説明

弾性を有する繊維

良好な弾性を示し、且つ、以下の成分(重量%):すなわち、
(A)プロピレンのホモポリマーから選択される、また、プロピレンと10重量%以下の量の1種以上の繰り返し単位とから成るインターポリマーから選択される1種以上の結晶性プロピレンポリマーを10重量%から50重量%未満、その場合、該繰り返し単位はエチレンおよびC4−C10α−オレフィンから選択され、該ポリマー(1種または複数種)は80重量%を超える量で室温のキシレン中に不溶性である;および
(B)エチレンと式H2C=CHR2(式中、R2はC1−C8直鎖または分岐鎖アルキルである)で表される少なくとも1種のα−オレフィンとのエチレン由来の繰り返し単位を13重量%から60重量%未満含む1種以上のインターポリマーを含むポリマー部分を50〜90重量%
含む熱可塑性弾性ポリオレフィン組成物から作られる繊維。前記繊維は、5〜15g/分の単孔吐出量値、15〜30barの押出機中圧力、200〜300℃の押出機ヘッド温度で運転する方法によって調製される。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン繊維および前記繊維から作られる製品に関する。詳しくは、本発明は、弾性ポリオレフィン繊維および前記繊維から得られる弾性品、例えばファブリックおよびロープ、および前記繊維を製造する方法に関する。更に詳しくは、本発明は、良好な紡糸性で製造することができ、且つ弾性を示すことができるプロピレンポリマー繊維に関する。
【0002】
繊維の定義には、モノフィラメントおよびカット繊維(ステープルファイバー)が含まれる。
弾性繊維は、既に公知であって、ポリウレタンから調製される。前記繊維の欠点は、コストが高い点である。故に、より安価な弾性繊維に関するニーズが存在する。
【0003】
ポリプロピレンは、極めて良好な紡糸性を示すことが知られている。一方、弾性エチレンプロピレンコポリマー単独では、ほとんど紡糸性を有しないが、結晶性ポリプロピレンに比べて高い弾性を有しており、且つ、結晶性プロピレンポリマーとの適合性は良好である。
【0004】
結晶性ポリプロピレンと弾性ポリオレフィンとを含む熱可塑性弾性ポリオレフィン組成物を紡糸することによって得ることができる繊維は、特許文献において、例えば欧州特許出願第391 438号において既に言及されている。しかしながら、弾性ポリマーを含む組成物から作られる繊維の具体的な例は、前記文献では報告されていない。
【0005】
米国特許第4211819号では、エチレン・プロピレンコポリマーゴムを結晶性プロピレン・ブテン−1・エチレンターポリマーとブレンドしている二成分樹脂から作られる熱溶融接着剤プロピレンコポリマー繊維が開示されている。ゴムとの適合性が良好なターポリマーは、繊維を粘着性にするゴムに対して紡糸性を付与する。樹脂中のゴムの量は多くても50重量%であり、ゴム中のエチレン含量は実施例では70重量%を超えており、その結果として、繊維の弾性は比較的低い。
【0006】
欧州特許出願第552 810号、第632 147号および第632 148号も、弾性ポリオレフィンおよび/または超低結晶性ポリオレフィンを含むポリマーブレンドから作られる繊維を開示している。しかしながら、その実施例では、繊維は、結晶性プロピレンポリマーに富むポリマー組成物から作られており、そして、多くても30重量%の量でのみ弾性プロピレン・エチレンコポリマーおよび/または高度に変性されたプロピレンコポリマーを含む。
【0007】
驚くべきことに、良好な弾性を有する、特に、弾性回復後において残留変形が特有に低い繊維が、特定の熱可塑性弾性ポリオレフィン組成物を紡糸することによって得られることを発見した。
【0008】
本発明の主な利点は、弾性の増加によって、繊維の靭性が損なわれることが無いという点にある。
繊維の別の利点は、経済的な観点からのものである。高弾性繊維は、現在、低コスト材料であるポリオレフィンを使用することによって得ることができる。
【0009】
本発明の更なる利点は、前記特性が達成されることにより、本方法の生産性および工業的実行可能性が損なわれ無いという点にある。
而して、本発明は:
(A)プロピレンのホモポリマーから選択される、また、プロピレンと10重量%以下の量の1種以上の繰り返し単位とから成るランダムインターポリマーから選択される1種以上の結晶性プロピレンポリマーを10重量%から50重量%未満、好ましくは13〜40重量%、その場合、該繰り返し単位はエチレンおよびC4−C10α−オレフィンから選択され、該プロピレンポリマー(1種または複数種)は80重量%を超える量で、好ましくは90重量%を超える量で室温でキシレン中に不溶性である;および
(B)エチレンと、式H2C=CHR2(式中、R2はC1−C8直鎖または分岐鎖アルキルである)で表される少なくとも1種のα−オレフィンとの1種以上のインターポリマーを含むポリマー部分を50〜90重量%、好ましくは60〜87重量%、その場合、該インターポリマー(1種または複数種)はエチレン由来の繰り返し単位を13重量%から60重量%未満、特に13〜55重量%含む
を含む熱可塑性弾性ポリオレフィン組成物(I)から作られる繊維を提供する。
【0010】
本発明の開示では、室温とは約25℃を意味している。
本明細書で使用される「インターポリマー」という用語は、少なくとも2種類の異なるモノマーの重合によって調製されるポリマーを意味している。而して、「ターポリマー」という総称は、用語「コポリマー」(通常は、2つの異なるモノマーから調製されるポリマーを指すために使用される)ならびに用語「ターポリマー」(通常は、3つの異なるタイプのモノマーから調製されるポリマー、例えばエチレン/ブテン/プロピレンポリマーを指すために使用される)を包含している。
【0011】
プロピレンポリマー(1種または複数種)(A)は、典型的には、アイソタクチックタイプの立体規則性を示す。
更に、本発明による繊維の弾性回復後の残留変形値は20%未満である。
【0012】
また、本発明による繊維は、破断点伸びの良好な値も示す。公知のように、繊維のいくつかの特性はプロセス条件に強く左右され、それらの特性のうちの1つは、巻取速度および更に単孔吐出量(hole output)に特に左右される破断点伸びの値である。
例えば、本発明による繊維は、プロセスが250m/分以下の巻取速度値を有するとき、典型的には、800%を超える破断点伸び値を示す。巻取速度が速くなると、繊維の破断点伸びの値が減少することは公知である。例えば、巻取速度が少なくとも500g/分であるとき、破断点伸びは500%未満である。
【0013】
本発明による繊維は、典型的には、標準の処理量では、5cN/texを超える靭性値を有する。
本発明にしたがって、特に好ましくは、比較的大きい直径を有する繊維、特に、25μm以上、更に好ましくは50μm以上、例えば25μmからまたは50μmから700μmまでの直径を有する繊維である。これらの繊維は、一般的には、モノフィラメントの形態である。
【0014】
本発明による繊維を調製するために使用されるポリオレフィン組成物は、典型的には0.3〜25g/10分、好ましくは0.3〜20g/10分のメルトフローレート(MFR)値を有する。前記の値は、例えば造粒化段階中にまたは繊維の押出時に直接に加えられるラジカル開始剤、例えば有機過酸化物、2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサンの存在下における、重合時またはポリマー組成物の制御された化学分解によって直接に得られる。化学分解は、公知の方法によって行われる。
【0015】
プロピレンポリマー(1種または複数種)(A)は、プロピレンホモポリマーから、または、エチレンおよび直鎖または分岐鎖C4−C8α−オレフィンから選択されるα−オレフィンを有するプロピレンランダムポリマー、例えばプロピレンのコポリマーおよびターポリマーなどから選択される。前記の成分(A)は、前記ポリマーから成る混合物を含むこともでき、その場合、混合比は重要ではない。好ましくは、α−オレフィンは、式CH2=CHR(式中、Rは、2〜8個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキル基であり、特に、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンおよび4−メチル−1−ペンテンから選択される)で表される。
【0016】
