出または構造の高さ(H)と収縮ゾーンの半径(R)との間の比は、約0.16から0.55の間である。さらなる実施形態では、排出装置の長軸に沿った突出または構造の長さ(L)と収縮ゾーンの半径(R)との間の比は、約1.2から3.0の間である。なおもさらなる実施形態では、収縮ゾーンの半径の周辺を囲む突出または構造の広がり(θ)は、約30度から80度の間である。
【0027】
本発明の強化排出装置の実施形態の断面図が、図4に描写されている。図中、矢印Aは、排出装置入口(215)から排出装置出口(220)へと進む、排出装置(200)の中空孔(210)を通る流体流動の方向を示す。サイフォン入口(215)は、収縮ゾーン(225)まで狭くなる。サイフォン入口(240)は、収縮ゾーン(225)内の地点で排出装置壁(235)内に位置する。側壁(235)を貫通し、内壁(250)を通過するサイフォンチャネル(230)がある。サイフォンチャネル(230)はまた、修正部材(265)によって提供される突出または構造を通過し、サイフォン出口(260)で終端する。図5は、矢印Aが中空孔(210)を通る流体流動の方向を示す、図4の排出装置(200)の斜視切断図である。修正部材(265)およびサイフォン出口(260)の上の加速流体流動は、排出装置にわたる圧力降下の不適切な付随する増加を伴わずに、サイフォン入口(240)における強化サイフォン圧力降下を引き出させる。したがって、排出装置の孔の中の収縮ゾーンの断面積の減少にもかかわらず、排出装置を通る流動抵抗の有意な増加がほとんどないか、または全くない。
【0028】
図6Aは、図4および5の排出装置の実施形態の修正部材(265)の切断側面斜視図であり、収縮ゾーンの長軸に沿った修正部材の長さ(L)は、図4および5の実施形態での収縮ゾーンの全長(LCZ)に対して示されている。図6Bは、図4および5の排出装置の実施形態の修正部材(265)の切断軸方向図であり、修正部材(265)の高さ(H)、および修正部材の収縮ゾーン壁によって形成される曲面の弓形(θ)も示されている。
【0029】
本発明による強化排出装置要素の向上した性能を実証するために、同一の主要排出装置パラメータ(同一の排出装置の長さ(LE)、同一の入口の内径(Di)、同一の出口の内径(Do)、同一の喉状部分の直径(Dt)、および同一の収縮ゾーンの長さ(LCZ))を有する、2つの排出装置が生産された。第1の排出装置(002)は、従来の排出装置であり、第2の排出装置(003)は、本発明に従って生産された、修正部材を収縮ゾーンの中に含んだ。2つの排出装置要素は、サイフォン圧力降下について、および排出装置にわたる圧力降下について試験された。図7は、種々の流速における排出装置の試験の結果を描写し、具体的には、従来の排出装置(002)および本発明に従って修正された強化排出装置要素(003)について生成された、サイフォン圧力降下(垂直軸)に対して描画された排出装置を通る流動(水平軸)のプロットを示す。各水平データ点に位置する、4つのデータ点がある。菱形(◆)は、従来の排出装置(002)を通る抵抗(排出装置にわたる圧力降下)を表し、三角(▲)は、強化排出装置(003)を通る抵抗(排出装置にわたる圧力降下)を表す。図に示すように、種々の試験流速(5、10、15、20、25、30、35、40、45、および55リットル/分(LPM))において、2つの異なる排出装置に対する排出装置にわたる圧力降下を表す2つのデータ点(◆および▲)は、ほぼ同一であり、排出装置の孔の中の収縮ゾーンの断面積の減少にもかかわらず、強化排出装置(003)における修正部材の追加が、その排出装置を通る流動抵抗の増加をもたらさなかったことを実証した。
【0030】
しかしながら、2つの排出装置に対するサイフォン圧力降下が測定された場合、従来の排出装置(002)と強化排出装置(003)との間に有意な差があった。再び図7を参照すると、従来の排出装置(002)についてサイフォン出口において生成されるサイフォン圧力降下は、丸(●)で表され、強化排出装置(003)についてサイフォン出口において生成されるサイフォン圧力降下は、四角(■)によって表される。図に示すように、流速値が増加する(水平軸に沿って左から右に進む)につれて、従来の排出装置(002)に対するサイフォン圧力降下と強化排出装置(003)に対するサイフォン圧力降下との間の差が有意に増加する。例えば、40LPM(概して、通常の吸気呼吸の速度)において、強化排出装置サイフォン圧力降下(■)は、従来の排出装置圧力降下(●)よりもほぼ60ミリバール高く、これは、両方の排出装置にわたる付随する圧力降下が約2〜3ミリバール互に異なるのみであったので、意外であった。実際に、通常の吸気呼吸と関連する流量のほとんど(25〜40LPM)において、強化排出装置(003)は、従来の排出装置(002)と比較すると、有意に増加したサイフォン圧力降下、および付随するより低い抵抗(排出装置にわたる圧力降下)を有した。これは、流路の障害(修正部材の存在)のいかなる増加も、より高い抵抗をもたらすはずであると教示する、一般的な排出装置設計の原則に照らすと、予期しない結果であった。
【0031】
