説明

微細氷粒子を有する呼吸ガスの送達のためのシステムおよび方法

治療処置システムは、患者に冷却呼吸ガス混合物を送達するように適合されている送達デバイスと、送達デバイスの遠位端付近に位置付けられている注入デバイスとを有する。注入デバイスは、液体源に結合される。処置システムはまた、送達デバイスおよび注入デバイスに結合される制御システムも含む。代替として、制御システムは、冷却呼吸ガス混合物中に流体を解放し、冷却呼吸ガス混合物中に微細氷粒子の凍結ミストを形成するために、注入デバイスを制御するように適合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(文献の引用)
本明細書に記載される全ての刊行物および特許出願は、各個別刊行物および特許出願が、参照によって具体的かつ個別に組み込まれることが示される場合と同程度に、参照することによって組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本発明は、概して、患者の体温を選択的に変更および制御するためのシステムおよび方法に関する。より具体的には、本発明は、患者の気道および肺との熱交換によって、患者の体温を上昇および低下させるための呼吸器システムおよび方法に関する。呼吸器システムは、熱容量を高めるための凍結粒子または凍結ミストを運ぶ呼吸ガスを患者に呼吸させることによって、治療的低体温を迅速に誘発する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の一局面において、低温呼吸ガス送達システムは、患者に冷却呼吸ガス混合物を送達するように適合される送達デバイスと、送達デバイスの遠位端付近に位置付けられる注入デバイスとを有する。注入デバイスは、流体を解放し、冷却呼吸ガス混合物中に微細氷粒子の凍結ミストを形成するように構成される。
【0004】
本発明の別の局面において、低温呼吸ガス送達システムは、患者に冷却呼吸ガス混合物を送達するように適合される気管内チューブと、気管内チューブの遠位端付近に位置付けられる注入デバイスとを有する。別の局面において、注入デバイスは、流体を解放し、冷却呼吸ガス混合物中に微細氷粒子の凍結ミストを形成するように構成される。
【0005】
本発明のさらに別の局面において、低温呼吸ガス送達システムは、患者に冷却呼吸ガス混合物を送達するように適合される鼻カニューレと、鼻カニューレの遠位端付近に位置付けられる少なくとも1つの注入デバイスとを有する。この局面において、少なくとも1つの注入デバイスは、流体を解放し、冷却呼吸ガス混合物中に微細氷粒子の凍結ミストを形成するように構成される。
【0006】
本発明のさらなる局面において、低温呼吸ガス送達システムは、患者の咽喉に冷却呼吸ガス混合物を送達するための大きさを有するチューブと、チューブの遠位端付近に位置付けられる注入デバイスとを備える。別の局面において、注入デバイスは、流体を解放し、冷却呼吸ガス混合物中に微細氷粒子の凍結ミストを形成するように構成される。
【0007】
本発明の別の局面において、低温呼吸ガス送達システムは、冷却呼吸ガス混合物を送達するように適合される呼吸マスクと、呼吸マスクの遠位端付近に位置付けられる注入デバイスとを備える。さらなる局面において、注入デバイスは、流体を解放し、冷却呼吸ガス混合物中に微細氷粒子の凍結ミストを形成するように構成される。
【0008】
本発明のさらなる局面は、患者に冷却呼吸ガス混合物を送達するように適合される送達デバイスと、送達デバイスの遠位端付近に位置付けられる注入デバイスであって、注入デバイスは液体源に結合される、注入デバイスとを有する治療処置システムを提供する。処置システムはまた、送達デバイスおよび注入デバイスに結合される制御システムも備える。代替として、制御システムは、冷却呼吸ガス混合物中に流体を解放し、冷却呼吸ガス混合物中に微細氷粒子の凍結ミストを形成するために、注入デバイスを制御するように適合される。
【0009】
本明細書に記載された局面のうちのいずれかにおいて、低温呼吸ガス送達システムは、注入デバイスから低温呼吸ガス混合物への流体の注入を作動させる制御システムをさらに備えることができる。加えて、流体の分配は、患者の呼吸周期の吸入期中の患者への呼吸ガス混合物の流量に合わせて時間決定されるべきである。制御システムは、吸入が生じようとする時、生じている時、および/または吸入が完了している時を示すセンサ入力を受信することができる。圧力センサまたは流量センサを備え得る1つ以上の種々のセンサが使用され得る。制御システムおよびセンサはまた、口腔内、尿道、皮膚、IR、または直腸プローブ等の、患者の温度を測定する任意の既知の方法を用いて患者の温度を記録かつ監視することもできる。制御システムは、呼吸ガス混合物の温度、流体の温度、患者に送達される呼吸ガス混合物の速度および体積、ならびに所望の患者温度に従って、注入デバイスによって呼吸ガス混合物に注入される流体の体積を調整するために、フィードバックとして測定された温度および圧力/流量センサを使用することができる。
【0010】
本発明の別の局面は、患者内の標的組織に冷却呼吸ガス混合物を送達し、冷却呼吸ガス混合物中に微細氷粒子の凍結ミストを形成するために、標的組織で、または標的組織付近で、冷却呼吸ガス混合物に流体を注入することによって、患者を治療するための方法を提供する。標的組織は、患者の鼻気道、患者の肺、患者の口および鼻気道、患者の咽喉、患者の気管、または上記の標的組織部位の任意の組み合わせであり得る。
【0011】
本明細書に記載された局面のうちのいずれかにおいて、冷却呼吸ガス混合物に薬剤を注入するステップまたは冷却呼吸ガス混合物と混合するステップも提供される。一局面において、薬剤は、麻酔薬である。別の実施形態において、冷却呼吸ガス混合物は、患者の標的組織に直接送達され、治療薬と組み合わされて、標的組織を直接治療する。麻酔薬または治療薬を、冷却呼吸ガス混合物および患者の洞に送達される混合物に添加することができる。薬剤は、洞を用いて患者の状態を治療するために選択され得る。状態は、片頭痛であり得る。状態は、洞を通じて治療的低体温を誘発することであり得る。
【0012】
加えて、薬剤を、呼吸ガス源で、または別々のネブライザ等を使用して、ガス混合物に添加することもできる。また、良好な熱伝達のために肺への血流を増加させ、かつ気管支収縮を防止する、気管支拡張薬、局所(吸入)血管拡張薬、または任意の他の薬物等の薬剤が添加され得る。付加的に、または代替として、蒸散を促す薬剤、末梢血管拡張薬、および震えを減少または除去する薬剤を、冷却呼吸ガス混合物とともに送達することができる。加えて、冷却呼吸ガス混合物を吸入することに関連し得る標的位置における疼痛を減少または除去するために、麻酔薬を、呼吸ガス混合物に添加することができるか、または直接患者に投与することができる。低体温の所望の程度を達成するのに役立つように、抗戦慄剤および/または抗体温調節反応剤を、患者に投与し得る。代替として、または加えて、体内低体温を維持しながら震えを減少するために、暖気毛布または電気毛布等を用いて、体外加温が適用され得る。震えを制御するため、および/または患者の体温調節反応を調節するために、患者の体の選択した部分の局所加熱が使用され得る。
【0013】
本発明の別の局面において、呼吸ガス混合物を形成すること、呼吸ガス混合物を冷却すること、患者内の標的組織に冷却呼吸ガス混合物を送達すること、および冷却呼吸ガス混合物中に微細氷粒子の凍結ミストを形成するために、標的組織で、または標的組織付近で、冷却呼吸ガス混合物に流体を注入することによって、患者を治療するための方法が提供される。本発明のこの局面または任意の他の局面において、システムは、呼吸ガス混合物を加圧するステップを提供するように適合され得、方法は、加圧された呼吸ガス混合物の使用を含む1つ以上のステップを含むように適合され得る。ガス混合物の圧力を制御することもできる。ガス混合物を加圧することで、質量流量をさらに向上させ、従って、熱伝達率を向上させる。ガス混合物は、患者に安全な既知のレベルまで加圧されるべきである(例えば、1.5〜2気圧)。代替として、呼吸ガスを混合し、かつ熱伝達率を向上させるのに役立つように、ガス混合物の圧力をパルス化することができ、つまり、高から低まで継続的に圧力を変動させることができる。
【0014】
さらなる実施形態において、形成するステップは、酸素および高い熱容量を持つガスを含むガス混合物から呼吸ガス混合物を形成するステップも含む。呼吸ガス混合物は、酸素およびヘリウムを含むガス混合物、酸素および二酸化炭素を含むガス混合物、六フッ化硫黄を含むガス混合物、または上記のガス混合物の任意の組み合わせから形成され得る。
【0015】
別の局面において、呼吸ガス混合物は、空気、または、より効果的な熱交換のために酸素(約20%濃度以上)および高い熱容量(Cp)を持つガスを含む特殊ガス混合物であり得る。混合物は、通常のもしくは精製された空気、またはより高濃度の酸素(20から100%)を有する空気であることができる。代替的なガス混合物は、20%酸素で80%ヘリウムであるHELIOX等の、酸素およびヘリウムであり得る。ヘリウムの比熱容量は、空気の比熱容量よりも非常に高いため、そのような混合物は、熱流量を向上させ、患者の温度を低下させるより効果的な方法を可能にし得る。別の実施形態において、ガス混合物は、空気より非常に高い比熱容量を有する高密度な非毒性ガスである六フッ化硫黄SFを含むことができる。さらに、患者の呼吸数を調節するのに役立つように、二酸化炭素(CO)をガス混合物に添加し得る。亜酸化窒素を呼吸ガス混合物103に添加することもできる。上記に挙げたガス混合物および吸入しても安全である生体適合性ガスの他の組み合わせを任意に使用し得る。
【0016】
本発明の局面のうちのいずれかにおいて、冷却呼吸ガス混合物への注入は、流体注入器、水注入器、空気・水エアブラシ、ノズル噴霧器、シェーカボトル、マイクロ流体デバイス、ジェット衝撃デバイス、超音波液滴ノズル、蒸気供給装置、氷削機、超音波ネブライザノズル、渦巻きジェットノズル、インパクションピンノズル、衝突ジェットノズル、MEMSノズルアレイミスト発生装置、電気スプレーノズル、加熱キャピラリ、内部混合ノズル、および外部混合ノズルのうちの1つまたはそれらの組み合わせを用いて提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明の新規特徴を、以下の特許請求の範囲に詳細に示す。本発明の特徴および利点のより良い理解は、本発明の原理が利用されている例示的な実施形態を示している以下の発明を実施するための形態、および添付の図面を参照することによって得られるであろう。
【図1A】図1Aは、患者に微細氷粒子の凍結ミストを送達するためのシステムの図を示す。
【図1B】図1Bは、患者に微細氷粒子の凍結ミストを送達するためのシステムのさらに別の実施形態を示す。
【図1C】図1Cは、患者に微細氷粒子の凍結ミストを送達するためのシステムのさらに別の実施形態を示す。
【図2A】図2A〜2Gは、患者に微細氷粒子の凍結ミストを送達するための注入デバイスの種々の実施形態を示す。
【図2B】図2A〜2Gは、患者に微細氷粒子の凍結ミストを送達するための注入デバイスの種々の実施形態を示す。
【図2C】図2A〜2Gは、患者に微細氷粒子の凍結ミストを送達するための注入デバイスの種々の実施形態を示す。
【図2D】図2A〜2Gは、患者に微細氷粒子の凍結ミストを送達するための注入デバイスの種々の実施形態を示す。
【図2E】図2A〜2Gは、患者に微細氷粒子の凍結ミストを送達するための注入デバイスの種々の実施形態を示す。
【図2F】図2A〜2Gは、患者に微細氷粒子の凍結ミストを送達するための注入デバイスの種々の実施形態を示す。
【図2G】図2A〜2Gは、患者に微細氷粒子の凍結ミストを送達するための注入デバイスの種々の実施形態を示す。
【図3A】図3A〜3Cは、患者に微細氷粒子の凍結ミストを送達するためのシステムのさらに別の実施形態を示す。
【図3B】図3A〜3Cは、患者に微細氷粒子の凍結ミストを送達するためのシステムのさらに別の実施形態を示す。
【図3C】図3A〜3Cは、患者に微細氷粒子の凍結ミストを送達するためのシステムのさらに別の実施形態を示す。
【図4A】図4A〜4Bは、患者に微細氷粒子の凍結ミストを送達するためのシステムのさらに別の実施形態を示す。
【図4B】図4A〜4Bは、患者に微細氷粒子の凍結ミストを送達するためのシステムのさらに別の実施形態を示す。
【図5A】図5A〜5Bは、患者に微細氷粒子の凍結ミストを送達するためのシステムのさらに別の実施形態を示す。
【図5B】図5A〜5Bは、患者に微細氷粒子の凍結ミストを送達するためのシステムのさらに別の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の種々の実施形態の理解をもたらすために、特定の具体的な詳細が以下の説明および図に示される。特定の本発明の種々の実施形態を不必要に不明瞭にすることを避けるために、電子機器およびデバイスに関連する特定のよく知られている詳細は、以下の開示において示していない。さらに、以下に記載される詳細の1つ以上を伴わずに、本発明の他の実施形態を実践することができることが、当業者には理解されよう。最後に、以下の開示では、ステップおよびシーケンスを参照して種々の工程が記載されるが、記載は、本発明の特定の実施形態の明確な実施を提供するためのものであり、ステップおよびステップのシーケンスは、本発明を実践するのに必要なものと解釈されるべきではない。
【0019】
本明細書に記載されるシステムは、冷却呼吸ガス混合物中に凍結氷粒子の微細ミストを作成し、かつ患者内の標的組織に冷却呼吸ガス混合物を送達するために使用される。本明細書で使用される用語「氷」は、冷却等によって、蒸気または液体状態から固体状態への相転移を受けた任意の物質を含むことを理解すべきである。一実施形態において、冷却呼吸ガス混合物および凍結氷粒子の微細ミストは、患者における治療的低体温を誘発するために、患者の気道および最終的に肺に送達される。肺中の血液の温度は、低温呼吸ガス混合物にさらされると低下し、心臓組織の温度を低下させる。冷やされた血液は、冠動脈へ流入し続け、組織の温度を低下させ続ける。心筋梗塞の場合には、冠状動脈に直接流入するこの冷やされた血液の効果が特に有益である。血液はまた、左心から全身へ流入して、所望されるように体温を変化させることができる。脳卒中の場合には、冷却された血液の一部は、脳へ流入し、組織を冷却し、かつ組織中の代謝および酸素消費を低下させて、脳への虚血性障害を減少させる。治療的低体温が達成されると、送達された氷粒子の量を調整することによって、熱伝導率を調節することができ、呼吸混合物の温度を調整して、所望の体温を達成し、維持することができる。
【0020】
別の実施形態において、冷却呼吸ガス混合物は、標的組織を直接治療するために、患者内の標的組織に直接送達され、かつ治療薬と組み合わせることができる。例えば、麻酔薬を冷却呼吸ガス混合物に添加することができ、ならびに混合物を患者の洞に送達して、片頭痛を治療すること、また、例えば、洞を通じて治療的低体温を誘発することもできる。
【0021】
本明細書に記載されたシステムは、救急車の診療補助者もしくは救急救命士(EMT)、病院外での医療チーム、救急室の医療チーム等の種々の医療関係者によって、またはこの治療が必要な任意の他の場所で、患者に容易に投与できるように、携帯型かつ小型であるように設計されている。システムの利点は、操作し易さおよび最小限の訓練で操作する能力を含む。従って、救急室またはカテーテル検査室においてのみ実施することができる他のより侵襲的な方法と比べて、心発作、脳卒中、または他の事象後により早く患者の治療を開始することができる。これらの状態に対する迅速な治療は、虚血性障害および罹患組織中の壊死を減少させることによって、患者予後を向上させることが示されている。
【0022】
本明細書に記載されたシステムは、概して、送達デバイスおよび注入デバイスを備える。送達デバイスは、患者の気道へ挿入するようにサイズ決定され、気管内チューブ、中咽頭気道(OPA)、喉頭用マスク気道(LMA)、鼻カニューレもしくは鼻咽頭気道(NPA)、呼吸マスク、または他の関連する医療機器であることができる。典型的な呼吸マスクを使用することができるが、低温呼吸ガス混合物を患者の頬、唇、歯等に接触させない若干変更されたバージョンがより望ましい。例えば、変更された呼吸マスクは、口に延びる長さが1〜2インチ等の短いチューブを備える場合があり、軽い咬合作用または顎もしくは唇の自然な閉じる緊張で適所に保たれる。使用される送達デバイスの種類は、システムを使用するように意図される個人に依存し得る。例えば、医師および医師助手等の高度な訓練を受けた医療関係者のみが、気管内チューブを患者に挿管する資格があり得る。従って、気管内チューブ型の送達デバイスを利用するシステムは、病院に限定され得る。しかしながら、EMTまたは救急診療補助者が使用するために設計されたシステムは、送達デバイスとして呼吸マスクまたは鼻カニューレを使用し得る。概して、それらの投与治療の資格および場所に応じて、患者に治療的低体温をもたらすため、および/または患者の標的組織を治療するために、多くの種類の送達デバイスがシステムと併用され得る。
【0023】
システムは、患者において微細氷粒子の凍結ミストを作成するために、種々の方法を利用することができる。これは、送達デバイスによって運ばれる低温呼吸ガス混合物中に流体の微細ミストを分散させるため、いくつかの種類の流体注入器、氷スクレーパ、圧力ノズル等を含むことができる。流体の微細ミストが低温呼吸ガス混合物と接触した時、凍結氷粒子の微細ミストが形成され、患者に運ばれる。
【0024】
さらに、システムは、送達デバイスおよび注入デバイスと併用するために、流体源、呼吸ガス混合物源、制御システム、温度および圧力センサ、ポンプ、および機械的人工呼吸器/酸素吸入器を備えることができる。これらのシステム構成要素は、患者への低温呼吸ガス混合物および凍結氷粒子の微細ミストの送達を制御するために連携することができる。
【0025】
呼吸ガス混合物に添加される氷粒子の量は、好適には、1時間当たり0から5リットルの範囲である(凍結ミストを生成するために注入される流体の体積として測定される)。1時間当たり0.25から1リットルの範囲内の氷粒子の流量は、成人患者において低体温を迅速に達成するのに十分であると現在のところ考えられている。融解潜熱(液体水から氷への相転移をもたらすのに必要な熱)のため、体内に入る呼吸ガスは、液滴の効果的な凍結を達成するために、凝固点を有意に下回る温度まで冷却される必要があり得る。任意に、流体注入を、呼吸ガスの脈動流に合わせて時間決定することができる。
【0026】
凍結ミストを、呼吸ガスによって患者の肺に運ぶことができる。氷粒子は、患者の肺内で融解することができ、肺および肺を通って流れる血液を冷却するための高い熱伝達率を提供する。氷粒子の融解によって提供される高い熱伝達率のため、患者の効果的な冷却に極めて低い温度は必要とされず、従って、患者の肺への凍結損傷の危険性を軽減する。保護低体温に対する必要性がなくなった後、システムは、正常体温まで患者を復温させるために使用され得る。例えば、システムは、体温より高い温度だが、患者への損傷または不快感の閾値を下回る、好ましくは37〜52℃で、患者に水を注入するために使用され得る。
【0027】
氷粒子の融解から肺で形成される流体の量は、患者が容易に許容され得る。良好な肺機能を有する成人は、通常の工程によって肺から1時間当たり1リットルの流体を容易に除去することができる。従って、0.25から1リットルの範囲内の氷粒子の流量は、数時間の長い時間の間容易に許容される。1時間当たり最大5リットルの氷粒子のより高い流量は、より短い時間の間許容することができる。所望される場合、肺の通路から周囲組織へ、そしてそこから血流へ流体を駆動するのに役立つように、陽圧換気を使用し得る。加えて、必要な場合は、過剰水を排除するのに役立つように、肺水腫を治療するための利尿薬または他の薬物を患者に投与し得る。
【0028】
ここで、本発明を図面を用いて説明する。図1Aは、送達デバイス102、注入デバイス104、制御システム106、呼吸ガス源108、および流体源110を備える低温ガス送達システム100を示す。システム100は、患者内の標的組織での治療のために、口、鼻、咽喉、または肺等の患者の気道に挿入されるように適合され、かつ急性心筋梗塞、片頭痛、および突発的な脳卒中を含む、種々の状態を治療するために、治療的低体温を誘発するように利用することができる。
【0029】
図1Aは、患者内の標的組織に、具体的には、肺、鼻気道、洞、咽喉/気管、または口等の患者の気道に呼吸ガス混合物103を送達するように適合される、送達デバイス102の遠位領域の図を含む。送達デバイス102は、気管内チューブ、中咽頭気道(OPA)、喉頭用マスク気道(LMA)、鼻カニューレもしくは鼻咽頭気道(NPA)、または他の関連する医療機器であることができる。送達デバイス102は、チューブまたはカニューレ型の呼吸ガス送達デバイスとして図1Aに示されるが、さらに、口および/または鼻にフィットする呼吸マスクであることができる。送達デバイス102は、送達デバイスを通り、出口ポート107を出て、患者の標的組織に低温呼吸ガス混合物103を供給かつ送達するように適合される、呼吸ガス源108に結合される。特に自発的に呼吸しない患者のために、任意に、ガス源は、機械的人工呼吸器/酸素吸入器109に接続され得る。
【0030】
冷却の任意の既知の方法を使用してガス混合物103を冷却することができる。これらの冷却方法は、ガス源108に組み込まれることができるか、または別個のシステム構成要素であり得る。例えば、熱交換器、電気冷却器、加圧、冷蔵等をシステム100で利用して、ガスを冷却することができる。熱交換器は、所望の温度を達成するために、冷却サイクル、可逆熱ポンプ、熱電加熱器/冷却器、ドライアイス、液体窒素もしくは他の凍結剤、または他の既知の加熱器/冷却器を利用することができる。同様に、凍結防止/水槽または液体窒素槽等の冷やされた液体槽にガス源108を浸漬させることができる。ガス混合物103を、例えば、−100℃もの低い温度等の非常に低温まで冷やすことができる。送達デバイス102を通って流れることができるガス混合物の温度が低いため、送達デバイス102を絶縁する必要があり得る。これは、ガラス繊維、気泡等の当技術分野において既知の任意の絶縁方法によって、または真空二重壁チャンバを使用することによって達成することができる。
【0031】
ガス混合物103は、空気、または、より効果的な熱交換のために酸素(約20%濃度以上)および高い熱容量(Cp)を持つガスを含む空気または特殊ガス混合物であり得る。混合物は、通常のもしくは精製された空気、またはより高濃度の酸素(20から100%)を有する空気であることができる。代替的なガス混合物は、20%酸素で80%ヘリウムであるHELIOX等の、酸素およびヘリウムであり得る。ヘリウムの比熱容量は、空気の比熱容量よりも非常に高いため、そのような混合物は、熱流量を向上させ、患者の温度を低下させるより効果的な方法を可能にし得る。別の実施形態において、ガス混合物は、空気より非常に高い比熱容量を有する高密度な非毒性ガスである六フッ化硫黄SF6を含むことができる。さらに、患者の呼吸数を調節するのに役立つように、二酸化炭素(CO)をガス混合物に添加し得る。亜酸化窒素を呼吸ガス混合物103に添加することもできる。上記に挙げたガス混合物および吸入しても安全である生体適合性ガスの他の組み合わせを任意に使用し得る。
【0032】
ガス混合物の圧力を制御することもできる。ガス混合物を加圧することで、質量流量をさらに向上させ、従って、熱伝達率を向上させる。ガス混合物は、患者に安全な既知のレベルまで加圧されるべきである(例えば、1.5〜2気圧)。代替として、呼吸ガスを混合し、かつ熱伝達率を向上させるのに役立つように、ガス混合物の圧力をパルス化することができ、つまり、高から低まで継続的に圧力を変動させることができる。
【0033】
呼吸ガス源108で、または別個のネブライザ等を使用して、ガス混合物103に、薬剤を添加することもできる。また、良好な熱伝達のために肺への血流を増加させ、かつ低温呼吸混合物による気管支収縮を防止する、気管支拡張薬、局所(吸入)血管拡張薬、または任意の他の薬物等の薬剤が添加され得る。さらに、蒸散を促す薬剤、末梢血管拡張薬、および震えを減少または除去する薬剤を、冷却呼吸ガス混合物とともに送達することができる。加えて、冷却呼吸ガス混合物を吸入することに関連し得る標的位置における疼痛を減少または除去するために、麻酔薬を、呼吸ガス混合物に添加することができ、または直接患者に投与することができる。低体温の所望の程度を達成するのに役立つように、抗戦慄剤および/または抗体温調節反応剤を、患者に投与し得る。代替として、または加えて、体内低体温を維持しながら震えを減少するために、暖気毛布または電気毛布等を用いて、体外加温が適用され得る。震えを制御するため、および/または患者の体温調節反応を「錯覚」させるために、患者の体の選択した部分の局所加熱が使用され得る。
【0034】
システム100は、冷却呼吸ガス混合物中に微細氷粒子101の凍結ミストを形成するよう、低温呼吸ガス混合物103に流体を注入するように構成される注入デバイス104をさらに備える。注入デバイス104は、好適には、送達デバイス102の遠位端または出口ポート107に、またはそれらの付近に位置付けられる。送達デバイスの出口ポートに近接して注入デバイスを位置付けることで、デバイスを出て、標的組織と接触する粒子の割合を最大限にしながら、患者の標的組織に氷粒子の凍結ミストを直接送達するシステム100の能力が最大限に引き出される。対照的に、出口ポートのさらに上流の任意の地点で、呼吸ガス混合物に液体を導入することで、送達デバイスの内壁に付着し、かつシステムの混雑または閉塞を引き起こす氷粒子がもたらされる場合があり、治療処置のために患者の標的組織に最終的に到達する氷粒子の数を減少させるか、または完全なシステム障害を引き起こす。微細氷粒子の凍結ミストが、患者の標的組織に可能な限り近接して形成されたとしても、依然として、システム内にいくらかの氷形成があり得る。従って、システム内から氷を除去する必要があり得る。これは、スクレーパ、ワイパー、ブラシを含む、種々の機械的な方法によって、低周波数、可聴周波数、超音波周波数での振動によって、または、いかなる蓄積物も融解させるために、送達デバイスを直接加熱するか、温かい呼吸ガス混合物がデバイスに流入することを定期的に可能にするかのいずれかにより熱を適用することによって、達成することができる。
【0035】
注入デバイス104を、流体ライン105によって流体源110に結合することができる。好適には、流体源は、患者の血液と等張となるように、生理食塩水(0.9%NaCl)または任意の所望の溶液を含有する。代替として、淡水、例えば、蒸留水が使用されもよい。淡水が使用される場合、等張濃度を維持するために、NaClが、呼吸混合物に添加され得、または、経口的に、もしくは別の経路から患者に投与され得る。ミスト形成に役立つように、流体源は、呼吸ガス混合物よりも高い圧力で保持され得る。微細氷粒子の凍結ミストを形成するために、水または生理食塩水以外の液体を使用することが望ましいことがある。従って、本明細書で使用される用語「微細氷粒子の凍結ミスト」は、凍結水または生理食塩水に制限されるべきではなく、むしろ、蒸気または液体から固体状態への相転移を受ける任意の物質を含むことが理解されるべきである。
【0036】
図1Aにおいて、注入デバイス104および流体ライン105は、注入デバイスが送達デバイスに結合される地点まで、送達デバイスの外側に位置付けられる。液体が低温呼吸ガス混合物中に放出される場合に微細氷粒子の形成に役立つように、流体源105内の流体を、呼吸ガス混合物に注入する前に、凍結に近い温度まで事前冷却することが有益であり得る。この目的のために、追加の熱交換器が含まれてもよい。代替として、より小型のシステムを提供するために、注入デバイス104および流体ライン105は、図1Bに示すように、送達デバイス内に位置付けられ得る。流体ライン周囲の低温呼吸ガス混合物は、−100℃もの低い温度に到達することができるため、流体ラインが送達デバイス内に位置付けられる場合、液体が流体ライン内で凍結することを防止するために、流体ラインを加熱する必要があり得る。図1A〜1Bに示すように、この加熱は、抵抗ワイヤのコイルで流体を巻くことによって達成することができる。他の加熱実施形態は、例えば、流体源110内の流体を加熱することを含み得る。呼吸ガス混合物を不利に加熱し、かつシステム100が呼吸ガス混合物中に凍結氷粒子の微細ミストを形成できることを阻止することを回避するために、加熱量は、可能な限り最小限であるべきである。
【0037】
注入デバイス104は、冷却呼吸ガス混合物に流体を注入するように適合される種々のデバイスを備えることができる。例えば、注入デバイス104は、水注入器、スプレーボトル/ノズル噴霧器、シェーカボトル、マイクロ流体注入器、ジェット衝撃ノズル、超音波ノズル、蒸気供給装置、超音波ネブライザ、渦巻きジェットノズル、インパクションピンノズル、衝突ジェットノズル、MEMSノズルアレイミスト発生装置、電気スプレーノズル、加熱キャピラリ、内部混合ノズル、外部混合ノズル、または当技術分野において既知の適切な注入器であることができる。注入デバイスを使用する代わりに、空気・水エアブラシ(つまり、ベンチュリ)または氷削機を用いて、氷粒子または流体/ミストをガス混合物に導入することもできる。注入デバイスのこれらの実施形態の多くを、以下および図面でさらに詳述する。
【0038】
システム100は、注入デバイスから低温呼吸ガス混合物への流体の注入を作動させるために、制御システム106をさらに備えることができる。好適には、流体の分配は、患者の呼吸周期の吸入時期中の患者への呼吸ガス混合物の流量に合わせて時間決定されるべきである。この結果を達成するために、制御システムは、吸入が生じる寸前、生じている時、および/または吸入が完了している時を示すセンサ入力を受信することができる。これは、圧力センサまたは流量センサを備え得る種々のセンサ112によって達成することができる。制御システムおよびセンサ112はまた、口腔内、尿道、皮膚、IR、または直腸プローブ等の、患者の温度を測定する任意の既知の方法を用いて患者の温度を記録かつ監視することもできる。制御システムは、呼吸ガス混合物の温度、流体の温度、患者に送達される呼吸ガス混合物の速度および体積、ならびに所望の患者温度に従って、注入デバイスによって呼吸ガス混合物に注入される流体の体積を調整するために、フィードバックとして測定された温度および圧力/流量センサを使用することができる。
【0039】
システム100のさらに別の実施形態を、図1Cに示す。システムは、上記のように、制御システム106、呼吸ガス源108、酸素吸入器109、流体源110、およびセンサ112を備えることができる。加えて、流体源は、氷粒子発生装置111およびポンプ113に接続される。氷粒子発生装置は、例えば、低温環境へのミスト注入または氷を削ること等の氷粒子発生の異なる方法を利用することができる。必要に応じて、患者に投与することができる凍結ミストを含んだ流れを作成するために、氷粒子を呼吸ガス混合物流に投入することができる。
【0040】
システム100での使用に適した注入デバイスの第1の実施形態を図2Aに示す。注入デバイス204aは、流体ライン205、プランジャ214、出口点216、戻しバネ218、およびソレノイドコイル220を備える。制御システムをソレノイドコイルに接続する導線等を用いて、注入デバイス204を制御システムに結合することができる。上記のように、流体ライン205を流体源に結合することができる。動作中、戻しバネ218は、ソレノイドコイル220が励起されない場合、プランジャ214に、出口ポート216に力を印加させ、かつそれを密封させる。しかしながら、プランジャ214は、ソレノイドコイル220が励起される場合、流体ライン205に向かって近位に引かれ、これにより液体が、流体注入器を通り、出口ポート216を出、呼吸ガス混合物流に流入することを可能とする。上記のように、流体の分配は、患者の呼吸周期の吸入時期中の患者への呼吸ガス混合物の流量に合わせて時間合わせされるべきである。従って、吸入時に患者内に液体を放出するよう、ソレノイドコイルの励起を作動するように制御システムを設計することができる。
【0041】
他の注入デバイス実施形態を、図2B〜2Gに示す。図2Bに示すような渦巻きジェットノズル204bは、上記のシステム100で使用することができる。渦巻きジェット内の空洞に、流体を加圧することができる。渦巻きジェットの内部空洞設計は、流体は加速し、回転させる。流体が、螺旋状に渦巻きジェットを出ると、ノズルの出口で圧力降下と組み合わされた遠心力により、流体が分散してミストになる。
【0042】
システム100とともに使用することができるインパクションピンノズル204cを、図2Cに示す。流体は、高速度でノズルを出て、ピン221に衝突し、これにより、流体が分散して微細ミスト雲になる。ピンに加えて、流体を飛散させ、ミストを作成するよう、高速度流体を平版または成形版に衝突させるように、ノズルを設計することができる。
【0043】
衝突ジェットノズル204dを、図2Dに示す。流体源から受け取った流体は、複数のチャネル222に分割される。チャネルを出る流体が衝突するように、チェネルは位置付けられ、それぞれの流体流を小液滴に分散して、ミストを形成する。
【0044】
図2Eは、非常に小さな貫通孔を有する穿孔要素224を備えるシェーカボトル注入器204eを示す。上記のような制御システムは、穿孔要素を振動させ、穿孔要素の片側の流体が、ミストを形成するよう小孔を通じて伝播することを可能にする。シェーカボトル注入器実施形態は、膜内に穿孔を作るように、微小電気機械システム(MEMS)を用いて、非常に小さいサイズで製造することができる。
【0045】
図2Fに示す実施形態において、微細液滴またはミストを作成するために、マイクロ流体チャネル226を有する電気浸透膜を組み入れるノズル設計を使用することができる。制御システムによって、マイクロ流体チャネルの近位端に正電荷が印加され、かつマイクロ流体チャネルの遠位端に負電荷が印加される場合、水は、電気浸透膜を横断して流れ、小液滴またはミストとして呼吸ガス混合物に流入する。
【0046】
さらに、図2Gの超音波ノズル204gは、流体がノズルを出る時に、流体を分散して微細ミスト液滴にするために、超音波トランスデューサ228を使用する。
【0047】
図3A〜3Bに示すようなシステム300および300’は、呼吸ガス中に微細氷粒子を形成するためのさらなる方法を提供する。システム300および300’は、流体源、呼吸ガス源、人工呼吸器/酸素吸入器、制御システム、およびセンサ等の上記の全てのシステム構成要素を備えることができるが、図を簡略化するために、これらの要素は、図3A〜3Bから省略されている。図3Aにおいて、送達デバイス302は、ベンチュリ要素として形作られる。ベンチュリ要素は、減少した断面積の区間を有する。呼吸ガス混合物303が、ベンチュリを通って流れる場合、その速度は増加し、圧力は減少する。より低い圧力は、流体を流体源310からベンチュリに引き入れ、空気と混合させ、これにより、液滴または微細ミストがガス混合物中で形成される。上記のように、ガス混合物の温度は、ミストまたは液滴がガス混合物に導入される時に、微細氷粒子の形成を引き起こすのに十分な低さである。
【0048】
同様に、図3Bのシステム300’はまた、ベンチュリ要素を利用して、呼吸ガス混合物中に凍結氷粒子の微細ミストを生成する。さらに、システム300’は、ベンチュリ要素を通じて第2のガス混合物を送達するように、送達デバイス302内に位置付けられるベンチュリ要素330および第2のガス源332を備える。システム300’は、2つの別個の気流通路を作成し、第1の通路は、患者による吸入に有用な呼吸ガス混合物303の大半を運ぶ。第2の空気通路(つまり、ベンチュリ330)は、微細氷粒子中に凍結される水滴のミストを作成するために使用される。図3Cに示すように、ベンチュリ要素および送達デバイス内の氷形成およびシステム劣化を防ぐために、抵抗ワイヤ334のコイル等によりベンチュリ要素を加熱すること有利であり得る。
【0049】
微細氷粒子の凍結ミストを形成するためのさらに別の方法を、図4A〜4Bに示す。図4Aにおいて、流体ライン405は、送達デバイス402の内側に部分的に沿って走る。流体ライン405内の流体が、十分な高圧に加圧される場合、流体は、流体ラインを通じて呼吸ガス混合物中に押し込まれ、液滴のミストまたは微細スプレーを形成する。図4Bの流体ラインの実施形態は、同じ概念を利用するが、スプレーを制御するために、電気機械的に作動されるピストン440、一方向弁438、および流体貯蔵所436をさらに追加する。ピストンが後退すると、一方向弁が開き、高圧流体が、周囲の呼吸ガス混合物を通って流れ、その中にミストを形成する。ピストンが前進すると、一方向弁が閉じ、ミストは形成されない。この実施形態は、例えば、ミスト形成を患者による吸入に合わせて時間決定するよう、上記の制御システムで利用することができる。
【0050】
図5A〜5Bは、呼吸ガス中に凍結氷粒子の微細ミストを形成するさらなる方法を示す。図5Aにおいて、氷削物、氷塊、小氷粒子は、氷ライン542によって、氷をより小さい断片または粒子にさらに分割する氷散乱装置544に運ばれる。次いで、微細氷ミストは、上記のように患者内に低温呼吸ガス混合物によって運ばれる。代替的な実施形態(図示せず)において、振動供給装置を用いて、患者の外部から送達デバイスに氷削物を運ぶことができる。振動供給装置の実施例は、材料を製造の組み立てラインまで“連れて行く”振動要素である。このシステムの小型版は、例えば、送達デバイスを通じて患者に送達するように適合かつ構成され得る。
【0051】
図5Bは、凍結氷粒子の微細ミストを作成するために蒸気を使用する。非常に低温の呼吸ガス混合物に供給される蒸気は、凍結氷粒子の微細ミスト中に凍結されるようにさらに冷却され得る水滴の形成をもたらす。蒸気は、熱を呼吸ガス混合物中に導入するため、上記の実施形態に記載した温度よりも低い温度まで呼吸ガス混合物503を冷却する必要があり得る。次いで、低温呼吸ガス混合物中のこれらの氷粒子を患者に送達することができる。
【0052】
本発明に関連する付加的な詳細に関しては、材料および製造技術は、当業者の水準内で採用され得る。一般的にまたは論理的に採用される付加的な作用の観点から、本発明の方法に基づく局面に対しても同じことが当てはまり得る。また、記載された本発明の変化形の任意の選択的な特徴は、独立して、または本明細書に記載される特徴の任意の1つ以上と組み合わせて、説明および主張され得ると考えられる。同様に、単数の項目の参照は、複数の同じ項目が存在する可能性を含む。より具体的には、本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「1つの(a)」、「および(and)」、「前記(said)」、および「その(the)」は、文脈によって別途明示的に記載がない限り、複数形も含む。さらに、特許請求の範囲は、任意の選択的な要素を排除するように作成され得ることを留意されたい。従って、この記述は、特許請求項の範囲の記載との関連において、「単に」、「唯一」等のそのような排他的用語の使用、または「否定的」限定の使用の前提のベースとしての役割を果たすことが意図される。本明細書に別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術および科学用語は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本発明の範囲は、本主題明細書によって制限されず、むしろ、採用される特許請求項の範囲の用語の明白な意味によってのみ制限される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に冷却呼吸ガス混合物を送達するように適合されている送達デバイスと、
該送達デバイスの遠位端付近に位置付けられている注入デバイスであって、液体源に結合されている、注入デバイスと、
該送達デバイスおよび該注入デバイスに結合されている制御システムと
を備え、該制御システムは、該冷却呼吸ガス混合物中に流体を解放し、該冷却呼吸ガス混合物中に微細氷粒子の凍結ミストを形成するために、該注入デバイスを制御するように適合されている、
治療処置システム。
【請求項2】
患者に冷却呼吸ガス混合物を送達するように適合されている送達デバイスと、
該送達デバイスの遠位端付近に位置付けられている注入デバイスと
を備え、該注入デバイスは、流体を解放し、該冷却呼吸ガス混合物中に微細氷粒子の凍結ミストを形成するように構成されている、
低温呼吸ガス送達システム。
【請求項3】
患者に冷却呼吸ガス混合物を送達するように適合されている気管内チューブと、
該気管内チューブの遠位端付近に位置付けられている注入デバイスと
を備え、該注入デバイスは、流体を解放し、該冷却呼吸ガス混合物中に微細氷粒子の凍結ミストを形成するように構成されている、
低温呼吸ガス送達システム。
【請求項4】
患者に冷却呼吸ガス混合物を送達するように適合されている鼻カニューレと、
該鼻カニューレの遠位端付近に位置付けられている少なくとも1つの注入デバイスと
を備え、該少なくとも1つの注入デバイスは、流体を解放し、該冷却呼吸ガス混合物中に微細氷粒子の凍結ミストを形成するように構成されている、
低温呼吸ガス送達システム。
【請求項5】
患者の咽喉に冷却呼吸ガス混合物を送達するための大きさを有するチューブと、
該チューブの遠位端付近に位置付けられている注入デバイスと
を備え、該注入デバイスは、流体を解放し、該冷却呼吸ガス混合物中に微細氷粒子の凍結ミストを形成するように構成されている、
低温呼吸ガス送達システム。
【請求項6】
冷却呼吸ガス混合物を送達するように適合されている呼吸マスクと、
該呼吸マスクの遠位端付近に位置付けられている注入デバイスと
を備え、該注入デバイスは、流体を解放し、該冷却呼吸ガス混合物中に微細氷粒子の凍結ミストを形成するように構成されている、
低温呼吸ガス送達システム。
【請求項7】
前記注入デバイスは、流体注入器である、請求項1〜6のうちのいずれかに記載の低温呼吸ガス送達システム。
【請求項8】
前記注入デバイスは、水注入器である、請求項1〜6のうちのいずれかに記載の低温呼吸ガス送達システム。
【請求項9】
前記注入デバイスは、空気・水エアブラシである、請求項1〜6のうちのいずれかに記載の低温呼吸ガス送達システム。
【請求項10】
前記注入デバイスは、ノズル噴霧器である、請求項1〜6のうちのいずれかに記載の低温呼吸ガス送達システム。
【請求項11】
前記注入デバイスは、シェーカボトルである、請求項1〜6のうちのいずれかに記載の低温呼吸ガス送達システム。
【請求項12】
前記注入デバイスは、マイクロ流体デバイスである、請求項1〜6のうちのいずれかに記載の低温呼吸ガス送達システム。
【請求項13】
前記注入デバイスは、ジェット衝撃デバイスである、請求項1〜6のうちのいずれかに記載の低温呼吸ガス送達システム。
【請求項14】
前記注入デバイスは、超音波液滴ノズルである、請求項1〜6のうちのいずれかに記載の低温呼吸ガス送達システム。
【請求項15】
前記注入デバイスは、蒸気供給装置である、請求項1〜6のうちのいずれかに記載の低温呼吸ガス送達システム。
【請求項16】
前記注入デバイスは、氷削機である、請求項1〜6のうちのいずれかに記載の低温呼吸ガス送達システム。
【請求項17】
前記注入デバイスは、超音波ネブライザノズルである、請求項1〜6のうちのいずれかに記載の低温呼吸ガス送達システム。
【請求項18】
前記注入デバイスは、渦巻きジェットノズルである、請求項1〜6のうちのいずれかに記載の低温呼吸ガス送達システム。
【請求項19】
前記注入デバイスは、インパクションピンノズルである、請求項1〜6のうちのいずれかに記載の低温呼吸ガス送達システム。
【請求項20】
前記注入デバイスは、衝突ジェットノズルである、請求項1〜6のうちのいずれかに記載の低温呼吸ガス送達システム。
【請求項21】
前記注入デバイスは、MEMSノズルアレイミスト発生装置である、請求項1〜6のうちのいずれかに記載の低温呼吸ガス送達システム。
【請求項22】
前記注入デバイスは、電気スプレーノズルである、請求項1〜6のうちのいずれかに記載の低温呼吸ガス送達システム。
【請求項23】
前記注入デバイスは、加熱キャピラリである、請求項1〜6のうちのいずれかに記載の低温呼吸ガス送達システム。
【請求項24】
前記注入デバイスは、内部混合ノズルである、請求項1〜6のうちのいずれかに記載の低温呼吸ガス送達システム。
【請求項25】
前記注入デバイスは、外部混合ノズルである、請求項1〜6のうちのいずれかに記載の低温呼吸ガス送達システム。
【請求項26】
患者を治療する方法であって、
該患者内の標的組織に冷却呼吸ガス混合物を送達するステップと、
該冷却呼吸ガス混合物中に微細氷粒子の凍結ミストを形成するために、該標的組織で、または該標的組織付近で、該冷却呼吸ガス混合物に流体を注入するステップと
を含む、方法。
【請求項27】
前記標的組織は、前記患者の鼻気道を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記標的組織は、前記患者の肺を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記標的組織は、前記患者の口および鼻気道を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記標的組織は、前記患者の咽喉を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記標的組織は、前記患者の気管を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
前記冷却呼吸ガス混合物に薬剤を注入するステップをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項33】
前記薬剤は、麻酔薬である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記流体は、流体注入器を用いて前記冷却呼吸ガス混合物に注入される、請求項26に記載の方法。
【請求項35】
前記流体は、水注入器を用いて前記冷却呼吸ガス混合物に注入される、請求項26に記載の方法。
【請求項36】
前記流体は、空気・水エアブラシを用いて前記冷却呼吸ガス混合物に注入される、請求項26に記載の方法。
【請求項37】
前記流体は、ノズル噴霧器を用いて前記冷却呼吸ガス混合物に注入される、請求項26に記載の方法。
【請求項38】
前記流体は、シェーカボトルを用いて前記冷却呼吸ガス混合物に注入される、請求項26に記載の方法。
【請求項39】
前記流体は、マイクロ流体デバイスを用いて前記冷却呼吸ガス混合物に注入される、請求項26に記載の方法。
【請求項40】
前記流体は、ジェット衝撃デバイスを用いて前記冷却呼吸ガス混合物に注入される、請求項26に記載の方法。
【請求項41】
前記流体は、超音波液滴ノズルを用いて前記冷却呼吸ガス混合物に注入される、請求項26に記載の方法。
【請求項42】
前記流体は、蒸気供給装置を用いて前記冷却呼吸ガス混合物に注入される、請求項26に記載の方法。
【請求項43】
前記流体は、氷削機を用いて前記冷却呼吸ガス混合物に注入される、請求項26に記載の方法。
【請求項44】
前記流体は、超音波ネブライザノズルを用いて前記冷却呼吸ガス混合物に注入される、請求項26に記載の方法。
【請求項45】
前記流体は、渦巻きジェットノズルを用いて前記冷却呼吸ガス混合物に注入される、請求項26に記載の方法。
【請求項46】
前記流体は、インパクションピンノズルを用いて前記冷却呼吸ガス混合物に注入される、請求項26に記載の方法。
【請求項47】
前記流体は、衝突ジェットノズルを用いて前記冷却呼吸ガス混合物に注入される、請求項26に記載の方法。
【請求項48】
前記流体は、MEMSノズルアレイミスト発生装置を用いて前記冷却呼吸ガス混合物に注入される、請求項26に記載の方法。
【請求項49】
前記流体は、電気スプレーノズルを用いて前記冷却呼吸ガス混合物に注入される、請求項26に記載の方法。
【請求項50】
前記流体は、加熱キャピラリを用いて前記冷却呼吸ガス混合物に注入される、請求項26に記載の方法。
【請求項51】
前記流体は、内部混合ノズルを用いて前記冷却呼吸ガス混合物に注入される、請求項26に記載の方法。
【請求項52】
前記流体は、外部混合ノズルを用いて前記冷却呼吸ガス混合物に注入される、請求項26に記載の方法。
【請求項53】
患者を治療する方法であって、
呼吸ガス混合物を形成するステップと、
該呼吸ガス混合物を冷却するステップと、
該患者内の標的組織に該冷却呼吸ガス混合物を送達するステップと、
該冷却呼吸ガス混合物中に微細氷粒子の凍結ミストを形成するために、該標的組織で、または該標的組織付近で、該冷却呼吸ガス混合物に流体を注入するステップと
を含む、方法。
【請求項54】
前記標的組織は、前記患者の鼻気道を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記標的組織は、前記患者の肺を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
前記標的組織は、前記患者の口および鼻気道を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項57】
前記標的組織は、前記患者の咽喉を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項58】
前記標的組織は、前記患者の気管を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項59】
前記冷却呼吸ガス混合物に薬剤を注入するステップをさらに含む、請求項53に記載の方法。
【請求項60】
前記薬剤は、麻酔薬である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記流体は、流体注入器を用いて前記冷却呼吸ガス混合物に注入される、請求項53に記載の方法。
【請求項62】
前記流体は、水注入器を用いて前記冷却呼吸ガス混合物に注入される、請求項53に記載の方法。
【請求項63】
前記流体は、空気・水エアブラシを用いて前記冷却呼吸ガス混合物に注入される、請求項53に記載の方法。
【請求項64】
前記流体は、ノズル噴霧器を用いて前記冷却呼吸ガス混合物に注入される、請求項53に記載の方法。
【請求項65】
前記流体は、シェーカボトルを用いて前記冷却呼吸ガス混合物に注入される、請求項53に記載の方法。
【請求項66】
前記流体は、マイクロ流体デバイスを用いて前記冷却呼吸ガス混合物に注入される、請求項53に記載の方法。
【請求項67】
前記流体は、ジェット衝撃デバイスを用いて前記冷却呼吸ガス混合物に注入される、請求項53に記載の方法。
【請求項68】
前記流体は、超音波液滴ノズルを用いて前記冷却呼吸ガス混合物に注入される、請求項53に記載の方法。
【請求項69】
前記流体は、蒸気供給装置を用いて前記冷却呼吸ガス混合物に注入される、請求項53に記載の方法。
【請求項70】
前記流体は、氷削機を用いて前記冷却呼吸ガス混合物に注入される、請求項53に記載の方法。
【請求項71】
前記流体は、超音波ネブライザノズルを用いて前記冷却呼吸ガス混合物に注入される、請求項53に記載の方法。
【請求項72】
前記流体は、渦巻きジェットノズルを用いて前記冷却呼吸ガス混合物に注入される、請求項53に記載の方法。
【請求項73】
前記流体は、インパクションピンノズルを用いて前記冷却呼吸ガス混合物に注入される、請求項53に記載の方法。
【請求項74】
前記流体は、衝突ジェットノズルを用いて前記冷却呼吸ガス混合物に注入される、請求項53に記載の方法。
【請求項75】
前記流体は、MEMSノズルアレイミスト発生装置を用いて前記冷却呼吸ガス混合物に注入される、請求項53に記載の方法。
【請求項76】
前記流体は、電気スプレーノズルを用いて前記冷却呼吸ガス混合物に注入される、請求項53に記載の方法。
【請求項77】
前記流体は、加熱キャピラリを用いて前記冷却呼吸ガス混合物に注入される、請求項53に記載の方法。
【請求項78】
前記流体は、内部混合ノズルを用いて前記冷却呼吸ガス混合物に注入される、請求項53に記載の方法。
【請求項79】
前記流体は、外部混合ノズルを用いて前記冷却呼吸ガス混合物に注入される、請求項53に記載の方法。
【請求項80】
前記形成するステップは、酸素および高い熱容量を有するガスを含むガス混合物から前記呼吸ガス混合物を形成するステップを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項81】
前記形成するステップは、酸素およびヘリウムを含むガス混合物から前記呼吸ガス混合物を形成するステップを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項82】
前記形成するステップは、酸素および二酸化炭素を含むガス混合物から前記呼吸ガス混合物を形成するステップを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項83】
前記形成するステップは、六フッ化硫黄を含むガス混合物から前記呼吸ガス混合物を形成するステップを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項84】
前記呼吸ガス混合物を加圧するステップをさらに含む、請求項53に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図2G】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【公表番号】特表2012−510344(P2012−510344A)
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539648(P2011−539648)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【国際出願番号】PCT/US2009/066380
【国際公開番号】WO2010/065616
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(511133532)サーモキュア, インコーポレイテッド (1)