説明

形状調整可能な締め具装置用のストラップ

【課題】機械的な締め具装置で用いるプラスチックストラップの改良及び、改良したストラップを用いたシステムや装置を提供する。
【解決手段】機械的な締め具装置用のストラップを提供する。ストラップ(102,202,302,406)は、縦軸に沿って配置されるワイヤ(210,306)を含む。ワイヤは、ストラップを元の形状とは異なる所望の形状に保持する。他の実施形態においては、ワイヤ芯のストラップは、横ひだ状突条、孔部や他のタイプの溝や開口部を含み得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、米国特許出願第11/515,349号(特許文献1)を基礎とする優先権を主張する。特許文献1は、引用を以って本明細書の一部となす。
【0002】
本発明は、機械的な締め具装置に関しており、詳細には、元の形状とは異なる所望の形状へと使用者によって形状調整可能とするように事前形成されたストラップに関する。
【背景技術】
【0003】
機械的な締め具装置は、スポーツ、医療及び運送業界において広く使用されている。これらの締め具装置は、一般的に、ラダーストラップなどのプラスチックストラップを使用している。ラダーストラップは、ラッチ機構によって順々に係合する複数の横ひだ状突条を含む表面で形成される。スポーツ業界においては、例えば、機械的な締め具装置は、スノーボードのビンディング、スキーブーツ、ウェイクボードのビンディング及びインラインスケートのような物品に装備されている装置の中で使用されている。
【0004】
ほとんどの用途においては、ラダーストラップなどの従来型のストラップは、意図的に表面が凸状で裏面が凹状の湾曲した形状となっており、足や上下肢、若しくは装置の一部といった対象物を覆うように事前形成されている。また、あるいは、従来型のストラップは、全く湾曲がなく平らで真っ直ぐに事前形成されている。しかしながら、元の形状がどの様であるかに関わらず、従来型のストラップは、元の形状へ弾性的に戻るように形成されている。
【0005】
従来型のストラップの事前形成された形状は、機械的な締め具装置への対象物の容易な挿入及び抜脱の妨げになり得る。実際、従来型のストラップは、対象物によって不自然に曲がる場合や、対象物が取着又は閉成されている装置の鋭い縁部に引っかかる場合がある。スノーボードというスポーツにおいては、例えば、使用者はビンディングに靴を挿入するために、しばしば悪天候の中で、ブーツのパッド付き締め具装置を自らの手で押さえて開いたままにする必要がある。従来型のストラップは、元の形状では、踏まれたり、適切な限度を超えた形状でつかまれたりして、ストラップ自体の破損又は劣化を招く場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願第11/515,349号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本明細書は、機械的な締め具装置用のプラスチックストラップの改良及び改良したストラップを用いたシステムや装置について開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ある態様において、締め具装置は1つのストラップを含む。ストラップは、縦軸に沿って配置されたワイヤを含む。ワイヤは、ストラップを元の形状とは異なる所望の形状に保持する。また、別の態様においては、ワイヤ芯のストラップは、横ひだ状突条、孔部又は他のタイプの溝や開口部を含む場合がある。
【0009】
ある特定の態様においては、機械的な締め具装置は長寸で熱可塑性のラダーストラップを含み、そのストラップは複数の横ひだ状突条と1つの開口部を含む表面を有する。機械的な締め具装置ではさらに、ラダーストラップ内に埋設され、部分的に開口部を囲繞し、ラダーストラップの縦軸の大部分に沿って平行に延在するU字型金属ワイヤを含む。U字型ワイヤは、ラダーストラップを元の形状とは異なる所望の形状に保持するために適合される。
【0010】
1つ又は複数の実施形態の詳細は、以下に続く図面及び発明を実施するための形態において示す。他の特徴及び利点は、発明を実施するための形態及び図面と、請求項とから明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
これら及びその他の特徴は、以下の図面と関連して詳細に説明する。各図面において、同一又は類似の参照記号は、同一又は類似の構成要素を示す。
【図1】スノースポーツのビンディング機構を示す図。
【図2A】ラダーストラップの図。
【図2B】ラダーストラップの図。
【図2C】ラダーストラップの図。
【図3A】締め具装置の代替実施形態の図。
【図3B】締め具装置の代替実施形態の図。
【図4】締め具装置を有するインラインスケートを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書は、締め具装置を説明する。特に、本明細書は、元の形状又は閉成形状から、所望の形状又は開放形状へと屈曲可能であり、それによって締め具装置の安全性や使い易さを高める、ワイヤ芯のストラップについて説明する。埋設されたワイヤによって、引張強度及び形状又は所望の形状への屈曲を保持する能力が得られ、外部作用なくストラップが元の形状へと戻ることが抑止される。これらのストラップは、ラッチストラップとも呼ばれるラダーストラップとして具現化され、スポーツ用品(スノーボードのビンディング、スノーシューズ、インラインローラースケートなど)、医療用品(歯列矯正具、補綴具、歩行安定ブーツ、脊椎固定装置など)及び運送用品(自動車のルーフキャリア装置やルーフラックなど)に装備されている機械的な締め具装置において使用され得る。その他の用品への応用も可能であり、本明細書の範囲において示す。
