説明

微生物測定システム

【課題】
複数種類の試薬を目的に応じて使い分けることに対応すると共に、より高感度で信頼性の高い微生物測定を行う。
【解決手段】
微生物測定システムにおいて、検体溜め101と、試薬溜め103と、検体溶液と試薬溶液が混合される微細流路B106と、を有する微生物測定チップ109と、微細流路B106での発光量を測定する光学測定装置113と、検体溶液と試薬溶液とを微細流路B106へ導入する送液手段と、微細流路B106での反応温度を制御する温度調節手段112と、光学測定装置113による測定値の記憶,送液手段及び温度調節手段112の制御を行う処理制御部116と、を備え、試薬溶液の流量と反応温度とを制御して発光量を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品工業や医薬品工業などの分野において、使用する原料,中間体あるいは製品中の微生物管理のため、検体中の微生物の測定を測定する微生物測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バイオテクノロジー等の分野においては、細胞内ATP(アデノシン三リン酸)を含む溶液と発光試薬とを発光反応により発光させ、これにより生じる光の量を測定して微生物等の検出を行っている。そして、発光反応場としてマイクロチャネルを備えたマイクロリアクタを用い、発光反応によるマイクロチャネルからの光量の再現性を高め、かつ光検出器の受光部に入射させる光量を十分に増加させるため、発光領域となるマイクロチャネルに折返し部を設けることが知られ、特許文献1に記載されている。
【0003】
また、ルシフェリン・ルシフェラーゼ反応を用いたATP発光は、短時間にピークに達して急激に減衰するために不安定であり、ルシフェリン・ルシフェラーゼ反応に対して様々な安定化対策がされている。例えば特許文献2には溶液中のホタルルシフェラーゼならびにルシフェリンの安定性を向上させることが、また特許文献2には、上記安定化法を用いた測定方法および装置が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−246796号公報
【特許文献2】特開2000−166550号公報
【特許文献3】特開2000−245500号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術に記載のものでは、単にマイクロチャネルに折返し部を設けることで発光を生じる領域を密に配置しただけなので、試料と試薬の組合せが変わったり、複数種類の試薬溶液を用いたり、する場合等には前処理を含めて使い勝手が良いとは言い難いものであった。
【0006】
特に、短時間にピークに達して急激に減衰するタイプのルシフェリン・ルシフェラーゼ反応は、比較的発光量が大きいため感度が良い事が特徴であるが、発光が不安定であるため時間・温度等の測定条件を厳密に設定しなければならなかった。
【0007】
また、安定化対策されたタイプのルシフェリン・ルシフェラーゼ反応は、発光が長時間安定であるため測定条件を厳密に設定する必要がなく使い勝手が良い事が特徴であるが、前者と比較すると発光量が小さいため感度が劣っている。
【0008】
さらに、ルシフェリン・ルシフェラーゼ反応は種類によって性質が様々であり測定条件が異なるため、システム化する際には種類によって別々のシステムとしなければならず、同一の測定システムで複数種類のルシフェリン・ルシフェラーゼ反応を、目的に応じて使い分けて使用することは困難であった。
【0009】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、複数種類の試薬を目的に応じて使い分けることに対応すると共に、より高感度で信頼性の高い微生物測定システムを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、微生物を含む検体溶液と試薬溶液を混合し、混合した溶液の反応により生じた光学的な信号を測定する微生物測定システムにおいて、前記検体溶液を貯留する検体溜めと、前記試薬溶液を貯留する試薬溜めと、前記検体溶液と試薬溶液が混合される微細流路Bと、を有する微生物測定チップと、前記微細流路Bでの発光量を測定する光学測定装置と、前記検体溶液と前記試薬溶液とを前記微細流路Bへ導入する送液手段と、前記微細流路Bでの反応温度を制御する温度調節手段と、前記光学測定装置による測定値の記憶、前記送液手段及び前記温度調節手段の制御を行う処理制御部と、を備え、前記試薬溶液の流量と前記反応温度とを制御して前記発光量を測定するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、試薬溶液の流量と反応温度とを制御して発光量を測定するので、より高感度で信頼性の高い微生物の測定が行うことができると共に、複数種類の試薬を使い分けることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
