説明

微少質量測定用センサ素子

【課題】感応膜が反応する物質が二つ混在する場合、分子量に応じて反応する物質を分離させ分子量の小さい方の反応する物質を検出することができる微少質量測定用センサ素子を提供する。
【解決手段】
平板状の水晶片に励振電極及び配線パターンが設けられている水晶振動素子と、励振電極に設けられている感応膜と、配線パターンに接触している固定部が基部の所定の一面から延設され、基部の所定の他の一面から脚部が固定部と反対方向に延設されている保持具と、所定の一面に基部が収納される基部収納空間が形成され、基部収納空間の底面に水晶振動素子と基部と固定部が収納される水晶振動素子収納空間が形成され、水晶振動素子収納空間内側を向く面から前記所定の他の一面まで貫通している貫通孔が形成されている蓋部材と、分子量に応じて物質を分離することができる分子ふるい材料からなり、貫通孔に充填されている充填材と、を備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相状態の検体から感応膜と反応する物質を検出する微少質量測定用センサ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
微少質量測定用センサ素子は、微少な量、例えば、1μgを検出することができる水晶振動子微量天秤(Quartz Crystal Microbalance Sensor)に用いられている。
水晶振動子微量天秤で用いられる微少質量測定用センサ素子は、例えば、水晶振動素子と水晶振動素子の励振電極に設けられている感応膜とを備えている。
【0003】
水晶振動素子は、例えば、水晶片と励振電極と配線パターンとから構成されている。
水晶片は、圧電材料である水晶部材が用いられ、例えば、両主面が円形形状の平板状となっている。
励振電極は、例えば、二つ一対となっており、一方の励振電極が水晶片の一方の主面に設けられ、他方の励振電極が水晶片の他方の主面に設けられている。このとき、一方の励振電極と他方の励振電極は、互いに対向する位置に設けられている。
配線パターンは、例えば、二つ一対となっており、一方の端部が励振電極に接続され、他方の端部が水晶片の主面の縁部に位置している。一方の配線パターンは、例えば、一方の端部が一方の励振電極に接続され、他方の端部が水晶片の一方の主面の縁部に位置している。他方の配線パターンは、例えば、一方の端部が他方の励振電極に接続され、他方の端部が水晶片の他方の主面の縁部に位置している。なお、二つ一対の配線パターンは、配線パターン間の配線容量による微少質量想定用センサ素子の検出精度及び検出感度の低下を避けるために、互いに向かい合わないように配置されている。
従って、水晶振動素子は、水晶片の両主面に設けられている励振電極が配線パターンに接続されている構造となっており、配線パターンの他方の端部と励振電極とが電気的に接続された構造となっている。
また、水晶振動素子は、水晶片の圧電効果及び逆圧電効果により、配線パターンの他方の端部に交番電圧が印加されると、励振電極で挟まれている水晶片の一部が所定の周波数で振動する特性を有している。
【0004】
感応膜は、例えば、所定の物質と反応する性質を有している高分子脂質から構成されている。
また、感応膜は、水晶振動素子の励振電極に設けられている。
【0005】
従って、感応膜が反応する所定の物質が含まれている雰囲気中に設けられた場合、微少質量測定用センサ素子は、所定の物質が水晶振動素子に設けられている感応膜と反応し感応膜に吸着する。
このため、微少質量測定用センサ素子は、所定の物質が感応膜と反応し感応膜に吸着すると所定の物質が吸着した分だけ水晶振動素子の周波数が変化する構造となっているので、水晶振動素子の水晶片が振動する周波数の変化量から感応膜に付着した所定の物質の重量を算出することができる構成となっている。
つまり、微少質量測定用センサ素子は、感応膜が反応し水晶振動素子の周波数の変化量から感応膜と反応する所定の物質を検出することができる構成となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
このような微少質量測定用センサ素子は、例えば、水晶振動素子と保持具と蓋部材とから構成されており、取り扱い易くかつ測定直前まで感応膜にゴミなどが付着することを防ぐため、水晶振動素子が保持具に搭載されつつ蓋部材と保持具とで形成される空間内に水晶振動素子を封止している場合がある。
【0007】
水晶振動素子は、前述した特許文献1で説明したように、水晶片と二つ一対の励振電極と二つ一対の配線パターンとから構成されており、水晶片の両主面に設けられている励振電極が配線パターンに接続されている構造となっており、配線パターンの他方の端部と励振電極とが電気的に接続された構造となっている。