【0013】
図1は、スノーボードビンディング100を表し、本明細書に記載の実施形態に従った締め具装置の一形態として示す。スノーボードビンディング100は、堅いベース部材50と、ベース部材50の反対側から上方に延在する足及びかかと用の堅い支持部材60と、足及びかかと用の堅い支持部材60へ接続される枢動可能な後ろ足首支持部材70とを含む。
【0014】
スノーボードビンディング100は、使用者のブーツ又は足を閉成するための、1つ又は複数のパッド付きの機械的な締め具装置をさらに含む。各機械的な締め具装置は、1つ又は複数のラダーストラップ102を含む。各ラダーストラップ102は表面104を含み、表面104は少なくとも一部分において、ラチェット受容部106の舌状ロック部によって順々に係合する複数の横ひだ状突条を有する。各ラダーストラップ102は、ストラップ内に埋設されるか、又は表層に配置されており、ラダーストラップ102を事前形成された形状とは異なる形状103へと保持させることができるワイヤ(図示せず)を含む。このように、機械的な締め具装置のパッド付き部位は、上述と同様に開放形状101をとることもでき、スノーボードビンディング100へのブーツの挿入及び抜脱が容易に行えるようになる。
【0015】
図2Aは、本明細書に記載の好適実施形態に従って形成された締め具装置200の斜視図である。図2Bは、締め具装置200の縦軸Lに沿った側面図であり、図2Cは、締め具装置200の表面204の俯瞰図である。締め具装置200は、1つ又は複数の横ひだ状突条206を含む表面204を有する、長寸のラダーストラップ202を含む。横ひだ状突条206は、ラチェット受容部の舌状部と係合する。締め具装置200の代替実施形態は、図3Aと3Bに関連して説明するように、滑らかな表面204と、受容機構へ係合するための多数の孔部又は溝とを有するストラップを含む。
【0016】
ラダーストラップ202は、好適にはラダーストラップ202の1つの端部の中央に配置されるような開口部208もまた含み得る。ラダーストラップ202は、任意の長さ、幅又は厚さも採り得るが、様々な形状へ屈曲可能とするような厚さ及び密度をもつ金属から形成されなければならない。好適には、ラダーストラップ202は、長寸となるように横軸(T)より縦軸(L)の方が長い。
【0017】
締め具装置200は、ラダーストラップ202内に埋設されたワイヤ210をさらに含む。模範的実施形態においては、ワイヤ210は、2つの平行なアームを有するU字型金属ワイヤを含む。U字型金属ワイヤは、開口部208付近に強度が加えられるように、少なくとも部分的に開口部208を囲繞するように配置され、アームはラダーストラップ202の縦軸Lの大部分に沿って平行に延在する。ワイヤ210は、ラダーストラップ202を元の形状とは異なる所望の形状に保持するように適合される。例えば、図1に示すスノーボードのビンディングにおいては、締め具装置200がベース部材から開放され得るので、使用者が簡単に、手で押さえることなく、ビンディングへの挿入及び抜脱が行えるようになる。
【0018】
図3A及び3Bは、各々締め具装置300及び301の代替実施形態を示す。締め具装置300及び301は、自身を貫通する1つ又は複数の孔部304を有するストラップ302を含む。ストラップ302は、一般に平らで長寸であるが、任意の長さ、幅又は厚さも採り得る。孔部304は、好適には中心部に均一に配置され、一般に円形である。しかしながら、孔部304は、ストラップ302の中のどのような場所にも配置でき、図3Bのストラップ301に示すような長寸のスラット305も含み得る。
【0019】
ストラップ302の形状は、好適にはストラップに埋設されたワイヤ306によって保持される。ワイヤ306は、一般に、U字型部位307に接続される平行なアームを含む。U字型部位307は、ストラップの1つの端部の外周に配置され、その端部にある孔部310を少なくとも部分的に囲繞するので、ストラップの端部の強度がさらに増し得る。
【0020】
図4は、本明細書に記載の締め具装置の代替形態として、インラインスケート400を示す。インラインスケート400は、整合された複数の車輪404の上に取着され、スケーターの足を受容する靴402を含む。靴は、ラダーストラップ406を受容機構408へ係合させることによって、スケーターの足と足首を閉成することができる。各ラダーストラップ406は、そのように係合されていない場合、縦軸に沿って配置されたワイヤを含むため、外向きに曲げられて、図のような開放形状に保持され得る。このことによって、スケーターは、ラダーストラップ406に足が引っかかることなく足を挿入したり抜脱できる。
【0021】
好適実施形態において、各ストラップは、衝撃、異常な気候状況及び激しい温度変化にも耐え得る熱可塑性物質又は熱可塑性ポリウレタンから形成される。特定の好適実施形態においては、ストラップは、ゴムの自由度、プラスティックの強度及び熱可塑性物質の加工性を与えるように、Hytrel(登録商標)などの熱可塑性ポリエステルエラストマーから形成される。ストラップは、鋳型注入、押し出し成形及びメルトキャスティングなどの熱可塑性物質の任意の成形過程を用いて作成することができる。
【0022】
いくつかの実施形態については詳細を上記で説明したが、その他の改良形態も可能である。例えば、ワイヤはストラップの表面へ接着又は別な方法で取着されることも可能であり、必ずしもストラップの中核部に埋設される必要はない。その他の実施形態については、下記の特許請求の範囲の中で示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
締め具装置であって、ストラップを含み、前記ストラップの縦軸に沿って配置されるワイヤを含むことを特徴とする締め具装置。
【請求項2】
前記ワイヤが前記ストラップ内に埋設されていることを特徴とする請求項1に記載の締め具装置。
【請求項3】
前記ワイヤが長寸のU字型ワイヤであることを特徴とする請求項1に記載の締め具装置。
【請求項4】
前記ストラップの第1の端部が開口部を含み、前記U字型ワイヤが少なくとも部分的に前記開口部を囲繞することを特徴とする請求項3に記載の締め具装置。
【請求項5】
前記ストラップが熱可塑性物質から形成されることと、前記ワイヤが金属から形成されることとを特徴とする請求項1に記載の締め具装置。
【請求項6】
前記熱可塑性物質が熱可塑性ポリエステルエラストマーであることを特徴とする請求項5に記載の締め具装置。
【請求項7】
前記ワイヤが複数の横ひだ状突条を少なくとも一部分において有する表面を含むことを特徴とする請求項1に記載の締め具装置。
【請求項8】
前記ストラップが長寸であり、前記ストラップの前記縦軸が横軸の長さより2倍以上長いことを特徴とする請求項1に記載の締め具装置。
【請求項9】
機械的な締め具装置用のストラップであって、元の形状とは異なる所望の形状に前記ストラップを保持するための、前記ストラップの縦軸に沿って配置されるワイヤを含むことを特徴とするストラップ。
【請求項10】
前記ワイヤが前記ストラップ内に埋設されていることを特徴とする請求項9に記載のストラップ。
【請求項11】
前記ストラップが表面に複数の横ひだ状突条をさらに含むことを特徴とする請求項9に記載のストラップ。
【請求項12】
ストラップが第1の端部で表面を貫通する開口部をさらに含み、前記ワイヤが少なくとも部分的に前記開口部を囲繞するU字型ワイヤであることを特徴とする請求項11に記載のストラップ。
【請求項13】
機械的な締め具装置であって、複数の横ひだ状突条を有する表側を含む長寸のストラップと、前記長寸のストラップ内に縦軸方向に埋設されたワイヤとを含むことを特徴とする機械的な締め具装置。
【請求項14】
機械的な締め具装置であって、複数の横ひだ状突条を含む表面を有するラダーストラップと、前記ラダーストラップを元の形状とは異なる所望の形状に保持するための手段とを含むことを特徴とする機械的な締め具装置。
【請求項15】
機械的な締め具装置であって、
複数の横ひだ状突条と1つの開口部とを含む表面を有する長寸の熱可塑性のラダーストラップと、
前記ラダーストラップ内に埋設されていて、部分的に前記開口部を囲繞し、前記ラダーストラップの縦軸の大部分に沿って平行に延在する、U字型金属ワイヤとを含み、前記U字型ワイヤが、
前記ラダーストラップを元の形状とは異なる所望の形状に保持するように適合されることを特徴とする機械的な締め具装置。
【請求項16】
前記熱可塑性のラダーストラップが熱可塑性ポリエステルエラストマーから形成されることを特徴とする請求項15に記載の機械的な締め具装置。
【請求項17】
使用者のブーツ又は足用のビンディング機構であって、
堅いベース部材と、
前記ベース部材の反対側から上方に延在する足及びかかと用の堅い支持部材と、
前記足及びかかと用の堅い支持部材へ接続される枢動可能な後ろ足首支持部材と、
使用者のブーツ又は足を閉成するための、前記足及びかかと用の堅い支持部材へ接続される機械的な締め具装置とを含み、前記機械的な締め具装置が、
舌状ロック部を含むラチェット受容部と、
前記ラチェット受容部の中へ受容されるラダーストラップとを含み、前記ラダーストラップが、
前記舌状ロック部によって順々に係合するための複数の横ひだ状突条を含み、
前記機械的な締め具装置が前記使用者の前記ブーツ又は足を閉成している時に、前記使用者によって与えられる、前記ラダーストラップの閉成形状とは異なる開放形状 に、前記ラダーストラップを保持するために、前記ラダーストラップ内に埋設されたワイヤをさらに含むことを特徴とするビンディング機構。
【請求項18】
前記ラダーストラップが熱可塑性物質から形成されることと、前記ワイヤが金属から形成されることとを特徴とする請求項17に記載のビンディング機構。
【請求項19】
前記機械的な締め具装置に取着されたパッドをさらに含むことを特徴とする請求項17に記載のビンディング機構。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−508874(P2010−508874A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526942(P2009−526942)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【国際出願番号】PCT/US2007/077435
【国際公開番号】WO2008/028152
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(509058092)ダブリューシーエス・エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】