説明

微少質量測定用センサ素子

【課題】感応膜の表面に水滴が付着することを防ぎ所定の物質を検出する検出精度及び検出感度が向上された微少質量測定用センサ素子を提供する。
【解決手段】水晶片に励振電極及び配線パターンが設けられている水晶振動素子と、励振電極に設けられている感応膜と、配線パターンに接触する固定部が基部の所定の一つの一つの面から延設され、脚部が基部の所定の他の一つの面から延設されている保持具と、所定の一つ外周面に基部収納空間が形成され、基部収納空間に連なって内部に水晶振動素子収納空間が形成され、所定の他の一つの外周面に筒状の導入部が形成されて水晶振動素子収納空間にかけて貫通して設けられている蓋部材と、を備え、導入部の内径が水晶振動素子収納空間に近づくにつれて小さくなっており、蓋部材の外周面及び導入部の内面に撥水処理が施されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感応膜と反応する物質を検出する微少質量測定用センサ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
微少質量測定用センサ素子は、微少な量、例えば、1μgを検出することができる水晶振動子微少質量天秤(Quartz Crystal Microbalance Sensor)に用いられている。
この水晶振動子微少質量天秤で用いられる微少質量測定用センサ素子は、例えば、水晶振動素子と水晶振動素子の励振電極に設けられている感応膜とを少なくとも備えている。
【0003】
水晶振動素子は、例えば、水晶片と励振電極と配線パターンとから構成されている。
水晶片は、圧電材料である水晶部材が用いられ、例えば、両主面が円形形状の平板状となっている。
励振電極は、例えば、二つ一対となっており、一方の励振電極が水晶片の一方の主面に設けられ、他方の励振電極が水晶片の他方の主面であって一方の励振電極に対向する位置に設けられている。
配線パターンは、例えば、二つ一対となっている。それぞれの配線パターンは、一方の端部が励振電極に接続され、他方の端部が水晶片の主面の縁部に位置している。一方の配線パターンは、例えば、一方の端部が一方の励振電極に接続され、他方の端部が水晶片の一方の主面の縁部に位置している。他方の配線パターンは、例えば、一方の端部が他方の励振電極に接続され、他方の端部が水晶片の他方の主面の縁部に位置している。なお、二つ一対の配線パターンは、配線パターン間の配線容量による微少質量測定用センサ素子の検出精度及び検出感度の低下を避けるために互いに向かい合わないように配置されている。
従って、水晶振動素子は、水晶片の圧電効果及び逆圧電効果により、水晶片の両主面に設けられている励振電極が配線パターンに接続されている構造となっており、励振電極が配線パターンの他方の端部と電気的に接続された構造となっている。
また、水晶振動素子は、水晶片が圧電材料である水晶部材が用いられているので、二つ一対の配線パターンに電圧が印加されると、励振電極に電圧が印加されることとなり、励振電極に挟まれている水晶片の一部が所定の周波数で振動する特性を有している。
【0004】
感応膜は、例えば、所定の物質と反応する性質を有している高分子脂質から構成されている。
また、感応膜は、水晶振動素子の励振電極に設けられている。
【0005】
従って、感応膜が反応する所定の物質が含まれている雰囲気中に設けられた場合、微少質量測定用センサ素子は、所定の物質が水晶振動素子に設けられている感応膜と反応し感応膜に吸着する。
このため、微少質量測定用センサ素子は、所定の物質が感応膜と反応し感応膜に吸着すると所定の物質が吸着した分だけ水晶片が振動する周波数が変化する構造となっているので、水晶片が振動する周波数の変化量から感応膜に付着した所定の物質の重量を算出することができる構成となっている。
つまり、微少質量測定用センサ素子は、感応膜が反応し水晶片が振動する周波数の変化量から感応膜と反応する所定の物質を検出することができる構成となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
このような微少質量測定用センサ素子は、例えば、水晶振動素子と保持具と蓋部材とから構成されており、取り扱い易くかつ測定直前まで感応膜にゴミなどが付着することを防ぐため、水晶振動素子が保持具に搭載されつつ蓋部材と保持具とで形成される空間内に水晶振動素子を封止している場合がある。