また、水晶振動素子は、前述したように、水晶片の圧電効果及び逆圧電効果により、配線パターンの他方の端部に交番電圧が印加されると、励振電極で挟まれている水晶片の一部が所定の周波数で振動する特性を有している。
【0008】
保持具は、例えば、基部と鍔部と二つ一対の固定部と二つ一対の脚部とから構成されている。
基部は、例えば、直方体形状に形成されている。
固定部は、例えば、二つ一対で設けられており、基部の所定の一つの面から二つ一対の固定部が同一方向に延設されている。また、固定部は、水晶振動素子の配線パターンと電気的に接続されている。
脚部は、例えば、基部の所定の他の一つの面から固定部と反対の方向に二つ一対の脚部が延設されている。また、脚部は、基部の内部配線を介して固定部と電気的に接続されている状態となっている。
鍔部は、例えば、基部の所定の他の一つの面の縁部に沿って環状に設けられている。このとき、鍔部は、基部の所定の一つの面から基部の所定の他の一つの面に向かう向きに垂直な方向に凸形状となっている。
従って、保持具は、固定部から脚部に向かう向きに見た場合、基部の所定の一つの面の縁部に沿って環状に鍔部が設けられた状態となっている。
【0009】
蓋部材は、一方の主面に水晶振動素子収納空間を備えており、この水晶振動素子収納空間内に水晶振動素子と基部と固定部が収納されている。
また、蓋部材は、一方の主面の縁部が保持具の鍔部と圧接されて接合される。このとき、蓋部材と保持具とで形成される空間、つまり、水晶振動素子収納空間が気密封止される。
また、蓋部材は、この気密封止された状態を破壊し易くするために、厚みが薄くされた凹部が蓋部材の側面に設けられている。
【0010】
このような微少質量測定用センサ素子は、微少質量測定用センサで用いる場合、蓋部材の厚みが薄くされた凹部を貫通する貫通孔を設け、この貫通孔が気相状態の検体を注入する構造となっている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002−243608号公報
【特許文献2】特開2007−271562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来の微少質量測定用センサ素子は、蓋部材と保持具とで形成された水晶振動素子収納空間内へ直接、気相状態である検体を注入する構造となっているので、感応膜と反応する物質であって分子量の異なる二つの物質が気相状態である検出材料に存在している場合、二つの物質が感応膜と反応してしまうことがある。
このため、従来の微少質量測定用センサ素子は、二つの物質をそれぞれ分けて検出することができない。
【0013】
また、従来の微少質量測定用センサ素子は、水分子及び所定の物質が感応膜と反応する場合、蓋部材の凹部空間を貫通し貫通孔を形成した後、気相状態である検体を注入しているので、検体を注入するまでの間に、従来の微少質量測定用センサ素子が設けられている雰囲気中に存在する水分子と所定の物質とが感応膜と反応してしまい、所定の物質を検出する検出精度及び検出感度が低下する恐れがある。
【0014】
そこで、本発明は、前述した課題を解決し、感応膜が反応する物質が二つ混在する場合、分子量に応じて反応する物質を分離させ分子量の小さい方の反応する物質を検出することができる微少質量測定用センサ素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するため、平板状の水晶片の両主面に、二つ一対の励振電極及び前記励振電極から前記水晶片の主面の縁部にまで延設されている二つ一対配線パターンが設けられている水晶振動素子と、前記水晶片に接している面に対向する前記励振電極に設けられている感応膜と、前記配線パターンに接触している二つ一対の固定部が直方体形状の基部の所定の一面から延設され、前記基部の所定の他の一面から二つ一対の脚部が前記固定部と反対方向に延設され、前記基部の所定の他の一面の縁部に沿って環状の鍔部が前記基部の所定の一面から前記基部の所定の他の一面に向かう向きに垂直となっている凸形状となるように設けられている保持具と、直方体形状に形成され、前記所定の一面に前記基部が収納される基部収納空間が形成され、前記基部収納空間の底面に前記水晶振動素子と前記基部と前記固定部が収納される水晶振動素子収納空間が形成され、前記水晶振動素子収納空間内側を向く面から前記所定の他の一面まで貫通している貫通孔が形成されている蓋部材と、分子の大きさに応じて物質を分離することができる分子ふるい材料からなり、前記貫通孔に充填されている充填材と、を備えていることを特徴とする。
【0016】
