説明

循環流動層ボイラ用の添加剤及び循環流動層ボイラの運転方法

【課題】ボイラへの添加量を低減することができる循環流動層ボイラ用添加剤及びこれを用いた循環流動層ボイラの運転方法を提供する。
【解決手段】循環流動層ボイラ用の添加剤ペレット1は、循環流動層ボイラのアグロメレーションを抑制するための循環流動層ボイラ用添加剤であって、アグロメレーション抑制の有効成分を含み粒径100μm以下に微粉化された有効成分材料3が、熱可塑性樹脂5で固められ固形化されてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、循環流動層ボイラのアグロメレーションを抑制するための循環流動層ボイラ用添加剤及びこれを用いた循環流動層ボイラの運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ボイラ用の添加剤に関する技術として、下記特許文献1に記載の添加剤が知られている。この添加剤は、ボイラの排煙から硫黄酸化物を除去するためのものであり、粒径等を規定した炭酸カルシウム粉体からなるものである。また、循環流動層ボイラのアグロメレーションを抑制する添加剤として、ドロマイト等の鉱物を炉内に添加することも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−350920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アグロメレーション抑制のための添加剤としては、鉱物の粒子を分級し所定粒径以下の粒子を選択的に添加剤として採用することが考えられる。添加剤として選択された粒子のうち粒径が比較的大きいものは、循環流動層ボイラの火炉内で徐々に破壊されながら細かい粒子(粒径100μm程度)になったところでアグロメレーションの原因物質と効率よく反応し、アグロメレーション抑制の機能が発揮される。しかしながら、添加剤として選択された粒子のうち最初から粒径が小さいものは、軽量ゆえに、アグロメレーション原因物質と反応する前に排ガスと一緒にボイラ外に排出される場合もある。このように、未反応でボイラ外に排出される粒子が発生するので、無駄になる分を含めて多くの添加剤を炉内に添加する必要があった。
【0005】
このような事情に鑑み、本発明は、ボイラへの添加量を低減することができる循環流動層ボイラ用添加剤及びこれを用いた循環流動層ボイラの運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の循環流動層ボイラ用の添加剤は、循環流動層ボイラのアグロメレーションを抑制するための循環流動層ボイラ用添加剤であって、アグロメレーション抑制の有効成分を含み粒径100μm以下に微粉化された有効成分材料が、熱可塑性樹脂で固められ固形化されてなることを特徴とする。
【0007】
この添加剤を循環流動層ボイラの火炉に投入した場合、投入当初は、有効成分材料が熱可塑性樹脂に固められた状態で存在するので、ボイラ外に排出される可能性も低く、ある程度の時間炉底に滞在する。添加剤の熱可塑性樹脂が燃焼するに従って、微粉の有効成分材料が少しずつ添加剤から離れ、少しずつ火炉内に放出される。このとき放出される有効成分材料は粒径100μm以下の微粒子であるので、火炉内でアグロメレーションの原因物質と効率よく反応し、アグロメレーション抑制に寄与する。このように、無駄にボイラ外に排出される有効成分材料が低減されると共に、微粉の有効成分材料が効率良くアグロメレーション抑制の機能を発揮する。その結果、ボイラに添加すべき添加剤の量を低減することができる。
【0008】
また、熱可塑性樹脂は、Cl、S及びNを何れも含まない分子式で表される樹脂であることとしてもよい。また、熱可塑性樹脂は、C及びHのみを含む分子式、又はC、H及びOのみを含む分子式で表される樹脂であることとしてもよい。この場合、熱可塑性樹脂が循環流動層ボイラの火炉内で燃焼した際に、塩素系、硫黄酸化物系、窒素酸化物系のガスの発生源にならず、上記のガスに起因するボイラの不具合や劣化等を抑えることができる。
【0009】
また、熱可塑性樹脂の重量が全体の50重量%以下であることとしてもよい。この場合、熱可塑性樹脂の含有率を50重量%以下にすることで、有効成分材料の含有率を大きくすることができ、ボイラに添加すべき添加剤の重量を低減することができる。
