説明

心血管死亡率リスクを予測するための方法

本発明は、患者から得られた血液試料中の内皮微粒子のレベルを決定することを含む、前記患者における心血管死亡率リスクを予測するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野:
本発明は、患者における心血管死亡率リスクを予測するための方法に関する。
【0002】
発明の背景:
心血管疾患(CVD)は、欧州における主要な死亡原因であり、全ての死亡の49%(および65歳以前の全ての早期死亡の30%)を占める。CVDに由来する年齢別死亡率は、過去20年間で西欧において半減したが、CVDの罹患率は人口の高齢化に因り実際には増加している。CVDには、欧州連合(EU)に対して年間1690億ユーロの費用がかかると推定されている。
【0003】
それ故、医師がリスクのある患者を同定することを助ける、信頼性のある心血管死亡率のバイオマーカーが当技術分野においては恒常的に必要とされる。
【0004】
例えば、心血管疾患は末期腎疾患(ESRD)患者における主要な死亡原因であり、そしてこれらの患者の見込まれる平均余命は母集団よりもはるかに短い。ESRD患者は、実際に、心血管合併症の高い罹患率を有し、そして動脈損傷が、その高い心血管死亡率および罹病率の主要な原因である。血管疾患は、尿毒症の患者において急速に発症し、内皮機能不全、全身的な疾患、並びにアテローム動脈硬化症およびその合併症の病気発生における重要な変数が関与する。ESRD患者における死亡率を、炎症メディエーターの増加、血漿中の非対称性ジメチルアルギニンレベル、高ホモシステイン血症または動脈壁の硬化によって予測することができる。
【0005】
内皮の機能不全または活性化は、異常な血管反応性に加えて、抗凝固因子の減少、並びに血管収縮物質および血栓形成促進産物の増加を伴う、慢性的な炎症過程をもたらす。内皮機能不全は、有害心イベントの増加率と関連し、そしてそれを予測する(Bonetti PO. et al. 2003; Zeiher AM. et al. 1991; McLenachan JM. et al. 1990; Zeiher AM. et al. 1991)。ESRD患者における内皮機能不全は、内皮細胞特異的マーカーを発現している膜から脱落した循環中の増加した微粒子レベルに関連する(Amabile N. et al. 2005)。
【0006】
微粒子(MP)は、アポトーシスを受けたまたは活性化された細胞から脱落した形質膜小胞である。それらは血漿および炎症組織において同定されている。循環中のMPは殆どが血小板を起源とするが、赤血球、白血球、リンパ球または内皮細胞などの他の細胞型からのMPも血漿中で同定されている(Amabile N. et al. 2005)。内皮起源の循環中のMPレベルの増加が、いくつかの心血管疾患において報告されており、そして内皮機能不全の重度に関連し、このことは、血漿中の内皮微粒子のレベルが患者における内皮機能不全の代用マーカーであるという概念を支持する(Amabile N. et al. 2005; Mallat Z. et al. 2000; Koga H. et al. 2005; Werner N. et al. 2006))。ESRDにおける内皮MPの増大した放出は、低い内皮剪断応力、尿毒症毒素への慢性的な暴露後の内皮活性化、または増加した酸化ストレスから起こり得る(Boulanger CM. et al. 2007; Faure V. et al. 2001)。さらに、冠動脈疾患または末期腎不全の患者からの循環中MPはまた、内皮細胞を活性化し得、そして内皮NO放出を損ない得、それ故、これらの患者において観察される全身的な内皮機能不全の原因となり得る(Amabile N. et al. 2005; Boulanger CM. et al. 2001)。
【0007】
しかしながら、循環中の内皮MPレベルが臨床成績または死亡を予測するかどうかの決定は実証されなかった。
【0008】
発明の要約:
本発明は、患者から得られた血液試料中の内皮微粒子のレベルを決定することを含む、前記患者における心血管死亡率リスクを予測するための方法に関する。
【0009】
発明の詳細な説明:
動脈損傷は、心血管死亡率の主要な原因であるので、本発明者らは、循環中の内皮微粒子(EMP)のレベルの増加が、高い心血管リスクにある、末期腎不全(ESRD)患者における転帰を予測し得るか否かを調べた。コミュニティ・ホスピタルにおいて実施された前向きパイロット試験(経過観察の中央値:50.5ヶ月間)は、81人の安定に血液透析されたESRD患者(59±14歳;63%の男性)を含んでいた。最後の透析から72時間後に得られた無血小板血漿をフローサイトメトリー分析によって分析し、そしてMPの細胞起源を、内皮(CD31+CD41−MP;EMP)、血小板(CD31+CD41+MPs)または赤血球(CD235a+MP)として同定した。主要評価項目は全死亡率および心血管死亡率(致命的な心筋梗塞、心臓発作、急性肺水腫および突然の心臓死)であった。非生存者(n=24)はより高齢で(p<0.001)、より高いレベルのEMP(p<0.01)およびhsCRP(p<0.05)、並びにより低い拡張期圧(p<0.001)によって特徴付けられた。中央値よりも高い基線EMPレベルを有する患者は、全原因死亡率および心血管死亡率のより高い発生率を示した(p=0.0015)。基線EMPレベルは、独立して、交絡変数の調整後に、全原因死亡(1000EMP/μLあたり、HR1.28[95%CI:1.05〜1.57]、p=0.016)および心血管死亡率(HR1.38[95%CI:1.11〜1.72]、p=0.0035)を予測し、そして転帰不良について古典的なリスク因子よりも強力な予測因子であった。これは、血漿中の増加した内皮微粒子レベルが、重度の心血管転帰の強力で独立した予測因子であるという最初の直接的な証拠である。循環中のEMPの測定が、母集団における心血管死亡率についての価値ある診断となることをここで実証するために、本発明者らは、フラミンガムコホート8期サイクルの2000人の被験者において内皮起源のMPの血漿中レベルを試験する(http://www.framinghamheartstudy.org/)。
