説明

急冷容器

使用中は縦長に配置し、ガスの入口を上端部に備えると共に冷却されたガスの出口を下端部に備えて下向きのガス流の通路を形成した急冷容器であって、その上端部に前記ガスの入口に流体連結された開口部を有する第1の内部管状壁部分を備え、前記内部管状壁部分は、その下端部にて、前記ガス流の通路の方向において外側に傾斜した壁を有する末広の円錐状部分に連結され、液体の急冷媒体を噴霧化して下方に噴射して前記ガス流の通路に入れるための1より多いノズル配列が、前記末広の円錐状部分により囲まれた空間内に設けられた、前記急冷容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上端部に高温ガスの入口を有し、下端部に冷却されたガスの出口を有する縦長の急冷容器に関する。よって、前記入口と出口の間に、下向きのガス流の通路が存在する。また、この容器は、ガス流の通路に急冷媒体を注入するための手段を備える。
【背景技術】
【0002】
このような容器はUS−A−2006/0260191から公知である。この公報の図4には、固体炭素質原料をガス化して、1200〜1800℃の温度の合成ガス混合物を得るためのガス化反応器が示されている。この反応器は、その上端部に高温合成ガスの出口を有し、その下端部にスラグの出口を有する。反応器自体は、第1段階にて合成ガス中に存在する非ガス成分の凝固点より低い温度に下げる急冷手段を備える。ダクトによりガス化反応器に連結された別の急冷容器において合成ガスの流れに水の霧を注入することによって、合成ガスの温度をさらに下げる。急冷容器の利点は、このような容器の構成を、複数の熱交換器バンクを有する廃熱ボイラよりもはるかに簡単にできることである。別の利点は、飽和含有量よりも少ない含有量の水を含んだ合成ガスを得ることができることである。このことにより、実質的に冷却された合成ガスを得ることができ、例えばEP−B−1178858に記載のフィルターを用いて、又はサイクロンを用いてこの合成ガスから灰分を分離できる。
【0003】
JP−A−53110967には、或る角度にて下向きに流れるガス中に急冷媒体が注入される急冷容器が記載されている。
【0004】
しかしながら、出願人はUS−A−2006/0260191の図4に示された容器の構成又はJP−A−53110967の構成は特定の欠点を有することに気づいた。これらの構成についての重大な懸念は、合成ガス中に存在する非ガス成分の1つである灰が、水が注入される場所より下流の地点にて容器の壁に堆積物を形成し得ることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、灰などの非ガス成分の一定の含有量を有する合成ガスを効果的に冷却できる、より頑強な急冷容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに記載の急冷容器は従来の急冷容器の欠点を解消する。本発明は、使用中は縦長に配置し、ガスの入口を上端部に備えると共に冷却されたガスの出口を下端部に備えて下向きのガス流の通路を形成した急冷容器であって、その上端部に前記ガスの入口に流体連結された開口部を有する第1の内部管状壁部分を備え、前記内部管状壁部分は、その下端部にて、前記ガス流の通路の方向において外側に傾斜した壁を有する末広の円錐状部分に連結され、液体の急冷媒体を噴霧化して下方に噴射して前記ガス流の通路に入れるための1より多いノズルの配列が、前記末広の円錐状部分により囲まれた空間内に設けられた、前記急冷容器に関する。
【0007】
出願人は、下向きの注入手段を末広の円錐状部分により囲まれた空間内に設けることにより、灰と水の混合物の堆積があまり生じないか又はまったく生じないことに気づいた。このことは、長期間、連続的な運転を実現するためには非常に重要である。出願人は、下向きの注入手段と円錐状部分のおかげで、液体の急冷媒体が急冷容器の内壁自体に接触する前に完全に蒸発できることを見いだした。このことは有利である。というのは、出願人は、過去の経験から、灰と液体の急冷媒体、特に液体の水との組み合わせが急冷容器の内側面に接触すると、深刻なファウリングを引き起こし得ることを知っているからである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】急冷容器の断面図を示す。
【0009】
図1bは急冷容器の別の態様の断面図を示す。
【0010】
【図2】図1又は図1bの急冷容器のAA’断面図を示す。
【0011】
【図3】急冷容器の一部である急冷媒体の注入手段を詳細に示す。
【0012】