【0010】
本発明の循環流動層ボイラの運転方法は、上記何れかの循環流動層ボイラ用の添加剤を火炉に投入する工程を備えたことを特徴とする。この運転方法によれば、添加剤の添加量を低減することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の循環流動層ボイラ用の添加剤及び循環流動層ボイラの運転方法によれば、ボイラへの添加剤の添加量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の添加剤の一例である添加剤ペレットの断面図である。
【図2】図1の添加剤ペレットを製造するための樹脂成型機を示す一部破断側面図である。
【図3】本発明の運転方法が適用される循環流動層ボイラを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る循環流動層ボイラ用の添加剤及び循環流動層ボイラの運転方法の実施形態について詳細に説明する。
【0014】
本実施形態の添加剤は、循環流動層ボイラのアグロメレーションを抑制するために、循環流動層ボイラの火炉に投入されて使用されるものである。当該添加剤は、ボイラの搬送装置等で円滑に搬送されるように、ペレットに加工されている。図1は、本実施形態の添加剤ペレット1の一粒子の断面図を示したものである。
【0015】
図1に示すように、添加剤ペレット1は、アグロメレーション抑制の有効成分を含む微粉が、熱可塑性樹脂ペレットに埋め込まれた形態をなしている。具体的には、添加剤ペレット1は、アグロメレーション抑制の有効成分が微粉化されてなる有効成分材料3の粒子と、当該粒子を固めるバインダ部分として機能する熱可塑性樹脂5とを含んでいる。すなわち、添加剤1は、有効成分材料3の微粉が熱可塑性樹脂5で固められ固形化されたものである。
【0016】
有効成分材料3としては、ドロマイト(dolomite)、アンケル石(ankerite)、クホナホラ石(Kutnohorite)、minrecordite、norsethite、方解石、又は菱苦土石といった鉱物が好適に用いられる。これらの鉱物は、アグロメレーション抑制の有効成分を含んでいる。各有効成分は、火炉内でアグロメレーションの原因物質と反応することで、アグロメレーション抑制に寄与する。ドロマイトに含まれる有効成分はCaMg(CO3)2であり、アンケル石に含まれる有効成分は、Ca(Fe,Mg,Mn)(CO3)2であり、クホナホラ石に含まれる有効成分はCaMn(CO3)2であり、minrecorditeに含まれる有効成分はCaZn(CO3)2であり、norsethiteに含まれる有効成分はBaMg(CO3)2であり、方解石に含まれる有効成分はCaCO3であり、菱苦土石に含まれる有効成分はMgCO3である。
【0017】
また、上記の各鉱物に含まれる有効成分CaMg(CO3)2、Ca(Fe,Mg,Mn)(CO3)2、CaMn(CO3)2、CaZn(CO3)2、BaMg(CO3)2、CaCO3、又はMgCO3の試薬を、直接有効成分材料3として用いてもよい。
【0018】
有効成分材料3は、粒径100μm以下に微粉化された微粉の態様をなす。例えば、原石山から採取した上記鉱物、又は市販の上記試薬を、ボールミル等の粉砕器で粉砕し、微粉の有効成分材料3を得るものとする。このような有効成分材料3は、循環流動層ボイラの火炉内でアグロメレーションの原因物質と反応する。図1は説明を容易にするため寸法を誇張して図示しており、構成要素同士の寸法比は実物とは必ずしも一致しない。なお、アグロメレーションの原因物質との反応性を高める観点から、有効成分材料3の粒径は小さいほど好ましいので、有効成分材料3は、更に細かく微粉化してもよい。
【0019】
熱可塑性樹脂5としては、Cl、S及びNを何れも含まない分子式で表される樹脂を採用する。または、熱可塑性樹脂5としては、C及びHのみを含む分子式で表される樹脂を採用する。または、熱可塑性樹脂5としては、C、H及びOのみを含む分子式で表される樹脂を採用する。これらの分子式で表される樹脂は、循環流動層ボイラの火炉で燃焼しても、塩素系、硫黄酸化物系、窒素酸化物系のガスの発生源にはならない。このような熱可塑性樹脂5の例として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール等が挙げられる。