【0007】
水晶振動素子は、前記した特許文献1と同様に、水晶片と二つ一対の励振電極と二つ一対の配線パターンとから構成されており、水晶片の両主面に設けられている励振電極が配線パターンに接続されている構造となっており、配線パターンの他方の端部と励振電極とが電気的に接続された構造となっている。
また、水晶振動素子は、前述したように、圧電材料である水晶部材が水晶片に用いられているので、配線パターンの他方の端部に電圧が印加されると、励振電極に電圧が印加されることとなり、励振電極で挟まれている水晶片が所定の周波数で振動する特性を有している。
【0008】
保持具は、例えば、基部と鍔部と二つ一対の固定部と二つ一対の脚部とから構成されている。
基部は、例えば、直方体形状に形成されている。
固定部は、例えば、二つ一対で設けられており、基部の所定の一つの面から同一方向に延設されている。また、固定部は、水晶振動素子の配線パターンと電気的に接続されている。
脚部は、例えば、二つ一対で設けられており、基部の所定の他の一つの面から固定部の延設されている方向と反対の方向に延設されている。また、それぞれの脚部は、基部の内部配線を介して固定部と電気的に接続されている状態となっている。
鍔部は、例えば、脚部が延設されている基部の所定の他の一つの面の縁部に沿って環状に設けられている。また、鍔部は、基部の所定の一つの面から基部の所定の他の一つの面に向かう向きに垂直な方向に凸形状となっている。従って、鍔部は、基部の所定の一つの面を基部の一方の主面、基部の所定の他の一つの面を基部の他方の主面、基部の一方の主面及び他方の主面に接する面を基部の側面としたとき、側面に対し凸形状となっている。
【0009】
蓋部材は、一方の主面に水晶振動素子収納空間を備えており、この水晶振動素子収納空間内に水晶振動素子と基部と固定部とが収納されている。
また、蓋部材は、一方の主面の縁部が保持具の鍔部と圧接されて接合される。このとき、蓋部材と保持具とで形成される空間、つまり、水晶振動素子収納空間が気密封止される。
また、蓋部材は、この気密封止された状態を破壊しやすくするために、厚みが薄くされた凹部が蓋部材の側面に設けられている。
【0010】
このような微少質量測定用センサ素子は、微少質量測定用センサで用いる場合、蓋部材の厚みが薄くされた凹部を貫通する貫通穴を設け、この貫通穴が気相状態の検体を注入する構造となっている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002−243608号公報
【特許文献2】特開2007−271562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来の微少質量測定用センサ素子は、蓋部材の凹部空間を貫通させ貫通穴を形成した後、気相状態である検体を注入する構造となっているので、水蒸気を多く含んだ検体が用いられた場合、検体が接触した部分で結露が生じ検体の導入される際の圧力で結露によって生じた水滴が励振電極上に形成されている感応膜の表面に付着してしまう恐れがある。
このため、従来の微少質量測定用センサ素子は、感応膜の表面に水滴が付着してしまうため、感応膜に付着している水滴によって感応膜に付着している水滴によって感応膜が所定の物質と反応することができなくなり、所定の物質を検出する検出精度及び検出感度が低下する恐れがある。
【0013】
また、従来の微少質量測定用センサ素子は、蓋部材の凹部空間を貫通させ蓋部材の外周面から水晶振動素子収納空間までの貫通されている貫通穴を形成した後、気相状態である検体を導入する構造となっているので、検体を注入するまでの間に水蒸気を多く含んだ雰囲気中に設けられた場合、従来の微少質量測定用センサ素子の表面に結露が生じてしまい開口部付近で結露によって生じた水滴が水晶振動素子収納空間内部に入り、励振電極上に形成されている感応膜の表面に水滴が付着してしまう恐れがある。
このため、従来の微少質量測定用センサ素子は、感応膜の表面に水滴が付着してしまうため、感応膜に付着している水滴によって感応膜に付着している水滴によって感応膜が所定の物質と反応することができなくなり、所定の物質を検出する検出精度及び検出感度が低下する恐れがある。
【0014】