また、前記課題を解決するため、前記充填材が、分子の大きさが水分子より小さい物質と分子の大きさが水分子以上の物質とに分離することができることを特徴とする。
【0017】
また、前記課題を解決するため、平板状の水晶片の両主面に、二つ一対の励振電極及び前記励振電極から前記水晶片の主面の縁部にまで延設されている二つ一対配線パターンが設けられている水晶振動素子と、前記水晶片に接している面に対向する前記励振電極に設けられている感応膜と、前記配線パターンに接触している二つ一対の固定部が直方体形状の基部の所定の一面から延設され、前記基部の所定の他の一面から二つ一対の脚部が前記固定部と反対方向に延設され、前記基部の所定の他の一面の縁部に沿って環状の鍔部が前記基部の所定の一面から前記基部の所定の他の一面に向かう向きに垂直となっている凸形状となるように設けられている保持具と、直方体形状に形成され、前記所定の一面に前記基部が収納される基部収納空間が形成され、前記基部収納空間の底面に前記水晶振動素子と前記基部と前記固定部が収納される水晶振動素子収納空間が形成され、前記水晶振動素子収納空間内側を向く面から前記所定の他の一面まで貫通している貫通孔が形成されている蓋部材と、所定の物質を吸着又は/及び吸収する収着材料からなり、前記貫通孔に充填されている収着材と、を備えていることを特徴とする。
【0018】
また、前記課題を解決するため、前記収着材が水分子を吸収することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
このような微少質量測定用センサ素子によれば、内部に水晶振動素子収納空間を有した蓋部材と保持具とで水晶振動素子が水晶振動素子収納空間内に収納されており、分子の大きさに応じて物質を分離することができる充填材が蓋部材に設けられている貫通孔に充填されているので、感応膜が所定の二つの物質に反応する場合であっても、分子の大きさに応じて物質を分離することができる充填材を通過した気相状態の検体を水晶振動素子収納空間内に注入することができる。
このため、このような微少質量測定用センサ素子によれば、感応膜が所定の二つの物質に反応する場合であっても、分子の大きさが小さい方の物質のみを水晶振動素子に設けられている感応膜に反応させ、分子の大きさが小さい方の物質のみを検出することができる。
【0020】
また、このような微少質量測定用センサ素子によれば、充填材によって分子の大きさが水分子より小さい物質と分子の大きさが水分子以上の物質とに分離させることができるので、気相状態の検体中に含まれる水分子及び微少質量想定用センサ素子が設けられている雰囲気中の水分子が水晶振動素子収納空間内に入ることを防ぐことができる。
このため、このような微少質量測定用センサ素子によれば、感応膜が水分子及び所定の物質に反応する場合、所定の物質のみを感応膜と反応させることができ、所定の物質のみを検出することができる。
従って、このような微少質量測定用センサ素子によれば、水分子が感応膜と反応することを防ぐことができるので、所定の物質を検出する検出精度及び検出感度を向上させることができる。
【0021】
また、このような微少質量測定用センサ素子によれば、内部に水晶振動素子収納空間を有した蓋部材と保持具とで水晶振動素子が水晶振動素子収納空間内に収納されており、所定の物質を吸着又は/及び吸収する収着材が蓋部材に設けられている貫通孔に充填されているので、感応膜が所定の二つの物質に反応する場合であっても、一方の物質を収着材に吸着させ他方の物質のみを水晶振動素子収納空間内に注入することができる。
このため、このような微少質量測定用センサ素子によれば、感応膜が所定の二つの物質に反応する場合であっても、収着材で吸着又は/及び吸収されない他方の物質のみを水晶振動素子に設けられている感応膜に反応させ、収着材で吸着又は/及び吸収されない他方の物質のみを検出することができる。
【0022】
また、このような微少質量測定用センサ素子によれば、内部に水晶振動素子収納空間を有した蓋部材と保持具とで水晶振動素子が水晶振動素子収納空間内に収納されており、水分子を吸収する収着材が蓋部材に設けられている貫通孔に充填されているので、気相状態の検体中に含まれる水分子及び微少質量想定用センサ素子が設けられている雰囲気中の水分子が水晶振動素子収納空間内に入ることを防ぐことができる。
このため、このような微少質量測定用センサ素子によれば、感応膜が水分子及び所定の物質に反応する場合、所定の物質のみを感応膜と反応させることができ、所定の物質のみを検出することができる。
