説明

応力腐食割れ試験用ジグ

【課題】より簡易に複数の試験片を設置できる応力腐食割れ試験用ジグを提供する。
【解決手段】応力腐食割れ試験用ジグ10は、試験片20の両端を上側から支持する天壁18と、試験片の中心部を下側から支持する中点支持部12を有する。中点支持部12の頂点は、天壁18の底面より高く、また、その高さは奥側に行くほど高くなっている。つまり、中点支持部12と天壁18の底面との高低差が連続的に変化している。試験片を、その両端を天壁18の下側、中心部を中点支持部12の上側に位置するように配置した場合、その配置位置における中点支持部12と天壁18の底面との高低差に応じた応力が試験片に付加される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、応力を付与して撓ませた状態の試験片を試験環境にさらして応力腐食割れの感受性を試験する応力腐食割れ試験に用いられるジグに関する。
【背景技術】
【0002】
種々の材料の特性の一つとして、応力腐食割れの感受性がある。この応力腐食割れの感受性は、応力を付与して撓ませた状態で試験片を試験環境にさらし、その際に生じる腐食割れをみる応力腐食割れ試験で測定される。この応力腐食割れ試験を行なう際には、応力を付与して所定の撓みを与えた状態で試験片を保持する必要がある。そのため、従来から、種々の応力腐食割れ試験用ジグが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ボルトを用いて試験片に応力を付与する三点曲げ試験治具が開示されている。これは、治具本体と、治具本体にねじ込まれるボルトとで構成されており、治具本体の両端に設けられた支持部で試験片の両端に、ボルトで試験片の中心部に接触する。そして、このボルトの突出量を調整することで試験片に加える応力を調整できるようになっている。かかる治具によれば、試験片ごとに異なる応力を付加して維持することができる。
【0004】
【特許文献1】実開昭59−131046号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のボルトを用いた応力腐食割れ試験用ジグでは、試験片の設置作業が煩雑であり、設置時間が長くなるという問題がある。すなわち、従来のジグは、ボルトの突出量を調整することで、試験片への付加応力を調整している。したがって、複数の試験片を設置する場合には、その試験片の枚数と同じ個数のボルトを調整する必要がある。多数のボルトの調整を行なうことは、極めて煩雑であり、設置時間が長くなる要因の一つとなっていた。特に、応力腐食割れ試験では、試験片ごとに異なる応力を付加し、付加応力による腐食割れの感受性の違いを見ることが多い。その場合、試験片ごとに異なるボルト突出量とする必要があり、その調整が極めて煩雑であった。
【0006】
そこで、本発明では、複数の試験片をより簡易に設置できる応力腐食割れ試験用ジグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の応力腐食割れ試験用ジグは、応力を付与して撓ませた状態で試験片を保持する応力腐食割れ試験用ジグであって、2以上の試験片が配設可能であって、各試験片の両端を支持する第一部材と、2以上の試験片が配設可能であって、試験片の中間部分を、第一部材と反対方向から支持することで試験片に変位を加える第二部材と、を備え、第一部材の支持高さと、第二部材の支持高さと、の差が徐々に変化していることを特徴とする。
【0008】