【図4】図3に概略的に示されたノズルの詳細を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
急冷容器は上の、下の、下向きに、及び垂直にという用語を用いて定義される。これらの用語は使用中の急冷容器の方向に関係する。これらの用語は本発明の範囲を垂直に方向付けられた容器に限定するものではない。
【0014】
本発明の急冷容器は、その上端部にガスの入口を備える。この入口は、容器の上端又は容器の側面に配置され、上記US−A−2006/0260191の図4に記載のように前記急冷容器とガス化反応器との間の連結ダクトに連結できる。急冷容器はその上端部に第1の内部管状壁部分を更に備える。この部分は、ガスの入口に流体連結された開口部を有する。管状壁部分はその下端部にて末広の円錐状部分に連結され、この円錐状部分は、ガスの通路の方向において外向きに傾斜した壁を有する。第1の内部壁部分及び/又は末広の円錐状部分の壁は、好ましくはメンブレン壁の構成である。さらに好ましくは、これら両方の壁部分が、水冷式のメンブレン壁の構成である。メンブレン壁構成なる用語は公知であり、冷却壁構成をいう。このような壁は気密性であり、相互連結された導管の配列からなる。一般に冷却は冷却水を蒸発させることにより行う。これらの導管は、共通分配器を介して冷却媒体の供給源に流体連結され、その他端部にて使用済み冷却媒体を放出する共通ヘッダーに流体連結される。
【0015】
末広の円錐状部分は、ガスの通路の方向において外側に傾斜した壁を有する。好ましくは、この壁の表面と急冷容器の縦軸との角度(図1のα)は3°〜30°であり、さらに好ましくは5°〜10°である。
【0016】
末広の円錐状部分は、適切にはその下端部にて第2の内部管状壁に続く。この第2の管状壁は、冷却されたガスの出口に流体連通した下部開放端部を有する。ここで続くと言っているのは、両方の部分が随意に互いに固定されて気密性の連結を形成し得ることを意味する。第2の管状壁は随意にメンブレン壁にし得る。急冷容器のその部分での温度条件はさらに穏やかなので、この部分については高合金鋼板から適切に作られた簡単な構成が好ましい。上部円筒部分、円錐状部分、及び第2の内部管状壁は、1以上のクリーナー装置を備えることができ、このクリーナー装置は機械式ラッパー、空気ブラスター装置又は音響クリーナー装置とし得る。第2の内部管状壁はその下端部にて開放端部となっている。この開放端部は適切には容器の下端部に設けられ、好ましくは前記容器のテーパー状端部のすぐ上に設けられる。この好ましいテーパー状端部は、冷却されたガスの出口である中央開口部に至る。
【0017】
ガス流の通路を規定する内部容器の大きさは、所与の設計スループットに対して合成ガスの特定の最小下向きガス速度を達成するように選ばれる。好ましくは、ガス速度は、ガスが第1の内部管状壁部分を通過する際に1m/s以上である。
【0018】
ガス流路の方向における第2の内部管状壁の長さは、急冷媒体が上流部分に加えられた後に所望の冷却を実現するように十分な長さとすべきである。好ましくは、第2の内部管状壁の内径とその長さの比は1:1〜1:6である。
【0019】
急冷容器は、ガス流の通路に急冷媒体を注入するための手段を備える。これらの注入手段は、末広の円錐状部分により囲まれた空間内に設けられる。次の理論に縛られることを望むものではないが、この場所にこれらの注入手段を設けることにより、灰が壁の上に堆積する危険性が大幅に低減されると考えられる。好ましくは、急冷媒体の注入手段は、下方向に液体を噴霧化し噴射するための1より多いノズルの配列からなる。下方向というのは、液体がノズルから放出される際の液体の方向が垂直下向きであることを特に意味する。もちろん、急冷媒体がノズルから放出される際の急冷媒体の流れは円錐状の形状を有し、この円錐の平均方向は液体がノズルから噴射される際の液体の方向となることが理解される。ノズルは水圧ノズルとし得る。水圧ノズルは、一般に合成ガスの圧力より高い40バール以上の高注入圧力を要する。というのは、注入圧力と原合成ガスの圧力との圧力差が小さいと、注入ミスト中の液滴が大きくなりすぎるからである。後者はいわゆるツイン流体ノズルを用いて少なくとも部分的に補うことができ、ツイン流体ノズルでは、噴霧ガス(例えばN、CO、蒸気又は合成ガス)が流体を微細な液滴に噴霧化する。この好ましい噴霧ガスは、下流の処理段階から循環させた合成ガスである。噴霧ガスを用いることの利点は、同じ液滴の大きさと速度を達成しつつ注入圧力と原合成ガスの圧力との差を減少させることができることである。このようなツイン流体ノズルは周知であり、例えばSpraying Systems Co.から得ることができる。適当なノズルの例がUS−A−5732885及びUS−A−2004/0222317に記載されている。