【0010】
それ故、本発明は、患者から得られた生物学的試料中の内皮微粒子のレベルを決定することを含む、前記患者における心血管死亡率リスクを予測するための方法に関する。
【0011】
本明細書において使用する「内皮微粒子」すなわち「EMP」という用語は、アポトーシスを受けたまたは活性化された内皮細胞から脱落した形質膜小胞を示す(Amabile N. et al. 2005)。内皮微粒子のサイズは直径が0.1μmから1μmの範囲である。内皮微粒子の表面マーカーは内皮細胞と同じである。典型的には前記表面マーカーは、CD31、CD144、VE−カドヘリン、およびCD146を含むがそれらに限定されない。内皮細胞のように、内皮微粒子は、CD41、CD4;CD14;CD235a;およびCD11aのような特定の表面マーカーを発現しない。それ故、典型的な内皮微粒子はCD31+CD41−微粒子のようである。
【0012】
本明細書において使用する「患者」という用語は、げっ歯類、ネコ、イヌおよび霊長類などの哺乳動物を示す。好ましくは、本発明による患者はヒトである。
【0013】
典型的には、前記患者は、以前に心血管疾患と診断されていてもされていなくてもよい。本発明による方法を、以下の冠疾患の1つを提示するとして診断された患者に供与することができる:
・ サイレントな虚血を有するまたは虚血を有さない無症候性の冠動脈疾患;
・ 安定狭心症または労作性狭心症などの、心筋壊死を有さない慢性虚血性障害;
・ 不安定狭心症などの、心筋壊死を有さない急性虚血性障害;
・ ST部分上昇型心筋梗塞または非ST部分上昇型心筋梗塞などの、心筋壊死を有する虚血性障害。
【0014】
従って、前記患者は、アテローム硬化性血管疾患、例えば動脈瘤または心臓発作、無症候性冠動脈疾患、心筋壊死を有さない慢性虚血性障害、例えば安定狭心症または労作性狭心症;心筋壊死を有さない急性虚血性障害、例えば不安定狭心症;および、虚血性障害、例えば心筋梗塞からなる群より選択される、冠障害または血管障害を患い得る。
【0015】
あるいは、患者は、冠障害または血管障害について無症候性であってもよい。
【0016】
さらに、患者は、慢性腎疾患および末期腎疾患などの高いリスクの心血管合併症に関連した疾患に患っていてもよい。これらの臨床条件では、心血管死亡率は、死亡の40〜50%に関与し、そして心血管疾患に因る死亡のリスクは、母集団におけるよりも20〜30倍高い。
【0017】
「血液試料」という用語は、患者から得られた全血、血清または血漿試料を意味する。好ましくは、本発明による血液試料は血漿試料である。血漿試料を、当技術分野において周知の方法を使用して得ることができる。例えば、血液を、クエン酸三ナトリウム緩衝液上での標準的な静脈穿刺手順に従って患者から採取し得る。その後、血液試料を約1,500×gで約15〜20分間(室温)遠心分離にかけ、その後、血漿の層をピペッティングすることを含むがそれらに限定されない、標準的な手順に従って血液試料から血漿を得ることができる。無血小板血漿(PFP)は、約13,000×gで5分間の遠心分離後に得られる。内皮微粒子を回収するために、血漿試料を、約15,000〜約20,000×gの範囲の遠心分離にかけ得る。好ましくは、血漿試料を、約4℃の温度で約17,570×gで超遠心分離にかける。内皮微粒子を含むペレット化した細胞片を再懸濁するには異なる緩衝液が適切と考えられ得る。このような緩衝液は、試薬等級の(蒸留または脱イオン化した)水およびリン酸緩衝食塩水(PBS)pH7.4を含む。好ましくは、PBS緩衝液(シース液)を使用する。より好ましくは、患者から得られた血液試料は、無血小板血漿(PFP)試料である。PFPは、最後の透析から72時間後の、フィステルを含まない腕から採血した10mlのクエン酸添加の全血から分離され得る。PFPは、クエン酸添加血液を1500g(15分間)で遠心分離し、その後13000g(5分間、室温)で遠心分離した後に得られる。
【0018】
内皮微粒子を単離するための標準的な方法は当技術分野において周知である。例えば、前記方法は、患者から微粒子の個体群を回収し、そして内皮微粒子の特定の表面マーカーに対して作られる様々な結合相手を使用することからなり得、内皮微粒子は、前記の結合相手によって、前記の表面マーカーへと結合する。
【0019】
特定の態様において、本発明の方法は、血液試料を、血液試料中に存在する内皮微粒子と選択的に相互作用することのできる1セットの結合相手と接触させることを含む。結合相手は、内皮微粒子の特定の表面マーカーに対して作られる、ポリクローナルまたはモノクローナル、好ましくはモノクローナルであり得る抗体であり得る。別の態様において、結合相手は1セットのアプタマーであり得る。