好適な態様では、第一部材の支持高さと、第二部材の支持高さと、の差が連続的に変化している。他の好適な態様では、第二部材は、試験片に線状接触する形状である。他の好適な態様では、第一部材の支持高さが一定であり、第二部材の支持高さが徐々に変化している。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、2以上の試験片が配設可能な第一部材の支持高さと、第二部材の支持高さと、の差が連続的に変化しているため、配設位置を調整するだけで簡易に試験片ごとに異なる応力を付加して保持できる。その結果、複数の試験片をより簡易に設置でき、設置時間を大幅に短縮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態である応力腐食割れ試験用ジグ10について図面を参照して説明する。はじめに、応力腐食割れ試験用ジグ10を用いる応力腐食割れ試験について簡単に説明する。応力腐食割れ試験は、試験片に対して所定の応力を付加し、その状態で試験片を試験環境、例えば、薬液中に晒し、腐食割れの感受性を見る試験である。試験片としては、長方形の薄板を用いることが多い。その寸法は、アルミニウム合金材料の場合はJISで規格されており、幅が20mm、長さが100mmまたは200mm、厚みが3mm以下または6mm以下となっている。他の材料については特に規格されていないが、このアルミニウム合金材料に関するJIS規格に準拠し、長尺の試験片を用いることが多い。
【0011】
応力腐食割れ試験の際には、この試験片に応力を付加し、その状態で当該試験片を試験環境にさらす。このとき、複数の試験片に異なる応力を付加し、応力による腐食割れの感受性の違いをみることが多い。本実施形態の応力腐食割れ試験用ジグ10は、この応力腐食割れ試験の際に、応力を付加した状態で複数の試験片を保持するために用いられる。
【0012】
図1は、本発明の実施形態である応力腐食割れ試験用ジグ10の斜視図である。また、図2は応力腐食割れ試験用ジグ10の上面図、図3は正面図である。この応力腐食割れ試験用ジグ10は、上部開口した不完全ロ字形状、換言すれば、横向きの略C字形状の断面形状を持つ略直方体である。この応力腐食割れ試験用ジグ10は、土台となるベース14と、ベースの両端から立脚する側壁16、側壁16の上端から水平方向内側に延びる天壁18、ベース14の中央部に突出する中点支持部12からなる。
【0013】
ベース14は、長方形の平板であり、その幅Wは試験片の長さより長く、その奥行き長さDは試験片の幅に配設数を乗じた値より長くなっている。すなわち、後述するように、この応力腐食割れ試験用ジグ10では、ベース14を横断するように試験片を配置する。また、その際、複数の試験片を、ベース奥行き方向に並べて配設する。したがって、ベース14の幅Wは試験片が横断でき得るように試験片長さより長く、ベース14の奥行き長さDは複数の試験片が配設でき得るように試験片の幅に配設数を乗じた値より長くなっている。
【0014】
このベース14の両脇には、側壁16a,16bが立脚している。この両側の側壁16a,16bは、互いに同じ高さとなっており、それぞれの上端からは水平方向内側に天壁18a,18bが延設されている。両側の側壁16a,16bから延びる二つの天壁18a,18bは、ともに同じ高さに位置し、ベース14との間に所定の間隙をもって対向している。また、対面する天壁18との間にも所定の間隙が設けられている。各天壁18の奥行き長さは、ベース14と同じ、すなわち、試験片の幅に配設数を乗じた値より長くなっている。また、各天壁18の幅は、対面する天壁18との間隙Vが試験片の長さより短くなる長さである。天壁間の間隙Vをかかる長さとすることで、天壁18a,18bの底面に試験片の両端が当接し、試験片の両端を支持できる。
【0015】
ベース14の中心には、中点支持部12が突出している。中点支持部12は、横断面が二等辺三角形の三角柱である。この中点支持部12は、二等辺三角形の頂点が上になるように、ベース14の幅方向中心に位置し、奥行き方向、すなわち、試験片の配設方向に延びる。この中点支持部12の高さhは、連続的に変化している。すなわち、中点支持部12の二等辺三角形の頂点を形成する辺は、手前側から奥側にいくにつれ徐々に高くなるように傾斜している。したがって、中点支持部12の頂点と天壁18の底面との高さの差は、連続的に変化している。なお、中点支持部12の高さは、その最も低い部分であっても、天壁18の底面、すなわち、試験片両端との当接面より高くなっている。
【0016】
以上の、ベース14、側壁16、天壁18、中点支持部12は、いずれも、一体として構成されている。また、十分な剛性と、耐腐食性を備えた材料からなる。十分な剛性とは、試験片に付加される応力に十分に耐えられる剛性を指す。また、十分な耐腐食性は、応力腐食割れ試験における試験環境に晒されても腐食を生じない程度の耐腐食性を指す。