ポリマー部分(B)は、室温で、キシレン中において部分的に可溶性である。典型的には、インターポリマーの可溶性は、70%を超える。キシレン不溶性ポリマー部分は、少なくとも50%のエチレン含量を有するエチレンインターポリマーである。典型的には、キシレン不溶性インターポリマーは、エチレンタイプの結晶化度を有する。
【0017】
ポリマー部分(B)は、前記部分(B)の重量を基準として0.5〜5重量%の量で、ジエン由来の繰り返し単位を任意に含むことができる。ジエンは、共役または非共役であることができ、そして、例えばブタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、およびエチリデン−ノルボルネン−1から選択される。
【0018】
本発明の特定の実施態様では、繊維は、ポリマー部分(B)が2つの異なるインターポリマーを含む上記組成物(I)から作られる。上記ポリマー組成物の特定の例は、重量を基準として:
(A)プロピレンホモポリマーから選択される、また、プロピレンと式H2C=CHR2(式中、R2は、水素であるか、またはC2−C8直鎖または分岐鎖アルキルである)で表される少なくとも1種のα−オレフィンとの少なくとも90%のプロピレンを含むインターポリマーから選択される結晶性プロピレンポリマーを10〜25%、その場合、前記ポリマーは、室温におけるキシレン中での溶解度は20%未満である、ならびに
(B)
(i)プロピレンと、式H2C=CHR2(R2が水素またはC2−C8直鎖または分岐鎖アルキルである)で表される少なくとも1種のα−オレフィンとの任意に0.5〜5%のジエンを含む第一弾性インターポリマー、その場合、該第一弾性インターポリマーは、15〜32%のα−オレフィンを含み且つ50%を超える室温でのキシレン中可溶性を有していて、そしてキシレン可溶性部分の固有粘度は1.0〜5.0dl/g、好ましくは1.5〜5dl/gである;そして、
(ii)プロピレンと、式H2C=CHR2(R2が水素またはC2−C8直鎖または分岐鎖アルキルである)で表される少なくとも1種のα−オレフィンとの任意に0.5〜5%のジエンを含む第二弾性インターポリマー、その場合、該第二弾性インターポリマーは、32〜45%のα−オレフィンを含み且つ80%を超える室温でのキシレン中可溶性を有していて、そしてキシレン可溶性部分の固有粘度は4.0〜6.5dl/g、好ましくは2〜6dl/gである
を含む弾性ポリマー部分を75%〜90%
含むポリオレフィン組成物(II)である。(i)と(ii)の重量比は、典型的には1:5〜5:1である。
【0019】
上記組成物は、既に公知であり;例えば、国際特許出願第WO 03/1169号で開示されている。
該組成物(I)および組成物(II)は、少なくとも2つおよび3つの逐次重合段階をそれぞれ含む方法によって調製され、その場合、それぞれの後続重合段階は、直前に行われた重合反応で形成されたポリマー材料の存在下で行われ、またその場合、結晶性高分子(A)は少なくとも1つの段階で調製され、そして弾性部分(B)は少なくとも1つまたは2つの逐次段階で調製される。重合段階は、チーグラーナッタおよび/またはメタロセン触媒の存在下で行うことができる。適当なチーグラーナッタ触媒は、米国特許第US 4,399,054号および欧州特許第EP−A−45 977号に記載されている。他の例は、米国特許第4,472,524号で開示されている。
【0020】
前記触媒で使用される固体触媒成分は、エーテル、ケトン、ラクトン、N、Pおよび/またはS原子を含む化合物、そしてモノ−およびジカルボン酸のエステルから成る群より選択される化合物を電子供与体(内部供与体)として含む。特に適当な電子供与体化合物は、フタル酸エステル、例えばジイソブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジフェニルフタレートおよびベンジルブチルフタレートである。
【0021】
他の適当な電子供与体は、下式:
【0022】
【化1】

【0023】
(式中、RIおよびRIIは、互いに同じかまたは異なっていて、C1−C18アルキル基、C3−C18シクロアルキル基またはC7−C18アリール基であり; RIIIおよびRIVは、互いに同じかまたは異なっていて、C1−C4アルキル基であるか;または、2位の炭素原子が、5個、6個または7個の炭素原子から構成され且つ2つまたは3つの不飽和を含む環状構造または多環構造に属している1,3−ジエーテルである)で表される1,3−ジエーテルである。
