説明

微粉固体の自動分析方法

本発明は、試料をサンプルジャーから取り出す抽出手段と、規定量の微粉状に分割された固体をテストジャーに投入するドージング手段と、を有し、ドージング装置を用いて少なくとも0.1gのドージング精度が実現され、ドージング量の特性が、実質的にサンプルジャー内の試料の特性に相当することを特徴とする、微粉状に分割された固体用の固体ドージング装置に関する。また、本発明は、サンプルジャー及びテストジャー用の貯蔵部、試料分析用の分析装置、サンプルジャーの移動及び配置用のマニピュレータ、固体ドージング装置、及び液体用ドージング装置を有する、微粉状に分割された固体の特性を測定する自動化分析器に関する。更に、本発明は、微粉状分割固体の自動分析方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプルジャーから試料を取り出す抽出手段、及び規定量の微粉固体材料をテストジャーに投入するためのドージング手段を有する、微粉固体用の固体ドージング装置に関する。また、本発明は、サンプルジャー及びテストジャー用の貯蔵部、試料を分析する分析装置、サンプルジャーの移動及び配置用のマニピュレータ、固体ドージング装置、及び液体ドージング装置を有し、微粉状分割固体の性質を測定するための自動化分析器に関する。更に、本発明は、微粉状分割固体の自動分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学的に処理される製品の多くは、固体又は紛体物の形態である。それらの有効な性質は、粒子サイズ又は粒度分布等の物理的特性に依存することが多い。一定の質を確保するために、固体又は紛体物は、一定の時間間隔で分析される。当該分析には、各々の製造物に対して定められ、標準化された処理で実行される分析方法の使用が含まれる。以下では、分析的という語は、固体材料の試料の特性に関して、代表的な且つ比較しうる結果が得られることを意味する。
【0003】
以下では、自由流のバルク材料の形態において紛体物と固体を区別せず、双方とも「微粉固体」という概念に含まれるものとする。この場合、粒径は、1〜1500マイクロメーター(μm)である。
【0004】
このような製造物の例は、吸水性ポリマーであり、超吸収体とも呼ばれている。超吸収体は、もはや溶液ではない程度に強く架橋した親水性ポリマーを含む。この超吸収体の製造については、例えば、モノグラフである「Modern Superabsorbent Polymer Technology,F.L.Buchholz and A.T.Graham,Wiley−VCH, 1998」の71〜103ページにおいて開示されている。典型的な粒径分布は、ふるい分析法により測定することができる。この場合、粒子の90%、95%、又は98%は、150〜850μmの範囲に含まれる。現在まで、要求される分析は、かなりの労力と時間を費やして手作業で実行されてきた。この分析は他の分野において知られている。例えば、医薬産業であり、当該分野では、標準分析を実行するための自動化されたシステムが使用される。
【0005】
例えば、特許文献1には、特に、医薬分野で使用される万能研究室ロボットが開示されている。物質の試料がジャー内部に貯留される。工程の決まった順番に従い、ロボットは、試料をジャーから種々の分析場所に移送する。試料は、自動的に分析され、次いでロボットにより保管場所に戻される。
【0006】
特許文献2には、液体、固体、及び紛体試料を分析するための研究室ロボットが開示されている。研究室は、ロボット領域及びオペレータ領域と呼ばれる領域に分割され、これらロボット領域及びオペレータ領域は壁部によって相互に分割されている。搬送ベルトを用いて、分析されるべき試料が両領域中で交換される。試料が自動的に分析され得る種々の分析ステーションが、ロボット領域において設定される。少なくとも5軸のロボットが長軸レール上を移動し、試料を種々の搬送ベルトと分析ステーションの間で移送させる。
【0007】
分析方法の完全な自動化とは別に、部分的な問題の解決手段が知られている。特許文献3には、微粉固体を少量(1〜5mg)ドージングする方法が記載されている。この方法は、そもそも薬剤開発において使用されていた。この場合、それぞれの試料ビンが、ロボットにより取り上げられてそのビンの蓋が取り外され、そのビンはドージング装置に対して逆さまに置かれる。必要量の個体材料が試料ビンから取り出され、ブラシを回すことにより、該試料をテストジャーに注ぎこむことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO93/15407
【特許文献2】WO97/47974
【特許文献3】JP10077121