【0017】
次に、この応力腐食割れ試験用ジグ10での試験片20の保持について説明する。図4は、応力腐食割れ試験用ジグ10で試験片20を保持した際の正面図である。試験片20を応力腐食割れ試験用ジグ10で保持させる場合は、まず、応力腐食割れ試験用ジグ10の正面手前側から試験片20を挿入する。このとき、試験片20の中心は中点支持部12の上側に、試験片20の両端は天壁18の下側になるように、試験片20を撓ませて挿入する。換言すれば、試験片20の中心は中点支持部12で、両端は天壁18の底面で支持されるように挿入する。ここで、応力腐食割れ試験用ジグ10の手前側は、中点支持部12の頂点高さが最も低く、中点支持部12の頂点と天壁18との高低差が最も少ない。したがって、正面手前側からであれば、試験片20を大きく撓ませることなく、換言すれば、試験片20に大きな応力を付加することなく、挿入できる。
【0018】
正面手前側から試験片20を挿入すれば、次に、試験片20を奥側に押して、スライドさせる。そして、同じ手順で、別の試験片20を正面手前側から挿入する。そして、この試験片20も奥側にスライドし、再度、別の試験片20を挿入する。これを、所定の枚数に達するまで繰り返す。その結果、応力腐食割れ試験用ジグ10には、所定の枚数の試験片20が順に配設された状態になる。
【0019】
この配設された試験片20は、その配設位置に応じて、付加される応力が異なっている。中点支持部12の頂点と天壁18の底面との高低差が小さい手前側に配設された試験片20は、その撓み量が小さく、付加される応力も小さい。一方、中点支持部12の頂点と天壁18の底面との高低差が大きい奥側に配設された試験片20は、その撓み量が大きく、付加される応力も大きい。つまり、本実施形態の応力腐食割れ試験用ジグ10によれば、配設位置を変えるだけで、試験片に異なる応力を付加して保持できる。
【0020】
ここで、応力腐食割れ試験においては、複数の試験片に互いに異なる応力を付加した状態で維持することが求められる。従来の、ボルトで試験片中心を支持する応力腐食割れ試験用ジグでは、各試験片ごとに、このボルトの突出量を調整し、それにより付加応力を変えていた。つまり、試験片の数分だけ、ボルト調節の手間がかかっていた。
【0021】
これに対し、本実施形態の応力腐食割れ試験用ジグ10では、試験片20の配設位置を調節するだけで付加応力を変えられる。したがって、各試験片20の配設位置、すなわち、応力腐食割れ試験用ジグ10に挿入後のスライド量を変えるだけで、複数の試験片20に互いに異なる応力を付加して維持できる。このスライド量の調整は、ボルトの突出量調節に比べ極めて簡単に行なうことができる。つまり、本実施形態によれば個々の試験片20ごとに煩雑な調節をすることなく、互いに異なる応力を付加した状態で複数の試験片20を保持できる。その結果、応力腐食割れ試験のための試験片20の設置時間を大幅に短縮することができる。
【0022】
また、従来の下側から突出させたボルトでは、試験片に対して点で接触する。この接触点が試験片中心に位置しない場合、試験片には非対称の応力がかかることになり、付加応力にばらつきが生じ、正確な腐食割れ試験ができない。しかしながら、ボルトと試験片との接触点を試験片中心に位置させるためには、高度な位置決めが必要となる。かかる高度な位置決めは、試験片の設置作業を煩雑にし、設置時間を長くする原因となっていた。これに対し、本実施形態では、中点支持部12の頂点が試験片20に線状に接触する。したがって、応力のばらつきが生じにくく、簡易に正確な腐食割れ試験が可能となる。その結果、試験片20の設置にかかる時間を大幅に短縮しつつも正確な腐食割れ試験ができる。
【0023】
なお、応力腐食割れ試験の際には、各試験片に負荷された応力の大きさが明らかであることが求められる。本実施形態の応力腐食割れ試験用ジグ10では、各試験片20の設置位置における、中点支持部12の頂点高さと天壁18の底面高さとの差から試験片20に付加される応力を求めることができる。すなわち、三点支持された試験片の撓み量δは、付加応力F,両端支点間距離L、試験片厚さt、試験片の弾性定数Eとした場合、δ=(F×L)/(6×E×t)となる。撓み量δは中点支持部12の頂点と天壁18の底面との高低差Δ、両端支点間距離Lは対面する天壁の間隙距離Vに置き換えられるため、付加応力Fは、F=(Δ×6×E×t)/(V)となる。このうち、弾性定数E、天壁の間隙距離V、試験片の厚みtは定数であるため、中点支持部12の頂点と天壁18の底面との高低差Δさえ分かれば、自動的に負荷応力Fを求められる。なお、本実施形態では、中点支持部12と天壁18底面との高低差Δは、試験片の端部であって、高低差Δの大きい側における値を用いる。
【0024】
また、説明したように、本実施形態では、挿入された試験片を、中点支持部12および天壁18の底面と当接した状態で、奥側方向にスライドする。このとき容易にスライドできるように、少なくとも中点支持部12および天壁18の底面に潤滑剤を焼き付け、または、試験片ごとに潤滑剤を塗布しておくことが望ましい。
【0025】
次に、他の本実施形態である応力腐食割れ試験用ジグ10について、図5を用いて説明する。この応力腐食割れ試験用ジグ10は、上述の応力腐食割れ試験用ジグと同様、ベース14、側壁16、天壁18、中点支持部12からなる。ただし、天壁18、および、中点支持部12の形状が、既述のジグと異なっている。すなわち、本実施形態において、天壁18は、その底面高さが奥側にいくほど低くなっている。換言すれば、天壁18の底面は、奥側に向かって傾斜している。一方、中点支持部12は、断面二等辺三角形の三角柱形状であるものの、その高さは一定である。なお、中点支持部12の頂点は、天壁18の底面の最も高い部分より、高くなっている。
【0026】
この応力腐食割れ試験用ジグ10に試験片20を設置する場合、上述の実施形態と同様、応力腐食割れ試験用ジグ10の正面手前側から試験片を挿入する。そのとき、試験片の中心が中点支持部12の上側、試験片の両端が天壁18の底面の下側になるように試験片を撓ませて挿入する。正面手前側は、天壁の底面の高さが最も高い、換言すれば、天壁18の底面と中点支持部12の頂点との高低差が最も小さいため、試験片を僅かに撓ませるだけで挿入できる。そして、挿入された試験片を奥側、すなわち、天壁18の底面と中点支持部12との高低差が大きい方向に、スライドさせる。これを順次、繰り返し、複数の試験片を応力腐食割れ試験用ジグ10に配設する。
【0027】
本実施形態のように、中点支持部12の高さを一定、天壁18の底面の高さを連続的に変化させた場合でも、結果として、中点支持部12と天壁18の底面との高低差は、連続的に変化することになる。そのため、この応力腐食割れ試験用ジグ10に配設された複数の試験片は、その配設位置によって撓み量が異なり、付加される応力が異なることになる。つまり、本実施形態の応力腐食割れ試験用ジグ10であっても、互いに異なる応力を付加して複数の試験片を簡易に保持できる。
【0028】
なお、最初の実施形態では中点支持部12の高さを、本実施形態では天壁18の底面の高さを変化させているが、当然、中点支持部12および天壁18の底面との高低差が連続的に変化するのであれば、この両方の高さを変化させるようにしてもよい。例えば、中点支持部12は手前側から奥側に傾斜させ、天壁18の底面は奥側から手前側に傾斜させてもよい。
【0029】
次に、他の実施形態について図6を用いて説明する。この応力腐食割れ試験用ジグ10は、中点支持部12の高さが段階的に変化していることを特徴の一つとしている。すなわち、応力腐食割れ試験用ジグ10の中心部に突設される中点支持部12は、既述の実施形態と同様に断面二等辺三角形の略三角柱であるが、その二等辺三角形の高さは、段階的に変化している。各段階の長さlは試験片の幅より僅かに長くなっており、異なる高さの段階を跨ぐことなく各試験片を設置できるようになっている。また、各段階の境界部分(段差部)は、傾斜や、円弧で接続されており、正面手前側から挿入された試験片を容易に奥側にスライドでき得るようになっている(A−A断面図参照)。一方、天壁18の底面の高さは一定となっている。つまり、本実施形態では、中点支持部12と天壁18の底面との高低差が、段階的に変化している。
【0030】
このように中点支持部12と天壁18の底面との高低差が段階的に変化する構成とすることで、各試験片にばらつきの無い、均一な応力を負荷できる。すなわち、高低差が連続的な場合、一つの試験片にかかる応力も奥行き方向に連続的に変化することになる。これに対し、高低差を階段状に変化させ、各試験片を異なる高さの段階を跨がずに配置することにより、一つの試験片に均一な応力を負荷できる。その結果、応力に対する腐食割れの感受性をより正確に取得することができる。また、各段差部分を傾斜や円弧で接続することにより、試験片のスライドが容易になる。その結果、簡易に試験片を設置できる。なお、各段階の長さlを長くし、一つの段階に複数の試験片を配置できるようにしてもよい。一つの段階に複数の試験片を配置することにより、複数の試験片の同一条件での腐食割れ試験ができる。それにより、同一条件で複数の腐食割れ試験結果を得ることができる。そして、これらの結果の平均をとることにより、試験片ごとの特性や例外的要因による誤差を排除し、より正確な腐食割れ試験結果を得ることができる。
【0031】
次に、他の実施形態について図7を用いて説明する。図7(A)は応力腐食割れ試験用ジグ10の斜視図であり、図7(B)は応力腐食割れ試験用ジグ10で試験片を保持した状態を示す図である。この応力腐食割れ試験用ジグ10は、基台部22および蓋部24の二部材からなる。基台部22は、平板状のベース14の両端に段差部28a,28bが形成されている。段差部28は、内側に向かって下がる二段の段差29,31からなる。各段差29,31は、その高さが一定であり、対面する段差部28の対応する段差29,31と同じ高さとなっている。対面する段差29,31との幅は、一段目段差31では試験片長さより短く、二段目段差29では試験片長さより長くなっている。したがって、ベース26を横断するように試験片を配置した際、一段目段差31の上に試験片が乗るようになる。
【0032】
一方、蓋部24は、平板状のベース32とその両側から下方向に延びる側壁30a,30b、および、ベース32の中心部から突設する中点支持部34からなる。ベース32の幅は、基台部22の幅とほぼ等しく、蓋部24を基台部22に載置した際に、ベース32両側から延びる側壁30a,30bが基台部22の側面外側に位置できるようになっている。中点支持部34は、断面二等辺三角形の三角柱であり、そのベース32の幅方向中心から下側に向かって突出している。この中点支持部34の突出高さは、奥行き方向に向かって徐々に高くなるように、連続的に変化している。また、その突出高さは、少なくとも、基台部22の一段目段差31と二段目段差29との高低差より高くなっている。
【0033】
また、基台部22と蓋部24は、螺合などの接続手段によって、適宜、接続できるようになっている。例えば、基台部22の四隅にネジ孔36を、蓋部24のうち基台部22のネジ孔36と対応する位置に貫通孔38を、それぞれ設け、必要に応じて、ボルトで基台部22および蓋部24を接続し、両者の位置関係が固定できるようになっている。
【0034】
次に、この応力腐食割れ試験用ジグ10に試験片20を設置する場合について説明する。試験片20を設置する場合は、まず、基台部22の両段差部28a,28bを跨ぐように試験片20を基台部22に配置する。このとき、複数の試験片20を奥行き方向に順次並べる。全ての試験片20を配設すれば、蓋部24を基台部22の上に被せ、ボルトなどで基台部22および蓋部24の位置関係を固定する。
【0035】
このとき、蓋部24の中点支持部34の高さは、基台部22の一段目段差31と二段目段差29との高低差より高くなっている。したがって、一段目段差31の上に配置された試験片20の中心部は、蓋部24の中点支持部34によって上側から支持され、応力が付加される。つまり、試験片20を配置した基台部22に蓋部24を載置することにより、各試験片20の両端は一段目段差31により下側から支持され、試験片20の中心部は中点支持部34により上側から支持される。その結果、試験片20は応力が付加された状態で保持される。また、中点支持部34の高さは連続的に変化しているため、その付加される応力は、試験片20の配置位置によって変化する。つまり、本実施形態によれば、試験片20の配置位置を調整することにより、個々の試験片20に付加される応力を調整できる。
