復水器及びこれを備えるタービンプラント
【課題】復水を微細化するとともに、該復水と蒸気とを接触を促進させて、復水の温度を維持可能な復水器及びこれを備えるタービンプラントを提供する。
【解決手段】復水器は、上下方向に波型に延在することで互いに隔離された複数の熱交換空間31,32を画成するとともに、多数の孔部33が形成された波型板10を有し、孔部33を通過する復水が漸次熱交換空間31,32を経由する復水器であって、波型板10における孔部33の少なくとも上流側で、波型板10に沿って流下する液膜を乱す障害部41を有することを特徴とする。
【解決手段】復水器は、上下方向に波型に延在することで互いに隔離された複数の熱交換空間31,32を画成するとともに、多数の孔部33が形成された波型板10を有し、孔部33を通過する復水が漸次熱交換空間31,32を経由する復水器であって、波型板10における孔部33の少なくとも上流側で、波型板10に沿って流下する液膜を乱す障害部41を有することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、復水器及びこれを備えるタービンプラントに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、蒸気タービンプラント等では、蒸気タービンを駆動した蒸気は、該蒸気タービンから排出されて、復水器(下記特許文献1参照)に導入される。この復水器では、導入された蒸気を、別途復水器に導入された冷却水と熱交換して凝縮する。
そして、凝縮されて復水は、加熱器を介して加熱され、ボイラに供給され、蒸気として蒸気タービンの駆動源となる。
【0003】
このような復水器では熱効率を向上させるとともに熱交換の際に用いられる冷却水の水量を抑制すべく、加熱器に導入する復水を高い温度で維持することが望ましい。
【0004】
そこで、特許文献1に記載の復水器では、復水を落下させて再熱する再熱部分の高さを十分に確保することで、復水と蒸気との接触時間を確保し、復水を高温状態に維持している。
また、低圧側復水器は、ホットウエルにたまった復水を通過させる多孔板を備え、該多孔板として、復水の落下する上下方向に順次屈曲して波板状に形成されたものが採用されている。この構成では、復水は孔部分を通過すると微細化されるため、蒸気と効果的に接触され、結果として復水を高温状態で維持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−148876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述したように再熱部分の高さを十分に確保した場合、接触効率を上げるためには、復水器の高さを高くせざるを得ないため、蒸気タービンプラントが大規模になり、コストが嵩むという問題点がある。
【0007】
また、波板状の多孔板を有する復水器では、ホットウエルから落下する復水が、孔部と干渉して液柱状のまま該孔部の上面を通過してしまい、微細化されにくいという実情がある。この結果、復水が蒸気と効率良く接触しないため、熱効率が悪いという問題点がある。
【0008】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、復水の温度を維持可能な復水器及びこれを備えるタービンプラントを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る復水器は、上下方向に波型に延在することで互いに隔離された複数の熱交換空間を画成するとともに、多数の孔部が形成された波型板を有し、前記孔部を通過する復水が漸次前記熱交換空間を経由する復水器であって、
前記波型板における前記孔部の少なくとも上流側で、前記波型板に沿って流下する液膜を乱す障害部を有することを特徴とする。
【0010】
このような復水器では、波型板を通過する復水の液膜を、障害部により乱すことができるため、該復水を微細化することができる。そして、微細化された復水は、孔部を貫通方向に通過することにより熱交換空間を経由し、該熱交換空間に存する蒸気と接触することができる。よって、復水が微細化されることにより該復水と蒸気との接触面積を大きくすることができるため、これら復水と蒸気との熱交換が促進される結果、復水の温度を維持可能とすることができる。
【0011】
また、本発明に係る復水器は、前記障害部は、前記波型板の表面から突出した凸部であることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、復水を凸部に通過させることにより、復水と凸部の突起とが衝突し、該復水を確実に微細化することができる。よって、復水と蒸気とを効率よく接触させることができるため、復水の温度を確実に維持することができる。
【0013】
さらに、本発明に係る復水器は、前記凸部は、前記孔部の外縁に沿って突出していることを特徴とする。
【0014】
これにより、復水を孔部の外縁に沿って突出している凸部と衝突させて、該復水を確実に微細化することができる。よって、微細化した復水をそのまま孔部に誘導して貫通方向に通過させて蒸気と接触させることができるため、復水の温度をより確実に維持することができる。
【0015】
さらに、本発明に係る復水器は、前記障害部は、前記波型板の孔部に連続して形成された突出部であってもよい。
【0016】
これにより、復水を突出部に通過させることにより、復水と突出部の端部とが衝突し、該復水を確実に微細化することができる。よって、復水と蒸気とを効率よく接触できるため、復水の温度を確実に維持することができる。
【0017】
また、本発明に係る復水器は、前記波型板の最上部における前記復水が滴下される領域が前記復水を膜状に広げる平滑領域とされていてもよい。
【0018】
この構成によれば、平滑領域で復水を膜状に広げることができ、該復水を下流側に設けられた孔部の貫通方向に通過させることで微細化することができる。よって、復水の温度を確実に維持することができる。
【0019】
