説明

後部操舵ハンドルユニット

【課題】本発明は、自動車の荷室へ小型電動車両を容易に載せることができ、あるいは、荷室から小型電動車両を容易に降ろすことができる技術を提供することを課題とする。
【解決手段】運転者が着座するシート17の前側に前部操舵ハンドル21を備えた小型電動車両10を後から歩行しながら操舵する後部操舵ハンドルユニット30が、シート17のシートバック18に着脱可能な後部操舵ハンドル31と、この後部操舵ハンドル31によって前部操舵ハンドル21を操舵することが可能に、この前部操舵ハンドル21と後部操舵ハンドル31とを連結するための連結部材51L、51Rとによって構成され、この連結部材51L、51Rは、前部操舵ハンドル21に対して着脱可能な連結部26L、26Rを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型電動車両に備えられる後部操舵ハンドルユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
高齢者や身体障害者の移動手段として利用可能な電動車いす等の小型電動車両が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に示すように、小型電動車両は、前輪と後輪の間に運転者が着座するシートを備え、このシートの前方に操舵用のハンドルを備え、このハンドルの中央に車両の運転操作のための操作パネルを備え、シートに着座した運転者がハンドルを操舵して走行する車両である。
【0004】
電動車いすを利用する人の中には、短い距離なら自力で歩ける人もいる。このような人は、自ら自動車を運転することによって、行動範囲が拡がる。しかし、電動車いすを自動車へ積み込みあるいは、自動車から積み降ろす作業が必要である。
【0005】
このような、小型電動車両を自動車の荷室に載せる場合について以下に検討する。
小型電動車両を載せる自動車の荷室は、車種によっては、荷室の幅が限られている。幅が限られる荷室の側壁に小型電動車両が近接する場合や、長手方向で自動車の左右ドアの位置が小型電動車両の着座シートの位置とが一致していない場合、小型電動車両を運転して荷室に積み込んだ(載せた)後、運転者が小型電動車両の着座シートから離れることが難しい場合がある。また、上記自動車の荷室に載せた小型電動車両に乗車することも難しい。
【0006】
また、小型電動車両に着座し、この小型電動車両を運転操作し、地面との高低差をもつ荷室へ載せること、あるいは、荷室から小型電動車両を運転操作し荷室から降ろすことは、高齢者や身体障害者によっては不安が残る。
【0007】
荷室の幅が限られる等により、荷室に載せた小型電動車両からの乗降が困難な場合であっても、荷室へ小型電動車両を容易に載せることができ、あるいは、荷室から小型電動車両を容易に降ろすことができる技術があれば好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−89758公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、自動車の荷室へ小型電動車両を容易に載せることができ、あるいは、荷室から小型電動車両を容易に降ろすことができる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、運転者が着座するシートの前側に前部操舵ハンドルを備えた小型電動車両を後から歩行しながら操舵する後部操舵ハンドルユニットが、シートのシートバック又はその近傍の部位に着脱可能な後部操舵ハンドルと、この後部操舵ハンドルによって前部操舵ハンドルを操舵することが可能に、この前部操舵ハンドルと後部操舵ハンドルとを連結するための連結部材とによって構成され、この連結部材は、前部操舵ハンドルに対して着脱可能な連結部を有していることを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る発明では、後部操舵ハンドルは、後部運転操作盤を備え、この後部運転操作盤は、前進・後進スイッチと、速度設定つまみとを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、小型電動車両に、後から歩行しながら小型電動車両を操舵可能にする後部操舵ハンドルユニットが備えられている。このような後部操舵ハンドルユニットを操作することで、小型電動車両のシートに着座することなく、小型電動車両の後から歩行した状態で操作することができる。
【0013】
従って、本発明によれば、荷室の幅が限られる等により、荷室に載せた小型電動車両からの乗降が困難な場合であっても、荷室へ小型電動車両を容易に載せることができ、あるいは、荷室から小型電動車両を容易に降ろすことができる。結果、電動車いすを利用する人であっても、短い距離なら自力で歩ける人であれば、自ら自動車を運転することによって、行動範囲を大幅に拡げることが可能になる。