【0024】
このタイプのエーテルは、欧州特許第EP−A−361 493号および第EP−A−728 769号に記載されている。
該ジエーテルの代表的な例は、2−メチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−シクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソアミル−1,3−ジメトキシプロパンおよび9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレンである。
【0025】
上記触媒成分の調製は、様々な方法によって行う。例えば、(特に球状粒子の形態の)MgCl2・nROH(式中、nは一般的に1〜3であり、そしてROHはエタノール、ブタノールまたはイソブタノールである)付加物を、電子供与体化合物を含む過剰のTiCl4と反応させる。反応温度は、一般的に80℃〜120℃である。次いで、固体を単離し、電子供与体化合物の存在または非存在下で、TiCl4ともう一度反応させ、次いで、分離し、全ての塩素イオンが消失するまで、炭化水素のアリコートで洗浄する。固体触媒成分では、Tiと表されるチタン化合物は、一般的に、0.5〜10重量%の量で存在する。固体触媒成分上に固定されて動かない電子供与体化合物の量は、一般的に、二ハロゲン化マグネシウムを基準として5〜20モル%である。
【0026】
固体触媒成分の調製で使用できるチタン化合物は、チタンのハロゲン化物およびチタンのハロゲンアルコラートである。四塩化チタンは、好ましい化合物である。
上記反応により、活性化形態のハロゲン化マグネシウムが形成される。
【0027】
ハロゲン化物以外のマグネシウム化合物、例えばカルボン酸マグネシウムから出発する活性化形態のハロゲン化マグネシウムが形成される他の反応は文献で公知である。
助触媒として使用されるAl−アルキル化合物は、Al−トリアルキル、例えばAl−トリエチル、Al−トリイソブチル、Al−トリ−n−ブチル、およびOまたはN原子、SO4またはSO3基を介して互いに結合された2個以上のAl原子を含む直鎖または環状Al−アルキル化合物を含む。Al−アルキル化合物は、一般的に、Al/Ti比率が1〜1000となるような量で使用される。
【0028】
外部の供与体として使用できる電子供与体化合物としては、安息香酸アルキルのような芳香族酸エステル、特に、少なくとも1つのSi−OR(式中、Rは炭化水素基である)結合を含むケイ素化合物が挙げられる。
【0029】
ケイ素化合物の例は、(tert−ブチル)2Si(OCH32、(シクロヘキシル)(メチル)Si(OCH32、(フェニル)2Si(OCH32および(シクロペンチル)2Si(OCH32である。上記の式を有する1,3−ジエーテルも、有利に使用できる。内部供与体がこれらのジエーテルのうちの1つである場合、外部供与体は省略することができる。
【0030】
固体触媒成分は、好ましくは200m2/g未満、そして更に好ましくは80〜170m2/gの表面積(BET法で測定した)および好ましくは0.2ml/gを超える、そして更に好ましくは0.25〜0.5ml/gの多孔度(BET法で測定した)を有する。
【0031】
触媒は、少量のオレフィンと予備接触させ(予備重合)、炭化水素溶媒中懸濁液に触媒を保持し、そして周囲温度から60℃までの温度で重合させて、触媒の重量の0.5〜3倍の量のポリマーを製造することができる。作業は、液体モノマー中で行うこともでき、その場合には、触媒重量の1000倍のポリマー量を製造できる。
【0032】
組成物の重合法は、少なくとも2つの段階(全てチーグラーナッタ触媒の存在下で行われる):すなわち、関連モノマー(1種または複数種)を重合させて結晶性ポリマー(A)を形成させる第一段階;エチレンとα−オレフィンH2C=CHR2(式中、R2はC1−C8アルキルである)と任意にジエンとの混合物を重合させてインターポリマー(B)(i)を形成させる第二段階;および必要であれば、エチレンとα−オレフィンH2C=CHR2(式中、R2はC1−C8アルキルである)と任意にジエンとの混合物を重合させてインターポリマー(B)(ii)を形成させる第三段階を含む。
