説明

弾薬用容器

【課題】地面に置いても安易に転がらないが、運搬時は比較的容易に地面上を転がすことができ、且つストッパやパレットを使用しなくても空間利用効率良く山積みすることが可能な弾薬用容器を提供する。
【解決手段】有底筒状の容器本体10と、該容器本体10の軸方向両端部及び中間部に設けられたリム11・12・13とを有し、各リム11・12・13の外周形状が八角形となっている。各リム11・12・13の位相は同じである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、りゅう弾砲用発射装薬や火砲用弾薬等の梱包容器等として利用される弾薬用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、りゅう弾砲用発射装薬や火砲用弾薬等を運搬したり弾薬庫に保管する際は、一定の強度と気密性を有する梱包容器として、金属製の弾薬用容器が使用される。しかし、従来の弾薬用容器は円筒形であったため、弾薬用容器を地面に置いておくと不用意に転がることがあった。また、弾薬用容器を弾薬庫等に保管する際や演習時に一時的に野外に存置する際は、複数本の弾薬用容器が山積み(俵積み)にされることが多いが、複数本の弾薬用容器を山積みしただけでは積み重ねた山が崩壊するため、当該積み重ねた山の両端をストッパで止める必要があった。しかも、このように円筒形の弾薬用容器を山積みする場合は、ピラミッド状に積み重ねることしかできないため、空間利用効率(単位空間当たりの保管本数)が悪いという課題もあった。
【0003】
そこで、このような課題を解決するものとして、下記特許文献1が提案されている。具体的には、弾薬用容器の凹凸部に合う複数の溝を表裏両面に有するパレットを使用し、当該パレットに複数本の弾薬用容器を並列載置している。これにより、円筒形の弾薬容器が不用意に転がることを防止している。また、パレットを上下に複数段重ねることで、ストッパを使用せずに弾薬用容器を山積み可能となる。このとき、各段毎の並列本数は同じであり、積み重ねた山は矩形となるので、空間利用効率にも有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−226031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1では、弾薬用容器を保管する際にわざわざパレットを使用しなければならない。これでは、パレット用のコストが嵩む。また、弾薬用容器が大型で持ち運びが困難な場合は、地面上を転がしながら運搬することもあるが、その場合、わざわざ弾薬用容器をパレットから取り外す手間を要する。しかも、保管してある弾薬等を全て使用し終えた場合、空となった弾薬用容器の他に、パレットも残ってしまう。
【0006】
これを解決するため、単純には弾薬用容器の断面形状を三角形や四角形などの多角形とすることが考えられる。しかし、三角形や四角形とした場合は転がり防止には有効であるが、各角部の角度(隣り合う辺同士の角度)が小さいため、弾薬用容器を転がしながら運搬することは困難である。各角部を若干面取りすればある程度転がし易くはなるであろうが、根本的解決には至らない。一方、十角形以上にすると円形に近くなるので、転がり防止効果が低下してしまう。
【0007】
そこで、本発明は上記課題を解決するものであって、地面に置いても安易に転がらないが、運搬時は比較的容易に地面上を転がすことができ、且つストッパやパレットを使用しなくても空間利用効率良く山積みすることが可能な弾薬用容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのための手段として、本発明の弾薬用容器は、有底筒状の容器本体と、該容器本体の軸方向両端部において前記容器本体の外周を囲むように設けられたリムとを有する。そのうえで、両端部に設けられたリムのうち、少なくともいずれか一方の外周形状(容器本体の軸方向に直交する断面形状)が八角形となっている。両端部に設けられたリムのうちいずれか一方のみを八角形とする場合、他方のリムの外周形状は円形とすればよい。
【0009】
容器本体の外周面にリムを設けていれば、弾薬用容器の強度が増す。したがって、仮に弾薬用容器を誤って落としても容器本体が変形ないし欠損し難く、延いては内部の弾薬等を落下衝撃から的確に保護することができる。また、容器本体の変形に伴って弾薬等を容器本体から取り出せなくなることも防止できる。なお、弾薬用容器を地面に置いたり積み重ねたりした際は、リムが支点となる。そのうえで、少なくとも1つのリムの外周形状を八角形にしているので、弾薬用容器を地面上に横倒し状態で置いても、安易に転がることがない。したがって、例え傾斜面上にも安定して置くことができる。その一方で、八角形であれば各角部の角度(隣り合う辺同士の角度)が鈍角となっているので、弾薬用容器が大型で持ち運びが困難な場合は、比較的容易に地面上を転がしながら運搬することができる。地面上を転がす際は、基本的には軸方向一端側を持ち上げた状態で他端側を支点として転がすことが好ましいが、横倒しの状態のまま転がすこともできる。しかも、保管時には八角形の一辺同士を付き合わせるように積み重ねることで、従来のようにストッパやパレット等を使用することなく、複数本の弾薬用容器を安定して山積みすることができる。このとき、積み重ねた山において上段になるほど数を減じる必要も無いので、空間利用効率(単位空間当たりの保管本数)も良い。容器本体の軸方向両端部に設けられたリムのうちのいずれか一方のみを八角形としていれば、八角形リム側を持ち上げた状態で円形リム側を支点とすれば、より容易に転がし運搬することができる。
【0010】
このように、一方のリムのみを八角形とすることによる特有の効果もあるが、双方のリムの外周形状を八角形とすることも好ましい。この場合、両リムの角部同士を結ぶ仮想線は、容器本体の中心軸と平行とする。すなわち、両リムの位相を同じにしておく。これにより、弾薬用容器が容器本体の軸方向両端部において安定して支持されるので、より確実に不用意な転がりを防止できると共に、積み重ね安定性も増す。
【0011】
また、容器本体の軸方向中間部にも、外周形状が八角形のリムを設けることが好ましい。なお、本発明において「軸方向中間部」とは、両端部にあるリムの間に設けられていることを意味し、軸方向中央部のみならず、軸方向中央部から外れた端部寄り位置に設けられている場合も含む。この場合も、容器本体の軸方向端部に設けられた八角形リムの角部と軸方向中間部に設けられた八角形リムの角部とを結ぶ仮想線は、同じ位相となるように容器本体の中心軸と平行とする。これによれば、弾薬用容器が軸方向中間部においても安定して支持されることで、さらに確実に不用意な転がりを防止できると共に、積み重ね安定性もより向上する。この効果は、特に端部に設けた一方のリムのみを八角形とした場合に大きい。
【0012】
また、全てのリムは、その一側面を他方面側に凹んだ把手形状とすることが好ましい。これにより、リムを掴みながら弾薬用容器を容易に持ち運ぶことができる。この効果は、特に弾薬用容器が比較的長尺な場合に大きい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、容器本体の外周面に外周形状が八角形のリムを設けていることで、弾薬用容器を地面に置いても安易に転がらないが、運搬時には比較的容易に地面上を転がすことができる。また、ストッパやパレットを使用しなくても空間利用効率良く複数本の弾薬用容器を山積みすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1の弾薬用容器の斜視図である。
【図2】弾薬用容器の断面図である。
【図3】弾薬用容器を山積みした状態の正面図である。
【図4】実施例2の弾薬用容器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施例1)
以下に、本発明の代表的な実施例について説明する。図1に示すように、弾薬用容器1は、有底円筒状の容器本体10と、該容器本体10の軸方向両端部及び中間部の3箇所に設けられた補強用のリム11・12・13と、容器本体10の開口を封止する蓋体15とを有する。
【0016】
容器本体10は、発射装薬もしくは弾薬を収納保管できる程度の強度を有するものであれば、その材料は特に制限されない。例えば、金属、プラスチック、繊維強化プラスチック、樹脂含浸紙などを使用できる。中でも、良好な剛性を有する点で金属や繊維強化プラスチックが好ましいが、補強用のリム11・12・13を設けているので、プラスチックや樹脂含浸紙でも構わない。金属としては、従来からこの種の弾薬用容器において使用されている金属であれば特に限定されず、例えば鉄鋼、アルミニウム合金、銅合金などを使用できる。中でも、強度の面から鉄鋼製が好ましい。
【0017】
蓋体15はカップ状であり、弾薬用容器1内を密閉できるものであれば、その材料は特に制限されない。例えば容器本体10と同様に、金属製、プラスチック製、繊維強化プラスチック製、樹脂含浸紙製とできるほか、ゴム製とすることも可能である。蓋体15は、容器本体10の開口へ圧入により嵌合される。
【0018】
容器本体10の開口側端部に設けられたリム11、底端部に設けられたリム12、及び軸方向中間部(本実施例では軸方向中央部)に設けられたリム13は、それぞれ容器本体10の全周を囲むように設けられており、各リム11・12・13の外周形状(容器本体10の軸方向に直交する断面形状)は正八角形となっている。各リム11・12・13の位相は同じであり、各リム11・12・13の角部同士を結ぶ仮想線は、容器本体10の中心軸と平行になっている。また、各リム11・12・13に外接する仮想円の直径も同じである。各リム11・12・13も、容器本体10と同様に金属製、プラスチック製、繊維強化プラスチック製、樹脂含浸紙製とできるほか、ゴム製とすることも可能である。中でも、リムは容器本体10の補強用部材なので、金属製、硬質プラスチック製、繊維強化プラスチック製、硬質ゴム製とすることが好ましい。各リム11・12・13は、溶接、ビス留め、接着、係合などにより、容器本体10の外周面に接合されている。各リム11・12・13は絞り加工により成形され、一側面が他方面側に凹んだ把手形状となっている(図2参照)。
【0019】
図2に示すように、弾薬用容器1内には、複数のりゅう弾砲用発射装薬や火砲用弾薬などが、直列に並べられた状態で収納される。図2には、発射装薬30を収容した状態を示している。発射装薬30に用いられる発射薬としては、シングルベース発射薬、ダブルベース発射薬、トリプルベース発射薬、マルチベース発射薬などが用いられる。発射装薬30は、クラフトパルプとニトロセルロースの混合物を成形して作られる焼尽ケースの内側に粒状の発射薬を装填したものである。符合31は、モジュールの両端に配される発泡ゴム製のクッション材である。符号33は、全ての発射装薬30と両端のクッション材31とを包んでモジュール化する収納袋である。
【0020】
弾薬用容器1を弾薬庫などに保管する場合は、図3に示すように、複数本の弾薬用容器1を積み重ねておく。このとき、八角形の各リム11・12・13が支点となることで、各弾薬用容器1は転がることがなく、且つ各弾薬用容器1はそれぞれリム11・12・13の一辺同士が線接触することで、安定して山積みすることができる。したがって、積み重ねた山の崩壊を防止するストッパは不要である。また、上段にいくほど数を減じる必要もないので、空間利用効率にも有利である。
【0021】
発射装薬30を使用する場合は、積み重ねた山から弾薬用容器1を取り出して必要箇所へ運搬する。このとき、把手形状となっている各リム11・12・13のうちいずれか2つを掴む事で、容易に持ち運びできる。また、弾薬用容器1の重量が大きい場合は、一方の端部(リム11側又はリム13側)を持ち上げた状態、または横倒しの状態で、地面上を転がしながら運搬することもできる。このとき、各リム11・12・13は八角形なので、比較的簡単に転がすことができる。
【0022】
(実施例2)
図4に、本発明の実施例2を示す。実施例1では、両端部のリム11・12を共に八角形としたが、何れか一方を八角形にし、他方は円形にすることもできる。例えば、図4に示す実施例2では、底端部のリム14を円形としている。これによれば、八角形のリム11側を持ち上げた状態で円形のリム14側を支点とすれば、容易に転がし運搬することができる。または、開口側端部のリムを円形とすることもできる。
【0023】
(変形例)
以上、本発明の代表的な実施例について説明したが、これに限らず本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変形が可能である。例えば、りゅう弾砲用発射装薬や火砲用弾薬などの外周形状によっては、容器本体10の断面形状を多角形とすることもできる。蓋体15は、圧入のみならず螺合してもよい。
【0024】
軸方向中間部のリム13は、必ずしも設ける必要はない。リム13は、軸方向中央部に限らず、いずれか一方の端部側寄り位置に設けることもできる。また、容器本体10の軸方向中間部に、複数のリムを設けることもできる。
【符号の説明】
【0025】
1 弾薬用容器
10 容器本体
11・12・13・14 リム
15 蓋体
30 発射装薬



【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状の容器本体と、該容器本体の軸方向両端部において前記容器本体の外周を囲むように設けられたリムと、を有し、
前記両端部に設けられたリムのうち、少なくともいずれか一方の外周形状が八角形となっている、弾薬用容器。
【請求項2】
前記両端部に設けられたリムの双方の外周形状が八角形となっており、
該両リムの角部同士を結ぶ仮想線が前記容器本体の中心軸と平行となっている、請求項1に記載の弾薬用容器。
【請求項3】
前記容器本体の軸方向中間部にも、外周形状が八角形のリムが設けられており、
前記容器本体の軸方向端部に設けられたリムの角部と軸方向中間部に設けられたリムの角部とを結ぶ仮想線が、前記容器本体の中心軸と平行となっている、請求項1または請求項2に記載の弾薬用容器。
【請求項4】
全てのリムの一側面が、他方面側に凹んだ把手形状となっている、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の弾薬用容器。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−11365(P2013−11365A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142607(P2011−142607)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)