従って、このような微少質量測定用センサ素子によれば、水分子が感応膜と反応することを防ぐことができるので、所定の物質を検出する検出精度及び検出感度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る微少質量測定用センサ素子の一例を示す分解斜視図である。
【図2】(a)は、本発明の実施形態に係る微少質量測定用センサ素子の一例を示す平面図であり、(b)は、本発明の実施形態に係る微少質量測定用センサ素子の一例を示す断面図である。
【図3】(a)は、本発明の実施形態に係る微少質量測定用センサ素子に用いられる水晶振動素子及び保持具の一例を示す平面図であり、(b)は、本発明の実施形態に係る微少質量測定用センサ素子に用いられる水晶振動素子及び保持具の一例を示す断面図である。
【図4】(a)は、本発明の実施形態に係る微少質量測定用センサ素子に用いられる蓋部材の一例を示す平面図であり、(b)は、本発明の実施形態に係る微少質量測定用センサ素子に用いられる蓋部材の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明を実施するための最良の形態について説明する。なお、各図面において各構成要素の状態を分かりやすくするために誇張して図示している。
【0025】
(第一の実施形態)
本発明の第一の実施形態に係る微少質量測定用センサ素子100は、図1に示すように、水晶振動素子110と感応膜Rと保持具120と蓋部材130と充填材Jとから構成されている。
また、本発明の第一の実施形態に係る微少質量想定用センサ素子100は、保持具120に保持されている感応膜Rが設けられている水晶振動素子110が蓋部材130に設けられている水晶振動素子収納空間131に収納されている。
このとき、蓋部材の外周面から蓋部材の水晶振動素子収納空間内側を向く面まで貫通する貫通孔が蓋部材130に設けられており、この貫通孔133(図4(b)参照)に充填材Jが充填されている。
【0026】
水晶振動素子110は、例えば、図3(a)及び図3(b)に示すように、水晶片111と励振電極112と配線パターン113とから構成されている。
【0027】
水晶片111は、例えば、図3(a)に示すように、両主面が円形形状となっており、圧電材料である水晶部材が用いられている。
【0028】
励振電極112は、例えば、図3(b)に示すように、二つ一対で設けられており、一方の励振電極112が水晶片111の一方の主面に設けられ、他方の励振電極112が水晶片111の他方の主面に設けられている。このとき、一方の励振電極112と他方の励振電極112とが対向する位置に設けられている。
【0029】
配線パターン113は、例えば、二つ一対で設けられている。
また、配線パターン113は、図3(a)に示すように、一方の端部が励振電極112に接続されつつ他方の端部が水晶片111の主面の縁部に位置するように、励振電極112から水晶片111の主面の縁部まで延設されている。
一方の配線パターン113は、水晶片111の一方の主面に設けられており、一方の端部が一方の励振電極112に接続され、他方の端部が水晶片111の一方の主面の縁部に位置している。他方の配線パターン113は、水晶片111の他方の主面に設けられており、一方の端部が他方の励振電極113に接続され、他方の端部が水晶片111の他方の主面の縁部に位置している。このとき、一方の配線パターン113と他方の配線パターン113とは、両配線パターン113間で生じる容量による微少質量測定用センサ100の検出感度の低下を避けるため、対向しない位置に設けられている。
【0030】
従って、水晶振動素子110は、水晶片111の両主面に設けられている励振電極112が配線パターン113に接続されている構造となっており、配線パターン113の他方の端部と励振電極112とが電気的に接続された構造となっている。
また、水晶振動素子110は、水晶片111の圧電効果及び逆圧電効果により、配線パターン112の他方の端部に交番電圧が印加されると、励振電極112で挟まれている水晶片111の一部が所定の周波数で振動する特性を有している。
【0031】
感応膜Rは、例えば、所定の2つの物質と反応する性質を有している高分子脂質から構成されている。
また、感応膜Rは、図1及び図2(b)に示すように、水晶片111に接する面に対向する励振電極112の全面に設けられている。
【0032】
保持具120は、例えば、図3(a)と図3(b)に示すように、基部121と固定部122と脚部123と鍔部124とから構成されている。
【0033】
基部121は、例えば、図3(a)及び図3(b)に示すように、直方体形状に形成されている。
【0034】
固定部122は、例えば、図3(a)に示すように、二つ一対となっており、基部121の所定の一つの面から同一方向に延設されている。