【0036】
つまり、本実施形態の応力腐食割れ試験用ジグ10によれば、各試験片ごとの煩雑な調節作業を不要とし、容易に試験片ごとに異なる応力を付加して保持できる。したがって、試験片の設置時間を大幅に短縮できる。
【0037】
なお、当然ながら、中点支持部34の高さを、連続的でなく、段階的に変化するようにしてもよい。また、中点支持部34ではなく、一段目段差31の上面高さを変化させるようにしてもよい。また、各試験片20を所定の位置で固定できるように、試験片20の設置位置近傍に溝や凹部等の位置決め手段を設け、試験片20が移動しないようにしてもよい。すなわち、本実施形態によれば、試験片20のスライド作業が不要となるため、試験片20の摺動を阻害する溝や凹部などを設けても良い。
【0038】
さらに、説明した全ての実施形態において中点支持部は、断面二等辺三角形としているが、当然、他の形状でもよい。例えば、試験片に線状接触でき得る形状であれば、断面半円形状等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施形態である応力腐食割れ試験用ジグの斜視図である。
【図2】図1に示す応力腐食割れ試験用ジグの上面図である。
【図3】図1に示す応力腐食割れ試験用ジグの正面図である。
【図4】図1に示す応力腐食割れ試験用ジグで試験片を保持した状態を示す図である。
【図5】他の実施形態である応力腐食割れ試験用ジグの斜視図である。
【図6】他の実施形態である応力腐食割れ試験用ジグの斜視図である。
【図7】(A)は他の実施形態である応力腐食割れ試験用ジグの斜視図であり、(B)は応力腐食割れ試験用ジグで試験片を保持した状態を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
10 試験用ジグ、12,34 中点支持部、14,26,32 ベース、16 側壁、18 天壁、20 試験片、22 基台部、24 蓋部、28 段差部、29 二段目段差、31 一段目段差。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
応力を付与して撓ませた状態で試験片を保持する応力腐食割れ試験用ジグであって、
2以上の試験片が配設可能であって、各試験片の両端を支持する第一部材と、
2以上の試験片が配設可能であって、試験片の中間部分を、第一部材と反対方向から支持することで試験片に変位を加える第二部材と、
を備え、第一部材の支持高さと、第二部材の支持高さと、の差が徐々に変化していることを特徴とする応力腐食割れ試験用ジグ。
【請求項2】
請求項1に記載の応力腐食割れ試験用ジグであって、
第一部材の支持高さと、第二部材の支持高さと、の差が連続的に変化していることを特徴とする応力腐食割れ試験用ジグ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の応力腐食割れ試験用ジグであって、
第二部材は、試験片に線状接触する形状であることを特徴とする応力腐食割れ試験用ジグ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の応力腐食割れ試験用ジグであって、
第一部材の支持高さが一定であり、
第二部材の支持高さが徐々に変化していることを特徴とする応力腐食割れ試験用ジグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−184128(P2006−184128A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−377984(P2004−377984)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】