そこで、本発明は、前述した課題を解決し、感応膜の表面に水滴が付着することを防ぎ、所定の物質を検出する検出精度及び検出感度が向上された微少質量測定用センサ素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するため、平板状の水晶片の両主面に、二つ一対の励振電極及び前記励振電極から前記水晶片の主面の縁部まで延設されている二つ一対の配線パターンが設けられている水晶振動素子と、前記水晶片に接している面に対向する前記励振電極に設けられている感応膜と、前記配線パターンに接触している二つ一対の固定部が直方体形状の基部の所定の一つの面から延設され、前記基部の所定の他の一つの面から二つ一対の脚部が前記固定部と反対の方向に延設され、前記基部の所定の他の一つの面の縁部に沿って環状の鍔部が前記基部の所定の一つの面から所定の他の一つの面に向かう向きに垂直な方向に凸形状となるように設けられている保持具と、形が直方体形状に形成され、所定の一つの外周面に前記基部が収納される基部収納空間が形成され、前記固定部及び前記水晶振動素子が収納される水晶振動素子収納空間が前記基部収納空間に連なり内部に形成され、所定の他の外周面に両端が開口する筒状の導入部が形成されて前記水晶振動素子収納空間にかけて貫通して設けられている蓋部材と、筒状の前記導入部の内径が前記水晶振動素子収納空間に近づくにつれて小さくなっており、前記蓋部材の外周面及び筒状の前記導入部の内面に撥水処理が施されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
このような微少質量測定用センサ素子は、内部に水晶振動素子収納空間が形成され、両端が開口する筒状の導入部が外周面に形成されて水晶振動素子収納空間まで貫通して設けられている蓋部材が設けられており、この水晶振動素子収納空間内に保持具に保持されている水晶振動素子及び固定部が収納された構造となっている。
このとき、このような微少質量測定用センサ素子によれば、筒状の導入部の内径が水晶振動素子収納空間に向かうにつれて小さくなっており、蓋部材の外周面及び導入部の内面に撥水処理が施されているので、水蒸気を多く含んだ検体が用いられている場合、導入部の内面に結露によって水滴が生じることとなり、この結露によって生じた水滴を水晶振動素子収納空間から導入部に向かう向きに排出することができる。
このため、このような微少質量測定用センサ素子によれば、結露によって生じた水滴が感応膜の表面に付着することを防ぐことができ、従来の微少質量測定用センサ素子と比較して所定の物質を検出する検出精度及び検出感度を向上させることができる。
【0017】
また、このような微少質量測定用センサ素子には、内部に水晶振動素子収納空間が形成され、外周面に両端が開口する筒状の導入部が形成されて水晶振動素子収納空間まで貫通して設けられている蓋部材が用いられており、この水晶振動素子収納空間内に保持具に保持されている水晶振動素子及び固定部が収納されており、導入部の内径が水晶振動素子収納空間に近づくにつれて小さくなる構造となっている。
このため、このような微少質量測定用センサ素子は、検体を導入するまでの間に水蒸気を多く含んだ雰囲気中に設けられた場合、蓋部材の表面及び導入部の内面に結露によって生じた水滴が水滴自身に加わる重力によって水晶振動素子収納空間内に入り込むことを防ぐことができる構造となっている。
従って、このような微少質量測定用センサ素子によれば、検体を導入するまでの間に水蒸気を多く含んだ雰囲気中に設けられた場合、結露によって生じた水滴が水晶振動素子収納空間内に入り込むことを防ぐことができるので、励振電極上に形成されている感応膜の表面に水滴を付着することを防ぐことができ、従来の微少質量測定用センサ素子と比較して所定の物質を検出する検出精度及び検出感度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)は、本発明の実施形態に係る微少質量測定用センサ素子の一例を示す平面図であり、(b)は、本発明の実施形態に係る微少質量測定用センサ素子の一例を示す断面図である。
【図2】(a)は、本発明の実施形態に係る微少質量測定用センサ素子で用いる水晶振動素子及び保持具の一例を示す平面図であり、(b)は、本発明の実施形態に係る微少質量測定用センサ素子で用いる水晶振動素子及び保持具の一例を示す断面図である。