本発明に従って生産される、強化排出装置要素の向上した性能をさらに実証するために、同一の主要排出装置パラメータ(同一の排出装置長さ(LE)、同一の入口の内径(Di)、同一の出口の内径(Do)、同一の喉状部分の直径(Dt)、および同一の収縮ゾーン長さ(LCZ))を有する、いくつかの排出装置が生産された。第1の排出装置(Rev 002)は、射出成形によって生産された従来の排出装置であった。第2の排出装置(Rev 003)も、射出成形によって生産され、本発明による強化排出装置要素を形成するように、サイフォン出口を取り囲む成形修正部材(0.45mmの突出高さ(H)を伴う)を収縮ゾーンの中に含んだ。次に、(Rev 002)排出装置を生産するために使用された同じ射出成形過程によって生産された、従来の排出装置が、本発明による修正部材の3つのグループを生産するように手動で改変された。特に、本明細書では、それぞれ、重い、中間、および軽いと呼ばれる、強化排出装置の3つのグループが、サイフォンチャネルの中へ先細ツールを導入することによって手動で形成された。サイフォンチャネルの中への先細ツールの挿入は、排出装置の成形プラスチックの変形を引き起こし、サイフォン出口を取り囲む、排出装置の中空孔内の「火山状」修正部材をもたらした。先細ツールを挿入するために使用される力の量は、一連の異なる突出の高さ(H)を有する修正部材を生産するように、軽い、中間、および重いとして、主観的に適用された。次いで、軽い、中間の、および重い修正部材グループにおける各排出装置要素の実際の突出の高さ(H)が、光学的に測定された。排出装置要素の全ての収縮ゾーン中の中空孔の直径は、2.54mmであり、したがって、収縮ゾーンの半径(R)は、1.27mmであった。軽い、中間の、および重い強化排出装置グループにおける修正部材の光学的に測定された高さ(H)は、約0.2mmから約0.7mmに及んだ。
【0032】
ここで図8Aを参照すると、軽い、中間の、および重い修正部材グループについて、2つの流量(28.3LPMおよび45LPM)における修正部材の高さ(H)対サイフォン圧力降下のプロットが提示されている。図に示されるように、手動で修正した強化排出装置の全ては、増加した排出装置の効率を示し、より低い流体流量(28.3LPM)におけるサイフォン圧力降下は、約80ミリバール(軽い修正部材グループについて)から約120ミリバール(重い修正部材グループについて)に及んだ。より高い流体流量(45LPM)におけるサイフォン圧力降下は、約250ミリバール(軽い修正部材グループについて)から約375ミリバール(重い修正部材グループについて)に及んだ。軽い、中間の、および重い修正部材グループに対する付随する排出装置抵抗(排出装置にわたる圧力降下)が、図8Bに提示されている。具体的には、軽い、中間の、および重い修正部材グループについて、2つの流量(28.3LPMおよび45LPM)における排出装置抵抗(排出装置にわたる圧力降下)に対する修正部材の高さ(H)のプロットが提示されている。図に示されるように、より低い流体流量(28.3LPM)における排出装置抵抗は、約0.060KPa^0.5/LPM(軽い修正部材グループについて)から約0.063KPa^0.5/LPM(重い修正部材グループについて)に及ぶ。より高い流体流量(45LPM)における排出装置抵抗は、約0.063KPa^0.5/LPM(軽い修正部材グループについて)から約0.070KPa^0.5/LPM(重い修正部材グループについて)に及んだ。したがって、たとえ軽い、中間の、および重い修正部材グループが、修正部材の高さ(H)の増加とともに実質的に直線的に増加した、有意に強化されたサイフォン圧力降下性能を示したとしても、付随する排出装置低高性能は、3つ全てのグループにわたって比較的不変のままであった。
【0033】
手動で修正された強化排出装置(軽い、中間の、および重い修正部材グループ)を用いて得られた排出装置性能の結果と比較して、同じ試験パラメータを使用して、従来の排出装置(Rev 002)および射出成形された強化排出装置(Rev 003)の性能が試験された。ここで図9Aを参照すると、(H)=0である従来の排出装置(Rev 002)、および(H)=0.45mmである射出成形された強化排出装置(Rev 003)について、2つの流量(28.3LPMおよび45LPM)におけるサイフォン圧力降下に対する修正部材の高さ(H)のプロットが提示されている。図に示されるように、強化排出装置(Rev 003)は、従来の排出装置(Rev 002)と比較して増加した排出装置の効率を示し、より低い流体流量(28.3LPM)におけるサイフォン圧力降下は、約250ミリバール(Rev 003強化排出装置に対して)と比較して約60ミリバール(Rev 002従来の排出装置に対して)であり、より高い流体流量(45LPM)におけるサイフォン圧力降下は、約255ミリバール(Rev 003強化排出装置に対して)と比較して約175ミリバール(Rev 002従来の排出装置に対して)であった。従来の排出装置(Rev 002)および射出成形された強化排出装置(Rev 003)に対する付随する排出装置抵抗の結果(排出装置にわたる圧力降下)が、図9Bに提示されている。特に、従来の排出装置(Rev 002)および射出成形された強化排出装置(Rev 003)について、2つの流量(28.3LPMおよび45LPM)における排出装置抵抗(排出装置にわたる圧力降下)に対する修正部材の高さ(H)のプロットが、図9Bに提示されている。図に示されるように、より低い流体流量(28.3LPM)における排出装置抵抗は、(Rev 003強化排出装置に対する約0.053〜0.055KPa^0.5/LPMと比較して)Rev 002従来の排出装置については、約0.059〜0.060KPa^0.5/LPMであった。より高い流体流量(45LPM)における排出装置抵抗は、(Rev 003強化排出装置に対する約0.057KPa^0.5/LPMと比較して)Rev 002従来の排出装置については、約0.059KPa^0.5/LPMであった。したがって、強化排出装置(Rev003)は、軽い、中間の、および重い修正部材の強化排出装置を用いて同程度の性能強化(抵抗圧力の付随する増加を伴わない増加したサイフォン降下)を実証し、サイフォン圧力降下および抵抗圧力性能の両方において、従来の排出装置(Rev 002)よりも明らかに優れていた。