【0020】
本発明のポリクローナル抗体またはそのフラグメントは、適切な抗原またはエピトープを、例えばとりわけブタ、ウシ、ウマ、ウサギ、ヤギ、ヒツジおよびマウスなどから選択された宿主動物に投与することによって公知の方法に従って生じさせることができる。当技術分野において公知の種々のアジュバントを使用して抗体の産生を増強させることができる。本発明の実施に有用な抗体はポリクローナルであり得るが、モノクローナル抗体が好ましい。
【0021】
本発明のモノクローナル抗体またはそのフラグメントを、培養液中の連続継代細胞株による抗体分子の産生をもたらす任意の技術を使用して調製および単離することができる。産生および単離のための技術は、Kohler and Milstein (1975)によって初めて記載されたハイブリドーマ技術;ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Cote et al., 1983));およびEBV−ハイブリドーマ技術(Cole et al. 1985)を含むがそれらに限定されない。
【0022】
別の態様において、結合相手はアプタマーであり得る。アプタマーは、分子認識の点で抗体の代替物を示す1クラスの分子である。アプタマーは、高い親和性および特異性で任意のクラスのターゲット分子を実質的に認識する能力を有するオリゴヌクレオチドまたはオリゴペプチド配列である。このようなリガンドは、ランダム配列ライブラリーの試験官内進化法(Systematic Evolution of Ligands by EXponential enrichment、SELEX)を通して単離され得る。ランダム配列ライブラリーは、DNAのコンビナトリアル化学合成によって得られる。このライブラリーでは、各メンバーは、独特な配列の、最終的には化学的に修飾された、線形オリゴマーである。このクラスの分子の可能な修飾、使用および利点が、Jayasena S.D., 1999に概説されている。ペプチドアプタマーは、ツーハイブリッド法によってコンビナトリアルライブラリーから選択される、E.coliチオレドキシンAなどのプラットフォームタンパク質によって提示されるコンフォメーション的に拘束された抗体可変領域からなる。
【0023】
抗体またはアプタマーなどの本発明の結合相手を、蛍光分子、放射性分子、または当技術分野において公知の任意の他の標識などの、検出可能な分子または物質を用いて標識し得る。一般的にシグナルを(直接的にまたは間接的にのいずれかで)提供する標識は当技術分野において公知である。
【0024】
本明細書において使用する抗体またはアプタマーに関して「標識された」という用語は、放射性物質またはフルオロフォア(例えばフルオレセインイソチオシアネート(FITC)またはフィコエリトリン(PE)またはインドシアニン(Cy5))などの検出可能な物質を抗体またはアプタマーにカップリングする(すなわち物理的に連結する)ことによる抗体またはアプタマーの直接的な標識、並びに、検出可能な物質との反応性によるプローブまたは抗体の間接的な標識を包含することを意味する。本発明の抗体またはアプタマーを、当技術分野において公知の任意の方法によって放射性分子を用いて標識し得る。例えば放射性分子は、Il23、Il24、In111、Re186、Re188などのシンチグラフィー研究のための放射性原子を含むがそれらに限定されない。
【0025】
好ましくは、表面マーカーに対する抗体はすでにフルオロフォアにコンジュゲーションされている(例えばFITCにコンジュゲーションおよび/またはPEにコンジュゲーション)。例としては、Ancell Co. (Bayport, Minn.)を通して入手可能である、モノクローナル抗ヒトCD62E−FITC、CDC105−FITC、CD51−FITC、CD106−PE、CD31−PEおよびCD54−PEが挙げられる。
【0026】
前記のアッセイは、固体支持体への結合相手(すなわち抗体またはアプタマー)の結合を含み得る。本発明の実施に使用することのできる固体支持体としては、ニトロセルロース(例えばメンブレンまたはマイクロタイターウェルの形態);塩化ポリビニル(例えばシートまたはマイクロタイターウェル);ポリスチレンラテックス(例えばビーズまたはマイクロタイタープレート);フッ化ポリビニリデン;ジアゾ化紙;ナイロンメンブレン;活性化ビーズ、磁気応答性ビーズなどの基材が挙げられる。固体表面は好ましくはビーズである。内皮微粒子はおおよそ0.1〜1μmの直径を有しているので、本発明において使用するためのビーズは、1μmより大きな直径を有すべきである。ビーズは、ガラス、プラスチック、ポリスチレン、およびアクリルを含むがそれらに限定されない種々の材料からなり得る。さらに、ビーズは、好ましくは蛍光標識されている。好ましい態様において、蛍光ビーズは、Becton Dickinson Biosciences, (San Jose, California)から入手可能なTruCount(登録商標)チューブに含まれるものである。
【0027】
本発明によると、フローサイトメトリー法は、患者から得られた血液試料中の内皮微粒子のレベルを決定するための好ましい方法である。それ故、例えば、蛍光活性化細胞選別(FACS)を使用して、血液試料中の所望の微粒子を分離し得る。別の態様において、磁気ビーズを使用して、内皮微粒子(MACS)を単離し得る。
【0028】