【図3】(a)は、本発明の実施形態に係る微少質量測定用センサ素子で用いる蓋部材の一例を示す平面図であり、(b)は、本発明の実施形態に係る微少質量測定用センサ素子で用いる蓋部材の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明を実施するための最良の形態について説明する。なお、各図面において各構成要素の状態を分かりやすくするために誇張して図示している。
【0020】
本発明の実施形態に係る微少質量測定用センサ素子100は、図1(a)及び図1(b)に示すように、水晶振動素子110と感応膜Rと保持具120と蓋部材130とから構成されている。
また、本発明の実施形態に係る微少質量測定用センサ素子100は、図1(a)及び図1(b)に示すように、保持具120に保持されている感応膜Rが設けられている水晶振動子110が蓋部材130に形成されている水晶振動素子収納空間121内に収納されている。
また、図1(a)及び図1(b)に示すように、本発明の実施形態に係る微少質量測定用センサ素子100は、蓋部材130の外周面に両端が開口している筒状の導入部133が形成されており、蓋部材130に接する面に対向する導入部133の面から水晶振動素子収納空間131にかけて貫通している。
【0021】
水晶振動素子110は、図2(a)及び図2(b)に示すように、水晶片111と励振電極112と配線パターン113とから構成されている。
【0022】
水晶片111は、例えば、図2(a)及び図2(b)に示すように、両主面が円形材料となっており、圧電材料である水晶部材が用いられている。
【0023】
励振電極112は、図2(a)及び図2(b)に示すように、両主面が円形形状となっており、一方の励振電極112が水晶片111の一方の主面に設けられ、他方の励振電極112が水晶片111の他方の主面に設けられている。このとき、一方の励振電極112と他方の励振電極112とが対向する位置に設けられている。
【0024】
配線パターン113は、例えば、二つ一対で設けられている。
また、配線パターン113は、図2(a)に示すように、一方の端部が励振電極112に接続されつつ他方の端部が水晶片111の主面の縁部に位置するように、励振電極112から水晶片111の主面の縁部まで延設されている。
一方の配線パターン113は、水晶片111の一方の主面に設けられており、一方の端部が一方の励振電極112に接続され、他方の端部が水晶片111の一方の主面の縁部に位置している。
他方配線パターン113は、水晶片111の他方の主面に設けられており、一方の端部が他方の励振電極112に接続され、他方の端部が水晶片111の他方の主面の縁部に位置している。
このとき、一方の配線パターン113と他方の配線パターン113とは、両配線パターン113間で生じる容量による微少質量測定用センサ100の検出感度の低下を避けるために、対向しない位置に設けられている。
【0025】
従って、水晶振動素子110は、水晶片111の両主面に設けられている励振電極112が配線パターン113に接続されている構造となっており、配線パターン113の他方の端部と励振電極112とが電気的に接続された構造となっている。
また、水晶振動素子110は、水晶片111が圧電材料である水晶部材が用いられているので、配線パターン113に電圧が印加されると、励振電極112に挟まれている水晶片111の一部が所定の周波数で振動する特性を有している。
【0026】
感応膜Rは、所定の物質と反応する性質を有している高分子脂質から構成されている。
また、感応膜Rは、図1(b)及び図2(b)に示すように、水晶片111に接する面に対向する励振電極112の全面に設けられている。
【0027】
保持具120は、例えば、図2(a)及び図2(b)に示すように、基部121と固定部122と脚部123と鍔部124とから構成されている。
【0028】
基部121は、例えば、図2(a)及び図2(b)に示すように、直方体形状に形成されている。
【0029】
固定部122は、例えば、図2(a)に示すように、二つ一対となっており、基部121の所定の一つの面から同一方向に延設されている。
また、固定部122は、例えば、導電性接着材(図示せず)によって一方の端部が水晶振動素子110の配線パターン113に固定されかつ電気的に接続されている。
【0030】
脚部123は、例えば、図2(a)に示すように、二つ一対となっており、固定部122が延設されている面に対向する基部121の面から同一方向に延設されている。つまり、二つ一対の脚部123は、基部121の所定の一つの面に対向する面から、固定部122と反対方向に延設されている。