【0034】
本発明の強化排出装置設計によって提供される便益のなおもさらなる実施例は、強化排出装置が、BApMDIにとって主要な品質性能属性である、多大に向上した誘起一貫性を示すことである。この点に関して、排出装置要素を含むBApMDIデバイスは、人間用の医薬品で使用するための容認性を実証するように品質試験を受けなければならない。したがって、人間用の医薬品で使用するために製造されているデバイスは、容認可能な医薬性能を確保するように、作動圧力性能および一貫性について試験される。試験パラメータは、デバイス(呼吸)作動の容認可能な上限および下限を、それぞれ、47および25ミリバールに設定する。下限は、吸入器の偶発的な誘起を回避するために十分高い圧力に設定され、上限は、健常人が快適と感じる吸気呼吸の上限値を反映する、実験的に設定された値に設定される。従来の排出装置を含むBApMDIデバイスのサンプリングのための必要作動圧力の品質試験において、有意数の試験されたユニットが、作動圧力上限を優に上回ることが分かり、したがって、試験されたデバイスの70%が、品質仕様を満たすことができなかった。しかしながら、本発明に従って生産された強化排出装置要素を含むBApMDIデバイスの同様のサンプリングが、品質試験を受けた場合、試験されたデバイスの15%のみが、品質仕様を満たすことができなかった。これは、従来の排出装置の使用から本発明の排出装置へ切り替えることの結果として、製造効率の有意な向上を表し、そのような医薬品の全体的な商品原価の有意な改善において反映することができる。
【0035】
本発明の強化排出装置は、当業者に公知である標準過程および技法を使用して、および容易に入手可能である材料を使用して製造され得る。したがって、強化排出装置は、標準射出成形過程を使用して、プラスチック材料、例えば、ポリカーボネート等の医薬品グレードプラスチック(Makrolon、部品番号2458−550115、Bayer MaterialScience)から形成することができる。1つの好ましい実施形態では、強化排出装置は、3本のピンを採用する射出成形技法を使用して、ポリカーボネート材料から形成される(1本のピンは、排出装置の入口から、サイフォン出口の中央の上の修正部材の中間まで延在する、第2のピンは、排出装置の出口から、サイフォン出口の中央の上の修正部材の中間まで延在し、第1のピンと出会い、第3のピンは、サイフォン入口からサイフォン出口まで延在し、第1および第2のピンと出合う)。ピンを含む成形構成要素は、好ましくは、内面上、および修正部材の表面を含む排出装置の孔の全長に沿って、表面不整形の生成を回避するように、細かく研磨される。
【0036】
いったん製造されると、本発明の強化排出装置が有利に適用され得る多数の用途がある。1つのそのような用途は、人間の吸引がデバイスの作動のための誘起エネルギーを提供する、呼吸作動型吸入器の誘起機構にある。この点に関して、しばしば、呼吸作動型吸入器を誘起するために必要とされるエネルギー(圧力降下)が、通常の人間の呼吸によって適用することができるものよりも大きい場合がある。本発明は、誘起機構に有利に連結された場合、通常の人間の呼吸による作動を可能にする、サイフォンにわたる圧力降下を増幅する手段を提供する。排出装置の圧力降下の比例的増加を伴うことなく、強化排出装置のサイフォンにわたる圧力降下を増加させる能力は、小さな子供および健康状態が低下した者等の被験者さえも、呼吸作動型誘起機構を操作することを可能にする。
【0037】
肺への粉末、噴霧、およびエアロゾルの送達を介した、局所的または全身的のいずれか一方である、薬剤の送達が、何十年も使用されてきた。噴霧器は、典型的には、患者によって吸入される空気流の中へ送達される噴霧またはエアロゾルを生成する。エアロゾルおよび噴霧はしばしば、薬剤の溶液を介して圧縮空気を与えることによって、または、薬剤溶液の非常に小さい液滴を生成するために、メッシュの開口を通して薬剤の溶液を押し進める振動メッシュの使用によって生成される。生成されたエアロゾルは、管類、および/または、正常に呼吸する患者の鼻および口を覆って定位置で保持される、フェイスマスクによって患者に送達される。この特徴の利点は、患者が、フェイスマスクを通して正常に息を吸うことしか要求されないことである。噴霧器は、薬用噴霧を患者に連続的に送達し、それにより、噴霧器が小児患者を治療するために有用となるため、呼吸を噴霧器と同期させる必要がない。
【0038】
非小児患者に対しては、手持ち式であり、補助機器または電気を必要としない定量吸入器(MDI、加圧MDIまたはpMDIとも呼ばれる)が開発された。MDIデバイスは、典型的には、加圧ガスと、薬剤の溶液および/または懸濁剤のいずれか一方である製剤とを含む、小型アルミニウムキャニスタから成る。キャニスタは、弁軸が圧縮された場合に、製剤の単回少量ボーラス(典型的には25〜100mL)を送達する絞り弁を有する。MDI吸入器デバイスは、キャニスタの弁端が筐体の中へ配置された状態でキャニスタが挿入される単純なプラスチック筐体で構成することができる。キャニスタの底部の一部分は、手動で筐体の中へさらに押し込むことができるように、筐体より上側で露出される。この動作は、弁軸を弁の本体の中へ押し込ませ、筐体の中への薬剤のボーラスを放出する。
【0039】
