説明

徐放性製剤の製造法

【発明の詳細な説明】
本発明は薬効を有する成分と、生体内分解性で毒性の少ない物質から選ばれた1種または2種以上の混合物からなる徐法性製剤の製造方法に関するものである。
最近薬物療法において、薬物を病巣部に効率よく作用させて含作用を抑えるため、病巣部に埋没させて薬物を徐々に放出させる種々の徐放性製剤の研究開発が行なわれている。なかでも、コラーゲンやゼラチンという生体内分解性を有し、かつ、生体内埋め込み可能な担体を用いた徐放性製剤、特にファイバースコープ鉗子針あるいは留置針により投与可能な針状または棒状の形をしたミニペレット(径0.5〜1.5mm、長さ5〜15mm程度)の製剤が臨床上有用な製剤として期待されている(例えば特開昭60−126217)。
しかしながら、コラーゲンやゼラチンは後述する如く、ミニペレット状にするには製法上障害となる種々の性質を有しており、薬物が全体に均一に分布し、かつ重量および寸法等が全体に一様なミニペレットを製造するには多くの制約がある。例えば、薬物を含有した混合液を押し出し成形するには、均質である程度の粘度を有する混合液を調製しなければならないが、コラーゲンやゼラチンに混入する薬物が、適当な無機塩水溶液に溶解または懸濁されたタンパク室製剤である場合には、この溶液または懸濁液のpHや塩濃度の影響でコラーゲンが繊維状となり、これらの混合物を均質な溶液状とすることができないことがある。更に、押し出し成形したものを単に室温で風乾するだけでは、表面が先に乾燥して形がいびつになり、望んだ均一なペレットを得ることができない。このため、従来は薬効成分とコラーゲンの低濃度の混合液をスプレードライまたは凍結乾燥した後、粉砕した微粒子を型に入れて圧縮成形するか、あるいは予め型に入れてから凍結乾燥し、圧縮成形する方法が行なわれてきた。その結果、この従来法で作製されたミニペレットは、もろい上に薬効成分放出の持続時間が比較的短いという欠点があった。この様に、従来はコラーゲンまたはゼラチンを用いて長期持続型の徐法性製剤を得ることは困難であった。
本発明者らはこの点に関し鋭意検討した結果、コラーゲンおよび/またはゼラチンに、水あるいは水と親水性有機溶媒の混液を混合して均質な高濃度の混合液を調製し、これを徐々に脱溶媒すれば、重量および寸法が全体に一様なミニペレットが得られることを見い出した。本発明は、かかる知見に基づき完成されたものである。
即ち本発明は、薬効成分(薬物)、コラーゲンおよび/またはゼラチン、および要すれば添加されることもある製剤用担体と、水または水と親水性有機溶媒の混液を混合してコラーゲンおよび/またはゼラチンについて高濃度の均質な混合液を調製し、次いでこの混合液を成形し、得られた成形体から徐々に脱溶媒することを特徴とする徐放性製剤の製造方法を提供するものである。
本明細書中、コラーゲンおよび/またはゼラチンについて高濃度の混合液とは、混合液中にコラーゲンおよび/またはゼラチンを10〜40、好ましくは20〜30w/w%の割合で含有しているものをいう。この様な混合液を調製するには、以下のいずれかの方法をとることができる。
イ)pH5以下の酸性条件下で、混合液の塩濃度を繊維化濃度以下にする。この様な条件化では、コラーゲンおよび/またはゼラチンの濃度が高くなってもこれらが繊維状となることはなく、均質な混合液が得られる。
ロ)サクシニル化またはメチル化などの化学的修飾を施したコラーゲンおよび/またはゼラチンを使用する。この方法は、薬物の安定性の面から、混合液のpHを調節する必要がある場合に有効である。
ハ)混合液にグルコースを添加する。グルコースの添加により、コラーゲンおよび/またはゼラチンの溶解性が上昇するので、混合液がほぼ中性の場合に特に有効な方法である。