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以下に記載される発明は、当該発明により、代表的及び比較対象の検出結果を製造物の性質に関し確実に得ることによって微粉状分割固体の自動分析するための装置及び方法を提供する目的に基づくものである。本発明において、他の目的は、微粉状に分割された固体を上記装置において使用するためのドージング装置を改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の固体ドージング装置、請求項6に記載の自動化分析器、及び請求項8又は9に記載の方法が提案されている。本発明による解決手段の改良が、各々の従属請求項である。
【0011】
本発明によれば、固体ドージング装置は、試料をサンプルジャーから取り出すための抽出手段と、規定量の微粉状に分割された固体材料をサンプルジャーに入れるドージング手段と、を有する。
【0012】
微粉状に分割された固体をその特性について分析するために、通常、製造プロセスにおいて又は市販品から試料が採取される。試料は、それらの粒子径及び分布における不規則変動を最小にするある最小量であるべきである。150〜850μmの粒子径で、1000cm3の試料量が好ましいことが分かっている。
【0013】
分析のために供給される試料が入れられるサンプルジャーは、種々の形態のものでよい。直線状や管状のジャー以外では、径が開口に向かって狭くなっているビン状ジャーも一般的である。同時に断面も種々の形状であってもよく、例えば、円形、楕円形、長方形、又は六角形、或いはそれらの角部が丸く形成されたものであってもよい。また、サンプルジャーは、回転、傾斜、又はスナップ式の閉塞部材により開閉可能であってもよい。開閉可能なサンプルジャーは、好ましくは、微粉状に分割された固体の特性が、その周囲の大気に接触した結果として、例えば酸素含有量又は空気中の水分が理由で変化する可能性がある場合に使用される。
【0014】
試料は、異なる性質、例えばサイズや形状等を有する多くの粒子の混合物であることが多い。関心のある混合物の特性は、粒子の特性、結果として混合物の組成に応じて変化する。従って、サンプルジャーにおいて可能な最も均一の試料の混合物を供給し、分離等の悪影響を中和させることが好適である。これは、例えば、サンプルジャーを振る又は回転させることや或いはサンプルジャー内を撹拌することにより、手動又は自動で行うことができる。
【0015】
個々の分析を実行するために、試料の一部がテストジャー内にあることが要求される。この場合、テストジャーのサイズ、形状、及び性質は、それぞれの実行すべき分析の方法及び実際の設備に応じて決まる。好適なテストジャーは、例えば、ビーカー、皿、又は測定セルであり、これらはガラス、樹脂、金属又は他の材料により製造される。テストジャーにおいて微粉状に分割された固体の必要量は、分析されるべき物質及び分析方法に応じて変化する。水吸収ポリーの場合、例えば、テストジャーにおいて要求される固体の量は、0.2〜2.0gの範囲である。
【0016】
本発明によれば、微粉状に分割された固体の代表部分量が、抽出手段によりサンプルジャーから取り出される。本明細書において、代表とは、サンプルジャーにおける試料の特性(例えば、粒径分布)が、取り出された部分量において検出されることを意味する。好適な抽出手段は、例えば、開放状態で試料に投入され、そこで閉塞され、閉塞状態でサンプルジャーから試料の一部を引き出すグリッパである。好ましい実施の形態は、以下の実施例において図示されているように中空の槍状の形態をとる。固体材料の粒子の不均一な分布、圧縮又は損傷を極力避けるために、抽出手段が、可能な最も小さい体積でサンプルジャー内部に配置され、固体材料にほとんど圧力を及ぼさないことが好ましい。この作用は、例えば、抽出手段の断面積を小さくする、或いはその径を減少させるか、投入端の方向にチップを形成することにより実現される。
【0017】
引き出された上記部分量を試験ジャーに投入するために、本発明にしたがうドージング手段が用いられる。このドージング手段は、装置を搬送しても良い。例えば、引き出された部分量がじょうごを用いてスクリューに供給される。この場合、テストジャーに投入される微粉状に分割された固体のドージング量は、スクリューの回転速度に影響される。変形例として、スクリューに代えて、その循環速度を調整可能なコンベアベルトを用いてもよい。好ましい実施の形態において、ドージング手段の本質的要素は、以下の図においてより詳細に説明されるドージング輪である。
【0018】
各々の分析方法の要求に応じて、ドージング装置は、少なくとも0.1g、0.01g、又は0.001gのドージング精度が確保されるように構成される。ドージング手段の実際の実施形態に応じて、ドージング精度に影響を与える種々の可能性が得られる。例えば、搬送スクリューを用いる場合、スクリューのピッチ、その径、及び設定可能な最小回転速度が好適に選択される。搬送ベルトが用いられる場合、ドージング精度は、回転速度とともに、例えば、ベルトの粗さ、その幅、及び負荷の大きさにより影響を受ける。
【0019】
ドージングすべき微粉状に分散される固体の量は、種々の方法により予め定めモニタすることができる。一つの可能性として、テストジャーにおける充填高さを規定し、充填レベルを測定することで実際にドージングされた量をチェックすることができる。他の実施の形態において、ドージングされる固体材料の質量が、例えばドージング操作の間に試験ジャーを計量装置に乗せることで測定される。
【0020】
固体材料のドージング量の精度とは別に、テストジャーにおける試料の均一な分布も、分析方法において重要である。従って、本発明にかかるドージング手段によりドージングされた微粉状分割の固体材料をテストジャーに投入すると、固体材料の混合物の局所分布、及び混合物中の粒子の特性分布が均一となる。一つの実施の形態において、この均一性は、テストジャー内にドージングされた固体材料の粒子を混合し、ドージング操作が終了した後にドージング固体材料の表面を滑らかにする撹拌装置を提供することにより確保される。他の実施の形態において、テストジャーは、ドージング操作中に一以上の面内で移動される。
【0021】
本発明によれば、貯蔵部を有する自動化分析器、分析装置、マニピュレータ。固体ドージング装置、及び液体用ドージング装置が、微粉状に分割された固体の特性を測定するために使用される。固体ドージング装置は、本実施の形態にしたがうことが好ましい。
【0022】
貯蔵部は、試料の自動分析と自動化分析器の操作の間のインターフェイスである。一方で、オペレータは、サンプルジャー及びテストジャーを配置又は取り除く。また、対応するジャーは、貯蔵部から取り除かれ、自動化装置のマニピュレータにより貯蔵部に配置されても良い。更に、貯蔵部は、例えば、分析方法において分析及び結果評価の準備のための待ち時間がある場合などにおいて、サンプルジャー及びテストジャーを保管する機能を有する。
【0023】
自動化分析器は、微粉状に分割された固体の試料分析用の1以上の分析装置を含む。この場合、分析装置の実際の構成は、各々の分析方法による。実際の分析方法の例は、水吸収ポリーに対して行われるものを以下に示す。
【0024】
サンプルジャー及びテストジャーを一つの場所から他の場所に移し、それらを分析器内に位置させるために、少なくとも一種のプログラム可能なマニピュレータを設ける。その構造上の設計及び機能は、分析器の他の構成部分の配置空間に強く関係する。貯蔵部、分析装置、及びドージング装置が、実質的に1つの空間面に配置される一つの実施の形態において、3次元空間(x、y、zz)を移動可能なマニピュレータが好適である。例えば、ドージング又は分析を行うためにジャーを回転させる必要がある場合等の要求に応じて、マニピュレータに他の回転軸を加えてもよい。
【0025】
他の実施の形態において、一方の貯蔵部及びドージング装置と、他方の分析装置は、2つの異なる空間面に配置される。この場合において、マニピュレータは、上記2つの面の間に配置され、該回転軸に対して直交方向及び平行方向に移動可能であることが好適である。また、この実施の形態において、例えばグリッパを回転させるための他の回転軸を設けてもよい。
【0026】
サンプルジャー及びテストジャーの移送を行うマニピュレータとは別に、例えば、抽出手段及びドージング手段を互いに対して相互に移動させる他のプログラム可能なマニピュレータを自動化分析器に設けてもよい。このようなマニピュレータは、空間の一方向に移動可能であれば十分である。
【0027】
いくつかの分析方法においては、微粉状に分割された固体を1種以上の液体と接触させることが要求される。従って、本発明によれば、自動化分析器は、液体用の1以上のドージング装置を含む。一つの実施の形態において、規定された量の液体が、テストジャーにドージングされる。このドージングは、テストジャーの重量を記録する計量装置、及びこの情報に基づく液体の流入に影響を与える制御装置により実行される。計量装置に代えて、ドージング量を記録するために流量計を用いてもよい。この目的のために、本発明にかかる一つの実施の形態は、伝達管の原理に基づくドージング装置を提供する。他の実施の形態において、充填レベルはセンサを用いて記録され、対応してドージングが、例えばホースポンプにより影響を受ける。一方で、液体用のドージング装置は、自動化分析器における面内で固定されてもよい。この場合、マニピュレータは、充填されるべきテストジャーをドージング装置に移送する。一方で、液体用のドージング装置は、マニピュレータ(例えばグリッパ)内に設けられるので、自動化分析器内の種々の場所で液体ドージングが可能となる。また、1以上の液体用ドージング装置を用いてもよい。
【0028】
上述のように、微粉状に分割された固体をテストジャー内において一様に分布させることは、いくつかの分析方法にとって重要である。従って、マニピュレータがぎこちない動きをせず、又は過度の加速にさらされないように、該マニピュレータを制御することが好ましい。好適には、パラメータの設定が、シミュレーション計算又は当該マニピュレータの操作試験等により前もって行われる。また、サンプルジャー及びテストジャー用の貯蔵部を、自動化分析器の他の要素と分離して構成し相互に非固定状態とするなどして、振動か伝わらないように孤立させることが有効であることがわかった。結果として、輸送又は保管の間の振動により引き起こされる、ジャー内における固体材料の粒子の分離等の悪影響が、回避されるか、或いは少なくとも減少する。
【0029】
自動化分析器は、標準化された多数の試料の分析を実行することに対して特に好適である。分析結果は、好ましくは、それが電子的に処理可能となる形態で利用されることが好ましい。この目的のために、オペレータインターフェイスとは別に、自動化分析器が、例えば、研究データ情報システム(LIMS、実験室情報管理システム)又は運転データ情報システム(PIMS、プロセス情報操作システム)とのインターフェイスを有していても良い。LIMS又はPIMSにおいて、個々の試料に関する自動化分析器によるデータ出力、例えば、微粉状に分割された固体又は液体のドージング量、充填レベル、時間、分析結果、又は状態情報等のデータ出力を、記録し、更に処理することができる。自動化分析器は、更に、より高いレベルの自動化システム、例えばプロセス制御システム又は企業経営計画ツール(ERP、基幹業務ソフト)にリンク可能なインターフェイスを備えていても良い。
【0030】
微粉状に分割された固体の、本発明に係る自動化分析器及び本発明に係る自動分析方法は、種々の分野で使用される。これら装置及び方法は、例えば、連続又は不連続の製造プロセスにおける品質管理のための多数の試料の回帰分析、ルーチン分析に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1a】本発明にかかる自動化分析器の配置態様の平面図である。
【図1b】図1aの配置態様において示されているマニピュレータを示す図である。
【図2a】本実施の形態にかかる、開放状態の抽出手段の中空槍状部材の基本線図である。
【図2b】図2aに示された槍状部材の閉塞状態における詳細を示す図である。
【図2c】他の実施の形態における抽出手段の縦断面透視図である。
【図3】本実施の形態に係るドージング輪を備えたドージング手段の基本線図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
更に、本発明は、図面を参照してされる。なお、図は基本表現として理解されるべきである。また、図は、例えば、体積又は相対的なサイズ等に関して、本発明に対して何ら限定を行うものではない。
【0033】
図1aは、本発明に係る分析器1の可能な態様を示している。貯蔵部10は、ドージング装置30、及び分析装置40は、実質的に一つの面内に配置されている。それらの反対側には、個々のユニットの間においてサンプルジャー及びテストジャーを移送するマニピュレータ20が設けられている。図1bは、3軸で移動可能なマニピュレータ20の具体的構成を概略的に示している。x方向において移動可能となるように、マニピュレータガイド22は、例えば自動化分析器1の壁部に固定されたガイドレール21によりガイドされる。マニピュレータアーム23は、y方向においてマニピュレータキャリア22に沿って変位する。マニピュレータアーム23及びそこに配置されたグリッパ24は、z方向における移動を実現している。
【0034】
図2aにおいて、中空槍状部材310が、本発明に係る抽出手段の形態として表されている。抽出手段は、y方向に移動可能に設けられており、サンプルジャー11に挿入可能となっている。この挿入は、サンプルジャー11に抽出手段が落とされ、重力の影響の下で固体材料に挿入されることにより行われる。しかしながら、抽出手段を、所定の駆動力によりサンプルジャー11に積極的に挿入するようにしても良い。
【0035】
示された実施例において、抽出手段は、中空槍状部材310として形成されている。一つの実施の形態において、中空槍状部材310は、実質的に円形の断面を有する基体311を備える。下部において、中空槍状部材の基体311の径は、一定の長さに亘って上部部分の径よりも小さい。縮径部分は下方において、基体311の下端の少なくとも一部が元の径に再び設定されている戻り部の部分で区切られている。
【0036】
基体311は、該基体311に関して移動可能となるように設けられたスリーブ312により囲まれている。スリーブ312は、基体311の縮径部の部分に亘って移動可能となるように構成されている。図2bは、閉塞状態における中空槍状部材311の下方部分を示している。この状態でスリーブ312は、基体311の縮径部分を完全に囲んでいる。この場合、閉塞操作は、重力又は他の積極的な駆動力に基づいて行われる。
【0037】
サンプルジャー11から微粉状に分割された固体を引き出すために、中空槍状部材310が開放状態で、固体材料の試料に挿入される。また、中空槍状部材を閉塞状態で挿入し、その後にのみ開放するようにしても良い。代表試料を確保するために、挿入深さは、充填高さについて40〜80%、好ましくは50〜70%であることが好適である。なお、これらは、基体311の縮径部分の中間点に基づくもので、固体材料の充填表面から計算される。サンプルジャー11における充填高さが、10cmの場合、例えば、戻り部の中間点は、充填表面の下方4〜8cm、好ましくは5〜7cmの部分に存在する。たとえ試料の特性(例えば粒子径部分)に関して不均一であっても、サンプルジャー11を移送している間などに、固体材料の充填部分の中間領域に挿入されることで、代表可能な試料が確保される。
【0038】
槍状中空部材310が、固体材料の充填部に投入されると、微粉状に分割された固体材料の自由流が、自然に基体311を周囲に位置する。次に、スリーブ312を用いることで、予め定められた容積量の抽出容積部313が、中空槍状部材において囲まれる状態となる。同じサンプルジャーから再び抽出プロセスを実行することを避けるために、抽出容積部313は、微粉状に分割された固体の取出し量が、意図している分析のために十分となるように選択されることが好ましい。
【0039】
本実施例において示されているような実質的に円形断面の基体311及びスリーブ312は、製造技術の観点から好適である。しかし、本発明によれば、楕円形、長方形、六角形、又は八角形等の他の断面形態も好適である。基体311及びスリーブ312は、閉塞状態において、適切な抽出容積部313を単に囲むだけである。2つの要素を、同じ材料又は異なる材料から製造しても良い。材料は、例えば、アルミやスチール等の金属だけでなく、樹脂、セラミック又はガラスでも良い。
【0040】
上述の中空槍状部材において、サンプル材料を抽出容積部313で囲むことは、基体に亘ってその長手方向においてスリーブを移動することにより行われる。図2cは、本発明に係る抽出手段の他の実施の形態を示している。当該形態では、サンプル材料の包囲は、基体311に対するスリーブ312の回転移動により行われる。スリーブ312は、その周囲の半周以下に亘って延在する開口を有している。この場合、基体311の断面積減少部分は、円周方向において全周において移動するようには形成されていないが、一方の側に窪み部を有する。抽出容積部313を形成するために、この窪み部は、スリーブ312の連続領域により完全に覆われる。微粉状に分割された固体材料の取出しは、上述した方法と類似の方法で行われる。
【0041】
ドージングされた固体の特性に応じて、抽出操作の後に抽出手段の一部を洗浄する必要が生じる。例えば、粘着性固体の場合、次の試料の汚染を回避するために洗浄が必要である。好ましい実施の形態では、この目的のために、抽出手段の関連部分を空気や窒素等の加圧ガスにさらす。これは、種々の方法で実行可能である。一つの方法として、抽出手段としての中空状部材310の場合、基体311に穴部を設ける。この穴部は、その断面積減少領域に開口され、この穴部を介して圧縮された空気等を流すことができる。他の方法として、抽出手段の関連部分が、外部からの圧縮空気により処理される。この外部からの圧縮空気による処理は、例えば、所定のマニピュレータを用いて抽出手段に適合するようにされた洗浄装置により行われる。このような洗浄装置は、加圧ガスの供給だけでなく、洗浄により生み出されるガスと固体の混合物を抽出する抽出器を含んでも良い。
【0042】
上述のように、いくつかの分析方法では、高いドージング精度を持って微粉状に分割された固体をドージングすることが要求される。図3は、本発明にかかるドージング手段320の好ましい実施の形態を示している。ドージング手段のハウジング321は、微粉状に分割された固体用のインレット322及びアウトレット323を有する。ハウジング321から突出するインレット322の部分は、好ましくはじょうご状に構成される。ドージング輪324は、ドージング手段の中心要素としてハウジング321内に設けられている。ドージング輪324の走行面は、ハウジング321の内壁とともに、微粉状に分割された固体をインレット322からアウトレット323へドージング輪324の回転により移送する部分である容量部を囲んでいる。インレット322の下端とドージング輪の走行面との間の距離は、最も大きい粒子の大きさの1.5〜2.5倍相当であることが好ましい。ドージング輪324の走行面は、一般的には溝状、例えばU字状、又はV字状に構成されている。微粉状に分割された固体と接触することとなる走行面及びハウジング32の内壁は、微粉状に分割された固体の接着を回避するために、一般的に滑らかで、好ましくは研磨されている。ドージング輪のハウジングは、例えば、内部空間を圧縮空気にさらして、残存した微粉状分割固体を吹き飛ばす又は吸い込むなどのために、他のインレット及びアウトレットを備えていても良い。
【0043】
また、図3は、基体に位置するテストジャー12を示している。微粉状分割固体をテストジャー12へドージングするために、好ましくは、上述の抽出手段からある量の固体をインレット322に投入する。この目的のために、抽出手段及びドージング手段320を相互に移動可能となるように自動化分析器に設ける。例えば、面内に固定された抽出手段を用いれば、ドージング手段320を該抽出手段及びテストジャー12の間で移動させることができる。この移動は、例えば、x方向において直線状に移動可能なマニピュレータにより行われる。しかし、また、抽出手段が、サンプルジャー11及びドージング手段320の間で移動可能である場合には、ドージング手段320を面内で固定することも可能である。サンプリング手段及びドージング手段320の両方を移動可能となるように設けることで、適応性が向上する。
【0044】
固体材料が、ドージング手段320からテストジャー12に注がれる一方で、ドージングされた固体材料の質量が、計量装置により記録され、ドージング手段320の制御のために使用される。ドージング手段320の実質的な構成部分として、ドージング輪324が使用される場合、ドージング輪324の回転速度、すなわち周速度は、ドージング量にしたがって制御される。ドージングの開始時において、ドージング輪はより素早く回転し、従って、より多くのドージングされる固体材料が供給される。テストジャー12における固体材料の全質量が所望の値に近づくと、ドージング輪は完全な停止にいたるまでより低速で回転し、固体材料がドージングされなくなる。この場合、計量装置及び制御システムは、ドージング精度が0.1〜0.001gに確保されるように、設計・選択される。
【0045】
テストジャー12内において、微粉状分割固体の可能な最も均一の分布を実現するために、テストジャー12又はテストジャー12が配置される基体は、例えば、ドージング操作の間x−z方向において、直線状、円形状、楕円形状、8の字状、又は他の予め定められた形態で移動しても良い。一様な分布とは、テストジャー内の各点のいくつかの充填高さにおける意味と、固体材料に関する粒子径分布等の特性の両方として理解されるべきである。
【0046】
他の実施の形態において、予め規定された微粉状に分割された固形物の量が、テストジャー12にドージングされる。次に、ドージング物は、例えば、テストジャー12を動かしたり又は撹拌を行うことによりできる限り一様に分散される。
【実施例】
【0047】
本発明にかかる自動分析装置及び自動分析方法を、吸水性ポリマーの製品管理測定に使用した。この場合、2つの試料に対して、毎時、以下に示されるものの分析法を行った。
【0048】
‐加圧下吸収率
‐食塩水流誘導性
‐自由膨張率
【0049】
自動化分析器1の要素の配置態様は、図1aに示されたものと同じである。試料を、全て手作業で混合し、円筒形のサンプルジャー11に投入した。なお、円筒形のサンプルジャー11は、径が90mm、高さが160mmであり、貯蔵部10としてのラックへ、約1000cm3で充填配置されていた。分析結果を各々の試料に対して得るために、サンプルジャー11を配置する際に、該サンプルジャー11に手作業で検知するバーコードを付した。
【0050】
3次元のx、y、及びz方向において移動可能なマニピュレータ20により、サンプルジャー11を貯蔵部10からドージング装置30に移動させ、試料を取り出した後に再び元に戻した。図2a及び図2bに示す中空槍状部材310を、抽出手段として使用し、約10gの微粉状分割固体材料を取り出した。抽出手段を、分析装置においてx及びz方向における面に固定した。なお、y方向においては移動可能である。図3に示されているドージング輪324を備えた装置(x方向において移動可能)を、ドージング手段320として使用した。サンプルジャー11からの試料の取出しの後に、マニピュレータ20によりサンプルジャー11を貯蔵部10に戻した。次に、抽出手段の中身が中空槍状部材310の開口を介してドージング手段320のじょうごに移るように、ドージング手段320を抽出手段の下部に位置させた。個々の分析を実行するために、種々の微粉状分割固体を、異なるテストジャー12にドージングした。
【0051】
加圧下吸収率(AAP)
21.0g/cm2(AUL0.3psi)の加圧下における吸収率を、EDANA,No.WSP 242.2−0.5“Absorption under Pressure”により提案されたテスト方法に従い測定した。この方法は、ISO17190−7:2001に対応する。
【0052】
圧力を21.0g/cm2(AUL0.3psi)に代えて49.2g/cm2(AUL0.7psi)と設定して、同様に、49.2g/cm2(AUL0.7psi)の加圧下における吸収率を、EDANA,No.WSP 242.2−0.5“Absorption under Pressure”により提案されたテスト方法に従い測定した。
【0053】
EDANAテスト方法は、例えば、Avenue Eugene Plasky157,B−1030 ブリュッセル ベルギーの出版機関EDANAにより得られる。
【0054】
この方法のために、内径60mm、高さ50mmのプレキシガラス(登録商標)の測定セルを、貯蔵部10に配置されているテストジャー12として使用した。368gの重量を持つフルフェイスラムを、空の測定セルに配置した。ドージングのために、マニピュレータ20により測定セルをtype Sartorius LP620Sに均整配置されたプレートに配置し、除去されたラム及びドージング手段320を測定セルの上方位置に置いた。測定セル内における固体材料の粒子の一様分布を提供するために、0.9gの微粉状固体を、0.005gの測定精度をもって測定セルにドージングし、そのプレートをx−z方向において8の字状に移動させた。次に、ラムを測定セルに戻した。
【0055】
ドージングの後に、マニピュレータ20により、測定セルを貯蔵部に移し、それを、径200mm及び高さ30mmのペトリ皿内のフィルタ紙により被覆されたガラスフィルタープレートに配置した。0.9質量%の塩化ナトリウム溶液を、液体レベルがガラスフィルタープレートの上端に達するまで、マニピュレータ20のグリッパ24におけるラインを介してペトリ皿に入れた。マニピュレータ20のグリッパ24における接触電極を用いて、所望の充填レベルに達したことが確認された。
【0056】
60分の膨張時間の後、マニピュレータ20により測定セルを、貯蔵部10から取出し、安定した状態で配置した。液体吸収の後の現重量及びドージング後の元の重量を、各試料について記録されているAAP値の計算のために使用した。次に、測定セルを貯蔵部10に戻した。
【0057】
食塩水流誘導性(SFC)
SFC測定の分析方法により、与えられた圧力の下において、ヒドロゲル層が液体を通過する能力を検出する。この検出については、例えばUS5599335に記載されている。第1の方法のステップは、上述のAAPにおける方法に相当する。フルフェイスラムは使用しなかったが、US5599335の図7〜9に記載されているボアを有するラムを使用した。 ドージング精度は、ドージング固体材料が0.9gである場合に、0.001gであった。
【0058】
一旦60分の膨張時間が経過した後、マニピュレータ20により測定セルを貯蔵部10から取出し、ジャーを安定させた状態で保持装置に移送した。ゲル床の高さをレーザーにより測定し、後の評価のために記録した。0.9質量%の塩化ナトリウムを2リットル、液体貯蔵部に保存した。貯蔵容器の出口を測定セルの上部に移動し、該出口のバルブを開放した。これにより、液体が、測定セルを介して、その下に配置されたジャーに流れた。貯蔵容器と、出口の測定セルに対する適切な配置により、伝達管の原理によって、測定セル内における50mmの液体充填レベルを確実に得ることができた。浸透流を測定し20分ごとに記録をとりつつ、充填レベルを10分間維持した。この場合において、測定セルから流れ出る液体を受けるジャーのバランスがとれた状態とし、浸透流を測定した。分析の終了後、そのデータを、各試料に対して記録されるSFC値の計算のために使用した。マニピュレータ20により、測定セルを貯蔵部10に戻した。
【0059】
自由膨張率(FSR)
自由膨張率を測定するために、内径30mmで高さ50mmのビーカーをテストジャー12として使用した。なお、テストジャー12は同様に貯蔵部10に置かれている。微粉状分割固体材料を、1gの粒子を0.1gの精度でドージングした点を除いて、上述のAAPやSFC測定の場合と同様の方法で処理した。固体材料のドージングの後に、光源及びCCDカメラを約40mm離れた位置に配置して、マニピュレータ20によりビーカーをバランスをとって配置した。ポンプを用いて、0.9質量%の塩化ナトリウム溶液を20ml、液体ラインを介してビーカーにドージングし、全液体がポリマー粒子に吸収される時間を測定した。CCDカメラにより記録された液体表面における光の反射における変化(グレースケール値)を、当該測定の基準として用いた。固体材料のドージング量、液体のドージング量、及び測定時間を、各試料毎に記録されるFSR値の計算のために用いた。
【0060】
試料において記録された情報をデータに記録し、情報管理のため研究データ情報システム(LIMS)に保管した。分析の実行及び分析の評価のために、当該分析の準備のための要求時間を最適に調整することによって、分析にかかる全時間を、分析を手作業で行う場合と比較して、減少させることができる。このような自動化により、分析の再現性及び信頼性が向上する。
【符号の説明】
【0061】
1 自動化分析器
10 貯蔵部
11 サンプルジャー
12 テストジャー
20 マニピュレータ
21 ガイドレール
22 マニピュレータキャリア
23 マニピュレータアーム
24 グリッパ
30 ドージング装置
40 分析装置
310 中空槍状部材
311 基体
312 スリーブ
313 抽出容積部
320 ドージング手段
321 ドージング手段のハウジング
322 ドージング手段のインレット
323 ドージング手段のアウトレット
324 ドージング輪
【図1A】

【図1B】

【図2A】

【図2B】

【図2C】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料をサンプルジャーから取り出す抽出手段と、規定量の微粉状に分割された固体をテストジャーに投入するドージング手段と、を有し、
ドージング装置を用いて少なくとも0.1gのドージング精度が実現されて、ドージング量の特性が、実質的にサンプルジャー内の試料の特性に一致することを特徴とする、微粉状に分割された固体用の固体ドージング装置。
【請求項2】
ドージング精度が、少なくとも0.001gである請求項1に記載の固体ドージング装置。
【請求項3】
抽出手段として、中空槍状部材が使用される請求項1又は2に記載の固体ドージング装置。
【請求項4】
ドージング手段が、ドージング輪を有する請求項1〜3の何れか1項に記載の固体ドージング装置。
【請求項5】
微粉状に分割された固体のドージング量が、計量装置を用いて記録され、
ドージング輪の回転速度が、要求されるドージング精度を実現するように制御される請求項4に記載の固体ドージング装置。
【請求項6】
サンプルジャー及びテストジャー用の貯蔵部、
試料分析用の分析装置、
サンプルジャーの移動及び配置用のマニピュレータ、
固体ドージング装置、及び
液体用ドージング装置を有し、
請求項1〜5の何れか1項にしたがい構成される少なくとも1個の固体ドージング装置を有することを特徴とする、微粉状に分割された固体の性質を測定する自動化分析器。
【請求項7】
貯蔵部は、自動化分析器の他の要素から、振動に関して隔離されている請求項6に記載の自動化分析器。
【請求項8】
プログラム制御可能なマニピュレータによって、サンプルジャー及びテストジャーを、一つの貯蔵部、ドージングステーション、及び分析ステーションの間において移動させる工程、
微粉状に分割された固体の代表試料をサンプルジャーから取出し、少なくとも0.1gのドージング精度を持ってテストジャーに一様に投入する工程、
テストジャーに液体をドージングする工程、
試料の標準分析を実行する工程、及び
分析結果が、他の電子的処理が可能となる形式とする工程、
を有することを特徴とする、微粉状に分割された固体の自動分析方法。
【請求項9】
プログラム制御可能なマニピュレータによって、サンプルジャー及びテストジャーを、一つの貯蔵部、ドージングステーション、及び分析ステーションの間を移動させる工程、
微粉状に分割された固体の代表試料をサンプルジャーから取出し、テストジャーに一様に投入する工程、
テストジャーに液体をドージングする工程、
試料の標準分析を実行する工程、及び
分析結果を、他の電子的処理が可能となる形式とする工程、を有し、
請求項6及び7の何れかに記載の自動化分析器を用いて実行されることを特徴とする、微粉状に分割された固体の自動分析方法。
【請求項10】
微粉状に分割された固体としての吸水性ポリマーに対して、以下の、
加圧下吸水倍率(AAP)、
食塩水流れ誘導性(SFC)、
自由膨張率(FSR)、
の分析の方法を、1以上行う請求項8又は9に記載の固体の自動分析方法。
【請求項11】
吸水性ポリマーの分析のための、請求項6又は7に記載の自動化分析器の使用方法。

【図3】
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【公表番号】特表2012−526971(P2012−526971A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510256(P2012−510256)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【国際出願番号】PCT/EP2010/056398
【国際公開番号】WO2010/130703
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】