また、本発明に係るタービンプラントは、上記のうちのいずれか一に記載の復水器を備えることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、上記のうちのいずれか一に記載の復水器を備えるため、復水を微細化するとともに、該復水と蒸気とを接触を促進させて、復水の温度を維持可能な復水器にすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る復水器及びこれを備えるタービンプラントによれば、復水を微細化するとともに、該復水と蒸気とを接触を促進させて、復水の温度を維持可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る多段圧復水器の概略構成図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係る多段圧復水器の低圧側復水器の波型板の斜視図である。
【図3】本発明の第一実施形態に係る多段圧復水器の低圧側復水器の波型板の孔部の拡大図である。
【図4】図3のS−S断面図である。
【図5】本発明の第一実施形態の変形例に係る多段圧復水器の低圧側復水器の波型板の孔部の拡大図である。
【図6】図5のT−T断面図である。
【図7】本発明の第二実施形態に係る多段圧復水器の低圧側復水器の波型板の拡大図である。
【図8】図7のP−P断面図である。
【図9】本発明の第三実施形態に係る多段圧復水器の低圧側復水器の波型板の孔部の拡大図である。
【図10】図9のU−U断面図である。
【図11】本発明の第四実施形態に係る多段圧復水器の低圧側復水器の波型板の孔部の拡大図である。
【図12】図9のV−V断面図である。
【図13】本発明の第五実施形態に係る多段圧復水器の低圧側復水器の波型板の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第一実施形態)
以下、図面を参照し、本発明の第一実施形態に係る多段圧復水器について説明する。
まず、多段圧復水器を備える蒸気タービンプラントについて説明する。
蒸気タービンプラント(不図示。以下同じ。)は、蒸気タービン(不図示。以下同じ。)と、多段圧復水器と、ボイラ(不図示。以下同じ。)とを備える。
蒸気タービンプラントでは、蒸気タービンで膨張仕事を終えた蒸気は、蒸気タービンから多段圧復水器へ導入される。次に、多段圧復水器では、蒸気は、別途導入された冷却水と熱交換され、凝縮されて復水とされる。そして、該凝縮された復水は、給水加熱器(不図示。)により加熱された後、ボイラへと供給される。該ボイラに供給された復水は、蒸気とされて蒸気タービンに戻され、該蒸気タービンの駆動源として利用される。
【0024】
以下、多段圧復水器の実施形態について説明する。
図1に示すように、多段圧復水器1は、圧力の異なる複数の室を有し、高圧側の室である高圧側復水器22と、低圧側の室である低圧側復水器2と、高圧側復水器22と低圧側復水器2とを上部で連結する蒸気ダクト11及び下部で連結するバイパス連結管12とを備えている。
【0025】
高圧側復水器22は、高圧側の室である高圧側胴23と、該高圧側胴23に設けられた高圧側冷却管群25とを有している。
【0026】
低圧側復水器2は、低圧側の室である低圧側胴3と、該低圧側胴3内に設けられた低圧側冷却管群5とを有している。
低圧側胴3は、該低圧側胴3を上下方向に分割する圧力隔壁4と、該圧力隔壁4の下方に設けられた再熱室6とを有している。
圧力隔壁4は、孔である隔壁孔部8が多数設けられた多孔板である。該隔壁孔部8は、上方から下方へ復水の落下を可能としている。
再熱室6は、孔が形成された波型板10と、該波型板10の下方に設けられたトレイ9とを有している。
【0027】
波型板10は、図2に示すように、板状の複数の板片15Aが連結されて波型に構成されている。すなわち、第一の板片15Aが下方に向かうにしたがって、上下方向(Y方向)と直交する一方側(X1側)に向かうように配設され、第一の板片15Aの下部15Pに第二の板片15Aの上部15Qが連結され、第二の板片15Aは下方に向かうにしたがって上下方向(Y方向)と直交する他方側(X2側)に向かうように配設されている。このようにして、隣接する板片15Aが互いに一方側(X1側)と他方側(X2側)の逆方向に向かうように連結されて、交互に山谷を形成している。そして、板片15Aを挟んで再熱室6(図1参照)の熱交換空間31,32・・・が画成されている。
また、板片15Aは、板厚方向に貫通した複数の貫通孔33と、該板片15Aに沿って流下する復水の液膜を乱す障害部41とを有している。
また、波型板10は、圧力隔壁4(図1参照)の下方に、互いに間隔を有して複数設けられている。
ここで、波型板10は、例えばSUS304により厚さ3mmで形成され、隣接する波型板10と約5mmの間隔を有して、約100枚設けられている。
【0028】
複数の貫通孔33は、図2から図4に示すように、略円形であり、板片15Aの全体にわたって互いに間隔を有して形成されている。ここで、貫通孔33は復水を板厚方向に挿通可能として、該挿通した復水は、漸次熱交換空間31,32・・・を経由していく。
【0029】
障害部41は、本実施形態では貫通孔33の外縁に沿って突出した凸部42で構成されている。換言すると、凸部42は、貫通孔33の外縁に沿って環状に突出して形成されている。
なお、凸部42を形成する方法としては、例えば貫通孔33の外縁にフランジを成形するバーリング加工が採用される。
また、波板部の表面から凸部42の上端までの高さは、数mm程度の長さである。
【0030】
図1に示すように、トレイ9は、上面が波板状に形成され、波型板10の下方に設けられている。また、トレイ9は、波型板10から落水する復水を捕集するとともに、オーバーフローしてさらに下方に落水する構造となっている。該トレイ9の底面は、低圧側胴3の底面から、例えば約200mmの距離で設けられている。
【0031】
低圧側冷却管群5は、低圧側胴3内における圧力隔壁4の上方に設けられ、冷却水を導入可能としている。また、低圧側冷却管群5に導入された冷却水は、低圧側復水器2に導かれた低圧側蒸気と熱交換される。
【0032】
次に、このように構成された多段圧復水器1により、蒸気が凝縮されて復水とされる流れについて説明する。
まず、低圧側冷却管群5に冷却水として、例えば海水が供給される。該供給された海水は、図示しない連結管から高圧側復水器22の高圧側冷却管群25に導出される。該導出された海水は、図示しない排出管から排出される。
【0033】
一方、低圧側復水器2の上部には、蒸気タービンで仕事を終え、排気された低圧側蒸気が導入される。該導入された低圧側蒸気は、各管内に海水が導入された低圧側冷却管群5により冷却されることにより凝縮して、例えば約33℃の低圧側復水とされる。このようにして、凝縮した低圧側復水は、低圧側冷却管群5より落水し、圧力隔壁4の上方に貯留された復水だまり7を形成する。
ここで、高圧側復水器22内と低圧側復水器2内との圧力差が、例えば18mmHgの場合には、復水だまり7の水面と低圧側冷却管群5の最下段との距離は、所定の距離である約30cmとされる。
【0034】
次に、復水だまり7に貯留された低圧側復水は、圧力隔壁4に設けられた多数の隔壁孔部8から落水する。該落水した低圧側復水は、圧力隔壁4の下方に設けられた複数の波型板10に落水する。
【0035】
ここで、波型板10に落水した低圧側復水Tは、該波型板10の表面に形成された凸部42と衝突しその液膜を乱されて、貫通孔33から落水する。すなわち、低圧側復水Tは、凸部42の突起と衝突し微細化されて、そのまま該凸部42の内方にある貫通孔33から誘導されて該貫通孔33の貫通方向に落水する。このようにして、低圧側復水Tは、波型板10を挟んで上側の熱交換空間31から、下側の熱交換空間32へと移動することを順次繰り返す。
【0036】
他方、高圧側復水器22内には、蒸気タービンで仕事を終え、排気された高圧側蒸気が導入される。該導入された高圧側蒸気は、各管内に海水が導入された高圧側冷却管群25により冷却されることにより凝縮して、高圧側復水とされて、高圧側復水器22内に貯留される。
【0037】
また、高圧側復水器22内の高圧側蒸気は、蒸気ダクト11から低圧側復水器2の再熱室6に導入される。該再熱室6に導入された高圧側蒸気は、圧力隔壁4から波型板10の表面に沿って落水する低圧側復水Tと気液接触する。そして、接触した低圧側復水Tは、波型板10の下端からトレイ9に捕集される。
【0038】
トレイ9に捕集された低圧側復水Tは、トレイ9からオーバーフローして落水し、再熱室6の下部に貯留される。該再熱室6の下部に貯留された低圧側復水Tは、再熱室6の下部に設けられた合流部(不図示。以下同じ。)に導入される。
一方、高圧側復水は、バイパス連結管12を経由して、低圧側復水Tと合流し、図示しない復水ポンプに導入される。ここで、高圧側復水は、再熱室6に貯留される低圧側復水Tと合流部で温度を維持したまま合流されるため、高温のまま復水ポンプへと導出される。
【0039】
このように構成された多段圧復水器1及びこれを備えている蒸気タービンプラントでは、低圧側復水Tを波型板10の上流側から下流側に通過させることにより、該低圧側復水Tと波型板10に設けられた凸部42の突起とが衝突する。これにより、低圧側復水Tの表面張力を低下させて該低圧側復水Tを微細化することができ、微細化された低圧側復水Tを貫通孔33から落水することができる。このようにして、低圧側復水Tを、熱交換空間31,32・・・を上流側から下流側に向かって移動させ、該熱交換空間31,32・・・に存する高圧側蒸気と気液接触させることができる。よって、低圧側復水Tは微細化されることにより低圧側復水Tの表面積が増加し、高圧側蒸気との接触面積が大きくなるため、接触効率が向上し、低圧側復水Tを高温状態で維持することが可能となり、その結果、熱効率を向上させること可能となる。
【0040】
また、凸部42は貫通孔33の外縁に形成されているため、微細化した低圧側復水Tを確実に貫通孔33から落水させることができる。よって、低圧側復水Tを高圧側蒸気と、確実に接触させることができる。
【0041】
さらに、低圧側復水Tと高圧側蒸気とを効率良く接触させることが可能であるため、従来のように多段圧復水器1及び蒸気タービンプラントを大規模にする必要がない。よって、多段圧復水器1及び蒸気タービンプラントに費やすコスト、製造(建設)時間を削減することができる。
【0042】
また、多段圧復水器1の全体的な大きさを変更する必要がないため、蒸気タービンプラントの全体配置や大きさ等を変更することなく、波型板の交換のみで実現することができる。
【0043】
(第一実施形態の変形例)
なお、図5及び図6に示すように、多段圧復水器100の障害部41として、波型板110の貫通孔33の上流側の外縁に沿って突出した円弧状の凸部43であってもよい。
このように構成された凸部43であっても、低圧側復水Tを貫通孔33の上流側の凸部43の突起と衝突させることにより、該低圧側復水Tを微細化させることができる。よって、高圧側蒸気との接触面積が大きくなるため、低圧側復水Tと蒸気との熱効率が促進される結果、低圧側復水Tを高温状態で維持することが可能となる。
【0044】
(第二実施形態)
以下、本発明の第二実施形態に係る多段圧復水器200について、図7及び図8を用いて説明する。
この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0045】
第一実施形態における多段圧復水器1では、障害部41は、貫通孔33の外縁に沿って突出している凸部42で構成されていたのに対して、本実施形態の多段圧復水器200では、障害部41は、貫通孔33の上流側に設けられた凸部44で構成されている。
【0046】
凸部44は、波型板210の表面から突出するように形成され、板厚方向の断面及び波型板210の表面に沿う方向の断面が略矩形である。また、凸部44は、貫通孔33の上流側に複数設けられ、波型板10の幅方向及び上流側から下流側に向かう方向に、隣接する凸部44と間隔を有して複数設けられている。
【0047】
このように構成された多段圧復水器200及びこれを備えている蒸気タービンプラントでは、低圧側復水を、複数の凸部44に通過させることにより、低圧側復水と凸部44の突起とが衝突する。これによって、低圧側復水を確実に微細化することができるため、該低圧側復水を高温で維持することができ、熱効率を向上させること可能となる。
【0048】
(第三実施形態)
以下、本発明の第三実施形態に係る多段圧復水器300について、図9及び図10を用いて説明する。
この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0049】
第一実施形態における多段圧復水器1では、障害部41は波型板10の表面から突出した凸部42で構成されていたのに対して、本実施形態の多段圧復水器300では、障害部41は波型板310の貫通孔33に連続して形成された突出部45で構成されている。
【0050】
突出部45は、波型板310の貫通孔33の上流側の外縁から該貫通孔33の径方向内側に向かって突出するように形成されている。
【0051】
このように構成された多段圧復水器300及びこれを備えている蒸気タービンプラントでは、低圧側復水を、複数の突出部45に通過させることにより、低圧側復水と突出部45の端部とが衝突する。これによって、低圧側復水を確実に微細化することができるため、該低圧側復水を高温で維持することができ、熱効率を向上させること可能となる。
【0052】
(第四実施形態)
以下、本発明の第四実施形態に係る多段圧復水器300について、図11及び図12を用いて説明する。
この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0053】
第三実施形態における多段圧復水器300では、障害部41は波型板310の貫通孔33の外縁から径方向内側に向かって突出した突出部45で構成されているのに対して、本実施形態の多段圧復水器400では、障害部41は波型板410の貫通孔33の外縁から径方向外側に向かって突出した突出部46で構成されている。
【0054】
突出部46は、波型板410の貫通孔33の上流側の外縁から該貫通孔33の径方向外側に向かって突出するように形成されている。
【0055】
このように構成された多段圧復水器400及びこれを備えている蒸気タービンプラントでは、低圧側復水を、複数の突出部46に通過させることにより、低圧側復水と突出部46の端部とが衝突する。これによって、低圧側復水を確実に微細化することができるため、該低圧側復水を高温で維持することができ、熱効率を向上させること可能となる。
【0056】
(第五実施形態)
以下、本発明の第五実施形態に係る多段圧復水器500について、図13を用いて説明する。
この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0057】
第一実施形態における多段圧復水器1では、波型板510はその全体にわたって貫通孔33が形成された板片15Aで構成されていたのに対して、本実施形態の多段圧復水器500では、波型板10は、板片15A及び平滑領域16を有する最上部板片15Bで構成されている。
【0058】
波型板510は、最上部に設けられた最上部板片15Bと、該最上部板片15Bの下部に連続して複数設けられた板片15Aとを有している。最上部板片15Bは下方に向かうにしたがってX1側に向かうように配設され、該最上部板片15Bの下部と第一の板片15Aの上部とは連結され、第一の板片15Aは下方に向かうにしたがってX2側に向かうように配設されている。そして、第一の板片15Aの下部と第二の板片15Aの上部とは連結され、第二の板片15Aは下方に向かうにしたがってX1側に向かうように配設されるようにして、交互に山谷を形成している。
【0059】
最上部板片15Bは、貫通孔33が形成されていない平滑領域16と、貫通孔33が多数形成された多孔領域17とを有している。
平滑領域16は、低圧側復水Tが滴下する上部に設けられ、貫通孔33が形成されていない平滑な領域である。
多孔領域17は、平滑領域16の下部に設けられ、貫通孔33が間隔を有して複数設けられている。
【0060】
このように構成された多段圧復水器500及びこれを備えている蒸気タービンプラントでは、隔壁孔部8から落水する低圧側復水Tを、平滑領域16により膜状に広げることができる。そして、該膜状の低圧側復水Tを平滑領域16の下部に設けられた多孔領域17の複数の貫通孔33でその表面張力を低下させて、微細化することができる。よって、微細化された低圧側復水Tは高圧側蒸気と効率よく接触することができるため、低圧側復水Tを高温で維持することができ、熱効率を向上させること可能となる。
【0061】
なお、上記に示す寸法等の数値は一例であり、当該数字に限定されるものではない。
また、上述した実施の形態において示した組立手順、あるいは各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0062】
例えば、第二実施形態に係る凸部44として、波型板210の幅方向にわたって連続して形成された形状としてもよい。
【0063】
さらに、多段圧復水器1,100,200,300,400,500として高圧側復水器22と低圧側復水器2とを有する2段の復水器を用いて説明したが、2段に限定されず、例えば、高圧側復水器、中圧側復水器、低圧側復水器の3段を有する復水器であってよい。この場合には、中圧側復水器及び低圧側復水器に設けられた圧力隔壁の下方に波型板10,110,210,310,410,510を配設することとなる。
【符号の説明】
【0064】
1,100,200,300,400,500…多段圧復水器
10,110,210,310,410,510…波型板
16…平滑領域
31,32…熱交換空間
33…貫通孔(孔部)
41…障害部
42,43,44…凸部
45,46…突出部
T…低圧側復水
【技術分野】
【0001】
本発明は、復水器及びこれを備えるタービンプラントに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、蒸気タービンプラント等では、蒸気タービンを駆動した蒸気は、該蒸気タービンから排出されて、復水器(下記特許文献1参照)に導入される。この復水器では、導入された蒸気を、別途復水器に導入された冷却水と熱交換して凝縮する。
そして、凝縮されて復水は、加熱器を介して加熱され、ボイラに供給され、蒸気として蒸気タービンの駆動源となる。
【0003】
このような復水器では熱効率を向上させるとともに熱交換の際に用いられる冷却水の水量を抑制すべく、加熱器に導入する復水を高い温度で維持することが望ましい。
【0004】
そこで、特許文献1に記載の復水器では、復水を落下させて再熱する再熱部分の高さを十分に確保することで、復水と蒸気との接触時間を確保し、復水を高温状態に維持している。
また、低圧側復水器は、ホットウエルにたまった復水を通過させる多孔板を備え、該多孔板として、復水の落下する上下方向に順次屈曲して波板状に形成されたものが採用されている。この構成では、復水は孔部分を通過すると微細化されるため、蒸気と効果的に接触され、結果として復水を高温状態で維持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−148876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述したように再熱部分の高さを十分に確保した場合、接触効率を上げるためには、復水器の高さを高くせざるを得ないため、蒸気タービンプラントが大規模になり、コストが嵩むという問題点がある。
【0007】
また、波板状の多孔板を有する復水器では、ホットウエルから落下する復水が、孔部と干渉して液柱状のまま該孔部の上面を通過してしまい、微細化されにくいという実情がある。この結果、復水が蒸気と効率良く接触しないため、熱効率が悪いという問題点がある。
【0008】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、復水の温度を維持可能な復水器及びこれを備えるタービンプラントを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る復水器は、上下方向に波型に延在することで互いに隔離された複数の熱交換空間を画成するとともに、多数の孔部が形成された波型板を有し、前記孔部を通過する復水が漸次前記熱交換空間を経由する復水器であって、
前記波型板における前記孔部の少なくとも上流側で、前記波型板に沿って流下する液膜を乱す障害部を有することを特徴とする。
【0010】
このような復水器では、波型板を通過する復水の液膜を、障害部により乱すことができるため、該復水を微細化することができる。そして、微細化された復水は、孔部を貫通方向に通過することにより熱交換空間を経由し、該熱交換空間に存する蒸気と接触することができる。よって、復水が微細化されることにより該復水と蒸気との接触面積を大きくすることができるため、これら復水と蒸気との熱交換が促進される結果、復水の温度を維持可能とすることができる。
【0011】
また、本発明に係る復水器は、前記障害部は、前記波型板の表面から突出した凸部であることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、復水を凸部に通過させることにより、復水と凸部の突起とが衝突し、該復水を確実に微細化することができる。よって、復水と蒸気とを効率よく接触させることができるため、復水の温度を確実に維持することができる。
【0013】
さらに、本発明に係る復水器は、前記凸部は、前記孔部の外縁に沿って突出していることを特徴とする。
【0014】
これにより、復水を孔部の外縁に沿って突出している凸部と衝突させて、該復水を確実に微細化することができる。よって、微細化した復水をそのまま孔部に誘導して貫通方向に通過させて蒸気と接触させることができるため、復水の温度をより確実に維持することができる。
【0015】
さらに、本発明に係る復水器は、前記障害部は、前記波型板の孔部に連続して形成された突出部であってもよい。
【0016】
これにより、復水を突出部に通過させることにより、復水と突出部の端部とが衝突し、該復水を確実に微細化することができる。よって、復水と蒸気とを効率よく接触できるため、復水の温度を確実に維持することができる。
【0017】
また、本発明に係る復水器は、前記波型板の最上部における前記復水が滴下される領域が前記復水を膜状に広げる平滑領域とされていてもよい。
【0018】
この構成によれば、平滑領域で復水を膜状に広げることができ、該復水を下流側に設けられた孔部の貫通方向に通過させることで微細化することができる。よって、復水の温度を確実に維持することができる。
【0019】
また、本発明に係るタービンプラントは、上記のうちのいずれか一に記載の復水器を備えることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、上記のうちのいずれか一に記載の復水器を備えるため、復水を微細化するとともに、該復水と蒸気とを接触を促進させて、復水の温度を維持可能な復水器にすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る復水器及びこれを備えるタービンプラントによれば、復水を微細化するとともに、該復水と蒸気とを接触を促進させて、復水の温度を維持可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る多段圧復水器の概略構成図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係る多段圧復水器の低圧側復水器の波型板の斜視図である。
【図3】本発明の第一実施形態に係る多段圧復水器の低圧側復水器の波型板の孔部の拡大図である。
【図4】図3のS−S断面図である。
【図5】本発明の第一実施形態の変形例に係る多段圧復水器の低圧側復水器の波型板の孔部の拡大図である。
【図6】図5のT−T断面図である。
【図7】本発明の第二実施形態に係る多段圧復水器の低圧側復水器の波型板の拡大図である。
【図8】図7のP−P断面図である。
【図9】本発明の第三実施形態に係る多段圧復水器の低圧側復水器の波型板の孔部の拡大図である。
【図10】図9のU−U断面図である。
【図11】本発明の第四実施形態に係る多段圧復水器の低圧側復水器の波型板の孔部の拡大図である。
【図12】図9のV−V断面図である。
【図13】本発明の第五実施形態に係る多段圧復水器の低圧側復水器の波型板の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第一実施形態)
以下、図面を参照し、本発明の第一実施形態に係る多段圧復水器について説明する。
まず、多段圧復水器を備える蒸気タービンプラントについて説明する。
蒸気タービンプラント(不図示。以下同じ。)は、蒸気タービン(不図示。以下同じ。)と、多段圧復水器と、ボイラ(不図示。以下同じ。)とを備える。
蒸気タービンプラントでは、蒸気タービンで膨張仕事を終えた蒸気は、蒸気タービンから多段圧復水器へ導入される。次に、多段圧復水器では、蒸気は、別途導入された冷却水と熱交換され、凝縮されて復水とされる。そして、該凝縮された復水は、給水加熱器(不図示。)により加熱された後、ボイラへと供給される。該ボイラに供給された復水は、蒸気とされて蒸気タービンに戻され、該蒸気タービンの駆動源として利用される。
【0024】
以下、多段圧復水器の実施形態について説明する。
図1に示すように、多段圧復水器1は、圧力の異なる複数の室を有し、高圧側の室である高圧側復水器22と、低圧側の室である低圧側復水器2と、高圧側復水器22と低圧側復水器2とを上部で連結する蒸気ダクト11及び下部で連結するバイパス連結管12とを備えている。
【0025】
高圧側復水器22は、高圧側の室である高圧側胴23と、該高圧側胴23に設けられた高圧側冷却管群25とを有している。
【0026】
低圧側復水器2は、低圧側の室である低圧側胴3と、該低圧側胴3内に設けられた低圧側冷却管群5とを有している。
低圧側胴3は、該低圧側胴3を上下方向に分割する圧力隔壁4と、該圧力隔壁4の下方に設けられた再熱室6とを有している。
圧力隔壁4は、孔である隔壁孔部8が多数設けられた多孔板である。該隔壁孔部8は、上方から下方へ復水の落下を可能としている。
再熱室6は、孔が形成された波型板10と、該波型板10の下方に設けられたトレイ9とを有している。
【0027】
波型板10は、図2に示すように、板状の複数の板片15Aが連結されて波型に構成されている。すなわち、第一の板片15Aが下方に向かうにしたがって、上下方向(Y方向)と直交する一方側(X1側)に向かうように配設され、第一の板片15Aの下部15Pに第二の板片15Aの上部15Qが連結され、第二の板片15Aは下方に向かうにしたがって上下方向(Y方向)と直交する他方側(X2側)に向かうように配設されている。このようにして、隣接する板片15Aが互いに一方側(X1側)と他方側(X2側)の逆方向に向かうように連結されて、交互に山谷を形成している。そして、板片15Aを挟んで再熱室6(図1参照)の熱交換空間31,32・・・が画成されている。
また、板片15Aは、板厚方向に貫通した複数の貫通孔33と、該板片15Aに沿って流下する復水の液膜を乱す障害部41とを有している。
また、波型板10は、圧力隔壁4(図1参照)の下方に、互いに間隔を有して複数設けられている。
ここで、波型板10は、例えばSUS304により厚さ3mmで形成され、隣接する波型板10と約5mmの間隔を有して、約100枚設けられている。
【0028】
複数の貫通孔33は、図2から図4に示すように、略円形であり、板片15Aの全体にわたって互いに間隔を有して形成されている。ここで、貫通孔33は復水を板厚方向に挿通可能として、該挿通した復水は、漸次熱交換空間31,32・・・を経由していく。
【0029】
障害部41は、本実施形態では貫通孔33の外縁に沿って突出した凸部42で構成されている。換言すると、凸部42は、貫通孔33の外縁に沿って環状に突出して形成されている。
なお、凸部42を形成する方法としては、例えば貫通孔33の外縁にフランジを成形するバーリング加工が採用される。
また、波板部の表面から凸部42の上端までの高さは、数mm程度の長さである。
【0030】
図1に示すように、トレイ9は、上面が波板状に形成され、波型板10の下方に設けられている。また、トレイ9は、波型板10から落水する復水を捕集するとともに、オーバーフローしてさらに下方に落水する構造となっている。該トレイ9の底面は、低圧側胴3の底面から、例えば約200mmの距離で設けられている。
【0031】
低圧側冷却管群5は、低圧側胴3内における圧力隔壁4の上方に設けられ、冷却水を導入可能としている。また、低圧側冷却管群5に導入された冷却水は、低圧側復水器2に導かれた低圧側蒸気と熱交換される。
【0032】
次に、このように構成された多段圧復水器1により、蒸気が凝縮されて復水とされる流れについて説明する。
まず、低圧側冷却管群5に冷却水として、例えば海水が供給される。該供給された海水は、図示しない連結管から高圧側復水器22の高圧側冷却管群25に導出される。該導出された海水は、図示しない排出管から排出される。
【0033】
一方、低圧側復水器2の上部には、蒸気タービンで仕事を終え、排気された低圧側蒸気が導入される。該導入された低圧側蒸気は、各管内に海水が導入された低圧側冷却管群5により冷却されることにより凝縮して、例えば約33℃の低圧側復水とされる。このようにして、凝縮した低圧側復水は、低圧側冷却管群5より落水し、圧力隔壁4の上方に貯留された復水だまり7を形成する。
ここで、高圧側復水器22内と低圧側復水器2内との圧力差が、例えば18mmHgの場合には、復水だまり7の水面と低圧側冷却管群5の最下段との距離は、所定の距離である約30cmとされる。
【0034】
次に、復水だまり7に貯留された低圧側復水は、圧力隔壁4に設けられた多数の隔壁孔部8から落水する。該落水した低圧側復水は、圧力隔壁4の下方に設けられた複数の波型板10に落水する。
【0035】
ここで、波型板10に落水した低圧側復水Tは、該波型板10の表面に形成された凸部42と衝突しその液膜を乱されて、貫通孔33から落水する。すなわち、低圧側復水Tは、凸部42の突起と衝突し微細化されて、そのまま該凸部42の内方にある貫通孔33から誘導されて該貫通孔33の貫通方向に落水する。このようにして、低圧側復水Tは、波型板10を挟んで上側の熱交換空間31から、下側の熱交換空間32へと移動することを順次繰り返す。
【0036】
他方、高圧側復水器22内には、蒸気タービンで仕事を終え、排気された高圧側蒸気が導入される。該導入された高圧側蒸気は、各管内に海水が導入された高圧側冷却管群25により冷却されることにより凝縮して、高圧側復水とされて、高圧側復水器22内に貯留される。
【0037】
また、高圧側復水器22内の高圧側蒸気は、蒸気ダクト11から低圧側復水器2の再熱室6に導入される。該再熱室6に導入された高圧側蒸気は、圧力隔壁4から波型板10の表面に沿って落水する低圧側復水Tと気液接触する。そして、接触した低圧側復水Tは、波型板10の下端からトレイ9に捕集される。
【0038】
トレイ9に捕集された低圧側復水Tは、トレイ9からオーバーフローして落水し、再熱室6の下部に貯留される。該再熱室6の下部に貯留された低圧側復水Tは、再熱室6の下部に設けられた合流部(不図示。以下同じ。)に導入される。
一方、高圧側復水は、バイパス連結管12を経由して、低圧側復水Tと合流し、図示しない復水ポンプに導入される。ここで、高圧側復水は、再熱室6に貯留される低圧側復水Tと合流部で温度を維持したまま合流されるため、高温のまま復水ポンプへと導出される。
【0039】
このように構成された多段圧復水器1及びこれを備えている蒸気タービンプラントでは、低圧側復水Tを波型板10の上流側から下流側に通過させることにより、該低圧側復水Tと波型板10に設けられた凸部42の突起とが衝突する。これにより、低圧側復水Tの表面張力を低下させて該低圧側復水Tを微細化することができ、微細化された低圧側復水Tを貫通孔33から落水することができる。このようにして、低圧側復水Tを、熱交換空間31,32・・・を上流側から下流側に向かって移動させ、該熱交換空間31,32・・・に存する高圧側蒸気と気液接触させることができる。よって、低圧側復水Tは微細化されることにより低圧側復水Tの表面積が増加し、高圧側蒸気との接触面積が大きくなるため、接触効率が向上し、低圧側復水Tを高温状態で維持することが可能となり、その結果、熱効率を向上させること可能となる。
【0040】
また、凸部42は貫通孔33の外縁に形成されているため、微細化した低圧側復水Tを確実に貫通孔33から落水させることができる。よって、低圧側復水Tを高圧側蒸気と、確実に接触させることができる。
【0041】
さらに、低圧側復水Tと高圧側蒸気とを効率良く接触させることが可能であるため、従来のように多段圧復水器1及び蒸気タービンプラントを大規模にする必要がない。よって、多段圧復水器1及び蒸気タービンプラントに費やすコスト、製造(建設)時間を削減することができる。
【0042】
また、多段圧復水器1の全体的な大きさを変更する必要がないため、蒸気タービンプラントの全体配置や大きさ等を変更することなく、波型板の交換のみで実現することができる。
【0043】
(第一実施形態の変形例)
なお、図5及び図6に示すように、多段圧復水器100の障害部41として、波型板110の貫通孔33の上流側の外縁に沿って突出した円弧状の凸部43であってもよい。
このように構成された凸部43であっても、低圧側復水Tを貫通孔33の上流側の凸部43の突起と衝突させることにより、該低圧側復水Tを微細化させることができる。よって、高圧側蒸気との接触面積が大きくなるため、低圧側復水Tと蒸気との熱効率が促進される結果、低圧側復水Tを高温状態で維持することが可能となる。
【0044】
(第二実施形態)
以下、本発明の第二実施形態に係る多段圧復水器200について、図7及び図8を用いて説明する。
この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0045】
第一実施形態における多段圧復水器1では、障害部41は、貫通孔33の外縁に沿って突出している凸部42で構成されていたのに対して、本実施形態の多段圧復水器200では、障害部41は、貫通孔33の上流側に設けられた凸部44で構成されている。
【0046】
凸部44は、波型板210の表面から突出するように形成され、板厚方向の断面及び波型板210の表面に沿う方向の断面が略矩形である。また、凸部44は、貫通孔33の上流側に複数設けられ、波型板10の幅方向及び上流側から下流側に向かう方向に、隣接する凸部44と間隔を有して複数設けられている。
【0047】
このように構成された多段圧復水器200及びこれを備えている蒸気タービンプラントでは、低圧側復水を、複数の凸部44に通過させることにより、低圧側復水と凸部44の突起とが衝突する。これによって、低圧側復水を確実に微細化することができるため、該低圧側復水を高温で維持することができ、熱効率を向上させること可能となる。
【0048】
(第三実施形態)
以下、本発明の第三実施形態に係る多段圧復水器300について、図9及び図10を用いて説明する。
この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0049】
第一実施形態における多段圧復水器1では、障害部41は波型板10の表面から突出した凸部42で構成されていたのに対して、本実施形態の多段圧復水器300では、障害部41は波型板310の貫通孔33に連続して形成された突出部45で構成されている。
【0050】
突出部45は、波型板310の貫通孔33の上流側の外縁から該貫通孔33の径方向内側に向かって突出するように形成されている。
【0051】
このように構成された多段圧復水器300及びこれを備えている蒸気タービンプラントでは、低圧側復水を、複数の突出部45に通過させることにより、低圧側復水と突出部45の端部とが衝突する。これによって、低圧側復水を確実に微細化することができるため、該低圧側復水を高温で維持することができ、熱効率を向上させること可能となる。
【0052】
(第四実施形態)
以下、本発明の第四実施形態に係る多段圧復水器300について、図11及び図12を用いて説明する。
この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0053】
第三実施形態における多段圧復水器300では、障害部41は波型板310の貫通孔33の外縁から径方向内側に向かって突出した突出部45で構成されているのに対して、本実施形態の多段圧復水器400では、障害部41は波型板410の貫通孔33の外縁から径方向外側に向かって突出した突出部46で構成されている。
【0054】
突出部46は、波型板410の貫通孔33の上流側の外縁から該貫通孔33の径方向外側に向かって突出するように形成されている。
【0055】
このように構成された多段圧復水器400及びこれを備えている蒸気タービンプラントでは、低圧側復水を、複数の突出部46に通過させることにより、低圧側復水と突出部46の端部とが衝突する。これによって、低圧側復水を確実に微細化することができるため、該低圧側復水を高温で維持することができ、熱効率を向上させること可能となる。
【0056】
(第五実施形態)
以下、本発明の第五実施形態に係る多段圧復水器500について、図13を用いて説明する。
この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0057】
第一実施形態における多段圧復水器1では、波型板510はその全体にわたって貫通孔33が形成された板片15Aで構成されていたのに対して、本実施形態の多段圧復水器500では、波型板10は、板片15A及び平滑領域16を有する最上部板片15Bで構成されている。
【0058】
波型板510は、最上部に設けられた最上部板片15Bと、該最上部板片15Bの下部に連続して複数設けられた板片15Aとを有している。最上部板片15Bは下方に向かうにしたがってX1側に向かうように配設され、該最上部板片15Bの下部と第一の板片15Aの上部とは連結され、第一の板片15Aは下方に向かうにしたがってX2側に向かうように配設されている。そして、第一の板片15Aの下部と第二の板片15Aの上部とは連結され、第二の板片15Aは下方に向かうにしたがってX1側に向かうように配設されるようにして、交互に山谷を形成している。
【0059】
最上部板片15Bは、貫通孔33が形成されていない平滑領域16と、貫通孔33が多数形成された多孔領域17とを有している。
平滑領域16は、低圧側復水Tが滴下する上部に設けられ、貫通孔33が形成されていない平滑な領域である。
多孔領域17は、平滑領域16の下部に設けられ、貫通孔33が間隔を有して複数設けられている。
【0060】
このように構成された多段圧復水器500及びこれを備えている蒸気タービンプラントでは、隔壁孔部8から落水する低圧側復水Tを、平滑領域16により膜状に広げることができる。そして、該膜状の低圧側復水Tを平滑領域16の下部に設けられた多孔領域17の複数の貫通孔33でその表面張力を低下させて、微細化することができる。よって、微細化された低圧側復水Tは高圧側蒸気と効率よく接触することができるため、低圧側復水Tを高温で維持することができ、熱効率を向上させること可能となる。
【0061】
なお、上記に示す寸法等の数値は一例であり、当該数字に限定されるものではない。
また、上述した実施の形態において示した組立手順、あるいは各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0062】
例えば、第二実施形態に係る凸部44として、波型板210の幅方向にわたって連続して形成された形状としてもよい。
【0063】
さらに、多段圧復水器1,100,200,300,400,500として高圧側復水器22と低圧側復水器2とを有する2段の復水器を用いて説明したが、2段に限定されず、例えば、高圧側復水器、中圧側復水器、低圧側復水器の3段を有する復水器であってよい。この場合には、中圧側復水器及び低圧側復水器に設けられた圧力隔壁の下方に波型板10,110,210,310,410,510を配設することとなる。
【符号の説明】
【0064】
1,100,200,300,400,500…多段圧復水器
10,110,210,310,410,510…波型板
16…平滑領域
31,32…熱交換空間
33…貫通孔(孔部)
41…障害部
42,43,44…凸部
45,46…突出部
T…低圧側復水
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に波型に延在することで互いに隔離された複数の熱交換空間を画成するとともに、多数の孔部が形成された波型板を有し、前記孔部を通過する復水が漸次前記熱交換空間を経由する復水器であって、
前記波型板における前記孔部の少なくとも上流側で、前記波型板に沿って流下する液膜を乱す障害部を有することを特徴とする復水器。
【請求項2】
前記障害部は、前記波型板の表面から突出した凸部であることを特徴とする請求項1に記載の復水器。
【請求項3】
前記凸部は、前記孔部の外縁に沿って突出していることを特徴とする請求項2に記載の復水器。
【請求項4】
前記障害部は、前記波型板の孔部に連続して形成された突出部であることを特徴とする請求項1に記載の復水器。
【請求項5】
前記波型板の最上部における前記復水が滴下される領域が前記復水を膜状に広げる平滑領域とされていることを特徴とする請求項1に記載の復水器。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の復水器を備えることを特徴とするタービンプラント。
【請求項1】
上下方向に波型に延在することで互いに隔離された複数の熱交換空間を画成するとともに、多数の孔部が形成された波型板を有し、前記孔部を通過する復水が漸次前記熱交換空間を経由する復水器であって、
前記波型板における前記孔部の少なくとも上流側で、前記波型板に沿って流下する液膜を乱す障害部を有することを特徴とする復水器。
【請求項2】
前記障害部は、前記波型板の表面から突出した凸部であることを特徴とする請求項1に記載の復水器。
【請求項3】
前記凸部は、前記孔部の外縁に沿って突出していることを特徴とする請求項2に記載の復水器。
【請求項4】
前記障害部は、前記波型板の孔部に連続して形成された突出部であることを特徴とする請求項1に記載の復水器。
【請求項5】
前記波型板の最上部における前記復水が滴下される領域が前記復水を膜状に広げる平滑領域とされていることを特徴とする請求項1に記載の復水器。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の復水器を備えることを特徴とするタービンプラント。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−87971(P2013−87971A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225876(P2011−225876)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
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