【0033】
重合段階は、液相、気相または気液相で行うことができる。
好ましくは、結晶性ポリマー部分(A)の重合は液体モノマー中で行い(例えば、希釈剤として液体プロピレンを使用する)、一方、プロピレンの部分的なガス抜きを除いて、中間段階無しで、インターポリマー(B)(i)および(B)(ii)を調製するための共重合段階は気相で行う。最も好ましい実施態様にしたがって、全ての逐次重合段階は、気相で行う。
【0034】
結晶性ポリマー(A)を調製するための重合段階における反応温度およびインターポリマー(B)(i)と(B)(ii)を調製するときの反応温度は、同じかまたは異なっていることができ、好ましくは40℃〜90℃であり;より好ましくは、部分(A)の調製では50〜80℃であり、そしてインターポリマー(B)(i)および(B)(ii)の調製では40〜80℃である。
【0035】
液体モノマー中で行う場合、部分(A)を調製するための重合段階の圧力は、使用される運転温度において液体プロピレンの蒸気圧に対抗し、且つおそらくは、触媒混合物を供給するために使用される少量の不活性希釈剤の蒸気圧と、モノマーおよび分子量調整剤として任意に使用される水素の過圧とによって改変される圧力である。
【0036】
重合圧力は、好ましくは、液相で行う場合には33〜43barであり、気相で行う場合には5〜30barである。3つの段階における滞留時間は、部分間の所望の比率に左右され、通常は15分〜8時間であることができる。
【0037】
連鎖移動剤(例えば水素またはZnEt2)のような当業において公知の従来の分子量調整剤を使用してもよい。
上記の熱可塑性弾性ポリオレフィン組成物は、記載したポリマーに加えて更なるポリマーを含むこともできる。前記ポリマーは、ポリエチレンから、特に、超低密度ポリエチレンから選択され、そして好ましくはポリマー組成物の総重量を基準として10重量%以下の量で存在する。
【0038】
本発明の別の実施態様は、本発明繊維を製造するための紡糸法である。
本発明による繊維は、以下の運転条件で:すなわち、
− 5〜15g/分、好ましくは7.5〜12g/分の単孔吐出量値
− 10〜40bar、好ましくは10〜30barの押出機中圧力、そして
− 200〜300℃の押出機ヘッド温度という運転条件下で、上記熱可塑性弾性ポリオレフィン組成物を紡糸することによって、得ることができる。
【0039】
紡糸法は、広範な繊維巻取速度で、例えば200〜1000m/分の速度で行う。
好ましくは、MFR値が高いポリマー組成物には押出機の温度を低くする。典型的には、0.3〜1.5g/10分のMFR値を有する組成物に関しては270〜300℃であり、1.5〜5g/10分のMFR値を有する組成物に関しては250〜270℃であり、そして5〜25g/10分のMFR値を有する組成物に関しては230〜250℃である。
【0040】
このようにして製造された繊維を、任意に、更なる延伸段階に暴露して、靭性を増加させることができる。
本発明の繊維および不織布のために使用されるポリオレフィン組成物は、当業において通常使用される添加剤、例えば酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤、帯電防止剤、難燃剤、充填剤、核剤、顔料、防汚剤、光増感剤を含むこともできる。
【0041】
上記のように、本発明の別の実施態様は、本発明による繊維を含む不織布、ロープのような物品によって示される。
以下の実施例は、例示であり、本発明を限定するものではない。
【0042】
説明および実施例のポリマー材料および繊維に関するデータは、下記の方法によって測定される。
メルトフローレート(MFR):ISO法1133(230℃、2.16kg)。
エチレン含量:IR分光法による。
25℃のキシレン中に可溶性および不溶性の部分:2.5gのポリマーを、撹拌しながら135℃の250mlキシレン中に溶解させる。20分後に、その溶液を、なお撹拌しながら、25℃まで冷却し、次いで、30分間静置する。沈殿物をろ紙でろ過し、溶液は窒素流中で蒸発させ、減圧下、残留物を、80℃で一定の重量に達するまで乾燥させた。このようにして、室温で可溶性および不溶性のポリマーの重量%を計算した。