また、固定部122は、例えば、導電性接着剤(図示せず)によって一方の端部が水晶振動素子110の配線パターン113に固定されかつ電気的に接続されている。
【0035】
脚部123は、例えば、図3(a)に示すように、二つ一対となっており、固定部122が延設されている面に対向する基部121の面から同一方向に延設されている。このとき、脚部123が延設される方向は、固定部122が延設される方向と反対方向となっている。
また、脚部123は、基部121の内部配線(図示せず)を介して固定部122と電気的に接続された状態となっている。
従って、脚部123は、基部121の内部配線と固定部122と配線パターン113とを介して励振電極112と電気的に接続された状態となっている。
【0036】
鍔部124は、例えば、図3(a)及び図3(b)に示すように、基部121の所定の他の一つの面の縁部に沿って環状に設けられている。
また、鍔部124は、例えば、図3(a)及び図3(b)に示すように、基部121の所定の一つの面から基部121の所定の他の一つの面に向かう向きに垂直な向きに凸形状となるように設けられている。
従って、鍔部124は、例えば、固定部122から脚部123に向かう向きに保持具120を見た場合、基部121の所定の一つの面の縁部に沿って環状に鍔部124が設けられた状態となっている。
【0037】
つまり、保持具120は、基部121の所定の一つの面から同一方向に二つ一対の固定部が延設されており、基部121の所定の一つの面に対向する基部121の面から同一方向に二つ一対の脚部123が設けられており、脚部121が設けられている基部121の面の縁部に沿って環状の鍔部124が設けられている。
また、保持具120は、固定部122の端部が水晶振動素子110の配線パターン113と電気的に接続されており、脚部123と水晶振動素子110の励振電極112とが電気的に接続されている状態となっている。
【0038】
蓋部材130は、例えば、図4(a)及び図4(b)に示すように、直方体形状に設けられている。
また、蓋部材130は、所定の一つの面に基部収納空間132が形成されており、基部収納空間132の底面に水晶振動素子収納空間131が形成されている。
また、蓋部材130は、蓋部材の所定の他の面から水晶振動素子収納空間131内側を向く面にかけて貫通孔133が形成されている。
【0039】
基部収納空間132は、図4(a)及び図4(b)に示すように、蓋部材130の所定の一つの面に形成されている。
また、基部収納空間132は、図2(b)に示すように、保持具120の基部121と同形状となっている。このため、基部収納空間132に保持具120の基部121がはめ込まれると、基部121が基部収納空間132に収納された状態で保持具120が蓋部材130に固定される。
【0040】
水晶振動素子収納空間131は、図4(a)及び図4(b)に示すように、前述した基部収納空間132に連なっており、蓋部材130の内部に直方体形状に形成されている。
また、水晶振動素子収納空間132は、図4(a)に示すように、水晶振動素子収納空間131内側を向く面のうち基部収納空間131が設けられている蓋部材130の所定の一つの面に平行な面の大きさが、基部収納空間131の開口部の大きさより大きくなっている。
また、水晶振動素子収納空間132は、図2(b)に示すように、保持具120の固定部122及び感応膜Rが設けられている水晶振動素子110が収納される大きさとなっている。
【0041】
貫通孔133は、例えば、図4(a)及び図4(b)に示すように、水晶振動素子収納空間133内側を向く面から蓋部材130の所定の他の面にかけて複数、形成されている。
また、貫通孔133には、図1及び図2(b)に示すように、後述する充填材Jが充填されている。
【0042】
従って、蓋部材130は、直方体形状となっている水晶振動素子収納空間131が内部に形成されている。
また、蓋部材130は、この水晶振動素子収納空間131の所定の一つの面から蓋部材130の所定の一つの面にかけて直方体形状となっている基部収納空間132が形成され、かつ、水晶振動素子収納空間131の所定の他の面から蓋部材130の所定の他の面にかけて貫通孔133が形成されている。
【0043】
また、蓋部材130は、感応膜Rが形成されている水晶振動素子が保持されている保持具120の固定部122を水晶振動素子収納空間131内側に収納するように、保持具120の基部121が基部収納空間132の開口部側から水晶振動素子収納空間131内側へ向く向きに嵌め込まれると、基部収納空間132に基部121が収納され保持具120が蓋部材130に固定される。