従来、検体中の微生物の測定は、検体の微生物を標準寒天培地で長時間培養し、コロニ−を検出するいわゆる平板培養法が一般的に用いられている。この平板培養法は、寒天培地などの固形平板培地上に検体を塗布し、2日〜7日間ほど培養した後に、平板培地上に生育するコロニーを数えて微生物を測定する方法であり、迅速に微生物を測定することが困難である。
【0013】
近年は迅速な微生物測定法として光学的測定手法が注目されており、蛍光染色法,化学発光法などが良い。
【0014】
蛍光染色法は、細胞成分と反応する蛍光色素を用いて検体を染色してその蛍光量から微生物を算出する。化学発光法は、バックグランドとなる微生物外に存在するATPを予め除去した後、溶菌試薬を作用させて微生物中のATPを抽出して、ATPをルシフェリン・ルシフェラーゼ反応で発光させてATP量を求め、得られたATP量と微生物当たりのATP量から微生物数を算出する。
【0015】
以下、一実施の形態について図1〜図7を参照して説明する。
【0016】
図1は、微生物測定システムを示すブロック図であり、検体を貯蔵する検体溜め101,複数の前処理試薬を貯蔵する複数の前処理試薬溜め102,測定試薬を貯蔵する試薬溜め103,微生物測定済みの検体溶液を排出する排出箇所104,検体溶液と複数の前処理試薬を混合するためのマイクロ加工技術などにより作製した微細流路A105,複数の前処理済みの検体溶液と測定試薬を混合するための微細流路B106、を有する。
【0017】
さらに、検体溶液の複数の前処理を行う前処理箇所107,複数の前処理済み検体溶液の微生物測定を行う測定箇所108からなる微生物測定チップ109,微生物測定チップ109中の複数試薬溜め中の液体を順次測定チップ中の微細流路中に導入するポンプ110,バルブ111からなる送液手段、および微生物測定チップ中の温度を調節する温度調節手段112からなる反応条件制御手段、が設けられている。
【0018】
そして、測定箇所108からの光学的な微生物測定信号を測定し、光学的な微生物測定信号を出力する光学測定装置113,複数種類の試薬溶液に応じて流量および反応温度を設定し、設定した条件を測定条件制御信号114として送液手段および温度調節手段112へ発信し、光学測定装置113からの光学的な微生物測定信号115を処理制御部116で受信する。
【0019】
図1の微生物測定システムでは、微生物測定チップ109はマイクロ加工技術などにより作製した微細流路A105,微細流路B106の形状を蛇行した構造としている。そして、複数の前処理に要する処理時間および測定反応に要する反応時間を満たす滞留時間を考慮した流路の形状である。
【0020】
さらに、微生物測定チップ109は検体溜め101,複数の前処理試薬溜め102,試薬溜め103および排出箇所104の形状を円形とし、前処理試薬溜めの数を3つとし、必要な前処理数に応じて設けている。
【0021】
また、微生物測定チップ109は複数の前処理試薬溜め102に前処理試薬が個別に貯蔵されているが、前処理試薬を予め混合させておき前処理試薬溜めに貯蔵してもよく、検体溜め101と複数の前処理試薬溜め102の位置を入れ替えてもよい。
【0022】
また、微生物測定チップ109は複数の前処理試薬,測定試薬ごとに複数の前処理試薬溜め102および試薬溜め103を設けている。あるいは、微細流路側面に試薬を予め固定化し、検体が微小流路を通過する間に各前処理および測定を行うようにする。光学測定装置113は微生物測定チップ109の上部に位置し、光学測定装置113は微生物測定チップ109の蛍光,発光,吸光等の光学的な微生物測定信号を測定できる機能を有する。光学的な微生物測定信号が発光または吸光である場合は、図1の微生物測定システムに光源を追加する。送液手段であるポンプ110およびバルブ111は微生物測定チップの上側面に位置している。
【0023】
図2は、微生物測定システムにおける測定フローチャートを示す図である。
【0024】
図2の微生物測定システムにおける測定フローチャートでは、流量および反応温度が例えば処理制御部116に記憶されている試薬溶液を用いる場合のメモリモードと、予め記憶されていない試薬溶液を用いる場合のマニュアルモードを備えている。