フィラメントの力価:長さ10cmの粗紡から、50本の繊維をランダムに選び出し、計量する。mgで表される前記50本の繊維の総重量に2を掛けて、dtex単位の力価を得る。
フィラメントの靭性および伸び(破断点):500mの粗紡から長さ100mmの断片を切り取る。この断片から、試験に使用する単繊維をランダムに選択する。試験しようとする単繊維それぞれを、Instron製引張試験機(モデル1122)のクランプに固定し、100%未満の伸びでは20mm/分の牽引速度そして100%を超える伸びでは50mm/分の牽引速度で破断するまで引っ張る。クランプ間の最初の距離は20mmである。極限強さ(破断点荷重)および破断点伸びが測定される。
【0043】
靭性は、以下の方程式:すなわち
靭性 = 極限強さ(cN)x 10/力価(dtex)
を使用して出す。
弾性回復後の残留変形:方法ASTM−D 1744−64にしたがって10%の変形を加えた。
【0044】
実施例1〜3
以下の成分:すなわち、
(A)プロピレンと3.5%のエチレンとの結晶性ランダムコポリマーを29%;
前記コポリマーは、室温でキシレン中に可溶性であるポリマー部分を8%未満含み且つ75g/10分のメルトフローレート値を有する;および
(B)約16.1%の総エチレン含量と、約58%の室温のキシレン中における可溶性と、そして2.25dl/gの固有粘度[η]値とを有する弾性プロピレン・エチレンコポリマー部分を71%
含み、且つ2.5g/10分のMFR値を有する熱可塑性弾性ポリオレフィン組成物を使用した(上記の%は重量部および重量%である)。
【0045】
組成物は、内部電子供与体化合物としてジイソブチルフタレートと外部電子供与体化合物としてジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS)とを含む、二塩化マグネシウム上に担持された高収率で高立体特異性のチーグラーナッタ触媒の存在下での逐次重合によって得られた。
【0046】
重合は、ステンレス鋼製流動床反応器で行った。重合中、各反応器中の気相をガスクロマトグラフィーで連続的に分析して、エチレン、プロピレンおよび水素の含量を測定した。エチレン、プロピレン、1−ブテンおよび水素を、モノマーの流量を測定且つ/または調整する機器を使用して、重合過程の間、気相中のそれらの濃度を一定に維持する方法で供給した。運転は、気相でモノマーを重合させる工程をそれぞれ含む3つの段階で連続して行った。10%ヘキサン溶液中75〜80g/時のAl−トリエチル(TEAL)と適当量のDCPMS供与体との混合物(TEAL/DCPMS重量比は5である)と上記のような固体成分(15〜20g/時)とを含む触媒系の存在下、20〜25℃の内部温度を有する75リットルのステンレス鋼製ループ反応器において液体プロパン中でプロピレンを予備重合させた。
【0047】
第一段階−このようにして得られたプレポリマーを、第一気相反応器中に放出し、60℃の温度および14barの圧力で運転した。次いで、水素、プロピレン、エチレンおよび不活性ガスを供給して重合を行った。
【0048】
第二段階−様々な分析を行うためにサンプルを取り出した後、第一段から得られたポリマーを、60℃の温度および18barの圧力で運転される第二相反応器中に放出した。次いで、水素、プロピレン、エチレンおよび不活性ガスを供給して重合を行った。
【0049】
このようにして得られたポリマー組成物を押出して得られたペレットのMFR値は、2.5g/10分であった。
このようにして調製された組成物を、Leonard製実験プラント(押出機直径:25mm、圧縮比:1:3、最大流量:2.35kg/時)で紡糸して、モノフィラメント繊維を製造した。前記組成物を、表1で記録してあるような異なる速度で紡糸した。押出機ヘッドにおける圧力は、25barであった。
【0050】
更なるプロセス条件および繊維の性能は、以下の表1に記録してある。
実施例4
紡糸する前に、8.5g/10分のメルトフローレート値を有する組成物を得るのに適する2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサンによってポリマー組成物を化学分解させた以外は、実施例1を繰り返した。
【0051】
プロセス条件および繊維の性能は、以下の表2に記録してある。
実施例5
実施例1記載のポリマー組成物の代わりに、以下の成分(以下の%は、重量部および重量%である):すなわち、
(A)プロピレンと3.2%のエチレンとの結晶性ランダムコポリマーを31%;前記コポリマーは、室温でキシレン中に可溶性であるポリマー部分を6.5%未満含み且つ3.2 dl/gの固有粘度[η] 値と25g/10分のメルトフローレート値を有する;
(B)27%のエチレン含有量と、約56重量%の室温のキシレンにおける可溶性と、1.2g/10分のメルトフローレート値とを有する弾性プロピレン・エチレンコポリマーを69%
含む組成物を、2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサンによって化学分解することによって得られた、9.2g/10分のMFR値を有する組成物を使用した以外は、実施例1を繰り返した。
【0052】
そのポリマー組成物では、周囲温度のキシレン中に可溶性であるポリマー部分の固有粘度は3.2dl/gであった。
比較実施例1および2
組成物1の代わりに、それぞれ比較実施例1および2において組成物AおよびBを使用した以外は、実施例1を繰り返した。
【0053】
ポリマー組成物Aは、3g/10分のMFR値および約4重量%のキシレン可溶性含量を有する結晶性アイソタクチックプロピレンホモポリマーであった。ポリマー組成物Aは、内部電子供与体化合物としてフタレートを有するチーグラーナッタ触媒を使用することによって製造した。
【0054】
ポリマー組成物Bは、12g/10分のMFR値および約4重量%のキシレン可溶性含量を有する結晶性アイソタクチックプロピレンホモポリマーであった。ポリマー組成物Bは、内部電子供与体化合物としてジエーテルを有するチーグラーナッタ触媒を使用することによって製造した。
【0055】
更なるプロセス条件および繊維の性能は、以下の表1に記録してある。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
実施例6
実施例1記載の組成物の代わりに、以下の成分:すなわち、
(A)プロピレンと3.25%エチレンとの結晶性ランダムコポリマーを16.5%;前記コポリマーは、室温でキシレン中に可溶性であるポリマー部分を6.5%未満含み且つ5.5g/10分のメルトフローレート値を有する;
(B)以下の成分:すなわち、
(i)約28%のエチレン含量と、72%の室温でのキシレン中可溶性と、そして4.2dl/gの固有粘度[η]値とを有する弾性プロピレン・エチレンコポリマーをポリマー組成物の総重量を基準として50.5%;および
(ii)38%のエチレン含量を有する弾性プロピレン・エチレンコポリマーをポリマー組成物の総重量を基準として33%
含む弾性プロピレン・エチレンコポリマー部分を83.5%
含み且つ0.6g/10分のMFR値を有する熱可塑性弾性ポリオレフィン組成物を使用した以外は、実施例1を繰り返した(上記%は重量%である)。
【0059】
全ポリマー組成物のうちのキシレン可溶性部分は、5.6dl/gの固有粘度[η]および77%の室温キシレン中可溶性を示した。
弾性成分(B)は、2つの異なる気相反応器で製造した。
【0060】
更なるプロセス条件および繊維の性能は、以下の表3に記録してある。
実施例7
異なる値の単孔吐出量で方法を実行した以外は、実施例6を繰り返した。
【0061】
更なるプロセス条件および繊維の性能は、以下の表3に記録してある。
実施例8
実施例6に記載のポリマー組成物の代わりに、0.61g/10分のMFR値を有していて、且つ、実施例4で使用されるポリマー組成物94.85重量部と、0.900g/ml未満の密度、3g/10分のMFR値、コモノマーとして17.2重量%のブタン−1を有する超低密度ポリエチレン5重量部とから作られた熱可塑性弾性ポリオレフィン組成物を使用した以外は、実施例6を繰り返した。
【0062】
更なるプロセス条件および繊維の性能は、以下の表3に記録してある。
実施例9
異なる値の単孔吐出量で方法を実行した以外は、実施例6を繰り返した。
【0063】
更なるプロセス条件および繊維の性能は、以下の表3に記録してある。
【0064】
【表3】

【0065】