【0020】
本発明の急冷容器において使用するのに好適なノズルは、通路本体中に設けられた液体の急冷媒体の垂直中央供給通路を備えたノズルであり、この通路本体はその下端部にて急冷媒体のための外向き放射状の放出開口部を有し、前記放射状の放出開口部は、下向きに流れる噴霧ガスのための環状通路に流体連通しており、この環状通路は通路本体と外側ノズル本体とにより規定され、前記環状通路は中央通路の下端部にて1つの出口通路に流体連結され、前記出口通路はノズル本体の内壁により規定され、前記出口通路はその下端部にて急冷媒体と噴霧ガスとの混合物の出口開口部に至る。
【0021】
さらに好ましくは、上記ノズルの出口通路の下端部は、使用中に液体の急冷媒体と噴霧ガスとの円錐形状の噴霧がガスの流路中に放出されるように、下方向において末広の内壁を有する。この円錐の角度は好ましくは10〜70°であり、さらに好ましくは15〜25°である(図4の角度β)。このようなノズルの例が、上記US−A−2004/0222317の図2に示されている。
【0022】
液体を噴霧化して下方向に噴射するための1より多いノズルの配列は、合成ガス流と液体の媒体を接触させることができるならばどのような構成でもよい。出願人が見いだした好ましい構成では、急冷容器の壁から末広の円錐状部分の壁の開口部を通って中央位置に延びる、放射状に配置された複数のアームからなる。これらのアームは、1以上の下向きのノズルを備える。好ましくは、ノズルの出口開口部の中心と末広の円錐状部分の壁との間の最小水平距離は、0.2〜1mである(図3の距離d)。
【0023】
4〜15個のアームを設けるのが好ましい。各アームは3〜10(10は含む)個のノズルを適切に有し得る。好ましくは、中心位置に最も近いノズルは、下向きと中心位置との間にてわずかに傾斜したメイン流出方向を有する。これらのアームは1つの水平面内に設けるのが好ましい。別法として、異なる平面に例えば互い違いの構成にて設けてもよい。
【0024】
合成ガスはかなりの量の非ガス成分を含むので、このような条件下ではノズルの周りにシールドガスを供給するための手段を設けるのが有利である。同じ理由で、アームの上部に堆積物が積もるのを防止し又はそれを取り除くための手段をアームに設ける。このような手段は、アーム自体の上に直接配置されるか又は前記アームより上に取り付けられた金属シールドの上に配置される機械式ラッパーとし得る。このような手段はまた音響クリーナー手段とし得る。このような手段はまた、固体の堆積物を連続的若しくは断続的に吹き払うか又は固体の堆積物を取り除く送風手段としてもよい。シールド及び/又は送風ガスは、例えばN、CO、蒸気又は合成ガスとしてもよく、より好ましくは噴霧ガスと同じ供給源からのものとする。
【0025】
急冷容器は、注入手段を介して適当な急冷媒体をミストとしてガス流に注入することにより、灰などの非ガス成分を有するガスを高温から低温に冷却するのに適切に用いられる。このガスは好ましくは合成ガス、すなわち灰含有炭素質原料をガス化する際に得られる水素と一酸化炭素で大半を占める混合物である。このような原料の例は、石炭、石炭からのコークス、石炭液化残留物、石油コークス、煤、バイオマス、並びにオイルシェール、タールサンド及びピッチから得られる粒子状固体である。石炭は、亜炭、亜瀝青炭、瀝青炭及び無煙炭を含めて任意の種類でよい。このような原料をガス化して急冷容器の原料を得るのは重要ではない。好ましくは、高温の合成ガスがスラグとは別に放出され冷却されるガス化反応器の構成が用いられる。よって、高温の合成ガスを通過させる水槽を下端部に有し、スラグと合成ガスの温度が同時に下げられるガス化反応器は除外される。
【0026】
急冷容器に入る合成ガスは、500〜900℃の温度を有し得、より適切には600〜900℃の温度を有する。圧力は適切には1〜10MPaである。急冷段階の後のガスの温度は好ましくは200〜600℃であり、より好ましくは300〜500℃であり、よりいっそう好ましくは350〜450℃である。
【0027】
急冷媒体は、噴霧化するのに適した粘性を有する任意の液体でよい。注入する液体の例は、限定するものではないが、液化炭化水素、合成ガスを原料として用いる下流のプロセスにおいて得られる廃棄物流である。好ましくは、この液体は50重量%以上の水を含む。最も好ましくは、この液体は実質的に水からなる(すなわち>95体積%)。好ましい態様では、下流の合成ガススクラバーにおいて得られる廃水(黒水ともいう)が当該液体として用いられる。急冷媒体が水を含む特に好ましい態様によると、注入される水の量は、急冷領域から出て行く原合成ガスが40体積%以上のHO、好ましくは40〜60体積%のHO、より好ましくは40〜55体積%のHOを含むように選択される。