また、それぞれの脚部123は、基部121の内部配線(図示せず)を介して固定部122と電気的に接続された状態となっている。
従って、それぞれの脚部123は、配線パターン113と固定部122と基部121の内部配線とを介して励振電極112と電気的に接続された状態となっている。
【0031】
鍔部124は、例えば、図2(a)及び図2(b)に示すように、基部121の所定の他の一つの面に沿って環状に設けられている。ここで、基部121の所定の他の一つの面は、固定部122が延設されている基部121の面に対向する面であって、脚部123が延設されている基部121の面である。
また、鍔部124は、例えば、図2(a)及び図2(b)に示すように、基部121の所定の一つの面から基部121の所定の他の一つの面に向かう向きに垂直な向きに凸形状となるように設けられている。
従って、鍔部124は、基部121の所定の一つの面を基部121の一方の主面、基部121の所定の他の一つの面を基部121の他方の主面、基部121の一方の主面及び他方の主面に接する面を基部121の側面としたとき、側面に対し凸形状となっている。
【0032】
つまり、保持具120は、基部121の所定の一つの面から同一方向に二つ一対の固定部122が延設されており、基部121の所定の一つの面に対向する面から固定部122と反対方向に二つ一対の脚部123が延設されており、脚部121が設けられている基部121の面の縁部に沿って環状の鍔部124が設けられている。
また、保持具120は、固定部122の端部が水晶振動素子110の配線パターン113と電気的に接続されており、脚部123と水晶振動素子110の励振電極112とが電気的に接続されている状態となっている。
【0033】
蓋部材130は、例えば、図1(a)、図1(b)、図3(a)及び図3(b)に示すように、形が直方体形状に形成されている。
また、蓋部材130は、所定の一つの外周面に基部収納空間132が形成されており、基部収納空間132の底面となる位置に連なって水晶振動素子収納空間が形成されている。
また、蓋部材130は、所定の他の外周面に両端が開口している筒状の導入部133が形成されている。
また、蓋部材130は、蓋部材130の所定の他の面に接している面に対向する導入部133の面から水晶振動素子収納空間132にかけて貫通している。
【0034】
基部収納空間132は、図3(a)及び図3(b)に示すように、蓋部材130の所定の一つの外周面に形成されている。
また、基部収納空間132は、保持具120の基部121と同形状となっている。
このため、基部収納空間132に保持具120の基部121がはめ込まれると、基部121が基部収納空間132に収納された状態で保持具120が蓋部材130に固定される。
【0035】
水晶振動素子収納空間131は、図3(a)及び図3(b)に示すように、基部収納空間132の底面となる位置に基部収納空間132に連なって設けられており、蓋部材130の内部に直方体形状に形成されている。
また、水晶振動素子収納空間131は、図3(a)に示すように、蓋部材130の所定の一つの面に平行な水晶振動素子収納空間131内側を向く面の大きさが基部収納空間132の開口部の大きさより大きくなっている。
また、水晶振動素子収納空間131は、図1(b)に示すように、固定部122及び感応膜Rが設けられている水晶振動素子110が収納される大きさとなっている。
【0036】
導入部133は、例えば、図1(a)、図1(b)、図3(a)及び図3(b)に示すように、蓋部材130の所定の他の一つの面に複数、設けられている。
また、導入部133は、図1(a)及び図3(a)に示すように、この導入部133が設けられている蓋部材130の所定の他の一つの面を見た場合、導入部133が円形形状となっている。
【0037】
また、導入部133は、図1(b)及び図3(b)に示すように、両端が開口する筒状になっており、水晶振動素子収納空間131まで貫通して設けられている。
このとき、図1(b)及び図3(b)に示すように、導入部133の内径が水晶振動素子収納空間131に近づくにつれて小さくなっている。
【0038】
従って、蓋部材130は、直方体形状となっている水晶振動素子収納空間131が内部に形成されており、所定の一つの外周面から水晶振動素子収納空間131にかけて連なって基部収納空間132が形成されている。
また、蓋部材130は、所定の他の一つの外周面に両端が開口している筒状の導入部133が形成されており、水晶振動素子収納空間131にかけて筒状の導入部133の内径が小さくなるように貫通している。
【0039】
また、蓋部材130は、感応膜Rが形成されている水晶振動素子110が保持されている保持具120の固定部122を水晶振動素子収納空間131内に収納するように、保持具120の基部121を基部収納空間132の開口部側から水晶振動素子収納空間131内へ向かう向きに保持具120がはめ込まれると、基部収納空間132に基部121が収納され保持具120が蓋部材130に固定される構造となっている。
このとき、感応膜Rが形成され保持具120に保持されている水晶振動素子110は、水晶振動素子収納空間131内を向く面に、水晶振動素子110、感応膜R及び固定部122が接触しないように収納されている。
つまり、水晶振動素子110は、励振電極112で挟まれ水晶片111が振動しているときに水晶片111の振動を阻害しないように水晶振動素子110が収納されている。
【0040】
また、蓋部材130は、水晶振動素子収納空間131側の開口部から導入部133側の開口部に向かう向きに重力の向きと平行となるように配置されるとき、例えば、導入口134側を向く面に水滴がすると、この水滴に重力によって水滴が導入部133側の開口部へ移動し蓋部材130から落下する構造となっている。
このため、水晶振動素子収納空間131側の開口部から導入部133側の開口部に向かう向きに重力の向きと平行となるように蓋部材130を配置することで、導入口134側を向く面に水滴が付着した水滴が水晶振動素子収納空間131内へ入りこむことを完全に防ぐことができる。
【0041】
また、蓋部材130は、蓋部材130の外周面及び導入部133の内面に撥水加工処理が施されている。
ここで、撥水加工処理が施されている状態とは、例えば、フッ素樹脂が熱によって付着又は固着されている状態とする。
このため、蓋部材130は、水蒸気が多い雰囲気中に設けられ結露が発生した場合、結露によって生じた水滴が蓋部材130の表面及び導入部133の内面ではじくことができる構成となっている。
【0042】
このような本発明の実施形態に係る微少質量測定用センサ素子100は、内部に水晶振動素子収納空間131が形成され、両端が開口する筒状の導入部133が外周面に形成されて水晶振動素子収納空間131まで貫通して設けられている蓋部材130が設けられており、この水晶振動素子収納空間131内に保持具に保持されている水晶振動素子110及び固定部120が収納された構造となっている。
このとき、このような本発明の実施形態に係る微少質量測定用センサ素子100によれば、筒状の導入部133の内径が水晶振動素子収納空間131に向かうにつれて小さくなっており、蓋部材130の外周面及び導入部133の内面に撥水処理が施されているので、水蒸気を多く含んだ検体が用いられている場合、導入部133の内面に結露によって水滴が生じることとなり、この結露によって生じた水滴を水晶振動素子収納空間131から導入部133に向かう向きに排出することができる。
このため、このような本発明の実施形態に係る微少質量測定用センサ素子100によれば、結露によって生じた水滴が感応膜の表面に付着することを防ぐことができ、従来の微少質量測定用センサ素子と比較して所定の物質を検出する検出精度及び検出感度を向上させることができる。
【0043】
また、このような本発明の実施形態に係る微少質量測定用センサ素子100には、内部に水晶振動素子収納空間131が形成され、外周面に両端が開口する筒状の導入部133が形成されて水晶振動素子収納空間131まで貫通して設けられている蓋部材130が用いられており、この水晶振動素子収納空間131内に保持具120に保持されている水晶振動素子110及び固定部122が収納されており、導入部133の内径が水晶振動素子収納空間131に近づくにつれて小さくなる構造となっている。
このため、このような本発明の実施形態に係る微少質量測定用センサ素子100は、検体を導入するまでの間に水蒸気を多く含んだ雰囲気中に設けられた場合、蓋部材130の表面及び導入部133の内面に結露によって生じた水滴が水滴自身に加わる重力によって水晶振動素子収納空間131内に入り込むことを防ぐことができる構造となっている。
従って、このような本発明の実施形態に係る微少質量測定用センサ素子100によれば、検体を導入するまでの間に水蒸気を多く含んだ雰囲気中に設けられた場合、結露によって生じた水滴が水晶振動素子収納空間131内に入り込むことを防ぐことができるので、励振電極112上に形成されている感応膜Rの表面に水滴を付着することを防ぐことができ、従来の微少質量測定用センサ素子と比較して所定の物質を検出する検出精度及び検出感度を向上させることができる。
【0044】
なお、蓋部材に撥水加工処理が施されている場合について説明しているが、例えば、撥水加工が施された状態となるよう導入部が設けられている蓋部材があらかじめフッ素樹脂から構成されていてもよい。
【0045】
また、導入部が所定の他の一つの面に複数、設けられている場合について説明しているが、例えば、一つだけ形成してもよい。
【0046】
また、水晶振動素子収納空間側の開口部から導入部側の開口部に向かう向きが重力のかかる向きと平行となるように蓋部材を配置する場合について説明しているが、例えば、導入部が設けられている蓋部材の所定の他の一つの外周面を重力のかかる向きと平行となるように蓋部材を配置してもよい。ここでは、導入部の内面に水滴が付着した場合、導入部の内面に撥水処理が施されているので、水滴にかかる重力より表面張力が弱くなり、導入部側の開口部から水滴を落下させることができる配置となっている。
【0047】
また、導入部が蓋部材の所定の他の一つの外周面にのみ形成されている場合について説明しているが、導入部の内面に付着した水滴を水滴自身に加わる重力によって水晶振動素子収納空間側の開口部から導入部側の開口部に向かう向きに移動させることができる構造となっていれば、例えば、基部収納空間が設けられている蓋部材の所定の一つの外周面及びこの面に対向する面を除く面に導入部を形成してもよい。このとき、微少質量測定用センサ素子は、蓋部材の所定の一つの外周面からこの面に対向する外周面に向かう向きが重力の方向と平行となるように配置されて用いられる。従って、このとき、蓋部材は、導入部の内面に水滴が付着した場合、導入部の内面に撥水処理が施されているので、水滴にかかる重力により表面張力が弱くなり、導入部側の開口部から水滴を落下させることができる配置されている。
【符号の説明】
【0048】
100 微少質量測定用センサ素子
110 水晶振動素子
111 水晶片
112 励振電極
113 配線パターン
R 感応膜
120 保持具
121 基部
122 固定部
123 脚部
130 蓋部材
131 水晶振動素子収納空間
132 基部収納空間
133 導入部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の水晶片の両主面に、二つ一対の励振電極及び前記励振電極から前記水晶片の主面の縁部まで延設されている二つ一対の配線パターンが設けられている水晶振動素子と、
前記水晶片に接している面に対向する前記励振電極に設けられている感応膜と、
前記配線パターンに接触している二つ一対の固定部が直方体形状の基部の所定の一つの面から延設され、前記基部の所定の他の一つの面から二つ一対の脚部が前記固定部と反対の方向に延設され、前記基部の所定の他の一つの面の縁部に沿って環状の鍔部が前記基部の所定の一つの面から所定の他の一つの面に向かう向きに垂直な方向に凸形状となるように設けられている保持具と、
形が直方体形状に形成され、所定の一つの外周面に前記基部が収納される基部収納空間が形成され、前記固定部及び前記水晶振動素子が収納される水晶振動素子収納空間が前記基部収納空間に連なり内部に形成され、所定の他の外周面に両端が開口する筒状の導入部が形成されて前記水晶振動素子収納空間にかけて貫通して設けられている蓋部材と、
筒状の前記導入部の内径が前記水晶振動素子収納空間に近づくにつれて小さくなっており、
前記蓋部材の外周面及び筒状の前記導入部の内面に撥水処理が施されている
ことを特徴とする微少質量測定用センサ素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−76644(P2013−76644A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217012(P2011−217012)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000104722)京セラクリスタルデバイス株式会社 (870)