このとき、水晶振動素子収納空間131内側に感応膜Rが形成されている水晶振動素子110及び固定部124が水晶振動素子収納空間131内側を向く面に接触しないように収納されている。つまり、蓋部材130の水晶振動素子収納空間131内には、励振電極112で挟まれている水晶片111の一部が振動しているとき、水晶片111の振動を阻害しないように水晶振動素子110が収納されている。
【0044】
充填材Jは、前述したように、蓋部材130の貫通孔133に充填されている。
また、充填材Jは、分子の大きさに応じて物質を分離することができる分子ふるい材料からなり、例えば、分子の大きさが水分子小さい物質と分子の大きさが水分子以上の物質とに分離することができる。
【0045】
ここで、分子の大きさは、分子の相対的質量である分子量とする。
【0046】
また、充填材Jは、例えば、分子ふるい炭素が用いられる。
【0047】
従って、本発明の第一の実施形態に係る微少質量測定用センサ100は、基部収納空間132に保持具120の基部121が嵌めこまれつつ貫通孔133に充填材Jが充填されているので、水晶振動素子収納空間131内に貫通孔133に充填される充填材Jの種類によって所定の分子の大きさ以上の物質が流入することを防ぐことができる構造となっている。
例えば、本発明の第一の実施形態に係る微少質量測定用センサは、充填材Jによって分子の大きさが水分子より小さい物質と分子の大きさが水分子以上の物質とに分離することができるので、分子の大きさが水分子以上の物質が水晶振動素子収納空間131内に流入することを防ぐことができる構造となっている。
【0048】
また、本発明の第一の実施形態に係る微少質量測定用センサ100は、脚部123側の基部121の面の縁部に沿って環状でかつ脚部123から固定部122に向かう向きに垂直な方向に凸形状となっている鍔部124が設けられているので、基部収納空間132に基部121を嵌め込むことで基部収納空間132内に基部121を収納させることが容易にできる構造となっている。
【0049】
このような本発明の第一の実施形態に係る微少質量測定用センサ素子100によれば、内部に水晶振動素子収納空間131を有した蓋部材130と保持具120とで水晶振動素子110が水晶振動素子収納空間131内に収納されており、分子の大きさに応じて物質を分離することができる充填材Jが蓋部材130に設けられている貫通孔133に充填されているので、感応膜Rが所定の二つの物質に反応する場合であっても、分子の大きさに応じて物質を分離することができる充填材Jを通過した気相状態の検体を水晶振動素子収納空間131内に注入することができる。
このため、このような本発明の第一の実施形態に係る微少質量測定用センサ素子100によれば、感応膜Rが所定の二つの物質に反応する場合であっても、分子の大きさが小さい方の物質のみを水晶振動素子110に設けられている感応膜Rに反応させ、分子の大きさが小さい方の物質のみを検出することができる。
【0050】
また、このような本発明の第一の実施形態に係る微少質量測定用センサ素子によれば、充填材Jによって分子の大きさが水分子より小さい物質と分子の大きさが水分子以上の物質とに分離させることができるので、気相状態の検体中に含まれる水分子及び本発明の第一の実施形態に係る微少質量想定用センサ素子100が設けられている雰囲気中の水分子が水晶振動素子収納空間131内に入ることを防ぐことができる。
このため、このような本発明の第一の実施形態に係る微少質量測定用センサ素子100によれば、感応膜Rが水分子及び所定の物質に反応する場合、所定の物質のみを感応膜Rと反応させることができ、所定の物質のみを検出することができる。
従って、このような本発明の第一の実施形態に係る微少質量測定用センサ素子100によれば、水分子が感応膜Rと反応することを防ぐことができるので、所定の物質を検出する検出精度及び検出感度を向上させることができる。
【0051】
また、このような本発明の第一の実施形態に係る微少質量測定用センサ素子によれば、蓋部材に形成された貫通孔133に充填材Jが充填されているので、感応膜Rが所定の二つの物質に反応する場合、従来の微少質量測定センサ素子を用いた微少質量測定センサのように、微少質量測定用センサ素子を容器内に収納させ一方の物質のみが除去された検体が容器内に注入させる必要がなく、微少質量測定用センサ素子を収納する容器が不要となる。
このため、このような本発明の第一の実施形態に係る微少質量測定用センサ素子を用いた微少質量測定用センサは、従来の微少質量測定用センサ素子を用いた微少質量測定用センサと比較して、装置を小型化することができ、生産性を向上させることができる。
【0052】
(第二の実施形態)
本発明の第二の実施形態に係る微少質量測定用センサ素子は、収着材が蓋部材の貫通孔に充填されている点で本発明の第一の実施形態と異なる。
