説明

微細藻類コロニーからの細胞外テルペノイドの抽出法

本発明は、テルペノイドを生産して分泌する微細緑藻から、細胞外テルペノイド系炭化水素、例えば、ボツリオコッセン、メチル化スクアレンおよびカロテノイドなどを抽出して定量する方法を提供する。


【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年7月1日に提出された米国仮特許出願第61/222,410号の恩典を主張し、それは参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の背景
種々の炭化水素蓄積性微細藻類が存在する。これらにはボツリオコッカス(Botryococcus)属のメンバーが含まれる。この属は種々の炭化水素蓄積性微細緑藻を範囲に含み、それらは生産される炭化水素の化学構造に基づいて3つの主要な品種に分類される。品種Aは奇数型(C23-C33)n-アルカジエン(主としてジエン系炭化水素およびトリエン系炭化水素)を生産し、品種Bはトリテルペノイド系炭化水素、例えばC30-C37ボツリオコッセンおよびC31-C34メチル化スクアレンを生産し、一方、品種Lはテトラテルペノイド系炭化水素の1つであるリコパジエンを生産する(Metzger and Largeau, Appl. Microbiol. Biotechnol. 66:486-496, 2005(非特許文献1))。B品種は微小コロニー形成性微細緑藻の一群であり、個々の細胞サイズは長さ約10μmである。これらの微細藻類はプラスチドのDXP-MEP経路を介して長鎖テルペノイド系炭化水素を合成し(Lichtenthaler, Ann. Rev. Plant. Physiol. Plant. Mol. Biol. 50:47-65, 1999(非特許文献2);Koppisch et al., Organic. Lett. 2:215-217, 2000(非特許文献3))、それらを細胞外空間に沈着させ、それにより、複数の個々の細胞が付着する疎水性マトリックスを形成する(Banerjee et al., Crit. Rev. Biotechnol. 22:245-279, 2002(非特許文献4);Sato et al., Tetrahedron Lett. 44:7035-7037, 2003(非特許文献5);Metzger and Largeau, 前記、2005)。ボツリオコッセン系炭化水素は化学式CnH2n-10を有する修飾トリテルペンである(Banerjee et al., 前記、2002)。B品種によって生産されるボツリオコッセン系炭化水素は、乾燥バイオマス重量の最大30〜40%まで蓄積することがある(Metzger and Largeau, 前記、2005)。ボツリオコッセン系炭化水素が高レベルであること、およびこれらのコロニー形成性微細藻類がブルームを形成しうることから、合成化学およびバイオ燃料の供給原料の生産に向けたそれらの商業的開発の期待が高まっている(Casadevall et al., Biotechnol. Bioeng. 27:286-295, 1985(非特許文献6))。C30-C37ボツリオコッセンおよびC31-C34メチル化スクアレンは、触媒分解を介して、より短鎖の燃料型炭化水素、例えばガソリン用のC7HnからC11Hmまで、灯油(ジェット燃料)用のC12-C15、またはディーゼル油用のC16-C18などに変換しうることが示唆されている(Hillen et al., Biotechnol. Bioeng. 24:193-205, 1982(非特許文献7))。興味深いことに、石油の地球化学的分析により、ボツリオコッカス・ブラウニー(Botryococcus braunii)の祖先である微細藻類によっておそらく生成されたと考えられるボツリオコッセン型炭化水素が、現在の石油鉱床の源である可能性が示されている(Moldowan and Seifert, JCS Chem. Comm. 19:912-914, 1980(非特許文献8))。このため、微細藻類における光合成CO2固定によるボツリオコッセン系炭化水素の生産は、再生可能燃料の源を与え、大気中への温室ガスの放出を減らして、気候変化を防ぐ可能性がある(Metzger and Largeau, 前記、2005)。
【0003】
B.ブラウニーのコロニーは典型的には不定形の構造を有し、個々の洋ナシ形細胞が厚い炭化水素マトリックスによって結び付いた「ブドウ房状(botryoid)」構成を特徴とする形態を備えている。個々の細胞を取り囲むマトリックスは外部細胞壁を形成すること、およびB.ブラウニー炭化水素の大部分はこれらの細胞外格納構造内に貯蔵されることが報告されている(Largeau et al., Phytochem. 19:1043-1051, 1980(非特許文献9))。また、ボツリオコッセン系炭化水素は、細胞内に隔離された状態でも見いだされ、そこでこれらの分子の生合成および初期分離が起こる。細胞内炭化水素は微小コロニーの総炭化水素含有量のわずかな割合に過ぎず、それらを単離することは細胞外マトリックスと比較して、より困難である(Largeau et al., 前記、1980;Wolf et al., J. Phycol. 21:88-396, 1985(非特許文献10))。
【0004】
炭化水素の回収は、乾燥バイオマスの溶媒による抽出によって達成しうる(Metzger and Largeau, 前記、2005)。超臨界CO2抽出も使用されており、その抽出は30MPaの圧力で最適であることが見いだされている(Mendes et al., Inorg. Chim. Acta. 356:328-334, 2003(非特許文献11))。また、湿潤バイオマスと非毒性溶媒との接触も、炭化水素抽出のために適したアプローチであると報告されている(Frenz et al., Enzyme Microb. Technol. 11(11), 717-724 1989(非特許文献12))。しかし、簡単で費用がかからず、炭化水素を大規模に単離しうる抽出手順に対しては需要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Metzger and Largeau, Appl. Microbiol. Biotechnol. 66:486-496, 2005
【非特許文献2】Lichtenthaler, Ann. Rev. Plant. Physiol. Plant. Mol. Biol. 50:47-65, 1999
【非特許文献3】Koppisch et al., Organic. Lett. 2:215-217, 2000
【非特許文献4】Banerjee et al., Crit. Rev. Biotechnol. 22:245-279, 2002
【非特許文献5】Sato et al., Tetrahedron Lett. 44:7035-7037, 2003
【非特許文献6】Casadevall et al., Biotechnol. Bioeng. 27:286-295, 1985
【非特許文献7】Hillen et al., Biotechnol. Bioeng. 24:193-205, 1982
【非特許文献8】Moldowan and Seifert, JCS Chem. Comm. 19:912-914, 1980
【非特許文献9】Largeau et al., Phytochem. 19:1043-1051, 1980
【非特許文献10】Wolf et al., J. Phycol. 21:88-396, 1985
【非特許文献11】Mendes et al., Inorg. Chim. Acta. 356:328-334, 2003
【非特許文献12】Frenz et al., Enzyme Microb. Technol. 11(11), 717-724 1989
【発明の概要】
【0006】
本発明は、一部には、実質的な細胞溶解を伴わない微小コロニーの穏やかな分断、およびヘプタンまたはヘキサンなどの溶媒による抽出が、簡単な抽出プロトコールおよび抽出された炭化水素の量の分光光度的決定の基盤を与えるという発見に基づく。したがって、1つの局面において、本発明は、例えば、B.ブラウニーなどのボツリオコッカス属種の微細緑藻からの、トリテルペノイド系C30-C37炭化水素(ボツリオコッセン)およびメチル化スクアレンといった細胞外テルペノイド系炭化水素の抽出および分光光度的定量のための方法を提供する。本発明は、微小コロニーバイオマスから細胞外炭化水素を取り出すために、微細藻類微小コロニー、例えばB.ブラウニー微小コロニーを、ガラスビーズとともにボルテックス処理する工程を含みうる。続いて、密度平衡または水相/溶媒相(例えば、ヘプタンまたはヘキサンなどの溶媒)二相分配を典型的には使用して、これらの抽出性炭化水素をバイオマスから分離することができる。本発明はさらに、ボツリオコッカス、例えばB.ブラウニーから抽出されたボツリオコッセン、メチル化スクアレンおよびボツリオキサンチンの量を定量するための適した消衰係数を提供する。
【0007】
本発明はしたがって、微細藻類微小コロニーから、細胞外C30-C37ボツリオコッセンおよびC31-C34メチル化スクアレンテルペノイド系炭化水素を抽出する方法であって、以下の工程を含む方法を提供する:微細藻類微小コロニーを含む試料を提供する工程;微細藻類微小コロニーを機械的に分散させる工程であって、分散が細胞を破壊して内部を露出させること(break open)を実質的に伴わない工程;ヘキサン、ヘプタンまたはオクタンからなる群より選択される有機溶媒を用いてテルペノイド系炭化水素を抽出して、炭化水素を含有する有機溶媒を含む画分を入手する工程;および、有機溶媒画分中に存在するテルペノイド系炭化水素を分光光度的に定量する工程。好ましい態様において、テルペノイド系炭化水素はトリテルペノイド、例えば、C30-C37ボツリオコッセンおよびC31-C34メチル化スクアレンなどである。典型的な態様において、有機溶媒はヘプタンである。
【0008】
いくつかの態様において、有機溶媒、例えばヘプタン中に存在するボツリオコッセン系炭化水素を分光光度的に定量する工程は、炭化水素の190nmでの吸光度に対して約90±5mM-1cm-1の消衰係数を用いることを含む。
【0009】
好ましい態様において、微細藻類はボツリオコッカス属種、例えばボツリオコッカス・ブラウニーなどである。さらに、いくつかの態様において、ボツリオコッカス・ブラウニーはボツリオコッカス・ブラウニー変種ショウワ(Botryococcus braunii, var Showa)(Berkeley株)である。
【0010】
いくつかの態様において、微細藻類微小コロニーを機械的に分散させる工程、およびテルペノイド系炭化水素を抽出する工程は、同時並行的に行われる。典型的な態様において、そのような工程は、微細藻類微小コロニーを有機溶媒中でガラスビーズの存在下でボルテックス処理する工程を含む。
【0011】
いくつかの態様において、細胞外テルペノイド系炭化水素を抽出する工程は、微小コロニーを機械的に分断する前に、微細藻類コロニー試料を約100℃に加熱する工程を含む。加熱の工程は、典型的には約10分間または15分間にわたって行われる。
【0012】
いくつかの態様において、微小コロニーを機械的に分断する工程は、微小コロニーを有機溶媒中、例えばヘプタン中で低出力で音波処理する工程を含む。
【0013】
本発明はまた、トリテルペノイド系C30-C37ボツリオコッセンおよびC31-C34メチル化スクアレンをボツリオコッカス微細藻類微小コロニーから抽出する方法であって、以下の工程を含む方法も提供する:ボツリオコッカス微細藻類微小コロニーを含む試料を提供する工程;試料を約15分間または約10分間またはそれ未満にわたって約100℃に加熱する工程;ボツリオコッカス微小コロニーをヘプタン中でガラスビーズの存在下でボルテックス処理して、炭化水素を含有するヘプタンを含む画分を入手する工程;および、有機溶媒中に存在するボツリオコッセン系炭化水素を、炭化水素の190nmでの吸光度に対して約90±5mM-1cm-1の消衰係数を用いて分光光度的に定量する工程。いくつかの態様において、ボツリオコッカス属種はボツリオコッカス・ブラウニーである。
【0014】
1つのさらなる局面において、本発明は、細胞外C40カロテノイド系炭化水素、例えばボツリオキサンチン系炭化水素を微細藻類から抽出する方法であって、以下の工程を含む方法を提供する:緑藻微小コロニーを含む試料を提供する工程;緑藻微小コロニーをヘプタン中でガラスビーズの存在下でボルテックス処理して、炭化水素を含有するヘプタンを含む画分を入手する工程;ヘプタン画分中に存在するボツリオキサンチン系炭化水素を、約165±5mM-1cm-1の消衰係数を用いて450nmで分光光度的に定量する工程。典型的な態様において、微細藻類はボツリオコッカス・ブラウニーなどのボツリオコッカス属種、例えば、ボツリオコッカスB品種のメンバーである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1a.ヘプタン中のスクアレン溶液の吸光度スペクトル。単一の吸光バンドが200〜800nm領域に存在し、ピークは190nmである。図1b.(●)スクアレン濃度に対してプロットした、ヘプタン中のスクアレンの190mnでの吸光度。直線の勾配によってヘプタン中のスクアレンの190nmでの比吸光係数(消衰係数)が規定され、これは90±5mM-1cm-1に等しかった。(◇)3つの異なる試料で測定し、ボツリオコッセン濃度に対してプロットした、ヘプタン中のボツリオコッセンの190nmでの吸光度。後者は、その後にヘプタン溶媒を蒸発させて残渣を秤量する重力測定法によって決定した(ボツリオコッセンの読み取り値:A190=0.38、C=3.6μM;A190=0.435、C=4.7μM;A190=0.56、C=5.7μM)。
【図2】図2a.ヘプタン中のβ-カロテン溶液の吸光度スペクトル。典型的なカロテノイド吸光バンドが400〜500nm領域に存在し、顕著な吸光が450nmにみられる。図2b.β-カロテン濃度に対してプロットした、ヘプタン中のβ-カロテンの450nmでの吸光度。直線の勾配によってヘプタン中のβ-カロテンの450nmでの比吸光係数(消衰係数)が規定され、これは165±5mM-1cm-1に等しかった。
【図3】図3a.軌道振盪(orbital shaking)下にあるFernbachコニカルフラスコ内で、500mLの変法Chu-13培地中で増殖させたB.ブラウニー変種Showa培養物。オイルに富む微小コロニーは、軌道振盪下では遠心力の作用を受けてH2Oベースの増殖培地の中央に集まる。図3b.微小コロニーから増殖培地中に滲出したボツリオコッセン系炭化水素の小滴を明らかに示している、機械的に圧縮したB.ブラウニー変種Showaの微小コロニーの顕微鏡観察所見。
【図4】図4a.連続流加培養物から採取したB.ブラウニー変種Showaの乾燥細胞重量バイオマス。矢印は、一定の割合(培養物容積の40%)を採取して等量の新たな増殖培地を補充した時点、すなわち48時間毎の時点を指し示している。培養物1リットル当たりの採取したバイオマスの乾燥細胞重量をグラム単位で、連続培養下の増殖時間に対してプロットしている。図4b.図5に示されており、図7の実験的詳細に従った連続流加プロセスによる、B.ブラウニー変種Showa培養物の累積生産性。直線の勾配によってバイオマス蓄積の速度が規定され、それは125mg dcw L-1 d-1に等しかった。
【図5】図5a.ブドウ種状の緑色細胞および黄色がかった橙色のボツリオコッセン-カロテノイドマトリックス(Btc)を示している、分散させたB.ブラウニー変種Showa微小コロニーの顕微鏡観察所見。ナイルレッド染色により、黄色がかった橙色のマトリックスが強い蛍光を発することが示されており、これはこのマトリックス内が高疎水性環境であることと一致する。図5b.ボツリオコッカス・ブラウニー変種Showa細胞バイオマスおよびテルペノイド系炭化水素のショ糖勾配密度平衡分離。ショ糖密度遠心処理の前に、微小コロニーを機械的に分断した。10%刻みの濃度漸増段階を有する不連続的な10〜80%(w/v)のショ糖勾配を使用した。
【図6】ボツリオコッセン-カロテノイドを含有するヘプタン上相(a)の、B.ブラウニー変種Showaバイオマス下相(b)からの水相-有機相分配。また、Falconコニカル遠心管の底部に留まっている、微小コロニーの機械的分断のために用いたガラスビーズも示されている(c)。1gの湿潤パック細胞バイオマスを10mlのヘプタンの存在下でガラスビーズとともにボルテックス処理した後に10mlのB.ブラウニー増殖培地を混合物に添加して、水相-有機相を分離させた。
【図7】微小コロニーをガラスビーズとともにボルテックス処理した後の、B.ブラウニー変種Showaヘプタン抽出物の吸光度スペクトル。2つの別個の吸光バンドが、(a)ボツリオコッセン(希釈度=1:500)に起因するUV-C(ほぼ190nm)、および(b)カロテノイド(希釈度=1:4)に起因するスペクトルの青色(380〜520nm)領域に、それぞれ認められる。
【図8】図8a.対照試料(●)および100℃で10分間インキュベートした試料においてB.ブラウニー変種Showa微小コロニーから抽出されたボツリオコッセンの量。図8b.ヘプタンおよびガラスビーズの存在下におけるボルテックス処理時間に応じた、対照試料(●)および100℃で10分間インキュベートした試料(▲)においてB.ブラウニー変種Showa微小コロニーから抽出されたカロテノイドの量。
【図9】ボツリオコッセンおよびメチル化スクアレンの構造。
【図10】軌道振盪下にあるFernbachコニカルフラスコ内で、500mLの変法Chu-13培地中で増殖させたボツリオコッカス細胞。(a)ボツリオコッカス・ブラウニー変種Showa、(b)ボツリオコッカス・ブラウニー変種Kawaguchi-1、(c)ボツリオコッカス・ブラウニー変種Yamanaka、(d)ボツリオコッカス・ブラウニー変種UTEX 2441、(e)ボツリオコッカス・ブラウニー変種UTEX LB-572の微小コロニー、これらは遠心力の作用を受けてH2Oベースの増殖培地の中央に集まっている;(f)ボツリオコッカス・スデチクス(Botryococcus sudeticus)(UTEX 2629)培養物は均質な懸濁液を生じた。
【図11】連続流加培養物におけるボツリオコッカス株の累積バイオマス生産性。データポイントは、培養物の一定の割合(培養物容積の40%)を採取して等容積の新たな増殖培地を補充した時点を指し示している。細胞は、軌道振盪下にあるFernbachコニカルフラスコ内で、500mLの変法Chu-13培地中で増殖させた。直線の勾配によって、対応するバイオマス蓄積の速度が規定され、それらは(a)ボツリオコッカス・ブラウニー変種Showaについては125mg dw L-1 d-1、(b)Kawaguchi-1については80mg dw L-1 d-1、(c)Yamanakaについては135mg dw L-1 d-1、(d)UTEX 2441については60mg dw L-1 d-1、(e)UTEX LB-572については110mg dw L-1 d-1、および(f)ボツリオコッカス・スデチクス(UTEX 2629)については195mg dw L-1 d-1に等しかった。
【図12】すべてのB.ブラウニー株でのブドウ種状の緑色細胞(a〜e)およびボツリオコッカス・スデチクス(UTEX 2629)の丸い緑色細胞(f)を示している、分散させたB.ブラウニー変種Showa微小コロニーの顕微鏡観察所見。バーは10μmを指し示している。
【図13】試料の浮遊密度が高くなる順に並べた、さまざまな生きているボツリオコッカス細胞のインビボ浮遊密度。(a)ボツリオコッカス・ブラウニー変種Showa、(b)Kawaguchi-1、(c)Yamanaka、(d)UTEX 2441、(e)UTEX LB-572、および(f)ボツリオコッカス・スデチクス(UTEX 2629)。勾配段階中では10〜80%(w/v)のショ糖勾配を10%刻みで使用した。
【図14】(a)ボツリオコッカス・ブラウニー変種Showa、および(b)ボツリオコッカス・ブラウニー変種Kawaguchi-1の音波処理後のボツリオコッカスバイオマスからの細胞外炭化水素の水性浮遊分離。勾配段階中では10〜80%(w/v)のショ糖勾配を10%刻みで使用した。
【図15】ボツリオコッカス・ブラウニー変種Showa(aおよびc)およびボツリオコッカス・ブラウニー変種Kawaguchi-1(bおよびd)の微小コロニーのヘプタン抽出物の吸光度スペクトル。スペクトルの青色(380〜520nm)領域における抽出物の吸光(aおよびb)は、2つの株からの細胞外カロテノイドに起因する。スペクトルの遠UV(190〜220nm)領域における抽出物の吸光(cおよびd)は、それぞれ、2つの株からの細胞外ボツリオコッセンに起因する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明の詳細な説明
定義
本発明に関して、「テルペノイド系炭化水素」または「イソプレノイド系炭化水素」という用語は、2つまたはそれ以上のイソプレン単位の組み合わせによって形成されるテルペノイド系炭化水素のことを指す。「テルペノイド系炭化水素」は、本明細書における定義では、トリテルペノイド系炭化水素であるボツリオコッセンおよびメチル化スクアレンを含む。
【0017】
本発明に関して、「ボツリオコッセン」とは、ボツリオコッカスのテルペノイド生合成経路に由来するトリテルペノイド系C30-C37炭化水素のことである。ボツリオコッセン構造の一例は図9に提示されている。
【0018】
同じく、本発明に関して、「メチル化スクアレン」とは、ボツリオコッカスのテルペノイド生合成経路に由来するトリテルペノイド系C31-C34炭化水素のことである。メチル化スクアレン構造の一例は図9に提示されている。
【0019】
「ボツリオキサンチン」とは、ボツリオコッカスによって生産されて分泌されるカロテノイドのことを指す。
【0020】
藻類「微小コロニー」とは、炭化水素マトリックスによって結び付いた緑藻細胞、例えばボツリオコッカス緑藻細胞の集合体のことを指す。
【0021】
本発明に関して、藻類微小コロニーの「機械的分断」とは、剪断力によって微小コロニーを分断して分散させるための、物理的プロセス、例えば撹拌、音波処理などの使用のことを指す。
【0022】
藻類微小コロニー
本発明は、緑藻の細胞によって生産され、その微小コロニー内で細胞外に蓄積する、テルペン系炭化水素を抽出する方法を提供する。本発明に用いられる緑藻は、典型的には、ボツリオコッカス属のメンバーである。しかし、テルペノイド系炭化水素を、炭化水素が分泌される他の微小コロニー形成性藻類から、本明細書に記載されたような方法を用いて抽出することもできる。
【0023】
炭化水素の抽出
本発明は、緑藻微小コロニーから細胞外のテルペノイド系およびカロテノイド系炭化水素を収集する方法を提供する。抽出しうるテルペノイドには、トリテルペノイド系炭化水素、例えばC30-C37ボツリオコッセンおよびC31-C34メチル化スクアレンなどが含まれる。ボツリオコッセン系炭化水素とは、化学式CnH2n-10を有する修飾トリテルペンのことである。本発明のいくつかの態様において、細胞外ボツリオコッセン系炭化水素はボツリオコッカス属種から抽出される。
【0024】
炭化水素は、藻類細胞を破壊して内部を露出させることを実質的に伴わずにコロニーを機械的に分散させる方法を用いて、藻類微小コロニーから抽出される。炭化水素は主として微小コロニーの細胞外空間に存在するため、生物によって生産されるテルペノイド系および/またはカロテノイド系炭化水素の大半を入手することができる。本発明に関して、「破壊して内部を露出させることを実質的に伴わない」とは、細胞の少なくとも70%、多くの場合は少なくとも80%または90%が無傷である分散手法のことを指す。本発明において、細胞の完全性は、典型的には、顕微鏡による目視検査を用いて無傷の緑色細胞を探すことによって決定される。細胞による増殖を再開させ、その後に細胞外炭化水素の収集を行うことは、細胞またはそれらのかなりの割合が無傷であると判定するためのもう1つの方法である。
【0025】
任意の機械的分散方法を使用することができる。例えば、いくつかの態様においては、微小コロニーを、水性溶液中、例えば水中で、または抽出のために用いられる有機溶媒中で、振盪するか、またはボルテックス処理する。これは例えば、その手順が実質的に細胞を破壊して内部を露出させない限り、最大で約2700rpmまたは約3200rpmまたは約3500rpmまたはそれ以上の撹拌速度で行うことができる。好ましい態様において、溶液中での藻類のボルテックス処理は、典型的にはガラスビーズの存在下で、例えば、湿細胞重量1g当たり1gのガラスビーズの存在下で行われる。当業者には理解されるであろうが、ガラスビーズの代わりに、他の多くの小型で固形の不活性物質、例えば、細砂、小型の鋼製球状ボールなどをこの目的に用いることもできる。
【0026】
他の機械的分散手法には、音波処理、またはフレンチプレスセル(French Pressure Cell)の通過が含まれる。この態様において、音波処理は細胞の破壊を避けるために低出力で行われる(例えば、Branson音波発生器による音波処理を、50%デューティサイクルパルスモード、出力5で30秒間ずつ、中間に60秒間の冷却期間をおいて3回行うことなど)。同様に、フレンチプレスセルの通過は、細胞の破裂を避けるために比較的低い圧力(例えば、例えば0.5〜5kpsi)で実行される。
【0027】
いくつかの態様においては、緑藻微小コロニーを含む試料を、微小コロニーからの細胞外炭化水素の分離を促進するために、例えば、最高で約80℃、90℃、95℃または約100℃での熱処理に供する。熱処理は典型的には、30分間未満または20分間未満にわたって、例えば10分間にわたって行われる。熱処理により、試料を物理的分散、例えば撹拌などに供する時間の長さを短縮することができる。したがって、いくつかの態様においては、試料を、最大で1時間またはそれ以上にわたってボルテックス処理してもよい。他の態様においては、試料を10分間にわたって熱処理し、続いて30分未満の期間にわたって撹拌してもよい。
【0028】
本方法は、ヘキサン、ヘプタンまたはオクタンを抽出のために使用する。典型的には、抽出は物理的分散と併せて行われ、例えば、微小コロニーの撹拌または音波処理が溶媒中で行われる。しかし、いくつかの態様においては、微小コロニーを水性溶液中で分散させ、その後に溶媒を用いて水性溶液を抽出してもよい。さらに他の態様においては、炭化水素を水性媒質中での浮遊によって細胞バイオマスから分離することもできる。
【0029】
炭化水素の定量
本発明はまた、抽出された炭化水素を分光光度分析を用いて定量する方法も提供する。多くの場合、抽出された炭化水素の定量は、以下の等式を用いて行われる:
ボツリオコッセン(Btc)炭化水素の場合:[Btc]=[A190/ε190)×MWbtc×V]/mdcw、式中、190nmでの消衰係数(ε190)は90±5mM-1cm-1である。(A=吸光度;MWbtc=ボツリオコッセン(スクアレン)の分子量;V=用いた溶媒(ヘプタン、ヘキサンまたはオクタン)の容積;mdcw=抽出されたバイオマスの乾燥細胞重量のグラム数)
【0030】
ボツリオキサンチンなどのカロテノイド系炭化水素も、本明細書に記載された方法を用いて抽出され、分光光度的に定量される。いくつかの態様において、ボツリオキサンチンの濃度は、式:[ボツリオキサンチン]=[A450/ε450)×MWbtc×V]/mdcwを用いて算出することができ、式中、450nmでの消衰係数(ε450)は165±5mM-1cm-1である。
【実施例】
【0031】
本明細書に記載される実施例は例証のみとして提供されるものであり、限定的なものではない。当業者は、当業者は、種々の決定的でないパラメーターを変更または修正しても本質的に同様な結果が得られることを容易に認識するであろう。
【0032】
材料および方法
細胞増殖および培養の条件
ボツリオコッカス・ブラウニー変種Showa(Nonomura, Jap. J. Phycol. 36:285-291, 1988)のバッチ培養物を、研究室において、2LのFernbachコニカルフラスコ内で増殖させた。細胞は500mLの変法Chu-13培地中で増殖させた(Largeau et al., Phytochem. 19:1043-1051, 1980)。およそ50mlの2週齢のB.ブラウニー変種Showa培養物を、新たな培養物の接種に用いた。細胞は25℃で、照度50μmol光子m-2 s-1(PAR)の冷白色蛍光の連続照明下で、60rpmの軌道振盪(Lab-Line Orbital Shaker No. 3590)下において増殖させた。FernbachフラスコにはStyrofoam栓で蓋をして、十分な換気、すなわち、培養物と外部空間との間のガス交換が可能になるようにした。
【0033】
B.ブラウニーの増殖は重力測定法で測定し、液体培養物の容積当たりの湿細胞重量(wcw、パック細胞容積測定に基づく)および乾燥細胞重量(dcw)の両方として表した(g L-1)。細胞重量分析は、B.ブラウニー培養物をMillipore Filter(孔径8μm)に通して濾過し、その後に蒸溜水で洗浄することによって行った。フィルターの余分な水分を通気によって除去した。フィルターを、研究室用オーブン(Precision)内で80℃にて24時間乾燥させる前および後に秤量し、乾燥細胞物質を重力測定法で測定した。この分析により、B.ブラウニー変種Showa微小コロニーに関するdcw/wcw比が約(0.125±0.025):1であることが示唆された。
【0034】
炭化水素の抽出および分離
細胞を液体培地から4,500×g、10分間の遠心処理(Beckman Coulter/Model J2-21)によって採取した。湿細胞重量およそ1gのB.ブラウニーのペレットを、1gのガラスビーズ(直径0.5mm)と混合し、10mLのヘプタン(HPLCグレード‐Fischer Scientific)の添加によって懸濁させた。ヘプタン中の細胞懸濁液を、指定された通りの種々の期間にわたり、最大のボルテックス処理速度でボルテックス処理した(Fisher Vortex Genie-2)。このボルテックス処理の後に、10mLの増殖培地を混合物に添加し、迅速な水相-ヘプタン相二相分配を生じさせた。下部の水相は細胞を含有しており、一方、上部のヘプタン相は抽出された炭化水素を含有していた。ヘプタン層を取り出して、UV/可視分光光度計(Shimadzu UV 160U)における吸光度スペクトルの測定のために収集した。分光光度分析の前に、ピーク波長での吸光度の値が0.5吸光度単位を超えないように、試料を希釈した。
【0035】
抽出性Showa炭化水素のヘプタン溶液を注意深く収集して、炭化水素の重量分析的定量のために、気流下において乾燥するまで蒸発させた。
【0036】
クロロフィル測定
既知の量の培養物ペレットを、等しい重量のガラスビーズ(直径0.5mm)および既知の容積のメタノールと混合した。ガラスビーズ-メタノール-バイオマス混合物を、バイオマスの色調が白くなり、細胞内色素が十分に抽出されたことが示されるまで、ボルテックス処理した。粗抽出物を濾過し、緑色メタノール相の吸光度を470nm、652.4nmおよび665.2nmで測定した。カロテノイド、クロロフィル(a+b)の総含有量、およびChl a/Chl b比を、Lichtenthaler & Buschmann In: Wrolstad RE, Ed. Current protocols in food analytical chemistry. New York: John Wiley & Sons Inc. pp. F4.3.1-F4.3.8, 2001)に従って決定した。
【0037】
実施例1.分子消衰係数の決定
スクアレンおよびβ-カロテンの分子消衰係数を、ヘプタンを溶媒とする、これらの実施例で用いる実験条件下で決定した。ヘプタンを選出する溶媒として選択したのは、それが細胞に対して過度の有害作用を伴わずに(非毒性)、親油性分子を増殖培地から取り出しうること、さらにはそれが、関心対象の炭化水素が吸収するスペクトルのUV領域および青色領域を大幅には吸収しないことが理由である。この特性は、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ジエチルエーテル、ドデカンおよびテトラデカン酸イソプロピルといった、他の有機溶媒では観察されなかった。
【0038】
ヘプタン中のスクアレン(ACROS Organics、純度99%)のUV/可視吸光度スペクトルは、ピークが約190nmにある単一の吸光バンドを示した(図1a)。この溶媒中でのこのトリテルペンに関する消衰係数を得る目的で、190nmでのこの吸光度の、ヘプタン中のスクアレンの濃度に対する依存性を判定した。190nmでの吸光度の値を、0〜10μMのスクアレン濃度範囲にわたって測定した。吸光度の測定値をスクアレン濃度と対比した直線の勾配(図1b、●)により、ヘプタン中のスクアレンの190nmでの分子消衰係数は90±5mM-1cm-1であると規定された。ヘプタン中でのスクアレンのこの消衰係数は、Grieveson et al. (Anal. Biochem. 252:19-23, 1997)によって、195nmで59±2mM-1cm-1と決定された、アセトニトリル中でのそれよりも幾分大きかった。
【0039】
ヘプタン中のボツリオコッセン抽出物を定量的吸光度分光分析法にも用いた。図1b(◇)は、3つの異なる試料で測定し、ボツリオコッセン濃度に対してプロットした、ヘプタン中のボツリオコッセンの190nmでの吸光度を示している。後者は、その後にヘプタン溶媒を蒸発させて残渣を適したmg尺度で秤量する重力測定法で決定した。これらの結果は、スクアレンおよびボツリオコッセンがヘプタン中でのそれらの濃度に応じて同じA190を有し、それ故に同じ消衰係数を有することを示唆している。
【0040】
ヘプタン中のβ-カロテン(MP Biomedicals)のUV/可視吸光度スペクトルは、スペクトルの青色領域において複数のカロテノイド吸光バンドの典型的な特徴を示した(図2a)。主要な吸光バンドは450nmにピークを伴って存在し、第2の吸光は425nmおよび480nmにピークがあった。そのような溶媒中でのこのカロテノイドに関する消衰係数を得る目的で、450nmでの主要な吸光の、ヘプタン中のβ-カロテンの濃度に対する依存性を判定した。450nmでの吸光度の値を0〜6μMのβ-カロテンの濃度範囲にわたって測定した。吸光度の測定値をβ-カロテン濃度と対比した直線の勾配(図2b)により、ヘプタン中のβ-カロテンの450nmでの分子消衰係数は165±5mM-1cm-1であると規定された。ヘプタン中のβ-カロテンのこの消衰係数は、他の溶媒中で得られた結果と一致していた。例えば、Zhang et al.(J. Biol. Chem. 274:1581-1587, 1999)は、ヘキサン中のε(450nmでのβ-カロテン)が134mM-1cm-1であると報告しており、一方、Eijckelhoff & Dekker(Photosynth. Res. 52:69-73, 1997)は、メタノール中でのε(450nmでのβ-カロテン)が140mM-1cm-1であることを見いだしている。Land et al.(J. Chem. Soc. D - Chem. Commun. 6:332, 1970)は以前に、515nmの波長領域におけるヘキサン中のβ-カロテンの消衰係数が170±40mM-1cm-1であると報告している。
【0041】
ヘプタン中のβ-カロテンの吸光度スペクトルを青色領域から低波長UV領域の190nmまで延長した。この色素に関するA190/A450比は約4:1であると決定された(提示せず)。この比の決定は、A190測定値を、ヘプタンShowa抽出物中のボツリオコッセンとカロテノイドとの間で適正に配分するために重要であった。
【0042】
実施例2.B.ブラウニー変種Showaの微小コロニー特性
図3aは、増殖の種々の相にあるShowa培養物の一群のFernbachフラスコを示している。これらの培養物において典型的であり、他の単細胞微細藻類の培養物と明確に異なるのは、Showaの微小コロニーが増殖培地の中央に集合する、または「遠心力の作用を受けて集まる」傾向であり、これは見たところ、培養物の軌道振盪の結果およびこれらの微小コロニーの炭化水素含有量が多いことの帰結であるように思われる。Showa炭化水素は、「軽度に圧縮された」微小コロニー調製物の顕微鏡像の中に容易に認めることができ、そこには、ボツリオコッセン系炭化水素の小滴が微小コロニーから滲出しているのが明らかに見られる(図3b)。
【0043】
実施例3.B.ブラウニー変種Showaの増殖および生産性の速度
バッチ培養下でおよそ10日間増殖させた後に、Showa細胞は、培養物1リットル当たり約200mgの乾燥細胞重量というバイオマス密度に達した。連続培養条件下での増殖速度を測定するために、40%容積(200mL)の初期培養物をFernbachフラスコから取り出し、同一容積の新たな増殖培地を補充した。この取り出し-および-補充を48時間毎に繰り返し、その後に遠心処理による採取およびバイオマスの測定を行った。図4aは、採取したバイオマスの乾燥細胞重量を1リットル当たりのグラム数としてプロットしている。図4a中の結果は、バイオマス蓄積の速度が培養物1リットル当たりおよび48時間当たりで約250mg乾燥細胞重量であること、または約125mg dcw L-1 d-1に等しいことを示唆している。そのような実験による累積乾燥細胞重量を図4bにプロットしている。この連続増殖系において、および使用した具体的な増殖条件下で、直線の勾配は藻類バイオマスの増加が125mg dcw L-1 d-1という速度で起こることを示しており、これは以前の測定値と合致する(図4a)。比較として、An et al. (J. Appl. Phycol. 15:185-191, 2003)は、二次的に処理した豚舎廃水中でバッチリアクター内で増殖させた、ボツリオコッカス・ブラウニーUTEX-572の培養物のバイオマス蓄積の速度が、ほぼ190mg dcw L-1 d-1(約30mg L-1 d-1のボツリオコッセンを含む)であると報告している。一方、二次的に処理した下水中で、一日希釈率が0.57である連続バイオリアクターシステム内で増殖させた、同じくUTEX-572株を用いた取り組みで、Sawayama et al.(Appl. Microbiol. Biotechnol. 41:729-731, 1994)は、バイオマス生産速度が約28mg dcw L-1 d-1に過ぎないことを測定した。これらの結果から、バイオリアクターのデザインおよび増殖培地の組成を含むB.ブラウニー増殖条件が、培養物の生産性に影響を及ぼしうることは明白である。
【0044】
実施例4.B.ブラウニー変種Showa微小コロニーの機械的分散
Showa微小コロニーの機械的分散試験を、そのような外部剪断力の下での微小コロニーの挙動について試験するために実施した。これは、増殖培地中の培養物の音波処理またはガラスビーズの脈動(beating)によって実行した。機械的に分散させたShowa微小コロニーの顕微鏡観察所見(図5a)により、通常は稠密である微小コロニーの広範囲にわたる解体(disintegration)が明らかになった。実質的に細胞外にある黄色がかったマトリックス(図5a、Btc)は、主としてブドウ種状の緑色細胞から分離していた。興味深いことに、Showa細胞は、通常であれば強固に形成されている微小コロニーの機械的分散にもかかわらず、その無傷性を保っているように見えた。ナイルレッド染色により、コロニーを取り囲むBtcマトリックスの親油性が裏づけられ、さらに、おそらくボツリオコッセンの隔離部位と考えられる、高親油性物質による細胞内小球(intracellular globule)が明らかになった。図5aに示された結果は、ボツリオコッセンの大半が細胞外に位置することを実証している。これらの結果は、細胞内にあるのはボツリオコッセンの約7%のみであり、これらの炭化水素の大半は細胞外コロニーマトリックスを形成していると推計した、Wolf et al.(前記、1985)による知見と一致する。同様に、Largeau et al.(前記、1980)は、ボツリオコッセンの95%が細胞外の炭化水素プールに位置することを報告している。
【0045】
機械的分散が、疎水性ボツリオコッセン-カロテン炭化水素を微小コロニーの細胞外マトリックスから取り外すために十分であるか否かを判定するために、機械的に分散させた微小コロニーのショ糖勾配における簡単な遠心処理を行った。ショ糖勾配中での遠心処理は、試料の「密度平衡」の測定により、バイオマスの浮遊密度の指標を得るために最近デザインされた(米国特許出願第12/215,993号;Eroglu and Melis, Biotechnol. Bioeng. 102:1406-1415, 2009)。機械的に分散させたShowa微小コロニーを用いて実施したそのようなショ糖密度遠心処理の結果は、図5bに見られる。驚いたことに、これらの結果により、10%ショ糖段階の上部に浮遊している黄色がかった炭化水素(図5b)の、40〜50%ショ糖段階の近傍で平衡に達しているB.ブラウニーの緑色バイオマスとの明確な分離が示された。
【0046】
実施例5.B.ブラウニー変種Showa培養物における炭化水素生産性の決定
実施例4における前記の機械的分散実験により、ボツリオコッセンおよび関連した炭化水素を、微小コロニーの細胞外マトリックスから選択的に抽出しうるであろうことが示唆された。ヘプタンの存在下におけるShowaバイオマスのガラスビーズとのボルテックス処理は、微小コロニーからの細胞外炭化水素の放出、およびそれに引き続いてのそれらのヘプタン相への可溶化をもたらした。図6は、上部ヘプタン相(図6a)は清澄な黄色がかった溶液を含有し、一方、下方の水相は緑色細胞バイオマス(図6b)を含有するという、そのような抽出実験の成果を示している。ガラスビーズもFalconチューブの底部に認められる(図6c)。このヘプタン抽出物の吸光度スペクトルの測定値は図7に示されている。1つ目はボツリオコッセン系炭化水素に起因するUV-C(λmax=ほぼ190nm)にピークがあり、2つ目は、B.ブラウニーにおける細胞外炭化水素と関連していると思われるカロテノイドに起因するスペクトルの青色領域(380-520nm)にピークがある、2つの別個の分離した吸光バンドを識別することができた。興味深いのは、このスペクトルに緑色着色がなく、クロロフィル吸光バンドが存在しないことであり、これは、ヘプタンで抽出された炭化水素は細胞外空間から生じており、細胞内由来の光合成機構の構成要素からではないという見解と一致する。ヘプタン中のShowa抽出物の振幅比A190/A450は110:1の範囲内にあると測定された;すなわち、カロテノイドの吸光度に起因する4:1よりもかなり大きかった。これらの分光光度的測定、ならびに図1bおよび図2bの結果から得られた消衰係数に基づき、[Btc]/[Car]=200:1のモル:モル比であると決定された([Car]:[Btc]=0.5:100のモル:モル)。
【0047】
細胞のクロロフィル含有量、および微小コロニーの総カロテノイド含有量を測定し、その後にメタノール抽出およびLichtenthaler & Buschmann(前記、2001)の分光光度的定量方法を行った。総クロロフィル(a+b)は5±1mg per g dcw(0.5±0.1% w/dcw)であることが見いだされ、Chl a/Chl b比は2.2:1(±0.2)であった。細胞のこのChl含有量は文献で報告されているものと同程度である。例えば、Singh & Kumar(World J. of Microbiol. and Biotechnol. 8:121-124, 1992)による測定では、バッチ培養下における至適条件下および窒素欠乏条件下でのB.ブラウニー培養物のChl a含有量が、乾燥細胞重量のそれぞれ0.7%および0.4%であることが示されている。
【0048】
Showa培養物の総カロテノイド含有量は2.5±1mg per g dcw(0.25±0.1% w/dcw)であり、これはChl/Car比に換算すると2:1(w/w)前後である。このカロテノイド定量は、ボツリオコッセン画分と関連のある細胞外カロテノイド、および光合成機構と関連のあるチラコイド膜カロテノイドの両方を含む。
【0049】
ヘプタン中のボツリオコッセンおよびβ-カロテンの分子消衰係数(それぞれ図1bおよび2b)の適用により、B.ブラウニー微小コロニーからガラスビーズ法によって抽出されたこれらの炭化水素の量の定量的測定のための直接的で便利な方法が得られる。本研究では、Showa培養物から抽出されたボツリオコッセン(Btc)およびカロテノイド(Car)の量を、以下の等式に基づいて算出した:
[Btc]=[(A190/ε190)×MWBtc×V]/mdcw (1)
[Car]=[(A450/ε450)×MWCar×V]/mdcw (2)
式中、[Btc]および[Car]はμg per g dcw単位で与えられる;A=吸光度;ε=ボツリオコッセン(190nm)およびカロテン(450nm)に関するモル消衰係数;MWBtc=スクアレンの分子量(411g/mol);MWCar=β-カロテンの分子量(537g/mol);V=抽出のために用いたヘプタンの容積(mL);ならびに、mdcw=抽出に供したバイオマスの量(乾燥細胞重量のグラム数)。
【0050】
図8aは、ヘプタンおよびガラスビーズの存在下におけるボルテックス処理時間に対する、対照試料(●)および100℃で10分間インキュベートした試料(▲)において抽出されたボツリオコッセンの量の経時的推移を示している。これらの結果から、微小コロニーから抽出されるボツリオコッセンの量はボルテックス処理時間に応じて徐々に増加し、0.32g Btc per g dcw(32% w/dcw)に達することが明白である。ボルテックス処理の前に試料を100℃に10分間加熱することにより、Btc抽出の効率は高くなり、これらの炭化水素の抽出のために必要な時間は約3.5分の1に短縮された。図8bはまた、ボルテックス処理時間に応じて、微小コロニーから抽出されるカロテンの量も増加して、0.0022g Car per g dcw(0.22% w/dcw)に達することも示している。ボルテックス処理の前に試料を100℃に10分間加熱することにより、Car抽出の効率は高くなり、これらの炭化水素の抽出のために必要な時間は約3.3分の1に短縮されたが、これはBtcの抽出で得られた結果と一致する。
【0051】
分光光度的吸光度分析に基づくこれらの結果は、Showa株からの抽出物の重量分析測定値と一致しており(提示せず)、また、以前に報告された結果とも一致する。例えば、Wolf et al.(前記、1985)は、Showaがその乾燥バイオマスの24〜29%をボツリオコッセン系炭化水素の形で蓄積することを報告している。Yamaguchi et al.(Agric. Biol. Chem. 51:493-498, 1987)は、「Berkeley」株、すなわちShowaから、100g dcw当たり34gの炭化水素を測定している。Nonomura(前記、1988)は、ShowaにおけるBtc炭化水素含有量(約30% w/dcw)は、B.ブラウニーの他の株よりも(1.5〜20%)多いことを報告している。Okada et al.(J. Appl. Phycol. 7:555-559, 1995)は、B.ブラウニーB品種の微小コロニーが、乾燥細胞重量の10〜38%の範囲で炭化水素を蓄積すると推定している。B.ブラウニー培養物からボツリオコッセン系炭化水素と共抽出されるカロテノイドの存在も報告されている。Thomas et al.(Screening for lipid yielding microalgae: Activities for 1983. Final Subcontract Report, Solar Energy Research Institute, USA 1984)は、B.ブラウニーUTEX-572におけるカロテノイド形成が0.22〜0.48% w/dcwの範囲であることを報告している。Rao et al.(Bioresour. Technol. 98:560-564, 2007)は、B.ブラウニーUTEX-572において抽出性カロテノイド色素の含有量が約0.25% w/dcwであると推定している。バイオマスに比しての相対的なカロテノイド蓄積は、培養物の「齢数(age)」に依存する可能性がある。例えば、茶色がかった呈色を有する定常相にある細胞は、通常は緑色に見える活発に増殖している細胞よりも、この色素をより多い相対量で含むと考えられる(Largeau et al., 前記、1980)。
【0052】
また、ボツリオコッカス種のいくつかにおいては、ボツリオコッセンと共有結合したカロテノイドが細胞外マトリックスを形成している可能性がある(Okada et al., Tetrahedron 53:11307-11316, 1997)。修飾された細胞外カロテノイドは「ボツリオキサンチン」と名づけられており、これはボツリオコッセンとボツリオキサンチンとの間の化学量論的均衡性を意味する。しかし、ボツリオコッセン系炭化水素が、ボツリオコッカス・ブラウニー変種Showaの抽出物中のいかなるそのようなカロテノイドよりもはるかに多いことは、本発明者らの結果から明白である。
【0053】
これらの実施例は、このように、ボツリオコッカス微小コロニーからのボツリオコッセン系炭化水素の分離を、水中でボルテックス処理した後に浮遊密度平衡によって炭化水素をバイオマスから分離させるか、または溶媒としてのヘプタン中でボルテックス処理した後に可溶化された炭化水素(上方のヘプタン相)のバイオマス(下方の水相)からの水相/有機相二相分離を行うかのいずれかにより、微小コロニーをガラスビーズとともにボルテックス処理することによって、機械的に達成しうることを実証した実験を提示している。
【0054】
上方のヘプタン相のスペクトル分析により、一方がボツリオコッセンに起因するUV-Cで吸光し、もう一方がカロテノイドに起因するスペクトルの青色領域で吸光する、2つの別個の化合物の存在が明らかになった。ヘプタン中での190nmでのトリテルペンの吸光度(ε=90±5mM-1cm-1)および450nmでのカロテノイドの吸光度(ε=165±5mM-1cm-1)に関して比吸光係数を求めた。これにより、B.ブラウニー変種Showa培養物からヘプタンで抽出しうるボツリオコッセンおよびカロテノイドの直接的な分光光度的定量が可能になった。それにより、B.ブラウニー変種Showaは、抽出性(細胞外)ボツリオコッセン(その乾燥バイオマスの約30%、重量/重量)およびカロテノイド(その乾燥バイオマスの約0.2%、重量/重量)を恒常的に蓄積することが推定された。さらに、ボツリオコッカスバイオマスの熱処理により、抽出方法の速度および収量が大幅に助長されることも実証された。
【0055】
実施例6.微細藻類株における炭化水素生産性を定量するための方法の比較
この実施例では、6種類の異なるボツリオコッカス株(2つはB品種、4つはA品種)を、形態、生産性および炭化水素蓄積によって比較した。B.ブラウニーのバイオマスおよび炭化水素蓄積の収量の複数の独立定量のための密度平衡、分光光度法および重量分析アプローチを含む、炭化水素生産性を評価するための種々の方法を使用した。その結果から、B.ブラウニーのB品種株による炭化水素蓄積の収量はA品種のものよりもかなり多いことが示された。その上、B品種のボツリオコッセン系炭化水素は、バイオマスから容易かつ定量的に分離することができた。さらに、この取り組みにおける比較分析の結果により、B品種の微細藻類によるボツリオコッセンのトリテルペノイド系炭化水素の蓄積は、A品種の微細藻類によるジエンおよびトリエンの蓄積よりも、バイオマスからの炭化水素分離の収量および特異性のいずれの点でも優れていた。
【0056】
この実施例に関する材料および方法は以下の通りである:
【0057】
生物、増殖条件およびバイオマス定量
6種類の異なるボツリオコッカス属種およびコナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii)の細胞を、500mLの変法Chu-13培地(Largeau et al., 前記、1980)中で、2LのFernbachコニカルフラスコ内で増殖させた。ボツリオコッカス・ブラウニー変種Showaは、University of Californiaから入手した(UC Berkeley Herbariumアクセッション番号UC147504)(Nonomura, 前記、1988)。ボツリオコッカス・ブラウニーKawaguchi-1株およびYamanaka株は、University of Tokyoから入手した(Okada et al., 前記、1995)。ボツリオコッカス・ブラウニーUTEX 2441、UTEX LB-572およびB.スデチクスUTEX 2629は、Univ. of Texasの培養物コレクションから入手した。細胞を25℃で、入射照度50μmol光子m-2 s-1(PAR)の冷白色蛍光の連続照明下において、60rpmの軌道振盪(Lab-Line Orbital Shaker No. 3590)下にて増殖させた。フラスコにはStyrofoam栓で蓋をして、十分な換気、すなわち、培養物と外部空間との間のガス交換が可能になるようにした。2週齢の培養物を、新たに接種された培養物の出発細胞濃度が1リットル当たり約0.1g乾燥重量(dw)となるようにして、新たな培養物の接種に用いた。連続流加増殖条件下における増殖速度を測定するためには、培養物の一定の割合(総容積の40%)をFernbachフラスコから定期的に取り出して、等容積の新たな増殖培地を補充した。採取容積1リットル当たりのグラム数として測定した、採取したバイオマスの乾燥細胞重量および炭化水素含有量を、時間に対してプロットした。培養採取および培地補充の頻度は、ボツリオコッカス・スデチクス(UTEX 2629)については24時間、ボツリオコッカス・ブラウニー変種Showa、ボツリオコッカス・ブラウニー変種Yamanaka、ボツリオコッカス・ブラウニー変種UTEX LB-572については48時間とし、ボツリオコッカス・ブラウニー変種Kawaguchi-1およびボツリオコッカス・ブラウニー変種UTEX 2441については72時間とした。
【0058】
藻類の増殖およびバイオマス蓄積を重力測定法で測定し、培養物の容積当たりの乾燥重量(dw)によって表した(g L-1)。乾燥細胞重量分析は、試料をMillipore Filter(孔径8μm)に通して濾過することによって行った。細胞重量は、最近記載された通りに(Eroglu and Melis, Bioresource Technology, 101(7):2359-2366, 2010)、フィルターを研究室用オーブン(Precision)内で80℃にて24時間乾燥させた後に測定し、その上で乾燥細胞物質(dw)の測定を行った。適用する場合には、微小コロニーの分散を、出力7および50%デューティサイクルで動作させたBranson音波発生器による試料の4分間の音波処理によって達成した(Eroglu and Melis, 前記、2009)。音波処理プロセスは4℃で実施した。
【0059】
密度平衡測定
ショ糖濃度が10〜80%(w/v)の範囲にわたり、10%刻みの濃度漸増段階を有する、培養物アリコートのショ糖密度勾配遠心処理法を調製した。ショ糖を、10mM EDTAおよび5mM HEPES KOHを含む溶液(pH 7.5)中に溶解させた。炭化水素の定量のための密度平衡の概念の適用に関する本研究室による取り組みにおいて最近記載された通りに(Eroglu and Melis, 前記、2009)、ショ糖溶液をこの勾配で静置した。関心対象の微小コロニー、単細胞または細胞成分粒子を含む試料を、あらかじめ形成した勾配の上に注意深く層状に重ね、その後にポリアロマーチューブの遠心処理を、JS-13.1スウィングバケット型Beckmanローターにおいて加速度20,000gで30分間、4℃で行った。試料の密度平衡位置をこの遠心処理の終了時に記録した。試料の音波処理は、適宜、出力7および50%デューティサイクルで動作させたBranson音波発生器により、4分間適用した。
【0060】
炭化水素の分光光度的定量
ボツリオコッカス細胞を液体培地から濾過によって採取した。湿重量(ww)およそ1gのボツリオコッカスのケークを100℃で10分間インキュベートした。熱処理の後に、細胞ケークを1gのガラスビーズ(直径0.5mm)と混合し、10mLのヘプタン(HPLCグレード‐Fischer scientific)中に再懸濁させた。ヘプタン中の細胞懸濁液を、最大速度で15分間にわたってボルテックス処理した(Fisher Vortex Genie-2)。ヘプタンの存在下におけるボツリオコッカスバイオマスのガラスビーズとのボルテックス処理は、微小コロニーからの細胞外炭化水素の放出、およびそれに引き続いてのヘプタン相への可溶化をもたらした。水相/有機相二相分配(Eroglu and Melis, 前記、2010)の後に、上方のヘプタン相を、UV/可視分光光度計(Shimadzu UV1800)における吸光度スペクトルの測定のために収集した。抽出性トリテルペノイド(ボツリオコッセン)系炭化水素をUV-C領域(λmax=ほぼ190nm)における吸光度から判定し、一方、付随するカロテノイドは、スペクトルの青色領域(λmax=ほぼ450nm)におけるヘプタン溶液の吸光度から判定した。さまざまなボツリオコッカス培養物から抽出されたボツリオコッセン(Btc)およびカロテノイド(Car)の総量を、ボツリオコッセン(ε190nm=90±5mM-1cm-1)およびカロテノイド(ε450nm=165±5mM-1cm-1)に関するモル消衰係数εに基づいて算出した(実施例5)。
【0061】
クロロフィル(Chl)およびカロテノイド(Car)含有量の分光光度的定量
既知の量の培養ペレットを既知の容積のメタノールと混合した。メタノールバイオマス混合物を、バイオマスの色調が白くなり、細胞内色素が十分に抽出されたことが示されるまで、高速でボルテックス処理した。粗抽出物を濾過し、緑色メタノール相の吸光度を470nm、652.4nmおよび665.2nmで測定した。カロテノイド、クロロフィル(a+b)の総含有量、ならびにChl a/Chl b比およびCar/Chl比を、Lichtenthaler and Buschmann(2001)に従って決定した。
【0062】
親油性抽出物の重量分析定量
細胞の総メタノール抽出物を注意深く収集し、重量分析的定量のために気流下において乾燥するまで蒸発させた。そのような抽出物は、ジグリセリド(DG)、Chl、Car、および場合によっては蓄積性炭化水素も含め、すべての親油性細胞化合物を含む。蓄積性炭化水素の量は、ジグリセリド(DG)、ChlおよびCarの含有量を、親油性細胞抽出物全体から差し引くことによって推定した。これは、モデルとなる微細藻類であるコナミドリムシに関して導き出された、既知(かつ微細藻類間で一定である)のDG/Chl比の考察によって達成された。後者はテルペノイド系炭化水素もアルカジエン系炭化水素も蓄積しない。それ故に、コナミドリムシにおけるアシル-グリセロールの大多数はDGである。
【0063】
統計分析
結果の統計分析は、3つの独立した測定に基づく。結果は、これらの3つの独立した測定値の平均±標準偏差として表す。
【0064】
結果
細胞増殖
Fernbachコニカルフラスコ内でのボツリオコッカス培養物の軌道振盪は、炭化水素を多く含む微小コロニーを「遠心力によって」フラスコの中央に集まらせ、清澄な増殖培地がその周囲に残るようにする。図10は、さまざまなボツリオコッカス培養物を用いて軌道振盪器上で撮影した、一群のFernbachフラスコ写真を示している。ボツリオコッカス・ブラウニー変種Showa(図10a)、Kawaguchi-1(図10b)、Yamanaka(図10c)、UTEX 2441(図10d)およびUTEX LB-572(図10e)の培養物がすべて、「遠心力によって」500mLの増殖培地の中央に集まっているのが認められる。その反対に、図10fは、細胞懸濁液が軌道振盪中に液体培地全体を通じて均質である、ボツリオコッカス・スデチクス(UTEX 2629)の培養物を示している。
【0065】
微小コロニーが軌道振盪によって増殖培地の中央に向かって分離する傾向(図10)は、培養物に加えられた遠心力の結果および微小コロニーの炭化水素含有量の帰結であるように思われる。この論点は、炭化水素を蓄積しない他の微細藻類の観察所見によって裏づけられている。例えば、大幅に異なる「密度平衡」特性を有する、厚い細胞壁を備えたコナミドリムシ、および細胞壁を持たないドナリエラ・サリナ(Dunaliella salina)(Eroglu and Melis, 前記、2009)は、同様の軌道条件下で培養した場合にいずれも、液体培地の全体を通じて均質に分散した細胞懸濁液を示した(提示せず)。さらに、B.ブラウニー変種Showa微小コロニー、およびボツリオコッセン系炭化水素を取り出した細胞は、軌道振盪によって増殖培地中に均質に分散するようになった。増殖培地中に細胞が均質に分散したB.スデチクス(図10f)は、B.ブラウニー株を用いた場合と同程度には炭化水素を蓄積しないと推測される。
【0066】
種々のボツリオコッカス株の増殖速度を、連続流加培養下における同一条件下での培養によって求めた。培養物の一定の割合(培養物の容積の40%)の定期的取り出しおよび等容積の新たな増殖培地の補充を行いながら、バイオマス蓄積を測定した。これらの条件下で、培養物は活発な増殖相に保たれた。生産性の推定値は、培養物の定常状態総容積ではなく、この連続流加プロセスにおいて使用および補充した増殖培地の容積に基づく。培養物の生産性に関してこれを基盤として選択した根拠は、商業的な炭化水素生産用の連続流加プロセスでは補充容積に伴うコストが突出していると考えられ、培養物の定常状態容積のものはそれほど大きくないと考えられるためである。各ボツリオコッカス株からのバイオマスの累積乾燥細胞重量を1リットル当たりのグラム数として測定し、図11にプロットした。直線の勾配から得られるバイオマス蓄積の速度により、B.スデチクスは195mg dw L-1 d-1の速度でdwを蓄積し、図11f)、B.ブラウニー変種Yamanakaは135mg dw L-1 d-1の速度でdwを蓄積し、図11c)、以下、Showa(125mg dw L-1 d-1、図11a)、UTEX LB-572(110mg dw L-1 d-1、図11e)、Kawaguchi-1(80mg dw L-1 d-1、図11b)およびUTEX 2441(60mg dw L-1 d-1、図11d)の順であることが明らかになった。
【0067】
ボツリオコッカス株の微細構造構成
ボツリオコッカス・ブラウニーB品種は、典型的には不定形の三次元微小コロニー構造を有し、個々のブドウ種状または洋ナシ形の細胞が周囲の炭化水素マトリックスによって結び付いたブドウ房状構成を特徴とする(Metzger and Largeau, 前記、2005;Eroglu and Melis, 前記、2010)。これらの微小コロニーは、最大で直径1mmのサイズに達するまで増殖することができる(Bachofen, Experentia 38:47-49, 1982)。B.ブラウニー炭化水素の大部分は、外部細胞壁の内部、および微小コロニー構造の細胞外空間内に貯蔵される(Largeau et al., 前記、1980)。Wolfら(Wolf et al., 前記、1985)は、ボツリオコッセンのおよそ7%のみが細胞内にあり、微小コロニー炭化水素の大半は細胞外マトリックスを形成すると算出している。同様に、Largeau et al.(前記、1980)は、ボツリオコッセンの95%は細胞外の炭化水素プールに位置すると報告している。
【0068】
しかし、ボツリオコッカス型微細藻類の種々の株の間には形態的ばらつきがある。この取り組みにおいて考察した株の顕微鏡検査(図12a〜f)により、細胞のサイズおよび形状の両方に差異があり、それはマトリックス中への埋没の程度の大小、さらには、線毛様構造を形成し、細胞のクラスターを明らかに連結させ、それにより大きなコロニーの形成を招く屈折性スレッド(refracting thread)の有無などでありうることが示された。これらの特徴はB.ブラウニーB品種、例えばShowa(図12a)およびKawaguchi(図12b)では明らかに認められ、それらはB.ブラウニーA品種、例えばYamanaka(図12c)でも識別しうるが、UTEX 2441(図12d)およびLB-572(図12e)ではあまり十分には発達していない。ボツリオコッカス・スデチクス(UTEX 2629)は前記の株のいずれとも明確に異なる細胞形状を有し、それらの間に連結性を認めない完全に球状の単細胞からなる(図12f)。rRNAシークエンシングに基づいて、Senousy et al.(J. Phycol. 40:412-423, 2004)がボツリオコッカス・スデチクスを緑藻(Chlorophyceae)に分類していることは注目に値し、このことはそれがボツリオコッカスとは全く異なる属に属することを示唆している。図12における株の顕微鏡描出は現場でのボツリオコッカス試料の正しい同定に役立つと考えられ、これはさらに、規模を拡大した培養物において、侵入性微細緑藻をボツリオコッカスバイオマスの一部として往々にして誤って処理することを改善すると考えられる。
【0069】
ボツリオコッカスコロニーの密度平衡特性
湿潤バイオマスケーク(ww)および乾燥バイオマス重量(dw)分析を、微細藻類培養物をMillipore Filter(孔径8μm)に通して濾過し、その後に蒸溜水ですすぎ洗いして、フィルターを研究室用オーブンで乾燥させることによって行った。この定量分析により、検討したボツリオコッカス株のそれぞれに関するdw/ww比の指標が得られた。コナミドリムシCC503株をこの実験法において対照として使用した。KawaguchiおよびUTEX LB572を除き、他のすべての株はdw/ww比が0.24(±0.06):1 w/wであった(表1)。これらの微細藻類のdw/ww比は植物細胞で測定されたものよりも高く(Park and Kim, Biotechnol. Tech. 7:627-630, 1993)、このことは微細藻類におけるバイオマスの密度の高さ、および水で満たされたかなり大きい液胞が存在しないことを反映している。表1はまた、UTEX LB-572が0.08(±0.02):1 w/wというかなり低いdw/ww比を有するように思われ、一方、Kawaguchi-1は0.38(±0.03):1 w/wというはるかに高いdw/ww比を有すると思われたことを示している。
【0070】
(表1)さまざまなボツリオコッカス種およびコナミドリムシCC503株に関する乾燥重量(dw)と湿重量(ww)との比、および密度平衡値。密度平衡値は生きている培養物のショ糖勾配遠心処理法によって決定した

【0071】
0.24(±0.06):1 w/wという平均dw/ww比は、以前に報告されたいくつかの測定値とは食い違う。例えば、コナミドリムシおよび類似の微細緑藻における乾燥重量と湿重量との比は0.1:1 w/wであると報告されている(Ward, Phytochemistry 9:259-266, 1970)。この違いは、細胞の湿重量決定に使用したアプローチが異なるためである。濾過および「湿細胞ケーク」アプローチは、遠心処理および湿潤ペレット測定よりも多くの水を微細藻類から除去する傾向がある。これはオイル含有性の微細藻類について特にそうであり、それらは通常はいかなるタイプの遠心処理でも沈降させることが困難であり、その結果、相当量の水がペレットによって保持されることになる。
【0072】
直接密度平衡測定は、微細藻類における総脂質含有量の迅速インサイチュー推定のために、最近報告された(Eroglu and Melis, 前記、2009)。本方法は、細胞の絶対脂質含有量を算出することのできる生細胞または微小コロニーの密度(ρ)の測定に基づく。この方法を、検討した6種のボツリオコッカス株のそれぞれに適用した。図13は、10〜80%ショ糖勾配中での遠心処理後の、種々の株の密度平衡特性を示している。B品種株のうち2つ(ShowaおよびKawaguchi-1)は、検討したボツリオコッカスの中で最も浮遊性が高かった。Showa微小コロニーは10%ショ糖密度の上部に浮遊し、すなわちそれらはρ<1.039g/mLという密度を呈した(図13a)。これは以前の測定値と一致し(Eroglu and Melis, 前記、2009)、この場合にはShowa微小コロニー密度はより高精度にρ=1.031g/mLであると測定された。Kawaguchi-1の微小コロニーはおよそ10%のショ糖勾配段階の箇所で浮遊し、すなわち、それらはρ=1.039g/mLという総合密度を有していた(図13b)。2種類のA品種株(YamanakaおよびUTEX 2441)はより高いρ値を呈したが、これはショ糖勾配中でのそれらの密度平衡位置が、30%ショ糖段階のそれぞれ上部境界および下部境界にあることが見いだされたためである(図13cおよび図13d)。Yamanakaに関して算出された絶対密度はおよそρ=1.10g/mLであり(図13c)、UTEX 2441に関してはそれはρ=1.14g/mLであった(図13d)。同様に、LB-572株(A品種)細胞はρ=1.23g/mLに等しい密度を呈したが、これはそれらがおよそ50%のショ糖勾配段階で平衡化したためである(図13e)。一方、ボツリオコッカス・スデチクス(UTEX 2629)は検討した試料の中で最も高い密度を有することが判明したが、これはそれがρ=1.350〜1.382g/mLに対応する70〜75%のショ糖勾配段階で平衡化したためである(図13f)。6種のボツリオコッカス株のそれぞれに関して測定された密度平衡値は、表1にもまとめている。この分析により、ボツリオコッカス・ブラウニー変種Showa微小コロニーが、検討した6種の株のうち最も低い密度平衡を有することが明らかになった。このことは、Showaが液体炭化水素、すなわち、C30-C34ボツリオコッセンを高濃度で生産するという点で、クロロコックム目(Chlorococcales)の他のメンバーとは異なるという証拠を提示したNonomura(前記、1988)による知見と一致する(Sato et al., 前記、2003;Okada et al., Arch. Biochem. Biophys. 422:110-118, 2004;Metzger and Largeau, 前記、2005)。この特性は、Showaに対して相対的に低い密度平衡および高度の浮遊性を付与するように思われる。
【0073】
Showa株およびKawaguchi-1株の浮遊密度に対する炭化水素の寄与を独立して測定するために、音波処理および浮遊(実施例4)を使用した。このアプローチでは、微小コロニーを音波処理またはガラスビーズを伴うボルテックス処理によって機械的に分断し、その後にショ糖密度勾配遠心処理法を行った。微小コロニーの機械的分散により、炭化水素が細胞の外部から取り外され、前者がショ糖勾配の上部に浮遊することになった。図14は、音波処理したShowa(図14a)およびKawaguchi(図14b)微小コロニーの密度平衡プロファイルを示している。黄色がかった橙色を呈する炭化水素画分が10%ショ糖密度段階の上部に浮遊していることが明らかに認められ、一方、B.ブラウニーの緑色バイオマスは30〜50%のショ糖密度段階の近傍で平衡化し、このことは細胞密度が約1.28g/mLであることを示唆する。このように、Showa株およびKawaguchi株の微小コロニーからの細胞外炭化水素の選択的取り出しは、未処理の微小コロニーのものと比較して、はるかに高度の密度平衡特性を細胞に与えた(図13aおよび13b)。黄色の浮遊物バンドはこれらのB.ブラウニーB品種株に由来し、すなわち、Showa(図14a)およびKawaguchi-1(図14b)はボツリオコッセンおよびカロテノイドの混合物からなり、全体的な密度は水のものよりも低かった(ρ<1g/mL)。Showaの浮遊性ボツリオコッセン画分は、Kawaguchi-1の対応する橙色画分と比較してより黄色が強いように見えたが(図14)、これはおそらく後者におけるカロテノイド含有量がより多いためであると考えられる(下記参照)。上記の指摘は、これらのボツリオコッカス微小コロニーからの2つの密度平衡構成要素(黄色の炭化水素および緑色バイオマス)の量が、使用した試料の量ならびに機械的分散の持続時間および出力に依存することによってさらに裏づけられ、このことは、試料サイズ、微小コロニー分散の程度、ならびに黄色および緑色の産物の量との間に因果関係があることを示唆している。これらの結果は、水性密度平衡を用いることで、抽出性炭化水素をボツリオコッカス微小コロニーから成功裏に分離しうることを支持するものである。
【0074】
表2は、一定容積での「質量保存」の法則、ならびに無傷の微小コロニーの密度平衡値、浮遊性炭化水素、および抽出性炭化水素を除いたバイオマスを関連づける2つの連立方程式の適用に基づく、ShowaおよびKawaguchiにおける炭化水素蓄積の量の推定値を提示している。これは、バイオマスの浮遊密度および相対量、ならびに微小コロニー試料における炭化水素含有量を関連づける、以下の2つの連立方程式の適用によって達成された(Eroglu and Melis, 前記、2009):
ρS=(x・ρP)+(y・ρB) (3)
x+y=1 (4)
上記の等式(3)および(4)は、以下のような変数の実験的測定を必要とする:ρS、試料の総合密度、これはShowaについては1.03g/mLに、Kawaguchiについては1.08g/mLに等しい(表1);ρP、純粋な炭化水素産物の密度、これはどちらの株についても0.86g/mLである(Eroglu and Melis, 前記、2009);ρB、抽出性炭化水素を除いた各々のバイオマスの密度、これはどちらの株についても1.28g/mLである(表2);xは、試料中の抽出性炭化水素の%画分重量である;および、yは、抽出性炭化水素を除いたバイオマスの%画分重量である。
【0075】
上記の連立方程式の解により、ShowaおよびKawaguchiにおけるボツリオコッセン系炭化水素含有量としてそれぞれ30%および23%(w/w)が得られた(表2)。
【0076】
(表2)ボツリオコッカス・ブラウニー変種Showaおよび変種Kawaguchi-1(B品種)の微小コロニーからの細胞外炭化水素の分光光度的決定

【0077】
A品種株では、微小コロニーの機械的分散およびショ糖密度遠心処理を介した各々の細胞バイオマスの分離を行っても、炭化水素の同様の差次的抽出を達成することができなかった。種々のガラスビーズおよび/または音波処理レジメンを適用したものの、結果はまちまちであった。この取り組みにおいては、おそらくはC25〜C31奇数型n-アルカジエンおよびアルカトリエンと考えられる炭化水素の放出が、細胞からのクロロフィルおよび他の光合成色素の放出に連動して起こった。そのような機械的に処理した試料のショ糖密度遠心処理は、クロロフィルと混合された炭化水素の浮遊をもたらした(提示せず)。これらの結果により、A品種細胞は、それらのB品種同等物とは異なり、微小コロニーの機械的分散によって容易に壊れて、光合成色素を放出させ、それらが続いて培地中でジエン系炭化水素と混合されることが示唆された。
【0078】
ボツリオコッカスB品種株における炭化水素含有量の分光光度的決定
本発明の抽出方法は、Showa微小コロニーの湿潤ケークをヘプタンの存在下でガラスビーズとともにボルテックス処理する工程を含み、それは、本明細書に記載したように、細胞破壊および緑色(Chl)色素の放出を伴うことなく、微小コロニーからの細胞外炭化水素の定量的放出およびそれらのその後のヘプタン相への可溶化をもたらす。ヘプタンを利用するこの差次的炭化水素抽出アプローチは、この実施例において、Showa株およびKawaguchi株の両方に対して成功裏に適用することができた。
【0079】
スペクトルの可視領域(380〜520nm)で測定したそのようなヘプタン抽出物の吸光度スペクトルはカロテノイドの存在を示し、2種の株の間で吸光度特徴はかなり類似していた(図15aおよび15b)。ヘプタン抽出物はまた、トリテルペノイドボツリオコッセンに起因する遠UV-C(λmax=ほぼ190nm)における別個の吸光バンドも示した。この2つのUV-Cスペクトルの吸光度特徴もShowaとKawaguchiとの間でかなり類似しており(図15cおよび15d)、このことは、この2つのB品種株に同じ種類のボツリオコッセンが存在することを示唆する。通常であれば強固に形成されている微小コロニーの機械的分散、ならびに細胞外ボツリオコッセンおよびカロテノイドの選択的取り出しにもかかわらず、ShowaおよびKawaguchiの洋ナシ形のB品種株は無傷に保たれていることが顕微鏡検査で明らかになった。B品種株からの細胞外炭化水素のこの特異的および定量的な取り出しおよび回収は、再生可能な炭化水素の生成および回収におけるB.ブラウニーの商業的開発の基盤として役立つと考えられる。
【0080】
各々の微小コロニーからの炭化水素の選択的分離を成功裏に受けることができ、細胞が培地中に無傷のまま残ったのは、B品種のShowa株およびKawaguchi株のみであった。A品種の微小コロニーからの炭化水素をヘプタンまたは他の溶媒で抽出する試みはクロロフィルの随伴性の放出を伴い、これはヘプタン抽出物における緑色呈色によって明白に示された。これらの結果は、この取り組みにおいて調べたもののようなA品種株は、それらのB品種同等物と比較して細胞破裂および色素放出を受けやすいという考え方とも一致する。
【0081】
本発明の適した分子消衰係数の適用により、B品種株から抽出されたボツリオコッセン[Btc]およびカロテノイド[Car]の定量的測定が可能になった。これは、上記の実施例5にも提示されている、以下の等式の適用によって達成された:
[Btc]=[(A190/ε190)×MWBtc×V]/mdw (5)
[Car]=[(A450/ε450)×MWCar×V]/mdw (6)
式中、A=吸光度;ε=ボツリオコッセン(190nmでの)およびカロテン(450nmでの)に関するmM-1cm-1単位でのモル消衰係数;MWBtcおよびMWCar=それぞれボツリオコッセン(410g/mol)およびカロテノイドの推定分子量(536g/mol);V=抽出のために用いたヘプタンの容積(mL);mdw=抽出に供したバイオマスの量(乾燥細胞重量のグラム数)。等式(5)および(6)の解により、[Btc]および[[Car]濃度が乾燥細胞重量1グラム当たりのμg数として得られる。ボツリオコッカス株からの抽出性カロテノイドは、おそらくはエキネノン、ボツリオキサンチン、ブラウニキサンチンまたはそれらの混合物と考えられることに留意すべきである(Okada et al., 前記、1997;Okada et al., Phytochemistry 47(6):1111-1115, 1998;Tonegawa et al., Fisheries Science 64(2):305-308, 1998)。しかし、分子消衰係数はほとんどのカロテノイドおよびそれらの変異体でおよそ同じであり(Eroglu and Melis, 前記、2010に概説されている)、このことは、この取り組みにおける過程で抽出されたボツリオコッカスカロテノイドに対して一般的な消衰係数を用いたことの根拠となる。
【0082】
表2(分光光度的アプローチ)は、ボツリオコッカスB品種種から、随伴性の細胞溶解を伴うことなく抽出することができたボツリオコッセンの量をまとめている。これらの結果に基づけば、ShowaはBtcの含有量がより多く(33% Btc per dw)、一方、Kawaguchi-1は21% Btc per dwであった。その反対に、Showa抽出物のカロテノイド含有量はdwの0.19%であり、一方、Kawaguchi-1のそれはdwの0.49%であった。Showaに比してKawaguchi-1のカロテノイド含有量がかなり多いことにより、これらの微小コロニー(図13b)および抽出性炭化水素画分(図14b)のより強い橙色呈色が引き起こされた。分光光度的測定による定量的結果(表2、右列)は、密度平衡アプローチを通じて得られたもの(同じく表2、左列)と一致している。
【0083】
微細藻類における炭化水素含有量の重量分析的決定
検討した株に関するクロロフィルおよびカロテノイド含有量のdw比率(per dw)ベースでの分析を表3に提示している。クロロフィル含有量はコナミドリムシ(dwの2.05%)およびB.スデチクス(dwの1.6%)で最も高く、一方、B.ブラウニー株ではそれはdwの0.55±0.1%であった。このように、B.ブラウニー株は、単細胞微細藻類であるコナミドリムシおよびB.スデチクスと比較してChl/dw比が低い。前者のChl/dw比がより低いことは、これらの微細藻類における独特な微小コロニー構造の帰結である可能性、および/または炭化水素の蓄積に起因する可能性があると考えられる。
【0084】
Chl/dw比の違いにもかかわらず、この取り組みで検討した株はすべて類似のChl a/Chl b比を有し、平均は2.3(±0.5):1モル:モルであり(表3)、このことはそれらの光化学機構が類似の構成を有することを示唆する(Mitra and Melis, Optics Express 16(26):21807-21820, 2008)。dwに占める総カロテノイドも株によってさまざまであり、その様式は質的にはChlのものに類似していた(表3)。しかし、Car/Chl比は炭化水素蓄積性のB.ブラウニー株で最も高く、コナミドリムシを含む非蓄積性株で最も低かった(表3)。これらの結果は質的には、微細藻類における炭化水素蓄積がカロテノイドの並行した蓄積を伴うという見解と一致する(Eroglu and Melis, 前記、2010)。
【0085】
(表3)さまざまなボツリオコッカス属種およびコナミドリムシCC503株におけるクロロフィルおよび総カロテノイド含有量の分光光度的決定

【0086】
メタノール中の総親油性抽出物を乾燥するまで蒸発させて、乾燥産物を重力測定法で測定した(表4、列2)。これらの抽出物は、蓄積したテルペノイドまたはアルカジエン系炭化水素に加えて、膜脂質ジグリセリド(DG)および光合成色素(Chl & Car)も含んでいた。微細緑藻において、膜脂質ジグリセリドの大部分、およびすべての色素(Chl & Car)は、その主要部であるチラコイド膜から生じ、原形質膜、小胞体、ゴルジ装置およびミトコンドリアからのDGの寄与は相対的に小さい。このことに基づき、さらに検討した株におけるChl a/Chl b比が同程度であったことを考慮すれば、本研究における微細藻類株のすべてで、総膜DG脂質-Chl比がかなり類似していると仮定することは妥当であった。このため、「膜DG脂質」-Chl比のパラメーターを正規化係数として使用し、本発明者らが、以下のように、株の「総親油性抽出物」を「膜脂質」および「蓄積したテルペノイドまたはアルカジエン系炭化水素」に配分する一助として役立てた(表4)。
【0087】
(表4)さまざまなボツリオコッカス株およびコナミドリムシにおける親油性抽出物の総量、親油性抽出物とクロロフィルとの比、ならびに細胞内脂質および蓄積性炭化水素の推定値

【0088】
コナミドリムシはテルペノイド系炭化水素産物もアルカジエン系炭化水素産物も蓄積せず(Eroglu and Melis, 前記、2009)、その結果として、「総親油性抽出物」-Chl比が検討した株の中で最も低い(10.0:1)(表4、列3)。コナミドリムシにおける「総親油性抽出物」は膜DG脂質および細胞内の光合成色素から生じる。以下の分析に関して、本発明者らは、検討した株がすべて、コナミドリムシと同じ膜DG脂質-Chl比(10.0:1)を有すると仮定した。この仮定は、すべての株で同程度のChl a/Chl b比が測定されたことに基づいており(表3)、このことはすべての株が同じチラコイド膜の構成を有し、それ故に同じDG/Chl比を有することを示唆する。そのことから推定して、10:1を上回る「総親油性抽出物」-Chl比は、蓄積したテルペノイドまたはアルカジエン系炭化水素を反映すると考えられる(表4)。
【0089】
コナミドリムシの「総親油性抽出物」-Chl比を、検討した他の微細藻類における「膜脂質」-Chl比に適用することで、本発明者らは、検討した種における膜脂質含有量および余分の(蓄積した)テルペノイドまたはアルカジエン系炭化水素を推定することができた。「総親油性抽出物」を「膜脂質」および「蓄積性炭化水素」にそのように配分した結果を、表4に示している(列4および5)。ShowaおよびKawaguchiがそれらのdwのそれぞれ約28.9%および19.4%を細胞外炭化水素の形で蓄積したことが明らかになった。残りのA品種「ブラウニー」株はそれらのdwの14.1〜9.5%をそのような炭化水素の形で蓄積し、一方、B.スデチクスでは余分の(蓄積した)炭化水素はベースラインレベルに過ぎなかった。
【0090】
さらに詳細には、Showaについての総親油性抽出物-Chl比(69.2:1)はコナミドリムシにおけるものよりもはるかに高く(10.0:1)、このことは前者に存在する細胞外ボツリオコッセンが相対的に多いという見解と一致する。Showaにおける総親油性抽出物は、膜脂質5.01%および蓄積性炭化水素28.9%に配分された。総親油性抽出物-Chl比はKawaguchiでは中間的であり(33.0:1)、膜脂質8.97%および蓄積性炭化水素19.4%に配分された。A品種株であるYamanaka、UTEX 2441およびUTEX LB572は、総親油性抽出物-Chl比が24.8〜46.2:1の範囲であり、その結果、蓄積性炭化水素の推定値は13〜19%の範囲であった(表4)。ボツリオコッカス・スデチクスは総親油性抽出物-Chl比がかなり低く(12.0:1)、このことはこの株では蓄積性炭化水素が乏しいことを示唆している。以上をまとめると、ボツリオコッカス・ブラウニー株における「総親油性抽出物」/Chl比がより高いことは、テルペノイドまたはアルカジエン系炭化水素産物の蓄積を反映している。したがって、すべての「ブラウニー」株は、10.0:1を上回る「総親油性抽出物」-Chl比に達するように、膜脂質として遭遇するものをはるかに上回る炭化水素を合成して蓄積していると結論してもよいであろう。
【0091】
これらの重量分析結果は、検討した試料における炭化水素の密度平衡(表2、第3列)および分光光度的(表2、第4列)定量と一致する。これらの結果は、文献における測定値とも一致する。例えば、Wolf et al.(前記、1985)は、B.ブラウニー変種Showaがその乾燥バイオマスの24〜29%をボツリオコッセン系炭化水素の形で蓄積することを報告している。Yamaguchi et al.(前記、1987)は、B.ブラウニーBerkeley(Showa)株から、100g dw当たり34gの炭化水素を測定している。Nonomura(前記、1988)は、Showaにおけるボツリオコッセン系炭化水素含有量(乾燥細胞重量当たり約30%またはそれ以上)が、B.ブラウニーの他の株におけるよりも(1.5〜20%)多いことを報告している。Okada et al.(前記、1995)も、示している。B.ブラウニーKawaguchi-1およびYamanakaの微小コロニーが、乾燥細胞重量のそれぞれ18.8±0.8%および16.1±0.3%の範囲で炭化水素を蓄積することを示している。
【0092】
考察‐実施例6
ボツリオコッカス属の微細緑藻は、かなりの量のそれらの光合成産物をアルカジエン(A品種の微細藻類)またはトリ-テルペノイド(B品種の微細藻類)炭化水素として恒常的に合成し、蓄積して、分泌する。しかし、さまざまなボツリオコッカスによる生産性の直接的な定量分析は文献には見当たらない。例えば、Sawayama et al.(前記、1994)は、二次的に処理した下水中で連続バイオリアクターシステム内で増殖させたボツリオコッカス・ブラウニーUTEX LB-572の培養物によるバイオマス生産速度が約28mg dcw L-1 d-1に過ぎないことを報告している。
【0093】
二次的に処理した豚舎廃水中でバッチリアクター内で増殖させた、同じくUTEX LB-572株を用いた取り組みで、An et al.(前記、2003)は、12日間のバッチ培養後のバイオマス収量がほぼ8.5g dw per Lであり、炭化水素が約0.95g L-1であったことを報告している。一方、軌道振盪下にあるフラスコ内での増殖により、Vazquez-Duhalt and Arredondo-Vega(Phytochemistry 30:2919-2925, 1991)は、B.ブラウニーAustin株およびGottingen株(A品種)の両方について、28日間のバッチ培養後に約300mg dw L-1というバイオマス収量を報告している。Dayananda et al.(Process Biochemistry 40(9):3125-3131, 2005)は、B.ブラウニー変種SAG 30.81を、軌道振盪させたコニカルフラスコ内で、概日(明が16時間:暗が8時間)サイクルの下で培養し、30日間のバッチ培養後の収量が650mg dw L-1であったことを報告している。明白である。これらの結果から、バイオリアクターのデザインおよび増殖培地の組成を含むB.ブラウニー増殖条件が、培養物の生産性に影響を及ぼすことは明白である。本発明は、同一の実験条件下で増殖させた6種の異なるボツリオコッカス株の培養物における炭化水素生産性の比較を初めて提供するものである。
【0094】
種々のボツリオコッカス株に対する複数の独立した炭化水素定量方法は、従来は適用されていなかった。すなわち、文献におけるボツリオコッカスの生産性の比較は、時として大幅に異なる定量方法に基づいている。本発明は、微細緑藻ボツリオコッカスのさまざまな株における炭化水素の定量的測定のための3つの異なる独立したアプローチの適用可能性の試験および検証を提供する。これらの方法を、A品種またはB品種のいずれかに属するボツリオコッカスの6種の異なる株に対して適用した。含めたものは、(i)無傷の微小コロニーの密度平衡による測定、(ii)細胞外炭化水素の分光光度的定量、および(iii)抽出物の重量分析測定であった。3つの分析方法のすべてで、同等の定量的結果が得られた。証拠により、B品種の微細藻類ボツリオコッカス・ブラウニー変種Showaおよび変種Kawaguchi-1が乾燥重量バイオマス当たりで最も多い量の炭化水素を蓄積し、それぞれ約30%(w:w)および20%(w:w)であることが明らかになった。本明細書に記載された方法は、商業的開発のための実質的な炭化水素生産性を有する微細藻類のハイスループットスクリーニングおよび選択において重要な用途があると考えられる。
【0095】
この実施例はしたがって、細胞外炭化水素を定量するための本発明の方法が他の方法に匹敵し、それ故に驚くほど有効で効率的な定量方法を提供することを実証している。
【0096】
理解を容易にする目的で、上記の本発明を例証および例示としてある程度詳細に説明してきたが、当業者には、本発明の教示に鑑みて、添付する特許請求の範囲の趣旨または範囲を逸脱することなく、ある種の変更または修正を加えうることは直ちに明らかであろう。
【0097】
本明細書において言及された刊行物、アクセッション番号、特許および特許出願はすべて、それぞれが参照により組み入れられるように特定的および個別的に示されている場合と同程度に、参照により本明細書に組み入れられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞外ボツリオコッセンおよびメチル化スクアレンテルペノイド系炭化水素を、ボツリオコッカス微細藻類微小コロニーから抽出する方法であって、以下の工程を含む方法:
微細藻類微小コロニーを含む試料を提供する工程;
微細藻類微小コロニーを機械的に分散させる工程であって、分散が、細胞を破壊して内部を露出させること(break open)を実質的に伴わない、前記工程;
ヘキサン、ヘプタンまたはオクタンからなる群より選択される有機溶媒を用いてテルペノイド系炭化水素を抽出して、炭化水素を含有する有機溶媒を含む画分を入手する工程;
有機溶媒画分中に存在するテルペノイド系炭化水素を分光光度的に定量する工程。
【請求項2】
有機溶媒中に存在するテルペノイド系炭化水素を分光光度的に定量する工程が、炭化水素の190nmでの吸光度に対して約90±5mM-1cm-1の消衰係数を用いることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
微細藻類がボツリオコッカス・ブラウニー(Botryococcus braunii)である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
ボツリオコッカス・ブラウニーがボツリオコッカス・ブラウニー変種Showa(Botryococcus braunii, var Showa)である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
有機溶媒がヘプタンである, 前記のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
微細藻類微小コロニーを機械的に分散させる工程およびテルペノイド系炭化水素を抽出する工程が同時並行的に行われ、これらの工程が、有機溶媒中の微細藻類微小コロニーをガラスビーズの存在下でボルテックス処理する工程をさらに含む, 前記の請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
微小コロニーを機械的に分断する前に、試料を約100℃に加熱する工程をさらに含む, 前記の請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
微小コロニーを機械的に分断する工程が、微小コロニーを低出力で音波処理することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
細胞外ボツリオコッセンおよびメチル化スクアレンを、ボツリオコッカス微細藻類微小コロニーから抽出する方法であって、以下の工程を含む方法:
ボツリオコッカス微細藻類微小コロニーを含む試料を提供する工程;
試料を30分間またはそれ未満にわたって約100℃に加熱する工程;
ボツリオコッカス微小コロニーをヘプタン中でガラスビーズの存在下でボルテックス処理して、炭化水素を含有するヘプタンを含む画分を入手する工程;ならびに
有機溶媒中に存在するボツリオコッセンおよびメチル化スクアレンを、炭化水素の190nmでの吸光度に対して約90±5mM-1cm-1の消衰係数を用いて分光光度的に定量する工程。
【請求項10】
ボツリオコッカス属種がボツリオコッカス・ブラウニーである、請求項9記載の方法。
【請求項11】
細胞外ボツリオキサンチンをボツリオコッカス微小コロニーから抽出する方法であって、以下の工程を含む方法:
緑藻微小コロニーを含む試料を提供する工程;
ヘプタン中で微小コロニーをガラスビーズの存在下でボルテックス処理して、炭化水素を含有するヘプタンを含む画分を入手する工程;
ヘプタン画分中に存在するボツリオキサンチンを、約165±5mM-1cm-1の消衰係数を用いて450nmで分光光度的に定量する工程。
【請求項12】
微細藻類がボツリオコッカス・ブラウニーである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
ボツリオコッカス・ブラウニーが、ボツリオコッカスB品種のメンバーである、請求項12記載の方法。
【請求項14】
細胞外ボツリオコッセンおよびメチル化スクアレンテルペノイド系炭化水素を、ボツリオコッカス微細藻類微小コロニーから得る方法であって、以下の工程を含む方法:
ボツリオコッカス微細藻類微小コロニーを含む試料を提供する工程;
試料を30分間またはそれ未満にわたって約100℃に加熱する工程;
ボツリオコッカス微小コロニーを水性媒質中で機械的に分散させて、破壊されていない細胞および放出されたテルペノイド系炭化水素を含む水性懸濁液を入手する工程;
テルペノイド系炭化水素を培地から分離する工程;
テルペノイド系炭化水素をヘプタン、ヘキサンまたはオクタン中に溶解させる工程;および
ボツリオコッセン系炭化水素を、炭化水素の190nmでの吸光度に対して約90±5mM-1cm-1の消衰係数を用いて定量する工程。
【請求項15】
テルペノイド系炭化水素を培地から分離する工程が、テルペノイド系炭化水素を水性懸濁液の上部に浮遊させることを含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
テルペノイド系炭化水素を培地から分離する工程が、水性懸濁液の遠心処理を含む、請求項14記載の方法。
【請求項17】
細胞外ボツリオキサンチンをボツリオコッカス微小コロニーから得る方法であって、以下の工程を含む方法:
ボツリオコッカス微細藻類微小コロニーを含む試料を提供する工程;
試料を30分間またはそれ未満にわたって約100℃に加熱する工程;
ボツリオコッカス微小コロニーを水性媒質中で機械的に分散させて、破壊されていない細胞および放出されたボツリオキサンチンを含む水性懸濁液を入手する工程;
ボツリオキサンチンを培地から分離する工程;および
ボツリオキサンチンを、約165±5mM-1cm-1の消衰係数を用いて450nmで分光光度的に定量する工程。
【請求項18】
テルペノイド系炭化水素を培地から分離する工程が、テルペノイド系炭化水素を水性懸濁液の上部に浮遊させることを含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
テルペノイド系炭化水素を培地から分離する工程が、水性懸濁液の遠心処理を含む、請求項17記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図15D】
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【公表番号】特表2012−531917(P2012−531917A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518614(P2012−518614)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/040824
【国際公開番号】WO2011/003024
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(506115514)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (87)
【Fターム(参考)】