例えば、特異的なモノクローナル抗体で標識されたビーズを、内皮微粒子の陽性選択のために使用し得る。他の方法は、非内皮微粒子の枯渇による内皮微粒子の単離を含み得る(陰性選択)。例えば、内皮微粒子を488nmの光で励起させ、そしてFITCおよびPEの緑色および赤色の蛍光の対数を、530/30nmおよび585/42nmのバンドパスフィルターをそれぞれ通して測定し得る。その後、内皮微粒子の絶対数を、本発明の方法の実施に有用な特別なソフトウェアを通して計算し得る。
【0029】
典型的には、本明細書の以下の実施例1に記載したような蛍光活性化細胞選別(FACS)法を使用して、患者から得られた血液試料中の内皮微粒子のレベルを決定し得る。
【0030】
従って、特定の態様において、本発明の方法は、前記したように血液試料を得る工程;内皮微粒子に特異的である表面マーカーに対する両方の標識された抗体を加える工程;前記の調製された試料を、既知数の固体表面を有する容器に入れる工程、ここで、固体表面は蛍光染料を用いて標識されている;調製された試料に対してFACSフローサイトメトリーを実施して、その中の内皮微粒子の絶対数を計算する工程を含む。
【0031】
1つの態様において、本発明の方法はさらに、内皮微粒子のレベルを、予め決定した値と比較する工程を含み得る。本明細書において使用する「予め決定した値」という用語は、母集団からまたは選択した被験者個体群から得られた血液試料中の内皮微粒子のレベルを指す。例えば、予め決定した値は、心血管疾患により死亡した患者から得られた内皮微粒子のレベルであり得る。予め決定した値は、閾値の数値または範囲であり得る。予め決定した値は、心血管疾患により死亡した患者と、心血管疾患を生き延びた患者との間の比較測定に基づいて確立され得る。よって、本発明の方法によって決定された内皮微粒子のレベルと予め決定された値との間の差異は、心血管死亡率リスクの指標となる。
【0032】
本発明のさらなる目的は、独立しそして強い心血管死亡率のバイオマーカーとしての内皮微粒子の使用に関する。
【0033】
従って、本発明の方法は、心血管死亡率リスクのある患者を分類するのに有用であり得、そしてその後、この方法を使用して、前記患者のための正確な処置を選択することができる。従って、このような方法は、医師が治療処置に関する選択を行なうのを助け得る。それ故、処置の費用を患者のリスクに適応させ得る。
【0034】
本発明のさらなる目的は、患者から得られた血液試料中の内皮微粒子のレベルを決定することを含む、心血管死亡率リスクに対する、患者に投与された処置の影響をモニタリングするための方法に関する。より特定すると、前記方法はさらに、内皮微粒子のレベルを、予め決定した値と比較する工程からなる工程を含み得る。前記の予め決定した値は、処置前に本発明の方法によって決定された心血管リスクであり得る。
【0035】
典型的には、処置は、エリスロポエチン刺激剤、または内皮機能不全に対して証明された有益な効果を伴う処置、例えばスタチン、アンギオテンシン変換酵素阻害剤もしくはアンギオテンシンレセプター遮断剤からなる群より選択された治療量の活性成分の投与からなり得る。別の態様において、前記処置は、内皮機能不全を逆転させることからなり得る。
【0036】
本発明のさらに別の目的は、患者から得られた血液試料中の内皮微粒子のレベルを決定するための手段を含む、患者の心血管死亡率リスクを予測するためのキットに関する。前記キットは、前記したような1セットの抗体を含み得る。特定の態様において、抗体または抗体のセットは前記したように標識されている。前記キットはまた、固相マトリックス(適用可能であれば)および標準物質を含む、特定の検出プロトコールに必要とされる他の適切にパッケージングされた試薬および材料も含み得る。
【0037】
本発明の別の目的は、患者から得られた血液試料中の内皮微粒子のレベルを決定することを含む、患者における主要有害心血管イベント(MACE)のリスクを予測するための方法に関する。典型的には、MACEは、死亡、急性冠症候群、緊急経皮的冠動脈インターベンション、心臓発作、うっ血性心不全、慢性心房細動、および末梢動脈疾患に因る急性虚血を含む。1つの態様において、前記はさらに、内皮微粒子のレベルを、予め決定した値と比較する工程を含み得る。予め決定した値は、MACEを有する患者とMACEを有さない患者との間の比較測定に基づいて確立され得る。よって、本発明の方法によって決定された内皮微粒子のレベルと予め決定した値との間の差異は、MACEのリスクの指標となる。
【0038】
本発明は、以下の図面および実施例によってさらに説明されるだろう。しかしながら、これらの実施例および図面は、いずれにしても本発明の範囲を制限すると捉えるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】リファレンスとして患者の転帰を使用する、基線MPレベルの受信者動作特性曲線。PMPレベル(緑の線)は控えめに全死亡率(パネルA)および心血管死亡率(パネルB)を予測しただけであるが、基線EMPレベル(赤い線)は転帰と強く関連していた。EMPレベルは全死亡率に関しては年齢(青い線)と同等であったが、心血管死亡率予測に関してはより大きなAUCを実証した。
【図2】集団の中央値よりも下もしくは上の基線EMP値およびPMP値を有する患者の経過観察中における全死亡(パネルA)および心血管死亡を起こさないカプランマイヤー生存推定。
【図3】EMP測定の再現性:n=41の患者における2回の連続測定を使用するEMP測定の再現性。1回目の測定(EMP1)と2回目の測定(EMP2)との間の遅延の中央値は115(3〜296)日間であった。図1Aは、良好な相関を有する(スピアマン計数=0.61、p<0.001)、logEMP1とlogEMP2との間の線形回帰を示す(EMPの値は、試料間でのその非正規分布のためにlog変換された)。図1Bは、2回の測定間のブランドアルトマンプロット図を示す:各点は1人の被験者を意味し、そして点線は平均+/−1.96基準値(standard deviation interval)を示す。回帰直線は、有意な増加または減少を全く示さず、このことは、測定の良好な再現性を示唆した。
【0040】
実施例1:末期腎疾患におけるその後の死亡に関する循環中の内皮微粒子の予測値
材料および方法
患者:本発明者らは、2003年11月に開始して2008年9月までのFleury-Merogis血液透析センターからの81人のESRD患者を含めた(表1)。患者は、(a)3カ月以上の血液透析療法を受けている場合、(b)エントリー前の6カ月の期間の間に臨床的な心血管合併症が全くない場合、および(c)治験審査委員会によって承認され、そしてヘルシンキ宣言に順守した、経過観察研究に参加することに同意した場合に適格であった。患者に、高透過型膜AN69およびポリスルホンを使用して1週間に3回透析した。体液および血液中化学物質を制御し、そしてKt/V>1.2(1.46±0.13)を達成するように、血液透析(HD)時間を個々にテーラーメードした(1セッションあたり4〜6時間)。透析液は、2回浸透させた超純水を用いて調製され、そして重炭酸送達、調節可能なナトリウム濃度および制御された限外濾過を含むシステムによって送達された。患者は鉄およびエリスロポエチン(ダルベポエチン)を定期的に処方された。35人の患者が補助的な抗高血圧療法(アンギオテンシン変換酵素阻害剤および/またはカルシウムチャネル遮断薬)を受け、n=21の被験者がβ遮断薬下にあり、そしてn=15の患者がスタチン療法(アトルバスタチン20mg/日)下にあった。
【0041】
血液中化学物質:血液中化学物質(全てMP測定の前に採取した試料で決定される)は、(表1):ヘモグロビン、LDL−コレステロール、トリグリセリド、血清アルブミン、血清高感度C反応性タンパク質(CRP)、血液中脂質、血清リン、Ca2+を含んだ。血清パラソルモン(iPTH1−84)はラジオイムノアッセイによって測定された。
【0042】
フラミンガムリスクスコア(FRS)および欧州スコア計算:フラミンガムの性別の式を使用して、10年間におよび一般的な心血管疾患についてのFRSを計算した(D'Agostino RB, Sr., Vasan RS, Pencina MJ, et al. General cardiovascular risk profile for use in primary care: the Framingham Heart Study. Circulation 2008;117(6):743-53)。欧州スコア(10年間の心血管死亡リスクの推定)を、スコアリスクチャートを使用して計算した(Conroy RM, Pyorala K, Fitzgerald AP, et al. Estimation of ten-year risk of fatal cardiovascular disease in Europe: the SCORE project. Eur Heart J 2003;24(11):987-1003)。リスクを、収縮期血圧、総コレステロールおよびHDL−コレステロール、年齢、現在の喫煙状態、糖尿病、および抗高血圧薬物療法の使用を使用して計算した。
【0043】
微粒子分析:MP基線レベルおよび細胞起源を、安定患者からの無血小板血漿(PFP)中で測定した。PFPは、最後の透析から72時間後にフィステルを含まない腕からクエン酸添加の全血を採血し、その後、1500g(15分間)および13000g(5分間)の遠心分離にかけた後に得られた。
【0044】
フローサイトメトリー分析(EPICS XL, Beckman Coulter, France)が、被験者の状態を知らない2人の独立した試験者によって実施された(Amabile N. et al. 2005)。PFPを、蛍光色素で標識された抗体(抗CD31−フィコエリトリン(PE)、抗CD41−PC5および抗CD235a−フルオロイソチオシアネート(FITC)抗体、Beckman Coulter France)またはそのそれぞれのアイソタイプの免疫グロブリンと共にインキュベーションした。ホスファチジルセリンを発現するMPを、CaCl(5mM)と共にフルオレセインにコンジュゲーションしたアネキシンV(Roche Diagnostics, France)を使用して標識した。0.1〜1μmの直径を有するイベントが、前方散乱および側方散乱強度ドット表示で同定され、そして1色または2色蛍光ヒストグラム上にプロットされた。MPが、特異的抗体によって正に標識される、1μm未満で0.1μmよりも大きなサイズを有するエレメントとして定義された。赤血球由来(CD235a+)、内皮由来(EMPs;CD31+CD41−)および血小板MPs(PMPs;CD31+CD41+)という特定のMP亜個体群が定義された(Amabile N. et al. 2005)。
【0045】
大動脈脈波速度測定:大動脈脈波速度(PWV)を、記載のように(Amabile N. et al. 2005)n=71人の患者において測定した。
【0046】
臨床エンドポイント評価:主要転帰は、経過観察中の任意の死亡の発生であった。さらに、本発明者らは、致命的および致命的ではない主要有害心血管イベント(MACE;急性冠症候群、緊急経皮的冠動脈インターベンション、心臓発作、うっ血性心不全、慢性心房細動、末梢動脈疾患に因る急性虚血)の数を記録した。
【0047】
統計分析:データは、分布の正規性に従って中央値および範囲または平均±標準偏差(SD)として表現される。非正規分布を有する量的変数を、相関分析の前にlog変換して、正規分布を達成した。マン・ホイットニーおよびχ検定を、個体群内の連続変数およびカテゴリカル変数の比較のために使用した。EMP測定の再現性を、スピアマン相関およびブランドアルトマンプロット分析を使用して、患者の亜群において前向きに評価した(Bland JM, Altman DG. Statistical methods for assessing agreement between two methods of clinical measurement. Lancet 1986;1(8476):307-10)。
【0048】
主要な分析は、Cox比例ハザードモデルおよび生存曲線に関するものであった。患者を死亡日または移植日に検閲した。生存を予知する因子を、単変量Cox比例ハザード回帰モデルの使用により同定した。時間に対する比例ハザードの仮定および線形性の仮定を分析前に確認し、そして全ての共変数によって合致させた。いくつかの変数間の高い共線性に因り、データ整理手順を使用して最終のCoxモデルを決定した。モデルにおける変数の数を、自動バックワードステップセレクション(backward stepwise selection)アルゴリズムを使用して減少させた。単変量分析において0.05未満のp値によって評価されるような、転帰に有意に関連性を有する変数を、多変量モデルに入力した。転帰に関連する全ての変数がモデルに入力されるまで、最も強い関連を有する変数を最初に入力し、その後、次に最も強いのを入力した。他の変数がモデルに加えられた後に、入力されたがもはや重要ではない変数を連続的に削除する。生存を、カプラン・マイヤー積極限法によって推定し、そしてマンテル(ログランク)検定によって比較した。p<0.05で差異は有意と考えられた。受信者動作特性(ROC)曲線分析を実施して、敏感度および特異度を推定した。統計学的分析を、NCSS7.0ソフトウェアを用いて実施した(J. Hintze, Kaysville, Utah, USA)。
【0049】
結果
患者の特徴:表1は、試験に含まれる81人の患者の臨床的および生化学的特徴を示す。経過観察は平均して50.5[5〜72]カ月であり、そして一連の工程の中央値は40カ月[3〜324]であった。EMP決定の再現性の統計分析により(n=41人の患者において評価;血液試料回収の間隔は平均して115(3〜296)日間の遅延)、EMPの測定は時間に対して再現性があることが判明した(図3)。
【0050】
経過観察期間中に、24人の死亡(27%)が記録され、その中の17人が心血管の原因であった(突然の心臓死、n=5;急性肺水腫、n=6;心筋梗塞、n=4;心臓発作、n=2)。さらに、n=4人の患者が腎移植を受け、そして試験から退出した。
【0051】
死亡した患者は、より高いレベルの循環中内皮MP、より低い拡張期圧を有し、そして生存者よりもかなり高齢であり、そしてhsCRPおよび血清カルシウムの増加を示した(表1)。基線の心血管リスク因子に関する差異はなかったが、より高齢によって影響を受けるフラミンガムスコアは中程度に増加した(表1)。
【0052】
循環中MPの転帰および予後の影響:全原因死亡率についての単変量Cox分析によると、保持される有意な共変数は、年齢、拡張期圧、心血管疾患の病歴、FRSおよびEMPレベルであった(表2)。多変量Cox分析においては、年齢(1年あたりHR=1.07[95%CI:1.03〜1.11];p<0.0001)およびEMP(1000のEMPあたりHR=1.28[95%CI:1.05〜1.57];p=0.014)のみが、全原因死亡率の独立した予測因子であった。
【0053】
単変量Cox分析は、心血管死亡率に関連する有意な共変数が、年齢、肥満度指数、心血管疾患の病歴、拡張期圧、hsCRP、フラミンガムスコア、およびEMPレベルであることを示した(表2)。多変量調整済みCoxモデルにおいては、年齢(1年あたりHR=1.06[95%CI:1.01〜1.12];p<0.01)、EMP(1000のEMPあたりHR=1.38[95%CI:1.11〜1.72];p<0.005)および心血管疾患の病歴(HR=5.36(7[95%CI:1.17〜24])は、心血管死亡率の唯一の独立した予測因子であった(表3)。同等な所見が、EMPの繰り返し測定を受けたn=41人の患者において観察され、ここで分析はEMPの2回目の測定を含み、経過観察は2回目の測定から経過観察の終了までの経過時間に対応する。同等な結果は、EMPもまた、MACEの独立した予測因子であったことを実証する(表4)。
【0054】
ROC曲線を、全死亡率および心血管死亡率の推定予測因子の特異度および敏感度の分析のために分析した(図1)。曲線下面積(AUC)は、心血管死亡率について、75.6±7.5(年齢)、84.2±6.3(EMPs)、58.1±8.0(PMPs)および70.2±7.7(FRS)であった。EMPレベルの最適で使用可能なカットオフ値は、心血管死予測について87%の敏感度および78%の特異度で、1040ev/μLであった(陽性的中率=56%;陰性的中率=92%)。さらに、EMPレベルの最適で使用可能なカットオフ値は、心血管死予測について63%の敏感度および78%の特異度で、1190ev/μLであった(陽性的中率=59%;陰性的中率=81%)。
【0055】
複合した心血管死亡率および全原因死亡率についての累積イベント率を図2に示す。各々の中央値のために二分されたEMPおよびPMPについてのカプラン・マイヤー曲線は、循環EMPについては心血管死亡率および全原因死亡率における有意な差異を示したが(それぞれp=0.0015およびp=0.032;ログランク検定)、PMPについては示さなかった(図2)。
【0056】
結論:
ESRDおよび安定した心血管容態を有する患者に実施された本発明の試験は、血漿中の高いEMPレベルが、全原因死亡率および心血管死亡率の独立した強い予測因子であるという最初の実証であり、このような能力は、他の細胞型からのMP、またはアネキシンV標識によって評価される全体的なMPプールに対しては判明しなかった。
【0057】
本発明者らは本明細書において、循環中EMPレベルが、ESRDにおける全原因イベントおよび主要有害心血管イベントの強い予測因子であることを示す。この結論は、他の細胞起源からのMP、またはアネキシンV+MPでは達しなかった。本発明者らはまた、ESRDにおける全原因死亡率および心血管死亡率の予測因子として以前に報告されたhsCRPレベルが、生存者と比較して非生存者において中程度にしかし有意に増加していたことを観察した。しかしながら、多変量分析は、本試験において、おそらく参加した被験者の数が少ないために、hsCRPレベルが死亡率と関連することを実証できなかった。本データはまた、拡張期血圧が、生存者と比較して、死亡したESRD患者においてより低かったことを示す。この所見は、低い拡張期血圧が、潜在的に冠灌流を危うくすることによって、ESRD患者における増加した死亡率に関連していたことを示す、大きなESRD個体群に対する以前の研究の所見を確証する。しかしながら、多変量分析は、本試験に含まれる81人のESRD患者における拡張期血圧と死亡率との間の有意な関連を実証できなかった。それにも関わらず、試料のサイズが少ないにも関わらず、循環中EMPは、無症候性ESRD被験者において、古典的なリスク因子、フラミンガムリスクスコアまたはPWVよりも、より強力で独立した有害イベントの予測因子であるようである。合わせて考えると、本結果は、EMPの測定が再現性があり、CV転帰に独立的に関連し、多変量分析における他のリスク因子よりも、予め決定した試験エンドポイントに対してより強い関係を提示し、そしてフラミンガムリスクスコアよりもROC分析においてより大きなAUCを示したことを実証する。それ故、循環中のEMPの測定は、心血管リスクの新規マーカーの評価のための最近提案されたAHAガイドライン基準と合致し、従って、無症候性ESRD患者の間で高いプロファイルリスクを有する被験者の同定のための新規で独立したツールを提示し得る。
【0058】
結論すると、高いレベルの内皮MPは、ESRDを有する血液透析患者における心血管イベントおよび全原因死亡率の強力で独立した予測因子である。ヒト血漿中のEMPの検出は、心血管疾患を発症するより高いリスクにある無症候性患者を同定する上で重要なツールとして役立ち得る。これらの患者を同定する能力は、より良好なリスク層別化およびより費用効率の高い予防療法をもたらすだろう。最後に、これらの所見は、循環中の内皮微粒子の蓄積が、慢性腎不全における心血管疾患の重要なリスクマーカーとなり得るという仮説を支持する。
【0059】
表1.基線の臨床的および生化学的パラメーター(値は平均±SDとして表現される)
【表1】


使用する略称:BMI−肥満度指数;BP−血圧;hsCRP−高感度C反応性タンパク質;死亡vs生存−P<0.05;**P<0.01;***P<0.001
【0060】
表2.ESRD患者における全原因死亡率についての単変量(A)および多変量(B)Coxモデル(Z値は、1.96を超える全ての値について有意である;HRはハザード比を意味する)
A.単変量分析
【表2】

【0061】
B.多変量分析
【表3】

【0062】
表3.ESRD患者における心血管死亡率についての単変量(A)および多変量(B)Coxモデル(Z値は1.96を超える全ての値について有意である;HRはハザード比を意味する)
A.単変量分析
【表4】

【0063】
B.多変量分析:心血管死亡率
【表5】

【0064】
表4:ESRD患者におけるMACEについての単変量(A)および多変量(B)Coxモデル(Z値は1.96を超える全ての値について有意である;HRはハザード比を意味する)
A.単変量分析
【表6】

【0065】
B.多変量分析:MACE
【表7】

【0066】
実施例2:母集団におけるその後の死亡についての循環中内皮微粒子の予測値
循環中のEMPの測定が、母集団における心血管死亡率についての価値ある予知となることをさらに実証するために、本発明者らは、フラミンガムコホート8期サイクルの2000人の被験者において内皮起源のMPの血漿中レベルを試験する(http://www.framinghamheartstudy.org/)。
【0067】