【0020】
また、熱可塑性樹脂5の重量が添加剤ペレット1全体の50重量%以下であることが好ましい。熱可塑性樹脂5の含有率を50重量%以下にすることで、有効成分材料3の含有率を大きくすることができる。その結果、循環流動層ボイラに添加すべき必要な添加剤ペレット1の重量を低減することができる。なお、有効成分材料3の含有率を大きくするためには、熱可塑性樹脂5は少ないほど好ましいので、有効成分材料3の微粉を固める機能を維持することができる限界まで熱可塑性樹脂5の含有量を減じることが好ましい。
【0021】
添加剤ペレット1の製作は、例えば図2に示す樹脂成型機10を用いて次のように行われる。樹脂成型機10の二材料混合ホッパ11に、微粉化された有効成分材料3と熱可塑性樹脂の樹脂ペレットとが投入される。有効成分材料3と熱可塑性樹脂ペレットとが、二材料混合ホッパ11で混合され、定量フィーダ13により定量ずつ樹脂押出機15に送られる。有効成分材料3と熱可塑性樹脂材料とが樹脂押出機15内で混練溶融され、樹脂押出機15の先端部から排出される。排出された混合溶融物が樹脂冷却装置17で冷却され固化する。固化された混合物は、樹脂冷却装置17に接続されたペレタイザー19に送られ、例えば粒径3〜30mm程度にペレット化され、添加剤ペレット1が完成する。なお、樹脂成型機10としては公知の装置を用いればよいので、樹脂成型機10の更なる詳細な説明は省略する。
【0022】
続いて、上述の添加剤ペレット1を用いた循環流動層ボイラの運転方法の一例について説明する。
【0023】
図3に、添加剤ペレット1が用いられる外部循環型(CirculatingFluidized Bed型)の循環流動層ボイラ51を示す。循環流動層ボイラ51は、縦長箱体形状をなす流動層型の火炉53を備えている。火炉53の中間部には燃料を投入する燃料投入口53a、上部には燃焼ガスを排出するガス出口53bが設けられている。燃料投入装置55からこの火炉53に供給される燃料は、燃料投入口53aを通じて火炉53の内部に投入される。
【0024】
火炉53のガス出口53bには固気分離装置として機能するサイクロン57が接続されている。サイクロン57の排出口57aはガスラインを介して後段のガス処理系に接続されている。また、サイクロン57の底部出口からはダウンカマーと称されるリターンライン59が下方に延びており、リターンライン59の下端はループシール(図示省略)を介して火炉53の下部側面に接続されている。
【0025】
火炉53内では、下部の給気ライン53cから導入される燃焼・流動用の空気により、上記投入口53aから投入された燃料を含む固形物が流動し、燃料は流動しながら約800〜900℃で燃焼する。サイクロン57には、火炉53で発生した燃焼ガスが固体粒子を同伴しながら導入される。サイクロン57は、遠心分離作用により固体粒子と気体とを分離し、分離された固体粒子をリターンライン59を通して火炉53に戻すと共に、固体粒子が除かれた燃焼ガスを排出口57aからガスラインを通じて後段のガス処理系に送出する。
【0026】
上記のガス処理系は、サイクロン57のガス排出口57aにガスラインを介して接続されたガス熱交換装置63と、このガス熱交換装置63の排出口63aにガスラインを介して接続されたバグフィルタ(集塵器)65とを備えている。ガス熱交換装置63には、排ガスの流路を横切るように水を流動させるボイラチューブ63bが設けられている。サイクロン57から送られた高温の排ガスがこのボイラチューブ63bに接触することで、排ガスの熱がチューブ内の水に回収され、発生した高温の水蒸気がボイラチューブ63bを通じて発電用のタービンに送られる。バグフィルタ65は、この可燃性ガスに未だ同伴している飛灰等の微粒子を除去する。バグフィルタ65の排出口65aから排出された清浄なガスはガスライン及びポンプ67を経由して煙突69から外部に排出される。
【0027】
このような循環流動層ボイラ51においては、火炉53とダウンカマー59との間で流動砂が循環しており、流動砂の粒子同士が接合され塊化するアグロメレーションと呼ばれる現象が発生する。アグロメレーションが発生すると流動砂の流動不良が発生するので、アグロメレーションを適切に抑制すべく、前述の添加剤ペレット1が用いられる。すなわち、循環流動層ボイラ51の運転方法においては、運転中に、添加剤投入装置56を通じて、添加剤ペレット1を添加剤投入口53jから火炉53内に投入する工程が実行される。