【0028】
好ましくは、注入される急冷媒体は、注入地点での一般的な圧力条件にて泡立ち点より最大で50℃低い温度、特に最大で15℃低い温度、さらに好ましくは泡立ち点より最大で10℃低い温度を有する。このため、注入される急冷媒体が水の場合、通常は90℃より高い温度、好ましくは150℃より高い温度、より好ましくは200℃〜270℃の温度、例えば230℃を有する。明らかに、この温度は、ガス化反応器の動作圧力、すなわち下で更に記載する原合成ガスの圧力に依存する。この結果、注入される急冷媒体の急速な気化が実現される一方、低温スポットが回避される。
【0029】
また、微細な液滴のミストの形態にて急冷媒体を注入するのが好ましい。さらに好ましくは、ミストの液滴は50〜200μm、よりいっそう好ましくは50〜150μmの直径を有する。好ましくは、注入される液体の60体積%以上が、指示された大きさの液滴の形態を有する。
【0030】
原合成ガスの急冷を促進するために、好ましくは平均速度が10〜60m/s、より好ましくは20〜50m/sの急冷媒体を注入する。
【0031】
ノズルがツイン流体ノズルの場合、原合成ガスの圧力より5バール以上高い注入圧力にて、好ましくは原合成ガスの圧力より10バール以上高い圧力から原合成ガスの圧力より20バール高い圧力までの注入圧力にて急冷媒体を注入するのが好ましい。
【0032】
急冷容器内で得られる水素と一酸化炭素の混合物中に存在する固体のかなりの部分が、好ましくはサイクロンにより分離される。残りの固体は後続の洗浄段階において取り除かれる。好ましくは、洗浄段階はベンチュリースクラバに続いて充填床洗浄塔を用いる。得られるガスは50〜60体積%の高い水含有量を有するので、下流でのシフト反応を実行するのに適する。この触媒シフト反応では、一酸化炭素が水と反応して二酸化炭素と水素になる。シフト反応の原料中に水が既に存在するので、追加の水をシフト領域に加える必要はまったくない。一酸化炭素に対して純粋な水素又はより含有量の高い水素の割合が要求される場合に、シフト反応が有利である。このような用途の例は、二酸化炭素の捕獲、水素製造を伴ういわゆるIGCCプロセス、並びにフィッシャートロプシュ合成、酢酸合成、メタノール合成及びジメチルエーテル合成への原料、又は直接破砕プロセスなどにおける還元ガスとして使用されるプロセスである。
【0033】
好ましくは、洗浄段階において得られるガスをさらに精製して、CO、HS、COS及び/又はHCN並びにその他の成分に分離する。このような精製に適するプロセスの例は、商用ガス処理プロセスのSulfinol−D、Sulfinol−M、DIPA−X、Genosorb、Selexol及びRectisolである。
【0034】
本発明は次の方法にも関するものである。温度が500〜900℃で圧力が1〜10MPaの合成ガスを、垂直な容器中にて200〜600℃の温度に急冷する方法であって、前記ガスが前記容器を下方向に通過し、前記容器が、ガスの方向において外側に傾斜した壁を有する末広の円錐状部分を備え、前記ガスが末広の円錐状部分を通過する際に、液体の水滴からなる霧を下方向に注入し、注入される水の量を、前記容器から出て行く合成ガスが40〜60体積%の水を含むように選択する、前記方法。出願人は、末広の円錐状部分において水の霧を合成ガスと同じ方向に注入することにより、液体の水滴が容器の内壁に接触する可能性が最小限に抑えられることを見いだした。このことは有利である。というのは、出願人は、過去の経験から、合成ガス中に存在する液体の水と灰が、プロセス容器の内側面に接触すると深刻なファウリングを生じることを知っているからである。
【0035】
更に好ましい実施態様は上に記載されている。この方法は本発明の急冷容器内で実行するのが好ましい。
【0036】
図面の詳細な説明
図1は縦置きの急冷容器1を示す。容器1はその上端部にガスの入口2を有し、その下端部に冷却されたガスの出口3を有し、下向きのガス流の通路4を形成する。容器1はまた、ガス流の通路4に急冷媒体を注入するための手段9を備える。図1は第1の内部管状壁部分5を示し、この壁部分5は、ガスの入口2に流体連結された開口部6を有する。管状壁部分5はその下端部にて末広の円錐状部分7に連結され、円錐状部分7はガスの通路4の方向において外側に傾斜した壁8を有する。図示されているように、ガス流の通路4に急冷媒体を注入するための手段9が、末広の円錐状部分7により囲まれた空間10の中に存在する。