転帰:対象となる転帰は、経過観察中の、初めての心血管イベントの発生および全原因死亡率である。主要なCVDエベントとしては、致命的または致命的ではない冠動脈心疾患(心筋梗塞、冠不全および狭心症)、心臓発作または一過性虚血発作、間欠性跛行または心不全が挙げられる。これらのイベントの基準は以前に記載されている(Bland JM, Altman DG. Statistical methods for assessing agreement between two methods of clinical measurement. Lancet 1986;1:307-10.)。転帰は、含められる2000人の被験者について150の主要な心血管イベントに達すると予期される。
【0068】
統計分析:データは、分布の正規性に従って中央値および範囲または平均±SDとして表現される。非正規分布を有する量的変数を、相関分析の前にlog変換して、正規分布を達成する。マン・ホイットニーおよびχ検定を、個体群間の連続変数およびカテゴリカル変数の比較のために使用する。主要な分析は、Cox比例ハザードモデルおよび生存曲線に関する。患者を死亡日または主要イベントの発生日に検閲する。生存の予知因子を、単変量Cox比例ハザード回帰モデルの使用により同定する。時間に対する比例ハザードの仮定および線形性の仮定を、分析前に全ての共変数について確認する。いくつかの変数間の可能性ある高い共線性に因り、データ整理手順を使用して最終のCoxモデルを決定し得る。モデルにおける変数の数を、自動backward stepwise selectionアルゴリズムを使用して減少させる。単変量分析において0.05未満のp値によって評価されるような、転帰に有意に関連性を有する変数を、多変量モデルに入力する。転帰に関連する全ての変数がモデルに入力されるまで、最も強い関連を有する変数を最初に入力し、その後、次に最も強いのを入力する。他の変数がモデルに加えられた後に、入力されたがもはや重要ではない任意の変数を連続的に削除する。生存を、カプラン・マイヤー積極限法によって推定し、そしてマンテル(ログランク)検定によって比較する。p<0.05で差異は有意と考えられる。受信者動作特性(ROC)曲線分析を実施して、敏感度および特異度を推定する。
【0069】
参考文献:
本出願全体を通じて、種々の参考文献が、本発明が属する技術分野の最新技術を記載する。これらの参考文献の開示は、本開示への参照により本明細書に組み入れられる。
【0070】
【表8】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者から得られた血液試料中の内皮微粒子のレベルを決定することを含む、前記患者における心血管死亡率リスクを予測する方法。
【請求項2】
前記方法がさらに、内皮微粒子のレベルを、予め決定した値と比較する工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記血液試料が血漿試料である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記患者が、以前に心血管疾患であると診断されているかまたは診断されていない、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記患者が、慢性腎疾患および末期腎疾患などの高いリスクの心血管合併症に関連した疾患に患っている、請求項4記載の方法。
【請求項6】
患者から得られた血液試料中の内皮微粒子のレベルを決定することを含む、心血管死亡率リスクに対する、前記患者に投与された処置の影響をモニタリングする方法。
【請求項7】
前記方法がさらに、内皮微粒子のレベルを、予め決定した値と比較する工程からなる工程を含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記の予め決定した値が、処置前に請求項1〜5のいずれかに記載の方法によって決定された心血管リスクである、請求項7記載の方法。
【請求項9】
患者から得られた血液試料中の内皮微粒子のレベルを決定することを含む、前記患者における主要有害心血管イベント(MACE)を予測するための方法。
【請求項10】
前記方法がさらに、内皮微粒子のレベルを、予め決定した値と比較する工程を含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
MACEが、死亡、急性冠症候群、緊急経皮的冠動脈インターベンション、心臓発作、うっ血性心不全、慢性心房細動、および末梢動脈疾患に因る急性虚血からなる群より選択される、請求項9または10記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−531605(P2012−531605A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518088(P2012−518088)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059295
【国際公開番号】WO2011/000874
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(591100596)アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル (59)
【Fターム(参考)】