本発明において使用するコラーゲンは動物の結合組織の主たる蛋白質であり、抗原性の少ない蛋白質として既に手術糸等に繁用されている安全な物質である。本発明に於いては、安全性を高める目的でコラーゲンの主たる抗原性部位であるテロペプチドを除き、抗原性を極めて低くしたアテロコラーゲンを用いてもよい。更に、本発明方法に於いてはこれらを化学修飾したサクシニル化コラーゲンまたはメチル化コラーゲン等をも使用し得ることは既述した通りである。一方、ゼラチンはコラーゲンを熱変性させたものであり、医療上全く安全な物質である。ゼラチンについても、コラーゲンと同様の化学的修飾が可能である。本発明に於いては、コラーゲンおよびゼラチン、あるいはこれらの上記の誘導体をそれぞれ単独あるいは適当な割合に配合して使用することができる。本明細書においては、コラーゲンまたはその誘導体、ゼラチンまたはその誘導体のそれぞれ単独、またはそれらの混合物を、便宜上、「コラーゲンおよび/またはゼラチン」という用語で表すこととする。尚コラーゲン、ゼラチン、およびそれらの誘導体は全て市販のものを入手することができる。
本発明は、薬物をコラーゲンおよび/またはゼラチンの様な生体内分解性担体中に包括した徐放性製剤の製造方法に関するものであり、その特徴とするところはコラーゲンおよび/またはゼラチンについて高濃度の混合液を調製すること、およびこの混合液に徐々に脱溶媒することに存するので、薬物の種類については特に限定はない。しかしながら本発明の製造方法は、従来持続性注射剤とすることが難しかった水溶性薬物、例えばプロスタグランジン、プロスタサイクリン、各種生体ホルモン、テスパミン、インターフェロン、インターロイキン、腫瘍壊子因子等、あるいはアドリアマイシンのような水にやや難溶性であっても微量で有効なものに特に有用である。その他、一般的医療品である各種抗生物質、化学療法剤、生物学的製剤、老化防止剤、成長ホルモン、抗炎症剤等も好適な応用例として挙げられる。
本発明の製造方法は、工程中で加熱溶融等の加工処理を行なわない極めて緩和な条件で行なわれるので、一般的に熱に不安定な薬物の徐放性製剤を製造するのに特に好適である。熱に不安定な薬物としては、例えば高分子薬物ではペプタイド、蛋白質、糖蛋白質、多糖類等が挙げられる。特に適するのは微量で活性が強く長時間持続的に投与することが望ましい高分子薬物であり、例えば成長促進作用、骨代謝関連作用、血栓溶解作用、免疫調節作用等を有する薬物が挙げられる。さらにその具体的な例を以下に示す。
成長促進作用を有する薬物としては、例えば成長ホルモン(GH)、成長ホルモン放出因子(GRF)またはソマトメジン(SM)が挙げられる。GRFはGH放出活性を示すペプタイドであり、アミノ酸数が44、40、37または29からなる数種類のペプタイドそれぞれについて活性が認められているが、本発明に用いる場合はいずれでもよく、またこれらの混合物でもよい。SMはソマトメジングループとして認められているものであり、SM−A、SM−B、SM−CおよびIGF(インスリン様成長因子)−IとIGF−IIのほかMSA(マルチプリケーションスティミュレイティングアクティビティー)などが挙げられる。さらにSM−CがIGF−Iと同一物質であるという報告もあるが、本発明に用いる物質としてはいずれでもよく、またこれらの混合物でもよい。骨代謝関連作用を有する薬物としては、例えばカルシトニンが挙げられる。また血栓溶解作用を有する薬物としては、例えば組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)が挙げられる。免疫調節作用を有する薬物としては、例えばインターフェロン(IFN)、インターロイキン(IL)、コロニー刺激因子(CSF)、マクロファージ活性化因子(MAF)、マクロファージ遊走阻止因子(MIF)が挙げられる。なお、ここで言うインターフェロンとは、α、β、γその他のいずれのインターフェロンでもよく、またそれらの組み合わせでもよいことはもちろんである。同様にインターロイキンはIL−1、IL−2あるいはIL−3その他のいずれでもよく、コロニー刺激因子は、multi−CSF(多能性CSF)、GM−CSF(顆粒球−単球マクロファージCSF)、G−CSF(顆粒球−CSF)またはM−CSF(単球マクロファージCSF)その他のいずれのCSFでもよく、またこれらの混合物でもよい。MAFおよびMIFについても、今後の研究により精製、分離が期待される各サブクラスは、それぞれ同様の分子量をもつ糖蛋白質または蛋白質であると予想され、本発明の適用によりいずれも徐放化が可能であると考えられる。また本発明に用いるペプタイド、蛋白質および糖蛋白質等は、その製法によらず生体からの抽出物質、人工合成物質また遺伝子組み換え法によって得られたもののいずれでもよい。