【0014】
また、後部操舵ハンドルは着脱可能にした。加えて、後部操舵ハンドルと前部操舵ハンドルとを連結する連結部材も着脱可能にした。このため、後部操舵ハンドルと連結部材は、必要なとき以外、小型電動車両から取り外し、荷室にしまっておけばよい。従って、通常走行時に、小型電動車両が重くなるという心配はない。
【0015】
請求項2に係る発明では、後部操舵ハンドルに前進・後進スイッチと、速度設定つまみとが備えられる。運転者は、通常設けられる前部操作パネルに近づいて、この前部操作パネルを操作することなく、小型電動車両の前進・後進及び速度が設定可能となる。結果、後から歩行しながら操作する場合の利便性が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る小型電動車両の左側面図である。
【図2】本発明に係る小型電動車両の斜視図である。
【図3】小型電動車両に備えられる後部操舵ハンドルユニットの平面図である。
【図4】連結部の構造を説明する図である。
【図5】後部操舵ハンドルユニットが着脱可能なことを説明する図である。
【図6】後部操舵ハンドルが着脱可能なことを説明する図である。
【図7】小型電動車両に備えられる後部操舵ハンドルユニットの作用説明図である。
【図8】後部操舵ハンドルユニットを操作して自動車へ小型電動車両を搭載することを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。図中及び実施例において、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」は、各々、小型電動車両に乗車する運転者から見た方向を示す。
【実施例】
【0018】
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1及び図2に示すように、小型電動車両10は、車体11の前部及び後部に設けた前輪13及び後輪14と、これらの前輪13と後輪14の間に設けたバッテリ15と、このバッテリ15の後方にて後輪14の前方に設けバッテリ15によって駆動される電動モータ16と、この電動モータ16の上方に設け運転者が着座するシート17と、このシート17の後部に立ち上げ運転者の背もたれとなるシートバック18と、このシートバック18の高さ方向中間部から前方に可倒自在に設けた跳ね上げ式肘掛け19L、19Rと、シート17の前方に設け運転者が操作する前部操舵ハンドル21と、この前部操舵ハンドル21に含まれる前部運転操作盤22と、シート17のシートバックの後面18bに取付けたステー24と、このステー24に着脱可能に取付けた後部操舵ハンドル31と、この後部操舵ハンドル31に含まれる後部運転操作盤32とを主要素とする前2輪後2輪の4輪車である。
【0019】
車体11の前方はフロントカウル41で覆われ、車体11の側方はサイドカウル42で覆われ、車体11の後方はリヤカウル44で覆われる。前部操舵ハンドル21から上方へ左右のバックミラー43L、43R(図手前側の符号43Lのみ示す。)が延びており、フロントカウル41の前方に物を入れるフロントバスケット45が備えられている。
フロントカウル41の車幅方向端部に左右の前ウインカー46L、46R(図手前側の符号46Lのみ示す。)が取付けられ、シートバック18の車幅方向端部に後ウインカー47L、47R(図手前側の符号47Lのみ示す。)が取付けられる。
【0020】
次に、後部操舵ハンドルユニットについて説明する。
後部操舵ハンドルユニット30は、小型電動車両10を後から歩行しながら操舵することができるようにするものである。後部操舵ハンドルユニット30は、シート17の前側に配置される前部操舵ハンドル21の後方に配置されシート17のシートバック18にステー24を介して取付けた後部操舵ハンドル31と、この後部操舵ハンドル31によって前部操舵ハンドル21を操舵することが可能に前部操舵ハンドル21と後部操舵ハンドル31とを連結するための連結部材51L、51Rとによって構成される。以下、連結部材51L、51Rと前部操舵ハンドル21の握り部25とを連結する部分を連結部26L、26Rと言う。連結部26L、26Rの構造については後述する。
なお、後部操舵ハンドル31をシートバック18以外の、例えば、リヤカウル44にステーを介して取付けることは差し支えない。
【0021】
次に、通常運転者が操作する前部操舵ハンドル21及びこの前部操舵ハンドル21に含まれる前部運転操作盤22について説明する。
図3に示すように、前輪(図1、符号13)を操舵自在にする前部操舵ハンドル21は、内側が開放されるように配置され車幅方向中心から延びており略U字状に形成され運転者が握ることができる左右の握り部25L、25Rを備えている。前部操舵ハンドル21に前部運転操作盤22を含む。左右の握り部25L、25Rの前端に、左右のバックミラー43L、43Rが延びている。