【0025】
始めに、ステップ21として、微生物測定チップ109の検体溜め101,複数の前処理試薬溜め102,試薬溜め103へ検体溶液,複数の前処理試薬,測定試薬を導入する。
【0026】
ステップ22:処理制御部116の画面に従ってキーボードより開始指令を入力し、システムが開始され、微生物測定チップ109,反応条件制御手段,光学測定装置113,処理制御部116からなる微生物測定システムが動作可能な状態となる。
【0027】
ステップ23:メモリモードで測定するかマニュアルモードで測定するかを選択する。メモリモードを選択した場合、ステップ24で使用する試薬溶液が表示されそのうちいずれかが選択可能となる。
【0028】
ステップ25:処理制御部116で選択された試薬溶液に対応した流量および反応温度がデータベースから呼び出され、設定が行われる。
【0029】
ステップ23でマニュアルモードを選択した場合、ステップ26で検体溶液,試薬溶液が入った微生物測定チップ109による検体溶液の検体処理工程が開始される。
【0030】
ステップ27:光学測定装置113において試薬溶液が入った微生物測定チップ109を用いた測定が開始される。
【0031】
ステップ28:光学測定装置113から全微生物測定信号115が処理制御部116へ出力される。
【0032】
ステップ29:検体溶液,試薬溶液が入った微生物測定チップ109による検体溶液の検体処理工程が終了する。
【0033】
ステップ30:処理制御部116において測定結果から試薬溶液に応じた流量および反応温度の決定及び設定が行われる。また、必要であれば検体溶液に応じた流量および反応温度の決定及び設定が行われる。
【0034】
ステップ31:処理制御部116において設定された流量および反応温度を、測定条件制御信号114として反応条件制御手段となるポンプ110,バルブ111,温度調節手段112へおよび光学測定装置113へ発信し、ステップ32で、流量および反応温度の制御が開始される。
【0035】
ステップ33:検体溶液,試薬溶液が入った微生物測定チップ109による検体溶液の検体処理工程を開始する。
【0036】
ステップ34:光学測定装置113において試薬溶液が入った微生物測定チップ109を用いた測定を開始する。
【0037】
ステップ35:光学測定装置113から全微生物測定信号115が処理制御部116へ出力される。
【0038】
ステップ36:検体溶液,試薬溶液が入った微生物測定チップ109による検体溶液の検体処理工程が終了する。
【0039】
ステップ37:処理制御部116中で発信された測定条件制御信号114を受けて測定結果から必要データを抽出し、ステップ38で処理制御部116で測定結果を表示し、ステップ39でシステム終了となる。
【0040】
測定条件制御信号114は、検体溜め101,複数の前処理試薬溜め102,試薬溜め103中の液体を順次測定チップ中の微細流路A105および微細流路B106中に導入するポンプ110,バルブ111からなる送液手段への流量,流量制御信号、および微生物測定チップ109中の温度を調節する温度調節手段112への温度制御信号,光学測定装置113から出力された全微生物測定信号115からより妥当な値を得るため最適箇所を抽出する抽出データ制御信号、さらにはそのための光学測定装置113への制御信号である。
【0041】
また、ステップ33においてチップ検体処理開始段階を設けているが、マニュアルモードを選択した際、ステップ26で開始したチップ検体処理を継続して行い、ステップ33におけるチップ検体処理開始段階を省略することでも良い。
【0042】
図3は、微生物測定システムの微生物測定チップにおける検体処理工程であり、図4は、微生物測定システムにおける微生物測定チップを示す。
【0043】
図3の微生物測定チップにおける検体処理工程では、図4の微生物測定チップにおいて予め前処理試薬溜めA401,前処理試薬溜めB402,前処理試薬溜めC403,試薬溜め404に、前処理試薬A,前処理試薬B,前処理試薬C,測定試薬を貯蔵してあるものを用いた場合の工程を示している。
【0044】
図3の本微生物測定システムにおける微生物測定チップでの検体処理工程ではステップ41で検体溶液を検体溜め405に導入した後、ステップ42でシステムを開始する。
【0045】
ステップ43:図1におけるポンプ110,バルブ111からなる送液手段で、図4における前処理試薬溜めA401の前処理試薬および検体溜め405中の検体溶液を微生物測定チップ中の微細流路A406に導入し、前処理箇所A407において検体溶液の前処理Aを行う。