【0037】
末広の円錐状部分7はその下端部11にて第2の内部管状壁12に続く。第2の内部管状壁12の下部開放端部13は、冷却されたガスの出口3に流体連通している。
【0038】
図1はまた角度αを示し、図示された実施態様では約7.5°である。第2の内部管状壁12は1以上のラッパー(rapper)15を備える。随意に、第1の内部管状壁部分5と末広の円錐状部分7もまた、1以上のラッパーを備えてもよい。適切には、容器1の下端部がテーパー状の端部1aを有し、冷却されたガスの出口3としての中央開口部27に至る。
【0039】
図1bは、図1に示されたものと同様の縦置きの急冷容器1bを示す。容器1bは、ガスの入口2bが容器1bの上端部の側壁に設けられている点で、容器1と異なる。このような構成は、US−A−2006/0260191の図4に示されるような連結ダクト5bを使用する場合に好適である。容器1bの上端部をガス反転室という。
【0040】
図2は、放射状に配置された12個のアーム25(上から見た)を示し、アーム25が下向きのノズルを備えている。これらのアームは、容器1の壁に固定され、末広の円錐状部分7の壁8と交差して中心位置に延びる。アーム25はフランジ25aを介して容器に連結されるので、修理やメンテナンスのために容易に取り外すことができる。
【0041】
図3はこのようなアーム25をさらに詳細に示す。1つのアーム25は、噴霧ガス用の供給通路26と、急冷媒体用の供給通路27とを備える。図示されたアーム25には、4つの下向きのノズル16と1つのわずかに傾斜したノズル28とが備わっている。下向きのノズル16の軸は垂直方向である。よって、ノズル16から放出される際に得られる液体噴霧の方向は垂直下向きである。アームは容器1の壁の開口部に固定される。容器1の壁は、末広の円錐状部分7のメンブレン壁8と、容器1の壁の内側に対する層として存在する耐火物質36とによって高温から保護される。第2の内部壁12の上端部と管状壁部分5の下端部もまた示される。供給通路26は噴霧ガスの入口26aに連結される。供給通路27は液体の入口27aに連結される。
【0042】
図3はまた、アーム25の上側に設けられた送風手段38を示す。送風手段38は、アーム25の上側に形成し得る堆積物を連続的又は断続的に吹き払うために設けられる。送風手段の方向はアーム25の水平方向に一致する。送風手段38は送風ガスの供給導管39を備える。
【0043】
図4はアーム25と1つのノズル16の詳細を示す。ノズル16は、供給通路27を介して供給される液体急冷媒体のための供給通路本体17内に設けられた垂直の中央供給通路を有する。通路本体17は、その下端部にて放射状外向きの放出開口部19を有し、急冷媒体を出して混合室37に入れる。放射状の放出開口部19は、下向きに流れる噴霧ガスのための環状通路20と流体連通している。環状通路20は、基部本体31内の通路30を介して噴霧ガス供給通路26と流体連通している。環状通路20は、供給通路本体17と外側ノズル本体21と挿入物29とにより形成される。環状通路20は、ノズル16の下端部23にて1つの出口通路22と流体連結される。出口通路22は、ノズル本体21の内壁により規定される。出口通路22は、その下端部にて急冷媒体と噴霧ガスとの混合物のための末広の出口開口部24に至る。
【0044】
図4はまた、上端部にてアーム25に固定され、下端部が開放している好ましいシールド32を示す。シールド32は例えば長方形などの任意の形状を有してよい。適切には、シールドの形状は管状である。別の実施態様では、1つのシールドが1より多いノズルを包囲し得る。ノズル16は、噴霧ガスの供給通路26に流体連通した噴霧出口開口部33を備える。これらの開口部33を通って、噴霧ガスの一部が出て行き、ノズル16とその包囲シールド32との間の空間に入る。このようにして、前記空間34内に灰が積もるのを防止する。また、アーム25の上端部には開口部35が示される。これらの開口部35を通して噴霧ガスの別の部分を放出して、アーム25の上部に積もる灰を取り除くか、又は積もるのを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0045】
【特許文献1】US−A−2006/0260191
【特許文献2】EP−B−1178858
【特許文献3】JP−A−53110967
【特許文献4】US−A−5732885
【特許文献5】US−A−2004/0222317
【符号の説明】
【0046】
1…急冷容器
2…ガス入口