【0022】
この前部運転操作盤22の上面には、メインスイッチ61と、このメインスイッチ61の左右に配置した左右のウインカースイッチ62L、62Rと、メインスイッチ61の上方に配置した速度設定つまみ63と、この速度設定つまみ63の右側に配置した前後進スイッチ64F、64Rと、速度設定つまみ63の上方に配置したバッテリ残量メータ65とが備えられている。
【0023】
前部運転操作盤22から車幅方向に、左右の走行レバー66L、66Rが延びている。これらの左右の走行レバー66L、66Rは、車両の走行を指示するものであり、左右の走行レバー66L、66Rのいずれかを図下方(図矢印c方向)に引き寄せたときに、小型電動車両(図1、符号10)が走行を開始するようにした。
【0024】
後部操舵ハンドル31は、車幅方向中央に備えられる後部運転操作盤32と、この後部運転操作盤32から車幅方向左右に延び、略U字状に形成され内側が開放されるように配置され運転者が握ることができる左右の握り部35L、35Rと、これらの左右の握り部35L、35Rの前端部に各々揺動自在に係合される後係合部52L、52Rとを備えている。
【0025】
連結部材51L、51Rの後端部に、各々、ボールジョイント71、72が備えられ、これらのボールジョイント71、72に係合するジョイント係合部75、76が左右の後係合部52L、52Rに係合する係合部材53L、53Rに形成される。同様に、連結部材51L、51Rの前端部に、各々、ボールジョイント73、74が備えられ、これらのボールジョイント73、74に係合するジョイント係合部75、76が連結部26L、26Rに形成される。
【0026】
連結部材51L、51Rの前端部は、ボールジョイント73、74を介して連結部材51L、51Rの連結部26L、26Rに連結され、連結部材51L、51Rの後端部は、ボールジョイント71、72を介して後係合部52L、52Rへ係合される。このため、ボールジョイントを介在しない場合に較べて、後部操舵ハンドル31を円滑に操舵させることができる。
【0027】
すなわち、連結部材51L、51Rは、前部操舵ハンドル21に対して着脱可能な連結部26L、26Rを有する。
なお、本実施例では、連結部材は、左右に設けられているが、左右いずれか一方に設けることは差し支えない。
【0028】
後部運転操作盤32は、前進・後進スイッチ84F、84Rと、速度設定つまみ83と、車幅方向に延びている左右の走行レバー86L、86Rとを備えている。
前部運転操作盤22と後部運転操作盤32とは、制御部87に連結され、前部運転操作盤22と後部運転操作盤32のいずれか一方を操作したときに、車両10が作動するようにした。すなわち、前部運転操作盤22と後部運転操作盤32とは、連動するように構成されている。
【0029】
図4に示すように、後部操舵ハンドル31を含む後部操舵ハンドルユニット30は、ステー24に着脱可能に設けられると共に、前部操舵ハンドル21の握り部25L、25Rに着脱可能に設けられている。すなわち、後部操舵ハンドルユニット30は、車両の前部及び後部に着脱可能に設けられる。後部操舵ハンドル31は、シート17のシートバック18にステー24を介して着脱可能に取付けられる。
【0030】
なお、本実施例では、後部操舵ハンドルは、シートバックに着脱可能に取付けられるが、シートバックの近傍の部位を構成する、例えば、リヤカウル44に着脱可能に取付けることは差し支えない。
【0031】
次に、後部操舵ハンドルの着脱部について説明する。
図5に示すように、ステーの上面24aに、後部操舵ハンドル31の支持棒56を支持可能な支持孔57が開けられると共に、この支持孔57の近傍に後部操舵ハンドル31のプラグ58が接続可能なプラグ穴59が開けられる。
【0032】
次に、連結部の詳細について説明する。
図6に示すように、連結部26Lは、握り部25Lに係合されるフック部91Lと、握り部25Lに係合したフック部91Lが握り部25Lから外れないように保持する保持部92Lとを有する。保持部92Lは、ばね93で図矢印f方向に付勢される。フック部91Lを握り部25Lから外すときに、保持部92と一体の解除レバー90を回動軸となるピン89を軸として図矢印g方向に回動させ、取外し可能とした。なお、右の連結部26Rの構造は、上述した左の連結部26Lの構造と同一構造であり説明を省略する。
【0033】
このように、後部操舵ハンドルユニット30の前端に連結部26L、26Rを設けたので、前部操舵ハンドルの握り部25L、25Rに後部操舵ハンドルユニット30を着脱容易にすることができる。結果、後部操舵ハンドルユニット30の着脱に係る操作性を高めることができる。
【0034】
以上に述べた後部操舵ハンドルユニットの作用を次に述べる。
図7(a)に、前部操舵ハンドル21が中立位置にあることが示される。