使用中、患者は、MDIデバイスのマウスピースを口まで上げて保持し、息をし始め、次いで、キャニスタを押し下げることによって薬剤のボーラスを手動で放出する。これは、患者の吸入によって生成される空気流の中へ薬剤のエアロゾルボーラスを放出する。この手動の器用さと呼吸タイミングの組み合わせは、小さな子供がMDIデバイスを効果的に使用することを除外する影響があるが、一部の成人もそのようなMDIデバイスを適正に使用することが困難と感じる。これらの懸念に対処するために、呼吸作動型MDIデバイスが開発された。初期バージョンは、その中に標準手動MDIデバイスが配置される先進的な筐体を含んだ。患者の吸入によって引き起こされる空気流を検出し、次いで、薬剤を送達するためにキャニスタを自動的に押下させる、機械および電子バージョンの両方がある。
【0040】
加圧キャニスタが患者の吸気呼吸流によって種々の方法で起動されるいくつかの呼吸作動型吸入器デバイスがある。多くは、プレートの回転が、何らかの種類の貯蔵エネルギーの放出を誘起して、定量吸入器(MDI)キャニスタ弁を起動するように、空気流の中に位置付けられ、機械的に連結される旋回可能プレートを配置することによって、起動される。米国特許第5,954,047号、第6,026,808号、および第6,905,141号は、カバーを開くことによってバネが圧縮され、次いで、患者がマウスピースを通して息を吸い込むことによってバネの貯蔵エネルギーが放出される、呼吸作動型加圧MDI(BApMDI)デバイスを説明している。吸気流は、サイフォン管を通して真空チャンバにおいて引き出される真空によって、可変容量チャンバの容量を低減させる、従来の排出装置を通って移動する。真空チャンバサイズが減少するにつれて、これは、機械的にトリガを解放し、貯蔵バネエネルギーに薬剤キャニスタを下向きに付勢させて、絞り弁を起動し、薬剤の投与量を分注する。TEMPO(登録商標) BApMDIデバイス(MAP Pharmaceuticals)、およびMaxair(登録商標) Autohaler(登録商標)、およびEasiBreathe MDIデバイス(Teva)等の、現在製造されているそのようなBApMDIデバイスがある。本発明の強化排出装置は、事実上、任意の流体流動の力を増幅するために使用することができ、そのような要素は、そのような圧力増幅が有益となる任意の種類のデバイスまたは装置で使用することができる。
【0041】
本発明のある実施形態では、強化排出装置は、TEMPO BApMDIデバイス(MAP Pharmaceuticals, Inc.)の改良バージョンを提供するために使用される。このデバイスは、加圧キャニスタを含み、プライムレス弁(primeless valve)アセンブリを有し、粉末薬剤の懸濁剤を伴うエアロゾル製剤を含む、呼吸作動型MDI吸入器デバイス(アクチュエータ)を含む。弁アセンブリは、熱可塑性のコア、本体、および計量チャンバ、ならびにバネを含む。弁アセンブリは、キャニスタの加圧内容物が計量チャンバに自由に流入および流出することを可能にするように特別に設計されている。計量チャンバへの製剤の自由な流入および流出は、キャニスタと計量チャンバとの間の流路の特定の設計によって達成される。弁は、弁が使用のために逆転された時にプライムするので、無駄なプライミングショットを発射する必要がない。弁は、好適な送達アクチュエータを用いて、逆(弁が下になった)配向で使用されることを目的としている。
【0042】
弁は、コアを弁の中へ押下することによって(アクチュエータとともに使用される場合、逆弁上のキャニスタベースに押し付けることによって)作動させられる。弁は、コアを押下した時、およびコアの側孔が計量チャンバに進入する前に、チャンバ内のコアの下端におけるスロットが内側座部を越えて通り過ぎ、製剤に対してチャンバを閉じるように設計されている。コアのさらなる押下は、コアの側孔が計量チャンバに進入することを可能にし、中空軸を通して製剤を放出することを可能にする。コアがバネによってその静止位置に戻されると、コアの下端におけるスロットは、計量チャンバに進入し、チャンバが再充填されることを可能にする。したがって、弁は、プライムレスであり、特に定量の製剤を放出することを目的としている。
【0043】
TEMPO吸入器は、充填キャニスタから患者の肺への呼吸同期型製剤送達を可能にするアクチュエータである。これは、患者が吸入した時に自動的に薬剤を分注し、深い肺への薬剤送達を可能にする。吸入器は、小型一体流量制御チャンバ(FCC)の中へ定量のエアロゾルを放出する。エアロゾルプルームは、滞留時間を増加させるため、にプルームをスピンさせて渦にすることによって、および側壁堆積を低減するための垂直側壁空気流にプルームをさらすことによって、このチャンバの中で減速させられる。増加した滞留時間は、製剤推進剤の蒸発を可能にし、放出されるプルームの中に呼吸用薬剤粒子の大部分を残す。吸入器の呼吸同期型トリガは、充填キャニスタを作動させ、ピーク流速または吸気容量とは無関係に、吸気サイクルの最初の半分(交換容量)以内でプルームを放出するように設計されている。
【0044】
TEMPOデバイスのトリガおよび作動アセンブリは、排出装置、ダイヤフラム、マニホールド、トリガ、およびクレードルといった種々の要素から成る。マウスピースを通した吸入は、吸入器を通して空気流を引き起こす。要素を通って流れる空気によって、低圧真空が排出装置のサイフォン穴において生成される。この真空は、ダイヤフラムを「引っ張り」、それは順に、トリガを移動させる。トリガ運動は、クレードルから支持材を除去し、次いで、クレードルは、バネ力を受けて自由に移動する。この運動は、クレードルに充填キャニスタを排出させ、弁を通した製剤放出をもたらす。コッキングレバーを閉じる動作は、バネ圧縮を解放し、マウスピースを覆う。
【0045】