【0028】
続いて、添加剤ペレット1及びこれを用いた循環流動層ボイラ51の運転方法による作用効果について説明する。
【0029】
ここで、アグロメレーション抑制のための添加剤としては、ある程度の時間火炉53の炉底に溜まり、徐々に細かく分解されて反応性が高い微粒子(粒径100μm以下)となり、アグロメレーションの原因物質と反応することが理想的である。
【0030】
添加剤ペレット1が循環流動層ボイラ51の火炉53に投入されると、投入当初は、有効成分材料3が熱可塑性樹脂5に固められた状態で存在するので、ボイラ外に排出される可能性も低く、ある程度の時間炉底に滞在する。添加剤ペレット1の熱可塑性樹脂5が燃焼するに従って、微粉の有効成分材料3が少しずつ添加剤ペレット1から離れ、少しずつ火炉53内に放出される。このとき放出される有効成分材料3は粒径100μm以下の微粒子であるので、火炉53内でアグロメレーションの原因物質と効率よく反応し、アグロメレーション抑制に寄与する。このように、添加剤ペレット1に含まれる有効成分材料3が、前述した理想に近い挙動を示すので、無駄にボイラ51外に排出される有効成分材料3が低減されると共に、微粉の有効成分材料3が火炉53内で効率良くアグロメレーション抑制の機能を発揮する。以上の結果、添加剤ペレット1の構成及びこの添加剤ペレット1を用いた運転方法によれば、ボイラ51に添加すべき添加剤ペレット1の量を低減することができる。
【0031】
また、前述したように、熱可塑性樹脂5が火炉53で燃焼しても、塩素系、硫黄酸化物系、窒素酸化物系のガスを発生源にならないので、この種のガスに起因する循環流動層ボイラ51の不具合や劣化等を抑えることができる。
【0032】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形したものであってもよい。
【符号の説明】
【0033】
1…添加剤ペレット(添加剤)、3…有効成分材料、5…熱可塑性樹脂、51…循環流動層ボイラ、53…火炉。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
循環流動層ボイラのアグロメレーションを抑制するための循環流動層ボイラ用の添加剤であって、
アグロメレーション抑制の有効成分を含み粒径100μm以下に微粉化された有効成分材料が、熱可塑性樹脂で固められ固形化されてなることを特徴とする循環流動層ボイラ用の添加剤。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂は、
Cl、S及びNを何れも含まない分子式で表される樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の循環流動層ボイラ用の添加剤。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂は、
C及びHのみを含む分子式、又はC、H及びOのみを含む分子式で表される樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の循環流動層ボイラ用の添加剤。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂の重量が全体の50重量%以下であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の循環流動層ボイラ用の添加剤。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の循環流動層ボイラ用の添加剤を火炉に投入する工程を備えたことを特徴とする循環流動層ボイラの運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−255612(P2012−255612A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129453(P2011−129453)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】