図7(b)に、後部操舵ハンドル31が左に舵を切られたときに、連結部材51L、51Rを介して前部操舵ハンドル21も左に舵を切られ、小型電動車両10が左旋回可能な状態にされることが示される。
【0035】
図7(c)に示すように、後部操舵ハンドル31が右に舵を切られたときに、連結部材51L、51Rを介して前部操舵ハンドル21も右に舵を切られ、小型電動車両10が右旋回可能な状態にされることが示される。すなわち、後部操舵ハンドル31の操舵操作に連動して、前部操舵ハンドル21が動くようにした。
【0036】
次に、後部操舵ハンドルユニットにより、小型電動車両10に乗車することなくその後方から小型電動車両10を操作して自動車100の荷室100aに載せる作業について説明する。
【0037】
図8に示すように、小型電動車両10に、後部操舵ハンドルユニット30が備えられている。このような後部操舵ハンドルユニット30を操作しながら、小型電動車両10を自動車97の荷室98に移動させる。このような構成により、小型電動車両10のシート17に着座することなく、後から歩行した状態で小型電動車両10を操作することができる。
【0038】
従って、本発明によれば、荷室97の幅が限られる等により、自動車97の荷室98に載せた小型電動車両10から運転者の乗降が困難な場合であっても、地面と荷室98の間に渡した傾斜板100を通り、運転者Dは自ら荷室98へ小型電動車両10を容易に載せ、あるいは、荷室98から容易に降ろすことができる。
【0039】
図5及び図6にて、後部操舵ハンドル31は着脱可能である。加えて、後部操舵ハンドル31と前部操舵ハンドル21とを連結する連結部材51L、51Rも前部操舵ハンドル21に対し着脱可能である。このため、後部操舵ハンドル31と連結部材51L、51Rは、必要なとき以外、小型電動車両10から取り外し、自動車の荷室98にしまっておけばよい。このため、小型電動車両10を走行させる場合であっても、従来通り、好適な走行が可能になる。自動車97への積み下ろし時以外は、後部操舵ハンドル31を取り外すことで小型電動車両10が重くなる心配はない。
【0040】
図3にて、後部操舵ハンドル31に、後部運転操作盤32が備えられ、この後部運転操作盤32に前進・後進スイッチ84F、84Rと、速度設定つまみ83とが備えられる。前部運転操作パネル(前部運転操作盤22)と後部運転操作パネル(後部運転操作盤32)は、各々、制御部87に接続され、この制御部87で連動操作可能にした。
【0041】
運転者は、前部運転操作盤22に近づくことなく、後部運転操作盤32を操作して小型電動車両の前進・後進及び速度が設定できる。結果、後から歩行しながら操作する場合における小型電動車両10の利便性が高まる。
その後、小型電動車両10を荷室98に載せた後、運転者は自動車97の運転席へ移動し、自ら自動車97を運転して、所定の目的地へ自由に移動することができる。
【0042】
尚、本発明は、実施の形態では小型電動車両に適用したが、一般の車両に適用することは差し支えない。
また、連結部材の個数は、任意の個数で良く、1個であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、小型電動車両に好適である。
【符号の説明】
【0044】
10…小型電動車両、17…シート、21…前部操舵ハンドル、26L、26R…左右の連結部、30…後部操舵ハンドルユニット、31…後部操舵ハンドル、32…後部運転操作盤、51L、51R…左右の連結部材、83…速度設定つまみ、84F、84R…前進・後進スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者が着座するシートの前側に前部操舵ハンドルを備えた小型電動車両を後から歩行しながら操舵する後部操舵ハンドルユニットが、前記シートのシートバック又はその近傍の部位に着脱可能な後部操舵ハンドルと、
この後部操舵ハンドルによって前記前部操舵ハンドルを操舵することが可能に、この前部操舵ハンドルと前記後部操舵ハンドルとを連結するための連結部材とによって構成され、
この連結部材は、前記前部操舵ハンドルに対して着脱可能な連結部を有していることを特徴とする後部操舵ハンドルユニット。
【請求項2】
前記後部操舵ハンドルは、後部運転操作盤を備え、この後部運転操作盤は、前進・後進スイッチと、速度設定つまみとを備えていることを特徴とする請求項1記載の後部操舵ハンドルユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−106917(P2013−106917A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256674(P2011−256674)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)