表に記録されているデータは、プロピレンホモポリマーから作られた繊維に比べて、弾性回復後の残留変形が少ないという本発明による繊維の高弾性を証明している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(重量%):すなわち、
(A)プロピレンのホモポリマーから選択される、また、プロピレンと10重量%以下の量の1種以上の繰り返し単位とから成るランダムインターポリマーから選択される1種以上の結晶性プロピレンポリマーを10重量%から50重量%未満、その場合、該繰り返し単位はエチレンおよびC4−C10α−オレフィンから選択され、該プロピレンポリマー(1種または複数種)は80重量%を超える量で、好ましくは90重量%を超える量で、室温でキシレン中に不溶性である;および
(B)エチレンと、式H2C=CHR2(式中、R2はC1−C8直鎖または分岐鎖アルキルである)で表される少なくとも1種のα−オレフィンとの1種以上のインターポリマーを含むポリマー部分を50重量%〜90重量%、その場合、該インターポリマー(1種または複数種)はエチレン由来の繰り返し単位を13重量%から60重量%未満含む を含む熱可塑性弾性ポリオレフィン組成物(I)から作られる繊維。
【請求項2】
(A)の量が13〜40%であり、そして(B)の量が60〜87%である請求項1記載の繊維。
【請求項3】
該ポリオレフィン組成物(I)が、以下の成分(重量%):すなわち、
(A)10%未満の室温でのキシレン中可溶性を有するプロピレンホモポリマーから選択される、また、プロピレンと式H2C=CHR2(式中、R2は、水素であるか、またはC2−C8直鎖または分岐鎖アルキルである)で表される少なくとも1種のα−オレフィンとの、少なくとも90%のプロピレンを含み且つ15%未満の室温でのキシレン中可溶性を有するインターポリマーから選択される結晶性プロピレンポリマーを10〜25%、
(B)以下の成分:すなわち、
(i)プロピレンと、式H2C=CHR2(R2は水素またはC2−C8直鎖または分岐鎖アルキルである)で表される少なくとも1種のα−オレフィンとの任意に0.5〜5%のジエンを含む第一弾性インターポリマー、その場合、該第一弾性インターポリマーは、15〜32%のα−オレフィンを含み且つ50%を超える室温でのキシレン中可溶性を有していて、キシレン可溶性部分の固有粘度は3.0〜5.0dl/gである;そして、
(ii)プロピレンと、式H2C=CHR2(R2が水素またはC2−C8直鎖または分岐鎖アルキルである)で表される少なくとも1種のα−オレフィンとの任意に0.5〜5%のジエンを含む第二弾性インターポリマー、その場合、該第二弾性インターポリマーは、32〜45%のα−オレフィンを含み且つ80%を超える室温でのキシレン中可溶性を有し、キシレン可溶性部分の固有粘度は4.0〜6.5dl/gである、を、(i)と(ii)の重量比1:5〜5:1で含む弾性ポリマー部分を75%〜90%
含む請求項1記載の繊維。
【請求項4】
0.3〜25g/10分のMFR値を有する熱可塑性弾性ポリオレフィン組成物(I)から得られる請求項1〜3記載の繊維。
【請求項5】
10重量%以下の量でポリエチレンを更に含む熱可塑性弾性ポリオレフィン組成物(I)から得られる請求項1〜3記載の繊維。
【請求項6】
5〜15g/分の単孔吐出量、15〜30barの押出機中圧力、200〜300℃の押出機ヘッド温度において、請求項1記載の熱可塑性弾性ポリオレフィン組成物(I)から繊維を紡糸する工程を含む請求項1〜5記載の繊維を調製する方法。

【公表番号】特表2008−525651(P2008−525651A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547536(P2007−547536)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【国際出願番号】PCT/EP2005/057097
【国際公開番号】WO2006/067214
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(506126071)バーゼル・ポリオレフィン・イタリア・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ (138)
【Fターム(参考)】