【0046】
ステップ44:図1におけるポンプ110,バルブ111からなる送液手段で、図4における前処理試薬溜めB402の前処理試薬Bを、微生物測定チップ中の微細流路B408に導入し、前処理箇所B409において前処理A済みの検体溶液の前処理Bを行う。
【0047】
ステップ45:図1におけるポンプ110,バルブ111からなる送液手段により前処理試薬溜めC403の前処理試薬Cを微生物測定チップ中の微細流路C410に導入し、前処理箇所C411において前処理Aおよび前処理B済みの検体溶液の前処理Cを行う。
【0048】
ステップ46:図1におけるポンプ110,バルブ111からなる送液手段で、試薬溜め404の測定試薬を微生物測定チップ中の微細流路D412に導入し、測定箇所413において処理Aおよび前処理Bおよび前処理C済みの検体溶液の微生物測定を行い、ステップ47で測定終了となる。
【0049】
図4の微生物測定チップは、検体溶液を貯蔵する検体溜め405,前処理試薬Aを貯蔵する前処理試薬溜めA401,前処理試薬Bを貯蔵する前処理試薬溜めB402,前処理試薬Cを貯蔵する前処理試薬溜めC403,測定試薬を貯蔵する試薬溜め404、を有する。
【0050】
また、前処理Aおよび前処理Bおよび前処理Cおよび微生物測定済みの検体溶液を排出する排出箇所414,検体溶液と複数の前処理試薬A,前処理試薬B,前処理試薬C,測定試薬が合流する複数の合流箇所415備える。
【0051】
さらに、検体溶液と前処理試薬Aを混合するためのマイクロ加工技術などにより作製した微細流路A406,前処理A済みの検体溶液と前処理試薬Bを混合するための微細流路B408,前処理Aおよび前処理B済みの検体溶液と前処理試薬Cを混合するための微細流路C410,前処理Aおよび前処理Bおよび前処理C済みの検体溶液と測定試薬を混合するための微細流路D412を設ける。
【0052】
さらに、微細流路A406であり検体溶液の前処理Aを行う前処理箇所A407,微細流路B408であり前処理A済みの検体溶液の前処理Bを行う前処理箇所B409,微細流路C410であり前処理Aおよび前処理B済みの検体溶液の前処理Cを行う前処理箇所C411,微細流路D412であり前処理Aおよび前処理Bおよび前処理C済みの検体溶液の微生物測定を行う測定箇所413が設けられている。
【0053】
図1の微生物測定システムでは、測定チップの微細流路中で検体と複数の前処理試薬および測定試薬迅速かつ高効率に混合することが望まれる。
【0054】
図4の微生物測定チップは、検体溶液と複数の前処理溶液A,B,Cおよび測定溶液が合流する複数の合流箇所415の形状をT字型としている。また、微細流路A406,微細流路B408,微細流路C410,微細流路D412の形状は蛇行しており、複数の前処理に要する処理時間および測定反応に要する反応時間を満たす滞留時間を考慮した流路の形状とされている。
【0055】
また、検体溜め405,複数の前処理試薬溜めA401,B402,C403,試薬溜め404の形状を円形とし、液体が貯蔵可能とされている。
【0056】
さらに、複数の前処理試薬溜めの数を3つとし、必要な前処理工程に応じて設けられている。
【0057】
図5の微生物測定チップは、検体溶液を貯蔵する検体溜め501,前処理試薬Eが予め微細流路側面に固定化されており、検体溶液が通過する間に前処理Eを行う微細流路E502,前処理試薬Fを貯蔵する前処理試薬溜めF503,前処理試薬Gを貯蔵する前処理試薬溜めG504,測定試薬を貯蔵する試薬溜め505,前処理Eおよび前処理Fおよび前処理Gおよび微生物測定済みの検体溶液を排出する排出箇所506,前処理E済みの検体溶液と前処理試薬Fを混合するための微細流路F507が設けられる。
【0058】
さらに、前処理E済みの検体溶液の前処理Fを行う前処理箇所F508,前処理Eおよび前処理F済みの検体溶液と前処理試薬Gを混合するための微細流路G509を有し、前処理Eおよび前処理F済みの検体溶液の前処理Gを行う前処理箇所G510,前処理Eおよび前処理Fおよび前処理G済みの検体溶液と測定試薬を混合するための微細流路H511が設けられる。前処理Eおよび前処理Fおよび前処理G済みの検体溶液の微生物測定は、測定箇所512で行われる。
【0059】
以下、図1および図2に示す微生物測定システムおよび、図4に示す微生物測定チップを用いて、試薬溶液に応じて流量を設定・制御して微生物測定を行った例を説明する。流量が処理制御部116等に記憶されていないルシフェラーゼAを測定試薬として使用した場合のルシフェリン・ルシフェラーゼ反応を用いたATP発光による微生物測定例である。