本発明方法で使用される親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒、アセトン等のケトン系溶媒等があげられる。本発明においてはこのような親水性有機溶媒と水との混合溶媒を用いることができるが、混合溶媒中に占める有機溶媒の割合は通常70重量%以下とする。
本発明を実施するには、まず薬物を含有するコラーゲンおよび/またはゼラチンの均質な高濃度溶液をつくる。すなわち、例えば薬物を含む溶液とコラーゲンおよび/またはゼラチン溶液をできる限り泡のたたないように均一に混合撹拌し、必要に応じて低温で濃縮するか、あるいは場合によりスプレードライまたは凍結乾燥する。次いでこれに少量の注射用蒸留水を加えて膨潤させる。膨潤時間は約0.1〜48時間であり、温度は任意でよいが冷蔵庫内で膨潤させるのが好ましい。膨潤させた後、pH5以下になるまで酸、例えば塩酸を加えてコラーゲンおよび/またはゼラチンを溶解し、乳鉢等を用いて十分に練合する。練合する時間は約0.1〜12時間であり、温度は任意でよいが室温でも十分である。
以上の説明は、薬物が溶液または懸濁液の形で取り扱われている場合の調製法であるが、薬物が粉末である場合、あるいは添加すべき薬物の溶液または懸濁液が極く少量である場合は、上記の方法に代え、コラーゲンおよび/またはゼラチンの粉末を少量の蒸留水で膨潤させたのち酸、例えば塩酸を加えて溶解し、これに薬物を加えて乳鉢で練合してもよい。この際、加える塩酸の量はコラーゲンおよび/またはゼラチン1gに対して1N−塩酸で0.5〜0.8mlで十分である。このようにして最終的にコラーゲンおよび/またはゼラチンの濃度が10〜40w/w%、より好ましくは20〜30w/w%になるような均質で高濃度の混合液を調製する。
上に述べた調製に於いて、コラーゲンおよび/またはゼラチンの繊維化を防ぐために前記のイ)、ロ)およびハ)のいずれかの方法をとる。
即ち、可能な場合は混合液の塩濃度を繊維化濃度以下にする。薬物が粉末の場合は、この条件を満たすことは容易である。ここで言う塩とは、通常、等張化剤、緩衝剤、安定化剤等として薬物に含まれる塩であり、例えば塩化ナトリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。本発明に於いて、「繊維化濃度」とは、アテロコラーゲン粉末1gを少量の蒸留水で膨潤させたのち、塩酸を加えて溶解し、これに上記塩溶液を加えて乳鉢でよく練合する時、アテロコラーゲンが繊維状とならない混合液の上限の塩濃度を意味する。この繊維化濃度は薬物から混入する塩の種類、アテロコラーゲン濃度、pHによってそれぞれ求められる値であり、例えば塩化ナトリウムの場合はアテロコラーゲン濃度20w/w%、pH3.0のとき0.17モルである。
次に、塩濃度を繊維化濃度以下にすることが不可能な場合は、薬物を含むコラーゲンおよび/またはゼロチン溶液を膨潤させ、次いで酸性にした後、グルコースを0.1〜2モル/■となる様に加えて乳鉢で練合する。その後、アンモニア水または水酸化ナトリウム水溶液などを加えてpHを中性に上げ、次いで必要に応じ緩衝液を加え、乳鉢で練合することによって均質な溶液状とすることができる。例えば20w/w%アテロコラーゲンに1.0モルのグルコースを混合すれば、0.75モルのNaClを混合しても均質な溶液状となる。この場合必ずしも酸性で練合する必要はないが、予め酸性で練合したのち、混合液を中性にした方が均質な溶液状にしやすい。また加える順序についても任意であり、特に限定はない。ここで使用する緩衝液の成分としては、通常塩濃度を上げる物質、例えば塩化ナトリウム、リン酸塩等のほか尿素等が用いられる。
上記の方法にかえ、コラーゲンおよび/またはゼラチンの代わりに化学修飾したコラーゲンおよび/またはゼラチンを使用してもよい。例えばサクシニル化アテロコラーゲン20w/w%溶液には2モル以上のNaClを混合しても均質な溶液状とすることができる。
このようにして得られた均質で高濃度な混合液を、一定の口径を有するシリンジ等に入れ遠心脱泡した後押し出し成形し、徐々に脱溶媒する。シリンジの口径は任意であるが、目的とするミニペレットの大きさによって決められる。例えば直径1mmのミニペレットを得たいならば約2mmの口径を有するシリンジから押し出せばよい。また遠心脱泡は5,000〜15,000Gで10〜60分間、20〜35℃の温度で行えばよい。
ミニペレットから徐々に脱溶媒する方法としては以下の方法が優れている。
(A)相対湿度50〜80%の環境下、ミニペレットを24〜72時間室温または冷所に放置することにより風乾する。この操作はデシケーター中で行うのが好ましい。
(B)親水性有機溶媒の比率が漸次高くなっていく一連の水−親水性有機溶媒混液にミニペレットを一定時間づつ浸漬していくことにより、ミニペレット中の水を親水性溶媒で置き換え、最後に親水性有機溶媒を風乾して除去する。
本明細書に於いて、「徐々に脱溶媒する」の「徐々に」とは、成形時の形を維持したまま脱溶媒できる状態をいう。具体的には、たとえば(A)の場合には相対湿度が5%以下であったり、あるいは成形品の表面近くでかなりの空気の流れがあると、乾燥速度が速くなり、表面だけが先に乾燥して形がいびつになり、望んだ均一な形が得られないので、たとえば乾燥速度を1mg/mm2/24時間以下にすることをいう。しかしながら、相対湿度が80%以上になると乾燥速度が遅くなり過ぎて、十分に乾燥できなくなるので好ましくない。この様にして徐々に脱溶媒した後であれば、必要に応じ乾燥空気中、例えばシリカゲル入りデシケーター内で更に乾燥することもできる。また実験室で小スケールで行なう場合は成形体をペトリ皿に入れ、フタをして室温に放置して乾燥させても目的は達せられる。(B)の場合には、たとえば50%、70%、80%、90%、95%、100%と順次に高濃度にした含水親水性有機様媒に浸漬することにより水を親水性有機溶媒で置換し、最後に親水性有機溶媒を風乾等により除去する。(B)の場合の親水性有機溶媒としてはメタノール、エタノール等のアルコール系溶媒、アセトン等のケトン系溶媒等、水と自由に混和するものであればよい。この親水性有機溶媒は、先の混合工程に使用する溶媒が水と親水性有機溶媒との混合溶媒であるときは、その親水性有機溶媒と同一であることが望ましい。
このようにして、成形品から徐々に脱溶媒することにより、薬物が全体に均一に分布しており、かつ重量および寸法等が全体に一様なミニペレットを得ることができる。
上記の方法で得られたペレットは必要に応じてアンモニアガス雰囲気中に入れたり、アンモニアまたはリン酸二ナトリウムの入ったエタノール中に浸漬することにより中和することができる。この様にして処理したミニペレットの徐放速度などを更に調節するために、ペレット中のコラーゲンおよび/またはゼラチンに架橋を入れたり、また薬物の性質によっては、薬物をコラーゲンおよび/またはゼラチンに直接または橋かけ剤で共有結合またはイオン結合させることもできる。架橋は、例えばホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、グルタールアルデヒドなどのアルデヒド類あるいはポリエポキシ類の水溶液、またはヘキサメチレンジイソシアネートなどのジイソシアネート類のアルコール溶液中にペレットを浸漬するか、あるいはこれらの架橋剤の蒸気が充満している雰囲気中にペレットを置くことで達成することができる。薬物とコラーゲンおよび/またはゼラチンとを結合させる場合も、上気のアルデヒド類、ポリエポキシ類またはジイソシアネート類を橋かけ剤として使用し、上と同様の方法で処理すればよい。これらの処理法は、当業者にはよく知られており、本発明方法を特徴づけるものではない。
以上、手術を伴わずに生体内に簡便に投与することが可能な針状または棒状の形をしたミニペレットの製法について述べたが、本発明によって得られる製剤の形状は球状、半球状、円柱状、チューブ状、ボタン状、シート状など任意であり、使用する部位に適合した形に成形し皮下投与、生体内埋め込みまたは体腔内挿入などの方法で投与することができる。さらにこれらを液体窒素等により冷却下粉砕してマイクロビーズ状となし、注射用溶媒に懸濁して持続性の懸濁型注射剤とすることもできる。
本発明の製造方法に於いては、薬学上許容される安定化剤、防腐剤、無痛化剤など、および成形性や徐放性を調節するための添加剤などの製剤用担体を必要に応じて加えることができることはいうまでもない。
次に本発明を実験例および実施例によって、より詳細に説明するが、これらの例はいずれも本発明を限定するものではない。
実施例1アテロコラーゲン2gに、脱塩したα型インターフェロン(20MU/ml)を含む水溶液5mlを加え、冷蔵庫内で20時間膨潤させる。これに1N−HCl1.6mlと蒸留水を加えて全量を10gとし、乳鉢で十分に溶解練合し、均質な混合液とする。これを10mlのディスポーザブルのシリンジに入れ、10,000Gで30分間遠心脱泡する。このシリンジに内径2mmのノズルを付けて押し出し、出てくるコラーゲンの速度に合わせてシリンジを動かし、直線状に丸溝を切ったアクリル板の溝の上に押し出した。これを湿度65%に保ったデシケーターに入れ24時間乾燥した。得られた乾燥品をアンモニアガス雰囲気中に入れて中和し、風乾した後、適当な長さに切断することにより1本当たり0.1MUのインターフェロンを含む直径1mm±2%の均一な針状ペレットを得た。
実施例2実施例1の脱泡した混合液を直径1.7mmの球形の割型に入れる。実施例1と同様にして乾燥した後、成形品を型から取り出し、0.02MNa2HPO4・50%エタノール溶液に浸漬して中和する。50、70、80、90、次いで95%エタノールに順次浸漬し、最後に100%エタノールに入れて十分平衡にしてから取り出し、風乾によりエタノールを除く。この様にして直径1mm±2%、重さ0.75mg±10%の均一な球状ペレットを得た。
実施例3アテロコラーゲンを熱変性して得られたゼラチンの30w/w%水溶液(pH3.5)とアテロコラーゲンの30w/w%水溶液(pH3.5)を2:8の割合で練合し、シリンジにつめて遠心脱泡した後直径1.5mmの球形の割型に入れる。ここまでの操作を33〜35℃で行う。30℃以下に冷却した後、成形体を型から取り出し、0.1%アンモニア水に浸漬して中和した後十分に水洗し、実施例2と同様にしてエタノールで脱水する。最後に0.1%ヘキサメチレンジイソシアネートエタノール溶液に12時間浸漬して架橋した後、エタノールで洗浄し、次いで風乾することにより直径1mmの均一な球状ペレットを得た。
実施例4アテロコラーゲンの2w/w%水溶液(pH3.5)100gと成長ホルモン放出因子(GRF)(20mg/ml)を含む水溶液5mlをできる限り泡の立たないように均一に混合撹拌し、凍結乾燥した後少量の蒸留水を加えて膨潤させ、蒸溜水を加えて全量を10gとし、乳鉢で十分に練合し、均質な混合液とする。これを実施例1と同様に成形処理することにより均一なミニペレットを得た。
実施例5サクシニル化アテロコラーゲン25w/w%水溶液にグルコースを0.5Mとなるように混合し、さらにNaClを1.9Mとなるように添加した(pH7.2)。これを実施例1と同様に成形処理し均一なミニペレットを得た。
実施例6アテロコラーゲン20gに少量の蒸留水を加えて膨潤させたのち、これに1N−HCl16ml、グルコース9g、α型インターフェロン(1MU/ml)を含む食塩水溶液(0.15MのNaClを含む)1■を加えて撹拌し、混合溶解する。これを減圧濃縮して100mlとする。これをよく混練し、エクストゥルーダーにより内径2.0mmのノズルから押し出し、それに同調した板の上に押し出した。温度20℃、湿度60%の恒温恒湿で24時間乾燥させることにより、均質な直径1mmのミニペレットを得た。
実施例7アテロコラーゲンの2w/w%水溶液(pH3.5)50gとマウスGM−CSF(1×107U/ml)を含む0.1%ヒト血清アルブミン溶液1mlをできる限り泡の立たないように均一に混合撹拌し、凍結乾燥した後少量の蒸留水を加えて膨潤させ、蒸留水を加えて全量を5gとし、乳鉢で十分に練合し、均質な混合液とする。これを5mlのディスポーザブルのシリンジに入れ、10000Gで30分間遠心脱泡する。このシリンジに内径2mmのノズルを付けて押し出し、出てくるコラーゲンの速度に合わせてシリンジを動かし、直線状に丸溝を切ったアクリル板の溝の上に押し出した。これを湿度75%に保ったデシケーターに入れ、冷蔵庫内で72時間乾燥した。得られた乾燥品を更にシリカゲル入りデシケーター内で24時間乾燥した後、適当な長さに切断することにより均一なミニペレットを得た。
実施例8アテロコラーゲンの2w/w%水溶液(pH3.5)5gとIGF−I(4mg/ml)を含む水溶液5mlをできる限り泡の立たないように均一に混合撹拌し、凍結乾燥した後、少量の蒸留水を加えて膨潤させ、蒸留水を加えて全量を0.5gとし、乳鉢で十分に練合し、均質な混合液とする。これを1mlのディスポーザブルのシリンジに入れ、実施例7と同様に成形処理することにより均一なミニペレットを得た。
実験例1実施例1で作った針状型ミニペレットと、対照としてα−インターフェロンの水性注射剤をそれぞれマウスの皮下に投与し、血中濃度の時間的推移を放射免疫分析法により観察した。マウスはそれぞれ3匹ずつ用い、投与量はマウス1匹当たりそれぞれ0.1MUになるように投与した。結果を第1図に示す。第1図に於いて縦軸はα−インターフェロンの血中濃度(3匹の平均、単位:ユニット/ml)を、横軸は時間(単位:時間)を表す。○は本発明のコラーゲン針状ペレット(本発明)を、●はα−インターフェロンの水性注射剤(対照)を表す。第1図から明らかな様に、本発明のミニペレットは長時間の持続化傾向を示し、投与後3時間から72時間までほぼ一定の血中濃度が維持されるという持続性製剤の理想的な放出挙動を示した。
【図面の簡単な説明】
第1図はマウス皮下投与後の血中濃度の推移を示したものであり、本発明のコラーゲン針状ペレットと、対照としてのα−インターフェロン水性注射剤を比較したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】(イ)薬効成分、(ロ)コラーゲンおよび/またはゼラチン、および(ハ)水または水と親水性有機溶媒の混液、を混合してコラーゲンおよび/またはゼラチンについて高濃度の均質な混合液を調製し、次いでこの混合液を成形し、得られた成形体から徐々に脱溶媒することを特徴とする徐放性製剤の製造法。
【請求項2】コラーゲンおよび/またはゼラチンについて高濃度の均質な混合液の調製を、pH5以下の酸性条件下、混合液の塩濃度を繊維化濃度以下に保持することにより達成する特許請求の範囲第(1)項に記載の方法。
【請求項3】コラーゲンおよび/またはゼラチンについて高濃度の均質な混合液の調製を、化学修飾を施したコラーゲンおよび/またはゼラチンを使用することにより達成する特許請求の範囲第(1)項に記載の方法。
【請求項4】コラーゲンおよび/またはゼラチンについて高濃度の均質な混合物の調製を、混合液にグルコースを添加することによって達成する特許請求の範囲第(1)項に記載の方法。
【請求項5】混合液のコラーゲンおよび/またはゼラチン濃度が10〜40w/w%であるように調製された特許請求の範囲第(1)項記載の方法。
【請求項6】成形体から徐々に脱溶媒する方法が、相対湿度50〜80%の環境下で成形体を風乾することからなる特許請求の範囲第(1)項記載の方法。
【請求項7】成形体から徐々に脱溶媒する方法が、成形体を漸次含水率が減少していく複数の親水性有機溶媒に順次浸漬していくことにより成形体中の水を親水性有機溶媒で漸次置換し、最後に成形体中の親水性有機溶媒を風乾することからなる特許請求の範囲第(1)項記載の方法。

【第1図】
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【公告番号】特公平7−59522
【公告日】平成7年(1995)6月28日
【国際特許分類】
【出願番号】特願昭61−291298
【出願日】昭和61年(1986)12月5日
【公開番号】特開昭62−228028
【公開日】昭和62年(1987)10月6日
【出願人】(999999999)住友製薬株式会社
【出願人】(999999999)株式会社高研