微粒子及び細胞の操作用の光電子ピンセット
100μm程度以下の直径を有する粒子または細胞の操作を実行できる、光イメージで駆動する光誘起性誘電泳動(DEP)装置及び方法が記載されている。上記装置は、光電子ピンセット(OET)と呼ばれ、従来の光ピンセットに優る多くの利点、特に、生細胞に対するダメージを伴うことなく、並行した、及び広い領域に関する操作を実行する能力をもたらす。上記OETは、一般に、入射光を電場パターンの変化に変換するような光伝導性である1つ以上の部分を有する平坦な液体充填構造を備える。上記光パターンは、単一の粒子及び細胞、または粒子/細胞からなる群を操作することができる多数の操作構造を形成するように、動的に生成される。上記OETは、好ましくは、光学的操作のためのフィードバック、例えば、位置及び特性の検知を実行できる顕微鏡イメージング手段を含み、この場合、上記光パターンは、それに応じて調節される。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
この出願は、その全体が本明細書に組み込まれる、2004年4月12日に提出された米国プロヴィジョナル出願第60/561,587号からの優先権を主張する。
【0002】
(連邦政府に委託された研究開発に関する説明)
この発明は、NASAにより与えられた認可番号442521−WM−22622/NCC2−1364の下に、米国政府のサポートと共になされた。米国政府は、この発明に関して、一定の権利を有する。
【0003】
(コンパクトディスクで提出された資料に関する文献の組み込み)
該当なし
【0004】
(著作権保護の対象となる資料に関する注意)
この特許文献における資料の一部は、米国及びその他の国の著作権法の下で、著作権保護の対象となる。著作権者は、誰かによる本特許文献及び本特許開示に関する複製に関しては、米国特許商標庁で公的に入手可能であるため異論はないが、その他の点では、何があっても全ての著作権の権利を留保する。著作権者は、この特許文書を秘密にするために、37 C.F.R.第1.14条に従って、制限なくその権利を含むその著作権を少しも放棄しない。
【背景技術】
【0005】
1.発明の分野
この発明は、一般に、細胞及び微粒子の操作に関し、より具体的には、光電子ピンセット(OET)に関する。
【0006】
2.関連技術の説明
生体細胞やミクロンスケールの粒子を操作する能力は、多くの生物科学及びコロイド科学用途において重要な役割を果たす。しかし、光ピンセット、動電力(電気泳動、誘電泳動(DEP)、進行波誘電泳動)、磁気ピンセット、音響トラップ及び流体力学的流動を含む従来の操作技術は、高分解能と高スループットとを同時に実現することができない。
【0007】
DEPは、ミクロン及びサブミクロン粒子、および生体細胞を操作するのに幅広く用いられてきている、既に確立された技術である。進行波誘電泳動(TWD)は、特に、外部の流体ポンピングを伴わない高スループットの細胞操作にとって魅力的である。電極からなる並列アレイに対する多相交流(AC)バイアスによって生じた移動電界は、多数の粒子を同時に浮揚させて運ぶ。しかし、TWDは、個々の粒子を分離することができない。最近になって、個別に扱うことが可能な2次元電極アレイを有するプログラム可能なDEPマニピュレータが、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)集積回路(IC)技術を用いて実現されている。多数(すなわち、約10,000)の個々の細胞の平行操作が実証された。このCMOS DEPマニピュレータは、2つの潜在的な欠点を有する。オンチップICの必要性は、上記チップのコストを増加させ、使い捨て用途に対する魅力を少なくする。また、トラップ密度(すなわち、約400部位/mm2)は、制御回路のサイズによって制限される。
【0008】
従って、動電力の利用及び同様のメカニズムは、高スループットをもたらすが、個々の細胞、または細胞群を制御する柔軟性または空間分解能に乏しい。加えて、これらの技術は、多くのリソグラフィ工程を介して形成される構造を必要とする。
【0009】
しかし、光ピンセットは、単一の粒子を捕捉する高分解能を提供し、その上、厳密なフォーカシング要件により、限定された操作領域を提供する。上記光ピンセットは、操作のために直接的な光学力を用い、また、高い開口数(N.A.)値及び小さい視野を有する対物レンズと共に用いられる高度に収束されたコヒーレント光源を必要とする。複数の光トラップまたは特別な光学パターンを生成するために、上記光ピンセットは、ホログラフィ等の技術も必要とする。それらの技術は、単純な光学パターンを生成するための密な計算を必要とする。
【0010】
従って、並行処理能力を実現できるとともに、単一粒子レベルまでの選択性を実現できる、粒子操作及び細胞操作装置及び方法に対する要求が存在する。本発明は、それらの要求及びその他の要求を満たし、複雑なリソグラフィまたは3Dビーム制御の必要性を伴わない、低い光レベルでの粒子及び細胞の操作を可能にする。
【発明の開示】
【0011】
本発明は、光学イメージ駆動光誘導誘電泳動(DEP)を用いて粒子及び細胞の操作を実行することを目的とする。“粒子”という用語は、本明細書において、微小(マイクロ)粒子、ナノ粒子、細胞、および概して数ナノメートルから約100μmまでの直径を有する有機物及び無機物を指すのに用いる。上記技術は、適度な強度のインコヒーレント光源の使用を可能にし、上記光源は、イメージ検出と、実際の粒子の成分及び位置の処理とに応じて制御することができる動的パターンを生成する。
【0012】
本発明の一実施形態に従って、単一の粒子、または、粒子の集合を操作するための光伝導性面上に電界をパターニングする、光学イメージ駆動誘電泳動装置及び方法について説明する。インコヒーレント光源等の幅広い種類の光源を用いることができ、また、粒子の単独のまたは多段階の操作を容易に実現することができる。
【0013】
一つの実施形態は、光学制御を用いた、細胞及び微小粒子の操作のために構成された光電子ピンセット(OET)を備える。上記OETは、空間光変調器(例えば、マイクロディスプレイまたはDMDミラー等)によって制御された連続的に投影されたイメージを用いることにより、細胞捕捉(トラッピング)、細胞や微小粒子の反発、収集、移動及び分類等の機能を可能にする。1mW程度の低い光作動出力の場合、光学操作は、インコヒーレントな集束光及び直接イメージ投影システムを用いて実行することができる。
【0014】
一実施形態において、ダイナミックDMD駆動光電子ピンセットは、DMDが生成した投影イメージを用いて、微細粒子の動的操作を実行する。この実施形態において、光誘起の誘電泳動を介した単一粒子の捕捉及び(40μm/秒までの)動きを観察した。
【0015】
粒子及び微粒子の動的配列操作が光電子ピンセットを用いて実行される別の実施形態について説明する。一つの実証は、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を有するデジタル光プロジェクタによって生成された光パターンにより捕捉された、20μm及び45μmの直径を有するポリスチレン粒子の個々の捕捉を詳述する。上記粒子の自己組織性及び個別の取扱いを実証する。45μmの粒子の移動は、35μm/秒(15pNの力)であると測定された。
【0016】
他の実施形態は、光電子ピンセットを用いて、生きた赤血球及び白血球の操作を実行できる。光誘起性誘電泳動は、ウシ赤血球を溶液中に集中することによって明示された生きた哺乳類細胞を操作するために、光電子ピンセット(OET)内で利用可能である。上記OETと共に一体化された空間光変調器及びインコヒーレント光源は、再構成可能で複雑な操作パターンを容易に生成する能力を提供する。この能力は、人の白血球の複雑なパターンへのパターニングでも実証された。
【0017】
別の実施形態は、光誘起性誘電泳動を用いて、マイクロワット程度の光パワーを有する粒子を光学的に捕捉して運ぶことを実現できる。この実施形態は、2つのパターンレス(パターニングされていない)面、すなわち、光伝導性材料で被覆された底部ガラス基板と、上部透明ITOガラスとを備える。光トラッピングを実現するために、液体に浸漬された微粒子が、それら2つの面の間に挟みこまれており、また、AC電気バイアスが供給される。40倍の対物レンズによって集束された633nmのHe−Neレーザを、上記粒子を運ぶのに用いる。負の誘電泳動トラッピングが実証され、その実験結果は、1μW程の低いパワーを有する光ビームが、直径25μmのラテックス粒子を4.5μm/秒の速度で運ぶのに十分であることを示している。輸送速度は、光パワーが高くなるにつれて増加する。100μWで、397μm/秒の最大速度が観測された。
【0018】
この実施形態において、光ソーティングメカニズムを、走査光電子ピンセット(OET)によってパターン化された動的電界に基づいて説明する。上記ソーティングメカニズムは、流体力学的粘性力と動的光誘起性誘電泳動力との力平衡に基づいている。異なるサイズを有する、不規則に分布した粒子は、分類されて、線状走査レーザビームに対して、サイズ依存の決定論的位置に配置される。10μm/秒の速度で動く240μmのレーザビームは、5μm、10μm及び20μmの直径を有するポリスチレン微粒子を、上記ビームの中心から17μm、29μm及び60μmの相対位置に仕分けることができる。
【0019】
また、この実施形態は、微粒子及び微小流体の両方のための光操作ツールを必要とするオール光・ラブ・オン・チップ・システムに近づけることを可能にする。細胞または粒子を操作する光ピンセットは重要であるが、上記光ピンセットは、微小流体に対処する際には有効ではない。また、典型的に高い光パワー要件は、高いスループットの生物分析システムの適用性を制限する。この実施形態においては、2つの新規なメカニズム、すなわち、(1)微液滴を取り扱う光電子ウェッティング(OEW)と、(2)低光パワー作動を伴う微細粒子の光学的操作のための光電子ピンセット(OET)とが実証された。直接的な光パワーを用いる代わりに、両メカニズムは、光学的操作のための光誘起性電気力に頼る。光電子ウェッティング(OEW)は、光ビームによって、液滴中の微小流体の制御を可能にし、照明領域における固体/液体界面における表面張力を変化させる光誘起性電子ウェッティングに基づいている。これは、光導電性材料と電子ウェッティング電極とを一体化することにより実現される。照明パターンをプログラムすることにより、本発明者等は、移動、分割及び合体等の、液滴のための様々な機能を首尾よく実証した。100pLの液滴を、100μWの光パワーを有する光ビームにより、785μm/秒の速度で運んだ。
【0020】
光電子ピンセット(OET)は、光誘起性誘電泳動(DEP)に基づいて、細胞や粒子を操作する。 微細粒子のトラッピングまたは反発は、光ピンセットに必要な大きさ(約105W/cm2〜107W/cm2)よりも5桁低い2W/cm2の光強度で実現される。細胞または粒子を含む液体は、その間にACバイアスをかけた状態で、感光面と透明ITOガラスとの間に挟み込まれている。レーザビームが上記感光層に集束すると、上記ビームは、その照明された面に仮想電極を形成し、上記水性層に不均一な電界を生じる。上記液層中の細胞または粒子は、この不均一な電界によって分極され、DEP力によって動かされる。上記力は、上記粒子の誘電特性及びバイアス周波数により、引力的または反発的になる可能性がある。OETを用いて、本発明者等は、約10μW未満の光パワーを用いて、ポリスチレン粒子と大腸菌細胞の集中を実証した。
【0021】
本発明の別の実施形態によれば、光誘起性誘電泳動(DEP)によって細胞または粒子を操作する装置は、(a)操作すべき粒子または細胞を含む液体を保持するために構成された第1の面及び第2の面と、(b)受けた光の近傍における、上記受けた光の局所電場への変換のために構成された、上記第1の面または上記第2の面の上の少なくとも1つの光伝導性領域と、(c)誘起された局所電場に応じて、粒子または細胞を選択的に反発させまたは引き付けるように、上記光伝導性領域上での受光のために光パターンを方向付ける手段とを備える。上記光パターン方向付け手段は、好ましくは、2次元光パターンを生成するために構成された光源を備える。
【0022】
本発明の他の実施形態によれば、2次元領域に対して、光イメージ駆動光誘起性誘電泳動(DEP)を用いて、細胞及び粒子を操作する光電子ピンセット(OET)装置は、(a)操作すべき粒子または細胞を含む液体を保持する十分な間隔を有する第1の面及び第2の面と、(b)受けた光の近傍に局所電場、すなわち仮想電極、を形成するための、光伝導性領域内での光エネルギの電場への変換のために構成されている、上記第1の面または上記第2の面の上の少なくとも1つの光伝導性領域と、(c)光誘起性誘電泳動(DEP)を用いて、粒子または細胞の位置決めを操作する移動仮想電極パターンを形成する、上記少なくとも1つの光伝導性領域上での動的光イメージの位置決めのための手段と、を備える。
【0023】
本発明の別の実施形態は、光誘起性誘電泳動(DEP)によって、細胞または粒子を操作する装置であって、(a)操作すべき粒子または細胞を含む液体を保持するために構成された第1の面及び第2の面と、(b)受けた光の近傍における、上記受けた光の局所電場への変換のために構成された、上記第1の面または上記第2の面の上の少なくとも1つの光伝導性領域と、(c)上記光伝導性領域により受けられる光を供給する光源とを備え、上記局所電場が、粒子または細胞を選択的に反発させまたは引き付ける装置を実現できる。
【0024】
上記光源は、好ましくは、例えば、上記光伝導性領域上へのイメージシーケンスまたはストリームのかたちで、2次元光パターンを生成するために構成された光投影システムを備える。
【0025】
本発明のさらなる実施形態において、2次元領域に対して、光イメージ駆動光誘起性誘電泳動(DEP)を用いて、細胞及び粒子を操作する光電子ピンセット(OET)装置は、(a)操作すべき粒子または細胞を含む液体を保持する十分な間隔を有する第1の面及び第2の面と、(b)電場を誘起するために構成され、それによって、受けた光の近傍に仮想電極を形成する(または、同様に、光エネルギを電場に変換する)、上記第1の面または上記第2の面の上の少なくとも1つの光伝導性領域と、(c)動的連続2次元光パターンを上記光伝導性面上に生成し、それによって、粒子または細胞のDEP操作のための動的局所電場を誘起するために構成された光プロジェクタと、を備える。
【0026】
上記光プロジェクタ、または、光イメージを動的に投影する同様の手段は、好ましくは、レンズアセンブリを介して、上記OETに方向付けられ、その結果、一連のイメージを上記光伝導性領域上に形成することができる。本発明の一つの好ましい実施形態において、電極は、含まれている粒子または細胞を有する上記液体にバイアス信号を印加できるように、上記第1及び第2の面に結合されている。
【0027】
本発明の一つの態様によれば、上記粒子および/または細胞の顕微鏡イメージングを実行し、上記粒子および/または細胞の位置を、また必要に応じて特性を、記録して、光イメージ位置決め及び動的イメージの動きを制御するためのフィードバックを実行できる手段が設けられている。
【0028】
本発明の別の実施形態は、2次元領域に対して、光イメージ駆動光誘起性誘電泳動(DEP)を用いて、(典型的には、100μm以下程度の直径の)細胞及び粒子を操作する光電子ピンセット(OET)であって、(a)操作すべき粒子および/または細胞を含む液体を保持する十分な間隔を有する第1の面及び第2の面と、(b)受けた光の近傍に、局所電場、すなわち仮想電極、を形成するための、光伝導体内での光エネルギの電場への変換のために構成されている、上記第1の面及び上記第2の面の上の少なくとも1つの光伝導性領域と、(c)近くの粒子および/または細胞のDEP操作のための動的局所電場を生成する上記感光性面上に、レンズアセンブリを介して動的連続イメージ(光パターンのシーケンス)を生成するために構成された、上記レンズアセンブリに結合された光プロジェクタと、を備える光電子ピンセット装置を実現できる。
【0029】
上記第1の面及び第2の面は、好ましくは、上記光プロジェクタから受けたイメージに応じて、その上でDEP操作が実行される連続的な膜を構成する。このように、導電性電極を用いたリソグラフィ・パターニングは、DEP操作を実行するのに必要ない。
【0030】
本発明の一つのやり方においては、その粒子および/または細胞を有する液体にバイアス信号を印加できるように、少なくとも1つの電極が上記第1の面及び第2の面の各々に結合されている。上記液体は、好ましくは、導電性または半導電性の流体を含む。典型的には、薄い誘電体層が、上記電極の内面に接合されており、また、上記液体に亘るインピーダンスより小さいインピーダンスを有するように構成されている。
【0031】
本発明の好ましいやり方において、マイクロビジョンをベースとするパターン認識サブシステムは、顕微鏡イメージングによって決定された粒子および/または細胞の位置、及び必要に応じて特性を記録することに応じて、上記光プロジェクタの出力を制御するために構成されている。上記特性は、顕微鏡イメージングシステムにより直接検知可能であり、または、長時間にわたって直接的な特性の変化を検知することに応じて決めることができるものなら何でも含むことができる。例証として、上記特性は、サイズ、色、形状、質感、生存能力、運動性、導電性、透過性、静電容量、および上記粒子または細胞の環境の変化に対する応答性を含むことができる。
【0032】
本発明の別の実施形態は、光誘起性誘電泳動(DEP)によって細胞を操作する装置であり、上記装置は、(a)操作すべき細胞を含む液体を保持するために構成された第1の面及び第2の面と、(b)受けた光に応じて、局所電場を誘起するために構成された、上記第1の面及び第2の面の上の少なくとも1つの光伝導性領域と、(c)上記光伝導性領域で受けられる光を供給する光源とを備え、上記光によって誘起された局所電場は、細胞を選択的に反発させ、または引き付け、上記受けた光は、上記装置内で操作されている細胞にダメージを与えない、十分に低い光強度である。一つの好ましいやり方において、上記実施形態は、上記装置内で、細胞の位置、および必要に応じて特性を記録することに応じて、上記光源の出力を制御するために構成された顕微鏡イメージングサブシステムをさらに備える。
【0033】
他の実施形態は、液体中に保持された粒子状物または細胞状物を操作する方法を実現でき、上記方法は、本質的に、(a)少なくとも第1の面及び第2の面を備える構造内に、上記粒子状物または細胞状物を含む上記液体を閉じ込めるステップと、(b)上記第1及び第2の面に結合された電極にバイアス信号を印加することにより、上記液体にバイアス電圧を印加するステップと、(c)上記構造の光伝導性部分に光を方向付けるステップとからなり、上記光は、光を受ける上記部分の近傍に局所電場を誘起し、それによって、上記粒子または細胞を誘電泳動的に反発させ、または引き付ける。
【0034】
他の実施形態は、液体中に保持された生物学的対象物を操作する方法を実現でき、上記方法は、(a)少なくとも第1の面及び第2の面を備える構造内に、上記粒子状物または細胞状物を含む上記液体を閉じ込めるステップと、(b)上記第1及び第2の面に結合された電極にバイアス信号を印加することにより、上記液体にバイアス電圧を印加するステップと、(c)上記構造内の生物学的対象物の特性及び位置を記録することに応じて、制御信号を生成するステップと、(d)上記制御信号に応じて、上記構造の光伝導性部分に光を方向付けて、受けた光の近傍に局所電場を誘起して、細胞状物を誘電泳動的に反発させ、または引き付けるステップと、を備え、上記光は、上記方法によって操作されている生細胞が生存し、かつ生存し続ける、十分に低い強度である。
【0035】
本発明の別の実施形態は、液体中に保持された粒子状物及び細胞状物を動的に操作する方法であって、(a)少なくとも第1の面及び第2の面を有する構造内に、上記粒子状物、および/または細胞状物を含む上記液体を閉じ込めるステップと、(b)上記第1及び第2の面に結合された電極にバイアス信号を印加することにより、上記液体にバイアス電圧を印加するステップと、(c)上記第1の面および/または第2の面の光伝導性部分に光パターンを集束させ、その結果、上記光のエネルギが局所電場に変換されて、受けた光の近傍に仮想電極を形成するステップと、(d)上記粒子および/または細胞の位置、及び必要に応じて特性を記録することから受けたフィードバックに応じて、上記光パターンを動的に位置決めするステップと、を備える方法を実現できる。
【0036】
本発明の他の実施形態は、液体中に保持された細胞を動的に分類する方法であって、 (a)少なくとも第1の面及び第2の面を有する構造内に、上記細胞を含む上記液体を閉じ込めるステップと、(b)上記第1及び第2の面に結合された電極にバイアス信号を印加することにより、上記液体にバイアス電圧を印加するステップと、(c)上記構造内の細胞の特性及び位置を記録することに応じて制御信号を生成し、どのカテゴリーに上記細胞を分類すべきかを決定するステップと、(d)細胞のダメージを防ぐのに十分に低い強度の光を、上記制御信号に応じて、上記構造の光伝導性部分に方向付けて、受けた光の近傍に局所電場を誘起し、上記細胞を誘電泳動的に反発させ、または引き付けるステップと、(e)上記制御信号に応じて、上記光を連続的に方向付けて、上記構造内で、上記カテゴライズされた細胞を、異なる仕分け群に移動させ、あるいは、上記構造の外部への輸送のために移動させるステップとを備える方法を実現できる。
【0037】
本発明のまた別の実施形態は、液体中に保持された粒子または細胞を動的に分類する方法であって、(a)少なくとも第1の面及び第2の面を有する構造内に、上記粒子または細胞を含む前記液体を閉じ込めるステップと、(b)上記第1及び第2の面に結合された電極にバイアス信号を印加することにより、上記液体にバイアス電圧を印加するステップと、(c)前記構造の光伝導性部分に亘って、光の移動パターンを方向付けて、上記パターンの近傍に局所電場を誘起し、上記粒子または細胞を誘電泳動的に反発させて、上記粒子の相対的サイズに従って、上記パターンから上記粒子を移動させるステップと、を備える方法を実現できる。
【0038】
本発明の実施形態は、本発明の教示から逸脱することなく、単独で、または、所望の何らかの組合せで実施することができる多数の有益な態様を提供することができる。
【0039】
本発明の一つの態様は、概して平坦な液体充填構造内で、光イメージ駆動光誘起性誘電泳動(DEP)を用いて、細胞及び粒子を操作する装置及び方法を提供することである。
【0040】
本発明の別の態様は、単一の粒子および/または細胞、粒子および/または細胞の集まったもの、または、それらの組合せを含む流体に隣接する大きな2次元領域に対して、光イメージ駆動光誘起性DEPを実行することである。
【0041】
本発明の他の態様は、単一の粒子および/または細胞、または、粒子群および/または細胞群を並行して(同時に)操作することができる光イメージ駆動光誘起性DEPを実行することである。
【0042】
本発明の他の態様は粒子または粒子群を物理的な電極の構造に制限されることなく装置内で所望の方向へ操作することができる光イメージ駆動誘起性DEPを実行することである。
【0043】
本発明の別の態様は、従来の材料及び処理技術を用いて、光イメージ駆動光誘起性DEPを実行することを可能にする。
【0044】
本発明の他の態様は、静電的に中性である粒子に対して、光イメージ駆動光誘起性DEPを実行することを可能にする。
【0045】
本発明の別の態様は、高分解能及び高スループットを同時に実現する光電子ピンセット装置(OET)で、光イメージ駆動光誘起性DEPを実行することを可能にする。
【0046】
本発明の他の態様は、動的電場を形成して、流体フローの助けを要することなく、粒子の位置決めを操作する光電子ピンセット装置(OET)で、光イメージ駆動光誘起性DEPを実行することを可能にする。
【0047】
本発明の別の態様は、従来の光ピンセットに必要な光エネルギレベルの約10万分の1である約10μW以下で、粒子及び細胞の位置を操作することが可能である光電子ピンセット装置(OET)で、光イメージ駆動光誘起性DEPを実行することを可能にする。
【0048】
本発明の他の態様は、厳密な光フォーカシングが必要なく、それによって、従来の光ピンセットを用いて実現可能な大きさよりも桁違いに大きい、1平方ミリメートル(1mm2)程度の、または、例えば、1.3mm×1.0mmまでの最大領域に対する操作を可能にする光電子ピンセット装置(OET)を可能にする。
【0049】
本発明の別の態様は、光電子ピンセット装置(OET)で連続光学的電子ウェッティング(continous optical electrowetting;COEW)技術を組合わせて光イメージ駆動光誘起性DEPを実行することを可能にする。
【0050】
本発明の他の態様は、チャンバ壁で隔てられ、かつ操作される粒子または細胞を含む液体を保持するために構成された第1の面及び第2の面を有するOET装置である。
【0051】
本発明の別の態様は、バイアス電流および/または電界を、保持された液体を通しておよび/または上記液体に亘って印加することができる上記第1の面及び第2の面上の電極を有するOET装置である。
【0052】
本発明の他の態様は、受けた光に応じて、局所電場を形成し、上記電場内に、低光パワーレベルで、粒子、細胞等を操作する仮想電極を形成する少なくとも1つの感光性/光応答性の面を有するOET装置である。
【0053】
本発明の別の態様は、連続膜として形成された第1及び第2の面を有するOET装置であり、上記面のリソグラフィック・パターニングは、本発明を実施するのに必要ない。
【0054】
本発明の他の態様は、窒化ケイ素、酸化ケイ素等の絶縁層と共に、または上記絶縁層を要することなく用いられる、非晶質および/またはマイクロ/ナノ結晶質半導体材料、非晶質シリコン、あるいは、有機光伝導体材料からなる面を有するOET装置である。
【0055】
本発明の別の態様は、上記OET装置内に保持された液体よりも低いインピーダンスを有する薄い絶縁層を有するOET装置である。
【0056】
本発明の他の態様は、導電性面、非導電性面、または、対向面がない面(オープン構造)との種々の組合せで、単一面または両面の感光性面を用いたOET装置である。
【0057】
本発明の別の態様は、単独で、操作要素からなるアレイで、および操作要素の組合せ及びシーケンスで実施することができる、トラップ、くし状部、ソータ、コンセントレータ、ループ、コンベヤ、ジョイント、粒子チャネル、ウェッジ、スウィーパを実装するために構成されたOET装置である。
【0058】
本発明の他の態様は、上記面が、流路(チャネル)、キャビティ、リザーバ及びポンプ等の微小流体デバイスと一体化するOET装置である。
【0059】
本発明の別の態様は、サイズに応じて粒子、細胞、および他のマイクロ/ナノ粒子を分離するくし状デバイスを実装するOET装置である。
【0060】
本発明の他の態様は、所望の周波数のACバイアスおよび/またはDCバイアスをかけることができるOET装置である。
【0061】
本発明の別の態様は、ACバイアスの周波数が、粒子、細胞等がパターン化された光によって引き付けられるかまたは反発し合うかを決定するOET装置である。
【0062】
本発明の他の態様は、顕微鏡イメージング手段が、OET装置内の粒子、細胞等の実際の位置に応じてパターンが形成されるように、動的光パターニング装置と共に作動するOET装置である。
【0063】
本発明の別の態様は、粒子の特徴付け及び位置決めの間に、OET装置にフィードバックを与えるように構成されている顕微鏡イメージング装置と組合わせたOET装置である。
【0064】
本発明の他の態様は、顕微鏡イメージング手段が、粒子、細胞等の実際の位置及び成分を分析し、上記イメージング手段により検知された実際の位置に応じて、粒子、細胞等を移動させ、集めおよび/または分散させるための光出力シーケンスの生成を制御するために構成されているOET装置である。
【0065】
本発明の別の態様は、導電性または半導電性の流体がOET装置内に保持されている上記OET装置である。
【0066】
本発明の他の態様は、光パターン、および特に、動的照明パターンに応じて、粒子及び細胞を操作するために構成されているOET装置である。
【0067】
本発明の別の態様は、動的照明パターンが生成されて、上記光パターンの動きに応じて、粒子、細胞等が連続的に移動されるOET装置である。
【0068】
本発明の他の態様は、照明パターンが、レーザ、またはより好ましくは、低強度インコヒーレント光源(すなわち、ハロゲン、LED等)により生成されるOET装置である。
【0069】
本発明の別の態様は、低強度照明の使用が、光伝導体内での光エネルギの電場への変換によって可能となるOET装置である。
【0070】
本発明の他の態様は、生存性の違い(すなわち、死んでいるか生きているか)、内部導電率、サイズ、色、形状、質感、水性環境の変化に対する応答性、および同様の識別特性に応じて、粒子または生体細胞を分類するために構成されたOET装置である。
【0071】
本発明の別の態様は、膜特性(例えば、透過性、静電容量等)、内部導電率等の違いに応じて、生体細胞を分類するために構成されたOET装置である。
【0072】
本発明の他の態様は、低強度照明の使用が、従来の光ピンセットを用いた場合に生じる光ダメージ(“オプティキューション(opticution)”)からの生存率のロスを伴うことなく、生体対象物を操作することを可能にするOET装置である。
【0073】
本発明の別の態様は、低強度照明の使用が、光伝導体内での光エネルギの電場への変換によって可能となるOET装置である。
【0074】
本発明の他の態様は、光源が、空間光変調器、または、光変調器の同様の構成によってパターン化されているOET装置である。
【0075】
本発明の別の態様は、光パターンが、拡大及び縮小に応じて変化するOET装置である。
【0076】
本発明の他の態様は、生体分析、細胞操作、コロイドアセンブリ、粒子分類、粒子アセンブリ等に用いるOET装置である。
【0077】
本発明のさらなる態様は、本明細書の以下の部分で明らかにし、詳細な説明は、本発明の好ましい実施形態を限定することなく完全に開示するためのものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0078】
例示のために、図面をより具体的に説明すると、本発明は、図1〜図44に概して示す装置に具体化される。上記装置が、本明細書に開示した基本概念から逸脱することなく、構成に関して、および部材の詳細に関して変わってもよいこと、および上記方法が、特定のステップ及びシーケンスに関して変わってもよいことは、十分に理解されるであろう。
【0079】
本発明は、流体中に懸濁する粒子、細胞及び他の成分が操作される多数の実施形態を含む。本願は、それらの実施形態を9つの項で説明する。
【0080】
1.光イメージを用いた広範囲に及ぶ並行操作
単一の粒子を操作するための光伝導性面上での電場の高分解能パターニングを可能にする光イメージ駆動誘電泳動技術を、本明細書で説明する。上記技術は、従来の方法を用いた場合よりも実質的に低い光強度レベルで実行することができ、例えば、一つの実施形態は、光ピンセットの場合の約10万分の1の光強度を要する。加えて、上記技術は、インコヒーレント光源を使用することができる。一実施例において、インコヒーレント光源(発光ダイオード(LED)またはハロゲンランプ)は、1.3mm×1mmの領域内で、15,000個の粒子のトラップの並行操作を実証するために、デジタルマイクロミラー空間光変調器と共に用いられる。複雑な多段階操作手順を実現するために、直接光イメージング制御を用いて、多くの操作機能を容易に組合わせることができる。
【0081】
産業界においては、光誘起性誘電泳動を、単一の粒子レベルまで至る操作を実行する能力を実現できる動的な光の指向メカニズムを用いて制御できることは、これまで認識されていなかった。本発明の光電子ピンセット(OET)は、単一の粒子の並行操作のための高分解能DEP電極を形成する直接光イメージを用いる。DEP力は、不均一な電場にさらされた粒子内の誘起双極子の相互作用によって生じる。上記力の大きさは、電場勾配と、上記粒子及び周囲の媒質の誘電特性に依存する上記粒子の分極率とに依存する。
【0082】
図1は、本発明による光電子ピンセット(OET)の実施形態10を示す。微細粒子(または細胞)14を含む液体12は、例えば、透明導電性ITOガラスを備える上部層16と、例えば、高濃度にドープされたa−Si:Hからなる50nmの層22と、無ドープのa−Si:Hからなる1μmの層24と、窒化シリコンからなる20nmの層26とを有する、多数の、好ましくは特徴のない(featureless)層が上にあるITO被覆ガラス20から形成された光電性面を備える底部層18との間に挟み込まれている。例証として、上記下方の層は、ガラス基板28の上に示されている。
【0083】
上部16及び底部18の面は、10VPPのAC電気信号等のバイアス源30に結合されている。別法として、上記面は、やや好ましくないが、小さなDCでバイアスをかけることができ、または、特定の装置構造や操作アプリケーションによってAC及びDCの組合せでバイアスをかけることができる。上記ACバイアスの周波数が、粒子、細胞等が上記パターン化された光によって引き付けられるか、または反発し合うかを決め、ACの使用が、DCバイアスの使用に優る多くの利点をもたらすことを認識すべきである。
【0084】
下方層の光電性面24は、受けた光エネルギを、図1の同心リング32のセットにより例示的に示される対応する電場に変換する。照明源は、この実施例に示すような625nmの波長で作動する(Lumileds(登録商標)、Luxeon(登録商標)、Star/O(登録商標)により作成した)LED34等の何らかの使いやすい光源とすることができる。光投影手段は、光パターンを光電性下方層18上に出力するメカニズムを形成し、好ましくは、上記面に対して空間的強度バリエーションを有し、かつ典型的には、(ムービーと同様の)パターンストリームにおける出力、あるいは、(スライドショーと同様の)パターンシーケンスである、明領域または暗領域によって規定された構造を有する動的光パターンを出力するために構成されている。上記光パターンを投影する一つの好ましい技術は、対物レンズ38と共同して、LED34からの光を光電性面24上に集束させて、DEP操作のための不均一な電場を形成するデジタルマイクロミラーディスプレイ(DMD)等の空間光変調手段36を用いることである。
【0085】
投影された光が上記光電性層を照明すると、上記光は上記仮想電極を作動させて、不均一な電場を形成し、DEP力を介した粒子操作を可能にする。これらの特徴のない層は、何らかのリソグラフィまたは微細加工を要することなく形成することができ、上記デバイスを低コストにし、かつ使い捨て用途に対して魅力的にする。OETをベースとする光学的操作は、作動のために誘起されたDEP力の結果として、2つの作動モード、すなわち、正のOETと負のOETとを有する。粒子は、AC電場の周波数と、上記粒子の内部及び表面の誘電特性とにより、上記照明された領域によって引き付けることができ、または、上記照明された領域から反発させることができる。
【0086】
高光伝導性ゲインの結果として、仮想電極を作動させるのに必要な最小の光強度は、10nW/μm2となり、これは、光ピンセットの約10万分の1である。光強度のこの低いしきい値は、インコヒーレントな光イメージを用いて、大きな領域に対して、例えば、1平方ミリメートル(1mm2)程度の最大領域、及び光学的構成によりそれよりさらに大きな領域に対してDEP力を制御することの可能性を広げる。例えば、上記光イメージは、一実施形態において、1つのLEDと、デジタルマイクロミラー空間光変調器(すなわち、例えば、13.68μm×13.68μmの画素サイズで1024×768画素を有するTexas Instruments(登録商標)によるDMDデバイス)とを組合わせることによって形成される。上記パターンは、10倍の対物レンズを介して上記光伝導性面上に投影される。その結果として生じる上記仮想電極の画素サイズは、1.52μmである。上記実施例のための照明源は、40,000画素を作動させるのに十分である、(上記対物レンズの後方で測定した)1mWの出力を有する赤色LED(625nmの波長)であった。厳密なフォーカシングはOETには必要なく、上記光操作領域は、適当な対物レンズを選択することによって拡大することができる。10倍の対物レンズを用いると、操作領域(1.3mm×1.0mm)は、光ピンセットの操作領域の500倍になる。
【0087】
高分解能仮想電極のパターニングは、単一粒子の操作を実現するのに重要である。OETは、これまでに報告した光誘起性電気泳動法よりも高い分解能を有する。上記仮想電極の最小サイズは、光伝導体内の光生成キャリアの横方向拡散距離及び上記対物レンズの光回折によって制限される。無ドープのa−Si:H内での非常に多くの電子欠陥状態は、115nmより小さい短い両極性電子拡散距離を生じる。従って、最終的な仮想電極分解能は、光回折制限によって決まる。また、誘起されたOET力は、電場の2乗の勾配に比例し、上記力を上記仮想電極の局所領域にうまく制限し、これは、単一粒子の操作にとって鍵となる特性でもある。
【0088】
図1のOETは、本発明の多くの変形例によって実施することができることを認識すべきであり、以下に、例証として記載する。上記OET装置は、チャンバ壁によって隔てられ、かつ操作される粒子または細胞を含む液体を保持するために構成された第1の面及び第2の面を備えている。電極を第1の面及び第2の面上に設け、その上に、バイアス電流および/または電場を、保持された液体を介しておよび/または保持された液体に亘って印加できるようにすることが好ましい。図1は、単一の光伝導体面を備えて示されている。しかし、本システムは、受けた光に応じて、該材料の表面上に局所電場を誘起し、その中で、低光パワーレベルで粒子、細胞等を操作する仮想電極を形成する少なくとも1つの光電性/光応答性の面を有するようにして実施することができる。本発明による上記OETは、導電性面、非導電性面または対向面なし(開放構造)との様々な組合せで、単一のまたは両面の光電性面を用いて形成することができることを理解すべきである。
【0089】
上記OETの第1及び第2の面は、好ましくは、連続膜(continuous film)として形成され、上記面のリソグラフィック・パターニングは、本発明を実施するのに必要ない。しかし、本発明の上記OETは、従来のDEP構造または特定の用途範囲向けの連続光学的電子ウェッティング技術(COEW)と組合わせて実施することができることを認識すべきである。
【0090】
図1のOETは、窒化シリコン、酸化シリコン等の絶縁層と共に、または上記絶縁層を要することなく用いられる、非晶質および/または微小/ナノ結晶質の半導電性材料、非晶質シリコン、または有機光導電性材料からなる面を有して構成することができる。使用時、上記OETの薄い絶縁層は、上記OETデバイス内に保持された液体のインピーダンスよりもかなり小さいインピーダンスを有する。
【0091】
図2A〜図2Dは、1.3mm×1.0mmの領域に亘って形成された15,000の粒子トラップ全てにわたって、単一粒子のしっかりした並行操作を実行できる上記装置の実施形態から得られた結果を示す。負のDEP力を受ける直径4.5μmのポリスチレンビーズは、暗領域に捕捉される。
【0092】
図2Aは、この特定の実施形態において、各トラップが、単一の粒子にフィットする4.5μmの直径を有する配列の一部を示す。
【0093】
図2Bは、例証として、上記操作領域のこの部分内での粒子の動きを示す取込み映像の3つのスナップ写真によって、単一粒子の平行輸送を示す。2つの隣接する列内の捕捉粒子は、図2C及び図2Dに見られるように、反対方向に動く。誘起された負のDEP力は、上記ビーズを、照明されていない領域内に押し込み、上記領域では、電場が弱くなっている。各トラップのサイズは、単一の直径4.5μmのポリスチレンビーズを捕らえるように最適化されている。
【0094】
投影されたイメージをプログラミングすることにより、これらの捕捉された粒子は、図2Bに示すように、個別に動かすことができる。プログラム可能なCMOS DEPチップと比較して、上記OET(11,500箇所/mm2)の粒子トラップ密度は、高分解能取扱い能力に応じて30倍以上である。直接イメージングを用いて、精巧な仮想電極を容易にパターン化し、かつ再構成して、流体フローの助けなしで、連続的な粒子操作のための動的電場分布を形成することができる。
【0095】
図3A〜図3Dは、異なる成分の動きが同期される集積型仮想光学マシンの実施例を例証として示す。図3Aにおいて、上記イメージは、光学ソータ経路、コンベヤ、ジョイント及びウェッジを含む多数の仮想コンポーネントを集積化する構造を示す。本発明のOET装置は、本発明の教示から逸脱することなく、別々に、操作要素からなる配列状で、および操作要素の組合せ及びシーケンスで実施することができる、多種多様なトラップ、くし状部、ソータ、コンセントレータ、ループ、コンベヤ、ジョイント、粒子チャネル、ウェッジ、スウィーパを実装するために構成することができることを認識すべきである。
【0096】
図3B、図3Cにおいて、10μm及び24μmのサイズを有する2つのポリスチレン粒子は、上記ソータ経路を通過し、非対称の光学パターンにより、z方向に分別される。上記粒子トレースは、光学ウェッジの先端位置を再構成することにより、上記ソータ経路の端部で切り替えることができる。粒子の動きの軌道は、光学的分類の再現性が暗いトラックと明るいトラックとによって表されている図3B及び図3Cを見て分かるように、高度に再現可能であり、かつ正確に規定されている。図3Bにおける明るいループ及び暗いループは、43サイクル後の粒子トレースを示す。検査バーで広がるトレースは、10μmのビーズの場合に0.5μmの標準偏差を、24μmのビーズの場合に0.15μmの標準偏差を有する。
【0097】
粒子は、異なる機能的領域を通って運ばれ、この光パターン回路内で再循環されて、ウェッジディバイダの位置により、異なる経路を通って移動することを認識すべきである。異なるサイズを有する粒子は、光パターン状電場の非対称形状により、上記ソータ経路を通過する際に、横方向のz方向に分別される。上記ソータ経路の端部において、光学ウェッジは、上記複数の粒子を分割して、2つのコンベヤに案内する。ループ状光学コンベヤは、上記粒子を再循環させて上記ソータの入力へ戻し、上記プロセスを繰返す。
【0098】
図3Dは、上記粒子が上記ソータを43回通過した後の(白いバーでマークした)上記ソータの中間部における粒子の位置の分布を示す。トレースの広がりの標準偏差は、10μmのビーズの場合に0.5μmであり、24μmのビーズの場合に0.15μmである。DEP力の大きさは、粒子の体積に比例する。より大きな粒子は、輸送中に、光学パターン状のDEPケージ内で堅固な閉じ込めを呈する。
【0099】
図4A〜図4Dは、生体細胞の特性に従った上記生体細胞の分類を例証として示す。この実施形態によれば、生細胞は、正のOETに従って、明るい領域に捕捉され、上記パターンの中心部に引っ張られる。(トリパンブルー色素が付いた)死細胞は、暗いギャップを通って漏出し、集められない。異なる粒子または細胞間の誘電性の違いを利用することにより、本明細書に記載したDEP法は、膜特性(例えば、透過性、容量、導電性等)、内部導電性及び細胞の大きさの違いを有する生体細胞を選別及び分類するのに用いられてきた。これらの方法は、他の粒子または細胞の特性に拡大適用することができることを認識すべきである。上記OET技術は、これらのDEPの利点を引き継ぐだけではなく、各個別の細胞を取扱う能力も実現できる。
【0100】
図4A〜図4Dにおいて、生細胞及び死細胞の混合物からの、生きたヒトのB細胞の選択的集結を実例説明する。上記細胞は、上記細胞の生存性をチェックするための0.4%のトリパンブルー染色液と混合した、8.5%スクロース及び0.3%デキストロースからなる等張緩衝液中にしており、10mS/mの導電率を生じる。印加したAC信号は、120kHzの周波数で14VPPである。生細胞の細胞膜は、選択的に透過性であり、細胞内環境と細胞外環境との間のイオン濃度差を維持することができる。対照的に、死細胞は、この差、イオン濃度差を維持することができない。そのため、死細胞は、低イオン濃度を有する媒質中に懸濁しており、上記細胞膜内のイオンは、イオン拡散によって希釈され、これは、生細胞及び死細胞の誘電特性の間に差を生じる。生細胞は、正のOETに従い、照明された領域への引き付けにより、縮小する光学リングパターンの中心に集められ、一方、死細胞は、負のOETに従って、集められない。
【0101】
単一細胞分析は、刺激時の各個別の細胞の応答スペクトルを決定することが可能であるため、多くの生物学的メカニズムを理解するのに重要な技術である。直接インコヒーレント光イメージを用いて、新たな単一細胞及び粒子の操作技術が、多数の単一の細胞及び粒子を並行して操作することを可能にした本発明によって実証された。投影される光学パターンをプログラミングすることにより、多段階診断手順を、平坦な非晶質シリコン被覆ガラススライド上で、輸送、仕分け、再循環及び分離等の複数の機能を組合わせることによって実現することができる。生物学的用途に加えて、OET面上にパターン化された高分解能電場は、コロイド状構造の結晶化をガイドする動的鋳型(dynamic template)としても機能することができる。
【0102】
2.光電子ピンセット
本発明の光電子ピンセット(OET)は、空間光変調器(マイクロディスプレイまたはDMDミラー)によって制御される連続的に投影されたイメージにより、細胞及び微粒子の細胞の捕捉、収集、輸送及び分類等の機能を可能にする光学的制御を用いた細胞及び微粒子の操作のためにデザインされている。上記光学作動出力は、1mW程度と低いため、本発明は、容易に集束するインコヒーレント光源及び直接イメージ投影システムを用いた光学的操作を可能にする。上記システムは、実質的に増大した操作領域を提供し、また、複雑な光学パターンの形成、およびそれに伴うより多くの光学的操作機能を可能にする。
【0103】
図5は、本発明の別の実施形態によるOET装置50の構造の概要実施例である。図示の実施例のOETは、液体細胞構造の水平方向の大きさを規定し、かつ対向する面16、18を隔てるスペーサ44、46を含む。ACバイアスは、光学パターンが下方層18内の光電性面上に投影されている間に、上部層及び底部層に亘っての印加することができる。好ましい実施形態において、上記装置は、内部面に薄い導電性層44(すなわち、アルミニウム)を有する透明層16を有する上部面と、光電性面24を有する底部層18とを有する2つの対向する面を備える。光が、例えば、非晶質シリコンからなる層を備える上記光電性面に照明されると、液体層12内に不均一な電場を生成する、光により規定された仮想電極52が形成される。上記仮想電極近傍の細胞または粒子は、その静電気力によって操作される。
【0104】
図6は、細胞操作システム70内の、図5のOETを示す。プログラム可能なDMD等のプログラム可能な空間光変調器72は、PC等の処理手段74によって制御される要求される光イメージを生成するのに用いられる。上記光イメージは、例えば、ハロゲンランプ76等の光源によって生成された光を反射させて、細胞操作のための上記構造内に仮想電極を形成することによって、上記OET装置上に投影される。
【0105】
上記OET装置は、所望の用途により、ポンプまたはチャネルを用いて、または用いることなく、作動させることができる。任意的な液体ポンプ78及び出力ポート80は、上記OETの中で、粒子または細胞と共に液体を動かすのに、あるいは、上記OETの状態を変化させるのに用いることができる。
【0106】
上記細胞の動きは、顕微鏡フォーカスを用いたカメラ(すなわち、電荷結合素子(CCD))等のイメージング手段88によって捕捉され、上記イメージング手段は、さらなる処理のためのフィードバック信号を生成する。本発明の一つのやり方において、拡大レンズ系82は、コンピュータ74によってイメージを捕捉できるようにするために、カラーフィルタ及びビームスプリッタ84と、光源86(すなわち、水銀ランプ)との組合せを介して結合されている。
【0107】
光イメージが上記光電性面上に投影されると、図5に示すような光パターン状の仮想電極が形成される。この仮想電極は、静電気力を介して細胞及び粒子を操作するための電場をその周囲に生成する。上記光パターン状電極によって生成された上記電場のパターンは、投影されたイメージにより、どのような種類の形状も有することができる。上記電場のパターンは、単一の粒子、または粒子群を捕捉する電場ケージを形成することができ、あるいは、粒子を案内するための電場チャネルを形成することができる。上記仮想電極は、全て光学的にパターン化されるため、完全にプログラム可能かつ再構成可能である。細胞輸送、細胞収集及び細胞分類等の光学的操作機能は、単一のチップ上で同時に実現することができる。
【0108】
例示的なOET装置は、特に、複数細胞及び単一細胞レベルでの細胞操作における用途によく適している。細胞(または粒子)を含む液体は、第一に、上記OETの2つの面の間に挟み込まれている。使用される光イメージは、上記コンピュータ内で生成された後、上記空間光変調器にロードされ、上記光イメージは、図6に示すように、コヒーレント光源またはインコヒーレント光源のいずれかを用いて照明される。そして、上記イメージは、好ましくは、対物レンズを介して上記OET装置上に投影されて、上記光パターン状仮想電極が形成される。上記細胞または粒子の反応は、イメージング手段(すなわち、カメラ)により、光学的操作に必要な新たな光パターンを生成する、上記コンピュータのためのフィードバック信号として捕捉することができる。
【0109】
上記OETに結合された顕微鏡イメージング手段は、好ましくは、上記OET内に保持された粒子および/または細胞の数、特性及び位置に基づいてイメージパターンを形成することができる情報を生成する認識アルゴリズムを用いて構成される。例えば、この認識アルゴリズムは、特定サイズ範囲の、特定の色及び外見の粒子および/または細胞を測定するのに、または、色、形状、外見、導電性、透過性、容量、運動性等の直接的に検出可能な他の特性を測定するのに用いることができる。また、上記イメージングシステムは、好ましくは、例えば、粒子および/または細胞の、環境変化(例えば、水溶液の変化、放射、温度、pH等)に対する反応、または、上記粒子および/または細胞、および上記OET内の他の粒子、細胞および/または構造の間の相互作用に対する反応を記録することから推定することができる間接的な特性を検出するために構成されている。
【0110】
粒子、または、より典型的には細胞の特性を、周りの液体の温度変化、照射変化、化学的特性変化、他の粒子および/または細胞との相互作用に応じた、粒子または細胞の色、形状、外見等の変化等の環境の変化に対する反応を顕微鏡的に検出することによって測定することができることは、認識されるであろう。上記顕微鏡イメージング手段は、その視野内の各粒子または細胞の情報を格納するように、および環境の変化に対応した相関する検出変化に応じて、特性を分類するように構成することができる。上記顕微鏡イメージング手段は、上記OET内での動きに関係なく、各粒子または細胞に関する情報を保持することができる。このように、本発明は、広範囲の粒子及び細胞の仕分け、分離、分類、濃度、アセンブリ及び操作の所望の他の目的を実行するように実施することができる。
【0111】
また、上記OET装置は、連続的光学操作を実行できるポンプ及びチャネル構造と一体化することができる。さらに、上記OET装置は、ハイブリッド手法に適した特定の用途に対応するために、連続的光学電子ウェッティング(COEW)または従来の固定電極DEP技術と組合わせることができる。
【0112】
本発明が、上記OETの構造に対して、及び光伝導性材料の利用において、当該技術に対して際立った改良を実現できることを認識すべきである。本発明の上記OET装置は、製造のためにフォトリソグラフィマスキングを必要としない実質的に特徴のない層で構成することができ、製造コスト要因は実質的に低減される。また、低コストの非晶質シリコンが、好ましくは、上記光伝導性層として用いられ、低暗伝導度、高光電性及び短い電子拡散距離という利点も実現できることを認識すべきである。非晶質シリコンだけでなく、同様の電気的特性及び光学的特性を有する他の材料物質も用いることができることを認識すべきである。また、代替の実施形態は、光応答性の他のメカニズム及び構成を用いることにより、例えば、上記光伝導性構造の代わりにフォトトランジスタを用いることにより、実現することができる。
【0113】
上記OET発明の特性は、非常に低い光パワーレベル(すなわち、1mW程度)で、及び仮想電極のサブミクロン分解能で光学的操作を実行でき、また、インコヒーレント光源を用いたOETによって光学的操作を可能にする。従来のOET装置が、その構造によって決まるコヒーレント光源の使用に依存していることは十分に理解されるであろう。
【0114】
本発明のOET装置について説明し、かつ上記装置は、粒子のトラッピング、収集、多段階処理、微細粒子及び生細胞の両方に関する分類等の様々な用途に用いることができる。本発明の上記OET装置は、直接イメージ投影システムからの再構成可能な光学パターンを用いた、単一及び複数細胞レベルでの細胞の並行光学的操作を可能にする。微小流体環境内の細胞を処理するのに、ポンプ、微小チャネル及びバルブは必要ない。本明細書に記載した本発明のOET装置及び方法の使用は、粒子操作の分野において、および特に、細胞状粒子の操作において、著しい前進をもたらすことが意図されている。
【0115】
3.粒子操作のための動的DMD駆動光電子ピンセット
単一の細胞を動かし、分類する能力は、生物医学及び生物学コミュニティにおいて、大いに追求されている。光ピンセット及び動的ホログラフィック光ピンセット(holographic optical tweezers;HOT)アレイは、個々の細胞操作を実行する手段を備えていたが、高い光パワーレベル(約1μW〜100μW)を必要とし、小さなトラップ領域(<1μm)を有している。光電子ピンセット(OET)は、光ピンセットの欠点を克服する細胞操作の方法を実現できる。上記光電子ピンセットは、非常に低い(すなわち、マイクロワット程度の)光パワーを要し、このことが、インコヒーレント光源及び直接光イメージングを用いて、トラップをパターン化する可能性を広げる。
【0116】
ここまで、発明者等は、単一のレーザビームを用いた、微細ラテックス球及び生大腸菌細胞のOET操作を実例説明してきた。空間光変調器は、多数のOETトラップ、およびライン及びリング状ケージ等の新規なパターンを生成するのに用いることができる。この明細書において、発明者等は、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を用いて、動的イメージを標準的なマルチメディアプロジェクタを介して本発明のOET装置上に投影することにより、微小粒子を捕捉して動かすことが可能な新規な粒子ケージに関して報告する。本発明のこの態様が、多くの用途において多数の利点をもたらすであろう非コヒーレント光源を用いて、微細粒子マニピュレータを実証することは、認識されるであろう。
【0117】
図7Aは、光誘起性誘電泳動の原理に基づいている、本発明による光電子ピンセットの実施形態90を示す。窒化物層とITO上部層とに挟み込まれた緩衝液12は、対象となる粒子14を含む。動作時、光源は、例えば、上記OET装置のACバイアスをかけた非晶質シリコン(a−Si)光伝導性基板層を備える光電性層24上に集束される。暗いときには、上記a−Siは高抵抗性であるが、上記光伝導性層が照明されると、上記a−Siの導電性は、光生成された電荷キャリアにより大幅に増大して、局所仮想電極を形成し、かつ上記緩衝液中に不均一な電場を生成する。誘電泳動(DEP)力は、上記電場の不均一性から生じる。この力は、粒子及び媒質の誘電特性及びバイアス周波数により、正(上記電場に最大限に引き付けられる粒子)または負(上記電場に最小限に引き付けられる粒子)のいずれかである。図7Bは、図7Aに示すOETの構成要素のための実験用構成を示す。
【0118】
図8は、単一粒子トラップを形成するように構成することができる上記OET面上に投影されたリング状パターンによって生じる空間電場分布を示す。負のDEP力は、最小の局所電場に相当するため、上記光リングの中心の粒子を保持する。上記リング外の粒子は、同じ力によって反発し合う。
【0119】
例示として示された図7Bに示す実験用構成100を詳細に考察すると、コンピュータ102(すなわち、パーソナルコンピュータ(PC))は、(120W 1000−ANSIルーメンの高圧水銀ランプを有する)光源114及びDMDドライバ回路インタフェース116の両方として用いられる、InFocus(登録商標)LP335 DMDをベースとするプロジェクタ104にイメージ信号を出力する。例えば、MEMSミラーからなるアレイを備える上記DMDは、上記PCの外部モニタポートの出力に対応するイメージを形成する。上記投影レンズの出力における光は、例証として、光学系118、レンズ106、108、ミラー110によって集光され、平行にされて、対物レンズ112(すなわち、10倍)を介してOET装置90上に向けられた。上記対物レンズは、上記ビームを、上記ITO上部層と上記光伝導性底部層との間に挟み込まれた、0.1mS/mの導電率を有する緩衝液12内に集束した。上記光伝導性層は、Nikon(登録商標)TE2000E倒立顕微鏡のステージ上に配置した。観察は、上記倒立顕微鏡に結合されたCCDカメラを介して行った。
【0120】
図9A〜図9Fは、本発明の態様に従って閉じ込めて捕捉した粒子のイメージを示す。これらの図における上記イメージは、上記DMDプロジェクタに接続されたPC上の標準的な表示ソフトウェア(Microsoft Power Point)等の光学プロジェクタを用いて、上記対物レンズの焦点面上に形成された。負のDEP力は、19.5VのACバイアス及び100kHzの周波数で、溶液中の25μmのラテックス球で観察された。動的ライン状ケージ(図9A〜図9C)及びリング状トラップ(図9D〜図9F)を含む様々なパターンを、粒子を操作するのに用いた。粒子の動きは、約40μm/秒であると観察された。
【0121】
本発明の態様は、非コヒーレント光源からの光誘起性誘電泳動を用いて、ミクロンサイズの粒子の操作を実証することを認識すべきである。様々な動的光パターンを、粒子トラップ及びマニピュレータとして用いて、25μmのラテックス球を、0.1mS/m緩衝液中で約40μm/秒で動かすことができた。
【0122】
4.光電子ピンセットによる粒子の動的アレイ操作
細胞規模の操作は、生物学研究における重要なツールであり、そのような顕微鏡的操作のための能力を実証した技術は、光ピンセット及び誘電泳動を含む。光ピンセットは、微小粒子の非常に精微な制御をすることができるが、上記技術は、高光パワー要件に悩まされる。誘電泳動は、14nmと小さい粒子を捕捉することが実証されている。しかし、誘電泳動は、電極の静止パターンを必要とし、容易に再構成可能ではない。
【0123】
従って、本発明は、光誘起性誘電泳動の技術または光電子ピンセットを用いたマイクロメータ規模の対象物を操作する別の方法を実証する。誘電泳動力を誘起するレーザを用いて、25μmのラテックス球及び大腸菌の制御された動きを実証した。この方法は、非常に低い光パワーレベルで用いることができ、インコヒーレント光源を用いた、粒子及び細胞の操作を可能にする。また、記載した光システムにおける空間光変調器の使用は、粒子トラップの動的再構成を可能にし、従来の誘電泳動に優る粒子操作におけるさらなる汎用性を実現できる。本発明は、微小粒子の動的アレイ操作が、光電子ピンセットを用いて実行される新規な操作態様について記述する。粒子のアレイへの自己組織化および単一粒子アレイの形成は、各粒子を個別に取扱う能力を実証し、かつ実現できる。
【0124】
誘電泳動(DEP)は、不均一な電場の存在の下で、粒子に対して誘起される力を指し、これは、典型的には、様々な電極構成によって生成される。電場内の粒子は、誘起双極子を形成し、上記誘起双極子は、上記電場勾配による力を受けることになる。誘起された誘電泳動力の方向は、上記電場の周波数と、上記粒子及び周囲の媒質の透過率及び導電率とに依存する。正のDEPは、粒子の電場への最大限の引き付けをもたらす。対照的に、負のDEPは、粒子を電場から最大限に反発させる。このようにして、AC電場を印加することは、粒子に誘起されたDEP力のタイプのチューニング、およびどのような電気泳動効果も無効にすること、または、その表面電荷による粒子の動きを可能にする。
【0125】
本発明のこの態様による光電子ピンセット(OET)は、光誘起性誘電泳動を可能にする。従来のDEPとは違って、印加された電場に不均一性を導入するのに、電極パターンは必要なく、その代わり、光伝導性層が、仮想電極を形成するのに用いられる。入射光を上記光伝導体上に集束すると、暗領域と比較して、その導電性が実質的に増加し、従来のDEPにおけるパターン化された電極と同様に、上記照明された領域内に電極が有効に形成される。また、OETにより用いられる上記仮想電極は、従来のDEPの固定電極とは違って、可動かつ再構成可能である。
【0126】
図10A、図10Bは、本発明によるOETトラップの態様を示す。図10Aには、光誘起性の負のDEPによって収容された45μmのポリスチレン球を有する単一粒子OETトラップが示されている。図10Bには、図10Aに示す断面A−A´に沿った単一粒子トラップの場合の、上記電場の2乗の分布が示されている。DEP力は、この分布の勾配に比例する。
【0127】
例証として示すように、および限定するものではないが、図10Aの単一粒子矩形トラップは、70μm×50μm程度の内のり寸法を有する。直径45μmの球が、約25μm幅の周囲光“壁”により“捕捉されて”示されている。上記電場の2乗の対応する断面分布は、図10Bに示すように、DEP力は、この分布の勾配に依存するため、上記粒子が受ける上記トラップの幅が約50μmであることを示す。負のDEP力が上記トラップパターンによって誘起されると、上記トラップ領域外の全ての粒子は、上記電場によって最大限に反発されることになり、上記トラップの周辺部を形成する。上記取り囲まれたトラップ領域内のどの粒子も、同様の反発力を受けることになるが、上記力は、上記粒子を均衡させて捕捉する。1つの粒子が、一旦、上記矩形状パターン内に収容されると、上記トラップを移動させて、上記粒子を所望の位置へ運ぶことができる。さらに、多数のトラップを、捕捉した粒子のアレイを構成する構築ブロックとして用いることができ、上記ブロックは、任意に配列し、かつ動的に再構成することができる。
【0128】
上記OET内にDEP力を誘起するのに必要な光パワーは、OETに供給される光エネルギが、上記粒子を直接捕捉しないため、光ピンセットを実施するときに必要な光パワーよりもかなり低い。OETを用いる初期の実験は、440mW/cm2の入射パワー密度に相当する1μWの光パワーによって、25μmの粒子の4.5μm/秒での動きを示した。相対的に、1mWの最小トラッピングパワーでの、直径1μmの光ピンセットトラップは、32kW/cm2の光パワー密度を有する。
【0129】
OETの低光パワー要件は、多くのシステムデザイン上の利点をもたらす。低コストのインコヒーレント光源は、OETに必要な照明を実現できるレーザの代わりに用いることができる。また、光パターンは、走査技術ではなく(ラスタまたはベクトルベースの)イメージング技術によって生成することができる。さらに、全ての光エネルギを集束させる必要のない場合、光ピンセットアレイによって用いられるホログラフィック技術を用いるのではなく、単純な空間光変調器を、イメージをパターン化するのに用いることができる。
【0130】
図11は、上記上部ITOガラス層と上記下方光伝導性層との間に、対象となる粒子を含む緩衝液を有する光電子ピンセット装置の実施形態90を示す。上記上部層と底部層とを隔てるために、100μm厚のスペーサ(図示せず)を用いる。
【0131】
本明細書における上記OET装置及び方法を実証する際に、光プロジェクタ内のデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を、上記仮想電極をイメージするのに用いた。上記光電子ピンセット装置の実施形態は、10nm厚のアルミニウム膜をガラス基板上に蒸着させて電気的接触を形成することにより形成した。次に、例えば、プラズマCVDを用いることにより、1μm厚の無ドープ非晶質シリコン(a−Si)を堆積した。詳細な微細ピッチの特徴部は、上記第1及び第2の保持層上に形成する必要はなく、詳細なリソグラフィック工程が必要ないことを認識すべきである。この実施形態においては、光伝導性膜を保護するために、好ましくは、20nm厚の窒化シリコン層を上記a−Siを覆って堆積する。しかし、いくつかの用途に対して、上記装置を絶縁層なしで形成することができることを認識すべきである。対象となる粒子を含む上記緩衝液は、この光伝導性デバイスと、例えば、ITOガラスを備える対向面との間に挟み込まれている。上記ITO及びa−Siに亘る印加ACバイアスは、上記電場を生成する。
【0132】
非晶質シリコンは、約0.01μS/m〜1μS/mの暗伝導度を有する。従って、暗い状況で、a−Siは、(10mS/mの伝導率を有する)上記緩衝液よりもかなり低い伝導率を有し、上記シリコン層に亘って印加する電圧の大部分の降下をもたらす。上記光伝導性層上に集束された入射光は、上記電圧の大部分が上記緩衝液層に亘って降下するため、伝導率を実質的に増加させ、上記照明された領域を囲む不均一な電場を形成する。このようにして、上記OET装置に入射する光は、誘電泳動のための仮想電極をパターン化することができる。
【0133】
図12は、OET90のための実験用構成を例証として示す。この実施形態においては、水銀ランプ114、DMD116及びフォーカシング光学系118を有するInFocus LP335等のプロジェクタ104からのイメージは、光学要素106、108及び110を介して10倍の対物レンズ112に集束されて、OET装置90に投影される。粒子の動きは、コンピュータ102に結合された顕微鏡イメージング手段120、例えば、Nikon TE2000U 倒立顕微鏡で観察した。
【0134】
Microsoft Power PointソフトウェアによってPCに描かれたイメージを表示するのに用いられる、DMDをベースとするプロジェクタ(InFocus LP335)を示す。上記プロジェクタは、光源(120W、1000ANSIルーメンの高圧水銀ランプ)及びDMD・PC間のインタフェースの両方を備える。上記プロジェクタの出力は、集光され、平行にされ、対物レンズ(すなわち、NA=0.30のOlympus MSPlan10 10X)に方向付けられて、イメージを上記OET装置上に投影する。上記プロジェクタ出力におけるパワーは、約600mWであると測定された。
【0135】
このパワーのうちの約7%は、上記対物レンズによって集められ、上記OET装置上に集束される。そのため、上記OETに入射する光のパワーは42mWであり、12W/cm2の強度に相当する。上記緩衝液は、10mS/mの伝導率を得るために混合された、脱イオン水及びKCL塩を含む。ポリスチレン微小球(45μm及び20μm)は、上記緩衝液に混合されて、上記OET装置内に挟み込まれる。
【0136】
図12は、このOETの実物説明のための光学構成の実施形態100を例証として示す。被測定粒子の観察は、好ましくは、顕微鏡イメージングシステム120、例えば、Nikon TE2000U 倒立顕微鏡を用いて実行する。上記顕微鏡の観察ポートに取付けられたCCDカメラは、これらの実演及びテストのイメージ及びビデオを記録した。DEPに必要な電場を生成するために、100kHzで、約10VPPのAC電圧(すなわち、Agilent(登録商標)33120A)を、上記OET装置の上記上部ITO面及び底部光伝導性面に亘って印加した。
【0137】
図13A、図13Bは、45μmのポリスチレン球のアレイ構造への自己組織化を示す。図13Aに示す初期の格子照明の後、任意に配列された粒子は、負のDEPによって暗領域へ移動する。5秒後、全ての粒子は、図13Bに示すように、上記アレイセル内に収容される。
【0138】
任意に配置された45kHzのポリスチレン球のアレイへの自己組織化(図13A、図13B)は、例えば、PowerPointで描かれた、上記OET装置上に投影される、直交状の水平及び垂直ラインからなる単純な格子状パターンを方向付けることによって実証される。上記パターンは、光誘起性DEPを活性化させて、負のDEP力により、上記照明された領域から粒子を反発させる。このメカニズムは、上記格子状パターンが照明されると、上記粒子の自己組織化を引き起こし、粒子は、照明されていないセル内に押し込められる。設定期間後、上記粒子は、セルからなるアレイ内に捕捉される。
【0139】
粒径に対する大きなトラップにより、上記初期の自己組織化は、図13Bに示すように、1アレイセル当たり1粒子より多くをもたらすことができる。このアレイにおいて、最大のセルは、80μm×100μmである。どんなときにも1つの粒子のみが、上記トラップのポテンシャルウェルに嵌ることが出来るように、単一のアレイセルトラップの寸法を最適化することにより、1アレイセル当たり単一粒子を有する自己組織化アレイを形成することが可能である。
【0140】
図14A、図14Bは、上記アレイ内での単一粒子操作の実施例を示す。上記アレイの下方左側の粒子は、図14Aにおけるセルを結集させ、上記セルを再分割し、上記粒子を図14Bに示す隣接するアレイ位置に移動させることにより、その配列を変化させられる。
【0141】
また、自己組織化したアレイ内の一部の粒子は、上記アレイがイメージ面の周囲に移動したときに、逃れることができることが分かった。この現象は、複数の粒子を含むアレイセルの場合に起きる。この出来事は、図13Bの自己組織化したアレイの後の操作と共に、本発明者等が、図14Aに示すような1セル当たり単一粒子のアレイを得ることを可能にした。本発明者等は、単一粒子の結果として生じるアレイを、約25μm/秒で上記イメージ面に亘って移動させることができたことに注意すべきである。
【0142】
粒子は、図14A、図14Bに示すように、隣接するセル間で個々に移動することができる。上記隣接するセルは、まず、隔壁を取り除いて、上記セルを再分離することによって結合される。上記トラップ壁の全ての動きは、オペレータによってリアルタイムに制御される。この技術の速度に関して改良するために、移動光壁を、セル間の粒子の輸送を容易にするのに用いることができる。このことは、隣接するセル間の移送を繰り返すことにより、単一の粒子を、上記アレイのどのセルにも移送できるようにする。
【0143】
図15A〜図15Dは、アレイ列を流して、不要な粒子を上記アレイから取り除く実施例を示す。まず、流すべき上記列内のセルの壁は、図15Aの上部の列に示すように取り除かれる。上記粒子は、図15Bに示すように、もはや横方向には境界はない。そして、オペレータが制御する光のバーは、図15C及び図15Dに示すように、上記粒子を上記アレイの外部に押し出すのに用いられる。
【0144】
上記アレイ内で上記粒子を操作するための上記パターンは、光照明により動的に生成されるため、単純なソフトウェアプログラミングによって、幅広い操作を実行することができる。例えば、上記アレイの単一の列内の粒子を流すために、発明者等は、上記列の隔壁を取り除き、移動壁を用いて上記粒子を一掃する(図15A〜図15D)。
【0145】
自己組織化作用に加えて、上記アレイは、複数の、単一粒子トラップから形成することができる。各任意に位置する粒子は、まず、正方形トラップ内に収容されている。このことは、PowerPointで、各粒子の周りに矩形を描くことによって行われる。その結果、上記複数のトラップは、個別に取扱い可能なセルからなるアレイを形成するように配置することができる。
【0146】
図16は、複数の、単一粒子正方形トラップから形成された、単一粒子のアレイの実施例を示す。各粒子は、個別に取扱い可能である。20個の粒子のこのアレイを形成するのに必要な時間は、3分であった。この方法を用いると、発明者等は、図16に示すような、4×5アレイの単一粒子トラップを形成することができる。この操作は、手動で行ったが、OETと視覚システムとを組合わせることにより、場合によっては自動化することができる。このようなアレイの生物学的用途は、単一粒子の作用及び相互作用に関する研究を含む。上記アレイの各セルは、独立した単一の粒子トラップであるため、上記アレイは、動的に再配列する能力を有する。
【0147】
図17A〜図17Dは、45μm及び20μmの両方の粒子を含むアレイの動的再配列の実施例を示す。1つのアレイは、個々のセルを所望の構成に移動させることによって再配列される。上記実施形態の場合のトータルの再配列時間は、3分であった。上記球体は、図17A〜図17Dに示すイメージにおいて、オペレータの制御下で再組織化され、これは、各粒子トラップの取扱い性及び上記OETパターンの動的性質を実証する。
【0148】
負のDEPに対する45μmの球体の動きは、約35μm/秒の最大速度をもたらす。これは、ストークスの法則に基づいて、15pNの概算力に相当する。20粒子アレイの最大速度は、約25μm/秒に制限される。従って、各個別のアレイセルの最小保持力は、10pNである。この力は、恐らくアレイ領域全体に関するイメージの鮮明さのわずかな不均一性により、45μmの単一の粒子が受ける力よりも小さい。より多く焦点がぼけている領域は、それほど電場勾配を有しておらず、それに応じたより低いDEP力を有する。従って、この10pNの力は、全てのアレイセルの最小トラッピング力を反映する。
【0149】
12W/cm2の光パワー密度を用いた、これらの実験で実現された力は、632nmのレーザ光源を用いた発明者等の初期の結果とほぼ一致する。発明者等の初期のデータは、15pNの力を実現するのに必要な光パワー密度が6.6W/cm2であることを示している。この予測したパワー密度要件と発明者等の実験上の発見との間の違いは、発明者等の今の実験に必要な追加的な光学系による損失に起因する可能性がある。
【0150】
これらの結果は、他の微小粒子操作技術と有利に匹敵する。従来の誘電泳動は、静止電極パターンを用い、それに伴って再構成可能ではない。また、発明者等のデバイスは、フォトリソグラフィック工程が必要ないため、製造するのにコストがそれ程かからない。また、取扱い可能なDEPアレイは、CMOS技術を用いて実証されているが、それらのデバイスは、製造するのにコストがかかり、また、最小電極サイズは、所要のCMOS回路によって制限される。従来のDEP及び光ピンセットは共に、直径数ナノメートルの粒子を操作することが可能である。OETの上記仮想電極の最小サイズは、上記a−Siの115nmの両極性拡散距離によって制限される。上記OETは、光ピンセットの場合の20μm×20μmの領域よりもかなり大きい、大きな領域(すなわち、約1×1mm)に対して作動することができる。
【0151】
ホログラフィックピンセットは、複数のトラップを生成することができるが、DMDを用いる直接イメージングは、より多用途である。直接イメージングは、高コントラスト比を有するどのような任意のパターンも生成することができる。上記所望のパターンを生成するのに、計算は必要ない。さらに、OETは、生体細胞等の透明な誘電性粒子に対する反発力を引き起こすことができ、また、光ピンセットには不可能なセルケージを形成することができる。一方、光ピンセットのトラップは3次元であるのに対して、発明者等のトラップパターンは、2次元に限定される。本発明の利用は、上記緩衝液の伝導性がDEP現象において重要な役割を果たすため、一般に、緩衝液の選択において、より多くの選択性を必要とする。
【0152】
光電子ピンセットを用いた、45μmのポリスチレン粒子のアレイへの自己組織化、および複数の、単一粒子トラップからのアレイの形成を、本発明によって実証してきた。個々のアレイセルを取扱う能力を示す、上記アレイ内での単一粒子の動きも実証した。45μmの単一のポリスチレン球の移動は、35μm/秒(15pNの力)であると測定された。20個の粒子アレイの移動は、25μm/秒(10pNの力)で実行された。このような粒子操作技術は、生体細胞及び微小粒子を用いた実験に対して多くの用途を有する。
5.微細粒子のためのマイクロビジョンを作動させた自動光学マニピュレータ
【0153】
本発明の実施形態は、マイクロビジョンをベースとするパターン認識と、微細粒子を処理する光電子ピンセット(OET)とを一体化した自動光学マニピュレータを含む。このシステムは、ランダムに分散した粒子の位置及びサイズを自動的に認識し、選択された粒子を捕捉して輸送するための直接イメージパターンを生成して、所定のパターンを形成する。上記OETとプログラム可能なデジタルマイクロミラーデバイスディスプレイ(DMD)とを一体化することにより、発明者等は、1.3mm×1mmの有効領域上に、80万画素の仮想電極を生成することができる。各仮想電極は、多数の微細粒子の並行操作に対して、個別に制御可能である。この自動マイクロビジョン分析技術と強力な光学マニピュレータとを結合することにより、このシステムは、機能性を著しく向上させ、かつ微小粒子の操作のための処理時間を低減する。
【0154】
微細粒子を操作するためのツールは、細胞生物学及びコロイド科学の分野において重要である。光ピンセット及び誘電泳動は、微小粒子を操作するための、最も幅広く用いられているメカニズムのうちの2つである。光ピンセットは、直接光力を用いて、微小粒子の動きを偏向させる。光ピンセットは、非侵襲性であり、高い位置決め精度を有する。ホログラフィック光ピンセットの使用は、多数の粒子を操作することを可能にする利点をさらに伸ばす。しかし、これらの技術は、非常に高い光パワーレベルを必要とし、高い開口数(N.A.)のレンズを用いた緻密なフォーカシングの必要性により、限定された作業領域(<100μm×100μm)をもたらす。これらの要因は、広域的な並行操作用途における光ピンセットのこれらの構成の使用を限定する。
【0155】
対照的に、誘電泳動(DEP)は、粒子を不均一な電場にさらすことにより、粒子の動きを制御する。この技術は、高スループット及び大きな作業領域をもたらすが、所定の機能のための固定した電極パターンを要する。一体化された駆動回路を有する2次元電極からなるプログラム可能なDEPケージアレイは、CMOS(相補型金属酸化膜半導体)チップ上で実証されている。しかし、その分解能は、上記電極のピッチ及び上記単位セルの駆動回路によって制限され、また、そのコストは、使い捨てデバイスとしてのその使用を妨げる可能性がある。
【0156】
図18A、図18Bは、光学操作システムの実施形態の態様を示す。図18Aにおいては、マイクロビジョンをベースとする自動光学操作システムの実施形態130の概略図が示されている。図18Bには、上記OET装置の構造が示されている。
【0157】
本発明によれば、新規な光電子ピンセット(OET)は、光ビームを用いて、光伝導性面上でDEP力を扱うように開発されている。OETは、仮想電極パターンを光学的に形成できるようにする。上記電極サイズは、光スポットサイズにより、上記対物レンズの回折限界まで連続的に変化させることができる。上記光伝導体の光電子ゲインのため、所要の光パワー密度は、光ピンセットの所要光パワーよりも5桁低い。このことは、発明者等の方法が、微小粒子を操作するために、インコヒーレント光源を用いたデジタル光投影を用いることを可能にする。本発明は、複数の微小粒子を複数の仮想微小流体チャネル内に閉じ込め、それらを光ピストンによって切り替える“光の壁(light walls)”の使用について記述する。また、仮想DEPケージアレイの双方向操作も、上記光学パターンを手動で変化させることにより、実証されている。
【0158】
本発明のこの態様において、自動光学マニピュレータの使用は、上記OETとマイクロビジョンをベースとする分析システムとを一体化することによって説明される。上記マイクロビジョンシステムは、粒子の位置及びサイズを自動的に認識して、所望のトラッピングパターンを生成し、上記粒子の移動経路を計算する。これは、多数の粒子を並行に捕捉し、輸送し、かつ集合させるというクローズループ制御を可能にする。
【0159】
図18Aのマイクロビジョンをベースとする光学操作システム130は、顕微鏡イメージング手段と、粒子/細胞の特性及び位置を記録するメカニズムとを含むOET装置によって構成されている。
【0160】
粒子または細胞の動きは、光源114から生成されてDMD116から反射された光を対物レンズ112を介してOET90上に投影することにより制御される。上記光学パターンは、イメージ分析及びパターン認識アルゴリズムと組合わせた顕微鏡イメージング手段によって記録された上記粒子または細胞の位置及び特性に応じて生成される。この実施例において、上記イメージは、レンズ132を通してCCDイメージャ134に集められ、上記データは、生成される光のパターンを制御するように処理される。上記顕微鏡イメージまたはイメージストリームは、イメージ分析回路および/またはルーチン136内で分析される。次いで、上記イメージデータは、パターン認識回路および/またはルーチン138を用いて処理される。実際のパターンの認識は、その用途の所望の目的に関して実行され、そこから後のパターンが、パターン生成回路および/またはルーチン140によって生成され、上記パターンは、その後、プログラム可能なDMDデバイス116の動作を制御するように、DMD回路および/またはルーチン142によって変換される。このことは、例えば、様々なイメージング源、顕微鏡イメージング、および上記OET上への後続の光イメージを検出し、分析し、生成する異なる方法を用いて、本発明の教示から逸脱することなく、多くの代替方法で実施することができることを認識すべきである。
【0161】
一例として、この実施形態は、Nikonの倒立顕微鏡132、134を含む。150Wのハロゲンランプ114は、プログラム可能なデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)マイクロディスプレイ116を照明する。上記DMDパターンは、10倍の対物レンズ112を介して上記OET装置上に投影される。OET装置150の構造を図18Bに示す。
【0162】
図18Bは、例えば、ITOガラス及び光電性層24、例えば、上部層および/または底部層の表面の非晶質シリコン等を備える上部面16及び底部面28を備える別の実施例のOET実施形態を示す。粒子14を含む液状媒質12は、それら2つの面の間に挟み込まれている。上記OETには、単一のAC電圧源30によってバイアスがかけられている。光の照明がない場合、上記電圧のほとんどは、そのインピーダンスが液状層12よりもかなり高いため、非晶質シリコン層24に亘って降下する。光照明の下では、非晶質Si24の伝導率は、上記照明が桁違いの大きさで当たる領域内で増加し、電圧降下を上記液状層へシフトする。それにより、この光誘起性仮想電極は、不均一な電場152を生成し、その結果生じるDEP力は、対象となる粒子を駆動する。上記光誘起性DEP力は、印加されるAC信号の周波数によって制御される、正または負とすることができる。負のDEP力は、高電場領域から粒子を反発させ、また、単一粒子ケージに好ましく、上記ケージは、上記粒子の周囲の光の壁によって容易に形成することができる。正のDEPは、複数の粒子を引き付ける傾向がある。発明者等は、自動光学マニピュレータの実験において、負のDEP力を用いた。上記OET装置上のイメージは、上記倒立顕微鏡を介してCCDカメラによって捕捉され、イメージ処理用のコンピュータへ送られる。
【0163】
本発明によるソフトウェアは、リアルタイムビデオフレームを分析して、上記粒子を捕捉して移動させる、対応する光学パターンを生成する。そして、それらのパターンは、上記DMDへ転送され、発明者等のテスト構成は、個々の画素の直接制御を可能にする。上記OET装置上の、投影された光イメージの分解能は、上記ミラーの画素サイズ(13μm)により規定される1.3μmである。上記OET上の有効光学操作領域は、1.3mm×1mmである。上記DMDミラーと上記OET装置とを組合わせることにより、上記シリコン被覆ガラスは、100万画素の光学マニピュレータに変わる。
【0164】
図19A〜図19Dは、ランダムに分散した粒子を自動認識して、所定のパターンに配列させるプロセスを示す。まず、図19Aにあるような、上記粒子のイメージが取込まれて、上記マイクロビジョンシステムによって分析され、上記システムは、図19Bに示すように、全ての粒子の位置及びサイズを識別する。そして、ソフトウェアは、図19Cに示すように、各粒子の周りにリング状トラップを生成する。また、上記ソフトウェアは、上記粒子の軌跡を計算して、図19Dに示すような最終的な位置に到達させる。
【0165】
図20A〜図20Dは、粒子認識システムのためのテストイメージを一例として示す。3つの異なるサイズ、すなわち、10μm、16μm及び20μmを有するポリスチレン粒子は、混合されて、上記液状媒質中にランダムに分散される。図20Bにおいて、上記マイクロビジョンシステムは、各粒子の位置を認識して、各粒子上にリング状マークを投影する。図20Cには、このテストイメージ内の粒子の数対認識された暗画素の数を示すヒストグラムが示されている。図20Dにおいて、最大の粒子は、上記暗画素に対するしきい値を設定することにより、選択的にピックアップされる。
【0166】
粒子認識は、暗画素認識アルゴリズムを用いて、取込んだイメージの各画素を走査することにより実現される。そして、各画素の輝度値及び位置が記録され、計算されて各粒子のサイズ及びその中心位置が判断される。上記粒子の縁部における上記画素の輝度値は、背景の輝度値よりも小さく、その色も暗い。上記背景と上記粒子縁部との間にしきい輝度値を設定することにより、発明者等は、各粒子の縁部画素を認識することができる。各粒子の上記縁部画素のx及びy位置データを平均化すると、その位置を判断することができる。
【0167】
図20Bは、上記マイクロビジョン分析システムによって生成された白色リング状パターンによってマークされた認識された粒子を示す。また、同じアルゴリズムは、上記認識された暗画素の数をカウントすることにより、各粒子の数を判断する。
【0168】
図20Cは、粒子の数と、このイメージ上の各粒子に対して認識された暗画素の数とを示すデータのヒストグラムである。大きな粒子は、小さな粒子よりもより多くの暗画素を有するため、しきい値は、上記ヒストグラムの黒い点線によって示されるように、認識された画素に対して設定することができ、上記システムは、特定のサイズを有する粒子を選択的に記録することができる。
【0169】
図20Dは、180に等しいしきい値を設定することによって選択されている7個の最大ビーズ(20μm)を例証として示す。この認識アルゴリズムは、特に、異なるサイズを有する球状粒子を判断するのに用いられる。異なる色、形状または質感を有する粒子を認識するための他のアルゴリズムを開発することができる。
【0170】
図21A、図21Bは、単一の光学リング状パターンによって誘起された電場分布を例証として示す。図21Aに示す静止状態において、上記粒子は、中心の最小限の上記電場内に捕捉されている。図21Bに示すような移動中、上記粒子は、DEPと粘性力とのバランスの結果として、上記中心から位置ずれする。
【0171】
単一粒子の光学リング状パターントラッピングにより捕捉された粒子は、上記負のDEP法においてOETを作動させることにより、実現される。発明者等は、図21Aに示すように、単一の粒子のみを上記リング内に捕捉できる仮想DEPケージを形成する光学リング状パターンを生成する。
【0172】
静止状態において、上記捕捉した粒子は、最小限の電場強度が生じる上記中心または上記リング状パターンのところに集中される。上記光学リングが動くと、上記捕捉した粒子も同じ方向に動くが、DEP力が上記粒子を上記中心方向へ押すため、上記リングの中心から外れた位置にある。この外れ距離は、上記粒子がどれほど速く動くかに依存する。上記光学リングが素早く動くと、DEP力は、上記粒子を保持するのに十分強くないため、上記粒子は、上記光学リングから抜けることになる。20μmの粒子のこの抜ける速度は、発明者等の現在のシステムにおいて、40μm/秒である。より小さなサイズを有する1つの粒子を捕捉するには、単一の粒子を上記リング内に確実に捉えるのに、より小さな光学リングが必要になるであろう。
【0173】
図22A〜図22Cは、それぞれ、微細粒子のマイクロビジョンをベースとする自動光学操作のマルチフレーム実施例のシーケンスを示す。図22Aには、六角形状に配列されている、ランダムに分散した粒子が示されている。図22Bには、線状に変換されている図22Aの六角形状パターンが示されている。図22Cでは、図22Bの上記線状パターンは、三角形状に変換されている。各ケースにおいて、好ましくない粒子は、走査線によって一掃されている。
【0174】
一旦、上記粒子の位置が認識されると、上記ソフトウェアは、対応するリング状トラップを生成し、各粒子の輸送トレースを計算するように設定される。これらの光学パターンは、イメージファイルとして格納され、粒子を捕捉して輸送するための動的光学パターンを形成するDMD制御ソフトウェアにバッチロードされる。これらのプロセスを図22Aに示す。ランダムに分散した粒子のイメージは、左から右へ垂直方向に走査した。最初の6つの粒子は、上記OETにより、0秒フレームによって識別され、捕捉された。捕捉した粒子は、上記リング状トラップを動かすことによって輸送され、12秒で六角形状形態になった。
【0175】
図22B及び図22Cは、上記粒子を線状及び三角形状に再配列させるビデオシーケンスを示し、欲されない粒子は、走査線パターンによって一掃した。
【0176】
マイクロビジョン分析システムによってフィードバック制御を実行できる自動光学マニピュレータを実例説明してきた。このシステムは、異なるサイズを有する粒子の混合物から、特定のサイズを有する粒子を自動認識し、それらの選択された粒子を捕捉して移動させるための光学操作パターンを生成して、所定のパターンを形成することができる。発明者等のOET装置の大きな光学操作領域(>1mm×1mm)は、多数の微細粒子の並行操作を可能にする。この自動並行光学操作システムは、微細粒子を分類し、パターニングする時間を大幅に低減する。さらなる最適化をした場合、上記システムは、異なる色、形状または質感を有する粒子を分類できることになる。また、より高度化された光学操作機能を実行することもできる。上記自動光学マニピュレータは、生体細胞分析及びコロイド科学分野において、多くの潜在的な用途を有する。
【0177】
6.生きた赤血球及び白血球の操作
光電子ピンセット(OET)は、生物学的研究用途の単一細胞操作のための新しいツールを実現できる。光ピンセットや誘電泳動等の現在の細胞操作技術は、OETによって克服され得る限界を有する。
【0178】
光ピンセットは、マイクロスケール及びナノスケール法での細胞及び微小粒子の操作のために幅広く用いられているツールである。ホログラフィックイメージング技術を光ピンセットと統合することにより、複数の粒子トラップを単一のレーザ源から形成することができる。しかし、光ピンセットは、高価な高出力レーザを必要とし、また、その有効操作領域が限定されている。
【0179】
誘電泳動(DEP)は、上記粒子内の誘起双極子と印加された電場との相互作用による、電場勾配に沿った誘起性の粒子動を説明する。この技術は、細胞及びDNAの捕捉及び細胞分類を含む多くの生物学的実験を実行するのに用いられてきた。従来のDEP装置の限界は、異なる実験のために、上記装置を再構成するという困難さであり、これは、上記装置が、所要の不均一な電場を生成するパターン化された金属製電極に依存しているためである。CMOS技術を用いてDEPトラップを形成することにより、リアルタイムで再構成可能なDEP装置を実現することができる。しかし、これらのCMOSをベースとする装置は、上記回路構成の面積により、限定的な分解能を有する。
【0180】
光電子ピンセットは、光伝導性面上の光パターン仮想電極を介した細胞及び微小粒子の低パワー光学的制御動作を提供する。OETは、光学イメージによって直接的に制御されるため、リアルタイムで再構成するのは容易である。加えて、高分解能の細胞操作が、広い領域で実現される。OETの主な可能性のある用途の一つは、生物学的解析であり、多くの実験を、生細胞を用いて行った。生細胞に関するOETの最初の実証は、Chiou等により、大腸菌に関して行い、低光パワーのOETが、光ダメージを引き起こさずに、生きた単一細胞の操作が可能であることが証明された。本発明のこの態様において、発明者等は、生きた哺乳類細胞のOET操作の説明及び実証を提示する。
【0181】
光ピンセットは、微小粒子またはナノ粒子に関する物理的力に対して直接的に変換される光子のモーメントによって作動する。これは、高度に集束された強烈なレーザビームを必要とする。対照的に、光電子ピンセットは、光学的にパターン化された電場を生成し、上記電場も、粒子に対して誘電泳動力を生成する。光伝導性ゲインにより、所要の光パワーは、典型的な光ピンセットに必要な光パワーの約10万分の一よりも小さい。その結果として、OET動作には、LEDまたはハロゲンランプ等のインコヒーレント光源で充分である。さらに、上記光学パターンは、高度に集束する必要はなく、OETを、光ピンセットのトラップよりも大きな領域(現時点で、1.3mm×1.0mm)で有効にすることができる。
【0182】
図23は、本発明によるOET装置の構造の実施形態170を示す。上記OETは、ITOガラスからなる上方平面電極16と、下方光伝導性層24とからなり、これらの間には、対象の細胞または微小粒子14を含む液状溶液12からなる層が挟み込まれている。この実施形態における上記上方平面電極は、それ自体は、透明ガラススライド上で透明であるITO等の伝導体からなり、一方、上記下方光伝導性層は、好ましくは、プラズマCVD(PECVD)によってITO被覆ガラススライド上に堆積された水素化非晶質シリコン(a−Si:H)で形成されている。光パターン172、174を投影すると、電場プロファイルが変更されて、誘電泳動力が生成される。ACバイアス30は、上記上方電極と上記下方光伝導性層とに亘ってかけられる。
【0183】
上記暗領域において、上記印加されたAC電圧は、主に、高抵抗性(RS)のa−Si:H層に亘って降下し、上記高抵抗性層は、液体12の(RL)よりもかなり高いインピーダンスを有し、上記液状溶液内に低電場をもたらす。しかし、照明された領域において、上記投影された光は、上記a−Si:Hの伝導率を局所的に増加させることにより、仮想電極を形成する。ここで、上記光伝導体は、上記液体よりも低い抵抗性になり、上記仮想電極上の上記液体中に高電場領域を生成する。これにより、不均一な電場が生成され、上記不均一な電場も、細胞を駆動する誘電泳動力を生成する。
【0184】
誘電泳動力は、AC周波数依存性である。従って、印加されたACバイアスの周波数を変化させることにより、上記力を引力から反発力へ調整することができ、逆もまた同様である。OETは、光誘起性DEPを用いるため、上記OET力も、同じように調製可能である。その結果として、OETには2つの作動モード、すなわち、細胞及び微小粒子が、照明された領域に引き付けられる正のOETと、細胞及び微小粒子が、上記照明された領域によって反発される負のOETとがある。
【0185】
図24は、本発明による光電子ピンセットを用いた、ウシ赤血球の操作のために構成された実施形態190を示す。この実証の場合、光源114は、0.8mWのHe−Neレーザ(λ=633nm)で構成した。レーザが上記光源として使用される場合には、上記レーザは、上記対物レンズに直接に、または、ミラーを介して方向付けることができるため、空間光変調器116は必要ない。10倍の対物レンズ112は、レーザビームのサイズを直径約20μmまで縮小するのに用いた。レーザ出力制御または空間変調器を介して光イメージングを制御するように、および関数発生器192からのバイアス信号等の、OET装置170で生成された信号を制御するように結合され、かつ顕微鏡イメージャ88からデータを収集する、パーソナルコンピュータ(PC)102が示されている。準備した細胞溶液は、体積比約1〜10%の濃度で等張液中(8.5%スクロース、0.3%右旋形グルコース)に懸濁する、ウシ血清からの赤血球(RBCs)で構成した。この溶液の約5μLを上記OET装置に導入した。
【0186】
図25A〜図25Dは、図24のOETを用いて得られた血球の集中を示す。強力な正のOET応答は、200kHzで3VPPの印加ACバイアスで観察され、上記赤血球を、図25Aに示すように、レーザスポットの方へ引き付ける。最初に、図25Aにおいて、上記レーザがオンにされるが、電場は印加されていない。次に、ACバイアスが上記OET装置に印加されてOET力が生成され、上記OET力は、図25Bに示すように、上記血球を照明された領域に引き付ける。また、上記細胞が、図25Bに示すように、上記電場ラインに沿って垂直方向に整列することも観察された。上記レーザをオフにすると、集中した細胞は、図25Cに示すように、レーザスポットが集束された領域内にとどまる。印加電圧がオフに切り替えられると、上記集中された赤血球は、ゆっくりと振動し始め、図25Dに示すように、中心領域から移動し、上記赤血球が依然として生きており、かつ生存能力があることを示唆する。
【0187】
インコヒーレント光源及び直接イメージパターニング技術の利用は、OETの柔軟性及び機能性を向上させる。空間光変調器は、上記光伝導性面上に投影される任意のイメージをパターン化して、対応する仮想電極を上記OET装置上に形成することができる。従って、複雑で、再構成可能な操作パターンは、単純なソフトウェアプログラミングによって形成することができる。この有力な技術を、ヒトのBリンパ球の複雑なパターンへの配列で実例説明する。
【0188】
100Wのハロゲンランプを、上記インコヒーレント光源として使用した。上記空間光変調器は、テキサスインスツルメンツ社のデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)で構成した。上記DMDは、個別に取扱い可能なマイクロミラーからなる1024×768のアレイであり、その各々は、13.68μm×13.68μmである。上記DMD上に表示されるイメージは、コンピュータを介して制御される。10倍の対物レンズを、各DMDミラーの分解能を約1.4μmまで高めるのに用いた。準備した細胞溶液は、等張液中に懸濁するヒトの白血球(Bリンパ球)で構成した。この溶液の約5μLを上記OET装置に導入した。
【0189】
図26A及び図26Bは、どのようにしてBリンパ球を任意のパターンに操作することができるかを示す。この実施例において、発明者等は、上記細胞を、(カリフォルニア大学(Univ.of California)の)“U”という文字(図26A)及び“C”という文字(図26B)の形状に結集させるように選択した。100kHzの周波数で14VPPの印加バイアスにおいて、上記白血球は、正のOET作用を呈する。縮小する同心リングパターンは、上記細胞を上記文字イメージの方へ集結させるのに用いる。細胞は、各同心リングに引き付けられる。上記リングが縮小するにつれて、上記細胞は、上記同心リングの中心の方へ輸送され、そこで上記文字イメージが投影される。そして、上記細胞は、上記静止文字パターンによって捕捉されることになる。
【0190】
光電子ピンセットは、単一細胞操作用の有力なツールを実現できる。直接イメージング及びインコヒーレント光源の使用は、従来のDEPよりも多くの柔軟性を備えたOETを実現できる。上記OET技術も、光ピンセットよりもかなり少ない光パワーを用いるが、それでもなお、より大きな有効操作領域を実現できる。細胞、具体的には、赤血球の集合及び操作は、本発明の態様のOET及び方法を用いて実証された。これらの操作機能は、特定の生物学的実験に容易に合わせることができることを認識すべきである。
【0191】
7.光誘起性誘電泳動を用いた新規な光電子ピンセット
光ピンセットは、先に実証されたため、生物学的研究分野における重要なツールになっている。しかし、強度の光エネルギによって引き起こされる潜在的な光ダメージが、その用途を制限している。例えば、100mWの光ピンセットは、回折限界に集束された場合、約1010mW/cm2の光度を有する。そのような強力な光エネルギは、局所加熱または二光子吸収によるダメージをもたらす可能性がある。この光ダメージを低減するために、近赤外線領域の波長を有するレーザを選択して、水中または生体中での吸収を避ける。しかし、最近の研究では、赤外線レーザを用いても、細胞の代謝に影響を及ぼす可能性があることが分かっている。
【0192】
最近では、DC電気バイアスを用いることにより、ポリマービーズを光学的に扱う光誘起性誘電泳動メカニズムが提案されている。荷電粒子は、反対極性の電極に引き付けられる。この明細書において、発明者等は、約1mW〜100mWの光ピンセットによって用いられる光エネルギよりもかなり低い、μWの光エネルギを用いて、電気的に中性の微小粒子の光学的取扱いを可能にするであろう光誘起性誘電泳動メカニズムを提示する。誘電泳動(DEP)とは、印加された電場と誘起された双極子との相互作用から生じる電気的に中性の粒子の動きのことを指す。誘電泳動は、微小粒子、またはサブミクロン粒子及び生体細胞の操作において、幅広く用いられてきた。DEP力の解析式は、次の式で示される。
【数1】
【0193】
上記等式によれば、Eは電場の強さであり、aは粒径であり、εm及びεpは、それぞれ、周りの媒質及び上記粒子の誘電率であり、σm及びσpは、それぞれ、上記媒質及び上記粒子の伝導率であり、ωは、印加された電場の角周波数である。
【0194】
図27A、図27Bは、図27AのOETの実施形態210と、図27Bの光誘起性誘電泳動メカニズムの説明図とを示す。
【0195】
Re[K*(ω)]の項は、上記粒子及び上記媒質の印加されたAC周波数及び分極率により、1〜−1/2の間のどのような値も有することができる。Re[K*(ω)]<0の場合、DEP力の方向が下方電場へ向いている負のDEPと呼ばれる。上記DEP力は、上記印加された電場の2乗の勾配に比例するため、高トラッピング力を実現するには、極めて不均一な電場が好ましい。以下の実験において、光誘起性の負のDEP力について実例説明する。
【0196】
図27Aには、100μmのギャップ間隔により隔てられた2つの面の間に挟み込まれた粒子を含む液状溶液12を有する光電子ピンセットの構造が示されている。上面16は、工業用ITOガラスである。底部面は、3つのパターンレス層、すなわち、2000Å厚のアルミニウム層46、2μm厚の光伝導性(非晶質シリコン)層24及び200Å厚の窒化シリコン層26で被覆されたガラス基板28である。ACバイアス30は、上部(ITO)電極と底部(アルミニウム)電極との間に印加される。暗状態において、上記電圧の大部分は、その高い電気的インピーダンスにより、上記光伝導体に亘って落ち、それにより、上記液体層内に非常に弱い電場を生じる。レーザビーム40が対物レンズ38を介して光伝導性層24上に集束されると、光照明下の箇所における局所的光伝導性は、光生成電子−正孔のペアにより、大幅に増加する。
【0197】
図27Bは、局所的にターンオンされ、極めて不均一な電場を液体層12内に生成する、光により規定された微小電極を示す。レーザスポットは、上記液体層内に、光により規定された電極と、極めて不均一な電場とを形成する。上記液体中の粒子は上記不均一な電場によって分極され、負のDEP力により、上記照明された箇所から押し出される。
【0198】
光は、上記粒子を直接捕捉するのにではなく、上記光伝導性層と上記液体層との間のAC電圧降下を切り替えるのに用いられるため、所要の光パワーは、従来の光ピンセットの所要の光パワーよりも桁違いに低い。
【0199】
図28は、粒子速度と光パワーとの関係を伴う、図27AのOETの場合の実験結果を示す。上記実験においては、0.24mmのビーム幅及び632nmの波長を有する800μWのレーザを上記光源として用いる。上記レーザビームは、好ましくは、1組の直角に走査する検流計ミラーによって導かれ、凸レンズ及び40倍の対物レンズの組合せを介して送られる。上記光伝導性層上の光スポットサイズは、約17μmである。NDフィルタは、入射光エネルギを制御するのに用いる。100kHzのACバイアスは、25μmのラテックス粒子を駆動するために、上記上部電極と底部電極との間に印加される。粒子速度を測定するために、上記走査ミラーは、一定速度で走査して上記粒子を押し出すようにプログラミングされる。上記粒子は、充分高い走査速度で、もはや上記光ビームを保持することができなくなるまで上記光ビームによって押される。上記粒子が、光ビームを走査することに対応する最大速度は、様々な光パワー及びACバイアス電圧に対して測定される。1μWの光のような低いパワーを有する光ビームは、10VのACバイアスで4.5μm/秒の速度で上記粒子を輸送するのに充分である。ここで観測された最大速度は、397μm/秒であり、これは、ストークスの法則によって推定される187pNの力に相当する。
【0200】
図29A及び図29Bは、上記レーザビームが、円形パターンで走査するようにプログラミングされている、複数粒子の集中化の実施例を示す。4つの粒子が、上記縮小する円形パターンの中心へ集中化され、または押し込まれる。
【0201】
中性微小粒子を輸送することに良好に適用される、本発明のこの態様による新規な光電子ピンセットについて実例説明する。おおよその所要の光パワー(約1μW〜100μW)は、光ピンセットの所要の光パワーよりも1〜2桁小さい。397μm/秒の粒子輸送速度及び187pNのトラッピング力は、100μWの光パワー及び10VのACバイアスを用いて、25μmのラテックス粒子について測定する。
【0202】
8.動的電場における光学的分類メカニズム
光電子ピンセット(OET)は、本明細書において、直接光イメージを介した、細胞及び微小粒子操作のための有力なツールとして提示してきた。上記OET面上に生成された光学パターン電場は、単一または複数の細胞を並行に捕捉しかつ輸送するように構成することができる。このような動的再構成可能な電場は、たいていの微小流体ソータに見られるような、流体フローを導入するためのポンプの必要性を伴うことなく、粒子を分類する駆動力をもたらす。複雑な微小流体コンポーネントの製造及び集積化の必要性は完全に排除され、細胞または粒子の操作の用途における多くの柔軟性が加わる。本発明において、OETをベースとする分類メカニズムは、動的移動光ビームを用いて実証される。上記OET面上の粒子は、単に、光ビームを上記OET面に亘って走査することにより、分類することができる。分類された粒子は、当業界においてすでに実証されている別の動的光学パターンを用いて、別の領域へ輸送することができる。本発明の以下の部分では、OETをベースとする光学的分類の基本的なメカニズムに焦点を当てる。
【0203】
図30A〜図30Cは、本発明によるOETによって誘起された動的電場を示す。図30Aには、異なるサイズの粒子14、14’、14”が、上部ITOガラス16と底部OET光電性面24との間に挟み込まれているOET装置の概略図が示されている。図30B、図30Cにおいて、ランダムに分散した粒子は、線状のレーザビームがOET面を走査したとき、分類される。
【0204】
光電子ピンセットは、光学パターンが、光伝導性の薄膜構成要素上に極めて不均一な電場を誘起することができる新規なメカニズムである。上記不均一な電場の近傍の粒子は、上記電場と、上記粒子の誘起された電気的双極子との間の相互作用から生じる正味の力を受ける。この力は、誘電泳動(DEP)力と呼ばれ、次の関係で表すことができる。
【0205】
【数2】
【0206】
上記の等式によれば、Eは、電場の強さであり、rは粒径であり、εm及びεpは、それぞれ、周りの媒質及び上記粒子の誘電率であり、σm及びσpは、それぞれ、上記媒質及び上記粒子の伝導率であり、ωは、印加された電場の角周波数であり、K*(ω)は、Clausius−Mossoti(CM)係数であり、1〜−0.5の値を有し、上記粒子の分極率を表す。
【0207】
この力は、上記粒子のサイズa3及び電場の不均一性(∇E2)に非常に敏感である。粒子が媒質よりも分極性が低い場合、CM係数の実数部は負であり、上記粒子は、高電場領域から押し出されることになる。線状レーザビームが上記OET面を走査すると、同じ速度で動く電場パターンが生成される。この光誘起性電場は、上記OET装置内の粒子を押す。動いている光ビームと上記粒子との相対距離は、上記DEP力と粘性力とのバランスによって決まる。ストークスの法則を用いて、移動粒子に対する粘性力を推定すると、発明者等は、上記粒子サイズと、電場の不均一性との間に、次の関係を得た。
【0208】
【数3】
【0209】
上記の等式において、rは粒径であり、Cは、光走査速度ν、CM係数の実数部、および周囲の媒質の粘性η及び誘電率εmによって決まる定数である。∇E2の項は、上記粒子と極大電場との相対距離の関数であるため、異なるサイズを有する粒子は、走査レーザビームの中心に対して、異なる決定論的相対距離を有することになる。この原理に基づいて、異なるサイズを有する粒子は、上記レーザビームが上記OET面を走査したときに分類される。
【0210】
図31は、微細粒子の光学分類のための実験用構成の実施形態230を示す。635nmの波長を有する単一モードファイバピグテールレーザダイオード114は、ファイバコリメータ232を介して結合されており、3mmのビームスポットサイズ及び120μWの光パワーを生じる。2D走査ミラー236及びダイクロイックミラー238及び10倍の対物レンズ38を介して方向付けられる円柱レンズ234は、円形ガウスビームを線状パターンに整形して、それを上記OET面上に集束させるのに用いられる。走査ミラーは、上記レーザビームを案内するようにプログラミングされる。OET装置210は、ステージ240上に示されており、上記OET内に、リング粒子(または細胞)の位置及び特性を記録するための顕微鏡イメージング手段を用いて構成されている。
【0211】
図32A〜図32Dは、レーザビーム(波長=635nmで120μWの赤色ダイオードレーザ)が、直径10μm及び20μmのポリスチレンビーズがランダムに分散している、図31のOET面に亘って走査したときの結果を示す。図32Aにおいて、上記粒子は、上記面上にランダムに分布している。図32Bにおいて、上記光学ビームは、10μmのビーズの領域に亘って走査し、上記ビーズを線状パターンに整列させる。図32Cにおいて、上記10μm及び20μmのビーズは、整列されて、上記光学ビームの中心に対して、異なる相対距離で動いている。図32Dにおいて、上記光学ビームは、粒子のそれら2つの群の間の間隔に割って入り、上記粒子をさらに離すようにプログラミングされる。
【0212】
上記線状レーザビームが、粒子の分類に亘って走査した後、上記10μm及び20μmのビーズは、上記ビームの中心に対して、異なる距離で整列することになる。上記レーザビームは、粒子のそれら2つの群の間の間隔に割って入り、上記粒子をさらに離すようにプログラミングされる。この分類プロセスは、25秒で終了する。
【0213】
図33A、図33Bは、6μm/秒の走査速度の下での、異なるサイズの粒子、具体的には、それぞれ、15μm、20μm及び40μmの相対距離を有する5μm、10μm及び20μmの粒子の分類を示す。上記光学ビームは、一定速度で左から右へ走査する。これら3種類のサイズの粒子は、上記光ビームと同じ速度で動いている。それらの決定論的相対距離は、この動きの間、一定のままである。上記相対距離は、走査速度依存性である。高走査速度で、上記粒子は、大きな粘性力を受ける。この力をバランスさせるために、上記粒子は、移動して上記走査ビームに近づき、そこには、より強力な電場勾配が存在する。
【0214】
図34は、走査速度の関数としての、走査速度と、微小粒子の走査ビーム中心からの相対距離との関係を示す。理論計算を実線で示し、実験データを点線で示す。
【0215】
20μmの粒子の場合、上記走査ビーム中心に対する相対距離は、走査速度が20μm/秒から100μm/秒へ増加した場合、50μmから25μmに減少する。この傾向は、5μm及び10μmの粒子の場合のデータにも反映される。従って、低走査速度は、異なるサイズの粒子間に、より大きな空間的隔たりをもたらす。17μm/秒の走査速度において、5μmの粒子と10μmの粒子の間の間隔は7μmであり、10μmの粒子と、20μmの粒子の間の間隔は28μmである。5μmの粒子の場合の最大走査速度は、約70μm/秒である。上記走査速度が、この限界を超えて増加すると、上記粒子は、上記電場の垂直方向の不均一性によって浮揚することになり、上記粒子を上記走査ビームの横方向の“押す力”から逃れさせる。この逃れる速度は、大きな粒子の場合、すなわち、10μmのビーズの場合により高く、90μm/秒である。
【0216】
本発明は、光電子ピンセット(OET)に基づいた新規な光学分類メカニズムを提供する。光誘起性動的電場は、単に、光ビームを上記OET面に走査することにより、5μm、10μm及び20μmの直径を有する粒子を分類する。この技術は、液体フローのための駆動力としての特別なポンプの必要性を完全になくし、微小流体システムの製造及び集積化プロセスを大幅に単純化する。上記ビーズから上記ビーム中心までの決定論的相対距離は、サイズ依存性である。直径5μm及び10μmのビーズに対して行った粒子分類は、分離されたグループ間に、7μmの間隔を生じた。分類された直径10μm及び20μmの粒子間の間隔は、28μmであった。
【0217】
9.オール光・ラブ・オン・チップ・システムへの発展
微小流体システムの小型化及び集積化は、コストを低減し、多くの分析的な生物学的プロセス及び化学的プロセスの速度を向上させる。複数の微小流体機能が、上記生物学的分析を行う“ラボチップ”と呼ばれる1つのチップに集積化される。これらの機能は、微小流体の供給混合、細胞のトラッピング、集結化及び分類を含む。従来のラボチップシステムは、微小ポンプ、バルブ及び流体流路からなる。
【0218】
流体回路及びそれらの機能は、通常、製作されている特定の構造により固定されている。従来の“固定された”微小流体システムとは対照的に、本明細書で教示した光学操作アプローチは、いくつかの利点を提供する。本発明は、柔軟性があり、容易に再構成可能である。光ピンセットは、細胞及び他の生物学的粒子を捕捉するのに幅広く用いられてきており、最近では、複数粒子のトラッピング、光学分類、粒子回転、3次元操作及び微小流体の光学ポンピングを行うために、ホログラフィック光ピンセットが提案されている。それらの微小流体機能は、光入力に応じて、プログラム可能でかつ再構成可能であるオール光・ラブ・オン・マイクロスコープシステムを可能にする。しかし、光ピンセットをベースとするシステムは、次の限界に悩まされる。第一に、光学力を用いる微小流体の制御は、エネルギー効率が良くない。光学力は、まず、コロイド粒子またはビーズの運動エネルギに移される。動いているビーズは、粘性力を介して流体フローを誘起する。光トラップからの最大力は、約100pNであり、これは、大きな圧力低下により、液体を微小流路を介して有効に駆動するのに十分な大きさではない。第二に、光ピンセットに必要な上記光学力は、非常に高い。上記光ピンセットは、上記粒子の動きを捉え、またはそらすための光学的勾配力を生成する厳密に集束されたレーザビームを必要とする。
【0219】
典型的には、単一のトラップは、1mWの光パワーを必要とし、複数のトラップは、さらに高いパワーを要する。ここで、光パワーを用いる代わりに、本発明は、光電子ウェッティング(OEW)と呼ばれる、微小流体を制御するための光誘起性電子ウェッティングメカニズム、および光電子ピンセット(OET)と呼ばれる、微細粒子を操作するための光誘起性誘電泳動メカニズムを利用する。
【0220】
図35は、異なる光学的操作方法のエネルギ移動経路の比較による概念を示し、光エネルギは、まず、電気的エネルギに変換され、この電気的エネルギも液体または粒子を、それぞれ電子ウェッティングまたはDEPプロセスを介して駆動する。上記光伝導体の光電子ゲインの結果として、所要の光パワーは、4〜5桁低減される。光ピンセットは、エネルギを光学的領域から直接、機械的領域へ移すが、光電子ウェッティング(OEW)及び光電子ピンセット(OET)は、まず、光エネルギを電気的領域へ移し、その後、操作のために上記電気的力をトリガする。
【0221】
表面張力は、マイクロスケールで液体を制御するための主要な力である。上記表面張力を制御するためのいくつかのメカニズムが提案されている。電子ウェッティングは、その速い応答性及び低パワー消費のため、魅力的である。電子ウェッティングは、静電エネルギを用いて、液体と固体の界面における表面エネルギを調節することにより、固体面上の液滴の接触角を変える。光電子ウェッティングは、光ビームを用いて、上記界面に蓄積された静電エネルギの量、およびそれに伴って上記接触角を制御する。
【0222】
図36A、図36Bは、水滴252が、透明導電性ガラス20、光伝導性層24及び薄い絶縁層16で被覆されたガラス基板上に置かれている、光電子ウェッティングの実施形態250を示す。図36Aは、接触角254が、バイアスがない状態の初期の角度と同じ状態で、光の照明がない液滴を示す。図36Bにおいては、照明が光源212によって生成され、液滴252’の接触角が、その電子ウェッティング効果により小さくなっている。
【0223】
ACの電気的バイアスは、上記底部電極と上記液滴との間に印加される。上記光伝導体は、暗い状態で、高い電気的抵抗を備えて構成されており、上記AC信号周期よりもかなり長いRC充電時間を生じる。極少量の電圧が、上記液滴と上記光伝導体との間のキャパシタに亘って降下する。暗い状態のときの接触角は、図36Aに示すように、バイアスがない初期の角度と同じである。光が上記光伝導体層を照らすと、電子−正孔のペアが生成され、その光伝導性が数桁増加する。上記RC時間は、AC信号の周期よりもかなり小さくなり、図36Bに示すように、十分に充電されたキャパシタを生じさせる。上記キャパシタに蓄積された余分な電荷は、上記固体・液体の界面の表面エネルギ及び上記液滴の接触角を変化させる。上記接触角と、上記絶縁体の電圧との関係は、次の式で表すことができる。
【数4】
【0224】
上記式において、値θ0は、初期の接触角であり、εは、上記絶縁体の誘電率であり、dは、上記絶縁体の厚さであり、γLVは、液体/気体界面の表面張力であり、Vは、印加した信号の2乗平均平方根電圧である。
【0225】
図37A〜図37Cは、電子ウェッティングにより誘起された動きを示す。図37Aには、COEW面上の光ビームにより、液滴の運動を誘起する実施形態の概略が示されている。図37Bには、図37AのCOEW装置の等価回路が示されている。図37Cには、上記COEW面の層状構造が示されている。
【0226】
OEWは、上記絶縁体の電圧及び接触角の光学的調節を可能にする。発明者等のこれまでの結果は、65mW/cm2の強度を有するハロゲンランプを用いることが、上記液滴の接触角を105°から75°へ低下させ、疎水性面を親水性に変えることを実証した。発明者等は、OEWを用いて、光ビームが、液体容器から1つの液滴を取り出して、上記液滴を2次元面上に自由に輸送できるようにする、液滴ベースの微小流体デバイスを実証した。液滴の分離は、反対方向に動く2つの光ビームを用いて実現される。上記液滴(容積100nL)は、70mm/秒の速度まで上記走査光ビームに追従し、微小流体の光学操作のためのOEWの有効性を実証する。最小液滴サイズは、上記OEW電極の面積によって制限される(100μm×100μmの電極面積の場合、>1nL)。
【0227】
サブナノリットルの液滴を操作することに対して、本発明は、光ビームが、2次元面上で連続的に扱うことができる仮想電極を形成することができるようになっている連続OEW(continuous COEW)装置を含む。
【0228】
図37Aは、上記COEW装置の構造を示す。上記装置は、2つの面、すなわち、上部ITOガラスと、底部光電性COEW面とからなる。上記上部ITOガラスは、0.2μm厚の二酸化シリコン層と、20nm厚のテフロン層とで被覆されており、上記面を疎水性にしており、また、底部COEW面は、図37Cに示すように、200nm厚のITO、10nm厚のアルミニウム、5μm厚の無ドープ非晶質シリコン、200nm厚の二酸化シリコン及び20nm厚のテフロン層を含む多数の特徴のない層からなる。液滴は、フォトレジストスペーサによって規定された10μmのギャップによって、これら2つの面の間に挟み込まれている。疎水性テフロン被覆により、液体/固体界面の初期の接触角は、90°よりも大きい。光ビームが、上記液滴の一方の縁部を照明すると、この縁部の真下の光伝導性層に仮想電極が形成される。光電子ウェッティング効果が局所的に作用して、上記照明箇所における液滴の接触角が小さくなる。
【0229】
このプロセスは、図37Bに示すような等価回路モデルによって理解することができる。上記非晶質シリコン層は、酸化シリコン層の厚さの10倍の厚さであるため、暗状態において、上記酸化シリコン層よりも小さなキャパシタンス(より高いACインピーダンス)を有する。非常に少量の電圧が、上記酸化シリコン層に亘って降下する。光照明の下で、非晶質シリコンの伝導率は、数桁増加し、それにより、電気的インピーダンスは、上記酸化物層の値よりもかなり低い値まで低下する。上記接触角は、局所的に小さくなり、上記液滴に対して不平衡の圧力が生じる。正味の毛細管力は、上記液滴を押して、上記レーザビームの方へ移動させる。上記光ビームを走査することにより、上記液滴は、上記COEW面上で連続的に扱われる。光でパターン化された仮想電極の分解能を制限する可能性がある2つの要因があり、1つは光回折限界であり、もう1つは両極性正孔拡散距離である。非晶質シリコンの場合、上記両極性拡散距離は、115nmよりも小さく、光回折によってのみ制限される電極分解能をもたらす。
【0230】
上記COEW装置上で移動する100pLの液滴の動きは、顕微鏡を介してビデオカメラにより捉えられる。この動きは、632nmの波長を有する100μWのHeNeレーザによって方向付けられる。10倍の対物レンズを用いた、集束されたスポットサイズは、20μmである。上記レーザビームは、1組の直交する検流計走査ミラー(Cambridge社)によって導かれる。10kHzの周波数を有する100VのACバイアスは、上記上部ITOガラス及び底部COEW面を介して印加される。
【0231】
図38A〜図38Dは、約100μmの半径を有する円形パターン状に動く液滴を示す一連のビデオスナップ写真を示す。上記液滴の速度は、785μm/秒である。これらのイメージは、COEWにより輸送される微小液滴を示す。上記液滴は、100pLの容積を有し、走査レーザビームによって方向付けられた円形パターン状に動く。上記液滴の速度は、785μm/秒である。
【0232】
光照明により形成された上記仮想電極は、誘電泳動(DEP)力によって液体中の微細粒子を動かすのにも用いることができる。上記DEP力は、上記印加された電場と、中性粒子内の誘導電気双極子との相互作用によって生成される。本発明の態様は、このような光誘起性DEPを利用して、微細粒子を低パワー光ビームを用いて移動させる光電子ピンセット(OET)装置を実現できる。上記DEP力は、マイクロスケールまたはナノスケールの粒子を操作するのに幅広く用いられている。上記DEP力の解析式は次の等式で示される。
【数5】
【0233】
上記の等式において、Eは電場の強さであり、aは粒径であり、εm及びεpは、それぞれ、周りの媒質及び上記粒子の誘電率であり、σm及びσpは、それぞれ、上記媒質及び上記粒子の伝導率であり、ωは、印加された電場の角周波数である。K*(ω)の値は、Clausius−Mossoti係数であり、周波数依存性の複素数である。K*(ω)の実数部、すなわちRe[K*(ω)]は、上記媒質及び粒子の分極率、および上記印加されたAC電気バイアスの周波数により、1〜−0.5の値を有する。Re[K*(ω)]>0の場合、上記粒子は、より高い電場領域に向かって移動することになり、これは、正のDEPと呼ばれる。一方、Re[K*(ω)]<0の場合には、上記粒子は、高電場領域から離れて移動し、これは、負のDEPと呼ばれる。
【0234】
図39は、細胞または粒子を含む液体が、ITOガラスと光伝導性面との間に挟み込まれているOET構造の実施形態を示す。光誘起性DEPを実現するために、発明者等は、上記OEW装置と非常に似ているが、図に示すように、上記ITOまたは上記光伝導性面のいずれかの上にテフロン及び二酸化シリコン層を有しないデバイス構造を用いる。1μm厚の非晶質シリコンは、電気分解を防ぐために、20nmの窒化シリコン層で被覆されている。上記OEW装置の場合と同様に、上記非晶質シリコン層は、暗状態において、高抵抗性を有し、上記液体層に亘って小さな電圧降下をもたらす。光照明の下で、上記仮想電極は、上記液体層中に、不均一な電場を生成し、上記粒子の近傍にDEP力を生じる。上記粒子は、クラウジウス・モソッティ(Clausius−Mossoti)係数の符号により、上記光ビームによって、引き付けまたは反発させることができる。上記非晶質シリコンの光伝導性ゲインは、OETが非常に低い光パワーで作動することを可能にする。
【0235】
発明者等のこれまでの結果は、633nmの波長を有する1μWのHe−Neレーザが、25μmの粒子を4.5μm/秒で輸送するのに十分であることを示した。構造は同じであるが、上記OETと上記OEWは、次の点で異なる。すなわち、上記OETは、上記光伝導性層と上記液体層との間で電圧を切り替えるが、上記OEWは、上記絶縁層と上記光伝導性層との間で電圧を切り替える。
【0236】
この項において、発明者等は、生体細胞を集め、輸送する、OETの用途を提示する。大腸菌細胞のサイズを収容するために、OET内のギャップ間隔は、15μmまで縮小される。図40Aは、集束レーザビーム及び10Vのバイアス電圧によって生成された17μmの仮想電極の場合の、上記液体層内でのシミュレートした電場分布を示す。上記液体の伝導率は、1mS/mである。上記非晶質シリコンの伝導率は、上記レーザビームの強度分布に追従し、中心において10mS/mのピーク伝導率を有するガウス形状を有すると推定する。3次元電場分布は、FEMLABを用いて計算する。
【0237】
図40A及び図40Bは、光伝導体層の電場特性を示す。図40Aは、上記光伝導体が17μmのスポットサイズを有する集束レーザビームによって照明されたときの、上記液体層内での電場分布を示す。図40Bは、上記光伝導性層の上の3つの異なる高さにおける電場の強度を示す。上記光伝導性面上の4μm、8μm及び12μmにおける電場分布は、図40Bにプロットされている。上記DEP力は、E2の勾配に比例し、上記電場分布は、上記OETが、横方向において、約20μmの半径内に強いDEP力を生成することができることを示している。垂直方向の勾配は、上記粒子を上記光伝導性面の方へ引き付ける。横方向の勾配及び垂直方向の勾配は共に、物理的電極により生成された電場と同様に、上記レーザスポットの縁部近傍で最も強い。
【0238】
図41は、生体細胞を捕捉するための実証構成を示す。上記OET装置は、例えば、光電性面を上に向けた倒立顕微鏡(すなわち、Nikon(登録商標)のTE2000E)上に配置された顕微鏡イメージング手段に結合されている。0.8mWのHe−Neレーザ(波長632nm)は、上記光電子ピンセットを作動させるのに用いられる。入射パワーは、NDフィルタによって制御される。光ビームは、開口数(N.A.)0.5の40倍の対物レンズを介して上記装置に供給され、それにより、17μmの集束したスポットサイズが生成される。細胞の蛍光像は、底部対物レンズを介してCCDカメラによって捉えられる。
【0239】
図42Aは、OETがターンオンされる前の大腸菌細胞の蛍光像である。図42Bは、上記OETが、14秒間、ターンオンされた後の、図42Aと同じイメージである。大腸菌細胞は、上記OETによって上記レーザスポットに“集中される”ことを理解すべきである。
【0240】
上記レーザビームが固定スポット上に集束されると、上記OETは、図42A及び図42Bに示すように、上記トラッピング領域内の細胞を、上記ビームの中心の方へ引き付ける。上記OETは、セル・コンセントレータとして機能する。この実験において、発明者等は、蛍光顕微鏡の下での観察の有利さから、緑色蛍光たんぱく質を発現することができる大腸菌細胞を用いる。上記液体は、1mS/mの伝導率を有する。発明者等は、100kHz、10VPP(ピーク−ピーク電圧)のAC電気バイアスを、上記上部ITO電極と底部ITO電極との間に印加する。上記大腸菌細胞は、これらの条件下で、正のDEPを受ける。有効捕捉距離は、上記焦点から約20μmである。垂直方向の電場勾配により、上記細胞は、上記光電性面の真上に捕捉される。上記レーザビームがターンオフされると、それらの捕捉された大腸菌細胞は、バラバラに泳ぎ去る。低い光強度のため、“オプティキューション”は、可視光波長範囲内の光の場合でも観察されない。
【0241】
発明者等は、このOETを作動させるのに必要な最小光パワーを調べた。細胞の集結化(cell concentrating)は、8μWという低い光パワーの場合に観察される。この光パワー密度は、1mWのレーザを回折限界スポットサイズに集束させた従来の光ピンセットの光パワー密度よりも、ほぼ5桁小さい。集中化された細胞は、上記レーザビームを走査することにより、任意の位置へ運ぶことができる。図43は、単一の走査レーザビームを用いた、複数の大腸菌細胞の輸送を示す。
【0242】
有効トラッピング領域及び捕捉された細胞の速度を研究するために、発明者等は、上記トラッピング動作を記録して、そのビデオ映像を1フレームごとに分析した。記録顕微鏡は、上記捕捉された細胞を捉えるために、上記光伝導体の表面上に集束させた。発明者等は、8μW、120μW、400μW及び800μWの光パワーを有するレーザによって捕捉された細胞の速度を測定した。上記OETトラップは、全てのパワーレベルで機能する。
【0243】
図44は、集束光スポットセルの中心に向かう大腸菌細胞の測定速度対上記トラップの中心からの径方向距離を示す。800μWにおいて、30μmまでの細胞は、上記OETによって引き付けられる。まず、上記細胞は、5μm/秒の比較的低速度で動く。上記速度は、20μm以内にある場合には、鋭角的に上昇し、最終的に、上記焦点から約15μmにおいて、120μm/秒に達する。この輸送速度は、ピーク値の後は、小さくなる。上記細胞は、上記捕捉された細胞により、中心から9μmで停止される。このことは、図40A、図40Bにおけるシミュレートした電場分布と非常に一致する。上部の曲線の最大傾斜(光伝導体の4μm上)は、上記中心から約15μmで生じる。セル速度は、光パワーの関数である。ピーク速度は、8μWで26μm/秒から120μWで90μm/秒まで増加する。120μW以上で、上記ピーク速度は、よりゆっくりと増加し、最終的に、約200μWで飽和する。このことは、次のように説明され、すなわち、上記光パワーが120μWより小さい場合、上記光伝導体は、完全にターンオンされず、例えば、その伝導率は液体よりも小さいが、液体と比較して無視できない。約200μWにおいて、液体の伝導率は、上記電気回路において支配的となり、電場のほとんどは、上記液体層に亘って落ちる。
【0244】
さらに、光パワーの増加は、ピーク電場を変化させない。しかし、上記電場分布は、この飽和効果のため、より“正方形”状になる。ピーク電場が飽和した後、上記捕捉領域は、わずかに増加する。OETに必要な最小光パワーが、上記液体の伝導率に依存することに注目すべきである。
【0245】
発明者等の実験に用いた上記液体の伝導率は、1mS/mである。このときのレーザ出力は、100mS/mまでの伝導率を有する液体中の細胞を引き付けることができる。上記光パワーは、上記光スポットサイズを縮小することにより、さらに低減することができる。このときのパワーレベルは、上記スポットサイズを17μmから1.7μmに減少させることにより、100分の一に低減することができる。
【0246】
本発明の本態様において、発明者等は、光によって、微小液滴及び微小粒子を操作するための、光電子ウェッティング(OEW)及び光電子ピンセット(OET)を提示した。上記OEWは、光誘起性電子ウェッティングを用いて、表面張力、すなわち、マイクロスケールの支配的な力を制御して、微小液滴を動かす。発明者等の結果は、100pLの水滴が、100μWの光パワーを用いて、785μm/秒の速度で輸送されたことを示している。上記OETは、微小粒子を操作するために、光誘起性誘電泳動力を利用する。OETに必要な光パワーは、8μWと低く、その光パワー密度は、光ピンセットよりも5桁小さい。発明者等は、OETを用いて、光ダメージを伴わずに、生きた大腸菌細胞を集中化して輸送した。OETの低パワー要件は、インコヒーレント光源を用いて、微細粒子を捕捉することの可能性を広げる。
【0247】
本発明の装置及び方法を実施するための実施形態を例証としてこれまで説明してきた。特定の実証/実験用の構成は、説明のためだけに記載のこと、および、当業者には明らかなように、本発明を、様々な等価物を用いて、多種多様の方法で実施することができることを認識すべきである。本発明は、パターン化されていない面を用いて実施することができるOETを提供するが、本明細書における教示は、本発明の教示から逸脱することなく、パターン化技術と組合わせてハイブリッド手法を提供することができることを認識すべきである。また、粒子の輸送、時間、及び他の測定特性の特定の値は、この技術から少しずつ集めることのできるおおよその結果を理解する際の助けとなるように記載し、当業者は、多くの場合、その結果は、これらの実証例を上回るより詳細な実施によって、著しく改善することができることは、理解されるであろう。さらに、本発明の態様を、記載した分野で、あるいは、本明細書における教示に基づいて、当業者には明確に理解されるであろう他の分野で実施することができることを理解すべきである。
【0248】
上記の説明は、多くの詳細を含むが、それらは、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではなく、この発明の現時点で好ましい実施形態のうちのいくつかの実例を単に記載したものと解釈すべきである。従って、本発明の範囲が、当業者には明白である可能性のある他の実施形態をもれなく包含すること、および本発明の範囲が、それに応じて、添付請求項以外によって限定されないこと、単数形の構成要素に対する言及は、断りのない限り、“一つ及び一つのみ”を意味することを意図されておらず、“一つ以上”を意味することを意図されていることを理解すべきである。当業者に知られている上述した好ましい実施形態の構成要素に対する全ての構造的、化学的及び機能的等価物は、明確に本明細書に組み込まれており、また、添付請求項により包含されるように意図されている。また、装置または方法は、本発明により解決しようとする一つ一つの問題に対応する必要はなく、また、上記装置または方法が、添付請求項によって包含される必要もない。さらに、本開示における構成要素、コンポーネントまたは方法ステップは、上記構成要素、コンポーネントまたは方法ステップが請求項に明確に記載されているか否かにかかわらず、公衆に呈示されることは、意図されていない。本明細書における請求項要件は、上記要件が“means for”という言いまわしを用いて明確に記載されていない限り、米国特許法第112条第6項の規定の下で解釈すべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0249】
【図1】図1は、本発明の態様による、AC信号でバイアスがかけられた構造層の間に挟み込まれた微細粒子を操作する光電子ピンセット(OET)の斜視図である。
【図2A】図2A〜2Dは、本発明の態様による、アレイに捕捉されている粒子を示す、粒子トラップを用いた粒子操作のイメージである。
【図2B】図2A〜2Dは、本発明の態様による、アレイに捕捉されている粒子を示す、粒子トラップを用いた粒子操作のイメージである。
【図2C】図2A〜2Dは、本発明の態様による、アレイに捕捉されている粒子を示す、粒子トラップを用いた粒子操作のイメージである。
【図2D】図2A〜2Dは、本発明の態様による、アレイに捕捉されている粒子を示す、粒子トラップを用いた粒子操作のイメージである。
【図3A】図3A〜3Dは、本発明の態様による、微粒子を分類するためのソータ、コンベヤ、ジョイント及びウェッジを有する集積型仮想光学マシンのイメージである。
【図3B】図3A〜3Dは、本発明の態様による、微粒子を分類するためのソータ、コンベヤ、ジョイント及びウェッジを有する集積型仮想光学マシンのイメージである。
【図3C】図3A〜3Dは、本発明の態様による、微粒子を分類するためのソータ、コンベヤ、ジョイント及びウェッジを有する集積型仮想光学マシンのイメージである。
【図3D】図3A〜3Dは、本発明の態様による、微粒子を分類するためのソータ、コンベヤ、ジョイント及びウェッジを有する集積型仮想光学マシンのイメージである。
【図4A】図4A〜4Dは、本発明の態様による、OETを用いた、生細胞及び死細胞の光学的分類のイメージである。
【図4B】図4A〜4Dは、本発明の態様による、OETを用いた、生細胞及び死細胞の光学的分類のイメージである。
【図4C】図4A〜4Dは、本発明の態様による、OETを用いた、生細胞及び死細胞の光学的分類のイメージである。
【図4D】図4A〜4Dは、本発明の態様による、OETを用いた、生細胞及び死細胞の光学的分類のイメージである。
【図5】図5は、不均一な電場を液状層内に生成する光により規定された仮想電極の使用を示す、本発明の態様によるOET装置の概略図である。
【図6】図6は、所望の光イメージを生成するプログラム可能な空間光変調器の使用を示す、本発明の態様によるOETをベースとする細胞操作システムのブロック図である。
【図7A】図7Aは、第1の層と、光応答性の第2の層との間の溶液中に保持された粒子を示す、本発明の態様によるOET装置の構造の斜視図である。
【図7B】図7Bは、変調され、かつ方向付けられた光源を収容する、図7AのOET装置を示す、本発明の態様による実験用OETの構成の概略図である。
【図8】図8は、本発明の態様による、単一粒子リングトラップの場合の電場分布の3D図である。
【図9A】図9A〜9Cは、連続して小さくなる領域内に粒子を含む(図9Aの正方形を構成する)2つの角部を有する動的ラインケージの使用を示す、本発明の態様による、粒子操作のイメージである。
【図9B】図9A〜9Cは、連続して小さくなる領域内に粒子を含む(図9Aの正方形を構成する)2つの角部を有する動的ラインケージの使用を示す、本発明の態様による、粒子操作のイメージである。
【図9C】図9A〜9Cは、連続して小さくなる領域内に粒子を含む(図9Aの正方形を構成する)2つの角部を有する動的ラインケージの使用を示す、本発明の態様による、粒子操作のイメージである。
【図9D】図9D〜9Fは、単一粒子のトラッピング及び移動、および選択領域(リング)の外部への粒子の反発を示す、本発明の態様による、粒子トラッピングのイメージである。
【図9E】図9D〜9Fは、単一粒子のトラッピング及び移動、および選択領域(リング)の外部への粒子の反発を示す、本発明の態様による、粒子トラッピングのイメージである。
【図9F】図9D〜9Fは、単一粒子のトラッピング及び移動、および選択領域(リング)の外部への粒子の反発を示す、本発明の態様による、粒子トラッピングのイメージである。
【図10A】図10Aは、45μmのポリスチレン球体を保持することを示す、本発明の態様による単一粒子OETトラップのイメージである。
【図10B】図10Bは、図10AのOETの場合の電場分布のグラフである。
【図11】図11は、OETの上部層と底部層との間に保持された液体バッファ内の粒子を示す、本発明の態様によるOET装置の斜視図である。
【図12】図12は、DMDを用いてOET装置に対して方向付けられた、PCによって制御される光を示す、本発明の態様による実験用OETの構成のブロック図である。
【図13A】図13A〜13Bは、本発明の態様による、微粒子の配列構造への自己組織化のイメージである。
【図13B】図13A〜13Bは、本発明の態様による、微粒子の配列構造への自己組織化のイメージである。
【図14A】図14A〜14Bは、本発明の態様による、OET配列内での単一粒子の操作のイメージである。
【図14B】図14A〜14Bは、本発明の態様による、OET配列内での単一粒子の操作のイメージである。
【図15A】図15A〜15Dは、本発明の態様による、OET配列内に流れる粒子配列のイメージである。
【図15B】図15A〜15Dは、本発明の態様による、OET配列内に流れる粒子配列のイメージである。
【図15C】図15A〜15Dは、本発明の態様による、OET配列内に流れる粒子配列のイメージである。
【図15D】図15A〜15Dは、本発明の態様による、OET配列内に流れる粒子配列のイメージである。
【図16】図16は、本発明の態様による、OET配列内に捕捉された単一粒子の配列のイメージである。
【図17A】図17A〜17Dは、本発明の態様による、異なるサイズの粒子の動的再配列のイメージである。
【図17B】図17A〜17Dは、本発明の態様による、異なるサイズの粒子の動的再配列のイメージである。
【図17C】図17A〜17Dは、本発明の態様による、異なるサイズの粒子の動的再配列のイメージである。
【図17D】図17A〜17Dは、本発明の態様による、異なるサイズの粒子の動的再配列のイメージである。
【図18A】図18Aは、本発明の態様による、マイクロビジョンをベースとする自動光操作システムの概略図である。
【図18B】図18Bは、図18Aのシステムに示されたOET装置の概略図である。
【図19A】図19A〜19Dは、粒子を所望のパターンに配列する、本発明の態様によるステップのイラストである。
【図19B】図19A〜19Dは、粒子を所望のパターンに配列する、本発明の態様によるステップのイラストである。
【図19C】図19A〜19Dは、粒子を所望のパターンに配列する、本発明の態様によるステップのイラストである。
【図19D】図19A〜19Dは、粒子を所望のパターンに配列する、本発明の態様によるステップのイラストである。
【図20A】図20A〜20Dは、本発明の態様による、粒子認識システムからのイメージおよび認識割合のグラフである。
【図20B】図20A〜20Dは、本発明の態様による、粒子認識システムからのイメージおよび認識割合のグラフである。
【図20C】図20A〜20Dは、本発明の態様による、粒子認識システムからのイメージおよび認識割合のグラフである。
【図20D】図20A〜20Dは、本発明の態様による、粒子認識システムからのイメージおよび認識割合のグラフである。
【図21A】図21A〜21Bは、本発明の態様による、単一光リングパターンにより誘起された電場分布のグラフである。
【図21B】図21A〜21Bは、本発明の態様による、単一光リングパターンにより誘起された電場分布のグラフである。
【図22A】図22A〜22Cは、本発明の態様による、微細粒子の、マイクロビジョンをベースとする自動光操作のイメージである。
【図22B】図22A〜22Cは、本発明の態様による、微細粒子の、マイクロビジョンをベースとする自動光操作のイメージである。
【図22C】図22A〜22Cは、本発明の態様による、微細粒子の、マイクロビジョンをベースとする自動光操作のイメージである。
【図23】図23は、粒子を含む液体内での電場パターンの変化を示す、本発明の態様によるOET装置の概略図である。
【図24】図24は、変調されたレーザ光源を用いて、光粒子操作パターンを方向付けることを示す、本発明の態様による実験用OET装置の概略図である。
【図25A】図25A〜25Dは、本発明の態様による、光入力とACバイアスを組合わせて用いたOET粒子操作のイメージである。
【図25B】図25A〜25Dは、本発明の態様による、光入力とACバイアスを組合わせて用いたOET粒子操作のイメージである。
【図25C】図25A〜25Dは、本発明の態様による、光入力とACバイアスを組合わせて用いたOET粒子操作のイメージである。
【図25D】図25A〜25Dは、本発明の態様による、光入力とACバイアスを組合わせて用いたOET粒子操作のイメージである。
【図26】図26は、人の白血球を用いて“UC”という文字を形成するプロセスを示す、本発明の態様によるOET粒子操作のイメージである。
【図27A】図27Aは、液体を通って光応答性材料に方向付けられた集束ビームを示す、本発明の態様によるOET装置の斜視図である。
【図27B】図27Bは、誘起された誘電泳動の一つの態様に対応する、図27AのOETの動作の概略図である。
【図28】図28は、本発明の態様によるOETの場合の、粒子速度と光パワーとの関係のグラフである。
【図29A】図29A〜29Bは、本発明の態様による、OETを用いて多数の粒子を集束/集中させることのイメージである。
【図29B】図29A〜29Bは、本発明の態様による、OETを用いて多数の粒子を集束/集中させることのイメージである。
【図30A】図30A〜30Cは、光波が誘起した電場に応じて、異なるサイズの粒子がどのように組織化されるかを示す、本発明の態様によるOET装置の概略図である。
【図30B】図30A〜30Cは、光波が誘起した電場に応じて、異なるサイズの粒子がどのように組織化されるかを示す、本発明の態様によるOET装置の概略図である。
【図30C】図30A〜30Cは、光波が誘起した電場に応じて、異なるサイズの粒子がどのように組織化されるかを示す、本発明の態様によるOET装置の概略図である。
【図31】図31は、下面顕微鏡イメージングを伴うレーザ照明源を示す、本発明の態様によるOET光学的構成のブロック図である。
【図32A】図32A〜32Dは、約10μm及び20μmの粒子のサイズ分類を示す、本発明の態様によるOETをベースとするサイズ分類のイメージである。
【図32B】図32A〜32Dは、約10μm及び20μmの粒子のサイズ分類を示す、本発明の態様によるOETをベースとするサイズ分類のイメージである。
【図32C】図32A〜32Dは、約10μm及び20μmの粒子のサイズ分類を示す、本発明の態様によるOETをベースとするサイズ分類のイメージである。
【図32D】図32A〜32Dは、約10μm及び20μmの粒子のサイズ分類を示す、本発明の態様によるOETをベースとするサイズ分類のイメージである。
【図33A】図33A〜33Bは、本発明の態様による、一連のサイズの粒子の場合の、OETをベースとするサイズ分類のイメージである。
【図33B】図33A〜33Bは、本発明の態様による、一連のサイズの粒子の場合の、OETをベースとするサイズ分類のイメージである。
【図34】図34は、本発明の態様による、実証した異なる粒子サイズの場合の、距離対速度のグラフである。
【図35】図35は、異なる光操作方法によるエネルギ伝達経路のフロー図比較である。
【図36A】図36A〜36Bは、OEW装置が照明されたときの液滴特性の変化を示す、本発明の態様によるOEW装置の概略図である。
【図36B】図36A〜36Bは、OEW装置が照明されたときの液滴特性の変化を示す、本発明の態様によるOEW装置の概略図である。
【図37A】図37Aは、本発明の態様による、連続OEW面上での液滴輸送の概略図である。
【図37B】図37Bは、図37AのOEWの場合の等価電気回路の概略図である。
【図37C】図37Cは、本発明の態様による、COEW面の層構造の斜視図である。
【図38A】図38A〜38Dは、本発明の態様によるCOEWを用いた微小液滴輸送のイメージである。
【図38B】図38A〜38Dは、本発明の態様によるCOEWを用いた微小液滴輸送のイメージである。
【図38C】図38A〜38Dは、本発明の態様によるCOEWを用いた微小液滴輸送のイメージである。
【図38D】図38A〜38Dは、本発明の態様によるCOEWを用いた微小液滴輸送のイメージである。
【図39】図39は、光エネルギを電場に変換する光伝導性面を有する構造内に保持された粒子含有液体を示す、本発明の態様によるOET装置の概略図である。
【図40A】図40A〜40Bは、光伝導体照明に応答する液体層内での電場の分布及び強度のグラフである。
【図40B】図40A〜40Bは、光伝導体照明に応答する液体層内での電場の分布及び強度のグラフである。
【図41】図41は、本発明の態様によるOET装置を有する、大腸菌細胞を捕捉する実験用構成の概略図である。
【図42A】図42A〜42Bは、本発明の態様による、集められている、「収束されている」細胞のイメージである。
【図42B】図42A〜42Bは、本発明の態様による、集められている、「収束されている」細胞のイメージである。
【図43A】図43A〜43Bは、本発明の態様による、輸送されている細胞のイメージである。
【図43B】図43A〜43Bは、本発明の態様による、輸送されている細胞のイメージである。
【図44】図44は、本発明の態様による、距離及び光パワーに対する細胞の移動速度のグラフである。
【関連出願の相互参照】
【0001】
この出願は、その全体が本明細書に組み込まれる、2004年4月12日に提出された米国プロヴィジョナル出願第60/561,587号からの優先権を主張する。
【0002】
(連邦政府に委託された研究開発に関する説明)
この発明は、NASAにより与えられた認可番号442521−WM−22622/NCC2−1364の下に、米国政府のサポートと共になされた。米国政府は、この発明に関して、一定の権利を有する。
【0003】
(コンパクトディスクで提出された資料に関する文献の組み込み)
該当なし
【0004】
(著作権保護の対象となる資料に関する注意)
この特許文献における資料の一部は、米国及びその他の国の著作権法の下で、著作権保護の対象となる。著作権者は、誰かによる本特許文献及び本特許開示に関する複製に関しては、米国特許商標庁で公的に入手可能であるため異論はないが、その他の点では、何があっても全ての著作権の権利を留保する。著作権者は、この特許文書を秘密にするために、37 C.F.R.第1.14条に従って、制限なくその権利を含むその著作権を少しも放棄しない。
【背景技術】
【0005】
1.発明の分野
この発明は、一般に、細胞及び微粒子の操作に関し、より具体的には、光電子ピンセット(OET)に関する。
【0006】
2.関連技術の説明
生体細胞やミクロンスケールの粒子を操作する能力は、多くの生物科学及びコロイド科学用途において重要な役割を果たす。しかし、光ピンセット、動電力(電気泳動、誘電泳動(DEP)、進行波誘電泳動)、磁気ピンセット、音響トラップ及び流体力学的流動を含む従来の操作技術は、高分解能と高スループットとを同時に実現することができない。
【0007】
DEPは、ミクロン及びサブミクロン粒子、および生体細胞を操作するのに幅広く用いられてきている、既に確立された技術である。進行波誘電泳動(TWD)は、特に、外部の流体ポンピングを伴わない高スループットの細胞操作にとって魅力的である。電極からなる並列アレイに対する多相交流(AC)バイアスによって生じた移動電界は、多数の粒子を同時に浮揚させて運ぶ。しかし、TWDは、個々の粒子を分離することができない。最近になって、個別に扱うことが可能な2次元電極アレイを有するプログラム可能なDEPマニピュレータが、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)集積回路(IC)技術を用いて実現されている。多数(すなわち、約10,000)の個々の細胞の平行操作が実証された。このCMOS DEPマニピュレータは、2つの潜在的な欠点を有する。オンチップICの必要性は、上記チップのコストを増加させ、使い捨て用途に対する魅力を少なくする。また、トラップ密度(すなわち、約400部位/mm2)は、制御回路のサイズによって制限される。
【0008】
従って、動電力の利用及び同様のメカニズムは、高スループットをもたらすが、個々の細胞、または細胞群を制御する柔軟性または空間分解能に乏しい。加えて、これらの技術は、多くのリソグラフィ工程を介して形成される構造を必要とする。
【0009】
しかし、光ピンセットは、単一の粒子を捕捉する高分解能を提供し、その上、厳密なフォーカシング要件により、限定された操作領域を提供する。上記光ピンセットは、操作のために直接的な光学力を用い、また、高い開口数(N.A.)値及び小さい視野を有する対物レンズと共に用いられる高度に収束されたコヒーレント光源を必要とする。複数の光トラップまたは特別な光学パターンを生成するために、上記光ピンセットは、ホログラフィ等の技術も必要とする。それらの技術は、単純な光学パターンを生成するための密な計算を必要とする。
【0010】
従って、並行処理能力を実現できるとともに、単一粒子レベルまでの選択性を実現できる、粒子操作及び細胞操作装置及び方法に対する要求が存在する。本発明は、それらの要求及びその他の要求を満たし、複雑なリソグラフィまたは3Dビーム制御の必要性を伴わない、低い光レベルでの粒子及び細胞の操作を可能にする。
【発明の開示】
【0011】
本発明は、光学イメージ駆動光誘導誘電泳動(DEP)を用いて粒子及び細胞の操作を実行することを目的とする。“粒子”という用語は、本明細書において、微小(マイクロ)粒子、ナノ粒子、細胞、および概して数ナノメートルから約100μmまでの直径を有する有機物及び無機物を指すのに用いる。上記技術は、適度な強度のインコヒーレント光源の使用を可能にし、上記光源は、イメージ検出と、実際の粒子の成分及び位置の処理とに応じて制御することができる動的パターンを生成する。
【0012】
本発明の一実施形態に従って、単一の粒子、または、粒子の集合を操作するための光伝導性面上に電界をパターニングする、光学イメージ駆動誘電泳動装置及び方法について説明する。インコヒーレント光源等の幅広い種類の光源を用いることができ、また、粒子の単独のまたは多段階の操作を容易に実現することができる。
【0013】
一つの実施形態は、光学制御を用いた、細胞及び微小粒子の操作のために構成された光電子ピンセット(OET)を備える。上記OETは、空間光変調器(例えば、マイクロディスプレイまたはDMDミラー等)によって制御された連続的に投影されたイメージを用いることにより、細胞捕捉(トラッピング)、細胞や微小粒子の反発、収集、移動及び分類等の機能を可能にする。1mW程度の低い光作動出力の場合、光学操作は、インコヒーレントな集束光及び直接イメージ投影システムを用いて実行することができる。
【0014】
一実施形態において、ダイナミックDMD駆動光電子ピンセットは、DMDが生成した投影イメージを用いて、微細粒子の動的操作を実行する。この実施形態において、光誘起の誘電泳動を介した単一粒子の捕捉及び(40μm/秒までの)動きを観察した。
【0015】
粒子及び微粒子の動的配列操作が光電子ピンセットを用いて実行される別の実施形態について説明する。一つの実証は、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を有するデジタル光プロジェクタによって生成された光パターンにより捕捉された、20μm及び45μmの直径を有するポリスチレン粒子の個々の捕捉を詳述する。上記粒子の自己組織性及び個別の取扱いを実証する。45μmの粒子の移動は、35μm/秒(15pNの力)であると測定された。
【0016】
他の実施形態は、光電子ピンセットを用いて、生きた赤血球及び白血球の操作を実行できる。光誘起性誘電泳動は、ウシ赤血球を溶液中に集中することによって明示された生きた哺乳類細胞を操作するために、光電子ピンセット(OET)内で利用可能である。上記OETと共に一体化された空間光変調器及びインコヒーレント光源は、再構成可能で複雑な操作パターンを容易に生成する能力を提供する。この能力は、人の白血球の複雑なパターンへのパターニングでも実証された。
【0017】
別の実施形態は、光誘起性誘電泳動を用いて、マイクロワット程度の光パワーを有する粒子を光学的に捕捉して運ぶことを実現できる。この実施形態は、2つのパターンレス(パターニングされていない)面、すなわち、光伝導性材料で被覆された底部ガラス基板と、上部透明ITOガラスとを備える。光トラッピングを実現するために、液体に浸漬された微粒子が、それら2つの面の間に挟みこまれており、また、AC電気バイアスが供給される。40倍の対物レンズによって集束された633nmのHe−Neレーザを、上記粒子を運ぶのに用いる。負の誘電泳動トラッピングが実証され、その実験結果は、1μW程の低いパワーを有する光ビームが、直径25μmのラテックス粒子を4.5μm/秒の速度で運ぶのに十分であることを示している。輸送速度は、光パワーが高くなるにつれて増加する。100μWで、397μm/秒の最大速度が観測された。
【0018】
この実施形態において、光ソーティングメカニズムを、走査光電子ピンセット(OET)によってパターン化された動的電界に基づいて説明する。上記ソーティングメカニズムは、流体力学的粘性力と動的光誘起性誘電泳動力との力平衡に基づいている。異なるサイズを有する、不規則に分布した粒子は、分類されて、線状走査レーザビームに対して、サイズ依存の決定論的位置に配置される。10μm/秒の速度で動く240μmのレーザビームは、5μm、10μm及び20μmの直径を有するポリスチレン微粒子を、上記ビームの中心から17μm、29μm及び60μmの相対位置に仕分けることができる。
【0019】
また、この実施形態は、微粒子及び微小流体の両方のための光操作ツールを必要とするオール光・ラブ・オン・チップ・システムに近づけることを可能にする。細胞または粒子を操作する光ピンセットは重要であるが、上記光ピンセットは、微小流体に対処する際には有効ではない。また、典型的に高い光パワー要件は、高いスループットの生物分析システムの適用性を制限する。この実施形態においては、2つの新規なメカニズム、すなわち、(1)微液滴を取り扱う光電子ウェッティング(OEW)と、(2)低光パワー作動を伴う微細粒子の光学的操作のための光電子ピンセット(OET)とが実証された。直接的な光パワーを用いる代わりに、両メカニズムは、光学的操作のための光誘起性電気力に頼る。光電子ウェッティング(OEW)は、光ビームによって、液滴中の微小流体の制御を可能にし、照明領域における固体/液体界面における表面張力を変化させる光誘起性電子ウェッティングに基づいている。これは、光導電性材料と電子ウェッティング電極とを一体化することにより実現される。照明パターンをプログラムすることにより、本発明者等は、移動、分割及び合体等の、液滴のための様々な機能を首尾よく実証した。100pLの液滴を、100μWの光パワーを有する光ビームにより、785μm/秒の速度で運んだ。
【0020】
光電子ピンセット(OET)は、光誘起性誘電泳動(DEP)に基づいて、細胞や粒子を操作する。 微細粒子のトラッピングまたは反発は、光ピンセットに必要な大きさ(約105W/cm2〜107W/cm2)よりも5桁低い2W/cm2の光強度で実現される。細胞または粒子を含む液体は、その間にACバイアスをかけた状態で、感光面と透明ITOガラスとの間に挟み込まれている。レーザビームが上記感光層に集束すると、上記ビームは、その照明された面に仮想電極を形成し、上記水性層に不均一な電界を生じる。上記液層中の細胞または粒子は、この不均一な電界によって分極され、DEP力によって動かされる。上記力は、上記粒子の誘電特性及びバイアス周波数により、引力的または反発的になる可能性がある。OETを用いて、本発明者等は、約10μW未満の光パワーを用いて、ポリスチレン粒子と大腸菌細胞の集中を実証した。
【0021】
本発明の別の実施形態によれば、光誘起性誘電泳動(DEP)によって細胞または粒子を操作する装置は、(a)操作すべき粒子または細胞を含む液体を保持するために構成された第1の面及び第2の面と、(b)受けた光の近傍における、上記受けた光の局所電場への変換のために構成された、上記第1の面または上記第2の面の上の少なくとも1つの光伝導性領域と、(c)誘起された局所電場に応じて、粒子または細胞を選択的に反発させまたは引き付けるように、上記光伝導性領域上での受光のために光パターンを方向付ける手段とを備える。上記光パターン方向付け手段は、好ましくは、2次元光パターンを生成するために構成された光源を備える。
【0022】
本発明の他の実施形態によれば、2次元領域に対して、光イメージ駆動光誘起性誘電泳動(DEP)を用いて、細胞及び粒子を操作する光電子ピンセット(OET)装置は、(a)操作すべき粒子または細胞を含む液体を保持する十分な間隔を有する第1の面及び第2の面と、(b)受けた光の近傍に局所電場、すなわち仮想電極、を形成するための、光伝導性領域内での光エネルギの電場への変換のために構成されている、上記第1の面または上記第2の面の上の少なくとも1つの光伝導性領域と、(c)光誘起性誘電泳動(DEP)を用いて、粒子または細胞の位置決めを操作する移動仮想電極パターンを形成する、上記少なくとも1つの光伝導性領域上での動的光イメージの位置決めのための手段と、を備える。
【0023】
本発明の別の実施形態は、光誘起性誘電泳動(DEP)によって、細胞または粒子を操作する装置であって、(a)操作すべき粒子または細胞を含む液体を保持するために構成された第1の面及び第2の面と、(b)受けた光の近傍における、上記受けた光の局所電場への変換のために構成された、上記第1の面または上記第2の面の上の少なくとも1つの光伝導性領域と、(c)上記光伝導性領域により受けられる光を供給する光源とを備え、上記局所電場が、粒子または細胞を選択的に反発させまたは引き付ける装置を実現できる。
【0024】
上記光源は、好ましくは、例えば、上記光伝導性領域上へのイメージシーケンスまたはストリームのかたちで、2次元光パターンを生成するために構成された光投影システムを備える。
【0025】
本発明のさらなる実施形態において、2次元領域に対して、光イメージ駆動光誘起性誘電泳動(DEP)を用いて、細胞及び粒子を操作する光電子ピンセット(OET)装置は、(a)操作すべき粒子または細胞を含む液体を保持する十分な間隔を有する第1の面及び第2の面と、(b)電場を誘起するために構成され、それによって、受けた光の近傍に仮想電極を形成する(または、同様に、光エネルギを電場に変換する)、上記第1の面または上記第2の面の上の少なくとも1つの光伝導性領域と、(c)動的連続2次元光パターンを上記光伝導性面上に生成し、それによって、粒子または細胞のDEP操作のための動的局所電場を誘起するために構成された光プロジェクタと、を備える。
【0026】
上記光プロジェクタ、または、光イメージを動的に投影する同様の手段は、好ましくは、レンズアセンブリを介して、上記OETに方向付けられ、その結果、一連のイメージを上記光伝導性領域上に形成することができる。本発明の一つの好ましい実施形態において、電極は、含まれている粒子または細胞を有する上記液体にバイアス信号を印加できるように、上記第1及び第2の面に結合されている。
【0027】
本発明の一つの態様によれば、上記粒子および/または細胞の顕微鏡イメージングを実行し、上記粒子および/または細胞の位置を、また必要に応じて特性を、記録して、光イメージ位置決め及び動的イメージの動きを制御するためのフィードバックを実行できる手段が設けられている。
【0028】
本発明の別の実施形態は、2次元領域に対して、光イメージ駆動光誘起性誘電泳動(DEP)を用いて、(典型的には、100μm以下程度の直径の)細胞及び粒子を操作する光電子ピンセット(OET)であって、(a)操作すべき粒子および/または細胞を含む液体を保持する十分な間隔を有する第1の面及び第2の面と、(b)受けた光の近傍に、局所電場、すなわち仮想電極、を形成するための、光伝導体内での光エネルギの電場への変換のために構成されている、上記第1の面及び上記第2の面の上の少なくとも1つの光伝導性領域と、(c)近くの粒子および/または細胞のDEP操作のための動的局所電場を生成する上記感光性面上に、レンズアセンブリを介して動的連続イメージ(光パターンのシーケンス)を生成するために構成された、上記レンズアセンブリに結合された光プロジェクタと、を備える光電子ピンセット装置を実現できる。
【0029】
上記第1の面及び第2の面は、好ましくは、上記光プロジェクタから受けたイメージに応じて、その上でDEP操作が実行される連続的な膜を構成する。このように、導電性電極を用いたリソグラフィ・パターニングは、DEP操作を実行するのに必要ない。
【0030】
本発明の一つのやり方においては、その粒子および/または細胞を有する液体にバイアス信号を印加できるように、少なくとも1つの電極が上記第1の面及び第2の面の各々に結合されている。上記液体は、好ましくは、導電性または半導電性の流体を含む。典型的には、薄い誘電体層が、上記電極の内面に接合されており、また、上記液体に亘るインピーダンスより小さいインピーダンスを有するように構成されている。
【0031】
本発明の好ましいやり方において、マイクロビジョンをベースとするパターン認識サブシステムは、顕微鏡イメージングによって決定された粒子および/または細胞の位置、及び必要に応じて特性を記録することに応じて、上記光プロジェクタの出力を制御するために構成されている。上記特性は、顕微鏡イメージングシステムにより直接検知可能であり、または、長時間にわたって直接的な特性の変化を検知することに応じて決めることができるものなら何でも含むことができる。例証として、上記特性は、サイズ、色、形状、質感、生存能力、運動性、導電性、透過性、静電容量、および上記粒子または細胞の環境の変化に対する応答性を含むことができる。
【0032】
本発明の別の実施形態は、光誘起性誘電泳動(DEP)によって細胞を操作する装置であり、上記装置は、(a)操作すべき細胞を含む液体を保持するために構成された第1の面及び第2の面と、(b)受けた光に応じて、局所電場を誘起するために構成された、上記第1の面及び第2の面の上の少なくとも1つの光伝導性領域と、(c)上記光伝導性領域で受けられる光を供給する光源とを備え、上記光によって誘起された局所電場は、細胞を選択的に反発させ、または引き付け、上記受けた光は、上記装置内で操作されている細胞にダメージを与えない、十分に低い光強度である。一つの好ましいやり方において、上記実施形態は、上記装置内で、細胞の位置、および必要に応じて特性を記録することに応じて、上記光源の出力を制御するために構成された顕微鏡イメージングサブシステムをさらに備える。
【0033】
他の実施形態は、液体中に保持された粒子状物または細胞状物を操作する方法を実現でき、上記方法は、本質的に、(a)少なくとも第1の面及び第2の面を備える構造内に、上記粒子状物または細胞状物を含む上記液体を閉じ込めるステップと、(b)上記第1及び第2の面に結合された電極にバイアス信号を印加することにより、上記液体にバイアス電圧を印加するステップと、(c)上記構造の光伝導性部分に光を方向付けるステップとからなり、上記光は、光を受ける上記部分の近傍に局所電場を誘起し、それによって、上記粒子または細胞を誘電泳動的に反発させ、または引き付ける。
【0034】
他の実施形態は、液体中に保持された生物学的対象物を操作する方法を実現でき、上記方法は、(a)少なくとも第1の面及び第2の面を備える構造内に、上記粒子状物または細胞状物を含む上記液体を閉じ込めるステップと、(b)上記第1及び第2の面に結合された電極にバイアス信号を印加することにより、上記液体にバイアス電圧を印加するステップと、(c)上記構造内の生物学的対象物の特性及び位置を記録することに応じて、制御信号を生成するステップと、(d)上記制御信号に応じて、上記構造の光伝導性部分に光を方向付けて、受けた光の近傍に局所電場を誘起して、細胞状物を誘電泳動的に反発させ、または引き付けるステップと、を備え、上記光は、上記方法によって操作されている生細胞が生存し、かつ生存し続ける、十分に低い強度である。
【0035】
本発明の別の実施形態は、液体中に保持された粒子状物及び細胞状物を動的に操作する方法であって、(a)少なくとも第1の面及び第2の面を有する構造内に、上記粒子状物、および/または細胞状物を含む上記液体を閉じ込めるステップと、(b)上記第1及び第2の面に結合された電極にバイアス信号を印加することにより、上記液体にバイアス電圧を印加するステップと、(c)上記第1の面および/または第2の面の光伝導性部分に光パターンを集束させ、その結果、上記光のエネルギが局所電場に変換されて、受けた光の近傍に仮想電極を形成するステップと、(d)上記粒子および/または細胞の位置、及び必要に応じて特性を記録することから受けたフィードバックに応じて、上記光パターンを動的に位置決めするステップと、を備える方法を実現できる。
【0036】
本発明の他の実施形態は、液体中に保持された細胞を動的に分類する方法であって、 (a)少なくとも第1の面及び第2の面を有する構造内に、上記細胞を含む上記液体を閉じ込めるステップと、(b)上記第1及び第2の面に結合された電極にバイアス信号を印加することにより、上記液体にバイアス電圧を印加するステップと、(c)上記構造内の細胞の特性及び位置を記録することに応じて制御信号を生成し、どのカテゴリーに上記細胞を分類すべきかを決定するステップと、(d)細胞のダメージを防ぐのに十分に低い強度の光を、上記制御信号に応じて、上記構造の光伝導性部分に方向付けて、受けた光の近傍に局所電場を誘起し、上記細胞を誘電泳動的に反発させ、または引き付けるステップと、(e)上記制御信号に応じて、上記光を連続的に方向付けて、上記構造内で、上記カテゴライズされた細胞を、異なる仕分け群に移動させ、あるいは、上記構造の外部への輸送のために移動させるステップとを備える方法を実現できる。
【0037】
本発明のまた別の実施形態は、液体中に保持された粒子または細胞を動的に分類する方法であって、(a)少なくとも第1の面及び第2の面を有する構造内に、上記粒子または細胞を含む前記液体を閉じ込めるステップと、(b)上記第1及び第2の面に結合された電極にバイアス信号を印加することにより、上記液体にバイアス電圧を印加するステップと、(c)前記構造の光伝導性部分に亘って、光の移動パターンを方向付けて、上記パターンの近傍に局所電場を誘起し、上記粒子または細胞を誘電泳動的に反発させて、上記粒子の相対的サイズに従って、上記パターンから上記粒子を移動させるステップと、を備える方法を実現できる。
【0038】
本発明の実施形態は、本発明の教示から逸脱することなく、単独で、または、所望の何らかの組合せで実施することができる多数の有益な態様を提供することができる。
【0039】
本発明の一つの態様は、概して平坦な液体充填構造内で、光イメージ駆動光誘起性誘電泳動(DEP)を用いて、細胞及び粒子を操作する装置及び方法を提供することである。
【0040】
本発明の別の態様は、単一の粒子および/または細胞、粒子および/または細胞の集まったもの、または、それらの組合せを含む流体に隣接する大きな2次元領域に対して、光イメージ駆動光誘起性DEPを実行することである。
【0041】
本発明の他の態様は、単一の粒子および/または細胞、または、粒子群および/または細胞群を並行して(同時に)操作することができる光イメージ駆動光誘起性DEPを実行することである。
【0042】
本発明の他の態様は粒子または粒子群を物理的な電極の構造に制限されることなく装置内で所望の方向へ操作することができる光イメージ駆動誘起性DEPを実行することである。
【0043】
本発明の別の態様は、従来の材料及び処理技術を用いて、光イメージ駆動光誘起性DEPを実行することを可能にする。
【0044】
本発明の他の態様は、静電的に中性である粒子に対して、光イメージ駆動光誘起性DEPを実行することを可能にする。
【0045】
本発明の別の態様は、高分解能及び高スループットを同時に実現する光電子ピンセット装置(OET)で、光イメージ駆動光誘起性DEPを実行することを可能にする。
【0046】
本発明の他の態様は、動的電場を形成して、流体フローの助けを要することなく、粒子の位置決めを操作する光電子ピンセット装置(OET)で、光イメージ駆動光誘起性DEPを実行することを可能にする。
【0047】
本発明の別の態様は、従来の光ピンセットに必要な光エネルギレベルの約10万分の1である約10μW以下で、粒子及び細胞の位置を操作することが可能である光電子ピンセット装置(OET)で、光イメージ駆動光誘起性DEPを実行することを可能にする。
【0048】
本発明の他の態様は、厳密な光フォーカシングが必要なく、それによって、従来の光ピンセットを用いて実現可能な大きさよりも桁違いに大きい、1平方ミリメートル(1mm2)程度の、または、例えば、1.3mm×1.0mmまでの最大領域に対する操作を可能にする光電子ピンセット装置(OET)を可能にする。
【0049】
本発明の別の態様は、光電子ピンセット装置(OET)で連続光学的電子ウェッティング(continous optical electrowetting;COEW)技術を組合わせて光イメージ駆動光誘起性DEPを実行することを可能にする。
【0050】
本発明の他の態様は、チャンバ壁で隔てられ、かつ操作される粒子または細胞を含む液体を保持するために構成された第1の面及び第2の面を有するOET装置である。
【0051】
本発明の別の態様は、バイアス電流および/または電界を、保持された液体を通しておよび/または上記液体に亘って印加することができる上記第1の面及び第2の面上の電極を有するOET装置である。
【0052】
本発明の他の態様は、受けた光に応じて、局所電場を形成し、上記電場内に、低光パワーレベルで、粒子、細胞等を操作する仮想電極を形成する少なくとも1つの感光性/光応答性の面を有するOET装置である。
【0053】
本発明の別の態様は、連続膜として形成された第1及び第2の面を有するOET装置であり、上記面のリソグラフィック・パターニングは、本発明を実施するのに必要ない。
【0054】
本発明の他の態様は、窒化ケイ素、酸化ケイ素等の絶縁層と共に、または上記絶縁層を要することなく用いられる、非晶質および/またはマイクロ/ナノ結晶質半導体材料、非晶質シリコン、あるいは、有機光伝導体材料からなる面を有するOET装置である。
【0055】
本発明の別の態様は、上記OET装置内に保持された液体よりも低いインピーダンスを有する薄い絶縁層を有するOET装置である。
【0056】
本発明の他の態様は、導電性面、非導電性面、または、対向面がない面(オープン構造)との種々の組合せで、単一面または両面の感光性面を用いたOET装置である。
【0057】
本発明の別の態様は、単独で、操作要素からなるアレイで、および操作要素の組合せ及びシーケンスで実施することができる、トラップ、くし状部、ソータ、コンセントレータ、ループ、コンベヤ、ジョイント、粒子チャネル、ウェッジ、スウィーパを実装するために構成されたOET装置である。
【0058】
本発明の他の態様は、上記面が、流路(チャネル)、キャビティ、リザーバ及びポンプ等の微小流体デバイスと一体化するOET装置である。
【0059】
本発明の別の態様は、サイズに応じて粒子、細胞、および他のマイクロ/ナノ粒子を分離するくし状デバイスを実装するOET装置である。
【0060】
本発明の他の態様は、所望の周波数のACバイアスおよび/またはDCバイアスをかけることができるOET装置である。
【0061】
本発明の別の態様は、ACバイアスの周波数が、粒子、細胞等がパターン化された光によって引き付けられるかまたは反発し合うかを決定するOET装置である。
【0062】
本発明の他の態様は、顕微鏡イメージング手段が、OET装置内の粒子、細胞等の実際の位置に応じてパターンが形成されるように、動的光パターニング装置と共に作動するOET装置である。
【0063】
本発明の別の態様は、粒子の特徴付け及び位置決めの間に、OET装置にフィードバックを与えるように構成されている顕微鏡イメージング装置と組合わせたOET装置である。
【0064】
本発明の他の態様は、顕微鏡イメージング手段が、粒子、細胞等の実際の位置及び成分を分析し、上記イメージング手段により検知された実際の位置に応じて、粒子、細胞等を移動させ、集めおよび/または分散させるための光出力シーケンスの生成を制御するために構成されているOET装置である。
【0065】
本発明の別の態様は、導電性または半導電性の流体がOET装置内に保持されている上記OET装置である。
【0066】
本発明の他の態様は、光パターン、および特に、動的照明パターンに応じて、粒子及び細胞を操作するために構成されているOET装置である。
【0067】
本発明の別の態様は、動的照明パターンが生成されて、上記光パターンの動きに応じて、粒子、細胞等が連続的に移動されるOET装置である。
【0068】
本発明の他の態様は、照明パターンが、レーザ、またはより好ましくは、低強度インコヒーレント光源(すなわち、ハロゲン、LED等)により生成されるOET装置である。
【0069】
本発明の別の態様は、低強度照明の使用が、光伝導体内での光エネルギの電場への変換によって可能となるOET装置である。
【0070】
本発明の他の態様は、生存性の違い(すなわち、死んでいるか生きているか)、内部導電率、サイズ、色、形状、質感、水性環境の変化に対する応答性、および同様の識別特性に応じて、粒子または生体細胞を分類するために構成されたOET装置である。
【0071】
本発明の別の態様は、膜特性(例えば、透過性、静電容量等)、内部導電率等の違いに応じて、生体細胞を分類するために構成されたOET装置である。
【0072】
本発明の他の態様は、低強度照明の使用が、従来の光ピンセットを用いた場合に生じる光ダメージ(“オプティキューション(opticution)”)からの生存率のロスを伴うことなく、生体対象物を操作することを可能にするOET装置である。
【0073】
本発明の別の態様は、低強度照明の使用が、光伝導体内での光エネルギの電場への変換によって可能となるOET装置である。
【0074】
本発明の他の態様は、光源が、空間光変調器、または、光変調器の同様の構成によってパターン化されているOET装置である。
【0075】
本発明の別の態様は、光パターンが、拡大及び縮小に応じて変化するOET装置である。
【0076】
本発明の他の態様は、生体分析、細胞操作、コロイドアセンブリ、粒子分類、粒子アセンブリ等に用いるOET装置である。
【0077】
本発明のさらなる態様は、本明細書の以下の部分で明らかにし、詳細な説明は、本発明の好ましい実施形態を限定することなく完全に開示するためのものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0078】
例示のために、図面をより具体的に説明すると、本発明は、図1〜図44に概して示す装置に具体化される。上記装置が、本明細書に開示した基本概念から逸脱することなく、構成に関して、および部材の詳細に関して変わってもよいこと、および上記方法が、特定のステップ及びシーケンスに関して変わってもよいことは、十分に理解されるであろう。
【0079】
本発明は、流体中に懸濁する粒子、細胞及び他の成分が操作される多数の実施形態を含む。本願は、それらの実施形態を9つの項で説明する。
【0080】
1.光イメージを用いた広範囲に及ぶ並行操作
単一の粒子を操作するための光伝導性面上での電場の高分解能パターニングを可能にする光イメージ駆動誘電泳動技術を、本明細書で説明する。上記技術は、従来の方法を用いた場合よりも実質的に低い光強度レベルで実行することができ、例えば、一つの実施形態は、光ピンセットの場合の約10万分の1の光強度を要する。加えて、上記技術は、インコヒーレント光源を使用することができる。一実施例において、インコヒーレント光源(発光ダイオード(LED)またはハロゲンランプ)は、1.3mm×1mmの領域内で、15,000個の粒子のトラップの並行操作を実証するために、デジタルマイクロミラー空間光変調器と共に用いられる。複雑な多段階操作手順を実現するために、直接光イメージング制御を用いて、多くの操作機能を容易に組合わせることができる。
【0081】
産業界においては、光誘起性誘電泳動を、単一の粒子レベルまで至る操作を実行する能力を実現できる動的な光の指向メカニズムを用いて制御できることは、これまで認識されていなかった。本発明の光電子ピンセット(OET)は、単一の粒子の並行操作のための高分解能DEP電極を形成する直接光イメージを用いる。DEP力は、不均一な電場にさらされた粒子内の誘起双極子の相互作用によって生じる。上記力の大きさは、電場勾配と、上記粒子及び周囲の媒質の誘電特性に依存する上記粒子の分極率とに依存する。
【0082】
図1は、本発明による光電子ピンセット(OET)の実施形態10を示す。微細粒子(または細胞)14を含む液体12は、例えば、透明導電性ITOガラスを備える上部層16と、例えば、高濃度にドープされたa−Si:Hからなる50nmの層22と、無ドープのa−Si:Hからなる1μmの層24と、窒化シリコンからなる20nmの層26とを有する、多数の、好ましくは特徴のない(featureless)層が上にあるITO被覆ガラス20から形成された光電性面を備える底部層18との間に挟み込まれている。例証として、上記下方の層は、ガラス基板28の上に示されている。
【0083】
上部16及び底部18の面は、10VPPのAC電気信号等のバイアス源30に結合されている。別法として、上記面は、やや好ましくないが、小さなDCでバイアスをかけることができ、または、特定の装置構造や操作アプリケーションによってAC及びDCの組合せでバイアスをかけることができる。上記ACバイアスの周波数が、粒子、細胞等が上記パターン化された光によって引き付けられるか、または反発し合うかを決め、ACの使用が、DCバイアスの使用に優る多くの利点をもたらすことを認識すべきである。
【0084】
下方層の光電性面24は、受けた光エネルギを、図1の同心リング32のセットにより例示的に示される対応する電場に変換する。照明源は、この実施例に示すような625nmの波長で作動する(Lumileds(登録商標)、Luxeon(登録商標)、Star/O(登録商標)により作成した)LED34等の何らかの使いやすい光源とすることができる。光投影手段は、光パターンを光電性下方層18上に出力するメカニズムを形成し、好ましくは、上記面に対して空間的強度バリエーションを有し、かつ典型的には、(ムービーと同様の)パターンストリームにおける出力、あるいは、(スライドショーと同様の)パターンシーケンスである、明領域または暗領域によって規定された構造を有する動的光パターンを出力するために構成されている。上記光パターンを投影する一つの好ましい技術は、対物レンズ38と共同して、LED34からの光を光電性面24上に集束させて、DEP操作のための不均一な電場を形成するデジタルマイクロミラーディスプレイ(DMD)等の空間光変調手段36を用いることである。
【0085】
投影された光が上記光電性層を照明すると、上記光は上記仮想電極を作動させて、不均一な電場を形成し、DEP力を介した粒子操作を可能にする。これらの特徴のない層は、何らかのリソグラフィまたは微細加工を要することなく形成することができ、上記デバイスを低コストにし、かつ使い捨て用途に対して魅力的にする。OETをベースとする光学的操作は、作動のために誘起されたDEP力の結果として、2つの作動モード、すなわち、正のOETと負のOETとを有する。粒子は、AC電場の周波数と、上記粒子の内部及び表面の誘電特性とにより、上記照明された領域によって引き付けることができ、または、上記照明された領域から反発させることができる。
【0086】
高光伝導性ゲインの結果として、仮想電極を作動させるのに必要な最小の光強度は、10nW/μm2となり、これは、光ピンセットの約10万分の1である。光強度のこの低いしきい値は、インコヒーレントな光イメージを用いて、大きな領域に対して、例えば、1平方ミリメートル(1mm2)程度の最大領域、及び光学的構成によりそれよりさらに大きな領域に対してDEP力を制御することの可能性を広げる。例えば、上記光イメージは、一実施形態において、1つのLEDと、デジタルマイクロミラー空間光変調器(すなわち、例えば、13.68μm×13.68μmの画素サイズで1024×768画素を有するTexas Instruments(登録商標)によるDMDデバイス)とを組合わせることによって形成される。上記パターンは、10倍の対物レンズを介して上記光伝導性面上に投影される。その結果として生じる上記仮想電極の画素サイズは、1.52μmである。上記実施例のための照明源は、40,000画素を作動させるのに十分である、(上記対物レンズの後方で測定した)1mWの出力を有する赤色LED(625nmの波長)であった。厳密なフォーカシングはOETには必要なく、上記光操作領域は、適当な対物レンズを選択することによって拡大することができる。10倍の対物レンズを用いると、操作領域(1.3mm×1.0mm)は、光ピンセットの操作領域の500倍になる。
【0087】
高分解能仮想電極のパターニングは、単一粒子の操作を実現するのに重要である。OETは、これまでに報告した光誘起性電気泳動法よりも高い分解能を有する。上記仮想電極の最小サイズは、光伝導体内の光生成キャリアの横方向拡散距離及び上記対物レンズの光回折によって制限される。無ドープのa−Si:H内での非常に多くの電子欠陥状態は、115nmより小さい短い両極性電子拡散距離を生じる。従って、最終的な仮想電極分解能は、光回折制限によって決まる。また、誘起されたOET力は、電場の2乗の勾配に比例し、上記力を上記仮想電極の局所領域にうまく制限し、これは、単一粒子の操作にとって鍵となる特性でもある。
【0088】
図1のOETは、本発明の多くの変形例によって実施することができることを認識すべきであり、以下に、例証として記載する。上記OET装置は、チャンバ壁によって隔てられ、かつ操作される粒子または細胞を含む液体を保持するために構成された第1の面及び第2の面を備えている。電極を第1の面及び第2の面上に設け、その上に、バイアス電流および/または電場を、保持された液体を介しておよび/または保持された液体に亘って印加できるようにすることが好ましい。図1は、単一の光伝導体面を備えて示されている。しかし、本システムは、受けた光に応じて、該材料の表面上に局所電場を誘起し、その中で、低光パワーレベルで粒子、細胞等を操作する仮想電極を形成する少なくとも1つの光電性/光応答性の面を有するようにして実施することができる。本発明による上記OETは、導電性面、非導電性面または対向面なし(開放構造)との様々な組合せで、単一のまたは両面の光電性面を用いて形成することができることを理解すべきである。
【0089】
上記OETの第1及び第2の面は、好ましくは、連続膜(continuous film)として形成され、上記面のリソグラフィック・パターニングは、本発明を実施するのに必要ない。しかし、本発明の上記OETは、従来のDEP構造または特定の用途範囲向けの連続光学的電子ウェッティング技術(COEW)と組合わせて実施することができることを認識すべきである。
【0090】
図1のOETは、窒化シリコン、酸化シリコン等の絶縁層と共に、または上記絶縁層を要することなく用いられる、非晶質および/または微小/ナノ結晶質の半導電性材料、非晶質シリコン、または有機光導電性材料からなる面を有して構成することができる。使用時、上記OETの薄い絶縁層は、上記OETデバイス内に保持された液体のインピーダンスよりもかなり小さいインピーダンスを有する。
【0091】
図2A〜図2Dは、1.3mm×1.0mmの領域に亘って形成された15,000の粒子トラップ全てにわたって、単一粒子のしっかりした並行操作を実行できる上記装置の実施形態から得られた結果を示す。負のDEP力を受ける直径4.5μmのポリスチレンビーズは、暗領域に捕捉される。
【0092】
図2Aは、この特定の実施形態において、各トラップが、単一の粒子にフィットする4.5μmの直径を有する配列の一部を示す。
【0093】
図2Bは、例証として、上記操作領域のこの部分内での粒子の動きを示す取込み映像の3つのスナップ写真によって、単一粒子の平行輸送を示す。2つの隣接する列内の捕捉粒子は、図2C及び図2Dに見られるように、反対方向に動く。誘起された負のDEP力は、上記ビーズを、照明されていない領域内に押し込み、上記領域では、電場が弱くなっている。各トラップのサイズは、単一の直径4.5μmのポリスチレンビーズを捕らえるように最適化されている。
【0094】
投影されたイメージをプログラミングすることにより、これらの捕捉された粒子は、図2Bに示すように、個別に動かすことができる。プログラム可能なCMOS DEPチップと比較して、上記OET(11,500箇所/mm2)の粒子トラップ密度は、高分解能取扱い能力に応じて30倍以上である。直接イメージングを用いて、精巧な仮想電極を容易にパターン化し、かつ再構成して、流体フローの助けなしで、連続的な粒子操作のための動的電場分布を形成することができる。
【0095】
図3A〜図3Dは、異なる成分の動きが同期される集積型仮想光学マシンの実施例を例証として示す。図3Aにおいて、上記イメージは、光学ソータ経路、コンベヤ、ジョイント及びウェッジを含む多数の仮想コンポーネントを集積化する構造を示す。本発明のOET装置は、本発明の教示から逸脱することなく、別々に、操作要素からなる配列状で、および操作要素の組合せ及びシーケンスで実施することができる、多種多様なトラップ、くし状部、ソータ、コンセントレータ、ループ、コンベヤ、ジョイント、粒子チャネル、ウェッジ、スウィーパを実装するために構成することができることを認識すべきである。
【0096】
図3B、図3Cにおいて、10μm及び24μmのサイズを有する2つのポリスチレン粒子は、上記ソータ経路を通過し、非対称の光学パターンにより、z方向に分別される。上記粒子トレースは、光学ウェッジの先端位置を再構成することにより、上記ソータ経路の端部で切り替えることができる。粒子の動きの軌道は、光学的分類の再現性が暗いトラックと明るいトラックとによって表されている図3B及び図3Cを見て分かるように、高度に再現可能であり、かつ正確に規定されている。図3Bにおける明るいループ及び暗いループは、43サイクル後の粒子トレースを示す。検査バーで広がるトレースは、10μmのビーズの場合に0.5μmの標準偏差を、24μmのビーズの場合に0.15μmの標準偏差を有する。
【0097】
粒子は、異なる機能的領域を通って運ばれ、この光パターン回路内で再循環されて、ウェッジディバイダの位置により、異なる経路を通って移動することを認識すべきである。異なるサイズを有する粒子は、光パターン状電場の非対称形状により、上記ソータ経路を通過する際に、横方向のz方向に分別される。上記ソータ経路の端部において、光学ウェッジは、上記複数の粒子を分割して、2つのコンベヤに案内する。ループ状光学コンベヤは、上記粒子を再循環させて上記ソータの入力へ戻し、上記プロセスを繰返す。
【0098】
図3Dは、上記粒子が上記ソータを43回通過した後の(白いバーでマークした)上記ソータの中間部における粒子の位置の分布を示す。トレースの広がりの標準偏差は、10μmのビーズの場合に0.5μmであり、24μmのビーズの場合に0.15μmである。DEP力の大きさは、粒子の体積に比例する。より大きな粒子は、輸送中に、光学パターン状のDEPケージ内で堅固な閉じ込めを呈する。
【0099】
図4A〜図4Dは、生体細胞の特性に従った上記生体細胞の分類を例証として示す。この実施形態によれば、生細胞は、正のOETに従って、明るい領域に捕捉され、上記パターンの中心部に引っ張られる。(トリパンブルー色素が付いた)死細胞は、暗いギャップを通って漏出し、集められない。異なる粒子または細胞間の誘電性の違いを利用することにより、本明細書に記載したDEP法は、膜特性(例えば、透過性、容量、導電性等)、内部導電性及び細胞の大きさの違いを有する生体細胞を選別及び分類するのに用いられてきた。これらの方法は、他の粒子または細胞の特性に拡大適用することができることを認識すべきである。上記OET技術は、これらのDEPの利点を引き継ぐだけではなく、各個別の細胞を取扱う能力も実現できる。
【0100】
図4A〜図4Dにおいて、生細胞及び死細胞の混合物からの、生きたヒトのB細胞の選択的集結を実例説明する。上記細胞は、上記細胞の生存性をチェックするための0.4%のトリパンブルー染色液と混合した、8.5%スクロース及び0.3%デキストロースからなる等張緩衝液中にしており、10mS/mの導電率を生じる。印加したAC信号は、120kHzの周波数で14VPPである。生細胞の細胞膜は、選択的に透過性であり、細胞内環境と細胞外環境との間のイオン濃度差を維持することができる。対照的に、死細胞は、この差、イオン濃度差を維持することができない。そのため、死細胞は、低イオン濃度を有する媒質中に懸濁しており、上記細胞膜内のイオンは、イオン拡散によって希釈され、これは、生細胞及び死細胞の誘電特性の間に差を生じる。生細胞は、正のOETに従い、照明された領域への引き付けにより、縮小する光学リングパターンの中心に集められ、一方、死細胞は、負のOETに従って、集められない。
【0101】
単一細胞分析は、刺激時の各個別の細胞の応答スペクトルを決定することが可能であるため、多くの生物学的メカニズムを理解するのに重要な技術である。直接インコヒーレント光イメージを用いて、新たな単一細胞及び粒子の操作技術が、多数の単一の細胞及び粒子を並行して操作することを可能にした本発明によって実証された。投影される光学パターンをプログラミングすることにより、多段階診断手順を、平坦な非晶質シリコン被覆ガラススライド上で、輸送、仕分け、再循環及び分離等の複数の機能を組合わせることによって実現することができる。生物学的用途に加えて、OET面上にパターン化された高分解能電場は、コロイド状構造の結晶化をガイドする動的鋳型(dynamic template)としても機能することができる。
【0102】
2.光電子ピンセット
本発明の光電子ピンセット(OET)は、空間光変調器(マイクロディスプレイまたはDMDミラー)によって制御される連続的に投影されたイメージにより、細胞及び微粒子の細胞の捕捉、収集、輸送及び分類等の機能を可能にする光学的制御を用いた細胞及び微粒子の操作のためにデザインされている。上記光学作動出力は、1mW程度と低いため、本発明は、容易に集束するインコヒーレント光源及び直接イメージ投影システムを用いた光学的操作を可能にする。上記システムは、実質的に増大した操作領域を提供し、また、複雑な光学パターンの形成、およびそれに伴うより多くの光学的操作機能を可能にする。
【0103】
図5は、本発明の別の実施形態によるOET装置50の構造の概要実施例である。図示の実施例のOETは、液体細胞構造の水平方向の大きさを規定し、かつ対向する面16、18を隔てるスペーサ44、46を含む。ACバイアスは、光学パターンが下方層18内の光電性面上に投影されている間に、上部層及び底部層に亘っての印加することができる。好ましい実施形態において、上記装置は、内部面に薄い導電性層44(すなわち、アルミニウム)を有する透明層16を有する上部面と、光電性面24を有する底部層18とを有する2つの対向する面を備える。光が、例えば、非晶質シリコンからなる層を備える上記光電性面に照明されると、液体層12内に不均一な電場を生成する、光により規定された仮想電極52が形成される。上記仮想電極近傍の細胞または粒子は、その静電気力によって操作される。
【0104】
図6は、細胞操作システム70内の、図5のOETを示す。プログラム可能なDMD等のプログラム可能な空間光変調器72は、PC等の処理手段74によって制御される要求される光イメージを生成するのに用いられる。上記光イメージは、例えば、ハロゲンランプ76等の光源によって生成された光を反射させて、細胞操作のための上記構造内に仮想電極を形成することによって、上記OET装置上に投影される。
【0105】
上記OET装置は、所望の用途により、ポンプまたはチャネルを用いて、または用いることなく、作動させることができる。任意的な液体ポンプ78及び出力ポート80は、上記OETの中で、粒子または細胞と共に液体を動かすのに、あるいは、上記OETの状態を変化させるのに用いることができる。
【0106】
上記細胞の動きは、顕微鏡フォーカスを用いたカメラ(すなわち、電荷結合素子(CCD))等のイメージング手段88によって捕捉され、上記イメージング手段は、さらなる処理のためのフィードバック信号を生成する。本発明の一つのやり方において、拡大レンズ系82は、コンピュータ74によってイメージを捕捉できるようにするために、カラーフィルタ及びビームスプリッタ84と、光源86(すなわち、水銀ランプ)との組合せを介して結合されている。
【0107】
光イメージが上記光電性面上に投影されると、図5に示すような光パターン状の仮想電極が形成される。この仮想電極は、静電気力を介して細胞及び粒子を操作するための電場をその周囲に生成する。上記光パターン状電極によって生成された上記電場のパターンは、投影されたイメージにより、どのような種類の形状も有することができる。上記電場のパターンは、単一の粒子、または粒子群を捕捉する電場ケージを形成することができ、あるいは、粒子を案内するための電場チャネルを形成することができる。上記仮想電極は、全て光学的にパターン化されるため、完全にプログラム可能かつ再構成可能である。細胞輸送、細胞収集及び細胞分類等の光学的操作機能は、単一のチップ上で同時に実現することができる。
【0108】
例示的なOET装置は、特に、複数細胞及び単一細胞レベルでの細胞操作における用途によく適している。細胞(または粒子)を含む液体は、第一に、上記OETの2つの面の間に挟み込まれている。使用される光イメージは、上記コンピュータ内で生成された後、上記空間光変調器にロードされ、上記光イメージは、図6に示すように、コヒーレント光源またはインコヒーレント光源のいずれかを用いて照明される。そして、上記イメージは、好ましくは、対物レンズを介して上記OET装置上に投影されて、上記光パターン状仮想電極が形成される。上記細胞または粒子の反応は、イメージング手段(すなわち、カメラ)により、光学的操作に必要な新たな光パターンを生成する、上記コンピュータのためのフィードバック信号として捕捉することができる。
【0109】
上記OETに結合された顕微鏡イメージング手段は、好ましくは、上記OET内に保持された粒子および/または細胞の数、特性及び位置に基づいてイメージパターンを形成することができる情報を生成する認識アルゴリズムを用いて構成される。例えば、この認識アルゴリズムは、特定サイズ範囲の、特定の色及び外見の粒子および/または細胞を測定するのに、または、色、形状、外見、導電性、透過性、容量、運動性等の直接的に検出可能な他の特性を測定するのに用いることができる。また、上記イメージングシステムは、好ましくは、例えば、粒子および/または細胞の、環境変化(例えば、水溶液の変化、放射、温度、pH等)に対する反応、または、上記粒子および/または細胞、および上記OET内の他の粒子、細胞および/または構造の間の相互作用に対する反応を記録することから推定することができる間接的な特性を検出するために構成されている。
【0110】
粒子、または、より典型的には細胞の特性を、周りの液体の温度変化、照射変化、化学的特性変化、他の粒子および/または細胞との相互作用に応じた、粒子または細胞の色、形状、外見等の変化等の環境の変化に対する反応を顕微鏡的に検出することによって測定することができることは、認識されるであろう。上記顕微鏡イメージング手段は、その視野内の各粒子または細胞の情報を格納するように、および環境の変化に対応した相関する検出変化に応じて、特性を分類するように構成することができる。上記顕微鏡イメージング手段は、上記OET内での動きに関係なく、各粒子または細胞に関する情報を保持することができる。このように、本発明は、広範囲の粒子及び細胞の仕分け、分離、分類、濃度、アセンブリ及び操作の所望の他の目的を実行するように実施することができる。
【0111】
また、上記OET装置は、連続的光学操作を実行できるポンプ及びチャネル構造と一体化することができる。さらに、上記OET装置は、ハイブリッド手法に適した特定の用途に対応するために、連続的光学電子ウェッティング(COEW)または従来の固定電極DEP技術と組合わせることができる。
【0112】
本発明が、上記OETの構造に対して、及び光伝導性材料の利用において、当該技術に対して際立った改良を実現できることを認識すべきである。本発明の上記OET装置は、製造のためにフォトリソグラフィマスキングを必要としない実質的に特徴のない層で構成することができ、製造コスト要因は実質的に低減される。また、低コストの非晶質シリコンが、好ましくは、上記光伝導性層として用いられ、低暗伝導度、高光電性及び短い電子拡散距離という利点も実現できることを認識すべきである。非晶質シリコンだけでなく、同様の電気的特性及び光学的特性を有する他の材料物質も用いることができることを認識すべきである。また、代替の実施形態は、光応答性の他のメカニズム及び構成を用いることにより、例えば、上記光伝導性構造の代わりにフォトトランジスタを用いることにより、実現することができる。
【0113】
上記OET発明の特性は、非常に低い光パワーレベル(すなわち、1mW程度)で、及び仮想電極のサブミクロン分解能で光学的操作を実行でき、また、インコヒーレント光源を用いたOETによって光学的操作を可能にする。従来のOET装置が、その構造によって決まるコヒーレント光源の使用に依存していることは十分に理解されるであろう。
【0114】
本発明のOET装置について説明し、かつ上記装置は、粒子のトラッピング、収集、多段階処理、微細粒子及び生細胞の両方に関する分類等の様々な用途に用いることができる。本発明の上記OET装置は、直接イメージ投影システムからの再構成可能な光学パターンを用いた、単一及び複数細胞レベルでの細胞の並行光学的操作を可能にする。微小流体環境内の細胞を処理するのに、ポンプ、微小チャネル及びバルブは必要ない。本明細書に記載した本発明のOET装置及び方法の使用は、粒子操作の分野において、および特に、細胞状粒子の操作において、著しい前進をもたらすことが意図されている。
【0115】
3.粒子操作のための動的DMD駆動光電子ピンセット
単一の細胞を動かし、分類する能力は、生物医学及び生物学コミュニティにおいて、大いに追求されている。光ピンセット及び動的ホログラフィック光ピンセット(holographic optical tweezers;HOT)アレイは、個々の細胞操作を実行する手段を備えていたが、高い光パワーレベル(約1μW〜100μW)を必要とし、小さなトラップ領域(<1μm)を有している。光電子ピンセット(OET)は、光ピンセットの欠点を克服する細胞操作の方法を実現できる。上記光電子ピンセットは、非常に低い(すなわち、マイクロワット程度の)光パワーを要し、このことが、インコヒーレント光源及び直接光イメージングを用いて、トラップをパターン化する可能性を広げる。
【0116】
ここまで、発明者等は、単一のレーザビームを用いた、微細ラテックス球及び生大腸菌細胞のOET操作を実例説明してきた。空間光変調器は、多数のOETトラップ、およびライン及びリング状ケージ等の新規なパターンを生成するのに用いることができる。この明細書において、発明者等は、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を用いて、動的イメージを標準的なマルチメディアプロジェクタを介して本発明のOET装置上に投影することにより、微小粒子を捕捉して動かすことが可能な新規な粒子ケージに関して報告する。本発明のこの態様が、多くの用途において多数の利点をもたらすであろう非コヒーレント光源を用いて、微細粒子マニピュレータを実証することは、認識されるであろう。
【0117】
図7Aは、光誘起性誘電泳動の原理に基づいている、本発明による光電子ピンセットの実施形態90を示す。窒化物層とITO上部層とに挟み込まれた緩衝液12は、対象となる粒子14を含む。動作時、光源は、例えば、上記OET装置のACバイアスをかけた非晶質シリコン(a−Si)光伝導性基板層を備える光電性層24上に集束される。暗いときには、上記a−Siは高抵抗性であるが、上記光伝導性層が照明されると、上記a−Siの導電性は、光生成された電荷キャリアにより大幅に増大して、局所仮想電極を形成し、かつ上記緩衝液中に不均一な電場を生成する。誘電泳動(DEP)力は、上記電場の不均一性から生じる。この力は、粒子及び媒質の誘電特性及びバイアス周波数により、正(上記電場に最大限に引き付けられる粒子)または負(上記電場に最小限に引き付けられる粒子)のいずれかである。図7Bは、図7Aに示すOETの構成要素のための実験用構成を示す。
【0118】
図8は、単一粒子トラップを形成するように構成することができる上記OET面上に投影されたリング状パターンによって生じる空間電場分布を示す。負のDEP力は、最小の局所電場に相当するため、上記光リングの中心の粒子を保持する。上記リング外の粒子は、同じ力によって反発し合う。
【0119】
例示として示された図7Bに示す実験用構成100を詳細に考察すると、コンピュータ102(すなわち、パーソナルコンピュータ(PC))は、(120W 1000−ANSIルーメンの高圧水銀ランプを有する)光源114及びDMDドライバ回路インタフェース116の両方として用いられる、InFocus(登録商標)LP335 DMDをベースとするプロジェクタ104にイメージ信号を出力する。例えば、MEMSミラーからなるアレイを備える上記DMDは、上記PCの外部モニタポートの出力に対応するイメージを形成する。上記投影レンズの出力における光は、例証として、光学系118、レンズ106、108、ミラー110によって集光され、平行にされて、対物レンズ112(すなわち、10倍)を介してOET装置90上に向けられた。上記対物レンズは、上記ビームを、上記ITO上部層と上記光伝導性底部層との間に挟み込まれた、0.1mS/mの導電率を有する緩衝液12内に集束した。上記光伝導性層は、Nikon(登録商標)TE2000E倒立顕微鏡のステージ上に配置した。観察は、上記倒立顕微鏡に結合されたCCDカメラを介して行った。
【0120】
図9A〜図9Fは、本発明の態様に従って閉じ込めて捕捉した粒子のイメージを示す。これらの図における上記イメージは、上記DMDプロジェクタに接続されたPC上の標準的な表示ソフトウェア(Microsoft Power Point)等の光学プロジェクタを用いて、上記対物レンズの焦点面上に形成された。負のDEP力は、19.5VのACバイアス及び100kHzの周波数で、溶液中の25μmのラテックス球で観察された。動的ライン状ケージ(図9A〜図9C)及びリング状トラップ(図9D〜図9F)を含む様々なパターンを、粒子を操作するのに用いた。粒子の動きは、約40μm/秒であると観察された。
【0121】
本発明の態様は、非コヒーレント光源からの光誘起性誘電泳動を用いて、ミクロンサイズの粒子の操作を実証することを認識すべきである。様々な動的光パターンを、粒子トラップ及びマニピュレータとして用いて、25μmのラテックス球を、0.1mS/m緩衝液中で約40μm/秒で動かすことができた。
【0122】
4.光電子ピンセットによる粒子の動的アレイ操作
細胞規模の操作は、生物学研究における重要なツールであり、そのような顕微鏡的操作のための能力を実証した技術は、光ピンセット及び誘電泳動を含む。光ピンセットは、微小粒子の非常に精微な制御をすることができるが、上記技術は、高光パワー要件に悩まされる。誘電泳動は、14nmと小さい粒子を捕捉することが実証されている。しかし、誘電泳動は、電極の静止パターンを必要とし、容易に再構成可能ではない。
【0123】
従って、本発明は、光誘起性誘電泳動の技術または光電子ピンセットを用いたマイクロメータ規模の対象物を操作する別の方法を実証する。誘電泳動力を誘起するレーザを用いて、25μmのラテックス球及び大腸菌の制御された動きを実証した。この方法は、非常に低い光パワーレベルで用いることができ、インコヒーレント光源を用いた、粒子及び細胞の操作を可能にする。また、記載した光システムにおける空間光変調器の使用は、粒子トラップの動的再構成を可能にし、従来の誘電泳動に優る粒子操作におけるさらなる汎用性を実現できる。本発明は、微小粒子の動的アレイ操作が、光電子ピンセットを用いて実行される新規な操作態様について記述する。粒子のアレイへの自己組織化および単一粒子アレイの形成は、各粒子を個別に取扱う能力を実証し、かつ実現できる。
【0124】
誘電泳動(DEP)は、不均一な電場の存在の下で、粒子に対して誘起される力を指し、これは、典型的には、様々な電極構成によって生成される。電場内の粒子は、誘起双極子を形成し、上記誘起双極子は、上記電場勾配による力を受けることになる。誘起された誘電泳動力の方向は、上記電場の周波数と、上記粒子及び周囲の媒質の透過率及び導電率とに依存する。正のDEPは、粒子の電場への最大限の引き付けをもたらす。対照的に、負のDEPは、粒子を電場から最大限に反発させる。このようにして、AC電場を印加することは、粒子に誘起されたDEP力のタイプのチューニング、およびどのような電気泳動効果も無効にすること、または、その表面電荷による粒子の動きを可能にする。
【0125】
本発明のこの態様による光電子ピンセット(OET)は、光誘起性誘電泳動を可能にする。従来のDEPとは違って、印加された電場に不均一性を導入するのに、電極パターンは必要なく、その代わり、光伝導性層が、仮想電極を形成するのに用いられる。入射光を上記光伝導体上に集束すると、暗領域と比較して、その導電性が実質的に増加し、従来のDEPにおけるパターン化された電極と同様に、上記照明された領域内に電極が有効に形成される。また、OETにより用いられる上記仮想電極は、従来のDEPの固定電極とは違って、可動かつ再構成可能である。
【0126】
図10A、図10Bは、本発明によるOETトラップの態様を示す。図10Aには、光誘起性の負のDEPによって収容された45μmのポリスチレン球を有する単一粒子OETトラップが示されている。図10Bには、図10Aに示す断面A−A´に沿った単一粒子トラップの場合の、上記電場の2乗の分布が示されている。DEP力は、この分布の勾配に比例する。
【0127】
例証として示すように、および限定するものではないが、図10Aの単一粒子矩形トラップは、70μm×50μm程度の内のり寸法を有する。直径45μmの球が、約25μm幅の周囲光“壁”により“捕捉されて”示されている。上記電場の2乗の対応する断面分布は、図10Bに示すように、DEP力は、この分布の勾配に依存するため、上記粒子が受ける上記トラップの幅が約50μmであることを示す。負のDEP力が上記トラップパターンによって誘起されると、上記トラップ領域外の全ての粒子は、上記電場によって最大限に反発されることになり、上記トラップの周辺部を形成する。上記取り囲まれたトラップ領域内のどの粒子も、同様の反発力を受けることになるが、上記力は、上記粒子を均衡させて捕捉する。1つの粒子が、一旦、上記矩形状パターン内に収容されると、上記トラップを移動させて、上記粒子を所望の位置へ運ぶことができる。さらに、多数のトラップを、捕捉した粒子のアレイを構成する構築ブロックとして用いることができ、上記ブロックは、任意に配列し、かつ動的に再構成することができる。
【0128】
上記OET内にDEP力を誘起するのに必要な光パワーは、OETに供給される光エネルギが、上記粒子を直接捕捉しないため、光ピンセットを実施するときに必要な光パワーよりもかなり低い。OETを用いる初期の実験は、440mW/cm2の入射パワー密度に相当する1μWの光パワーによって、25μmの粒子の4.5μm/秒での動きを示した。相対的に、1mWの最小トラッピングパワーでの、直径1μmの光ピンセットトラップは、32kW/cm2の光パワー密度を有する。
【0129】
OETの低光パワー要件は、多くのシステムデザイン上の利点をもたらす。低コストのインコヒーレント光源は、OETに必要な照明を実現できるレーザの代わりに用いることができる。また、光パターンは、走査技術ではなく(ラスタまたはベクトルベースの)イメージング技術によって生成することができる。さらに、全ての光エネルギを集束させる必要のない場合、光ピンセットアレイによって用いられるホログラフィック技術を用いるのではなく、単純な空間光変調器を、イメージをパターン化するのに用いることができる。
【0130】
図11は、上記上部ITOガラス層と上記下方光伝導性層との間に、対象となる粒子を含む緩衝液を有する光電子ピンセット装置の実施形態90を示す。上記上部層と底部層とを隔てるために、100μm厚のスペーサ(図示せず)を用いる。
【0131】
本明細書における上記OET装置及び方法を実証する際に、光プロジェクタ内のデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を、上記仮想電極をイメージするのに用いた。上記光電子ピンセット装置の実施形態は、10nm厚のアルミニウム膜をガラス基板上に蒸着させて電気的接触を形成することにより形成した。次に、例えば、プラズマCVDを用いることにより、1μm厚の無ドープ非晶質シリコン(a−Si)を堆積した。詳細な微細ピッチの特徴部は、上記第1及び第2の保持層上に形成する必要はなく、詳細なリソグラフィック工程が必要ないことを認識すべきである。この実施形態においては、光伝導性膜を保護するために、好ましくは、20nm厚の窒化シリコン層を上記a−Siを覆って堆積する。しかし、いくつかの用途に対して、上記装置を絶縁層なしで形成することができることを認識すべきである。対象となる粒子を含む上記緩衝液は、この光伝導性デバイスと、例えば、ITOガラスを備える対向面との間に挟み込まれている。上記ITO及びa−Siに亘る印加ACバイアスは、上記電場を生成する。
【0132】
非晶質シリコンは、約0.01μS/m〜1μS/mの暗伝導度を有する。従って、暗い状況で、a−Siは、(10mS/mの伝導率を有する)上記緩衝液よりもかなり低い伝導率を有し、上記シリコン層に亘って印加する電圧の大部分の降下をもたらす。上記光伝導性層上に集束された入射光は、上記電圧の大部分が上記緩衝液層に亘って降下するため、伝導率を実質的に増加させ、上記照明された領域を囲む不均一な電場を形成する。このようにして、上記OET装置に入射する光は、誘電泳動のための仮想電極をパターン化することができる。
【0133】
図12は、OET90のための実験用構成を例証として示す。この実施形態においては、水銀ランプ114、DMD116及びフォーカシング光学系118を有するInFocus LP335等のプロジェクタ104からのイメージは、光学要素106、108及び110を介して10倍の対物レンズ112に集束されて、OET装置90に投影される。粒子の動きは、コンピュータ102に結合された顕微鏡イメージング手段120、例えば、Nikon TE2000U 倒立顕微鏡で観察した。
【0134】
Microsoft Power PointソフトウェアによってPCに描かれたイメージを表示するのに用いられる、DMDをベースとするプロジェクタ(InFocus LP335)を示す。上記プロジェクタは、光源(120W、1000ANSIルーメンの高圧水銀ランプ)及びDMD・PC間のインタフェースの両方を備える。上記プロジェクタの出力は、集光され、平行にされ、対物レンズ(すなわち、NA=0.30のOlympus MSPlan10 10X)に方向付けられて、イメージを上記OET装置上に投影する。上記プロジェクタ出力におけるパワーは、約600mWであると測定された。
【0135】
このパワーのうちの約7%は、上記対物レンズによって集められ、上記OET装置上に集束される。そのため、上記OETに入射する光のパワーは42mWであり、12W/cm2の強度に相当する。上記緩衝液は、10mS/mの伝導率を得るために混合された、脱イオン水及びKCL塩を含む。ポリスチレン微小球(45μm及び20μm)は、上記緩衝液に混合されて、上記OET装置内に挟み込まれる。
【0136】
図12は、このOETの実物説明のための光学構成の実施形態100を例証として示す。被測定粒子の観察は、好ましくは、顕微鏡イメージングシステム120、例えば、Nikon TE2000U 倒立顕微鏡を用いて実行する。上記顕微鏡の観察ポートに取付けられたCCDカメラは、これらの実演及びテストのイメージ及びビデオを記録した。DEPに必要な電場を生成するために、100kHzで、約10VPPのAC電圧(すなわち、Agilent(登録商標)33120A)を、上記OET装置の上記上部ITO面及び底部光伝導性面に亘って印加した。
【0137】
図13A、図13Bは、45μmのポリスチレン球のアレイ構造への自己組織化を示す。図13Aに示す初期の格子照明の後、任意に配列された粒子は、負のDEPによって暗領域へ移動する。5秒後、全ての粒子は、図13Bに示すように、上記アレイセル内に収容される。
【0138】
任意に配置された45kHzのポリスチレン球のアレイへの自己組織化(図13A、図13B)は、例えば、PowerPointで描かれた、上記OET装置上に投影される、直交状の水平及び垂直ラインからなる単純な格子状パターンを方向付けることによって実証される。上記パターンは、光誘起性DEPを活性化させて、負のDEP力により、上記照明された領域から粒子を反発させる。このメカニズムは、上記格子状パターンが照明されると、上記粒子の自己組織化を引き起こし、粒子は、照明されていないセル内に押し込められる。設定期間後、上記粒子は、セルからなるアレイ内に捕捉される。
【0139】
粒径に対する大きなトラップにより、上記初期の自己組織化は、図13Bに示すように、1アレイセル当たり1粒子より多くをもたらすことができる。このアレイにおいて、最大のセルは、80μm×100μmである。どんなときにも1つの粒子のみが、上記トラップのポテンシャルウェルに嵌ることが出来るように、単一のアレイセルトラップの寸法を最適化することにより、1アレイセル当たり単一粒子を有する自己組織化アレイを形成することが可能である。
【0140】
図14A、図14Bは、上記アレイ内での単一粒子操作の実施例を示す。上記アレイの下方左側の粒子は、図14Aにおけるセルを結集させ、上記セルを再分割し、上記粒子を図14Bに示す隣接するアレイ位置に移動させることにより、その配列を変化させられる。
【0141】
また、自己組織化したアレイ内の一部の粒子は、上記アレイがイメージ面の周囲に移動したときに、逃れることができることが分かった。この現象は、複数の粒子を含むアレイセルの場合に起きる。この出来事は、図13Bの自己組織化したアレイの後の操作と共に、本発明者等が、図14Aに示すような1セル当たり単一粒子のアレイを得ることを可能にした。本発明者等は、単一粒子の結果として生じるアレイを、約25μm/秒で上記イメージ面に亘って移動させることができたことに注意すべきである。
【0142】
粒子は、図14A、図14Bに示すように、隣接するセル間で個々に移動することができる。上記隣接するセルは、まず、隔壁を取り除いて、上記セルを再分離することによって結合される。上記トラップ壁の全ての動きは、オペレータによってリアルタイムに制御される。この技術の速度に関して改良するために、移動光壁を、セル間の粒子の輸送を容易にするのに用いることができる。このことは、隣接するセル間の移送を繰り返すことにより、単一の粒子を、上記アレイのどのセルにも移送できるようにする。
【0143】
図15A〜図15Dは、アレイ列を流して、不要な粒子を上記アレイから取り除く実施例を示す。まず、流すべき上記列内のセルの壁は、図15Aの上部の列に示すように取り除かれる。上記粒子は、図15Bに示すように、もはや横方向には境界はない。そして、オペレータが制御する光のバーは、図15C及び図15Dに示すように、上記粒子を上記アレイの外部に押し出すのに用いられる。
【0144】
上記アレイ内で上記粒子を操作するための上記パターンは、光照明により動的に生成されるため、単純なソフトウェアプログラミングによって、幅広い操作を実行することができる。例えば、上記アレイの単一の列内の粒子を流すために、発明者等は、上記列の隔壁を取り除き、移動壁を用いて上記粒子を一掃する(図15A〜図15D)。
【0145】
自己組織化作用に加えて、上記アレイは、複数の、単一粒子トラップから形成することができる。各任意に位置する粒子は、まず、正方形トラップ内に収容されている。このことは、PowerPointで、各粒子の周りに矩形を描くことによって行われる。その結果、上記複数のトラップは、個別に取扱い可能なセルからなるアレイを形成するように配置することができる。
【0146】
図16は、複数の、単一粒子正方形トラップから形成された、単一粒子のアレイの実施例を示す。各粒子は、個別に取扱い可能である。20個の粒子のこのアレイを形成するのに必要な時間は、3分であった。この方法を用いると、発明者等は、図16に示すような、4×5アレイの単一粒子トラップを形成することができる。この操作は、手動で行ったが、OETと視覚システムとを組合わせることにより、場合によっては自動化することができる。このようなアレイの生物学的用途は、単一粒子の作用及び相互作用に関する研究を含む。上記アレイの各セルは、独立した単一の粒子トラップであるため、上記アレイは、動的に再配列する能力を有する。
【0147】
図17A〜図17Dは、45μm及び20μmの両方の粒子を含むアレイの動的再配列の実施例を示す。1つのアレイは、個々のセルを所望の構成に移動させることによって再配列される。上記実施形態の場合のトータルの再配列時間は、3分であった。上記球体は、図17A〜図17Dに示すイメージにおいて、オペレータの制御下で再組織化され、これは、各粒子トラップの取扱い性及び上記OETパターンの動的性質を実証する。
【0148】
負のDEPに対する45μmの球体の動きは、約35μm/秒の最大速度をもたらす。これは、ストークスの法則に基づいて、15pNの概算力に相当する。20粒子アレイの最大速度は、約25μm/秒に制限される。従って、各個別のアレイセルの最小保持力は、10pNである。この力は、恐らくアレイ領域全体に関するイメージの鮮明さのわずかな不均一性により、45μmの単一の粒子が受ける力よりも小さい。より多く焦点がぼけている領域は、それほど電場勾配を有しておらず、それに応じたより低いDEP力を有する。従って、この10pNの力は、全てのアレイセルの最小トラッピング力を反映する。
【0149】
12W/cm2の光パワー密度を用いた、これらの実験で実現された力は、632nmのレーザ光源を用いた発明者等の初期の結果とほぼ一致する。発明者等の初期のデータは、15pNの力を実現するのに必要な光パワー密度が6.6W/cm2であることを示している。この予測したパワー密度要件と発明者等の実験上の発見との間の違いは、発明者等の今の実験に必要な追加的な光学系による損失に起因する可能性がある。
【0150】
これらの結果は、他の微小粒子操作技術と有利に匹敵する。従来の誘電泳動は、静止電極パターンを用い、それに伴って再構成可能ではない。また、発明者等のデバイスは、フォトリソグラフィック工程が必要ないため、製造するのにコストがそれ程かからない。また、取扱い可能なDEPアレイは、CMOS技術を用いて実証されているが、それらのデバイスは、製造するのにコストがかかり、また、最小電極サイズは、所要のCMOS回路によって制限される。従来のDEP及び光ピンセットは共に、直径数ナノメートルの粒子を操作することが可能である。OETの上記仮想電極の最小サイズは、上記a−Siの115nmの両極性拡散距離によって制限される。上記OETは、光ピンセットの場合の20μm×20μmの領域よりもかなり大きい、大きな領域(すなわち、約1×1mm)に対して作動することができる。
【0151】
ホログラフィックピンセットは、複数のトラップを生成することができるが、DMDを用いる直接イメージングは、より多用途である。直接イメージングは、高コントラスト比を有するどのような任意のパターンも生成することができる。上記所望のパターンを生成するのに、計算は必要ない。さらに、OETは、生体細胞等の透明な誘電性粒子に対する反発力を引き起こすことができ、また、光ピンセットには不可能なセルケージを形成することができる。一方、光ピンセットのトラップは3次元であるのに対して、発明者等のトラップパターンは、2次元に限定される。本発明の利用は、上記緩衝液の伝導性がDEP現象において重要な役割を果たすため、一般に、緩衝液の選択において、より多くの選択性を必要とする。
【0152】
光電子ピンセットを用いた、45μmのポリスチレン粒子のアレイへの自己組織化、および複数の、単一粒子トラップからのアレイの形成を、本発明によって実証してきた。個々のアレイセルを取扱う能力を示す、上記アレイ内での単一粒子の動きも実証した。45μmの単一のポリスチレン球の移動は、35μm/秒(15pNの力)であると測定された。20個の粒子アレイの移動は、25μm/秒(10pNの力)で実行された。このような粒子操作技術は、生体細胞及び微小粒子を用いた実験に対して多くの用途を有する。
5.微細粒子のためのマイクロビジョンを作動させた自動光学マニピュレータ
【0153】
本発明の実施形態は、マイクロビジョンをベースとするパターン認識と、微細粒子を処理する光電子ピンセット(OET)とを一体化した自動光学マニピュレータを含む。このシステムは、ランダムに分散した粒子の位置及びサイズを自動的に認識し、選択された粒子を捕捉して輸送するための直接イメージパターンを生成して、所定のパターンを形成する。上記OETとプログラム可能なデジタルマイクロミラーデバイスディスプレイ(DMD)とを一体化することにより、発明者等は、1.3mm×1mmの有効領域上に、80万画素の仮想電極を生成することができる。各仮想電極は、多数の微細粒子の並行操作に対して、個別に制御可能である。この自動マイクロビジョン分析技術と強力な光学マニピュレータとを結合することにより、このシステムは、機能性を著しく向上させ、かつ微小粒子の操作のための処理時間を低減する。
【0154】
微細粒子を操作するためのツールは、細胞生物学及びコロイド科学の分野において重要である。光ピンセット及び誘電泳動は、微小粒子を操作するための、最も幅広く用いられているメカニズムのうちの2つである。光ピンセットは、直接光力を用いて、微小粒子の動きを偏向させる。光ピンセットは、非侵襲性であり、高い位置決め精度を有する。ホログラフィック光ピンセットの使用は、多数の粒子を操作することを可能にする利点をさらに伸ばす。しかし、これらの技術は、非常に高い光パワーレベルを必要とし、高い開口数(N.A.)のレンズを用いた緻密なフォーカシングの必要性により、限定された作業領域(<100μm×100μm)をもたらす。これらの要因は、広域的な並行操作用途における光ピンセットのこれらの構成の使用を限定する。
【0155】
対照的に、誘電泳動(DEP)は、粒子を不均一な電場にさらすことにより、粒子の動きを制御する。この技術は、高スループット及び大きな作業領域をもたらすが、所定の機能のための固定した電極パターンを要する。一体化された駆動回路を有する2次元電極からなるプログラム可能なDEPケージアレイは、CMOS(相補型金属酸化膜半導体)チップ上で実証されている。しかし、その分解能は、上記電極のピッチ及び上記単位セルの駆動回路によって制限され、また、そのコストは、使い捨てデバイスとしてのその使用を妨げる可能性がある。
【0156】
図18A、図18Bは、光学操作システムの実施形態の態様を示す。図18Aにおいては、マイクロビジョンをベースとする自動光学操作システムの実施形態130の概略図が示されている。図18Bには、上記OET装置の構造が示されている。
【0157】
本発明によれば、新規な光電子ピンセット(OET)は、光ビームを用いて、光伝導性面上でDEP力を扱うように開発されている。OETは、仮想電極パターンを光学的に形成できるようにする。上記電極サイズは、光スポットサイズにより、上記対物レンズの回折限界まで連続的に変化させることができる。上記光伝導体の光電子ゲインのため、所要の光パワー密度は、光ピンセットの所要光パワーよりも5桁低い。このことは、発明者等の方法が、微小粒子を操作するために、インコヒーレント光源を用いたデジタル光投影を用いることを可能にする。本発明は、複数の微小粒子を複数の仮想微小流体チャネル内に閉じ込め、それらを光ピストンによって切り替える“光の壁(light walls)”の使用について記述する。また、仮想DEPケージアレイの双方向操作も、上記光学パターンを手動で変化させることにより、実証されている。
【0158】
本発明のこの態様において、自動光学マニピュレータの使用は、上記OETとマイクロビジョンをベースとする分析システムとを一体化することによって説明される。上記マイクロビジョンシステムは、粒子の位置及びサイズを自動的に認識して、所望のトラッピングパターンを生成し、上記粒子の移動経路を計算する。これは、多数の粒子を並行に捕捉し、輸送し、かつ集合させるというクローズループ制御を可能にする。
【0159】
図18Aのマイクロビジョンをベースとする光学操作システム130は、顕微鏡イメージング手段と、粒子/細胞の特性及び位置を記録するメカニズムとを含むOET装置によって構成されている。
【0160】
粒子または細胞の動きは、光源114から生成されてDMD116から反射された光を対物レンズ112を介してOET90上に投影することにより制御される。上記光学パターンは、イメージ分析及びパターン認識アルゴリズムと組合わせた顕微鏡イメージング手段によって記録された上記粒子または細胞の位置及び特性に応じて生成される。この実施例において、上記イメージは、レンズ132を通してCCDイメージャ134に集められ、上記データは、生成される光のパターンを制御するように処理される。上記顕微鏡イメージまたはイメージストリームは、イメージ分析回路および/またはルーチン136内で分析される。次いで、上記イメージデータは、パターン認識回路および/またはルーチン138を用いて処理される。実際のパターンの認識は、その用途の所望の目的に関して実行され、そこから後のパターンが、パターン生成回路および/またはルーチン140によって生成され、上記パターンは、その後、プログラム可能なDMDデバイス116の動作を制御するように、DMD回路および/またはルーチン142によって変換される。このことは、例えば、様々なイメージング源、顕微鏡イメージング、および上記OET上への後続の光イメージを検出し、分析し、生成する異なる方法を用いて、本発明の教示から逸脱することなく、多くの代替方法で実施することができることを認識すべきである。
【0161】
一例として、この実施形態は、Nikonの倒立顕微鏡132、134を含む。150Wのハロゲンランプ114は、プログラム可能なデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)マイクロディスプレイ116を照明する。上記DMDパターンは、10倍の対物レンズ112を介して上記OET装置上に投影される。OET装置150の構造を図18Bに示す。
【0162】
図18Bは、例えば、ITOガラス及び光電性層24、例えば、上部層および/または底部層の表面の非晶質シリコン等を備える上部面16及び底部面28を備える別の実施例のOET実施形態を示す。粒子14を含む液状媒質12は、それら2つの面の間に挟み込まれている。上記OETには、単一のAC電圧源30によってバイアスがかけられている。光の照明がない場合、上記電圧のほとんどは、そのインピーダンスが液状層12よりもかなり高いため、非晶質シリコン層24に亘って降下する。光照明の下では、非晶質Si24の伝導率は、上記照明が桁違いの大きさで当たる領域内で増加し、電圧降下を上記液状層へシフトする。それにより、この光誘起性仮想電極は、不均一な電場152を生成し、その結果生じるDEP力は、対象となる粒子を駆動する。上記光誘起性DEP力は、印加されるAC信号の周波数によって制御される、正または負とすることができる。負のDEP力は、高電場領域から粒子を反発させ、また、単一粒子ケージに好ましく、上記ケージは、上記粒子の周囲の光の壁によって容易に形成することができる。正のDEPは、複数の粒子を引き付ける傾向がある。発明者等は、自動光学マニピュレータの実験において、負のDEP力を用いた。上記OET装置上のイメージは、上記倒立顕微鏡を介してCCDカメラによって捕捉され、イメージ処理用のコンピュータへ送られる。
【0163】
本発明によるソフトウェアは、リアルタイムビデオフレームを分析して、上記粒子を捕捉して移動させる、対応する光学パターンを生成する。そして、それらのパターンは、上記DMDへ転送され、発明者等のテスト構成は、個々の画素の直接制御を可能にする。上記OET装置上の、投影された光イメージの分解能は、上記ミラーの画素サイズ(13μm)により規定される1.3μmである。上記OET上の有効光学操作領域は、1.3mm×1mmである。上記DMDミラーと上記OET装置とを組合わせることにより、上記シリコン被覆ガラスは、100万画素の光学マニピュレータに変わる。
【0164】
図19A〜図19Dは、ランダムに分散した粒子を自動認識して、所定のパターンに配列させるプロセスを示す。まず、図19Aにあるような、上記粒子のイメージが取込まれて、上記マイクロビジョンシステムによって分析され、上記システムは、図19Bに示すように、全ての粒子の位置及びサイズを識別する。そして、ソフトウェアは、図19Cに示すように、各粒子の周りにリング状トラップを生成する。また、上記ソフトウェアは、上記粒子の軌跡を計算して、図19Dに示すような最終的な位置に到達させる。
【0165】
図20A〜図20Dは、粒子認識システムのためのテストイメージを一例として示す。3つの異なるサイズ、すなわち、10μm、16μm及び20μmを有するポリスチレン粒子は、混合されて、上記液状媒質中にランダムに分散される。図20Bにおいて、上記マイクロビジョンシステムは、各粒子の位置を認識して、各粒子上にリング状マークを投影する。図20Cには、このテストイメージ内の粒子の数対認識された暗画素の数を示すヒストグラムが示されている。図20Dにおいて、最大の粒子は、上記暗画素に対するしきい値を設定することにより、選択的にピックアップされる。
【0166】
粒子認識は、暗画素認識アルゴリズムを用いて、取込んだイメージの各画素を走査することにより実現される。そして、各画素の輝度値及び位置が記録され、計算されて各粒子のサイズ及びその中心位置が判断される。上記粒子の縁部における上記画素の輝度値は、背景の輝度値よりも小さく、その色も暗い。上記背景と上記粒子縁部との間にしきい輝度値を設定することにより、発明者等は、各粒子の縁部画素を認識することができる。各粒子の上記縁部画素のx及びy位置データを平均化すると、その位置を判断することができる。
【0167】
図20Bは、上記マイクロビジョン分析システムによって生成された白色リング状パターンによってマークされた認識された粒子を示す。また、同じアルゴリズムは、上記認識された暗画素の数をカウントすることにより、各粒子の数を判断する。
【0168】
図20Cは、粒子の数と、このイメージ上の各粒子に対して認識された暗画素の数とを示すデータのヒストグラムである。大きな粒子は、小さな粒子よりもより多くの暗画素を有するため、しきい値は、上記ヒストグラムの黒い点線によって示されるように、認識された画素に対して設定することができ、上記システムは、特定のサイズを有する粒子を選択的に記録することができる。
【0169】
図20Dは、180に等しいしきい値を設定することによって選択されている7個の最大ビーズ(20μm)を例証として示す。この認識アルゴリズムは、特に、異なるサイズを有する球状粒子を判断するのに用いられる。異なる色、形状または質感を有する粒子を認識するための他のアルゴリズムを開発することができる。
【0170】
図21A、図21Bは、単一の光学リング状パターンによって誘起された電場分布を例証として示す。図21Aに示す静止状態において、上記粒子は、中心の最小限の上記電場内に捕捉されている。図21Bに示すような移動中、上記粒子は、DEPと粘性力とのバランスの結果として、上記中心から位置ずれする。
【0171】
単一粒子の光学リング状パターントラッピングにより捕捉された粒子は、上記負のDEP法においてOETを作動させることにより、実現される。発明者等は、図21Aに示すように、単一の粒子のみを上記リング内に捕捉できる仮想DEPケージを形成する光学リング状パターンを生成する。
【0172】
静止状態において、上記捕捉した粒子は、最小限の電場強度が生じる上記中心または上記リング状パターンのところに集中される。上記光学リングが動くと、上記捕捉した粒子も同じ方向に動くが、DEP力が上記粒子を上記中心方向へ押すため、上記リングの中心から外れた位置にある。この外れ距離は、上記粒子がどれほど速く動くかに依存する。上記光学リングが素早く動くと、DEP力は、上記粒子を保持するのに十分強くないため、上記粒子は、上記光学リングから抜けることになる。20μmの粒子のこの抜ける速度は、発明者等の現在のシステムにおいて、40μm/秒である。より小さなサイズを有する1つの粒子を捕捉するには、単一の粒子を上記リング内に確実に捉えるのに、より小さな光学リングが必要になるであろう。
【0173】
図22A〜図22Cは、それぞれ、微細粒子のマイクロビジョンをベースとする自動光学操作のマルチフレーム実施例のシーケンスを示す。図22Aには、六角形状に配列されている、ランダムに分散した粒子が示されている。図22Bには、線状に変換されている図22Aの六角形状パターンが示されている。図22Cでは、図22Bの上記線状パターンは、三角形状に変換されている。各ケースにおいて、好ましくない粒子は、走査線によって一掃されている。
【0174】
一旦、上記粒子の位置が認識されると、上記ソフトウェアは、対応するリング状トラップを生成し、各粒子の輸送トレースを計算するように設定される。これらの光学パターンは、イメージファイルとして格納され、粒子を捕捉して輸送するための動的光学パターンを形成するDMD制御ソフトウェアにバッチロードされる。これらのプロセスを図22Aに示す。ランダムに分散した粒子のイメージは、左から右へ垂直方向に走査した。最初の6つの粒子は、上記OETにより、0秒フレームによって識別され、捕捉された。捕捉した粒子は、上記リング状トラップを動かすことによって輸送され、12秒で六角形状形態になった。
【0175】
図22B及び図22Cは、上記粒子を線状及び三角形状に再配列させるビデオシーケンスを示し、欲されない粒子は、走査線パターンによって一掃した。
【0176】
マイクロビジョン分析システムによってフィードバック制御を実行できる自動光学マニピュレータを実例説明してきた。このシステムは、異なるサイズを有する粒子の混合物から、特定のサイズを有する粒子を自動認識し、それらの選択された粒子を捕捉して移動させるための光学操作パターンを生成して、所定のパターンを形成することができる。発明者等のOET装置の大きな光学操作領域(>1mm×1mm)は、多数の微細粒子の並行操作を可能にする。この自動並行光学操作システムは、微細粒子を分類し、パターニングする時間を大幅に低減する。さらなる最適化をした場合、上記システムは、異なる色、形状または質感を有する粒子を分類できることになる。また、より高度化された光学操作機能を実行することもできる。上記自動光学マニピュレータは、生体細胞分析及びコロイド科学分野において、多くの潜在的な用途を有する。
【0177】
6.生きた赤血球及び白血球の操作
光電子ピンセット(OET)は、生物学的研究用途の単一細胞操作のための新しいツールを実現できる。光ピンセットや誘電泳動等の現在の細胞操作技術は、OETによって克服され得る限界を有する。
【0178】
光ピンセットは、マイクロスケール及びナノスケール法での細胞及び微小粒子の操作のために幅広く用いられているツールである。ホログラフィックイメージング技術を光ピンセットと統合することにより、複数の粒子トラップを単一のレーザ源から形成することができる。しかし、光ピンセットは、高価な高出力レーザを必要とし、また、その有効操作領域が限定されている。
【0179】
誘電泳動(DEP)は、上記粒子内の誘起双極子と印加された電場との相互作用による、電場勾配に沿った誘起性の粒子動を説明する。この技術は、細胞及びDNAの捕捉及び細胞分類を含む多くの生物学的実験を実行するのに用いられてきた。従来のDEP装置の限界は、異なる実験のために、上記装置を再構成するという困難さであり、これは、上記装置が、所要の不均一な電場を生成するパターン化された金属製電極に依存しているためである。CMOS技術を用いてDEPトラップを形成することにより、リアルタイムで再構成可能なDEP装置を実現することができる。しかし、これらのCMOSをベースとする装置は、上記回路構成の面積により、限定的な分解能を有する。
【0180】
光電子ピンセットは、光伝導性面上の光パターン仮想電極を介した細胞及び微小粒子の低パワー光学的制御動作を提供する。OETは、光学イメージによって直接的に制御されるため、リアルタイムで再構成するのは容易である。加えて、高分解能の細胞操作が、広い領域で実現される。OETの主な可能性のある用途の一つは、生物学的解析であり、多くの実験を、生細胞を用いて行った。生細胞に関するOETの最初の実証は、Chiou等により、大腸菌に関して行い、低光パワーのOETが、光ダメージを引き起こさずに、生きた単一細胞の操作が可能であることが証明された。本発明のこの態様において、発明者等は、生きた哺乳類細胞のOET操作の説明及び実証を提示する。
【0181】
光ピンセットは、微小粒子またはナノ粒子に関する物理的力に対して直接的に変換される光子のモーメントによって作動する。これは、高度に集束された強烈なレーザビームを必要とする。対照的に、光電子ピンセットは、光学的にパターン化された電場を生成し、上記電場も、粒子に対して誘電泳動力を生成する。光伝導性ゲインにより、所要の光パワーは、典型的な光ピンセットに必要な光パワーの約10万分の一よりも小さい。その結果として、OET動作には、LEDまたはハロゲンランプ等のインコヒーレント光源で充分である。さらに、上記光学パターンは、高度に集束する必要はなく、OETを、光ピンセットのトラップよりも大きな領域(現時点で、1.3mm×1.0mm)で有効にすることができる。
【0182】
図23は、本発明によるOET装置の構造の実施形態170を示す。上記OETは、ITOガラスからなる上方平面電極16と、下方光伝導性層24とからなり、これらの間には、対象の細胞または微小粒子14を含む液状溶液12からなる層が挟み込まれている。この実施形態における上記上方平面電極は、それ自体は、透明ガラススライド上で透明であるITO等の伝導体からなり、一方、上記下方光伝導性層は、好ましくは、プラズマCVD(PECVD)によってITO被覆ガラススライド上に堆積された水素化非晶質シリコン(a−Si:H)で形成されている。光パターン172、174を投影すると、電場プロファイルが変更されて、誘電泳動力が生成される。ACバイアス30は、上記上方電極と上記下方光伝導性層とに亘ってかけられる。
【0183】
上記暗領域において、上記印加されたAC電圧は、主に、高抵抗性(RS)のa−Si:H層に亘って降下し、上記高抵抗性層は、液体12の(RL)よりもかなり高いインピーダンスを有し、上記液状溶液内に低電場をもたらす。しかし、照明された領域において、上記投影された光は、上記a−Si:Hの伝導率を局所的に増加させることにより、仮想電極を形成する。ここで、上記光伝導体は、上記液体よりも低い抵抗性になり、上記仮想電極上の上記液体中に高電場領域を生成する。これにより、不均一な電場が生成され、上記不均一な電場も、細胞を駆動する誘電泳動力を生成する。
【0184】
誘電泳動力は、AC周波数依存性である。従って、印加されたACバイアスの周波数を変化させることにより、上記力を引力から反発力へ調整することができ、逆もまた同様である。OETは、光誘起性DEPを用いるため、上記OET力も、同じように調製可能である。その結果として、OETには2つの作動モード、すなわち、細胞及び微小粒子が、照明された領域に引き付けられる正のOETと、細胞及び微小粒子が、上記照明された領域によって反発される負のOETとがある。
【0185】
図24は、本発明による光電子ピンセットを用いた、ウシ赤血球の操作のために構成された実施形態190を示す。この実証の場合、光源114は、0.8mWのHe−Neレーザ(λ=633nm)で構成した。レーザが上記光源として使用される場合には、上記レーザは、上記対物レンズに直接に、または、ミラーを介して方向付けることができるため、空間光変調器116は必要ない。10倍の対物レンズ112は、レーザビームのサイズを直径約20μmまで縮小するのに用いた。レーザ出力制御または空間変調器を介して光イメージングを制御するように、および関数発生器192からのバイアス信号等の、OET装置170で生成された信号を制御するように結合され、かつ顕微鏡イメージャ88からデータを収集する、パーソナルコンピュータ(PC)102が示されている。準備した細胞溶液は、体積比約1〜10%の濃度で等張液中(8.5%スクロース、0.3%右旋形グルコース)に懸濁する、ウシ血清からの赤血球(RBCs)で構成した。この溶液の約5μLを上記OET装置に導入した。
【0186】
図25A〜図25Dは、図24のOETを用いて得られた血球の集中を示す。強力な正のOET応答は、200kHzで3VPPの印加ACバイアスで観察され、上記赤血球を、図25Aに示すように、レーザスポットの方へ引き付ける。最初に、図25Aにおいて、上記レーザがオンにされるが、電場は印加されていない。次に、ACバイアスが上記OET装置に印加されてOET力が生成され、上記OET力は、図25Bに示すように、上記血球を照明された領域に引き付ける。また、上記細胞が、図25Bに示すように、上記電場ラインに沿って垂直方向に整列することも観察された。上記レーザをオフにすると、集中した細胞は、図25Cに示すように、レーザスポットが集束された領域内にとどまる。印加電圧がオフに切り替えられると、上記集中された赤血球は、ゆっくりと振動し始め、図25Dに示すように、中心領域から移動し、上記赤血球が依然として生きており、かつ生存能力があることを示唆する。
【0187】
インコヒーレント光源及び直接イメージパターニング技術の利用は、OETの柔軟性及び機能性を向上させる。空間光変調器は、上記光伝導性面上に投影される任意のイメージをパターン化して、対応する仮想電極を上記OET装置上に形成することができる。従って、複雑で、再構成可能な操作パターンは、単純なソフトウェアプログラミングによって形成することができる。この有力な技術を、ヒトのBリンパ球の複雑なパターンへの配列で実例説明する。
【0188】
100Wのハロゲンランプを、上記インコヒーレント光源として使用した。上記空間光変調器は、テキサスインスツルメンツ社のデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)で構成した。上記DMDは、個別に取扱い可能なマイクロミラーからなる1024×768のアレイであり、その各々は、13.68μm×13.68μmである。上記DMD上に表示されるイメージは、コンピュータを介して制御される。10倍の対物レンズを、各DMDミラーの分解能を約1.4μmまで高めるのに用いた。準備した細胞溶液は、等張液中に懸濁するヒトの白血球(Bリンパ球)で構成した。この溶液の約5μLを上記OET装置に導入した。
【0189】
図26A及び図26Bは、どのようにしてBリンパ球を任意のパターンに操作することができるかを示す。この実施例において、発明者等は、上記細胞を、(カリフォルニア大学(Univ.of California)の)“U”という文字(図26A)及び“C”という文字(図26B)の形状に結集させるように選択した。100kHzの周波数で14VPPの印加バイアスにおいて、上記白血球は、正のOET作用を呈する。縮小する同心リングパターンは、上記細胞を上記文字イメージの方へ集結させるのに用いる。細胞は、各同心リングに引き付けられる。上記リングが縮小するにつれて、上記細胞は、上記同心リングの中心の方へ輸送され、そこで上記文字イメージが投影される。そして、上記細胞は、上記静止文字パターンによって捕捉されることになる。
【0190】
光電子ピンセットは、単一細胞操作用の有力なツールを実現できる。直接イメージング及びインコヒーレント光源の使用は、従来のDEPよりも多くの柔軟性を備えたOETを実現できる。上記OET技術も、光ピンセットよりもかなり少ない光パワーを用いるが、それでもなお、より大きな有効操作領域を実現できる。細胞、具体的には、赤血球の集合及び操作は、本発明の態様のOET及び方法を用いて実証された。これらの操作機能は、特定の生物学的実験に容易に合わせることができることを認識すべきである。
【0191】
7.光誘起性誘電泳動を用いた新規な光電子ピンセット
光ピンセットは、先に実証されたため、生物学的研究分野における重要なツールになっている。しかし、強度の光エネルギによって引き起こされる潜在的な光ダメージが、その用途を制限している。例えば、100mWの光ピンセットは、回折限界に集束された場合、約1010mW/cm2の光度を有する。そのような強力な光エネルギは、局所加熱または二光子吸収によるダメージをもたらす可能性がある。この光ダメージを低減するために、近赤外線領域の波長を有するレーザを選択して、水中または生体中での吸収を避ける。しかし、最近の研究では、赤外線レーザを用いても、細胞の代謝に影響を及ぼす可能性があることが分かっている。
【0192】
最近では、DC電気バイアスを用いることにより、ポリマービーズを光学的に扱う光誘起性誘電泳動メカニズムが提案されている。荷電粒子は、反対極性の電極に引き付けられる。この明細書において、発明者等は、約1mW〜100mWの光ピンセットによって用いられる光エネルギよりもかなり低い、μWの光エネルギを用いて、電気的に中性の微小粒子の光学的取扱いを可能にするであろう光誘起性誘電泳動メカニズムを提示する。誘電泳動(DEP)とは、印加された電場と誘起された双極子との相互作用から生じる電気的に中性の粒子の動きのことを指す。誘電泳動は、微小粒子、またはサブミクロン粒子及び生体細胞の操作において、幅広く用いられてきた。DEP力の解析式は、次の式で示される。
【数1】
【0193】
上記等式によれば、Eは電場の強さであり、aは粒径であり、εm及びεpは、それぞれ、周りの媒質及び上記粒子の誘電率であり、σm及びσpは、それぞれ、上記媒質及び上記粒子の伝導率であり、ωは、印加された電場の角周波数である。
【0194】
図27A、図27Bは、図27AのOETの実施形態210と、図27Bの光誘起性誘電泳動メカニズムの説明図とを示す。
【0195】
Re[K*(ω)]の項は、上記粒子及び上記媒質の印加されたAC周波数及び分極率により、1〜−1/2の間のどのような値も有することができる。Re[K*(ω)]<0の場合、DEP力の方向が下方電場へ向いている負のDEPと呼ばれる。上記DEP力は、上記印加された電場の2乗の勾配に比例するため、高トラッピング力を実現するには、極めて不均一な電場が好ましい。以下の実験において、光誘起性の負のDEP力について実例説明する。
【0196】
図27Aには、100μmのギャップ間隔により隔てられた2つの面の間に挟み込まれた粒子を含む液状溶液12を有する光電子ピンセットの構造が示されている。上面16は、工業用ITOガラスである。底部面は、3つのパターンレス層、すなわち、2000Å厚のアルミニウム層46、2μm厚の光伝導性(非晶質シリコン)層24及び200Å厚の窒化シリコン層26で被覆されたガラス基板28である。ACバイアス30は、上部(ITO)電極と底部(アルミニウム)電極との間に印加される。暗状態において、上記電圧の大部分は、その高い電気的インピーダンスにより、上記光伝導体に亘って落ち、それにより、上記液体層内に非常に弱い電場を生じる。レーザビーム40が対物レンズ38を介して光伝導性層24上に集束されると、光照明下の箇所における局所的光伝導性は、光生成電子−正孔のペアにより、大幅に増加する。
【0197】
図27Bは、局所的にターンオンされ、極めて不均一な電場を液体層12内に生成する、光により規定された微小電極を示す。レーザスポットは、上記液体層内に、光により規定された電極と、極めて不均一な電場とを形成する。上記液体中の粒子は上記不均一な電場によって分極され、負のDEP力により、上記照明された箇所から押し出される。
【0198】
光は、上記粒子を直接捕捉するのにではなく、上記光伝導性層と上記液体層との間のAC電圧降下を切り替えるのに用いられるため、所要の光パワーは、従来の光ピンセットの所要の光パワーよりも桁違いに低い。
【0199】
図28は、粒子速度と光パワーとの関係を伴う、図27AのOETの場合の実験結果を示す。上記実験においては、0.24mmのビーム幅及び632nmの波長を有する800μWのレーザを上記光源として用いる。上記レーザビームは、好ましくは、1組の直角に走査する検流計ミラーによって導かれ、凸レンズ及び40倍の対物レンズの組合せを介して送られる。上記光伝導性層上の光スポットサイズは、約17μmである。NDフィルタは、入射光エネルギを制御するのに用いる。100kHzのACバイアスは、25μmのラテックス粒子を駆動するために、上記上部電極と底部電極との間に印加される。粒子速度を測定するために、上記走査ミラーは、一定速度で走査して上記粒子を押し出すようにプログラミングされる。上記粒子は、充分高い走査速度で、もはや上記光ビームを保持することができなくなるまで上記光ビームによって押される。上記粒子が、光ビームを走査することに対応する最大速度は、様々な光パワー及びACバイアス電圧に対して測定される。1μWの光のような低いパワーを有する光ビームは、10VのACバイアスで4.5μm/秒の速度で上記粒子を輸送するのに充分である。ここで観測された最大速度は、397μm/秒であり、これは、ストークスの法則によって推定される187pNの力に相当する。
【0200】
図29A及び図29Bは、上記レーザビームが、円形パターンで走査するようにプログラミングされている、複数粒子の集中化の実施例を示す。4つの粒子が、上記縮小する円形パターンの中心へ集中化され、または押し込まれる。
【0201】
中性微小粒子を輸送することに良好に適用される、本発明のこの態様による新規な光電子ピンセットについて実例説明する。おおよその所要の光パワー(約1μW〜100μW)は、光ピンセットの所要の光パワーよりも1〜2桁小さい。397μm/秒の粒子輸送速度及び187pNのトラッピング力は、100μWの光パワー及び10VのACバイアスを用いて、25μmのラテックス粒子について測定する。
【0202】
8.動的電場における光学的分類メカニズム
光電子ピンセット(OET)は、本明細書において、直接光イメージを介した、細胞及び微小粒子操作のための有力なツールとして提示してきた。上記OET面上に生成された光学パターン電場は、単一または複数の細胞を並行に捕捉しかつ輸送するように構成することができる。このような動的再構成可能な電場は、たいていの微小流体ソータに見られるような、流体フローを導入するためのポンプの必要性を伴うことなく、粒子を分類する駆動力をもたらす。複雑な微小流体コンポーネントの製造及び集積化の必要性は完全に排除され、細胞または粒子の操作の用途における多くの柔軟性が加わる。本発明において、OETをベースとする分類メカニズムは、動的移動光ビームを用いて実証される。上記OET面上の粒子は、単に、光ビームを上記OET面に亘って走査することにより、分類することができる。分類された粒子は、当業界においてすでに実証されている別の動的光学パターンを用いて、別の領域へ輸送することができる。本発明の以下の部分では、OETをベースとする光学的分類の基本的なメカニズムに焦点を当てる。
【0203】
図30A〜図30Cは、本発明によるOETによって誘起された動的電場を示す。図30Aには、異なるサイズの粒子14、14’、14”が、上部ITOガラス16と底部OET光電性面24との間に挟み込まれているOET装置の概略図が示されている。図30B、図30Cにおいて、ランダムに分散した粒子は、線状のレーザビームがOET面を走査したとき、分類される。
【0204】
光電子ピンセットは、光学パターンが、光伝導性の薄膜構成要素上に極めて不均一な電場を誘起することができる新規なメカニズムである。上記不均一な電場の近傍の粒子は、上記電場と、上記粒子の誘起された電気的双極子との間の相互作用から生じる正味の力を受ける。この力は、誘電泳動(DEP)力と呼ばれ、次の関係で表すことができる。
【0205】
【数2】
【0206】
上記の等式によれば、Eは、電場の強さであり、rは粒径であり、εm及びεpは、それぞれ、周りの媒質及び上記粒子の誘電率であり、σm及びσpは、それぞれ、上記媒質及び上記粒子の伝導率であり、ωは、印加された電場の角周波数であり、K*(ω)は、Clausius−Mossoti(CM)係数であり、1〜−0.5の値を有し、上記粒子の分極率を表す。
【0207】
この力は、上記粒子のサイズa3及び電場の不均一性(∇E2)に非常に敏感である。粒子が媒質よりも分極性が低い場合、CM係数の実数部は負であり、上記粒子は、高電場領域から押し出されることになる。線状レーザビームが上記OET面を走査すると、同じ速度で動く電場パターンが生成される。この光誘起性電場は、上記OET装置内の粒子を押す。動いている光ビームと上記粒子との相対距離は、上記DEP力と粘性力とのバランスによって決まる。ストークスの法則を用いて、移動粒子に対する粘性力を推定すると、発明者等は、上記粒子サイズと、電場の不均一性との間に、次の関係を得た。
【0208】
【数3】
【0209】
上記の等式において、rは粒径であり、Cは、光走査速度ν、CM係数の実数部、および周囲の媒質の粘性η及び誘電率εmによって決まる定数である。∇E2の項は、上記粒子と極大電場との相対距離の関数であるため、異なるサイズを有する粒子は、走査レーザビームの中心に対して、異なる決定論的相対距離を有することになる。この原理に基づいて、異なるサイズを有する粒子は、上記レーザビームが上記OET面を走査したときに分類される。
【0210】
図31は、微細粒子の光学分類のための実験用構成の実施形態230を示す。635nmの波長を有する単一モードファイバピグテールレーザダイオード114は、ファイバコリメータ232を介して結合されており、3mmのビームスポットサイズ及び120μWの光パワーを生じる。2D走査ミラー236及びダイクロイックミラー238及び10倍の対物レンズ38を介して方向付けられる円柱レンズ234は、円形ガウスビームを線状パターンに整形して、それを上記OET面上に集束させるのに用いられる。走査ミラーは、上記レーザビームを案内するようにプログラミングされる。OET装置210は、ステージ240上に示されており、上記OET内に、リング粒子(または細胞)の位置及び特性を記録するための顕微鏡イメージング手段を用いて構成されている。
【0211】
図32A〜図32Dは、レーザビーム(波長=635nmで120μWの赤色ダイオードレーザ)が、直径10μm及び20μmのポリスチレンビーズがランダムに分散している、図31のOET面に亘って走査したときの結果を示す。図32Aにおいて、上記粒子は、上記面上にランダムに分布している。図32Bにおいて、上記光学ビームは、10μmのビーズの領域に亘って走査し、上記ビーズを線状パターンに整列させる。図32Cにおいて、上記10μm及び20μmのビーズは、整列されて、上記光学ビームの中心に対して、異なる相対距離で動いている。図32Dにおいて、上記光学ビームは、粒子のそれら2つの群の間の間隔に割って入り、上記粒子をさらに離すようにプログラミングされる。
【0212】
上記線状レーザビームが、粒子の分類に亘って走査した後、上記10μm及び20μmのビーズは、上記ビームの中心に対して、異なる距離で整列することになる。上記レーザビームは、粒子のそれら2つの群の間の間隔に割って入り、上記粒子をさらに離すようにプログラミングされる。この分類プロセスは、25秒で終了する。
【0213】
図33A、図33Bは、6μm/秒の走査速度の下での、異なるサイズの粒子、具体的には、それぞれ、15μm、20μm及び40μmの相対距離を有する5μm、10μm及び20μmの粒子の分類を示す。上記光学ビームは、一定速度で左から右へ走査する。これら3種類のサイズの粒子は、上記光ビームと同じ速度で動いている。それらの決定論的相対距離は、この動きの間、一定のままである。上記相対距離は、走査速度依存性である。高走査速度で、上記粒子は、大きな粘性力を受ける。この力をバランスさせるために、上記粒子は、移動して上記走査ビームに近づき、そこには、より強力な電場勾配が存在する。
【0214】
図34は、走査速度の関数としての、走査速度と、微小粒子の走査ビーム中心からの相対距離との関係を示す。理論計算を実線で示し、実験データを点線で示す。
【0215】
20μmの粒子の場合、上記走査ビーム中心に対する相対距離は、走査速度が20μm/秒から100μm/秒へ増加した場合、50μmから25μmに減少する。この傾向は、5μm及び10μmの粒子の場合のデータにも反映される。従って、低走査速度は、異なるサイズの粒子間に、より大きな空間的隔たりをもたらす。17μm/秒の走査速度において、5μmの粒子と10μmの粒子の間の間隔は7μmであり、10μmの粒子と、20μmの粒子の間の間隔は28μmである。5μmの粒子の場合の最大走査速度は、約70μm/秒である。上記走査速度が、この限界を超えて増加すると、上記粒子は、上記電場の垂直方向の不均一性によって浮揚することになり、上記粒子を上記走査ビームの横方向の“押す力”から逃れさせる。この逃れる速度は、大きな粒子の場合、すなわち、10μmのビーズの場合により高く、90μm/秒である。
【0216】
本発明は、光電子ピンセット(OET)に基づいた新規な光学分類メカニズムを提供する。光誘起性動的電場は、単に、光ビームを上記OET面に走査することにより、5μm、10μm及び20μmの直径を有する粒子を分類する。この技術は、液体フローのための駆動力としての特別なポンプの必要性を完全になくし、微小流体システムの製造及び集積化プロセスを大幅に単純化する。上記ビーズから上記ビーム中心までの決定論的相対距離は、サイズ依存性である。直径5μm及び10μmのビーズに対して行った粒子分類は、分離されたグループ間に、7μmの間隔を生じた。分類された直径10μm及び20μmの粒子間の間隔は、28μmであった。
【0217】
9.オール光・ラブ・オン・チップ・システムへの発展
微小流体システムの小型化及び集積化は、コストを低減し、多くの分析的な生物学的プロセス及び化学的プロセスの速度を向上させる。複数の微小流体機能が、上記生物学的分析を行う“ラボチップ”と呼ばれる1つのチップに集積化される。これらの機能は、微小流体の供給混合、細胞のトラッピング、集結化及び分類を含む。従来のラボチップシステムは、微小ポンプ、バルブ及び流体流路からなる。
【0218】
流体回路及びそれらの機能は、通常、製作されている特定の構造により固定されている。従来の“固定された”微小流体システムとは対照的に、本明細書で教示した光学操作アプローチは、いくつかの利点を提供する。本発明は、柔軟性があり、容易に再構成可能である。光ピンセットは、細胞及び他の生物学的粒子を捕捉するのに幅広く用いられてきており、最近では、複数粒子のトラッピング、光学分類、粒子回転、3次元操作及び微小流体の光学ポンピングを行うために、ホログラフィック光ピンセットが提案されている。それらの微小流体機能は、光入力に応じて、プログラム可能でかつ再構成可能であるオール光・ラブ・オン・マイクロスコープシステムを可能にする。しかし、光ピンセットをベースとするシステムは、次の限界に悩まされる。第一に、光学力を用いる微小流体の制御は、エネルギー効率が良くない。光学力は、まず、コロイド粒子またはビーズの運動エネルギに移される。動いているビーズは、粘性力を介して流体フローを誘起する。光トラップからの最大力は、約100pNであり、これは、大きな圧力低下により、液体を微小流路を介して有効に駆動するのに十分な大きさではない。第二に、光ピンセットに必要な上記光学力は、非常に高い。上記光ピンセットは、上記粒子の動きを捉え、またはそらすための光学的勾配力を生成する厳密に集束されたレーザビームを必要とする。
【0219】
典型的には、単一のトラップは、1mWの光パワーを必要とし、複数のトラップは、さらに高いパワーを要する。ここで、光パワーを用いる代わりに、本発明は、光電子ウェッティング(OEW)と呼ばれる、微小流体を制御するための光誘起性電子ウェッティングメカニズム、および光電子ピンセット(OET)と呼ばれる、微細粒子を操作するための光誘起性誘電泳動メカニズムを利用する。
【0220】
図35は、異なる光学的操作方法のエネルギ移動経路の比較による概念を示し、光エネルギは、まず、電気的エネルギに変換され、この電気的エネルギも液体または粒子を、それぞれ電子ウェッティングまたはDEPプロセスを介して駆動する。上記光伝導体の光電子ゲインの結果として、所要の光パワーは、4〜5桁低減される。光ピンセットは、エネルギを光学的領域から直接、機械的領域へ移すが、光電子ウェッティング(OEW)及び光電子ピンセット(OET)は、まず、光エネルギを電気的領域へ移し、その後、操作のために上記電気的力をトリガする。
【0221】
表面張力は、マイクロスケールで液体を制御するための主要な力である。上記表面張力を制御するためのいくつかのメカニズムが提案されている。電子ウェッティングは、その速い応答性及び低パワー消費のため、魅力的である。電子ウェッティングは、静電エネルギを用いて、液体と固体の界面における表面エネルギを調節することにより、固体面上の液滴の接触角を変える。光電子ウェッティングは、光ビームを用いて、上記界面に蓄積された静電エネルギの量、およびそれに伴って上記接触角を制御する。
【0222】
図36A、図36Bは、水滴252が、透明導電性ガラス20、光伝導性層24及び薄い絶縁層16で被覆されたガラス基板上に置かれている、光電子ウェッティングの実施形態250を示す。図36Aは、接触角254が、バイアスがない状態の初期の角度と同じ状態で、光の照明がない液滴を示す。図36Bにおいては、照明が光源212によって生成され、液滴252’の接触角が、その電子ウェッティング効果により小さくなっている。
【0223】
ACの電気的バイアスは、上記底部電極と上記液滴との間に印加される。上記光伝導体は、暗い状態で、高い電気的抵抗を備えて構成されており、上記AC信号周期よりもかなり長いRC充電時間を生じる。極少量の電圧が、上記液滴と上記光伝導体との間のキャパシタに亘って降下する。暗い状態のときの接触角は、図36Aに示すように、バイアスがない初期の角度と同じである。光が上記光伝導体層を照らすと、電子−正孔のペアが生成され、その光伝導性が数桁増加する。上記RC時間は、AC信号の周期よりもかなり小さくなり、図36Bに示すように、十分に充電されたキャパシタを生じさせる。上記キャパシタに蓄積された余分な電荷は、上記固体・液体の界面の表面エネルギ及び上記液滴の接触角を変化させる。上記接触角と、上記絶縁体の電圧との関係は、次の式で表すことができる。
【数4】
【0224】
上記式において、値θ0は、初期の接触角であり、εは、上記絶縁体の誘電率であり、dは、上記絶縁体の厚さであり、γLVは、液体/気体界面の表面張力であり、Vは、印加した信号の2乗平均平方根電圧である。
【0225】
図37A〜図37Cは、電子ウェッティングにより誘起された動きを示す。図37Aには、COEW面上の光ビームにより、液滴の運動を誘起する実施形態の概略が示されている。図37Bには、図37AのCOEW装置の等価回路が示されている。図37Cには、上記COEW面の層状構造が示されている。
【0226】
OEWは、上記絶縁体の電圧及び接触角の光学的調節を可能にする。発明者等のこれまでの結果は、65mW/cm2の強度を有するハロゲンランプを用いることが、上記液滴の接触角を105°から75°へ低下させ、疎水性面を親水性に変えることを実証した。発明者等は、OEWを用いて、光ビームが、液体容器から1つの液滴を取り出して、上記液滴を2次元面上に自由に輸送できるようにする、液滴ベースの微小流体デバイスを実証した。液滴の分離は、反対方向に動く2つの光ビームを用いて実現される。上記液滴(容積100nL)は、70mm/秒の速度まで上記走査光ビームに追従し、微小流体の光学操作のためのOEWの有効性を実証する。最小液滴サイズは、上記OEW電極の面積によって制限される(100μm×100μmの電極面積の場合、>1nL)。
【0227】
サブナノリットルの液滴を操作することに対して、本発明は、光ビームが、2次元面上で連続的に扱うことができる仮想電極を形成することができるようになっている連続OEW(continuous COEW)装置を含む。
【0228】
図37Aは、上記COEW装置の構造を示す。上記装置は、2つの面、すなわち、上部ITOガラスと、底部光電性COEW面とからなる。上記上部ITOガラスは、0.2μm厚の二酸化シリコン層と、20nm厚のテフロン層とで被覆されており、上記面を疎水性にしており、また、底部COEW面は、図37Cに示すように、200nm厚のITO、10nm厚のアルミニウム、5μm厚の無ドープ非晶質シリコン、200nm厚の二酸化シリコン及び20nm厚のテフロン層を含む多数の特徴のない層からなる。液滴は、フォトレジストスペーサによって規定された10μmのギャップによって、これら2つの面の間に挟み込まれている。疎水性テフロン被覆により、液体/固体界面の初期の接触角は、90°よりも大きい。光ビームが、上記液滴の一方の縁部を照明すると、この縁部の真下の光伝導性層に仮想電極が形成される。光電子ウェッティング効果が局所的に作用して、上記照明箇所における液滴の接触角が小さくなる。
【0229】
このプロセスは、図37Bに示すような等価回路モデルによって理解することができる。上記非晶質シリコン層は、酸化シリコン層の厚さの10倍の厚さであるため、暗状態において、上記酸化シリコン層よりも小さなキャパシタンス(より高いACインピーダンス)を有する。非常に少量の電圧が、上記酸化シリコン層に亘って降下する。光照明の下で、非晶質シリコンの伝導率は、数桁増加し、それにより、電気的インピーダンスは、上記酸化物層の値よりもかなり低い値まで低下する。上記接触角は、局所的に小さくなり、上記液滴に対して不平衡の圧力が生じる。正味の毛細管力は、上記液滴を押して、上記レーザビームの方へ移動させる。上記光ビームを走査することにより、上記液滴は、上記COEW面上で連続的に扱われる。光でパターン化された仮想電極の分解能を制限する可能性がある2つの要因があり、1つは光回折限界であり、もう1つは両極性正孔拡散距離である。非晶質シリコンの場合、上記両極性拡散距離は、115nmよりも小さく、光回折によってのみ制限される電極分解能をもたらす。
【0230】
上記COEW装置上で移動する100pLの液滴の動きは、顕微鏡を介してビデオカメラにより捉えられる。この動きは、632nmの波長を有する100μWのHeNeレーザによって方向付けられる。10倍の対物レンズを用いた、集束されたスポットサイズは、20μmである。上記レーザビームは、1組の直交する検流計走査ミラー(Cambridge社)によって導かれる。10kHzの周波数を有する100VのACバイアスは、上記上部ITOガラス及び底部COEW面を介して印加される。
【0231】
図38A〜図38Dは、約100μmの半径を有する円形パターン状に動く液滴を示す一連のビデオスナップ写真を示す。上記液滴の速度は、785μm/秒である。これらのイメージは、COEWにより輸送される微小液滴を示す。上記液滴は、100pLの容積を有し、走査レーザビームによって方向付けられた円形パターン状に動く。上記液滴の速度は、785μm/秒である。
【0232】
光照明により形成された上記仮想電極は、誘電泳動(DEP)力によって液体中の微細粒子を動かすのにも用いることができる。上記DEP力は、上記印加された電場と、中性粒子内の誘導電気双極子との相互作用によって生成される。本発明の態様は、このような光誘起性DEPを利用して、微細粒子を低パワー光ビームを用いて移動させる光電子ピンセット(OET)装置を実現できる。上記DEP力は、マイクロスケールまたはナノスケールの粒子を操作するのに幅広く用いられている。上記DEP力の解析式は次の等式で示される。
【数5】
【0233】
上記の等式において、Eは電場の強さであり、aは粒径であり、εm及びεpは、それぞれ、周りの媒質及び上記粒子の誘電率であり、σm及びσpは、それぞれ、上記媒質及び上記粒子の伝導率であり、ωは、印加された電場の角周波数である。K*(ω)の値は、Clausius−Mossoti係数であり、周波数依存性の複素数である。K*(ω)の実数部、すなわちRe[K*(ω)]は、上記媒質及び粒子の分極率、および上記印加されたAC電気バイアスの周波数により、1〜−0.5の値を有する。Re[K*(ω)]>0の場合、上記粒子は、より高い電場領域に向かって移動することになり、これは、正のDEPと呼ばれる。一方、Re[K*(ω)]<0の場合には、上記粒子は、高電場領域から離れて移動し、これは、負のDEPと呼ばれる。
【0234】
図39は、細胞または粒子を含む液体が、ITOガラスと光伝導性面との間に挟み込まれているOET構造の実施形態を示す。光誘起性DEPを実現するために、発明者等は、上記OEW装置と非常に似ているが、図に示すように、上記ITOまたは上記光伝導性面のいずれかの上にテフロン及び二酸化シリコン層を有しないデバイス構造を用いる。1μm厚の非晶質シリコンは、電気分解を防ぐために、20nmの窒化シリコン層で被覆されている。上記OEW装置の場合と同様に、上記非晶質シリコン層は、暗状態において、高抵抗性を有し、上記液体層に亘って小さな電圧降下をもたらす。光照明の下で、上記仮想電極は、上記液体層中に、不均一な電場を生成し、上記粒子の近傍にDEP力を生じる。上記粒子は、クラウジウス・モソッティ(Clausius−Mossoti)係数の符号により、上記光ビームによって、引き付けまたは反発させることができる。上記非晶質シリコンの光伝導性ゲインは、OETが非常に低い光パワーで作動することを可能にする。
【0235】
発明者等のこれまでの結果は、633nmの波長を有する1μWのHe−Neレーザが、25μmの粒子を4.5μm/秒で輸送するのに十分であることを示した。構造は同じであるが、上記OETと上記OEWは、次の点で異なる。すなわち、上記OETは、上記光伝導性層と上記液体層との間で電圧を切り替えるが、上記OEWは、上記絶縁層と上記光伝導性層との間で電圧を切り替える。
【0236】
この項において、発明者等は、生体細胞を集め、輸送する、OETの用途を提示する。大腸菌細胞のサイズを収容するために、OET内のギャップ間隔は、15μmまで縮小される。図40Aは、集束レーザビーム及び10Vのバイアス電圧によって生成された17μmの仮想電極の場合の、上記液体層内でのシミュレートした電場分布を示す。上記液体の伝導率は、1mS/mである。上記非晶質シリコンの伝導率は、上記レーザビームの強度分布に追従し、中心において10mS/mのピーク伝導率を有するガウス形状を有すると推定する。3次元電場分布は、FEMLABを用いて計算する。
【0237】
図40A及び図40Bは、光伝導体層の電場特性を示す。図40Aは、上記光伝導体が17μmのスポットサイズを有する集束レーザビームによって照明されたときの、上記液体層内での電場分布を示す。図40Bは、上記光伝導性層の上の3つの異なる高さにおける電場の強度を示す。上記光伝導性面上の4μm、8μm及び12μmにおける電場分布は、図40Bにプロットされている。上記DEP力は、E2の勾配に比例し、上記電場分布は、上記OETが、横方向において、約20μmの半径内に強いDEP力を生成することができることを示している。垂直方向の勾配は、上記粒子を上記光伝導性面の方へ引き付ける。横方向の勾配及び垂直方向の勾配は共に、物理的電極により生成された電場と同様に、上記レーザスポットの縁部近傍で最も強い。
【0238】
図41は、生体細胞を捕捉するための実証構成を示す。上記OET装置は、例えば、光電性面を上に向けた倒立顕微鏡(すなわち、Nikon(登録商標)のTE2000E)上に配置された顕微鏡イメージング手段に結合されている。0.8mWのHe−Neレーザ(波長632nm)は、上記光電子ピンセットを作動させるのに用いられる。入射パワーは、NDフィルタによって制御される。光ビームは、開口数(N.A.)0.5の40倍の対物レンズを介して上記装置に供給され、それにより、17μmの集束したスポットサイズが生成される。細胞の蛍光像は、底部対物レンズを介してCCDカメラによって捉えられる。
【0239】
図42Aは、OETがターンオンされる前の大腸菌細胞の蛍光像である。図42Bは、上記OETが、14秒間、ターンオンされた後の、図42Aと同じイメージである。大腸菌細胞は、上記OETによって上記レーザスポットに“集中される”ことを理解すべきである。
【0240】
上記レーザビームが固定スポット上に集束されると、上記OETは、図42A及び図42Bに示すように、上記トラッピング領域内の細胞を、上記ビームの中心の方へ引き付ける。上記OETは、セル・コンセントレータとして機能する。この実験において、発明者等は、蛍光顕微鏡の下での観察の有利さから、緑色蛍光たんぱく質を発現することができる大腸菌細胞を用いる。上記液体は、1mS/mの伝導率を有する。発明者等は、100kHz、10VPP(ピーク−ピーク電圧)のAC電気バイアスを、上記上部ITO電極と底部ITO電極との間に印加する。上記大腸菌細胞は、これらの条件下で、正のDEPを受ける。有効捕捉距離は、上記焦点から約20μmである。垂直方向の電場勾配により、上記細胞は、上記光電性面の真上に捕捉される。上記レーザビームがターンオフされると、それらの捕捉された大腸菌細胞は、バラバラに泳ぎ去る。低い光強度のため、“オプティキューション”は、可視光波長範囲内の光の場合でも観察されない。
【0241】
発明者等は、このOETを作動させるのに必要な最小光パワーを調べた。細胞の集結化(cell concentrating)は、8μWという低い光パワーの場合に観察される。この光パワー密度は、1mWのレーザを回折限界スポットサイズに集束させた従来の光ピンセットの光パワー密度よりも、ほぼ5桁小さい。集中化された細胞は、上記レーザビームを走査することにより、任意の位置へ運ぶことができる。図43は、単一の走査レーザビームを用いた、複数の大腸菌細胞の輸送を示す。
【0242】
有効トラッピング領域及び捕捉された細胞の速度を研究するために、発明者等は、上記トラッピング動作を記録して、そのビデオ映像を1フレームごとに分析した。記録顕微鏡は、上記捕捉された細胞を捉えるために、上記光伝導体の表面上に集束させた。発明者等は、8μW、120μW、400μW及び800μWの光パワーを有するレーザによって捕捉された細胞の速度を測定した。上記OETトラップは、全てのパワーレベルで機能する。
【0243】
図44は、集束光スポットセルの中心に向かう大腸菌細胞の測定速度対上記トラップの中心からの径方向距離を示す。800μWにおいて、30μmまでの細胞は、上記OETによって引き付けられる。まず、上記細胞は、5μm/秒の比較的低速度で動く。上記速度は、20μm以内にある場合には、鋭角的に上昇し、最終的に、上記焦点から約15μmにおいて、120μm/秒に達する。この輸送速度は、ピーク値の後は、小さくなる。上記細胞は、上記捕捉された細胞により、中心から9μmで停止される。このことは、図40A、図40Bにおけるシミュレートした電場分布と非常に一致する。上部の曲線の最大傾斜(光伝導体の4μm上)は、上記中心から約15μmで生じる。セル速度は、光パワーの関数である。ピーク速度は、8μWで26μm/秒から120μWで90μm/秒まで増加する。120μW以上で、上記ピーク速度は、よりゆっくりと増加し、最終的に、約200μWで飽和する。このことは、次のように説明され、すなわち、上記光パワーが120μWより小さい場合、上記光伝導体は、完全にターンオンされず、例えば、その伝導率は液体よりも小さいが、液体と比較して無視できない。約200μWにおいて、液体の伝導率は、上記電気回路において支配的となり、電場のほとんどは、上記液体層に亘って落ちる。
【0244】
さらに、光パワーの増加は、ピーク電場を変化させない。しかし、上記電場分布は、この飽和効果のため、より“正方形”状になる。ピーク電場が飽和した後、上記捕捉領域は、わずかに増加する。OETに必要な最小光パワーが、上記液体の伝導率に依存することに注目すべきである。
【0245】
発明者等の実験に用いた上記液体の伝導率は、1mS/mである。このときのレーザ出力は、100mS/mまでの伝導率を有する液体中の細胞を引き付けることができる。上記光パワーは、上記光スポットサイズを縮小することにより、さらに低減することができる。このときのパワーレベルは、上記スポットサイズを17μmから1.7μmに減少させることにより、100分の一に低減することができる。
【0246】
本発明の本態様において、発明者等は、光によって、微小液滴及び微小粒子を操作するための、光電子ウェッティング(OEW)及び光電子ピンセット(OET)を提示した。上記OEWは、光誘起性電子ウェッティングを用いて、表面張力、すなわち、マイクロスケールの支配的な力を制御して、微小液滴を動かす。発明者等の結果は、100pLの水滴が、100μWの光パワーを用いて、785μm/秒の速度で輸送されたことを示している。上記OETは、微小粒子を操作するために、光誘起性誘電泳動力を利用する。OETに必要な光パワーは、8μWと低く、その光パワー密度は、光ピンセットよりも5桁小さい。発明者等は、OETを用いて、光ダメージを伴わずに、生きた大腸菌細胞を集中化して輸送した。OETの低パワー要件は、インコヒーレント光源を用いて、微細粒子を捕捉することの可能性を広げる。
【0247】
本発明の装置及び方法を実施するための実施形態を例証としてこれまで説明してきた。特定の実証/実験用の構成は、説明のためだけに記載のこと、および、当業者には明らかなように、本発明を、様々な等価物を用いて、多種多様の方法で実施することができることを認識すべきである。本発明は、パターン化されていない面を用いて実施することができるOETを提供するが、本明細書における教示は、本発明の教示から逸脱することなく、パターン化技術と組合わせてハイブリッド手法を提供することができることを認識すべきである。また、粒子の輸送、時間、及び他の測定特性の特定の値は、この技術から少しずつ集めることのできるおおよその結果を理解する際の助けとなるように記載し、当業者は、多くの場合、その結果は、これらの実証例を上回るより詳細な実施によって、著しく改善することができることは、理解されるであろう。さらに、本発明の態様を、記載した分野で、あるいは、本明細書における教示に基づいて、当業者には明確に理解されるであろう他の分野で実施することができることを理解すべきである。
【0248】
上記の説明は、多くの詳細を含むが、それらは、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではなく、この発明の現時点で好ましい実施形態のうちのいくつかの実例を単に記載したものと解釈すべきである。従って、本発明の範囲が、当業者には明白である可能性のある他の実施形態をもれなく包含すること、および本発明の範囲が、それに応じて、添付請求項以外によって限定されないこと、単数形の構成要素に対する言及は、断りのない限り、“一つ及び一つのみ”を意味することを意図されておらず、“一つ以上”を意味することを意図されていることを理解すべきである。当業者に知られている上述した好ましい実施形態の構成要素に対する全ての構造的、化学的及び機能的等価物は、明確に本明細書に組み込まれており、また、添付請求項により包含されるように意図されている。また、装置または方法は、本発明により解決しようとする一つ一つの問題に対応する必要はなく、また、上記装置または方法が、添付請求項によって包含される必要もない。さらに、本開示における構成要素、コンポーネントまたは方法ステップは、上記構成要素、コンポーネントまたは方法ステップが請求項に明確に記載されているか否かにかかわらず、公衆に呈示されることは、意図されていない。本明細書における請求項要件は、上記要件が“means for”という言いまわしを用いて明確に記載されていない限り、米国特許法第112条第6項の規定の下で解釈すべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0249】
【図1】図1は、本発明の態様による、AC信号でバイアスがかけられた構造層の間に挟み込まれた微細粒子を操作する光電子ピンセット(OET)の斜視図である。
【図2A】図2A〜2Dは、本発明の態様による、アレイに捕捉されている粒子を示す、粒子トラップを用いた粒子操作のイメージである。
【図2B】図2A〜2Dは、本発明の態様による、アレイに捕捉されている粒子を示す、粒子トラップを用いた粒子操作のイメージである。
【図2C】図2A〜2Dは、本発明の態様による、アレイに捕捉されている粒子を示す、粒子トラップを用いた粒子操作のイメージである。
【図2D】図2A〜2Dは、本発明の態様による、アレイに捕捉されている粒子を示す、粒子トラップを用いた粒子操作のイメージである。
【図3A】図3A〜3Dは、本発明の態様による、微粒子を分類するためのソータ、コンベヤ、ジョイント及びウェッジを有する集積型仮想光学マシンのイメージである。
【図3B】図3A〜3Dは、本発明の態様による、微粒子を分類するためのソータ、コンベヤ、ジョイント及びウェッジを有する集積型仮想光学マシンのイメージである。
【図3C】図3A〜3Dは、本発明の態様による、微粒子を分類するためのソータ、コンベヤ、ジョイント及びウェッジを有する集積型仮想光学マシンのイメージである。
【図3D】図3A〜3Dは、本発明の態様による、微粒子を分類するためのソータ、コンベヤ、ジョイント及びウェッジを有する集積型仮想光学マシンのイメージである。
【図4A】図4A〜4Dは、本発明の態様による、OETを用いた、生細胞及び死細胞の光学的分類のイメージである。
【図4B】図4A〜4Dは、本発明の態様による、OETを用いた、生細胞及び死細胞の光学的分類のイメージである。
【図4C】図4A〜4Dは、本発明の態様による、OETを用いた、生細胞及び死細胞の光学的分類のイメージである。
【図4D】図4A〜4Dは、本発明の態様による、OETを用いた、生細胞及び死細胞の光学的分類のイメージである。
【図5】図5は、不均一な電場を液状層内に生成する光により規定された仮想電極の使用を示す、本発明の態様によるOET装置の概略図である。
【図6】図6は、所望の光イメージを生成するプログラム可能な空間光変調器の使用を示す、本発明の態様によるOETをベースとする細胞操作システムのブロック図である。
【図7A】図7Aは、第1の層と、光応答性の第2の層との間の溶液中に保持された粒子を示す、本発明の態様によるOET装置の構造の斜視図である。
【図7B】図7Bは、変調され、かつ方向付けられた光源を収容する、図7AのOET装置を示す、本発明の態様による実験用OETの構成の概略図である。
【図8】図8は、本発明の態様による、単一粒子リングトラップの場合の電場分布の3D図である。
【図9A】図9A〜9Cは、連続して小さくなる領域内に粒子を含む(図9Aの正方形を構成する)2つの角部を有する動的ラインケージの使用を示す、本発明の態様による、粒子操作のイメージである。
【図9B】図9A〜9Cは、連続して小さくなる領域内に粒子を含む(図9Aの正方形を構成する)2つの角部を有する動的ラインケージの使用を示す、本発明の態様による、粒子操作のイメージである。
【図9C】図9A〜9Cは、連続して小さくなる領域内に粒子を含む(図9Aの正方形を構成する)2つの角部を有する動的ラインケージの使用を示す、本発明の態様による、粒子操作のイメージである。
【図9D】図9D〜9Fは、単一粒子のトラッピング及び移動、および選択領域(リング)の外部への粒子の反発を示す、本発明の態様による、粒子トラッピングのイメージである。
【図9E】図9D〜9Fは、単一粒子のトラッピング及び移動、および選択領域(リング)の外部への粒子の反発を示す、本発明の態様による、粒子トラッピングのイメージである。
【図9F】図9D〜9Fは、単一粒子のトラッピング及び移動、および選択領域(リング)の外部への粒子の反発を示す、本発明の態様による、粒子トラッピングのイメージである。
【図10A】図10Aは、45μmのポリスチレン球体を保持することを示す、本発明の態様による単一粒子OETトラップのイメージである。
【図10B】図10Bは、図10AのOETの場合の電場分布のグラフである。
【図11】図11は、OETの上部層と底部層との間に保持された液体バッファ内の粒子を示す、本発明の態様によるOET装置の斜視図である。
【図12】図12は、DMDを用いてOET装置に対して方向付けられた、PCによって制御される光を示す、本発明の態様による実験用OETの構成のブロック図である。
【図13A】図13A〜13Bは、本発明の態様による、微粒子の配列構造への自己組織化のイメージである。
【図13B】図13A〜13Bは、本発明の態様による、微粒子の配列構造への自己組織化のイメージである。
【図14A】図14A〜14Bは、本発明の態様による、OET配列内での単一粒子の操作のイメージである。
【図14B】図14A〜14Bは、本発明の態様による、OET配列内での単一粒子の操作のイメージである。
【図15A】図15A〜15Dは、本発明の態様による、OET配列内に流れる粒子配列のイメージである。
【図15B】図15A〜15Dは、本発明の態様による、OET配列内に流れる粒子配列のイメージである。
【図15C】図15A〜15Dは、本発明の態様による、OET配列内に流れる粒子配列のイメージである。
【図15D】図15A〜15Dは、本発明の態様による、OET配列内に流れる粒子配列のイメージである。
【図16】図16は、本発明の態様による、OET配列内に捕捉された単一粒子の配列のイメージである。
【図17A】図17A〜17Dは、本発明の態様による、異なるサイズの粒子の動的再配列のイメージである。
【図17B】図17A〜17Dは、本発明の態様による、異なるサイズの粒子の動的再配列のイメージである。
【図17C】図17A〜17Dは、本発明の態様による、異なるサイズの粒子の動的再配列のイメージである。
【図17D】図17A〜17Dは、本発明の態様による、異なるサイズの粒子の動的再配列のイメージである。
【図18A】図18Aは、本発明の態様による、マイクロビジョンをベースとする自動光操作システムの概略図である。
【図18B】図18Bは、図18Aのシステムに示されたOET装置の概略図である。
【図19A】図19A〜19Dは、粒子を所望のパターンに配列する、本発明の態様によるステップのイラストである。
【図19B】図19A〜19Dは、粒子を所望のパターンに配列する、本発明の態様によるステップのイラストである。
【図19C】図19A〜19Dは、粒子を所望のパターンに配列する、本発明の態様によるステップのイラストである。
【図19D】図19A〜19Dは、粒子を所望のパターンに配列する、本発明の態様によるステップのイラストである。
【図20A】図20A〜20Dは、本発明の態様による、粒子認識システムからのイメージおよび認識割合のグラフである。
【図20B】図20A〜20Dは、本発明の態様による、粒子認識システムからのイメージおよび認識割合のグラフである。
【図20C】図20A〜20Dは、本発明の態様による、粒子認識システムからのイメージおよび認識割合のグラフである。
【図20D】図20A〜20Dは、本発明の態様による、粒子認識システムからのイメージおよび認識割合のグラフである。
【図21A】図21A〜21Bは、本発明の態様による、単一光リングパターンにより誘起された電場分布のグラフである。
【図21B】図21A〜21Bは、本発明の態様による、単一光リングパターンにより誘起された電場分布のグラフである。
【図22A】図22A〜22Cは、本発明の態様による、微細粒子の、マイクロビジョンをベースとする自動光操作のイメージである。
【図22B】図22A〜22Cは、本発明の態様による、微細粒子の、マイクロビジョンをベースとする自動光操作のイメージである。
【図22C】図22A〜22Cは、本発明の態様による、微細粒子の、マイクロビジョンをベースとする自動光操作のイメージである。
【図23】図23は、粒子を含む液体内での電場パターンの変化を示す、本発明の態様によるOET装置の概略図である。
【図24】図24は、変調されたレーザ光源を用いて、光粒子操作パターンを方向付けることを示す、本発明の態様による実験用OET装置の概略図である。
【図25A】図25A〜25Dは、本発明の態様による、光入力とACバイアスを組合わせて用いたOET粒子操作のイメージである。
【図25B】図25A〜25Dは、本発明の態様による、光入力とACバイアスを組合わせて用いたOET粒子操作のイメージである。
【図25C】図25A〜25Dは、本発明の態様による、光入力とACバイアスを組合わせて用いたOET粒子操作のイメージである。
【図25D】図25A〜25Dは、本発明の態様による、光入力とACバイアスを組合わせて用いたOET粒子操作のイメージである。
【図26】図26は、人の白血球を用いて“UC”という文字を形成するプロセスを示す、本発明の態様によるOET粒子操作のイメージである。
【図27A】図27Aは、液体を通って光応答性材料に方向付けられた集束ビームを示す、本発明の態様によるOET装置の斜視図である。
【図27B】図27Bは、誘起された誘電泳動の一つの態様に対応する、図27AのOETの動作の概略図である。
【図28】図28は、本発明の態様によるOETの場合の、粒子速度と光パワーとの関係のグラフである。
【図29A】図29A〜29Bは、本発明の態様による、OETを用いて多数の粒子を集束/集中させることのイメージである。
【図29B】図29A〜29Bは、本発明の態様による、OETを用いて多数の粒子を集束/集中させることのイメージである。
【図30A】図30A〜30Cは、光波が誘起した電場に応じて、異なるサイズの粒子がどのように組織化されるかを示す、本発明の態様によるOET装置の概略図である。
【図30B】図30A〜30Cは、光波が誘起した電場に応じて、異なるサイズの粒子がどのように組織化されるかを示す、本発明の態様によるOET装置の概略図である。
【図30C】図30A〜30Cは、光波が誘起した電場に応じて、異なるサイズの粒子がどのように組織化されるかを示す、本発明の態様によるOET装置の概略図である。
【図31】図31は、下面顕微鏡イメージングを伴うレーザ照明源を示す、本発明の態様によるOET光学的構成のブロック図である。
【図32A】図32A〜32Dは、約10μm及び20μmの粒子のサイズ分類を示す、本発明の態様によるOETをベースとするサイズ分類のイメージである。
【図32B】図32A〜32Dは、約10μm及び20μmの粒子のサイズ分類を示す、本発明の態様によるOETをベースとするサイズ分類のイメージである。
【図32C】図32A〜32Dは、約10μm及び20μmの粒子のサイズ分類を示す、本発明の態様によるOETをベースとするサイズ分類のイメージである。
【図32D】図32A〜32Dは、約10μm及び20μmの粒子のサイズ分類を示す、本発明の態様によるOETをベースとするサイズ分類のイメージである。
【図33A】図33A〜33Bは、本発明の態様による、一連のサイズの粒子の場合の、OETをベースとするサイズ分類のイメージである。
【図33B】図33A〜33Bは、本発明の態様による、一連のサイズの粒子の場合の、OETをベースとするサイズ分類のイメージである。
【図34】図34は、本発明の態様による、実証した異なる粒子サイズの場合の、距離対速度のグラフである。
【図35】図35は、異なる光操作方法によるエネルギ伝達経路のフロー図比較である。
【図36A】図36A〜36Bは、OEW装置が照明されたときの液滴特性の変化を示す、本発明の態様によるOEW装置の概略図である。
【図36B】図36A〜36Bは、OEW装置が照明されたときの液滴特性の変化を示す、本発明の態様によるOEW装置の概略図である。
【図37A】図37Aは、本発明の態様による、連続OEW面上での液滴輸送の概略図である。
【図37B】図37Bは、図37AのOEWの場合の等価電気回路の概略図である。
【図37C】図37Cは、本発明の態様による、COEW面の層構造の斜視図である。
【図38A】図38A〜38Dは、本発明の態様によるCOEWを用いた微小液滴輸送のイメージである。
【図38B】図38A〜38Dは、本発明の態様によるCOEWを用いた微小液滴輸送のイメージである。
【図38C】図38A〜38Dは、本発明の態様によるCOEWを用いた微小液滴輸送のイメージである。
【図38D】図38A〜38Dは、本発明の態様によるCOEWを用いた微小液滴輸送のイメージである。
【図39】図39は、光エネルギを電場に変換する光伝導性面を有する構造内に保持された粒子含有液体を示す、本発明の態様によるOET装置の概略図である。
【図40A】図40A〜40Bは、光伝導体照明に応答する液体層内での電場の分布及び強度のグラフである。
【図40B】図40A〜40Bは、光伝導体照明に応答する液体層内での電場の分布及び強度のグラフである。
【図41】図41は、本発明の態様によるOET装置を有する、大腸菌細胞を捕捉する実験用構成の概略図である。
【図42A】図42A〜42Bは、本発明の態様による、集められている、「収束されている」細胞のイメージである。
【図42B】図42A〜42Bは、本発明の態様による、集められている、「収束されている」細胞のイメージである。
【図43A】図43A〜43Bは、本発明の態様による、輸送されている細胞のイメージである。
【図43B】図43A〜43Bは、本発明の態様による、輸送されている細胞のイメージである。
【図44】図44は、本発明の態様による、距離及び光パワーに対する細胞の移動速度のグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光誘起性誘電泳動(DEP)によって細胞または粒子を操作する装置であって、
操作すべき粒子または細胞を含む液体を保持するために構成された第1の面及び第2の面と、
受けた光の近傍における、前記受けた光の局所電場への変換のために構成された、前記第1の面または前記第2の面の上の少なくとも1つの光伝導性領域と、
誘起された局所電場に応じて、粒子または細胞を選択的に反発させまたは引き付けるように、前記光伝導性領域上での受光のために光パターンを方向付ける手段と、
を備える装置。
【請求項2】
前記光パターン方向付け手段が、2次元パターンを生成するために構成された光源を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
2次元領域に対して、光イメージ駆動光誘起性誘電泳動(DEP)を用いて、細胞及び粒子を操作する光電子ピンセット(OET)装置であって、
操作すべき粒子または細胞を含む液体を保持する十分な間隔を有する第1の面及び第2の面と、
受けた光の近傍に局所電場、すなわち仮想電極、を形成するために、当該光伝導性領域内での光エネルギの電場への変換のために構成されている、前記第1の面または前記第2の面の上の少なくとも1つの光伝導性領域と、
光誘起性誘電泳動(DEP)を用いて、粒子または細胞の位置決めを操作する移動仮想電極パターンを形成する、前記少なくとも1つの光伝導性領域上での動的光イメージの位置決めのための手段と、
を備える装置。
【請求項4】
前記動的イメージ位置決めのための手段が、レンズアセンブリに結合された光プロジェクタを備え、
前記光プロジェクタが、前記レンズアセンブリを介して前記光伝導性領域上に一連のイメージを生成するために構成されている、請求項3に記載の光電子ピンセット(OET)装置。
【請求項5】
前記第1の面及び前記第2の面に結合され、かつ前記保持された液体にバイアス信号を印加するために構成された電極をさらに備える、請求項3に記載の光電子ピンセット(OET)装置。
【請求項6】
前記OETの液体中に保持されている、粒子、細胞、またはそれらの組合せの顕微鏡イメージングを実行する手段と、
前記OET内の粒子、細胞、または、粒子と細胞の組合せの位置、特性、または、特性と位置の組合せを記録し、前記動的イメージ位置決めのための手段内での光イメージの位置決め及び動きを制御するためにフィードバックを実行する手段と、
をさらに備える、請求項3に記載の光電子ピンセット(OET)装置。
【請求項7】
光誘起性誘電泳動(DEP)によって、細胞または粒子を操作する装置であって、
操作すべき粒子または細胞を含む液体を保持するために構成された第1の面及び第2の面と、
受けた光の近傍における、前記受けた光の局所電場への変換のために構成された、前記第1の面または前記第2の面の上の少なくとも1つの光伝導性領域と、
前記光伝導性領域により受けられる光を供給する光源とを備え、
前記局所電場が、粒子または細胞を選択的に反発させまたは引き付ける装置。
【請求項8】
前記光源が、前記光伝導性領域上に2次元光パターンを生成するために構成された光投影システムを備える、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記光投影システムが、生成されたイメージシーケンスまたはイメージストリームのために構成されている、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記OETが、100μm程度あるいはそれ以下の直径を有する粒子または細胞を操作するために構成されている、請求項7に記載の装置。
【請求項11】
前記第1の面及び前記第2の面は、前記光源から受けた光に応じて、DEP操作がその上で実行される連続膜を前記OET内に形成し、
導電性電極を用いた、前記第1の面または第2の面のリソグラフィック・パターニングは、前記粒子または細胞のDEP操作を実行するのに必要ない、請求項7に記載の装置。
【請求項12】
顕微鏡イメージングによって測定された粒子または細胞の位置、及び必要に応じて特性を記録することに応じて、前記光源の出力を制御するために構成されているマイクロビジョンをベースとするパターン認識サブシステムをさらに備える、請求項7に記載の装置。
【請求項13】
前記特性が、本質的に、サイズ、色、形状、質感、生存能力、運動性、導電性、透過性、静電容量、及び前記粒子または細胞の環境の変化に対する応答性からなる前記粒子及び細胞の特性からなる群から選択される、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記OET内に保持された液体に印加されるバイアス信号を受取るために構成された、前記第1の面及び前記第2の面の各々に結合された少なくとも1つの電極をさらに備え、
前記OET内に保持された前記液体が、導電性または半導電性の流体を含む、請求項7に記載の装置。
【請求項15】
前記OET内に保持された液体のインピーダンスよりも小さいインピーダンスで構成された、前記電極の内面上の絶縁層をさらに備える、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記バイアス信号が、所望の周波数の交流(AC)バイアスを含み、
前記ACバイアスの周波数は、粒子、細胞、または、粒子及び細胞の組合せが、前記パターン化された光によって引き付けられるか、または反発し合うかを決定する、請求項14に記載の装置。
【請求項17】
前記光伝導性面が、本質的に、非晶質またはマイクロ/ナノ結晶質半導電性材料、非晶質シリコン及び有機光導電性材料からなる材料群から選択された材料からなる少なくとも1つの層を備える、請求項7に記載の装置。
【請求項18】
前記OET装置が、静電的に中性である粒子または細胞を操作するように構成されており、
粒子または細胞、あるいは、粒子または細胞からなる群は、物理的電極構造によって制限されることなく、どんな所望の方向にも操作することができる、請求項7に記載の装置。
【請求項19】
前記OET装置が、最大約10μWまでの光エネルギを用いて、粒子及び細胞の位置を操作するために構成されており、
前記OETが、1平方ミリメートル(1mm2)程度あるいはそれ以上の最大領域に対して粒子及び細胞を操作するために構成されている、請求項7に記載の装置。
【請求項20】
2次元領域に対して、光イメージ駆動光誘起性誘電泳動(DEP)を用いて、細胞及び粒子を操作する装置であって、
操作すべき粒子または細胞を含む液体を保持するために構成された第1の面及び第2の面と、
受けた光の近傍に、局所電場、仮想電極を誘起するために構成されている、前記第1の面または第2の面の上の少なくとも1つの光伝導性領域と、
動的連続2次元光パターンを前記光伝導性面上に生成し、それによって、粒子または細胞のDEP操作のための動的局所電場を誘起するために構成された光プロジェクタまたは走査レーザと、
を備える装置。
【請求項21】
前記OETが、100μm程度あるいはそれ以下の直径を有する粒子または細胞を操作するために構成されている、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記第1の面及び前記第2の面は、前記光プロジェクタから受けた光パターンに応じて、DEP操作がその上で実行される連続膜を前記装置内で構成し、
導電性電極を用いた前記第1または第2の面のリソグラフィック・パターニングが、前記粒子、細胞、またはその両方のDEP操作を実行するのに必要ない、請求項20に記載の装置。
【請求項23】
前記2次元光パターンが、粒子または細胞の操作のための局所電場を誘起するために、前記光伝導性領域の少なくとも部分に対して方向付けられた動的連続イメージを備える、請求項20に記載の装置。
【請求項24】
顕微鏡映像の分析から決まる、粒子または細胞の位置、及び必要に応じて特性を記録することに応じて、前記光プロジェクタの出力を制御するために構成されている顕微鏡イメージングサブシステムをさらに備える、請求項20に記載の装置。
【請求項25】
前記特性が、本質的に、サイズ、色、形状、質感、生存能力、運動性、導電性、透過性、静電容量、および前記粒子または細胞の環境の変化に対する応答性からなる、粒子及び細胞の特性からなる群から選択される、請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記第1の面及び前記第2の面の各々に結合され、かつ前記装置内に保持された液体に印加すべきバイアス信号を受取るために構成された、少なくとも1つの電極をさらに備え、
前記装置内に保持された前記液体が、導電性または半導電性の流体を含む、請求項20に記載の装置。
【請求項27】
前記装置内に保持された液体のインピーダンスよりも小さいインピーダンスで構成された、前記電極の内面上の絶縁層をさらに備える、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記バイアス信号が、所望の周波数の交流(AC)バイアスを含み、
前記ACバイアスの周波数は、粒子または細胞が、前記パターン化された光によって引き付けられるか、または反発し合うかを決定する、請求項26に記載の装置。
【請求項29】
前記光伝導性面が、非晶質またはマイクロ/ナノ結晶質半導体材料、非晶質シリコン及び有機光導電性材料から本質的になる材料群から選択された材料からなる少なくとも1つの層を備える、請求項20に記載の装置。
【請求項30】
前記第2の面が、前記装置の前記第1の面と接触する液滴の外面部分を備える、請求項20に記載の装置。
【請求項31】
前記装置が、粒子または細胞の単独または群のいずれかでの同時操作のために構成されており、
前記装置は、静電的に中性である粒子または細胞を操作することができ、
粒子、または粒子群のいずれかは、物理的電極構造によって制限されることなく、どの所望の方向にも操作することができる、請求項20に記載の装置。
【請求項32】
前記装置が、最大約10μWまでの光エネルギを用いて、粒子または細胞の位置を操作するために構成されており、
前記装置が、1平方ミリメートル(1mm2)程度の領域に対して、粒子または細胞を操作するために構成されている、請求項20に記載の装置。
【請求項33】
前記装置が、単独で、配列として、または、それらの組合せとして実施され、本質的に、トラップ、くし状部、ソータ、コンセントレータ、ループ、コンベヤ、ジョイント、粒子チャネル、ウェッジ及びスウィーパからなる粒子及び細胞の操作要素からなる群から選択される操作要素を実施するように構成されている、請求項20に記載の装置。
【請求項34】
前記光プロジェクタはさらに、粒子または細胞のそれぞれの直径に応じて、前記粒子または細胞を分離するために構成された動的くし状パターンを生成するために構成されている、請求項20に記載の装置。
【請求項35】
前記光プロジェクタが、
コヒーレントまたはインコヒーレントな光を生成する光源と、
前記光源から前記装置に方向付けられた光を空間的に変調するために構成された空間光変調器と、
を備える、請求項20に記載の装置。
【請求項36】
前記装置に方向付けられた前記光が、10μW程度の低強度光を含み、
前記照明は、光ダメージから生じる生存性のロスを伴うことなく、生体対象物を操作することを可能にするのに十分な低強度である、請求項35に記載の装置。
【請求項37】
前記装置が、サイズ、色、形状、質感、導電率、容量、透過性、運動性、および環境的変化に対する応答性の違いに応じて、粒子または細胞を分類するために構成されている、請求項20に記載の装置。
【請求項38】
光誘起性誘電泳動(DEP)によって細胞を操作する装置であって、
操作すべき細胞を含む液体を保持するために構成された第1の面及び第2の面と、
受けた光に応じて、局所電場を誘起するために構成された、前記第1の面または前記第2の面の上の少なくとも1つの光伝導性領域と、
前記光伝導性領域で受けられる光を供給する光源と、を備え、
前記光によって誘起された前記局所電場は、細胞を選択的に反発させ、または引き付け、
前記受けた光は、前記装置内で操作されている前記細胞にダメージを与えない、十分に低い光強度である、装置。
【請求項39】
前記装置内の前記細胞の位置、および必要に応じて特性を記録することに応じて、前記光源の出力を制御するために構成された顕微鏡イメージングサブシステムをさらに備える、請求項38に記載の装置。
【請求項40】
液体中に保持された粒子状物または細胞状物を操作する方法であって、
少なくとも第1の面及び第2の面を備える構造内に、前記粒子状物または細胞状物を含む前記液体を閉じ込めるステップと、
前記第1及び第2の面に結合された電極にバイアス信号を印加することにより、前記液体にバイアス電圧を印加するステップと、
前記構造の光伝導性部分に光を向けるステップと、を備え、
前記光が、光を受ける上記部分の近傍に局所電場を誘起し、それによって、前記粒子または細胞を誘電泳動的に反発させ、または引き付ける、方法。
【請求項41】
前記光が2次元光パターンシーケンスを備える、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記2次元光パターンシーケンスは、前記粒子状物または細胞状物を捕捉するか、または反発させるために構成されている、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記光は、プロジェクタ装置から対物レンズを介して前記構造の光伝導性部分に向けられる、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
液体中に保持された生物学的対象物を操作する方法であって、
少なくとも第1の面及び第2の面を備える構造内に、前記粒子状物または細胞状物を含む前記液体を閉じ込めるステップと、
前記第1及び第2の面に結合された電極にバイアス信号を印加することにより、前記液体にバイアス電圧を印加するステップと、
前記構造内の生物学的対象物の特性及び位置を記録することに応じて、制御信号を生成するステップと、
前記制御信号に応じて、前記構造の光伝導性部分に光を向けて、受けた光の近傍に局所電場を誘起して、前記細胞状物を誘電泳動的に反発させ、または引き付けるステップと、を備え、
前記光が、前記方法によって操作されている生きた細胞が生存し、かつ生存し続ける、十分に低い強度である、方法。
【請求項45】
液体中に保持された粒子状物及び細胞状物を動的に操作する方法であって、
少なくとも第1の面及び第2の面を有する構造内に、粒子状物または細胞状物を含む前記液体を閉じ込めるステップと、
前記第1及び第2の面に結合された電極にバイアス信号を印加することにより、前記液体にバイアス電圧を印加するステップと、
前記第1の面および/または第2の面の光伝導性部分に光パターンを集束させて局所電場を誘起し、前記光パターンに応じて、前記粒子状物及び細胞状物を動的に引き付け、または反発させるために構成された仮想電極を形成するステップと、
前記液体中に閉じ込められた粒子または細胞の位置、及び必要に応じて特性、を記録することから受けたフィードバックに応じて、前記光パターンを動的に位置決めするステップと、
を備える方法。
【請求項46】
液体中に保持された細胞を動的に分類する方法であって、
少なくとも第1の面及び第2の面を有する構造内に、細胞を含む液体を閉じ込めるステップと、
前記第1及び第2の面に結合された電極にバイアス信号を印加することにより、前記液体にバイアス電圧を印加するステップと、
前記構造内の細胞の特性及び位置を記録することに応じて制御信号を生成し、どのカテゴリーに前記細胞を分類すべきかを決定するステップと、
細胞のダメージを防ぐのに十分に低い強度の光を、前記制御信号に応じて、前記構造の光伝導性部分に向けて、受けた光の近傍に局所電場を誘起し、前記細胞を誘電泳動的に反発させ、または引き付けるステップと、
前記制御信号に応じて、前記光を連続的に仕向けて、前記構造内で、カテゴライズされた細胞を、異なる仕分け群に移動させ、あるいは、前記構造の外部への輸送のために移動させるステップと、
を備える方法。
【請求項47】
液体中に保持された粒子または細胞を動的に分類する方法であって、
少なくとも第1の面及び第2の面を有する構造内に、前記粒子または細胞を含む前記液体を閉じ込めるステップと、
前記第1及び第2の面に結合された電極にバイアス信号を印加することにより、前記液体にバイアス電圧を印加するステップと、
前記構造の光伝導性部分に亘って、光の移動パターンを仕向けて、前記パターンの近傍に局所電場を誘起し、前記粒子を誘電泳動的に反発させて、前記粒子の相対的サイズに従って、前記パターンから前記粒子を移動させるステップと、
を備える方法。
【請求項1】
光誘起性誘電泳動(DEP)によって細胞または粒子を操作する装置であって、
操作すべき粒子または細胞を含む液体を保持するために構成された第1の面及び第2の面と、
受けた光の近傍における、前記受けた光の局所電場への変換のために構成された、前記第1の面または前記第2の面の上の少なくとも1つの光伝導性領域と、
誘起された局所電場に応じて、粒子または細胞を選択的に反発させまたは引き付けるように、前記光伝導性領域上での受光のために光パターンを方向付ける手段と、
を備える装置。
【請求項2】
前記光パターン方向付け手段が、2次元パターンを生成するために構成された光源を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
2次元領域に対して、光イメージ駆動光誘起性誘電泳動(DEP)を用いて、細胞及び粒子を操作する光電子ピンセット(OET)装置であって、
操作すべき粒子または細胞を含む液体を保持する十分な間隔を有する第1の面及び第2の面と、
受けた光の近傍に局所電場、すなわち仮想電極、を形成するために、当該光伝導性領域内での光エネルギの電場への変換のために構成されている、前記第1の面または前記第2の面の上の少なくとも1つの光伝導性領域と、
光誘起性誘電泳動(DEP)を用いて、粒子または細胞の位置決めを操作する移動仮想電極パターンを形成する、前記少なくとも1つの光伝導性領域上での動的光イメージの位置決めのための手段と、
を備える装置。
【請求項4】
前記動的イメージ位置決めのための手段が、レンズアセンブリに結合された光プロジェクタを備え、
前記光プロジェクタが、前記レンズアセンブリを介して前記光伝導性領域上に一連のイメージを生成するために構成されている、請求項3に記載の光電子ピンセット(OET)装置。
【請求項5】
前記第1の面及び前記第2の面に結合され、かつ前記保持された液体にバイアス信号を印加するために構成された電極をさらに備える、請求項3に記載の光電子ピンセット(OET)装置。
【請求項6】
前記OETの液体中に保持されている、粒子、細胞、またはそれらの組合せの顕微鏡イメージングを実行する手段と、
前記OET内の粒子、細胞、または、粒子と細胞の組合せの位置、特性、または、特性と位置の組合せを記録し、前記動的イメージ位置決めのための手段内での光イメージの位置決め及び動きを制御するためにフィードバックを実行する手段と、
をさらに備える、請求項3に記載の光電子ピンセット(OET)装置。
【請求項7】
光誘起性誘電泳動(DEP)によって、細胞または粒子を操作する装置であって、
操作すべき粒子または細胞を含む液体を保持するために構成された第1の面及び第2の面と、
受けた光の近傍における、前記受けた光の局所電場への変換のために構成された、前記第1の面または前記第2の面の上の少なくとも1つの光伝導性領域と、
前記光伝導性領域により受けられる光を供給する光源とを備え、
前記局所電場が、粒子または細胞を選択的に反発させまたは引き付ける装置。
【請求項8】
前記光源が、前記光伝導性領域上に2次元光パターンを生成するために構成された光投影システムを備える、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記光投影システムが、生成されたイメージシーケンスまたはイメージストリームのために構成されている、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記OETが、100μm程度あるいはそれ以下の直径を有する粒子または細胞を操作するために構成されている、請求項7に記載の装置。
【請求項11】
前記第1の面及び前記第2の面は、前記光源から受けた光に応じて、DEP操作がその上で実行される連続膜を前記OET内に形成し、
導電性電極を用いた、前記第1の面または第2の面のリソグラフィック・パターニングは、前記粒子または細胞のDEP操作を実行するのに必要ない、請求項7に記載の装置。
【請求項12】
顕微鏡イメージングによって測定された粒子または細胞の位置、及び必要に応じて特性を記録することに応じて、前記光源の出力を制御するために構成されているマイクロビジョンをベースとするパターン認識サブシステムをさらに備える、請求項7に記載の装置。
【請求項13】
前記特性が、本質的に、サイズ、色、形状、質感、生存能力、運動性、導電性、透過性、静電容量、及び前記粒子または細胞の環境の変化に対する応答性からなる前記粒子及び細胞の特性からなる群から選択される、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記OET内に保持された液体に印加されるバイアス信号を受取るために構成された、前記第1の面及び前記第2の面の各々に結合された少なくとも1つの電極をさらに備え、
前記OET内に保持された前記液体が、導電性または半導電性の流体を含む、請求項7に記載の装置。
【請求項15】
前記OET内に保持された液体のインピーダンスよりも小さいインピーダンスで構成された、前記電極の内面上の絶縁層をさらに備える、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記バイアス信号が、所望の周波数の交流(AC)バイアスを含み、
前記ACバイアスの周波数は、粒子、細胞、または、粒子及び細胞の組合せが、前記パターン化された光によって引き付けられるか、または反発し合うかを決定する、請求項14に記載の装置。
【請求項17】
前記光伝導性面が、本質的に、非晶質またはマイクロ/ナノ結晶質半導電性材料、非晶質シリコン及び有機光導電性材料からなる材料群から選択された材料からなる少なくとも1つの層を備える、請求項7に記載の装置。
【請求項18】
前記OET装置が、静電的に中性である粒子または細胞を操作するように構成されており、
粒子または細胞、あるいは、粒子または細胞からなる群は、物理的電極構造によって制限されることなく、どんな所望の方向にも操作することができる、請求項7に記載の装置。
【請求項19】
前記OET装置が、最大約10μWまでの光エネルギを用いて、粒子及び細胞の位置を操作するために構成されており、
前記OETが、1平方ミリメートル(1mm2)程度あるいはそれ以上の最大領域に対して粒子及び細胞を操作するために構成されている、請求項7に記載の装置。
【請求項20】
2次元領域に対して、光イメージ駆動光誘起性誘電泳動(DEP)を用いて、細胞及び粒子を操作する装置であって、
操作すべき粒子または細胞を含む液体を保持するために構成された第1の面及び第2の面と、
受けた光の近傍に、局所電場、仮想電極を誘起するために構成されている、前記第1の面または第2の面の上の少なくとも1つの光伝導性領域と、
動的連続2次元光パターンを前記光伝導性面上に生成し、それによって、粒子または細胞のDEP操作のための動的局所電場を誘起するために構成された光プロジェクタまたは走査レーザと、
を備える装置。
【請求項21】
前記OETが、100μm程度あるいはそれ以下の直径を有する粒子または細胞を操作するために構成されている、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記第1の面及び前記第2の面は、前記光プロジェクタから受けた光パターンに応じて、DEP操作がその上で実行される連続膜を前記装置内で構成し、
導電性電極を用いた前記第1または第2の面のリソグラフィック・パターニングが、前記粒子、細胞、またはその両方のDEP操作を実行するのに必要ない、請求項20に記載の装置。
【請求項23】
前記2次元光パターンが、粒子または細胞の操作のための局所電場を誘起するために、前記光伝導性領域の少なくとも部分に対して方向付けられた動的連続イメージを備える、請求項20に記載の装置。
【請求項24】
顕微鏡映像の分析から決まる、粒子または細胞の位置、及び必要に応じて特性を記録することに応じて、前記光プロジェクタの出力を制御するために構成されている顕微鏡イメージングサブシステムをさらに備える、請求項20に記載の装置。
【請求項25】
前記特性が、本質的に、サイズ、色、形状、質感、生存能力、運動性、導電性、透過性、静電容量、および前記粒子または細胞の環境の変化に対する応答性からなる、粒子及び細胞の特性からなる群から選択される、請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記第1の面及び前記第2の面の各々に結合され、かつ前記装置内に保持された液体に印加すべきバイアス信号を受取るために構成された、少なくとも1つの電極をさらに備え、
前記装置内に保持された前記液体が、導電性または半導電性の流体を含む、請求項20に記載の装置。
【請求項27】
前記装置内に保持された液体のインピーダンスよりも小さいインピーダンスで構成された、前記電極の内面上の絶縁層をさらに備える、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記バイアス信号が、所望の周波数の交流(AC)バイアスを含み、
前記ACバイアスの周波数は、粒子または細胞が、前記パターン化された光によって引き付けられるか、または反発し合うかを決定する、請求項26に記載の装置。
【請求項29】
前記光伝導性面が、非晶質またはマイクロ/ナノ結晶質半導体材料、非晶質シリコン及び有機光導電性材料から本質的になる材料群から選択された材料からなる少なくとも1つの層を備える、請求項20に記載の装置。
【請求項30】
前記第2の面が、前記装置の前記第1の面と接触する液滴の外面部分を備える、請求項20に記載の装置。
【請求項31】
前記装置が、粒子または細胞の単独または群のいずれかでの同時操作のために構成されており、
前記装置は、静電的に中性である粒子または細胞を操作することができ、
粒子、または粒子群のいずれかは、物理的電極構造によって制限されることなく、どの所望の方向にも操作することができる、請求項20に記載の装置。
【請求項32】
前記装置が、最大約10μWまでの光エネルギを用いて、粒子または細胞の位置を操作するために構成されており、
前記装置が、1平方ミリメートル(1mm2)程度の領域に対して、粒子または細胞を操作するために構成されている、請求項20に記載の装置。
【請求項33】
前記装置が、単独で、配列として、または、それらの組合せとして実施され、本質的に、トラップ、くし状部、ソータ、コンセントレータ、ループ、コンベヤ、ジョイント、粒子チャネル、ウェッジ及びスウィーパからなる粒子及び細胞の操作要素からなる群から選択される操作要素を実施するように構成されている、請求項20に記載の装置。
【請求項34】
前記光プロジェクタはさらに、粒子または細胞のそれぞれの直径に応じて、前記粒子または細胞を分離するために構成された動的くし状パターンを生成するために構成されている、請求項20に記載の装置。
【請求項35】
前記光プロジェクタが、
コヒーレントまたはインコヒーレントな光を生成する光源と、
前記光源から前記装置に方向付けられた光を空間的に変調するために構成された空間光変調器と、
を備える、請求項20に記載の装置。
【請求項36】
前記装置に方向付けられた前記光が、10μW程度の低強度光を含み、
前記照明は、光ダメージから生じる生存性のロスを伴うことなく、生体対象物を操作することを可能にするのに十分な低強度である、請求項35に記載の装置。
【請求項37】
前記装置が、サイズ、色、形状、質感、導電率、容量、透過性、運動性、および環境的変化に対する応答性の違いに応じて、粒子または細胞を分類するために構成されている、請求項20に記載の装置。
【請求項38】
光誘起性誘電泳動(DEP)によって細胞を操作する装置であって、
操作すべき細胞を含む液体を保持するために構成された第1の面及び第2の面と、
受けた光に応じて、局所電場を誘起するために構成された、前記第1の面または前記第2の面の上の少なくとも1つの光伝導性領域と、
前記光伝導性領域で受けられる光を供給する光源と、を備え、
前記光によって誘起された前記局所電場は、細胞を選択的に反発させ、または引き付け、
前記受けた光は、前記装置内で操作されている前記細胞にダメージを与えない、十分に低い光強度である、装置。
【請求項39】
前記装置内の前記細胞の位置、および必要に応じて特性を記録することに応じて、前記光源の出力を制御するために構成された顕微鏡イメージングサブシステムをさらに備える、請求項38に記載の装置。
【請求項40】
液体中に保持された粒子状物または細胞状物を操作する方法であって、
少なくとも第1の面及び第2の面を備える構造内に、前記粒子状物または細胞状物を含む前記液体を閉じ込めるステップと、
前記第1及び第2の面に結合された電極にバイアス信号を印加することにより、前記液体にバイアス電圧を印加するステップと、
前記構造の光伝導性部分に光を向けるステップと、を備え、
前記光が、光を受ける上記部分の近傍に局所電場を誘起し、それによって、前記粒子または細胞を誘電泳動的に反発させ、または引き付ける、方法。
【請求項41】
前記光が2次元光パターンシーケンスを備える、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記2次元光パターンシーケンスは、前記粒子状物または細胞状物を捕捉するか、または反発させるために構成されている、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記光は、プロジェクタ装置から対物レンズを介して前記構造の光伝導性部分に向けられる、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
液体中に保持された生物学的対象物を操作する方法であって、
少なくとも第1の面及び第2の面を備える構造内に、前記粒子状物または細胞状物を含む前記液体を閉じ込めるステップと、
前記第1及び第2の面に結合された電極にバイアス信号を印加することにより、前記液体にバイアス電圧を印加するステップと、
前記構造内の生物学的対象物の特性及び位置を記録することに応じて、制御信号を生成するステップと、
前記制御信号に応じて、前記構造の光伝導性部分に光を向けて、受けた光の近傍に局所電場を誘起して、前記細胞状物を誘電泳動的に反発させ、または引き付けるステップと、を備え、
前記光が、前記方法によって操作されている生きた細胞が生存し、かつ生存し続ける、十分に低い強度である、方法。
【請求項45】
液体中に保持された粒子状物及び細胞状物を動的に操作する方法であって、
少なくとも第1の面及び第2の面を有する構造内に、粒子状物または細胞状物を含む前記液体を閉じ込めるステップと、
前記第1及び第2の面に結合された電極にバイアス信号を印加することにより、前記液体にバイアス電圧を印加するステップと、
前記第1の面および/または第2の面の光伝導性部分に光パターンを集束させて局所電場を誘起し、前記光パターンに応じて、前記粒子状物及び細胞状物を動的に引き付け、または反発させるために構成された仮想電極を形成するステップと、
前記液体中に閉じ込められた粒子または細胞の位置、及び必要に応じて特性、を記録することから受けたフィードバックに応じて、前記光パターンを動的に位置決めするステップと、
を備える方法。
【請求項46】
液体中に保持された細胞を動的に分類する方法であって、
少なくとも第1の面及び第2の面を有する構造内に、細胞を含む液体を閉じ込めるステップと、
前記第1及び第2の面に結合された電極にバイアス信号を印加することにより、前記液体にバイアス電圧を印加するステップと、
前記構造内の細胞の特性及び位置を記録することに応じて制御信号を生成し、どのカテゴリーに前記細胞を分類すべきかを決定するステップと、
細胞のダメージを防ぐのに十分に低い強度の光を、前記制御信号に応じて、前記構造の光伝導性部分に向けて、受けた光の近傍に局所電場を誘起し、前記細胞を誘電泳動的に反発させ、または引き付けるステップと、
前記制御信号に応じて、前記光を連続的に仕向けて、前記構造内で、カテゴライズされた細胞を、異なる仕分け群に移動させ、あるいは、前記構造の外部への輸送のために移動させるステップと、
を備える方法。
【請求項47】
液体中に保持された粒子または細胞を動的に分類する方法であって、
少なくとも第1の面及び第2の面を有する構造内に、前記粒子または細胞を含む前記液体を閉じ込めるステップと、
前記第1及び第2の面に結合された電極にバイアス信号を印加することにより、前記液体にバイアス電圧を印加するステップと、
前記構造の光伝導性部分に亘って、光の移動パターンを仕向けて、前記パターンの近傍に局所電場を誘起し、前記粒子を誘電泳動的に反発させて、前記粒子の相対的サイズに従って、前記パターンから前記粒子を移動させるステップと、
を備える方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図9E】
【図9F】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図15D】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図17D】
【図18A】
【図18B】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【図19D】
【図20A】
【図20B】
【図20C】
【図20D】
【図21A】
【図21B】
【図22B】
【図22C】
【図23】
【図24】
【図25A】
【図25B】
【図25C】
【図25D】
【図26A】
【図26B】
【図27A】
【図27B】
【図28】
【図29A】
【図29B】
【図30A】
【図30B】
【図30C】
【図31】
【図32A】
【図32B】
【図32C】
【図32D】
【図33A】
【図33B】
【図34】
【図35】
【図36A】
【図36B】
【図37A】
【図37B】
【図37C】
【図38A】
【図38B】
【図38C】
【図38D】
【図39】
【図40A】
【図40B】
【図41】
【図42A】
【図42B】
【図43A】
【図43B】
【図44】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図9E】
【図9F】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図15D】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図17D】
【図18A】
【図18B】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【図19D】
【図20A】
【図20B】
【図20C】
【図20D】
【図21A】
【図21B】
【図22B】
【図22C】
【図23】
【図24】
【図25A】
【図25B】
【図25C】
【図25D】
【図26A】
【図26B】
【図27A】
【図27B】
【図28】
【図29A】
【図29B】
【図30A】
【図30B】
【図30C】
【図31】
【図32A】
【図32B】
【図32C】
【図32D】
【図33A】
【図33B】
【図34】
【図35】
【図36A】
【図36B】
【図37A】
【図37B】
【図37C】
【図38A】
【図38B】
【図38C】
【図38D】
【図39】
【図40A】
【図40B】
【図41】
【図42A】
【図42B】
【図43A】
【図43B】
【図44】
【公表番号】特表2007−537729(P2007−537729A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−507569(P2007−507569)
【出願日】平成17年4月12日(2005.4.12)
【国際出願番号】PCT/US2005/012416
【国際公開番号】WO2005/100541
【国際公開日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(592130699)ザ・レジェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月12日(2005.4.12)
【国際出願番号】PCT/US2005/012416
【国際公開番号】WO2005/100541
【国際公開日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(592130699)ザ・レジェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】
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