【0060】
微生物測定システムにおいて、ルシフェリン・ルシフェラーゼ反応を用いたATP発光による微生物測定を行う場合は、図1における光学測定装置113には、発光量測定機能を有するものを使用する。発光量測定機能を有するものとしては光電子倍増管、ルミノメータ,ゲルマニウムフォトダイオード,ガリウムヒ素フォトダイオード,フォトトランジスタ,CCD素子などが良い。
【0061】
また、図4の微生物測定チップを用いてルシフェリン・ルシフェラーゼ反応を用いたATP発光による微生物測定を行う場合は、前処理試薬Aには、細胞以外のATP除去性能を有するものを使用する。また、前処理試薬Bには、細胞中のATPを抽出する性能を有するもの使用する。また、前処理試薬Cには、ATP発光を増大する性能を有するものを使用する。
【0062】
さらに、図4の微生物測定チップを用いてルシフェリン・ルシフェラーゼ反応を用いたATP発光による微生物測定を行う場合は、微生物測定チップの材料には、ATP発光の測定に影響を与えない透光性を有するものを使用する。透過性を有するものとしては、ポリカーボネート(PC),ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリジメチルシロキサン(PDMS),ポリイミド,ポリスチレン,ポリメチルメタクリレート等の樹脂または石英ガラス等のガラスなどが良く、ATP発光の測定に影響を与えない材料である。
【0063】
さらに、微生物測定チップの上側面または下側面または横側面のいずれか、または複数面に光反射機能のような発光検出量を増大できる機能のものを設けることが良く、光反射機能有する材料としては、アルミニウム,ニッケル,チタン,クロム,金,銅,鉄等であり、発光検出量を増大できる機能をもつ材料である。
【0064】
図2におけるステップ21で、図4に示す微生物測定チップの検体溜め405に検体溶液、前処理試薬溜めA401には細胞以外のATP除去性能を有する試薬、前処理試薬溜めB402には細胞中のATPを抽出する性能を有する試薬、前処理試薬溜めC403には、ATP発光量を増幅する性能を有する試薬、試薬溜め404には、ルシフェラーゼAを含む検出試薬を導入する。
【0065】
ステップ図2おけるステップ22でシステム開始することにより、図1における微生物測定チップ109,反応条件制御手段,光学測定装置113,処理制御部116からなる微生物測定システムが動作可能な状態となる。
【0066】
この時、図1における検体溜め101,複数の前処理試薬溜め102,試薬溜め103の液体が、送液手段によって微細流路A105および微細流路B106中にある一定の流量で導入されるように設定する。また、微生物測定チップ109中の温度は、温度調節手段112により、一定の温度に保つようにする。
【0067】
図2におけるステップ23で、測定試薬として流量が記憶されていないルシフェラーゼAを使用するため、マニュアルモードを選択する。
【0068】
図2におけるステップ26で検体、複数の前処理試薬、ルシフェラーゼAが入った微生物測定チップ109による検体溶液の処理工程開始する。
【0069】
つまり、微生物測定チップ109中の温度を調節する温度調節手段112が温度調節を開始し、送液手段が検体溜め101,複数の前処理試薬溜め102,試薬溜め103中の液体を測定チップ中の微細流路A105および微細流路B106中に順次導入するように動作する。
【0070】
検体溶液,複数の前処理試薬,ルシフェラーゼA溶液を測定チップ中の微細流路A105および微細流路B106中へ導入後、ステップ27では送液手段による送液を停止してから、光学測定装置113で発光量の経時変化を測定する。ルシフェラーゼA溶液を混合した複数の前処理済みの検体溶液は、測定箇所108中の微細流路B106に全て充填されていなくてもよく、発光量の経時変化が測定可能であればよい。ステップ28で、光学測定装置113から測定結果が処理制御部116へ出力される。出力されたATP発光量経時変化測定結果を図6に示す。
【0071】
ステップ30で、処理制御部116において、ATPの発光量経時変化測定結果(図6)からルシフェラーゼA溶液を測定試薬として使用する際の流量の決定及び設定が行われる。
【0072】
つまり、ATPの全発光量が微生物測定チップ109の測定箇所108で測定可能となるような流量、図6における時間AまでのATP発光の様子を測定箇所108で測定可能となるように流量を設定する。
