説明

循環及び血行動態補助のための拍動性があり非侵襲性の装置

本発明は、患者の体中の血液量の循環を促進させる、循環補助のための拍動性があり非侵襲性の装置に関し、該装置は、前記患者の体の少なくとも一部分に適用されるように設計された可撓性のある多層構造体であって、前記患者の体に向けた可撓性のある内層、及び剛性のある外層を有する多層構造体と、構造体及び拍動手段からなる組立体に漏れを生じないように、前記多層構造体に接続される拍動手段とを備えることを特徴とし、且つ前記拍動手段が、拍動流体と呼ばれる流体により前記内層と外層の間で拍動を生成するように設計され、前記構造体が前記患者の体の前記部分に配置されたとき、前記拍動のそれぞれが、前記患者の体の前記部分に沿って静脈環流の方向へ漸進的に伝播することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、循環補助のための新規な装置に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、非侵襲性の循環及び血行動態補助装置に関する。
【背景技術】
【0003】
循環系は圧力下にあり、内部が内皮細胞で覆われた閉じた流体回路を備える。内皮は、その生理学的機能、すなわち、一酸化窒素を合成することによる血管緊張、血液凝固、炎症性反応、アテローム性動脈硬化症の抑制、免疫系、血管形成、及びアポプトシスを維持するために不可欠な接線方向の剪断応力を絶えず受ける。
【0004】
内皮機能の何らかの病理学的変化は、時には劇的な結果になりうる器官系の機能不全を生ずることになる。
【0005】
現在、この内皮機能を維持する、又は改善することを求める循環補助システムは存在しない。
【0006】
外科手術中に、心臓の活動を完全に、又は部分的に置き換えるために、又は心臓が停止したとき、若しくは弱くなり過ぎたとき、前記活動を回復させるために使用される心臓補助システムが知られている。このようなシステムは、大部分が侵襲性のシステムであって、患者の体にツールを挿入する必要があり、前記ツールは、次いで、拍動を生成するために使用されるか、或いは患者の血液サンプリングを行い、その血液サンプルを、体外にある大型の機械で処理し、その後、血液を注入して患者の体に戻すことに使用される。あらゆる状況下で、現在のシステムは、専門医により作業を行う必要があるため、高価であり、且つ実施するのが複雑である。さらに、これらのシステムは、医療用サイトなどの専用のサイトで、且つ資格を有する人々の監督下で実施できるに過ぎない。
【0007】
さらに、既存のシステムは複雑な構造を有しており、そのためこのようなシステムを製作するのに費用がかかる。
【0008】
さらに、現在のシステムは、患者の体に対して全体的に、概ね、患者の心臓に対して作用するように働くので、それは、例えば、脚、手、顔などの患者の体の様々な部分に対して作用するのには適していない。
【0009】
従って、現在、非侵襲性のものであり、且つ内皮機能を維持するように、又は前記機能が劣化したときそれを改善するように意図された循環補助システムは存在しない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】C.Stoll他による「Study of 224 cases of oligohydramnios and congenital malformations in a series of 225,669 consecutive births」、Community Genet 1998、1:71〜77
【非特許文献2】Sayed Nour他による「The forgotten driving forces in right heart failure」、Asiatic Ann Cardiovasc.Thorac.Surg.
【非特許文献3】Siobhan Gill、Neil M.Walkerによる「Severe facial edema at high altitude」、Journal of Travel Medicine、第200815巻、2版、130〜132頁、International Society of Travel Medicine
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、上記で述べた欠点を克服することである。
【0012】
本発明の他の目的は、内皮機能を維持するための、又はそれが劣化したときに前記機能を改善するための非侵襲性の循環補助装置を提案することである。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、低価格であり、簡単な構造であり、且つ使用するのが簡単な非侵襲性の循環補助装置を提案することである。
【0014】
本発明の他の目的は、例えば、手、顔、脚、足などの患者の体の任意の部分で使用できる循環及び血行動態補助装置を提案することである。
【0015】
最後に、本発明の他の目的は、心臓補助システムよりもさらに効果のある非侵襲性の循環補助システムを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、患者の体内で、ある量の血液循環を容易にする非侵襲性で、拍動性の循環補助装置によりこれらの目的を達成できるようにする。装置は、
前記患者の体の少なくとも一部に適用するための可撓性のある多層構造体であって、前記患者の体のそばの可撓性のある内層、及びより剛性のある外層を備える多層構造体と、
前記多層構造体に接続された拍動手段であって、構造体に加えて拍動手段を備える組立体に漏れを生じないように接続される拍動手段とを備えることを特徴とし、また
装置は、前記拍動手段が、「拍動」流体と呼ばれる流体により、前記内層と外層の間で拍動を生成するようにされ、前記構造体が前記患者の体の前記部分に配置されたとき、前記拍動のそれぞれが、前記患者の体の前記部分に沿って、静脈環流方向に漸進的に伝播することを特徴とする。
【0017】
本発明の装置は、多層構造体を介して患者の体の一部に拍動を加えることにより、非侵襲的な方法で血液を循環させることを支援する。
【0018】
本発明の装置は、使用するのが簡単であり、多層構造体を体の一部に適用し、次いで拍動手段を使用して体の前記部分に沿って伝播する拍動を生成する必要があるだけである。
【0019】
患者が、本発明の装置を使用するために専用のサイトに行く必要はない。本発明の装置は、家庭で、車中で、歩行中又はランニングしながら、飛行機に乗っているときになど使用することができる。