TEMPOデバイスのFCCは、製剤の放出されるエアロゾルプルームを減速および制御するように設計されている。この動作は、チャンバの中のプルームの増加した滞留時間が、推進剤の蒸発を推進すること、および薬剤粒子を吸入空気流に混入させることを可能にする。FCCは、渦プレート、FCC後壁/噴霧ノズル、多孔質管、およびFCC前部といった、いくつかの要素から成る。吸入呼吸は、これらの要素のそれぞれを通して方向付けられる。
【0046】
FCC渦プレートは、噴霧ノズルの上流に位置する。吸入空気流の一部分が、FCC渦プレートを通して方向付けられ、空気を回転(渦)パターンで流れさせる。この渦動作は、空気流中の粒子の軸方向速度を低減し、推進剤の蒸発を可能にするようにFCC中の滞留時間を増加させる。渦パターンは、独自仕様の渦プレート設計によって達成される。
【0047】
FCC後壁に組み込まれた噴霧ノズルは、渦プレートによって生成される渦空気流の中へエアロゾルプルームを放出する。この渦プレートからのエアロゾルおよび空気の混合物は、FCC後壁/ノズル構成要素内の流動面積の増加によって低減される。FCC後壁/ノズルの排出口を通して引き込まれる吸入空気は、(1)全体的な流動抵抗を低減して患者の快適性を向上させ、および(2)十分な軸方向運動量を提供し、制御された渦プルームを駆動し、空気流を通り過ぎて、FCC前部およびマウスピースを通って患者の呼吸管の中へ進入させる働きをする。
【0048】
空気はまた、TEMPOデバイスにおける多孔質管の多孔質壁を通して引き込まれる。この流動は、壁上のエアロゾルの堆積を阻止する、チャンバの内壁に沿った緩衝層を形成する。吸入器を通して引かれる空気の別の部分は、FCC前部を通して引き込まれ、スプレーを横断して方向付けられる。この直交流衝突噴流は、エアロゾルプルームの速度を減速し、プルーム速度を吸入空気流とほぼ同じ速度まで低減する。
【0049】
本発明にしたがって生産される強化排出装置を組み込む、BApMDIデバイスの切断図が、図10に描写されている。吸入器デバイス(500)は、強化排出装置要素(510)と、プライムレス弁(530)を含む加圧キャニスタ(520)とを含む。吸入器デバイス(500)は、約135度の角度を介して、コッキングレバー(550)を持ち上げ、開くことによって、使用の準備ができる。レバーを持ち上げる動作は、マウスピース(540)の覆いを取り、使用のために吸入器を準備する。コッキングレバー(550)が持ち上げられるにつれて、レバー上のカムが2つのバネを圧縮し、それらは、加圧キャニスタ(520)を保持するクレードルに力を適用し、デバイスが作動させられる場合に充填キャニスタを作動させるためのエネルギーを提供する。デバイスを操作するために、患者は、マウスピース(540)の縁の周囲に唇で密閉を生成し、通常の吸気呼吸をし始める。空気が矢印(A)によって描写されるように吸入器デバイス(500)の中へ引き込まれるにつれて、吸気空気は、矢印(B)によって描写されるように強化排出装置(510)を通過し、バネエネルギーを放出し、矢印(E)によって描写されるように渦空気流の中へエアロゾル化薬剤の投与量を弁に放出させるのに十分である、サイフォン圧力降下を提供し、薬剤は、FCC(560)の中でさらに渦になった後、矢印(D)によって描写される空気流とともに、マウスピースを通して吸入器から退出し、患者の肺の中への薬剤の吸気を可能にする。
【0050】
(実施例)
(実施例1)強化排出装置要素の生産
射出成形技法を使用して、原材料のポリカーボネートから本発明による強化排出装置を生産した。強化排出装置要素は、以下の相対的物理パラメータを有した。
−突出(修正部材)の高さ(H)と収縮ゾーンの半径(R)との比は、約0.16から0.65の間である。
−排出装置の長軸に沿った突出(修正部材)の長さ(L)と収縮ゾーンの長さ(LCZ)との間の比は、0.25から0.75の間である。
−収縮ゾーン半径の周辺を囲む突出(修正部材)の広がり(θ)は、60度から120度の間である。
−収縮ゾーンの断面積の縮小は、約21%を超えない。
【0051】
具体的には、図5〜6Bに図示されるような強化排出装置の一実施例「Rev003」は、以下の表1に記載されるような以下の物理的寸法を有した。
【0052】
【化1】
(実施例2)強化排出装置サイフォンによって生成される圧力降下
標準数学的技法を使用して、従来の排出装置(Rev 002)および本発明に従って生産される強化排出装置要素(Rev 003)についてのサイフォン圧力降下および排出装置にわたる圧力降下を推定し、次いで、これらの予測値を測定値と比較した。Rev 002およびRev 003排出装置は、同一の主要排出装置パラメータ(同一の排出装置の長さ(LE)、同一の入口の内径(Di)、同一の出口の内径(Do)、同一の喉状部分の直径(Dt)、および同一の収縮ゾーンの長さ(LCZ))を有した。ベルヌーイ方程式を使用して、排出装置に対する種々の流体流量における予測圧力降下値を計算した。
ΔPsiphon=(PAmbient−PInlet Apex)=Q2ρ(1/A2−1/a2)2gc(gf/cm2)、式中、
ρ=標準温度および圧力(STP)での空気密度=0.001193gm/cm3、
gc=重力定数=982.14(gm/gf)(cm/sec2)、
a=喉状部分の断面積=πDt2/4、および
A=入口の断面積=πDi2/4である。
【0053】
次いで、予測圧力降下値を、Rev 002およびRev 003排出装置の測定性能と比較した。比較の結果を、以下の表2に示す。
【0054】
【化2】
表2のΔ%列は、従来の排出装置(Rev 002)および本発明による修正部材を含んだ強化排出装置(Rev 003)について、ベルヌーイ方程式で予測したサイフォン圧力降下と測定されたサイフォン圧力降下との間のパーセント差を表す。図に示されるように、ベルヌーイ方程式は、従来の排出装置(Rev 002)について、流量の範囲(10〜53.2LPM)の大部分にわたって圧力降下を正確に予測し、したがって、Δ%は小さい。しかしながら、強化排出装置(Rev 003)については、ベルヌーイ方程式は、圧力降下を正確には予測せず、したがって、Δ%は大部分の流速に対して大きい。強化排出装置(Rev 003)に対するサイフォン圧力降下の絶対的増加は、最先端の排出装置設計に基づいて予期または予測されたであろうものよりも有意に大きい。
【0055】
別の予期しない便益は、強化排出装置(Rev 003)の収縮ゾーンの直径を効果的に減少させることによって、サイフォン圧力降下が増加させられた一方で、排出装置の圧力降下が同程度の流量で大幅に増加しなかったことである。これは、収縮ゾーンの中への修正部材の突出がその効果的な直径を狭くするにつれて、増加した排出装置の圧力降下を予測する、ポアズイユ方程式によって予測されるものに反する。サイフォン圧力降下の予期しない増加は、排出装置の圧力降下の増加の予期しない欠如とともに、ユーザが、より少ない労力でより低い流速においてデバイスを誘起することを可能にするという点で、強化排出装置を採用するBApMDIデバイスのユーザにとって非常に有益である。修正部材の突出は、排出装置の収縮ゾーンの直径の半径の0.65倍と同じくらいの高さを有し、30〜60LPMの吸入流速の典型的な範囲にわたってサイフォン圧力降下を最大約45%まで増加させながら、排出装置の圧力降下に大幅に影響を及ぼすことなく(例えば、10%以下)断面積を最大約21%分、縮小できることが分かっている。
【0056】
特定の実施形態が本明細書で説明されているが、本開示の方法、システム、および装置は、その精神から逸脱することなく、他の具体的形態で具現化され得ることが、当業者によって理解されるであろう。したがって、本実施形態は、全ての点において、本発明を制限せず、例証的として見なされる。むしろ、本発明の範囲および精神は、添付の請求項によって具現化される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口と出口とを備える導管と、
外面および内面であって、前記内面は、前記入口から前記出口まで延在する中空孔を形成し、前記内面は、略平滑な連続曲面である、外面および内面と、
前記入口と前記出口との間の前記中空孔の一部分の直径の縮小によって形成されている収縮ゾーンであって、前記収縮ゾーンは、主要な前記入口および前記出口の直径よりも小さい直径を有している、収縮ゾーンと、
前記内面上、かつ、前記収縮ゾーン内に配置されている修正部材であって、前記修正部材は、前記収縮ゾーンの直径および断面積を局所的に縮小する突出である、修正部材と、
サイフォンチャネルであって、前記チャネルは、前記チャネルを通して前記外面と前記内面との間に流体連通を確立し、前記チャネルは、前記修正部材に隣接しているか、または、前記修正部材によって包囲されている、サイフォンチャネルと
を備えている、強化排出装置要素。
【請求項2】
前記修正部材は、高さ(H)を有し、前記収縮ゾーンは、半径(R)を有し、前記修正部材の高さ(H)の物理的寸法は、前記収縮ゾーンの半径(R)の物理的寸法の0.65倍を超えない、請求項1に記載の強化排出装置要素。
【請求項3】
前記収縮ゾーンの半径(R)の物理的寸法に対する前記修正部材の高さ(H)の物理的寸法の比は、約0.16から約0.55の範囲内である、請求項2に記載の強化排出装置要素。
【請求項4】
前記修正部材は、前記排出装置の主軸に沿った長さ(L)を有し、前記収縮ゾーンは、前記排出装置の主軸に沿った長さ(LCZ)を有し、前記修正部材の長さ(L)の物理的寸法は、前記収縮ゾーンの長さ(LCZ)の物理的寸法の0.75倍を超えない、請求項1に記載の強化排出装置要素。
【請求項5】
前記収縮ゾーンの長さ(LCZ)の物理的寸法に対する前記修正部材の長さ(L)の比は、約0.25から約0.75の間である、請求項4に記載の強化排出装置要素。
【請求項6】
前記修正部材は、前記排出装置の主軸に沿った長さ(L)を有し、前記収縮ゾーンは、半径(R)を有し、前記収縮ゾーンの半径(R)の物理的寸法に対する前記修正部材の長さ(L)の物理的寸法の比は、約1.2から約3.0の範囲内である、請求項1に記載の強化排出装置要素。
【請求項7】
前記修正部材は、前記収縮ゾーンの断面積を21%以下分、減少させる、請求項1に記載の強化排出装置要素。
【請求項8】
前記収縮ゾーンの半径(R)の周辺を囲む前記修正部材の前記突出の広がりは、60度から120度の間である、請求項1に記載の強化排出装置要素。
【請求項9】
前記修正部材の存在は、修正部材がなく、前記強化排出装置と同じ入口および出口の直径、同じ収縮ゾーンの直径、および同じ全体的な排出装置の長さ(LE)を有する排出装置要素と比較すると、前記中空孔を通る空気流を10%以下分、制限する、請求項1に記載の強化排出装置要素。
【請求項10】
呼吸作動型吸入デバイスであって、前記デバイスは、請求項1に記載の強化排出装置を含む作動アセンブリを備え、吸気呼吸に伴う前記排出装置要素を通って流れる空気は、前記サイフォンチャネルにおいて、前記デバイスを作動させるために好適である低圧力降下を生成する、呼吸作動型吸入デバイス。
【請求項11】
前記デバイスは、加圧定量吸入器である、請求項10に記載の呼吸作動型吸入デバイス。
【請求項12】
前記デバイスは、薬剤粒子のエアロゾル製剤を含む加圧キャニスタをさらに備え、前記キャニスタは、前記デバイスが作動するとすぐに前記デバイスの中へ前記エアロゾル製剤を放出するために、プライムレス弁をさらに備えている、請求項10に記載の呼吸作動型吸入デバイス。
【請求項13】
細長い導管を備える排出装置であって、
前記導管は、
外面および前記導管の内面を形成する孔であって、前記孔は、前記細長い導管の長さの一部分に沿って縮小直径を有することにより、収縮ゾーンを形成する、外面および孔と、
前記収縮ゾーン内に配置されている開口であって、前記外面と前記孔との間で連通する開口と、
前記内面から内向きに突出する構造と
を備え、
前記構造は、前記開口に隣接して、または、前記開口の周囲に配置され、前記構造の存在は、流体の流動が前記細長い導管を通って移動している場合に、前記開口に隣接して強化された陰圧を生成し、さらに、前記構造の存在は、前記細長い導管を通る前記流体の流動に対する圧力抵抗において、実質的な付随する増加を生成しない、
排出装置。
【請求項14】
前記構造は、高さ(H)を有し、前記収縮ゾーンは、半径(R)を有し、前記構造の高さ(H)の物理的寸法は、前記収縮ゾーンの半径(R)の物理的寸法の0.65倍を超えない、請求項13に記載の排出装置。
【請求項15】
前記収縮ゾーンの半径(R)の物理的寸法に対する前記構造の高さ(H)の物理的寸法の比は、約0.16から約0.55の範囲内である、請求項14に記載の排出装置。
【請求項16】
前記構造は、前記導管の主軸に沿った長さ(L)を有し、前記収縮ゾーンは、前記排出装置の主軸に沿った長さ(LCZ)を有し、前記構造の長さ(L)の物理的寸法は、前記収縮ゾーンの長さ(LCZ)の物理的寸法の0.75倍を超えない、請求項13に記載の排出装置。
【請求項17】
前記収縮ゾーンの長さ(LCZ)の物理的寸法に対する前記構造の長さ(L)の比は、約0.25から約0.75の間である、請求項16に記載の排出装置。
【請求項18】
前記構造は、前記導管の主軸に沿った長さ(L)を有し、前記収縮ゾーンは、半径(R)を有し、前記収縮ゾーンの半径(R)の物理的寸法に対する前記構造の長さ(L)の物理的寸法の比は、約1.2から約3.0の範囲内である、請求項13に記載の排出装置。
【請求項19】
前記構造は、前記収縮ゾーンの断面積を21%以下分、減少させる、請求項13に記載の排出装置。
【請求項20】
前記構造の存在は、前記構造がなく、前記排出装置と同じ物理的寸法を有する排出装置と比較すると、前記孔を通る空気流を10%以下分、制限する、請求項13に記載の排出装置。
【請求項21】
呼吸作動型吸入デバイスであって、前記デバイスは、請求項13に記載の排出装置を含む作動アセンブリを備え、吸気呼吸に伴う前記排出装置を通って流れる空気は、前記サイフォンチャネルにおいて、前記デバイスを作動させるために好適である低圧力降下を生成する、呼吸作動型吸入デバイス。
【請求項22】
前記デバイスは、加圧定量吸入器である、請求項21に記載の呼吸作動型吸入デバイス。
【請求項23】
前記デバイスは、薬剤粒子のエアロゾル製剤を含む加圧キャニスタをさらに備え、前記キャニスタは、前記デバイスが作動するとすぐに前記デバイスの中へ前記エアロゾル製剤を放出するために、プライムレス弁をさらに備えている、請求項21に記載の呼吸作動型吸入デバイス。
【請求項1】
入口と出口とを備える導管と、
外面および内面であって、前記内面は、前記入口から前記出口まで延在する中空孔を形成し、前記内面は、略平滑な連続曲面である、外面および内面と、
前記入口と前記出口との間の前記中空孔の一部分の直径の縮小によって形成されている収縮ゾーンであって、前記収縮ゾーンは、主要な前記入口および前記出口の直径よりも小さい直径を有している、収縮ゾーンと、
前記内面上、かつ、前記収縮ゾーン内に配置されている修正部材であって、前記修正部材は、前記収縮ゾーンの直径および断面積を局所的に縮小する突出である、修正部材と、
サイフォンチャネルであって、前記チャネルは、前記チャネルを通して前記外面と前記内面との間に流体連通を確立し、前記チャネルは、前記修正部材に隣接しているか、または、前記修正部材によって包囲されている、サイフォンチャネルと
を備えている、強化排出装置要素。
【請求項2】
前記修正部材は、高さ(H)を有し、前記収縮ゾーンは、半径(R)を有し、前記修正部材の高さ(H)の物理的寸法は、前記収縮ゾーンの半径(R)の物理的寸法の0.65倍を超えない、請求項1に記載の強化排出装置要素。
【請求項3】
前記収縮ゾーンの半径(R)の物理的寸法に対する前記修正部材の高さ(H)の物理的寸法の比は、約0.16から約0.55の範囲内である、請求項2に記載の強化排出装置要素。
【請求項4】
前記修正部材は、前記排出装置の主軸に沿った長さ(L)を有し、前記収縮ゾーンは、前記排出装置の主軸に沿った長さ(LCZ)を有し、前記修正部材の長さ(L)の物理的寸法は、前記収縮ゾーンの長さ(LCZ)の物理的寸法の0.75倍を超えない、請求項1に記載の強化排出装置要素。
【請求項5】
前記収縮ゾーンの長さ(LCZ)の物理的寸法に対する前記修正部材の長さ(L)の比は、約0.25から約0.75の間である、請求項4に記載の強化排出装置要素。
【請求項6】
前記修正部材は、前記排出装置の主軸に沿った長さ(L)を有し、前記収縮ゾーンは、半径(R)を有し、前記収縮ゾーンの半径(R)の物理的寸法に対する前記修正部材の長さ(L)の物理的寸法の比は、約1.2から約3.0の範囲内である、請求項1に記載の強化排出装置要素。
【請求項7】
前記修正部材は、前記収縮ゾーンの断面積を21%以下分、減少させる、請求項1に記載の強化排出装置要素。
【請求項8】