【0053】
収着材は、例えば、蓋部材の貫通孔に充填されている。
また、収着材は、所定の物質を吸着又は/及び吸収する収着材料が用いられ、例えば、水分子を吸収する吸水性高分子が用いられる。
また、収着材は、所定の物質を吸着又は/及び吸収した場合、所定の状態にすることで吸着又は/及び吸収した所定の物質を外部に放出することができる性質となっている。例えば、収着材は、水分子が吸収された状態で熱を加えた場合、吸収した水分子を収着材の外部に放出させることができる。
【0054】
従って、本発明の第二の実施形態に係る微少質量測定用センサは、基部収納空間に保持具の基部が嵌め込まれつつ貫通孔に収着材が充填されているので、所定の二つの物質が感応膜に反応する場合、収着材に一方の物質が吸着又は/及び吸収され水晶振動素子収納空間内に一方の物質が流入することを防ぐことができる構造となっている。
【0055】
また、このような本発明の第二の実施形態に係る微少質量測定用センサ素子によれば、内部に水晶振動素子収納空間を有した蓋部材と保持具とで水晶振動素子が水晶振動素子収納空間内に収納されており、所定の物質を吸着又は/及び吸収する収着材が蓋部材に設けられている貫通孔に充填されているので、感応膜が所定の二つの物質に反応する場合であっても、一方の物質を収着材に吸着又は/及び吸収させ他方の物質のみを水晶振動素子収納空間内に注入することができる。
このため、このような本発明の第二の実施形態に係る微少質量測定用センサ素子によれば、感応膜が所定の二つの物質に反応する場合であっても、収着材で吸着又は/及び吸収されない他方の物質のみを水晶振動素子に設けられている感応膜に反応させ、収着材で吸着又は/及び吸収さない他方の物質のみを検出することができる。
【0056】
また、このような本発明の第二の実施形態に係る微少質量測定用センサ素子によれば、内部に水晶振動素子収納空間を有した蓋部材と保持具とで水晶振動素子が水晶振動素子収納空間内に収納されており、水分子を吸収する収着材が蓋部材に設けられている貫通孔に充填されているので、気相状態の検体中に含まれる水分子及び微少質量測定用センサ素子が設けられている雰囲気中の水分子が水晶振動素子収納空間内に入ることを防ぐことができる。
このため、このような本発明の第二の実施形態に係る微少質量測定用センサ素子によれば、感応膜が水分子及び所定の物質に反応する場合、所定の物質のみを感応膜と反応させることができ、所定の物質のみを検出することができる。
従って、このような本発明の第二の実施形態に係る微少質量測定用センサ素子によれば、水分子が感応膜と反応することを防ぐことができるので、所定の物質を検出する検出精度及び検出感度を向上させることができる。
【0057】
また、このような本発明の第二の実施形態に係る微少質量測定用センサ素子によれば、所定の物質を吸着又は吸収した収着材を所定の状態にすることで外部に放出することができる収着材を用いているので、保持具に保持されている水晶振動素子を交換することで、何度も使いまわすことができる。
【0058】
また、このような本発明の第二の実施形態に係る微少質量測定用センサ素子によれば、蓋部材に形成された貫通孔に収着剤が充填されているので、感応膜が所定の二つの物質に反応する場合、従来の微少質量測定センサ素子を用いた微少質量測定センサのように、微少質量測定用センサ素子を容器内に収納させ一方の物質のみが除去された検体が容器内に注入させる必要がなく、微少質量測定用センサ素子を収納する容器が不要となる。
このため、このような本発明の第二の実施形態に係る微少質量測定用センサ素子を用いた微少質量測定用センサは、従来の微少質量測定用センサ素子を用いた微少質量測定用センサと比較して、装置を小型化することができ、生産性を向上させることができる。
【0059】
なお、貫通孔が水晶振動素子収納空間内側を向く面から蓋部材の所定の他の一つの面にかけて形成されている場合について説明しているが、基部収納空間が形成されている蓋部材の所定の一つの面を除く蓋部材の所定の他の面にかけて形成されていれば、例えば、二つ以上の面に設けてもよい。
【0060】
また、貫通孔が蓋部材の所定の他の一つの面に複数個、形成されている場合について説明しているが、例えば、一つだけ形成してもよい。
【0061】
また、貫通孔が円柱形状の場合を図示しているが、水晶振動素子収納空間内側を向く面から蓋部材の所定の他の一つの面にかけて形成されていれば、例えば、水晶振動素子収納空間内側を向く面の開口部又は蓋部材の外周面の開口部の形状が矩形形状となっていてもよい。
【0062】
また、基部収納空間内に基部を嵌め込むことで保持具が蓋部材に固定される場合について説明しているが、例えば、基部収納空間内に基部を収納させ基部収納空間の開口部を接着剤で埋め固定してもよい。
【0063】
また、蓋部材の材質について特に指定しないが、例えば、フッ素樹脂からなっていてもよい。また、例えば、金属からなっていてもよい。また、例えば、プラスチックからなっていてもよい。
【0064】
また、水分子の相状態について特に限定していないが、例えば、気体である水蒸気の状態であってもよい。また、たとえば、液体である水滴の状態であってもよい。
【0065】
また、充填材が分子ふるい炭素からなる場合について説明したが、分子の大きさに応じて物質を分離することができる分子ふるい材料であれば、例えば、メソポーラスシリカであってもよい。また、例えば、ゼオライトであってもよい。
【0066】
また、収着材が吸水性高分子からなる場合について説明したが、所定の物質を吸着又は/及び吸収する収着材料であれば、例えば、シリカゲルであってもよい。
【符号の説明】
【0067】
100 微少質量測定用センサ
110 水晶振動素子
111 水晶片
112 励振電極
113 配線パターン
120 保持具
121 基部
122 固定部
123 脚部
124 鍔部
130 蓋部材
131 水晶振動素子収納空間
132 基部収納空間
133 貫通孔
R 感応膜
J 充填材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の水晶片の両主面に、二つ一対の励振電極及び前記励振電極から前記水晶片の主面の縁部にまで延設されている二つ一対配線パターンが設けられている水晶振動素子と、
前記水晶片に接している面に対向する前記励振電極に設けられている感応膜と、
前記配線パターンに接触している二つ一対の固定部が直方体形状の基部の所定の一面から延設され、前記基部の所定の他の一面から二つ一対の脚部が前記固定部と反対方向に延設され、前記基部の所定の他の一面の縁部に沿って環状の鍔部が前記基部の所定の一面から前記基部の所定の他の一面に向かう向きに垂直となっている凸形状となるように設けられている保持具と、
直方体形状に形成され、前記所定の一面に前記基部が収納される基部収納空間が形成され、前記基部収納空間の底面に前記水晶振動素子と前記基部と前記固定部が収納される水晶振動素子収納空間が形成され、前記水晶振動素子収納空間内側を向く面から前記所定の他の一面まで貫通している貫通孔が形成されている蓋部材と、
分子の大きさに応じて物質を分離することができる分子ふるい材料からなり、前記貫通孔に充填されている充填材と、
を備えていることを特徴とする微少質量測定用センサ素子。
【請求項2】
請求項1に記載の微少質量測定用センサ素子であって、前記充填材が、分子の大きさが水分子より小さい物質と分子の大きさが水分子以上の物質とに分離することができることを特徴とする微少質量測定用センサ素子。
【請求項3】
平板状の水晶片の両主面に、二つ一対の励振電極及び前記励振電極から前記水晶片の主面の縁部にまで延設されている二つ一対配線パターンが設けられている水晶振動素子と、
前記水晶片に接している面に対向する前記励振電極に設けられている感応膜と、
前記配線パターンに接触している二つ一対の固定部が直方体形状の基部の所定の一面から延設され、前記基部の所定の他の一面から二つ一対の脚部が前記固定部と反対方向に延設され、前記基部の所定の他の一面の縁部に沿って環状の鍔部が前記基部の所定の一面から前記基部の所定の他の一面に向かう向きに垂直となっている凸形状となるように設けられている保持具と、
直方体形状に形成され、前記所定の一面に前記基部が収納される基部収納空間が形成され、前記基部収納空間の底面に前記水晶振動素子と前記基部と前記固定部が収納される水晶振動素子収納空間が形成され、前記水晶振動素子収納空間内側を向く面から前記所定の他の一面まで貫通している貫通孔が形成されている蓋部材と、
所定の物質を吸着又は/及び吸収する収着材料からなり、前記貫通孔に充填されている収着材と、
を備えていることを特徴とする微少質量測定用センサ素子。
【請求項4】
請求項3に記載の微少質量測定用センサ素子であって、前記収着材が水分子を吸収することを特徴とする微少質量測定用センサ素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−11534(P2013−11534A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145063(P2011−145063)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000104722)京セラクリスタルデバイス株式会社 (870)