【0073】
図2におけるステップ31では、ステップ30で設定した流量を、流量制御信号として送液手段へ送信する。
【0074】
ステップ32で、送液手段が図1における検体溜め101の検体溶液、複数の前処理試薬溜め102の複数の前処理試薬,試薬溜め103中のルシフェラーゼA溶液を測定チップ中の微細流路A105および微細流路B106中に順次導入する際の流量制御を開始する。
【0075】
その後、ステップ34で、発光量測定機能を有する光学測定装置113での発光量測定を開始する。このときルシフェラーゼA溶液を混合した複数の前処理済みの検体溶液は、微細流路B106の全領域に充填されていた方がよい。また、光学測定装置113は、測定箇所108の全領域を測定した方がよい。
【0076】
図7には、微生物測定システムによる測定条件制御効果を示すもので、流量制御前と制御後のATP発光測定量を比較したものである。ATPの全発光量が、図1における微生物測定チップ109の測定箇所108で測定可能となるような流量に制御してATPの全発光量を測定することで、流量制御前におけるATPの一部の発光量のみの測定時と比較すると高感度化することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明による一実施の形態を示すブロック図。
【図2】一実施の形態による測定手順を示すフローチャート。
【図3】一実施の形態による検体処理工程を示すフローチャート。
【図4】一実施の形態における微生物測定チップを示す平面図。
【図5】他の実施の形態における微生物測定チップを示す平面図。
【図6】一実施の形態におけるATPの発光量経時変化を示すグラフ。
【図7】一実施の形態における効果を示すグラフ。
【符号の説明】
【0078】
101 検体溜め
102 前処理試薬溜め
103 試薬溜め
104 排出箇所
105 微細流路A
106 微細流路B
107 前処理箇所
108 測定箇所
109 微生物測定チップ
110 ポンプ
111 バルブ
112 温度調節手段
113 光学測定装置
114 測定条件制御信号
115 全微生物測定信号
116 処理制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物を含む検体溶液と試薬溶液を混合し、混合した溶液の反応により生じた光学的な信号を測定する微生物測定システムにおいて、
前記検体溶液を貯留する検体溜めと、前記試薬溶液を貯留する試薬溜めと、前記検体溶液と試薬溶液が混合される微細流路Bと、を有する微生物測定チップと、
前記微細流路Bでの発光量を測定する光学測定装置と、
前記検体溶液と前記試薬溶液とを前記微細流路Bへ導入する送液手段と、
前記微細流路Bでの反応温度を制御する温度調節手段と、
前記光学測定装置による測定値の記憶、前記送液手段及び前記温度調節手段の制御を行う処理制御部と、
を備え、前記試薬溶液の流量と前記反応温度とを制御して前記発光量を測定することを特徴とする微生物測定システム。
【請求項2】
請求項1に記載のものにおいて、前記試薬溶液の流量と前記反応温度とは、予め前記処理制御部に記憶されたことを特徴とする微生物測定システム。
【請求項3】
請求項1に記載のものにおいて、前記試薬溶液の流量と前記反応温度とは、複数の前記試薬溶液毎に記憶されたことを特徴とする微生物測定システム。
【請求項4】
請求項1に記載のものにおいて、前記微生物測定チップは、前処理試薬が貯留された前処理試薬溜めと、前記検体溶液と前記前処理試薬とが混合され、前処理に要する処理時間を満たすように滞留する微細流路Aと、を備えたことを特徴とする微生物測定システム。
【請求項5】
請求項1に記載のものにおいて、前記微生物測定チップは、前処理試薬が貯留された複数の前処理試薬溜めと、前記検体溶液と前記前処理試薬とが順次混合される微細流路Aと、を備えたことを特徴とする微生物測定システム。
【請求項6】
請求項1に記載のものにおいて、前記試薬溶液はルシフェラーゼであり、ルシフェリン・ルシフェラーゼ反応を用いたATP発光による微生物を測定することを特徴とする微生物測定システム。
【請求項7】
請求項1に記載のものにおいて、前記微生物測定チップの側面は光反射機能を有することを特徴とする微生物測定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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