前記収縮ゾーンの半径(R)の周辺を囲む前記修正部材の前記突出の広がりは、60度から120度の間である、請求項1に記載の強化排出装置要素。
【請求項9】
前記修正部材の存在は、修正部材がなく、前記強化排出装置と同じ入口および出口の直径、同じ収縮ゾーンの直径、および同じ全体的な排出装置の長さ(LE)を有する排出装置要素と比較すると、前記中空孔を通る空気流を10%以下分、制限する、請求項1に記載の強化排出装置要素。
【請求項10】
呼吸作動型吸入デバイスであって、前記デバイスは、請求項1に記載の強化排出装置を含む作動アセンブリを備え、吸気呼吸に伴う前記排出装置要素を通って流れる空気は、前記サイフォンチャネルにおいて、前記デバイスを作動させるために好適である低圧力降下を生成する、呼吸作動型吸入デバイス。
【請求項11】
前記デバイスは、加圧定量吸入器である、請求項10に記載の呼吸作動型吸入デバイス。
【請求項12】
前記デバイスは、薬剤粒子のエアロゾル製剤を含む加圧キャニスタをさらに備え、前記キャニスタは、前記デバイスが作動するとすぐに前記デバイスの中へ前記エアロゾル製剤を放出するために、プライムレス弁をさらに備えている、請求項10に記載の呼吸作動型吸入デバイス。
【請求項13】
細長い導管を備える排出装置であって、
前記導管は、
外面および前記導管の内面を形成する孔であって、前記孔は、前記細長い導管の長さの一部分に沿って縮小直径を有することにより、収縮ゾーンを形成する、外面および孔と、
前記収縮ゾーン内に配置されている開口であって、前記外面と前記孔との間で連通する開口と、
前記内面から内向きに突出する構造と
を備え、
前記構造は、前記開口に隣接して、または、前記開口の周囲に配置され、前記構造の存在は、流体の流動が前記細長い導管を通って移動している場合に、前記開口に隣接して強化された陰圧を生成し、さらに、前記構造の存在は、前記細長い導管を通る前記流体の流動に対する圧力抵抗において、実質的な付随する増加を生成しない、
排出装置。
【請求項14】
前記構造は、高さ(H)を有し、前記収縮ゾーンは、半径(R)を有し、前記構造の高さ(H)の物理的寸法は、前記収縮ゾーンの半径(R)の物理的寸法の0.65倍を超えない、請求項13に記載の排出装置。
【請求項15】
前記収縮ゾーンの半径(R)の物理的寸法に対する前記構造の高さ(H)の物理的寸法の比は、約0.16から約0.55の範囲内である、請求項14に記載の排出装置。
【請求項16】
前記構造は、前記導管の主軸に沿った長さ(L)を有し、前記収縮ゾーンは、前記排出装置の主軸に沿った長さ(LCZ)を有し、前記構造の長さ(L)の物理的寸法は、前記収縮ゾーンの長さ(LCZ)の物理的寸法の0.75倍を超えない、請求項13に記載の排出装置。
【請求項17】
前記収縮ゾーンの長さ(LCZ)の物理的寸法に対する前記構造の長さ(L)の比は、約0.25から約0.75の間である、請求項16に記載の排出装置。
【請求項18】
前記構造は、前記導管の主軸に沿った長さ(L)を有し、前記収縮ゾーンは、半径(R)を有し、前記収縮ゾーンの半径(R)の物理的寸法に対する前記構造の長さ(L)の物理的寸法の比は、約1.2から約3.0の範囲内である、請求項13に記載の排出装置。
【請求項19】
前記構造は、前記収縮ゾーンの断面積を21%以下分、減少させる、請求項13に記載の排出装置。
【請求項20】
前記構造の存在は、前記構造がなく、前記排出装置と同じ物理的寸法を有する排出装置と比較すると、前記孔を通る空気流を10%以下分、制限する、請求項13に記載の排出装置。
【請求項21】
呼吸作動型吸入デバイスであって、前記デバイスは、請求項13に記載の排出装置を含む作動アセンブリを備え、吸気呼吸に伴う前記排出装置を通って流れる空気は、前記サイフォンチャネルにおいて、前記デバイスを作動させるために好適である低圧力降下を生成する、呼吸作動型吸入デバイス。
【請求項22】
前記デバイスは、加圧定量吸入器である、請求項21に記載の呼吸作動型吸入デバイス。
【請求項23】
前記デバイスは、薬剤粒子のエアロゾル製剤を含む加圧キャニスタをさらに備え、前記キャニスタは、前記デバイスが作動するとすぐに前記デバイスの中へ前記エアロゾル製剤を放出するために、プライムレス弁をさらに備えている、請求項21に記載の呼吸作動型吸入デバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【公表番号】特表2013−515577(P2013−515577A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546246(P2012−546246)
【出願日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/062084
【国際公開番号】WO2011/079310
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(509225616)マップ ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (4)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/062084
【国際公開番号】WO2011/079310
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(509225616)マップ ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (4)
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