【0020】
多層構造体は、男性用付属品を備えた下着(又は拍動性の眼帯)などの拍動性の付属品で提供される変更を必要とすることなく、例えば、生殖器若しくは眼などの敏感な部分を除いて体の任意の部分に適用することができる。従って、患者は、例えば、顔、腕、手、足、脚、首など、体の任意の部分に対して、体のその部分に専用の循環補助を達成するように、本発明の装置を適用することができる。本発明の装置は、体の特定の部分に対して、体の前記部分に直接作用することにより、血液循環補助の狙いを定めることが可能になる。
【0021】
本発明の装置はまた、製作するのが容易であり、且つ低い製作コストを有する。
【0022】
理論
循環系における内皮に対する障害をよりよく理解するために、次に、本発明者らにより発見された子供及び成人における流れ及び速度の血行動態理論に基づく血行動態理論を参照して、血管形成−アポプトシスの相互依存性現象を説明する。
【0023】
動脈セグメントにおいては、心臓及び蠕動力は、(心収縮と心拡張の間の)生理学的な圧力差を用いて、拍動的に血流を駆動する。
【0024】
それとは対照的に、静脈及びリンパ管では、血液及びリンパ液は、呼吸運動(横隔膜、肋間筋)、筋肉の循環ポンピング、重力、大気圧、接触受容器、粘性、右心介入(弁、心房、心室、肺動脈圧、静脈容量、心膜)により提供される様々な種類の循環力による駆動下で連続的に流れる。
【0025】
静脈の排液は、このように、心拡張期充満時に右の房室腔に血液を環流させる力によって直接条件付けられる。
【0026】
右心の良好な充満(又は前負荷)は、心臓血管系全体の調和のとれた動作のために不可欠なものである。
【0027】
前負荷を増すことは、右心室の筋肉の酸素添加反応を改善する。これは、それ自体の心筋層の冠状網に対するよりも、より拡張期充満に依存する。これは、それ自体の収縮力の増加を生じさせて、それにより、肺循環で現れる剪断応力を改善する。これらの応力は、肺の内皮に誘起させた一酸化窒素(NO)を排出させた結果として血管抵抗を低下させるが、肺抵抗(又は後負荷)のこの低下は、次いで、心臓の流量全体を改善する。
【0028】
このことは、影響を受けたのが左心室である場合、心筋梗塞の治療に非常に有効なニトロ化合物が、それとは反対に右心室に虚血が生じた場合、特に窒化物の血管拡張作用のため、投与後にこの心室の充満が減少することにより患者を死亡させる危険を生ずる可能性のあることの理由を説明している。
【0029】
他の適切な実例は、ファローの四徴症の病気を持つ子供が自発的に取るアクロバット的な座位である。発作中、肺抵抗が増加するため、子供は青ざめる。その座位を取ることにより、青ざめた子供は、左側の血管抵抗を人為的に増加させ、それにより、心室間伝達(IVC)により、多くの拍動量をそらせて肺動脈回路へと送る効果がある。
【0030】
このように増加した剪断応力は、肺の内皮により多くのNOを生成するように強制し、それにより、直ちに、肺動脈ツリーにおける流れ及び速度を増加させる。
【0031】
一般則として、流体回路における抵抗のどんな増加も、注入ポンプの障害を生ずることになる。そのことは、左側の血管抵抗の増加(後負荷)が、左心室の障害を生じ、前記後負荷を低下させること(左が梗塞の場合の窒化物の血管拡張作用)によってのみ何らかの改善が可能であることの理由を説明する。
【0032】
従って、ファローの発作における右の心臓は、それ自体の後負荷を低減するために、逆説的に、左の後負荷の増加を生ずることになる!それは、それ自体の血行動態を改善するために、一時的に、左の心臓を迷うことなく危険にさらして、その後に限って、再度左の心臓の血行動態を改善することを意味している(表1:肥大した右の心臓)!
【0033】
現在、右心室の障害の場合、従来の治療計画は、
a)静脈内灌流により血液の量を増加させること、及び
b)変時性手段又はペースメーカ(電気的な刺激)により、心拍周波数(心房収縮)を増加させること
である。
【0034】
両方の状況において、それは、非生理学的方法により得られた剪断応力(容積及び速度)を増加するが、副作用がある。
【0035】
【表1】

【0036】
一般に受け入れられる概念とは反対に、我々は、右心が、出産前の生活に始まる左心の発達及び血行動態を支配すると考える。子宮内の生活中に、右心室(RV)は、体の血液量の2/3を受け取るが、静脈及び右心室の壁は、生理学的側路(静脈管、動脈管、卵円孔)が存在するため、全身の動脈と比較して低い再形成のままである。
【0037】
誕生後、また生理学的側路が閉鎖した結果、各心室は、同量の血液を受け取り、同じ頻度で排出される。同一の流動学的条件を受ける場合、右心室は左心室(LV)の心筋量の1/6だけの心筋量を有する。
【0038】
これは、2つの主な要因の結果として説明することができる。
A.心臓性の要因:文献ですでに述べられた特性(右心室腔の球形の形態学、繊維の分布、収縮軸など)に加えて、我々は、右心房の前面の内側、及び心室腔の大部分の内側(中隔及び漏斗部を除外する)を覆う小柱筋により行われる主要な役割を強調する。我々は、5つのゾーンに細分化された右心の我々の新しい分類におけるこの概念の重要性を強調する。
B.心外性の要因:以下で指定される補助的な力の制御下で。
【0039】
特に、我々は、呼吸ポンプが、循環系の生理学的制御に対して直接影響を有していると考える。
【0040】
内皮機能に影響を与える血管外の生理学的な剪断応力
A.心臓−内皮系の「マスタ」である呼吸ポンプ
アコーディオンと同様に、肺の膨張/収縮動作は、肺血管に対して外部の剪断応力を生ずる。その印象的な効果は、誕生した後に開始し、最初の呼吸をすると、直ちに肺抵抗の低下を生じ、側路の閉鎖をもたらすが、その閉鎖は、卵円孔の弁で開始し、次いで、次の数日にわたり、静脈管、及び動脈管と続く。
【0041】
我々の臨床的な経験では、2才未満の子供に対するグレンの手術の失敗は、呼吸ポンプが、胸郭の不十分な発達の結果である必要な静脈排液を行うための剪断応力を十分に送達する容量を有していないことに関連している。
【0042】
B.内皮反応を生ずる外部の拍動性の波の変動/伝播
同様に、悪性腫瘍と良性腫瘍の間の差は、隣接する器官から到来する拍動性の波の伝播に対して保護的な役割を果たす被膜が存在するかしないかに由来することがありうる。これは、甲状腺又は前立腺などのより静的な器官の癌のものと比較して、可動性の器官(胃、肺)の癌、及び脳などの豊富に血管化された器官の腫瘍に対する予後の悪いことを説明することができる。
【0043】
我々は、このことを、内皮機能に関する何らかの外部刺激が血管再生を加速し、従って、腫瘍の成長も加速することにより説明する。
【0044】
他の実例:先天性奇形は、通常、隣接する母親の器官により伝播される拍動性の波から胎児を隔離する羊水が、妊娠初期の数カ月間に減少することと関連付けられている(Centre Hospitalo−Universitaire、ストラスブール、フランス:C.Stoll他による「Study of 224 cases of oligohydramnios and congenital malformations in a series of 225,669 consecutive births」、Community Genet 1998、1:71〜77)。
【0045】
本発明が基づいている原理は、内皮壁に加えられる剪断応力への反応に応じて、右心を5つの形態学的ゾーン(心室量及び血管壁の厚さ)へと細分化するように働く。Sayed Nour他による「The forgotten driving forces in right heart failure」、Asiatic Ann Cardiovasc. Thorac. Surg.(近刊)。
【0046】
これらの5つのゾーンは以下のようになる:
ゾーン1:律動的な力がないためほとんど再形成されない静脈系により表される。このゾーンにおける血液の低圧流れは、補助的な循環力(表1)の影響下にある。
ゾーン2:房室腔により表されるゾーンであり、そこで静脈環流の血流が動きを開始し(速度及び圧力)、それにより再形成を適度に抑える。小柱筋は、ここで、自然のブレーキとして働き、壁に加えられた剪断応力を減衰させ、それにより、左心室(大きな小柱ゾーンを有しない)の厚さの1/6で済ませることを可能にする。このゾーンでは、血行動態は拡張期充満(前負荷)に依存しており、それは、特にその小柱部分で、右心室筋に供給するためには不可欠である。
ゾーン3:これは、中隔間動脈により血管化されて関連付けられた左方向及び右方向に正常な形態を維持する心室間の中隔である。このゾーンの血行動態は、間接的には左心室のものに(一般には、血管化)依存し、また直接的には、肺の後負荷を低下させる(それは、左側の連続した血行動態の改善を生ずる)ために、右側に作用する剪断応力に依存する。
ゾーン4:第1の中隔間動脈から生ずる剪断応力の大きさから得られる非常に大きな再形成量を有する漏斗部により表される。このゾーンにおける血行動態は、従って、剪断応力(容積及び速度)に依存し、且つ第1の中隔間動脈からの余分の圧力に依存する。
ゾーン5:肺動脈ツリーにより表され、ほとんど変わらないゾーンであり、大静脈のものとほとんど同一の、壁の直径−厚さの割合を有する。このゾーンの血行動態は血管抵抗に依存し(低い後負荷)、同様に剪断応力と(ツリーは、大動脈と同じ血液量を受けるとしても、そのコンプライアンスの結果として、その動脈圧力を低下するように管理するので、特に速度と)関連する。
【0047】
補助的な力の障害は、内皮の障害を起こす可能性がある。我々は、現象をさらに理解できるようにするために、上記で示した我々の分類の応用で、いくつかの実例を述べるものとする。
【0048】
これらの補助的な力に強く依存しているゾーン1では、それらに干渉することは、宇宙飛行士及び職業的な潜水夫におけるものとほとんど同一の心臓血管及び循環障害を生ずることが分かる。これらの2つの環境で観察される非常に大きな圧力差にもかかわらず(宇宙飛行士に対する低い圧力、潜水夫に対する非常に高い圧力)、観察される障害は、静脈の排液ポンプの障害と関連付けられる(宇宙における重力の欠如による、また水面下で圧縮されることによる高い静脈容量)。
【0049】
同様のことは、潜水夫におけるシワの早期の発達に、また高い高度における重篤な顔の水腫にも適用される(Siobhan Gill、Neil M.Walkerによる「Severe facial edema at high altitude」、Journal of Travel Medicine、第200815巻、2版、130〜132頁、International Society of Travel Medicine(国際旅行医学会))。
【0050】
これらの極端な条件は別として、眼の周囲における顔の水腫(腫れたまぶた)は、長い夜の睡眠後の朝においてより明確になり(時には頭痛と関連する)、活動が行われると次第に消えて行く。
【0051】
このリンパ液の滞留は、顔の静脈環流に対する重力の低下の影響を示しており、有毒な物質(炎症性症候群、遊離基、海綿状循環の速度低下)の蓄積を生ずる。
【0052】
しかし、子供では、成人よりも大きい血管化及び顔の領域にかかわらず、長期間の睡眠中の重力の影響は最小のままである。
【0053】
第3度の熱傷を有する人々に適用される「9の法則」として知られたParklandの公式は、体の残りの部分と比較した、頭部の体面積の大きさを示しており、成人の9%と比較して子供では18%である。
【0054】
良好な睡眠は、良好な静脈排液と関連する剪断応力に依存した血管形成−アポプトシス・プロセスの物質合成代謝(修復及び再生)を促進する。子供又は新生児では、心拍数は非常に高く、時には(睡眠時であっても)成人の2倍もある。
【0055】
結果として、これらの剪断力は、成長を自然に加速させるために不可欠なものである。このような流れ、このような速度、及びこのような顔表面積の場合、子供は常に、腫れを生ずるわずかな徴候もなく滑らかな顔を有しており、非常に長い期間仰臥して横になった後であっても、滑らかな皮膚を有する。
【0056】
従って、成人と子供の間の形態学的な差は、この現象を説明するのに重要な役割を果たすことになる。
【0057】
さらに、良好な静脈排液を提供するために、睡眠中に重力により生ずる副作用を回避して、2つの他の要素が、循環の補助的な力の作用と関連付けられる。
泣き叫ぶこと、それは、顔の筋肉ポンプの主要な運動を表しており、それにより、静脈の血流停止が阻止される、また
ほとんど存在しない首(翼状頸)であり、それは、静脈排液をより一層呼吸ポンプに依存させる。
【0058】
他のゾーン、すなわち、ゾーン2からゾーン4における血行動態結果はまた、ゾーン1における静脈環流の減少により妨げられる。直接的な心臓病原性の結果(心筋の虚血、又は心臓の奇形)は、従って、主要な血行動態障害を生ずる可能性がある。
【0059】
重要なゾーンであるゾーン5で良好な血行動態を維持することは、循環系の良好な全体動作を達成するための条件を構成する。ゾーン5における高い抵抗(後負荷)は、全身の血行動態圧力を減少させて血行動態障害を悪化させる可能性がある。急性又は慢性の肺高血圧症候群は、一酸化窒素の排出レベルに、且つ血管再形成に、言い換えると剪断力に依存する。
【0060】
要約すると、生理学的条件下で、循環補助力は、静脈及びリンパ液の排液を確実に行うが、内皮障害は、循環及び血行動態障害、すなわち、疲労の徴候(免疫系及び炎症反応の障害)、早期の老化(血管形成−アポプトシスの障害)の原因である静脈及びリンパ液の停止を生ずる。新規の循環補助装置の本発明は、これらの観察から生じている。
【0061】
要約
1.心臓ポンプに障害がある場合:我々は、ゾーン5(肺動脈)において、心拍数よりも高い剪断周波数を加えることを推奨し、肺動脈のコンプライアンス又は伸縮性を回避するために(アイゼンメンゲル症候群で終わる)、圧力(ニュートン)を増加させることなく、又は肺胞内皮の単細胞構成における長期間の障害を生じさせることなく、動脈壁の近くに渦を生成する(粘性の影響下でエネルギーを放散する回転性の流れ−ベルヌーイの原理)ことを可能にする。
【0062】
それとは反対に、ゾーン1に対して遠隔から作用する外部の拍動システムを使用する場合、我々のモデルである拍動性ズボンのように、剪断周波数は、すでに過負荷になっている心室及び肺の回路に適用される、剪断力を増加させることになるこのような外部の圧縮による過剰な供給を回避するために、心拍数よりも絶対的に遅くなければならない(50%を超えないこと)。
【0063】
2.正常な心臓において循環上の危険がある場合(宇宙飛行士、潜水夫)、拍動性スーツに使用される周波数は、呼吸障害又は頻拍の場合を除いて、拡張期と同期させるべきである。
【0064】
末梢循環(マスク、靴下、ブーツなど)に関しては、周波数を、何らかの危険もなく、心拍数よりも速くすることができる。
【0065】
3.最後に、心不全の場合、我々の拍動性の装置により生成される剪断応力は、関心のある回路の部分に応じて内皮系の必要性に適合される
【0066】
用途
本発明者らは、本発明の装置は、すべてが内皮機能に関連する多数の用途で使用できることを発見した。
【0067】
本発明者らは、例えば、老化は、実際上、特に、大部分が血管化された体の部分(顔及び頭部)に現れるシワ又は灰色の髪を早期の徴候として有する血管形成−アポプトシスの相互依存プロセスを実施する内皮機能に対する障害の結果であることを発見した。この老化は、死んだ細胞(プログラムされた細胞死又はアポプトシス)が血管形成により置き換えられるそのプロセスを次第に遅らせることに関連する自然現象であり、また、それは、2次的要因(感染、虚血性症候群、外傷性傷害、X線若しくは紫外線放射、変性症候群)が内皮機能(炎症性症候群、免疫系、血管収縮)に影響を与える度に特に加速される。
【0068】
本発明の装置の有利な特徴によれば、拍動手段は、
心拍数に関係するデータ、
呼吸数に関係するデータ、
患者の健康状態に関係するデータ、及び/又は
前記多層構造体が適用される体の部分に関係するデータ
に応じた速度で拍動を生成するように適合することができる。
【0069】
本発明の装置は、心拍数を測定する手段と、呼吸数を測定する手段とを備えることができる。
【0070】
本発明の装置は、拍動手段により拍動が生成される速度を変更する、調整する、及び選択する手段を備えることができる。
【0071】
拍動数は、患者の必要性に応じて決定することができる。本発明者らにより行われた動物実験は、患者の状態に応じて、及び本発明の装置の多層構造体が適用される体のゾーンに応じて、拍動数を調整するための以下の状態を区別することを可能にする。
患者の心臓ポンプに障害がある場合:
肺動脈ゾーンであるゾーン5で、実験により確認された以前の「Microth」特許及び公開で述べられた理論は、心拍数よりも速い剪断周波数を適用することが必要であることを示しており、肺動脈のコンプライアンス又は伸縮性を回避するために(アイゼンメンゲル症候群により終わる)、圧力(ニュートン)を増加させることなく、又は肺胞内皮の単細胞構成における長期間の障害を生じさせることなく、動脈壁の近くに渦を生成する(粘性の影響下でエネルギーを放散する回転性の流れ−ベルヌーイの原理)ことを可能にする。
装置が、例えば、拍動性ズボンの形で、ゾーン1に、すなわち、静脈系に作用するように使用される場合、剪断周波数は、すでに過負荷になっている心室及び肺の回路に過剰に供給する、剪断力を増加させる外部圧縮を回避するために、必ず心拍数よりも遅い必要があり、心拍数の約50%である。
正常な心臓の循環障害の場合、例えば、微小血管性狭心症、糖尿病患者、又は高血圧症患者(心臓の副作用のない)、閉経の副作用、宇宙飛行士又は潜水夫:
ゾーン5で使用される周波数は、呼吸障害又は頻拍の場合を除き、拡張期と同期させる必要がある。
拍動性マスク、靴下、又はブーツなどの他の末梢ゾーンでは、周波数は、何らかの危険もなく心拍数よりも速くすることができる、また
例えば、スポーツをする男性及び女性など、心臓又は循環性の病気を有していない正常な患者の場合:運動選手が、自分の静脈環流に適合させることができる場合であっても(心臓のフランク−スターリングの法則に従って):1)ジム又はマッサージ中におけるように、環境が可能であれば、拡張期同期を監視することが常に推奨される、2)競技又はジョギングの前にウォーミングアップをするなどのユーザの場合、スポーツをする男性又は女性により適用される規則を試みるために、心臓の専門医による定期的な検査が考えられる。
【0072】
要約すると、血行動態が改善するにつれて適切な選択を行うために、定期的な医療的コンタクトを維持することが不可欠であり、心不全の場合、心臓疾患のない他の用途とは異なり、周波数を、同期させることなく、問題のゾーンに応じて内皮系の必要性に適合させるべきである。
【0073】
特定の実施例では、本発明の装置は、まず、年齢、身長、体重、心臓の状態などのユーザの身体的状態に対してデータをユーザに選択可能にするセレクタ手段と、心拍数及び呼吸を測定する手段と、1つ又は複数の所定の関係に依存するこれらのデータ項目の1つ又は複数のものに応じて拍動数を計算する手段とを備えるモジュールを備えることができる。
【0074】
有利には、内層は、少なくともその一部に、患者の皮膚と接触させるための微孔質の壁と、外層のそばの壁との間に空洞(cavity)を備えることができ、前記空洞は、前記微孔質の壁を通して前記患者の皮膚に適用するための物質を受け入れ、且つ/又は運ぶように構成される。
【0075】
従って、本発明の装置は、1つ又は複数の生物学的、又は美容用の物質を適用することを可能にし、またそれらを、体のその基礎となる部分の上に一様に拡散させることを可能にする。
【0076】
このような状況下で、本発明の装置の多層構造体は、空洞を物質で満たすことを可能にする開口部を含むことができる。本発明の装置が使用されている間、この開口部は、接続手段を介して物質の供給源に接続されるか、或いは、それは、閉鎖手段によりシールされて閉鎖することができ、前記空洞は事前に充填され、次いで、物質の供給源としても働く。
【0077】
特定の実施例では、多層構造体は、内層と外層の間で拍動手段から到来する拍動流体を取り込むための取込み開口部を含むことができ、また拍動をガイドする手段は、前記外層と内層の間にゼラチン状の及び/又は粒子状の流体を含み、多層構造体が適用される体の部分に沿って、静脈環流方向に各拍動の漸進的な伝播を行う。
【0078】
本発明の特質によれば、ゼラチン状又は粒子状の流体は、外層と内層の間の中間的な層に含むことができる。
【0079】
拍動手段の第1のバージョンでは、拍動手段は、
空気貯蔵部と、
前記空気貯蔵部を律動的に圧縮する手段と、
前記空気貯蔵部を、可撓性のある多層構造体に接続する漏れのないコネクタと
を備えることができる。
【0080】
圧縮手段は機械的なものでよいが、患者により直接作動させることも、任意選択で可搬型の外部エネルギー源により作動させることもできる。
【0081】
拍動手段の第2のバージョンでは、拍動手段は、
事前に充填された空気貯蔵部と、
前記空気貯蔵部を、可撓性のある多層構造体に接続する漏れのないコネクタと
を備えることができ、
組立体は、貯蔵部、コネクタ、及び拍動流体に対して閉回路を構成する構造体を備え、また
前記空気貯蔵部は、前記患者により加えられる力により圧縮され、且つ減圧されるように構成される。
【0082】
この加えられる力は、貯蔵部がユーザの手の中に配置されたとき、こぶしを締め付けることにより、また締め付けを解除することにより、患者が直接加えることができる。
【0083】
力はまた、例えば、歩行中、又はランニング中など、患者が表面に打撃を加えることにより、装着された少なくとも1つの靴により生成された圧力/吸引力で与えることもできる。このような状況下で、事前に充填された空気貯蔵部は、患者の靴の下側、又は靴の中に配置され、従って、患者が足に力をかけることにより圧力を加えたとき、貯蔵部では、それに含まれていた流体が空になり、その流体が多層構造体に注入されて、それにより拍動が生成され、また患者が、例えば、足を上げることにより、足に対する圧力を解放したとき、多層構造体に注入された流体は空気貯蔵部へと戻される。
【0084】
特定の実施例では、空気貯蔵部、コネクタ、及び可撓性のある多層構造体は、例えば、多層構造体が患者により装着されるブーツを構成する場合、一体のユニットを構成することができる。
【0085】
可撓性のある多層構造体はまた患者の顔の少なくとも一部にかぶせて配置するためのフードであることができる。
【0086】
さらに、可撓性のある多層構造体はズボンであることができる。
【0087】
有利には、可撓性のある多層構造体はジャケットであることができる。
【0088】
可撓性のある多層構造体はまた、患者の手及び/又は手首の少なくとも一部に適用するための1つ以上の手袋、又は手袋の部分であることができる。
【0089】
さらに、可撓性のある多層構造体は、ブーツ、靴、又は靴下であることができる。このような状況下で、拍動手段は、ブーツ、靴、又は靴下の底面に組み込むことができ、従って、患者が歩行又はランニングをすることにより、足で地面を圧迫することにより生成された圧力が、多層構造体の漸進的な膨張を生じさせ、また足を上げることにより任意選択で漸進的な多層構造体の収縮を生じさせて、拍動が生成される。
【0090】
多層構造体は、
例えば、小胞炎を治療するために、又は男女の性的な関係の障害を治療するために使用されるコルセット、ストッキングなどの拍動性の下着要素と、
糖尿病患者及び高血圧症患者の下肢又は上肢に適用するための拍動性のリングと、
例えば、シワを治療するための眼帯の形の眼の付属品と
を含むことができる。
【0091】
本発明の他の態様では、患者の体のいくつかの部分を覆う非侵襲性の拍動性循環補助組立体が提供され、前記組立体は、前記体の部分のそれぞれに対するいずれかの先行する特許請求の範囲による少なくとも複数の装置を備えており、装置のそれぞれは独立している。
【0092】
本発明のさらに他の態様によれば、患者の体の複数の部分を覆う非侵襲性の拍動性循環補助組立体が提供され、該組立体は、
前記部分のそれぞれに対して、前記患者の体の前記部分に適用するための可撓性のある多層構造体であって、前記患者の体のそばの可撓性のある内層、及びより剛性のある外層を備える多層構造体と、
前記拍動性構造体に共通の拍動手段であって、前記多層構造体のそれぞれに対して漏れを生じないように接続される拍動手段とを備え、
前記組立体は、前記拍動手段が、「拍動」流体により、前記構造体のそれぞれの前記内層と外層の間で拍動を生成するようにされ、前記構造体が患者の体に配置されたとき、前記部分のそれぞれにおける前記拍動のそれぞれが、患者の体の前記部分の静脈環流方向に漸進的に伝播することを特徴とする。
【0093】
本発明の他の利点及び特性は、非限定の実施例の詳細な説明及び添付の図面を調べることにより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の装置で実施される多層構造体の実例を概略的に示す図である。
【図2】図1の多層構造体でパルスを生成するのに適したコンソールを概略的に示す図である。
【図3】図2のコンソールと組み合わせて拍動を生成するように働く圧縮モジュールを概略的に示す図である。
【図4】拍動数を決定するためのモジュールを概略的に示す図である。
【図5】本発明の拍動性フードを概略的に示す図である。
【図6】本発明の拍動性ズボンを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0095】
本発明の装置は、拡張時に、四肢から心臓の方向に血液を戻すことにより、生体のすべて、又はその一部に対して調和のとれた、且つ漸進的な律動性運動を生成する。それは、通常、皮下組織で、肝臓及び脾臓、又は顔における循環で、停滞する静脈−リンパ管容量を低減するために、攻撃性のない圧縮力を生成する。
【0096】
本発明の装置のいくつかの実例を以下で述べる。
【0097】
述べられる実例のすべてにおいて、
「拍動性の波」の伝播軸は、静脈及びリンパ管を排液するための自然な、且つ生理学的方向を維持するように決定される、
拍動性の力は、空気、電子、流体のシステム、或いは、患者の力を使用した独立のシステムにより生成することができる、また
外傷から背骨を保護するために、通常、膨張性ではない背面部は、必須の安全機能を維持しながら、体のマッサージを行うように設計されたバージョンに変更することもできる。
【0098】
図1は、本発明の装置で実施される多層構造体の実例を概略的に示している。
【0099】
図1で示す多層構造体100は、
弾性材料、例えば、ネオプレン、ポリウレタン、ラテックスなどから作られた内層102と、
体の内側方向に圧縮波の伝播をガイドするための剛性材料から作られた剛性のある外層104と、
前記構造体が適用される体の部分における静脈及びリンパ管を排液するための自然の、且つ生理学的方向で、心臓に向けて漸進的に、拍動性の圧力波を伝播できるようにするゼラチン状の流体を含む中間層106と
を備える。以下の記述では、静脈及びリンパ管を排液するための自然な、且つ生理学的方向は、図1で示す方向XYであると考えられる。
【0100】
多層構造体100はまた、生体適合性のある材料の空間110を備え、体と接触する微孔質の壁を含み、且つコネクタ112を介して生体適合性流体及び/又は生物学的流体で充填するのに適したさらなる層108を含む。この微孔質部分は、皮膚と直接接触する。拍動している間、この層108に含まれた物質は、微孔質部分を通過することにより患者の体に適用される。
【0101】
外層104は、接続ポート114を介して、多層構造体100中に拍動を生成するための拍動手段に(図2を参照)漏れを生じないように接続される。
【0102】
多層構造体100が適用される体の部分に沿って拍動を漸進的に伝播させるために、中間層106は、ゼラチン状、粒子状などの粘度が変化する物質を含み、前記多層構造体に沿ってXY方向に、拍動のそれぞれを漸進的に送る。
【0103】
図2は、図1の多層構造体100中で拍動を生成できるようにするコンソールの実例の概略図である。
【0104】
図2で示すコンソール200は、
流体で、例えば、不活性の、ガス状の流体、又は水などの液体で満たされた空気貯蔵部202と、
空気貯蔵部202を可撓性のある多層構造体100に接続する漏れのないコネクタ204と
を備える。
【0105】
漏れのないコネクタ204は、多層構造体100の接続ポート114に直接、又は間接的に接続される。
【0106】
空気貯蔵部202は、事前に充填することもできる。空気貯蔵部は、不活性流体を加える、取り除く、又は置き換えるように働くポート206を有する。
【0107】
空気貯蔵部202は、患者により直接圧縮することもできる。貯蔵部は、患者が、それを手の中で締め付けることによって圧縮することができる。
【0108】
実施例では、空気貯蔵部202は、靴の下又は患者の足の下に配置することができる。次いで、患者が単に歩行、又はランニングをすることにより、拍動が生成される。
【0109】
コンソール200はまた、律動的に、空気貯蔵部202を圧縮するための1つ以上の手段を含むことができる。圧縮手段は、手動で、又は制御モジュールで作動され、且つ制御することができる。
【0110】
図3は、空気貯蔵部202を圧縮するための圧縮モジュール300の実例の概略図である。圧縮モジュール300は、空気貯蔵部202を受け入れるための空間310をその間に形成する2つのプレート306及び308に接続されたモータ・ユニット304に動力を与える電池302を有する。モータ・ユニットが作動されると、プレート306及び308は、律動的に互いの方向に、また互いから離れるように移動する。プレート306及び308のそれぞれへの接近により圧力が生成され、それぞれが離れることにより吸引力が生成される。
【0111】
図4は、拍動の周波数を決定するためのモジュールの概略図である。
【0112】
拍動周波数を決定するためのモジュール400は、心拍数検出器402と、呼吸数検出器404と、データ入力手段であって、
例えば、健康である、右心不全、左心不全の危険があるなど、患者の健康状態、
例えば、身長、体重、年齢など、患者の肥満、及び
多層構造体100が適用される体の部分
に関係するデータを受け取るためのデータ入力手段とを備える。
【0113】
図4で示す実例では、これらの入力手段は、タッチスクリーン406を含む。
【0114】
モジュール400はまた、入力データに応じて適切な拍動数を決定し、且つ圧縮モジュール300を制御するための制御信号412を発行する、コンピュータ・プログラム410に接続されたデータベース408を含むことができる。
【0115】
次に、本発明の様々な拍動性要素を説明する。
【0116】
図5は、本発明の拍動性フード500の概略図である。拍動性フード500は、図1で示された多層構造体100を用いて作られた顔マスク502及びえり部504を備える。
【0117】
マスク502は、眼、口、鼻、及び耳領域に減圧孔506を有する。コネクタ114は、拍動コンソール200を、顔マスク502の外層に形成された1つ以上の接続ポート114に接続する。送達される各拍動は、矢印508によって示される主伝播軸に沿って、接続ポート114から下方向に、且つ心臓の方向に漸進的に伝播する。矢印510により示された水平方向軸は、海綿状回路に向かう拍動性の波の経路を示している。
【0118】
マスク502の眼の部分512は、わずかに膨張することができるか、或いは全く膨張できない。首516の背面部514は、全く安全に、首の拍動性マッサージを行うように構成される。
【0119】
フード500は、顔及び首の静脈−リンパ液の停滞を治療するための非侵襲性の拍動性循環補助を提供する。それは、顔及び首を圧迫して装着される。その2つのコンポーネントであるマスク502及びえり部504は、心拍数−呼吸数と規則的且つ律動的に同期し、且つそれと調和して動作する。
【0120】
フードはまた、以下の機能を有する、すなわち、
主機能:拡張期と同期した剪断応力を加えて、リンパ液及び静脈の滞留を低減させることにより、内皮障害の副作用を回復させ、且つ修復する、
第2の機能:頭痛又は記憶喪失などに作用する海綿系の血液循環の血行動態を改善する、及び
スキンケア及び抗老齢化物質などの既存の美容品の吸収及び貫通を増加させ、且つ加速する一酸化窒素により皮膚循環を改善する。
【0121】
マスク502の内層は、生物学的マスクをモデルとすることができ、又はそれは、顔及び首の形状に適合された、生体適合性のある材料から作ることができる。内側表面は、指示に応じて、使用される物質又は流体の温度を変えて、又は変えずに、美容性の流体を皮膚の方向に放散するように微孔質にすることができる。
【0122】
血行動態改善は2段階で行われる、すなわち、
拡張期と同期して、停滞した静脈容量を減らすことにより直ちに行われる。律動的な拡張期容積の増加は、心室の収縮能を改善し、肺の後負荷を低下させ、且つ心臓の流量全体を改善する、また
長い期間で行われ、剪断応力を増加させることにより内皮機能を改善する、すなわち、
NOを排出させることにより後負荷を低減する、また
対応する虚血領域における血管形成−心筋心臓発生プロセスを刺激する。
【0123】
図6は、本発明の拍動性ズボン600の概略図である。
【0124】
拍動性ズボン600は、脚部分602、ベルト部分604、及びブーツ部分606を備える。本発明のこのバージョンでは、ズボン600は、微孔質層を有していない。
【0125】
拍動コンソール200から到来する拍動性の波は、ブーツ部分606から開始する。次いで、各拍動は、矢印608により示される軸に沿って心臓の方向に伝播する。
【0126】
拍動性フードに関して上記で述べたシステムに加えて、このシステムは、回復用と予防用の両方での利用を提供する、すなわち、
下半身麻痺者、又は大腿骨の骨折を示す患者における血管形成を促進する剪断応力による、内皮障害に関する回復用と、
例えば、長時間のフライト、手術後長い期間うつぶせで横たわっている、また事故中に動けなくされている期間など、長い時間期間にわたり静止状態のままでいる間に、影響を受けやすい人々において、内皮障害と関連する凝固障害を阻止することによる予防用と
を提供する。
【0127】
特定のバージョンでは、拍動性ズボンは、個人の衣服を介して皮膚と接触する第1の層を有することができる。
【0128】
背骨をマッサージするように、背面部を変更することも考えられる。
【0129】
様々な部分(ズボン、ベルト、脚)の間の伝達は、鼠径ひだにおける何らかの止血帯効果を回避するために、拡張期と協調され、且つ同期される。
【0130】
同様にして、拍動性ジャケット、拍動性下着、拍動性ブーツ、拍動性手袋、及び実際に、完全に拍動性のスーツを考えることも可能である。
【0131】
完全に拍動性のスーツはまた、フード、ジャケット、拍動性ズボン、拍動性手袋、及び拍動性靴を組み立てることにより得ることができる。このような状況下で、第1の実施例では、各拍動性組立体は、専用の拍動手段と関連付けることができる。第2の実施例では、単一の拍動手段を、拍動性スーツを構成する拍動組立体のすべてに対して使用することができる。
【0132】
拍動性スーツは、マッサージの目的で使用することもできる。このようなスーツは、炎症性症候群、免疫系の欠落、又は一酸化窒素排出の破綻から生じたアポプトシス−血管形成の平衡に関する障害による内皮障害に関連した疲労をかなり改善する。
【0133】
変更バージョンでは、拍動性スーツは、皮膚と接触し、従って、(例えば、スキンケア、強壮などのための)美容用物質の送達を容易にするさらなる層を含むことができる。
【0134】
拍動性ブーツ又は拍動性手袋など、複数の遠位の発生源からの拍動性パルスの伝播は、同期される。
【0135】
各拍動性組立体は、患者の必要性に応じて別個に使用することができる。
【0136】
閉回路では、拍動性スーツは、潜水夫、宇宙飛行士、運動をする男性及び女性、並びに競技者により使用することができ、血管形成により筋肉量の発達における長期間の改善も提供しながら、カテコールアミンの分泌により生理学的に、能力を直ちに改善することを可能にする。
【0137】
運動をする男性及び女性は、手袋を用いてこぶしを握り、又はジョギング中にブーツを使用して自分自身で拍動性の力を提供することができる。
【0138】
拍動性スーツは、患者の血行動態及び生物物理学的必要性に応じて、関係する各ゾーンに補助を提供することができる、すなわち、
補助的な循環力に依存するゾーン1:拍動性スーツは、静脈容量を低減し、且つ拡張時に血液を心臓へ環流させるのを促進するマッサージ波を送達することにより、血行動態を改善する。本発明は、以下の指標の2つのグループに対して利益がありうる:
病理学的指標:右心室の障害、慢性の肺高血圧、宇宙飛行士、潜水夫、静脈瘤症、下半身麻痺、起立性症候群、及び
快適さの指標:マッサージ・パーラー、フィットネス、ジム、遠距離の空の旅、
拡張期充満及び速度に依存するゾーン2から4:組み合わせることにより、重篤な心臓病にかかった患者に、長期間にわたりこの生理学的機能を維持できるようにすることができる、また
ゾーン5:肺動脈ツリー:スーツは、抵抗を下げ、内皮機能を改善する。
【0139】
本発明の各拍動性装置は、停滞した静脈−リンパ管容量を漸進的に低減するように働く非侵襲性の循環補助装置である。前負荷を増加させることにより、本発明の装置は、心臓の収縮能を改善し、それにより後負荷を低下させ、血行動態全体を改善させる。長期間において、本発明の拍動性装置により生成された剪断応力は、内皮機能を回復させ、維持するように働く。それは、血行動態及び循環障害が生じた場合に、血液の供給(静脈容量の64%)及び内皮量を自然の非常口へと変換する。この、より生理学的且つ低コストの方法は、罹病率及び死亡率を低下させることができ、子供、成人、及び動物にも適用可能である。
【0140】
本発明が、特定の、非限定的な実施例を示す上記で述べた実例に限定されないことは当然である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の体の中の血液量の循環を容易にする非侵襲性の拍動性循環補助装置(500、600)であって、
前記患者の体の少なくとも一部に適用するための可撓性のある多層構造体(100)であり、前記患者の体のそばの可撓性のある内層(102)、及びより剛性のある外層(104)を備える多層構造体(100)と、
前記多層構造体(100)に接続された拍動手段(200、300、400)であり、前記構造体に加えて前記拍動手段を備える組立体に漏れを生じないように接続され、拍動流体と呼ばれる流体により、前記内層及び外層(102及び104)の間で拍動性の波を生成する拍動手段(200、300、400)とを備え、
前記多層構造体が、前記構造体(100)が前記患者の体の前記部分に配置されたとき、前記患者の体の前記部分に沿って前記患者の体の内側へ向かう静脈環流方向に前記拍動のそれぞれを漸進的にガイドする手段を含むことを特徴とする拍動性循環補助装置(500、600)。
【請求項2】
心拍数に関係するデータ、呼吸数に関係するデータ、患者の健康状態に関係するデータ、及び/又は前記多層構造体が適用される前記体の部分に関係するデータに応じて拍動周波数を決定するための手段をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の拍動性循環補助装置。
【請求項3】
前記内層(102)が、少なくともその一部分に、前記患者の皮膚と接触させるための微孔質の壁(108)と、前記外層のそばの壁との間に空洞(110)を備え、前記空洞(110)が、前記微孔質の壁(108)を介して前記患者の皮膚に適用するための物質を受け取り、及び/又は運ぶように構成されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の拍動性循環補助装置。
【請求項4】
前記空洞(110)に物質を充填するための開口部(112)を備え、前記開口部(112)が、使用時に閉鎖する手段により、漏れを生じない態様で閉鎖されることを特徴とする、請求項3に記載の拍動性循環補助装置。
【請求項5】
前記多層構造体(100)が、前記内層と外層(102及び104)の間で前記拍動手段(200)から到来する拍動流体を取り込むための取込み開口部(114)を含み、前記拍動をガイドする手段が、前記構造体(100)に沿って、前記静脈環流方向に前記拍動のそれぞれを漸進的に伝播させる、前記内層と外層(102及び104)の間のゼラチン状の、及び/又は粒子状の流体を含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の拍動性循環補助装置。
【請求項6】
前記ゼラチン状の流体が、前記外層(104)と前記内層(102)の間の中間層(106)に含まれることを特徴とする、請求項5に記載の拍動性循環補助装置。
【請求項7】
前記拍動手段(200、300)が、空気貯蔵部(202)と、前記空気貯蔵部(202)を律動的に圧縮する手段(300)と、前記空気貯蔵部(202)を、前記可撓性のある多層構造体(100)に接続する漏れのないコネクタ(204)とを備えることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の拍動性循環補助装置。
【請求項8】
前記拍動手段が、空気貯蔵部(202)と、前記空気貯蔵部(202)を、前記可撓性のある多層構造体(100)に接続する漏れのないコネクタ(204)とを備え、
前記組立体が、前記空気貯蔵部(202)、前記コネクタ(204)、及び前記拍動流体に対して閉回路を構成する前記構造体(100)を備え、
前記空気貯蔵部(202)が、前記患者により加えられる力によって圧縮され、且つ減圧されるように構成されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の拍動性循環補助装置。
【請求項9】
前記貯蔵部、前記コネクタ、及び前記可撓性のある多層構造体(100)が、一体のユニットを構成することを特徴とする、請求項8に記載の拍動性循環補助装置。
【請求項10】
前記可撓性のある多層構造体(100)が前記患者の顔の少なくとも一部分を覆って配置されるフード(500)であることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の拍動性循環補助装置。
【請求項11】
前記可撓性のある多層構造体がズボン(600)であることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の拍動性循環補助装置。
【請求項12】
前記可撓性のある多層構造体がジャケットであることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の拍動性循環補助装置。
【請求項13】
前記可撓性のある多層構造体が手袋であることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の拍動性循環補助装置。
【請求項14】
前記可撓性のある多層構造体がブーツ又は靴下であることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の拍動性循環補助装置。
【請求項15】
患者の体の複数の部分を覆う非侵襲性の拍動性循環補助組立体(600)であって、前記部分のそれぞれに対する請求項1から14のいずれかに記載の少なくとも1つの拍動性循環補助装置を含む拍動性循環補助組立体(600)。
【請求項16】
患者の体の複数の部分を覆う非侵襲性の拍動性循環補助組立体であって、
前記部分のそれぞれに対して、前記患者の体の前記部分に適用するための可撓性のある多層構造体であり、前記患者の体のそばの可撓性のある内層、及びより剛性のある外層を備える多層構造体と、
前記拍動性構造体に共通の拍動手段であり、前記多層構造体のそれぞれに対して漏れを生じないように接続され、拍動流体と呼ばれる流体により、前記構造体のそれぞれの前記内層と外層の間で拍動を生成する拍動手段とを備え、
前記構造体のそれぞれが、前記構造体(100)が前記患者の体の前記部分に配置されたとき、前記患者の体の前記部分に沿って前記患者の体の内側に向かう静脈環流方向に、前記拍動のそれぞれを漸進的にガイドする手段を含むことを特徴とする拍動性循環補助組立体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2012−511984(P2012−511984A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541430(P2011−541430)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067352
【国際公開番号】WO2010/070018
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(510312776)
【出願人】(311007040)
【Fターム(参考)】