3…冷却されたガスの出口
4…ガス流の通路
5…第1の内部管状壁部分
6…開口部
7…円錐状部分
8…外側に傾斜した壁
9…急冷媒体注入手段
12…第2の内部管状壁
13…下部開放端部
15…ラッパー
16…ノズル
25…アーム
28…ノズル
38…送風手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用中は縦長に配置し、ガスの入口を上端部に備えると共に冷却されたガスの出口を下端部に備えて下向きのガス流の通路を形成した急冷容器であって、その上端部に前記ガスの入口に流体連結された開口部を有する第1の内部管状壁部分を備え、前記内部管状壁部分は、その下端部にて、前記ガス流の通路の方向において外側に傾斜した壁を有する末広の円錐状部分に連結され、液体の急冷媒体を噴霧化して下方に噴射して前記ガス流の通路に入れるための1より多いノズルの配列が、前記末広の円錐状部分により囲まれた空間内に設けられる、前記急冷容器。
【請求項2】
前記第1の内部壁部分及び/又は前記末広の円錐状部分の壁が水冷式メンブレン壁の構成である請求項1に記載の急冷容器。
【請求項3】
前記末広の円錐状部分の壁の表面と垂直軸との角度が3°〜30°である請求項1又は2に記載の急冷容器。
【請求項4】
前記末広の円錐状部分の下端部には、前記冷却されたガスの出口に流体連通した下部開放端部を有する第2の内部管状壁が続く、請求項1〜3のいずれか一項に記載の急冷容器。
【請求項5】
前記第2の内部管状壁が1以上のクリーナー装置を備える請求項4に記載の急冷容器。
【請求項6】
前記ノズルの出口開口部の中心と前記末広の円錐状部分の壁との間の最小水平距離が0.2〜1mである請求項1〜5のいずれか一項に記載の急冷容器。
【請求項7】
前記ノズルが、通路本体内に設けられた液体急冷媒体の垂直中央供給通路を備え、前記通路本体がその下端部にて外向き放射状放出開口部を有し、前記放射状放出開口部が噴霧ガスの環状通路に流体連通しており、前記環状通路が中央通路本体の下端部にて1つの出口通路に流体連結され、前記出口通路がノズル本体の内壁により規定され、前記出口通路はその下端部が、急冷媒体と噴霧ガスとの混合物のための末広の出口開口部に至る、請求項1〜6のいずれか一項に記載の急冷容器。
【請求項8】
前記出口通路の下端部が、使用中に液体急冷媒体と噴霧ガスとの円錐状噴霧がガスの流路中に放出されるように下方向に末広の内壁を有する、請求項7に記載の急冷容器。
【請求項9】
急冷媒体を注入するために液体を噴霧化し下方向に噴射するための1より多いノズルの配列が、放射状に配置されると共に急冷容器の壁から末広の円錐状部分の壁内の開口部を通って中心位置まで延びた複数のアームを備え、前記アームが1以上の下向きのノズルを備える、請求項1〜8のいずれか一項に記載の急冷容器。
【請求項10】
前記容器の下端部が、冷却されたガスの出口としての中央開口部に至るテーパー状端部を有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の急冷容器。
【請求項11】
温度が500〜900℃で圧力が1〜10MPaの合成ガスを、垂直な容器中にて200〜600℃の温度に急冷する方法であって、前記ガスが前記容器を下方向に通過し、前記容器が、ガスの方向において外側に傾斜した壁を有する末広の円錐状部分を備え、前記ガスが末広の円錐状部分を通過する際に、液体の水滴からなる霧を下方向に注入し、注入される水の量を、前記容器から出て行く合成ガスが40〜60体積%の水を含むように選択する、前記方法。
【請求項12】
請求項1〜10に記載の急冷容器において実行する請求項11に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2010−538237(P2010−538237A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−523490(P2010−523490)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際出願番号】PCT/EP2008/061524
【国際公開番号】WO2009/030674
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(390023685)シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ (411)
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP